説明

導電異方性電極接続用組成物および該組成物の硬化膜

【構成】 絶縁フィルム上に形成された導体回路の接続用導体部とITO電極を有する基板とを接続する接着剤において、一般式AgX Cu1X (0.008≦x≦0.4、xは原子比)で表され、かつ粒子表面の銀濃度が平均の銀濃度より高く、平均粒子径が3〜23μmでかつ平均粒子径±2μmの存在割合が80%以上である球状の導電粉末1重量部、有機バインダー0.5〜100重量部を含有することを特徴とする異方性導電性組成物。
【効果】 金などを用いないためコスト削減になるのみならず、電極間でのショートがなく、導電粉末の多少の変形することで接合接点を充分に確保でき、ITO電極と絶縁フィルム上の接続用導体部間の導通にも優れ、耐環境性にも優れた導電異方性電極接続用組成物及びその硬化膜を提供するものである。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、導電異方性電極接続用組成物および該組成物を硬化してなる導電異方性膜に関するものであり、絶縁フィルム上の接続用導体部(例えばTAB(TAPE AUTOMATED BONDING)フィルム接続リード)の、ITO電極を有する液晶パネルへの接続用導電異方性膜として利用される。
【0002】
【従来の技術】従来より、プリント配線板や液晶パネル電極に、絶縁フィルム上にICあるいはLSI実装され形成された導体回路(例えばTAB(tape automated boding))を接合する場合、絶縁フィルム上の接続用導体部(TABフィルム接続リード)をはんだ付けにより直接接続する方法とか、カーボンフィラーを有機バインダーに分散させた導電フィルムまたはゴムをパネル電極とTABフィルム接続リードとの間に挟み電気的接合する方法がとられていた。
【0003】最近、パネル電極のピッチ間が数十μmと狭くなってきているため、充分な導電性を得るためと電極間ショート防止のために導電性粉末を有機バインダーに一定量分散させてパネル上ITO電極に数μmから数十μm程度の厚みでコーテイングし、さらに、TAB上の導体部である接続リードをパネル電極と位置合わせした後、接合して、パネル側から紫外線照射で硬化したり、あるいは加熱硬化してパネルITO電極とTABとの電気接合を確保する方法がとられてきた。この時、硬化時に加圧してITO電極とTABフィルム接続リード間の導電粒子による接点をさらに安定化したりする方法もとられてきた。従って、接続リード、電極間以外の有機バインダー中に存在する導電粒子は充分な接点が得られず、接続リード、電極間方向(絶縁フィルムとITO電極を有する基板間方向)にだけ導電性を有するものである。これらが導電異方性膜として用いられているものである。
【0004】導電異方性膜の有機バインダーとしては、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリビニル樹脂、ブチラール樹脂、スチレンブタジエンゴムなどのバインダーが用いられてきた。有機バインダーの役割としては、バインダー硬化時に導体とITO電極間に存在する導電性粒子の位置を安定に維持するためのものである。従来より導電異方性膜に用いられる導電粒子としては、数μmから十数μmのポリエステル、エポキシ、ポリスチレン樹脂などの粒子の表面に金メッキした粒子、金メッキニッケル粒子、銀粒子、ニッケル粒子などであり、これらを有機バインダーに分散して使用されてきた(例えば、特開平3ー129607号公報、特開平4ー242010号公報)。
【0005】しかしながら、金メッキ樹脂粒子、金メッキニッケル粒子などは以下の問題点がある。金メッキ樹脂粒子は、メッキ金の樹脂表面での付着力があまり強くなく、電極間での圧力を加えられたときに樹脂粒子表面から剥がれ、導電性を損ね易い。また、そのため樹脂粒子表面の処理が複雑で、完全に金で表面を覆うためには多量の高価な金を使用することにある。さらに、加圧時に多少粒子形状が球状から変形されるが、この時、樹脂粒子本体が柔らかくてひび割れが起きたりして導電性不良を起こし易い。
【0006】金メッキニッケル粒子の場合には、やはり、ニッケル粒子表面の金の密着力が充分でなく、加圧して接合する場合には、メッキ金が剥がれ落ちたりする。そのため導電性不良を生じ易くなる。ニッケルだけでも導電性はあるが、表面にNiOを形成するために接点での導電性不良となる。また、ニッケル粒子の場合には、硬度が高いため、加圧時に変形しにくくて、粒子径がわずかに異なった粒子が共存した場合には接点が確保できない粒子が存在してしまうことになる。
【0007】銀粒子も公知であるが、パネル上の電極間どうしでのマイグレーションが起こりショートしたりして好ましくない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、コスト高になる金などを用いずに、ITO電極間でのショートのない、かつ絶縁フィルム上に形成された接続用導体部とITO電極とが導電粉末の多少の変形によって充分な接点を有する導電異方性組成物および導電異方性膜を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明は、以下の通りである。
1.絶縁フィルム上に形成された接続用導体部と基板上に形成されたITO電極部とを接合する導電異方性組成物において、該導電異方性組成物が、(A)一般式Agx Cu1-x (ただし、0.008≦x≦0.4、原子比)で表され、且つ粒子表面の銀濃度が平均の銀濃度の2.2倍より高く、表面近傍で粒子表面に向かって銀濃度が増加する領域を有し、平均粒子径が2.5〜23μmで、かつ平均粒子径±2μmの存在割合が80%以上である球状の導電粉末1重量部、及び(B)有機バインダー0.5〜100重量部からなることを特徴とする導電異方性電極接続用組成物。
2.上記1に記載の導電異方性電極接続用組成物を絶縁フィルム上の接続用導体部とITO電極間で硬化してなる、該接続用導体部とITO電極間方向に導電性を有する導電異方性電極接続用膜。
【0010】すなわち、絶縁フィルム上に形成された導体回路を該絶縁フィルム上の接続用導体部を介して、基板上のITO電極(インジウムーすず酸化物)に接合する接着剤が以下の(A)および(B)組成物からなることを特徴とする導電異方性電極接続用組成物である。(A)一般式Agx Cu1-x (ただし、0.008≦x≦0.4、原子比)で表され、且つ粒子表面の銀濃度が平均の銀濃度の2.2倍より高く、表面近傍で粒子表面に向かって銀濃度が増加する領域を有し、平均粒子径2.5〜23μmで平均粒子径±2μmの存在割合が80%以上である球状の導電粉末1重量部、(B)有機バインダー0.5〜100重量部、および前記組成物をITO電極と絶縁フィルム上の接続用導体部間で硬化してなる導電異方性電極接続用膜に関するものである。
【0011】本発明で用いられる導電性粉末は前記で示される通りであるが、作製方法としては、本出願人により既に出願されている方法が好ましい(特開平1−205561号公報)。中でも特に不活性ガスアトマイズ法が好ましい。開示内容によれば、かかる組成の銅粒子と銀粒子を黒鉛るつぼ中で溶解し、不活性雰囲気中で融液をアトマイズし、微粉末化するものである。本発明で使用できる導電粉末は銀量Xが0.008〜0.4(原子比)であるが、0.008未満である場合には粒子表面の銅成分の酸化で電極との接点抵抗が不安定になる。0.4を超える場合には、パネル電極間での銀マイグレーションによるショートの発生率が増加する。好ましくは、0.01〜0.2である。
【0012】また、本発明で使用できる導電粉末の粒子表面の銀濃度は、平均の銀濃度の2.2倍以上であるが、2.2倍未満である場合には、粒子表面の耐酸化性が充分でない。好ましくは2.5〜80倍であり、さらに好ましくは3〜50倍である。本発明で用いられる表面の銀濃度とは、XPS(X線光電子分光分析装置:XSAM800、KRATOS社製)を用いて測定したものである。測定条件は以下に示す。
【0013】導電粉末を試料台上に全面覆うように導電性カーボン両面テープで接着し、以下の測定、エッチング条件で測定した。
測定条件:マグネシウムKα線(電圧12keV 電流10mA)、10-8torrアルゴンガス雰囲気エッチング条件:アルゴンイオンガス 加速電圧2keV 107torr、5分間測定、エッチングを5回繰り返し行い、最初の2回の測定の平均値を粒子表面の銀濃度とした。銀濃度はAg/(Ag+Cu)(原子比)である。
【0014】本発明で使用できる導電粉末は平均粒子径2.5〜23μmの球状であり、かつ平均粒子径±2μmの粒子の存在割合が80%以上であるが、平均粒子径が2.5μm未満である場合には電極と導体間での両接点が得られない。平均粒子径が23μmを超える場合には、導体とパネル電極間での粒子の変形率が大きすぎて隣の電極とのショートが起こり易い。好ましくは、平均粒子径3〜18μmであり、さらに好ましくは3〜12μmである。また、平均粒子径±2μmの存在割合が80%以上であるが、80%未満であると、すなわち粒度分布の幅が広い場合には、厚み方向の導電性において、多数ある導体とITO電極間で導電粉末が接点を充分に有さない組合わせが生じてしまい導通不良を起こす。好ましくは、90%以上である。
【0015】本発明で用いる粒子径は、導電粉末をエチレングリコールに数十〜1mg/cm3 の濃度で分散させ、レーザー回折型粒度分布測定装置(SALD1100;島津製作所)で測定した体積積算平均粒子径、及び体積基準の粒度分布より求められる値を示す。導電粉末の粒子形状としては、球状のものが使用できるが、特性を損なわない程度であれば、表面が多少凹凸があっても構わない。かりに、鱗片状であったりすると隣の電極とのショートが発生したり、重なりあったりして各電極間に均等に分散されにくいなどの問題がある。
【0016】本発明の組成物は導電粉末1重量部に対して、有機バインダー0.5〜100重量部含有しているが、熱硬化型樹脂、熱可塑性樹脂、紫外線硬化型樹脂を用いることができる。熱可塑性樹脂としては、熱可塑性アクリル樹脂、ブチラール樹脂、塩化ビニル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、スチレン系樹脂などがあげられる。
【0017】熱硬化型樹脂としては、エポキシ樹脂、レゾール型フェノール樹脂、アミノ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、熱硬化性アクリル樹脂から選ばれた1種類以上があげられる。エポキシ樹脂としては、ビスフェノルA型、ビスフェノールF型、ブロム化ビスフェノールA型、脂環式エポキシ、鎖状式エポキシ、エポキシアクリレート、脂肪酸変性エポキシ、ポリアルキレンエーテル型、ジグリシジルエステル型などがあげられる。また、必要に応じて、公知の反応性希釈剤を用いることもできる。例えば、ジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、1、3ブタンジオールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテルなどがあげられる。
【0018】レゾール型フェノール樹脂としては、フェノール・ホルムアルデヒド型レゾール型樹脂、アルキルフェノールレゾール型樹脂、キシレン樹脂変性レゾール型樹脂、ロジン変性フェノール樹脂などがあげられる。ポリイミド樹脂としては、縮合型ポリイミドやビスマレイド系樹脂、付加型ポリイミド樹脂があげられる。
【0019】ポリウレタン樹脂としては、ウレタンを形成するウレタンプレポリマーが使用できるが、好ましくは、末端活性イソシアネート基を活性水素化合物でブロックしたブロックイソシアヌレートプレポリマーを主体にするものが好ましい。これらの熱硬化型樹脂の中では、エポキシ樹脂を用いるものが好ましい。中でも、ビスフェノールA型、F型のエポキシ樹脂が好ましい。特に、無溶剤型のエポキシ樹脂を用いるのが好ましい。必要に応じて硬化剤を用いられ、イミダゾール系硬化剤、有機ポリアミン、酸無水物、ジシアンジアミド、ベンゾグアナミンなどの公知のものを使用するのが好ましい。硬化方法は、130〜250℃程度で加熱硬化する方法が好ましい。この場合、あまり高い温度で硬化するとTAB上のIC回路および液晶に悪影響を及ぼすため、できれば、数秒から数分で加熱硬化を終了されるものが好ましい。好ましくは4秒から80秒程度の間である。この時、0.1〜90kg/cm2 の圧力をかけて硬化させるのが好ましい。加熱方法はヒーター、レーザーなどの公知の方法でよい。
【0020】紫外線硬化型樹脂を用いる場合には、光重合性オリゴマー、光重合性モノマーを光開始剤、光開始助剤とともに用いられる。光重合性オリゴマーとしては、低分子量反応性分子(数百から数千)で、ポリエステル、エポキシ、ウレタンなどの骨格に官能基としてアクリル基、メタアクリル基が2つ以上付加したものであり、例えばエポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレートが挙げられる。
【0021】光重合性モノマーとしては、アクリロイル基(CH2 =CHCO−)または、メタクリロイル基(CH2 C(CH3 )CO−)を1分子当たり1個または2個以上持つものであり、1個以上持つ単官能アクリレート(メタ)、2個以上持つ多官能アクリレート、その他、ビニル基(CH2 =CH−)を持つものが好ましい。
【0022】前記光重合性オリゴマー、モノマーとともに用いられる光開始剤は、紫外線を吸収してラジカルを発生しやすい物質が好ましく、アセトフェノン系、チオキサントン系、ベンゾイン系、パーオキサイド系の公知の物質を用いることができる。光開始助剤としては、それ自身は紫外線照射により活性化はしないが、光開始剤とともに用いると光開始剤単独よりも開始反応が促進され、硬化反応を効率的にするものであり、脂肪族、芳香族のアミンなどの公知の光開始助剤を使用できる。紫外線照射により硬化する方法としては、液晶パネル上に塗布し、TABフィルムを位置合わせして張り合わせてから、液晶パネル側から紫外線照射発生装置を用いて数秒から数十秒照射するのが良い。0.1W〜1KW/cm2 のパワーであれば充分である。接点をさらに良好にすうための加圧して行うのがさらに好ましい。この時、例えば、0.1〜90kg/cm2 程度の加圧で行うのが好ましい。
【0023】紫外線硬化型樹脂を用いる場合には、加熱硬化型樹脂と同様に、溶剤の揮発によるガス発生を防止するため無溶剤でもちいるのが好ましい。ただし、特性を損なわない程度であれば多少の公知の溶剤を用いることもできる。溶剤を用いる場合には、メチルカルビトール、エチルカルビトール、ブチルカルビトール及びそれらのアセテート、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ及びそれらのアセテート、2、2、4ートリメチルー1、3ペンタンジオールモノイソブチレート、テルペノール、キシレン、酢酸ブチル、トルエン、酢酸エチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどが挙げられるがこれらに限ったものではない。
【0024】本発明の組成物は、絶縁フィルム上に形成された導体回路の接続用導体部(例えばTABフィルムの接続リード)と液晶パネルITO電極との接続用として用いられるが、前述の導電粉末1重量部に対して、前記有機バインダー0.5〜100重量部添加してなるが、0.5重量部未満の場合には、電極間での導電粉末の量が多すぎて、隣のパネル電極間でショートを起こしてしまう。また、100重量部以上の場合には、ITO電極と絶縁フィルム上の接続用導体部間での導電粉末の量が少なすぎて、絶縁であるITO電極と接続用導体部の組み合わせが存在してしまう。好ましくは、1〜80重量部、さらに、好ましくは、1.5〜50重量部である。
【0025】本発明の電極接続用組成物は、絶縁フィルム上接続用導体部(例えばTABフィルムの接続用リード)とITO電極とを接合するものであるが、絶縁フィルムの基材は、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアミド、ポリエーテルスルフォン、ポリフェニレンスルフィドなどが挙げられる。基材の厚さは数十μmから数mm程度のものを使用することができる。
【0026】絶縁フィルム上の接続用導体部は、銅、銀、金、銅−銀合金、すずメッキ銅、はんだメッキ銅、アルミニウム、ニッケル、金−白金合金などの導体が挙げられる。これらは、公知の方法で得られるもので構わないが、接続用にリード形態のものが良い。リード幅として、数十μmから数百μmのものが特に好ましい。例えば、TABの外部リード形態など公知の形態のもので構わない。
【0027】一方、本発明で使用されるITO電極は、基材として特にこだわらないが、液晶パネル電極として用いられるITO電極が好ましい。ITO電極の厚さとしては、数十〜数千Å程度のもので構わない。作製方法は蒸着、スパッタリングなど公知の方法で構わない。本発明の導電異方性電極接続用膜は、絶縁フィルム上の接続用導体部(例えばTAB化されたICドライバー回路の接続リード)とITO電極との接合を電極方向に対して行うことを目的にしたものであり、この導電異方性電極接続用膜の厚さは数μmから数十μmが好ましい。あまり、膜の厚さが薄すぎると(サブμm)、隣の電極へ導電粒子が変形して接触するためにショートをおこし易くなる。100μmを超えるほど厚くなると、導電粒子が充分に両導体との接続接点を有しなくなり、好ましくない。
【0028】本発明で指摘される導電異方性電極接続用膜の膜厚とは、接合後断面をカットして、電子顕微鏡で観察して測定した。また、絶縁フィルム上接続用導体部とITO電極間の抵抗値は低ければ低い方が良いが、おもにITO電極での抵抗値が支配的になるためITO電極の抵抗値に比べて顕著に増加しなければ構わない。例えば、シート抵抗値で数十ミリオームから数十オームが達成されるものでよい。このようにして作製された導電異方性電極接続用膜は、金を用いないためコストが安いことはもちろんのこと、微細電極間でのマイグレーションもなく、かつ金メッキ樹脂粉のように、加圧時に異常なひび割れを起こしたりすることもない。また、金めっきニッケル粉、ニッケル粉のように硬度が高くて加圧時の充分な接触面積が得られないこともなく、銅をベースにするため適度の硬度を有するため、優れた接触面積と接点での耐酸化性を示すものである。
【0029】ITO電極間でのマイグレーション及びショートの発生は、作製初期と60℃、90%RH中1000時間、電極間に10Vの直流電圧印可した環境試験前後でリーク電流を測定することによって調べた。以下に実施例を示す。
【0030】
【実施例】
【0031】
【粉末作製例1】銅粒子(純度99.9重量%以上、平均粒子径2mmφ)603g,銀粒子(純度99.9重量%以上、平均粒子径1mmφ)54gを混合して、黒鉛るつぼ中1700℃まで窒素雰囲気中で加熱溶解した。 融液をるつぼ先端より窒素雰囲気中へ噴出し、噴出と同時に、50kg/cm2 Gの窒素ガス(純度99.9重量%以上)を融液に対して噴出し、アトマイズした。得られた導電粉末は球状で平均粒子径は10μmであった。気流分級機(日清エンジニアリング社製 TC−15N)を用いて5〜10μmで分級した。平均粒子径7μmであった。この時7±2μmの範囲の粉末の体積積算で表される存在率が87%であった。平均粒子径7μmの粉末の表面の銀濃度は、0.6、0.5、0.56、0.4、0.37であり、表面の銀濃度は0.55であった。平均の銀濃度は0.05であり、表面の銀濃度は平均の銀濃度の13倍であった。
【0032】
【粉末作製例2】銅粒子571.5g,銀粒子108gを混合して、1750℃まで窒素雰囲気中で加熱溶解した。融液を窒素雰囲気中へ噴出し、噴出と同時に50kg/cm2 Gの窒素ガス(純度99.9%以上)を噴出し、融液をアトマイズした。得られた導電粉末は、球状で平均粒子径9μmであった。気流分級機を用いて、3〜8μmで分級した。平均粒子径5μmであった。この時、5±2μmの範囲の粉末の体積積算で表される存在率が98%であった。
【0033】さらに、得られた平均粒子径5μmの粒子の表面の銀濃度は0.8、0.7、0.6、05、0であり、表面の銀濃度は0.75であった。平均の銀濃度は0.1であり、表面の銀濃度は平均の銀濃度の7.5倍であった。
【0034】
【粉末作製例3】銅粒子44.5g,銀粒子324gを混合して、黒鉛るつぼ中で1700℃までヘリウム雰囲気中で加熱溶解した。融液をるつぼ先端よりヘリウム雰囲気中へ噴出した。噴出と同時に、50kg/cm2 Gのヘリウムガス(純度99.9重量%以上)を噴出し融液をアトマイズした。得られた導電粉末は球状であり、平均粒子径6μmであった。気流分級機で2〜7μmで分級した。得られた粉末の粒子径は4μmであり、4±2μmの範囲の粒子の体積積算存在率は97%であった。得られた、分級粉末の表面の銀濃度は0.9、0.86、0.8、0.7、0.6であり、表面の銀濃度は0.88であった。平均の銀濃度は0.3であり、表面の銀濃度は平均の銀濃度の2.9倍であった。
【0035】
【粉末作製例4】銅粒子317g,銀粒子540gを混合して、黒鉛るつぼ中で1700℃まで加熱溶解した。さらに、融液をるつぼ先端より噴出して融液を50kg/cm2G窒素ガスでアトマイズした。得られた粉末は球状で、平均粒子径10μmであった。さらに、気流分級機で2〜5μmでカットした。得られた粉末は平均4μmであり、4±2μmの粒子の体積積算基準の存在率は90%であった。分級粉の表面の銀濃度は0.9であり、平均の銀濃度0.5の1.8倍であった。
【0036】
【実施例1】粉末作製例1で得られた平均粒子径7μmの粉末1重量部に対して、ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂20重量部、イミダゾール系硬化剤3重量部を加えて組成物を作製した。得られた組成物を、既に100μm間隔でITO電極が形成されている液晶パネル電極上に20μm厚みで塗布した。銅導体の接続リードを有し、ICを実装した75μm厚みのポリイミドフィルム(TABフィルム)を100μm幅ITO電極上に位置合わせして張り合わせ、170℃、30秒間、圧力30kg/cm2 で硬化した。得られた導電異方性電極接続用膜の厚さは10μmであった。断面を一部カットしたところ銅導体とITO電極間に導電粉末が存在し、得られた異方性導電膜の厚さ方向の電極と導体間での導電性は良好であった。導電粉末は接点で多少つぶれて変形していたが、粉末のひび割れとか見られなかった。成膜後、及び環境試験後の各隣同士の電極間でのショート発生率は1ppm以下であった。
【0037】
【実施例2】粉末作製例1で得られた平均粒子径7μmの粉末1重量部に対して、ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂80重量部、イミダゾール系硬化剤30重量部、ジシアンジアミド硬化剤1重量部を混合して組成物を作製した。得られた組成物を既にITO電極が形成されている液晶パネル電極上に15μmにコーテイングした。70μmすずメッキ銅導体の外部接続用リードを有する50μm厚みポリイミドフィルム(TABフィルム)をITO電極上に位置合わせして張り合わせ、170℃、10秒間、30kg/cm2 の加圧で硬化させた。得られた導電異方性電極接続用膜の厚さは8μmであり、すずメッキ銅導体とITO電極間での各組み合わせでの導電性は良好であった。一部カットしたところ、各導体とITO電極との間には、導電粉末が存在しており、導電粉末の接点部分では変形しており、接点面積が増加していた。しかし、粒子のひび割れや完全なつぶれは見られなかった。成膜後及び環境試験後での各電極間でのショート発生率は1PPM以下であった。
【0038】
【実施例3】粉末作製例2で得られた平均粒子径5μmの導電粉末1重量部に対して、ビスフェノールF型エポキシ樹脂1重量部、ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂15重量部、フェノールーホルムアルデヒド型レゾール型フェノール樹脂1重量部、芳香族ポリアミン1重量部、ブチルカルビトールアセテート1重量部を混合して組成物とした。得られた組成物を、既にITO電極が形成されている液晶パネル電極上に15μmの厚さでコーテイングした。
【0039】銀導体の接続用リードを有する70μm厚みのポリエチレンテレフタレートをITO電極上に位置合わせして張り合わせ、150℃、70秒間、50kg/cm2 の圧力で加熱硬化した。得られた導電異方性電極接続用膜の厚さは7μmであった。各銀導体とITO電極との組み合わせでの導電性は良好であった。一部を厚さ方向にカットしたところ、各銀導体とITO電極間には導電粉末が存在しており、導電粉末は接点部分で多少変形しており、接点面積は増加していた。しかし、ひび割れや、完全な変形が見られなかった。
【0040】また、成膜後と環境試験後でのITO電極間、銀導体間でのショートは見られなかった。
【0041】
【実施例4】粉末作製例2で得られた平均粒子径5μmの導電粉末1重量部に対して、光重合性オリゴマーとして分子量1000のエポキシアクリレート10重量部、光重合性モノマーとして、アリルアクリレート10重量部、光重合開始剤として、ジエトキシアセトフェノン5重量部、光重合開始助剤として、トリエタノールアミン1重量部を混合して組成物を作製した。得られた組成物を既にITO電極が形成されている液晶パネル電極上に14μm厚さでコーテイングした。さらに、銀導体でなる接続用リードを有する75μm厚さのポリフェニレンスルフィドフィルムをITO電極上に位置合わせして張り合わせた。さらに、液晶パネル側から、40W/cm2 の紫外線を20秒照射しながら、30kg/cm2 の圧力で硬化した。
【0042】得られた導電異方性電極接続用膜の各銀導体とITO電極間での導電性は良好であった。また、一部を厚み方向でカットしたところ、各銀導体とITO電極間には導電粉末が存在していた。導電粉末は多少接点部で変形していて接点面積が増加していた。しかし、粉末のひび割れや完全な変形は見られなかった。また、成膜後と環境試験後での各電極間、銀導体間でのマイグレーションやショートは見られなかった。
【0043】
【実施例5】粉末作製例3で得られた平均粒子径4μmの導電粉末1重量部に対して、液状エポキシ樹脂20重量部、イミダゾール系硬化剤5重量部を混合して組成物を作製した。得られた組成物を既にITO電極が形成されている液晶パネル上に15μm厚さでコーテイングした。さらに、アルミニウム導体からなる接続用リードを有する70μm厚みのポリアミドフィルムをITO電極上に各導体と合うように位置合わせして張り合わせ、160℃、40秒間で10kg/cm2 の圧力で硬化した。
【0044】得られた導電異方性電極接続用膜の各アルミニウム導体とITO電極間での導電性は良好であり、また、一部を厚さ方向にカットして断面を調べたところ、各アルミニウム導体、ITO電極間には導電粉末が存在していた。この時、導電粉末は接点不で多少変形しており、接点における接点面積は増加していた。しかし、粉末のひび割れ、完全な変形による接点不良は見られなかった。
【0045】
【比較例1】粉末作製例4で得られた平均4μmの導電粉末1重量部に対して、液状エポキシ樹脂30重量部、イミダゾール系硬化剤20重量部を混合して組成物を作製した。得られた組成物を既にITO電極が形成されている液晶パネル上に厚さ20μmでコーテイングした。さらに、金導体で形成されている接続リードを有する75μmポリエーテルエーテルケトンフィルムをITO電極上に導体を位置合わせして張り合わせ、160℃、30秒間、圧力30kg/cm2 で硬化した。得られた導電異方性電極接続用膜の膜厚は6μmであった。また、各金導体とITO電極間での導電性は良好であった。一部を厚み方向にカットして各金導体、ITO電極間には導電粉末が存在していた。
【0046】また、成膜後、及び環境試験後のマイグレーションによる各電極間でのショート発生は顕著に起こった。
【0047】
【比較例2】平均粒子径3μmで3±2μmの粒子の体積積算存在が90%である銅粉末を用いる以外は比較例1と同様にして組成物を作製した。得られた組成物を既にITO電極が形成されている液晶パネル上に13μm厚みでコーテイングした。さらに、銀−銅合金導体からなる接続用リードを有する75μmポリイミドフィルムの接続用導体をITO電極上に位置合わせして張り合わせ、160℃、60秒間、40kg/cm2 で硬化した。得られた異方性導電膜の膜厚は3μmであった。各銀−銅合金導体とITO電極間での導電性はやや悪かった。さらに、環境試験後の導電性は著しく悪くなり、接点での銅粉末の酸化が見られた。
【0048】
【比較例3】粉末作製例1で得られた平均粒子径7μmの粉末1重量部に対して、液状エポキシ樹脂300重量部、イミダゾール硬化剤20重量部を混合して組成物とした。得られた組成物を既にITO電極が形成されている液晶パネル上に15μm厚さでコーテイングした。さらに、銅導体からなる接続用リードを有する75μmポリアミドフィルム上の接続用導体部をITO電極上に位置合わせして張り合わせた。さらに、160℃、30秒間、40kg/cm2 の圧力で硬化した。この時、導電異方性電極接続用膜の厚みは8μmであった。各銅導体とITO電極での導電性を測定したところ、ところどころの電極間で導通不良が生じた。一部を厚み方向にカットして調べたところ、ところどころの電極、銅導体間で導電粉末が存在していないところが見られた。
【0049】
【比較例4】粉末作製例1で得られた粉末中、20μm以上の粉末を分級した。平均粒子径25μmであった。この分級粉末1重量部に対して、実施例1と同じ有機バインダー組成で組成物を作製した。得られた組成物をITO電極が形成されている液晶パネル上に30μm厚さでコーテイングした。さらに、銅導体で形成されている接続用リードを有する75μm厚みのポリイミドフィルムをITO電極上に位置合わせして張り合わせた。さらに、160℃、40秒間、20kg/cm2 の圧力で硬化した。得られた異方性導電膜の厚さは7μmであった。各導体とITO電極間での導通は良好であったが、しかし、各ITO電極、各導体どうしでショートが見られた。一部カットして断面を見たところ、電極間に存在する粒子が大きすぎて隣の電極とショートしていたり変形して大きくなりそのためショートが起こったりしていた。
【0050】
【比較例5】粉末作製例1で作製された導電粉末を分級、混合操作を繰り返して、平均粒子径10μmでかつ10±2μmの粒子の体積積算存在割合が50%の混合導電粉末を作製した。混合導電粉末1重量部に対して、実施例1と同じ有機バインダー組成割合で組成物を作製した。得られた組成物を実施例1と同じITO電極、有機フィルム、硬化条件で接合した。得られた異方性導電膜の厚さは7μmであった。各導体とITO電極との組み合わせにおける導通はところどころ導通不良が生じていた。一部厚さ方向にカットして断面を調べたところ、ところどころの導体、ITO電極組み合わせにおいて粉末が接点を有していないものがあった。これは、粒子径分布が広すぎて接点不良を生じたものと思われる。
【0051】
【比較例6】平均粒子径10μmでかつ10±2μmの粒子の体積積算あたりの存在割合が90%である金メッキポリスチレン粒子1重量部に対して、実施例1と同じ有機バインダー比で組成物を作製した。得られた組成物で実施例1と同じITO電極、有機フィルムを用いて接続した。得られた異方性導電膜の厚さは8μmであり、各導体とITO電極との導通は良かった。しかし、、一部を厚さ方向にカットして導体、ITO電極間の導電粉末の形状を調べたところ、一部でポリスチレン粒子がひび割れを起こしていた。環境試験にかけたところ、ひび割れポリスチレン粒子の金メッキ部分がポリスチレン粒子表面から剥がれ落ち、導通の悪いITO電極が増加した。
【0052】
【発明の効果】本発明は、金などを用いないため大幅なコスト節減ができるのはもちろん、電極間でのショートがなく、導電粉末がある程度変形しやすいため絶縁フィルム上の接続リードとITO電極とが充分な接続導通を有し、そのためひび割れなどのない耐環境性に優れた導電異方性電極接続用組成物及びその硬化膜を提供するものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 絶縁フィルム上に形成された接続用導体部と基板上に形成されたITO電極部とを接合する導電異方性組成物において、該導電異方性組成物が、(A)一般式Agx Cu1-x (ただし、0.008≦x≦0.4、原子比)で表され、且つ粒子表面の銀濃度が平均の銀濃度の2.2倍より高く、表面近傍で粒子表面に向かって銀濃度が増加する領域を有し、平均粒子径が2.5〜23μmで、かつ平均粒子径±2μmの存在割合が80%以上である球状の導電粉末1重量部、及び(B)有機バインダー0.5〜100重量部からなることを特徴とする導電異方性電極接続用組成物。
【請求項2】 請求項1に記載の導電異方性電極接続用組成物を絶縁フィルム上の接続用導体部とITO電極間で硬化してなる、該接続用導体部とITO電極間方向に導電性を有する導電異方性電極接続用膜。

【公開番号】特開平6−223633
【公開日】平成6年(1994)8月12日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平5−10766
【出願日】平成5年(1993)1月26日
【出願人】(000000033)旭化成工業株式会社 (901)