説明

導電膜形成用感光材料、及び導電膜の製造方法

【課題】表面抵抗が十分に低い導電膜を形成しうると共に、製造適性に優れた導電膜形成用感光材料を提供すること。表面抵抗が十分に低い導電膜を形成しうる、製造性に優れた導電膜の製造方法を提供すること。
【解決手段】支持体上に銀塩を含有する乳剤層を有し、前記支持体上の少なくとも1層がミョウバンを含有する導電膜形成用感光材料。支持体上に銀塩を含有する乳剤層を少なくとも有する導電膜形成用感光材料を露光し、現像処理することにより金属銀部を形成して導電膜前駆体を作製する金属銀形成工程と、該金属銀形成工程における前記現像処理の前に、前記導電膜形成用感光材料をミョウバン含有溶液に浸漬させ、当該導電膜形成用感光材料における支持体上の少なくとも1層にミョウバンを含有させるミョウバン含有溶液浸漬工程と、を有する導電膜の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電膜形成用感光材料、及び導電膜の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近時、各種表示装置の透光性電磁波シールド膜、各種電子デバイスの透明電極、透明面状発熱体等として有用な導電性を兼ね備えた導電膜として、金属等の導電層の細線を透明基板上にメッシュパターン状に形成したものが知られている。
このような導電膜の製造方法として、例えば、ハロゲン化銀を用いる方法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
このハロゲン化銀を用いる方法は、透明基材表面に銀塩乳剤層を有する銀塩感光材料をメッシュパターン状に露光し、現像処理して当該メッシュパターン状の現像銀を形成し、これにめっきを施して金属で構成された導電性パターンを形成するという方法である。
【0003】
上記のようなハロゲン化銀を用いる方法は、フォトリソグラフィ法に比べて工程がシンプルであり、また、印刷法に比べて細線の形成も容易であり、更に導電層を継ぎ目無く連続して形成するのに適している等の長所がある。加えて、このような銀塩(特にハロゲン化銀)感光材料を用いて得られた導電膜に、カレンダーロールによって平滑化処理を行うことで、導電膜の表面抵抗を十分に低減できる。しかも、所望のパターンで、均一な形状の金属銀部を形成することができ、導電膜の生産性を更に向上させることができる、という効果もある(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−221564号公報
【特許文献2】特開2008−251417号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記のように、露光、現像に供される銀塩感光材料において、銀塩乳剤層には、製造適性、具体的には、現像装置へ供した場合に発生する膜剥れの点から、ある程度の膜強度が求められる。しかしながら、単に銀塩乳剤層を大きくした場合、形成される導電膜の表面抵抗を十分に低くすることができなくなることがある。
このようなことから、銀塩感光材料には、銀塩乳剤層の膜強度を高めること、得られる導電膜の表面抵抗を十分に低くすること、の両立が求められているのが現状である。
【0006】
本発明は上記の現状に鑑み考慮されたものであり、表面抵抗が十分に低い導電膜を形成しうると共に、製造適性に優れた導電膜形成用感光材料を提供することを第1の課題とする。
また、本発明は、表面抵抗が十分に低い導電膜を形成しうる、製造性に優れた導電膜の製造方法を提供することを第2の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の課題を解決するための具体的手段は以下の通りである。
<1> 支持体上に銀塩を含有する乳剤層を有し、
前記支持体上の少なくとも1層がミョウバンを含有する導電膜形成用感光材料。
<2> 前記ミョウバンがクロムミョウバンである<1>に記載の導電膜形成用感光材料。
<3> 前記ミョウバンを含有する層が乳剤層又は乳剤層に隣接する層である<1>又は<2>に記載の導電膜形成用感光材料。
【0008】
<4> 前記ミョウバンを含有する層が乳剤層である<1>〜<3>のいずれか1に記載の導電膜形成用感光材料。
<5> 前記乳剤層がバインダを更に含有しており、当該乳剤層中の銀と該バインダとの体積比率(銀/バインダ)が1/1以上である<1>〜<4>のいずれか1に記載の導電膜形成用感光材料。
<6> 前記乳剤層は、銀量が5g/m以上となる層である<1>〜<5>のいずれか1に記載の導電膜形成用感光材料。
<7> 前記ミョウバンを含有する層は、膨潤率が90%以下である<1>〜<6>のいずれか1に記載の導電膜形成用感光材料。
【0009】
<8> 支持体上に銀塩を含有する乳剤層を少なくとも有する導電膜形成用感光材料を露光し、現像処理することにより金属銀部を形成して導電膜を作製する金属銀形成工程と、
該金属銀形成工程における前記現像処理の前に、前記導電膜形成用感光材料をミョウバン含有溶液に浸漬させ、当該導電膜形成用感光材料における支持体上の少なくとも1層にミョウバンを含有させるミョウバン含有溶液浸漬工程と、
を有する導電膜の製造方法。
<9> 前記金属銀形成工程において、前記現像処理後に、前記導電膜形成感光材料を定着液に浸漬させる定着処理を更に含むこと<8>に記載の導電膜の製造方法。
<10> 前記定着処理において、現像処理での金属銀部の形成に加えて、更に金属銀部での金属銀量の増加が起きる<9>に記載の導電膜の製造方法。
【0010】
<11> 前記金属銀形成工程において、前記定着処理後、前記導電膜形成感光材料中のミョウバンを除去する酸処理を更に含む<9>又は<10>に記載の導電膜の製造方法。
<12> 前記酸処理が、硫酸溶液、クエン酸溶液、又は塩酸溶液を用いて行われる<11>に記載の導電膜の製造方法。
<13> 前記乳剤層がバインダを更に含有しており、当該乳剤層中の銀と該バインダとの体積比率(銀/バインダ)が1/1以上である<8>〜<12>のいずれか1に記載の導電膜の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、表面抵抗が十分に低い導電膜を形成しうると共に、製造適性に優れた導電膜形成用感光材料を提供することができる
また、本発明によれば、表面抵抗が十分に低い導電膜を形成しうる、製造性に優れた導電膜の製造方法を提供することができる。
なお、「製造性に優れた」とは、現像装置等に供した際に導電膜形成用感光材料を構成する層(乳剤層)の膜剥れが起こらないことを意味する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の導電膜形成用感光材料(以下、単に「感光材料」と称する場合がある。)、及び導電膜の製造方法について説明する。
なお、本発明の導電膜形成用感光材料から形成された導電膜、又は本発明の導電膜の製造方法にて製造された導電膜は、車両のデフロスタ(霜取り装置)、窓ガラス等の一部として使用可能で、電流を流すことで発熱し発熱シートとしても機能し、また、タッチパネル用電極、無機EL素子、有機EL素子或いは太陽電池の電極、又はプリント基板としても使用することができる。
【0013】
なお、本明細書において「〜」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味として使用される。
【0014】
≪導電膜形成用感光材料≫
本発明の導電膜形成用感光材料は、支持体上に銀塩を含有する乳剤層を有し、前記支持体上の少なくとも1層がミョウバンを含有することを特徴とする。
本発明の導電膜形成用感光材料は、銀塩を含有する乳剤層を少なくとも有する層構成であるが、支持体上には乳剤層以外の層を有していてもよく、支持体上に存在する層の少なくとも1つにミョウバンが含有されていることを特徴とする。
本発明において、ミョウバンが含有される層としては、乳剤層、下塗り層、保護層等があるが、本発明の効果をより優れたものをする点から、ミョウバンが含有される層は、乳剤層又は乳剤層と隣接する層であるが好ましく、特に、乳剤層であることが好ましい。
以下、本発明の導電膜形成用感光材料を構成する各要素について説明する。
【0015】
[支持体]
本発明の感光材料を構成する支持体としては、プラスチックフイルム、プラスチック板、及びガラス板等を用いることができる。上記プラスチックフイルム及びプラスチック板の原料については、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、及びポリエチレンナフタレート等のポリエステル類;ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン、EVA等のポリオレフィン類;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のビニル系樹脂;その他、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリサルホン(PSF)、ポリエーテルサルホン(PES)、ポリカーボネート(PC)、ポリアミド、ポリイミド、アクリル樹脂、トリアセチルセルロース(TAC)等を用いることができる。
【0016】
支持体の厚みは95μm以上であればよく、上限値は150μm以下であることが好ましい。
【0017】
[銀塩を含有する乳剤層]
本発明の感光材料は、支持体上に、銀塩を含む乳剤層を有する。
この乳剤層は、銀塩の他、バインダ等を含有することができる。また、疑義がない場合には、銀塩を含む乳剤層を、単に、「乳剤層」と呼ぶこともある。
【0018】
<銀塩>
本発明で用いられる銀塩としては、ハロゲン化銀等の無機銀塩及び酢酸銀等の有機銀塩が挙げられる。本発明においては、光センサとしての特性に優れるハロゲン化銀を用いることが好ましい。
【0019】
本発明で好ましく用いられるハロゲン化銀について説明する。
本発明においては、光センサとしての特性に優れるハロゲン化銀を用いることが好ましく、このハロゲン化銀は、保護コロイドとしてのバインダ中に粒子として分散含有するハロゲン化銀乳剤として用いられることが好ましい。
また、ハロゲン化銀に関する銀塩写真フイルムや印画紙、印刷製版用フイルム、フォトマスク用エマルジョンマスク等で用いられる技術は、本発明にも適用することができる。
【0020】
本発明において、乳剤層はハロゲン化銀乳剤を乳剤層用塗布液として用い、この塗布液を用いて形成されることが好ましい。
本発明に用いられる乳剤層用塗布液であるハロゲン化銀乳剤は、P.Glafkides著 Chimie et Physique Photographique(Paul Montel社刊、1967年)、G.F.Dufin著 Photographic Emulsion Chemistry(The Focal Press刊、1966年)、V.L.Zelikmanほか著 Making and Coating Photographic Emulsion(The Focal Press刊、1964年)等に記載された方法を用いて調製することができる。
【0021】
<バインダ>
乳剤層には、銀塩粒子を均一に分散させ、且つ、乳剤層と支持体との密着を補助する目的でバインダを用いることができる。
本発明におけるバインダとしては、非水溶性ポリマー及び水溶性ポリマーのいずれも用いることができるが、後述の温水に浸漬又は蒸気に接触させる処理により除去される水溶性ポリマーの比率が多いことが好ましい。
【0022】
本発明に用いられるバインダとしては、例えば、ゼラチン、カラギーナン、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、澱粉等の多糖類、セルロース及びその誘導体、ポリエチレンオキサイド、ポリサッカライド、ポリビニルアミン、キトサン、ポリリジン、ポリアクリル酸、ポリアルギン酸、ポリヒアルロン酸、カルボキシセルロース等が挙げられる。これらは、官能基のイオン性によって中性、陰イオン性、陽イオン性の性質を有する。
【0023】
上記の中でも、好ましくはゼラチンが使用される。ゼラチンとしては石灰処理ゼラチンの他、酸処理ゼラチンを用いてもよく、ゼラチンの加水分解物、ゼラチン酵素分解物、その他(アミノ基、カルボキシル基を修飾したフタル化ゼラチン、アセチル化ゼラチン)を使用することができるが、銀塩調製工程において使用するゼラチンはアミノ基の正の電荷を無電荷或いは負の電荷に変えたゼラチンを用いることが好ましく、更にフタル化ゼラチンを用いるのがより好ましい。
【0024】
乳剤層中に含有されるバインダの含有量は、特に限定されず、分散性と密着性を発揮し得る範囲で適宜決定することができる。乳剤層中のバインダの含有量は、銀換算銀塩の体積/バインダの体積の比率(以下、「銀/バインダ体積比」という)が1/2以上であることが好ましく、1/1以上であることがより好ましく、2/1以上であることが更に好ましい。また、この銀/バインダ体積比率の上限値としては、10/1が好ましい。
【0025】
<その他の添加剤>
本発明における乳剤層には、前述した銀塩、バインダ以外に、以下のようなその他の添加剤が含まれていてもよい。
その他の添加剤としては、従来より写真用ハロゲン化銀乳剤に添加される種々の添加剤、例えば、染料、ポリマーラテックス、硬膜剤、硬調化剤、調色剤、導電化剤等が挙げられる。
【0026】
<溶媒>
本発明における乳剤層の形成には、乳剤である乳剤層用塗布液が用いられる。
この乳剤(乳剤層用塗布液)に用いられる溶媒は、特に限定されるものではないが、例えば、水、有機溶媒(例えば、メタノール等アルコール類、アセトン等、ケトン類、ホルムアミド等のアミド類、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類、酢酸エチル等のエステル類、エーテル類等)、イオン性液体、及びこれらの混合溶媒を挙げることができる。 乳剤(乳剤層用塗布液)に用いられる溶媒の含有量は、乳剤を構成する成分(銀塩、バインダ等)の合計の質量に対して30質量%〜90質量%の範囲であり、50質量%〜80質量%の範囲であることが好ましい。
【0027】
<乳剤層の形成>
本発明における乳剤層を形成するに際して、支持体上に塗布されて乳剤層となる乳剤(銀塩のほか、バインダ、溶剤等を含有する液体)は、貯留タンクに一時的に貯留され、該貯留タンクから必要な量だけ排出されて送液設備を介して塗布工程に送液されることになる。送液設備としては、往復動ポンプが好ましく採用され、具体的には、プランジャーポンプやダイヤフラムポンプが使用される。
【0028】
本発明における乳剤層は、支持体上に存在する銀塩の銀換算量(本明細書中では「銀量」という)が、5g/m〜30g/mとなるように設けられることが好ましく、更に7g/m〜25g/mの範囲がより好ましい。
また、乳剤層の厚みは1μm〜20μmの範囲が好ましく、更に1μmから10μmの範囲がより好ましい。
【0029】
[下塗り層]
本発明の感光材料は、支持体と乳剤層の間に下塗り層を有してもよい。
この下塗り層は、非感光性の層であり、ゼラチン又はゼラチン及びSBRを含む層であることが好ましい。また、この下塗り層は、その他、架橋剤や界面活性剤等の添加剤を含有することができる。
なお、下塗り層の形成方法は特に限定されず、公知の層形成方法を適宜選択することができる。
【0030】
[保護層]
本発明の感光材料は、乳剤層上に保護層を設けてもよい。
本発明において「保護層」とは、ゼラチンや高分子ポリマーといったバインダからなる層を意味し、擦り傷防止や力学特性を改良する効果を発現するために感光性を有する乳剤層上に形成される。
保護層の厚みは0.01μm以上0.3μm以下が好ましい。
なお、保護層の塗布方法及び形成方法は特に限定されず、公知の塗布方法を適宜選択することができる。
【0031】
本発明の感光材料は、前述した、乳剤層、下塗り層、及び保護層の少なくとも1つの層にミョウバンを含むか、また、これらの層以外に、ミョウバンを含有するためのみに機能する層を別途設けたものであってもよい。
このように、本発明の感光材料を構成する層の少なくとも1つにミョウバンを含有させることで、乳剤層の高硬度化を達成させることができる。ミョウバンが乳剤層中に含まれる場合には、直接、乳剤層の高硬度化が可能となる。また、乳剤層以外の層にミョウバンを含有させた場合には、そのミョウバンが分散・拡散して乳剤層に到達することで、乳剤層の高硬度化が達成される。
【0032】
<ミョウバン>
本発明において用いられるミョウバンとは、1価の陽イオンの硫酸塩〔M(SO)〕と、3価の金属イオンの硫酸塩〔MIII(SO〕と、の複塩である。
本発明に用いられるミョウバンとしては、クロムミョウバン、カリミョウバンが挙げられるが、中でも、硬膜を円滑に進める点から、クロムミョウバンが好ましい。
このようなミョウバンの層中の濃度は、含有させる層によって異なるが、十分な膜強度を得る点から、5mg/m以上が好ましく、5〜200mg/mがより好ましく、5〜100mg/mが更に好ましい。特に、本発明においては、このような範囲でミョウバンを乳剤層に含有させることが好ましい。
【0033】
また、ミョウバンを層中に含有させる方法としては、ミョウバンを含有させた層形成用塗布液を用いて、所定の層を形成する方法、また、予め形成された層にミョウバンを導入・分散させる方法がある。
予め形成された層にミョウバンを導入・分散させる方法としては、予め形成された層を有する支持体を、ミョウバンを含有する溶液中に浸漬させる手法が用いられる。この手法として、具体的には、後述する本発明の導電膜の製造方法における「ミョウバン含有液浸漬方法」と同様の方法が用いられる。
【0034】
本発明の感光材料は、ミョウバンの添加効果により、乳剤層の硬度が十分に高くなる。この高硬度化については、乳剤層の膨潤率を測定することで検出することができる。
即ち、本発明の感光材料において、乳剤層の膨潤は、90%以下であることが好ましく、60%以下であることがより好ましく、50%以下であることが更に好ましい。膨潤率が小さいほど、膜強度が強くなるため好ましい。
ここで、膨潤率は以下のように定義する。
膨潤率(%)=100×((b)−(a))/(a)
上記式において、(a)は乾燥時の乳剤層膜厚、(b)は25℃の蒸留水に1分間浸漬した後の乳剤層膜厚を示している。
【0035】
乳剤層膜厚(a)の測定は、例えば、試料の断面を走査型電子顕微鏡で観察することによって測定できる。膨潤後の乳剤層膜厚(b)は、膨潤した試料を液体窒素により凍結乾燥した後の試料断面を走査型電子顕微鏡で観察することにより測定可能である。
【0036】
≪導電膜の製造方法≫
次に、本発明の導電膜の製造方法について説明する。
本発明の導電膜の製造方法では、支持体上に銀塩を含有する乳剤層を少なくとも有する導電膜形成用感光材料を露光し、現像処理することにより金属銀部を形成して導電膜を作製する金属銀形成工程と、該金属銀形成工程における前記現像処理の前に、前記導電膜形成用感光材料をミョウバン含有溶液に浸漬させ、当該導電膜形成用感光材料における支持体上の少なくとも1層にミョウバンを含有させるミョウバン含有溶液浸漬工程と、を有することを特徴とする。
この方法で用いられる導電膜形成用感光材料は、支持体上に銀塩を含有する乳剤層を少なくとも有するものであり、具体的には、前述した本発明の導電膜形成用感光材料において、いずれの層にもミョウバンが含まれていないものが好適である。
以下、本発明の導電膜の製造方法における各工程について説明する。
【0037】
本発明の導電膜の製造方法では、まず、感光材料をミョウバン含有液に浸漬した後(ミョウバン含有溶液浸漬工程)、当該感光材料を露光し、現像処理を施す(金属銀形成工程)。これにより、感光材料上には、金属銀部が形成される。その後、現像処理により形成された金属銀部を平滑化処理(例えば、カレンダー処理)してもよい。この平滑化処理により更に金属銀部の導電性を向上させることができる。
ここで、現像処理とは、露光により潜像核が形成された銀塩を銀に還元する現像と、当該潜像核が形成されなかった銀塩を溶解除去する定着と、を含むものである。
なお、金属銀部を形成する際には、金属銀部と光透過性部又は金属銀部と絶縁性部を形成してもよく、全面露光することでフイルムの全面に金属銀部を形成することもできる。
また、本発明によって得られる導電膜は、パターン露光によって金属銀部が支持体上に形成されたものであるが、パターン露光は走査露光方式であっても面露光方式であってもよい。
更に、金属銀部は露光部に形成される場合と、未露光部に形成される場合とがある。
【0038】
パターンの例としては、電磁波シールド膜の製造用にはメッシュ状のパターンであり、プリント基板の製造には、配線パターンであり、パターンの形状の更なる詳細は目的に応じて適宜調整することができる。
【0039】
本発明の導電膜の製造方法は、感光材料と現像処理の形態によって、次の3通りの形態が含まれる。
(1)物理現像核を含まない感光性ハロゲン化銀黒白感光材料を化学現像又は熱現像して金属銀部を該感光材料上に形成させる態様。
(2)物理現像核をハロゲン化銀乳剤層中に含む感光性ハロゲン化銀黒白感光材料を溶解物理現像して金属銀部を該感光材料上に形成させる態様。
(3)物理現像核を含まない感光性ハロゲン化銀黒白感光材料と、物理現像核を含む非感光性層を有する受像シートを重ね合わせて拡散転写現像して金属銀部を非感光性受像シート上に形成させる態様。
【0040】
いずれの態様もパターン露光時の露光部に現像銀が形成されるネガティブプロセスの態様と逆にパターン露光時の未露光部に現像銀が形成されるポジティブプロセスの態様が可能である。例えば、上記(1)の態様の場合には、現像処理にリバーサル処理プロセスを使用することにより、ポジティブプロセスの態様となる。また、上記(3)の態様の場合には、感光性ハロゲン化銀含有感光層として、内部潜像型乳剤を用い、現像液として表面現像液を使用することにより、ネガティブプロセスの態様となる。
【0041】
ここでいう化学現像、熱現像、溶解物理現像、及び拡散転写現像は、当業界で通常用いられている用語どおりの意味であり、写真化学の一般教科書、例えば菊地真一著「写真化学」(共立出版社刊行)、C.E.K.Mees編「The Theory of Photographic Prosess 第4版」等に解説されている。
【0042】
[ミョウバン含有液への浸漬]
本発明の導電膜の製造方法では、支持体上に銀塩を含有する乳剤層を少なくとも有する感光材料を、ミョウバン含有溶液に浸漬させる。
ここで用いられるミョウバン含有溶液は、ミョウバンとこれを溶解する溶媒とを含むものであればよい。
このミョウバン含有溶液に用いられるミョウバンは、前述した本発明の感光材料に用いられるミョウバンと同様のものが挙げられ、好ましい例も同様である。
また、ミョウバン含有溶液に用いられる溶媒としては、上述したミョウバンを含有する水溶液が用いられる。
また、ミョウバン含有水溶液中のミョウバンの濃度は、硬膜を円滑に進める点から、0.001質量%〜10質量%が好ましく、0.05質量%〜10質量%がより好ましく、0.1質量%〜5質量%が更に好ましい。
【0043】
更に、ミョウバン含有溶液中へ感光材料を浸漬させる際の条件としては、以下に示すものが好ましい。
即ち、ミョウバン含有溶液の温度は、10℃〜40℃であることが好ましく、また、浸漬時間は10秒〜3分が好ましい。
上記のようにして、ミョウバン含有溶液に浸漬させる感光材料を浸漬させることで、感光材料における支持体上の層の少なくとも1つにミョウバンを含有させることができる(本発明の導電膜形成感光材料となる。)。
【0044】
[露光]
続いて、本発明の導電膜の製造方法では、ミョウバン含有溶液に浸漬させた後の感光材料に対し、露光を行う。
露光は、電磁波を用いて行うことができる。電磁波としては、例えば、可視光線、紫外線等の光、X線等の放射線等が挙げられる。更に露光には波長分布を有する光源を利用してもよく、特定の波長の光源を用いてもよい。
本発明では、パターン露光が行われるが、露光の際のパターンの形態としては、電磁波シールド膜の製造用にはメッシュ状のパターンであり、プリント基板の製造には、配線パターンである。
【0045】
[現像処理]
本発明の導電膜の製造方法では、感光材料を露光した後、更に現像処理が施される。
現像処理は、銀塩写真フイルムや印画紙、印刷製版用フイルム、フォトマスク用エマルジョンマスク等に用いられる通常の現像処理の技術を用いることができる。
現像液については特に限定はしないが、PQ現像液、MQ現像液、MAA現像液等を用いることもできる。市販品としては、例えば、富士フイルム社処方のCN−16、CR−56、CP45X、FD−3、パピトールや、KODAK社処方のC−41、E−6、RA−4、Dsd−19、D−72等の現像液、又はそのキットに含まれる現像液を用いることができる。また、リス現像液を用いることもできる。リス現像液としては、KODAK社処方のD85等を用いることができる。
【0046】
本発明の導電膜の製造方法では、上記の露光及び現像処理を行うことにより露光部に金属銀部が形成されると共に、未露光部に後述する光透過性部が形成される。また、上記現像処理に続き、必要によりサンプルを水洗し、脱バインダ処理を行うことにより、更に導電性の高いフイルムを得ることができる。なお、本発明では、現像温度、定着温度及び水洗温度は25℃以下で行うことが好ましい。
【0047】
現像処理で用いられる現像液には、画質を向上させる目的で、画質向上剤を含有することができる。上記画質向上剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール等の含窒素へテロ環化合物を挙げることができる。また、リス現像液を利用する場合は、特にポリエチレングリコールを使用することも好ましい。
【0048】
本発明の導電膜の製造方法における現像処理は、未露光部分の銀塩を除去して安定化させる目的で行われる定着処理を含んでいてもよい。
本発明の導電膜の製造方法において、定着処理は、銀塩写真フイルムや印画紙、印刷製版用フイルム、フォトマスク用エマルジョンマスク等に用いられる定着処理の技術を用いることができる。
この定着処理により、現像処理での金属銀部の形成に加えて、更に金属銀部での金属銀量の増加が起きる。
【0049】
本発明の導電膜の製造方法では、上述のような定着処理後に、感光材料中のミョウバンを除去する目的で、酸処理を行ってもよい。
この酸処理は、硫酸溶液、クエン酸溶液または塩酸溶液に感光材料を浸漬させることで行われることが好ましい。
また、上記の浸漬は、溶液温度は10℃〜40℃が好ましく、また、浸漬時間は10秒〜3分で行うことが好ましい。
【0050】
現像処理後の露光部に含まれる金属銀の質量は、露光前の露光部に含まれていた銀の質量に対して50質量%以上の含有率であることが好ましく、80質量%以上であることが更に好ましい。露光部に含まれる銀の質量が露光前の露光部に含まれていた銀の質量に対して50質量%以上であれば、高い導電性を得やすいため好ましい。
【0051】
現像処理後の露光部に含まれる金属銀部は銀及び、非導電性の高分子からなり、銀/非導電性高分子の体積比率が2/1以上であることを好ましく、3/1以上であることが更に好ましい。
【0052】
本発明における現像処理後の階調は、特に限定されるものではないが、4.0を超えることが好ましい。現像処理後の階調が4.0を超えると、光透過性部の透明性を高く保ったまま、導電性金属部の導電性を高めることができる。階調を4.0以上にする手段としては、例えば、前述のロジウムイオン、イリジウムイオンのドープが挙げられる。
【0053】
[酸化処理]
本発明の導電膜の製造方法では、現像処理後の金属銀部は、好ましくは酸化処理が行われる。酸化処理を行うことにより、例えば、光透過性部に金属が僅かに沈着していた場合に、該金属を除去し、光透過性部の透過性をほぼ100%にすることができる。
【0054】
上記酸化処理としては、例えば、Fe(III)イオン処理等、種々の酸化剤を用いた公知の方法が挙げられる。酸化処理は、銀塩含有層の露光及び現像処理後に行うことができる。
【0055】
本発明では、更に露光及び現像処理後の金属銀部を、Pdを含有する溶液で処理することもできる。Pdは、2価のパラジウムイオンであっても金属パラジウムであってもよい。この処理により金属銀部の黒色が経時変化することを抑制できる。
【0056】
なお、本発明の導電膜の製造方法においては、線幅、開口率、銀含有量を特定したメッシュ状の金属銀部を、露光・現像処理によって直接支持体上に形成するため、十分な表面抵抗率を有することから、更に金属銀部に物理現象及び/又はメッキ処理を施してあらためて導電性を付与する必要がない。このため、簡易な工程で透光性の導電膜を製造することができる。
【0057】
上述の通り、本発明の透光性の導電膜は、車両のデフロスタ(霜取り装置)、窓ガラス等の一部として使用可能で、電流を流すことで発熱し発熱シートとしても機能し、また、タッチパネル用電極、無機EL素子、有機EL素子或いは太陽電池の電極、又はプリント基板としても使用することができる。
【0058】
[還元処理]
本発明の導電膜の製造方法において、現像処理後に還元水溶液に浸漬することで、好ましい導電性の高いフイルムを得ることができる。
還元水溶液としては、亜硫酸ナトリム水溶液、ハイドロキノン水溶液、パラフェニレンジアミン水溶液、シュウ酸水溶液等を用いることができ、水溶液pHは10以上とすることが更に好ましい。
【0059】
[平滑化処理]
本発明の導電膜の製造方法では、現像処理済みの金属銀部(全面金属銀部、金属メッシュ状パターン部又は金属配線パターン部)に平滑化処理を施す。これによって金属銀部の導電性が顕著に増大する。更に、金属銀部と光透過性部の面積を好適に設計することで、高い電磁波シールド性と高い透光性とを同時に有し、且つ、メッシュ部が黒色の透光性電磁波シールド膜や、各種電子デバイスの透明電極、透明面状発熱体等として有用な導電性を兼ね備えた導電膜が得られる。
【0060】
平滑化処理は、例えば、カレンダーロールにより行うことができる。カレンダーロールは、通常、一対のロールからなる。以下、カレンダーロールを用いた平滑化処理をカレンダー処理と記す。
【0061】
カレンダー処理に用いられるロールとしては、エポキシ、ポリイミド、ポリアミド、ポリイミドアミド等の樹脂製ロール又は金属製ロールが用いられる。特に、片面に乳剤層を有する場合は、しわの発生を抑制するために、以下の条件にてカレンダー処理することが好ましい。
【0062】
(1) カレンダー処理は互いに対向して配置された第1カレンダーロールと第2カレンダーロールを用いて導電膜前駆体を押圧すること。
(2) 支持体に接触する第1カレンダーロールが樹脂製ロールであること。
(3) 導電膜前駆体の金属銀部に接触する第2カレンダーロールが金属製ロールであること。
(4) 金属製ロールの表面が鏡面加工されていること。
(5) 金属製ロールの表面がエンボス加工されていること。
(6) エンボス加工された金属製ロールの表面粗さは、最大高さRmaxで0.05〜0.8sであること。
(7) 感光材料の乳剤層は、銀/バインダ体積比が1/1以上であること。
(8) カレンダー処理は、導電膜前駆体に対して荷重(線圧力)200kgf/cm(1960N/cm)以上(好ましくは200〜600kgf/cm(1960〜5880N/cm)、より好ましくは300〜600kgf/cm(2940〜5880N/cm))で行うこと。
であること。
【0063】
カレンダー処理の適用温度は10℃(温調なし)〜100℃が好ましく、より好ましい温度は、金属メッシュ状パターンや金属配線パターンの画線密度や形状、バインダ種によって異なるが、おおよそ10℃(温調なし)〜50℃の範囲にある。
【0064】
すなわち、本発明の導電膜の製造方法によれば、支持体上に銀塩を含有する乳剤層を有する感光材料にミョウバンを分散させた後、この感光材料を露光し現像処理することで、支持体上に0.1g/m〜30g/mである銀を含む金属銀部を有し、表面抵抗値が1.9未満である高い導電膜(但し、金属銀部上に更に導電性層は形成されていない)を簡便で低コストで得ることができる。
【0065】
[温水に浸漬又は蒸気に接触させる処理]
本発明の導電膜の製造方法では、支持体上に導電性金属部を形成した後、前記の導電性金属部が形成された支持体を温水ないしはそれ以上の温度の加熱水に浸漬させるか又は水蒸気に接触させる。これにより短時間で簡便に導電性及び透明性を向上させることができる。水溶性バインダの一部が除去されて金属(導電性物質)同士の結合部位が増加しているものと考えられる。
本処理は、現像処理後にも実施できるが、平滑化処理後に行うことが望ましい。
【0066】
支持体を浸漬させる温水ないしはそれ以上の温度の加熱水の温度は好ましくは60℃以上100℃以下であり、より好ましくは80℃〜100℃である。また、支持体に接触させる水蒸気の温度は、1気圧で100℃以上140℃以下が好ましい。温水ないしはそれ以上の温度の加熱水への浸漬時間又は蒸気への接触時間は、使用する水溶性バインダの種類によって異なるが、支持体のサイズが60cm×1mの場合、約10秒〜約5分程度が好ましく、約1分〜約5分が更に好ましい。
【0067】
[めっき処理]
本発明においては、上記平滑化処理を行えばよいが、金属銀部に対してめっき処理を行ってもよい。めっき処理により、更に表面抵抗を低減でき、導電性を高めることができる。平滑化処理は、めっき処理の前段又は後段のいずれで行ってもよいが、めっき処理の前段で行うことで、めっき処理が効率化され均一なめっき層が形成される。めっき処理としては、電解めっきでも無電解めっきでもよい。まためっき層の構成材料は十分な導電性を有する金属が好ましく、銅が好ましい。
【0068】
なお、本発明は、下記表1に記載の公開公報及び表2に記載の国際公開パンフレットの技術と適宜組合わせて使用することができる。なお、下記表1、表2中では、公報、パンフレットの番号のみを記載しており、「特開」、「号公報」、「号パンフレット」等の表記は省略している。
【0069】
【表1】

【0070】
【表2】

【実施例】
【0071】
以下に本発明の実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。「%」は、質量%を意味する。なお、以下の実施例に示される材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0072】
〔第1実施例〕
<実施例1−1>
[乳剤の調製]
・1液:
水 750ml
フタル化処理ゼラチン 20g
塩化ナトリウム 3g
1,3−ジメチルイミダゾリジン−2−チオン 20mg
ベンゼンチオスルホン酸ナトリウム 10mg
クエン酸 0.7g
・2液
水 300ml
硝酸銀 150g
・3液
水 300ml
塩化ナトリウム 38g
臭化カリウム 32g
ヘキサクロロイリジウム(III)酸カリウム
(0.005%KCl 20%水溶液) 5ml
ヘキサクロロロジウム酸アンモニウム
(0.001%NaCl 20%水溶液) 7ml
【0073】
3液に用いるヘキサクロロイリジウム(III)酸カリウム(0.005%KCl 20%水溶液)及びヘキサクロロロジウム酸アンモニウム(0.001%NaCl 20%水溶液)は、それぞれの錯体粉末をそれぞれKCl20%水溶液、NaCl20%水溶液に溶解し、40℃で120分間加熱して調製した。
【0074】
38℃、pH4.5に保たれた1液に、2液と3液の各々90%に相当する量を攪拌しながら同時に20分間にわたって加え、0.16μmの核粒子を形成した。続いて下記4液、5液を8分間にわたって加え、更に、2液と3液の残りの10%の量を2分間にわたって加え、0.21μmまで成長させた。更に、ヨウ化カリウム0.15gを加え5分間熟成し粒子形成を終了した。
【0075】
・4液
水 100ml
硝酸銀 50g
・5液
水 100ml
塩化ナトリウム 13g
臭化カリウム 11g
黄血塩 5mg
【0076】
その後、常法に従ってフロキュレーション法によって水洗した。具体的には、温度を35℃に下げ、硫酸を用いてハロゲン化銀が沈降するまでpHを下げた(pH3.6±0.2の範囲であった)。次に、上澄み液を約3リットル除去した(第一水洗)。更に3リットルの蒸留水を加えてから、ハロゲン化銀が沈降するまで硫酸を加えた。再度、上澄み液を3リットル除去した(第二水洗)。第二水洗と同じ操作を更に1回繰り返して(第三水洗)、水洗・脱塩行程を終了した。水洗・脱塩後の乳剤をpH6.4、pAg7.5に調整し、安定剤として1,3,3a,7−テトラアザインデン100mg、防腐剤としてプロキセル(商品名、ICI Co.,Ltd.製)100mgを加えた。最終的に塩化銀を70モル%、沃化銀を0.08モル%含む平均粒子径0.22μm、変動係数9%のヨウ塩臭化銀立方体粒子乳剤を得た。最終的に乳剤として、pH=6.4、pAg=7.5、電導度=4000μS/cm、密度=1.4×10kg/m、粘度=20mPa・sとなった。
【0077】
[塗布試料の作製]
上記乳剤に下記化合物(Cpd−1)8.0×10−4モル/モルAg、1,3,3a,7−テトラアザインデン1.2×10−4モル/モルAgを添加しよく混合した。また、上記乳剤に更に、クロムミョウバンを塗布量が12.5mg/mとなる量、添加した。次いで、膨潤率調製のため必要により、上記乳剤に下記化合物(Cpd−2)を添加し、クエン酸を用いて塗布液pHを5.6に調整した。
得られた液を乳剤層用塗布液とした。
【0078】
【化1】

【0079】
厚み100μmのポリエチレンテレフタレート(PET)上に、ゼラチンを用いた下塗り層を形成した後、乳剤を用いて上記のように調製した乳剤層用塗布液を、かかる下塗り層上に銀量:5g/m、ゼラチン量:0.4g/mになるように塗布し、その後、乾燥させたものを塗布試料(導電膜形成用感光材料)とした。
【0080】
得られた塗布試料は、乳剤層の銀/バインダ体積比(銀/GEL比(vol))が2.4/1であり、本発明の導電膜形成用感光材料に好ましく用いられる銀/バインダ体積比率1/1以上を満足する。
【0081】
[露光、現像処理]
次いで、乾燥させた塗布膜に、ライン/スペース=5μm/195μmの現像銀像を与えうる格子状のフォトマスクライン/スペース=195μm/5μm(ピッチ200μm)の、スペースが格子状であるフォトマスクを介して高圧水銀ランプを光源とした平行光を用いて露光し、引き続き現像、定着、水洗、乾燥という工程を含む処理を行った。
【0082】
(現像液の組成)
現像液1リットル中に、以下の化合物が含まれる。
ハイドロキノン 15g/L
亜硫酸ナトリウム 30g/L
炭酸カリウム 40g/L
エチレンジアミン・四酢酸 2g/L
臭化カリウム 3g/L
ポリエチレングリコール2000 1g/L
水酸化カリウム 4g/L
pH 10.5に調整
【0083】
(定着液の組成)
定着液1リットル中に、以下の化合物が含まれる。
チオシアン酸カリウム200g/L
pH 6.2に調整
【0084】
[カレンダー処理]
上記のように現像処理したサンプル(導電膜前駆体)に対して以下に示す条件でカレンダー処理を行った。
カレンダーロールとして、金属銀部に対向する金属製ロール(鉄芯+ハードクロムメッキ、鏡面加工、ロール直径250mm)と、支持体に対向する樹脂製ロール(鉄芯+エポキシ樹脂コート、ロール直径250mm)を用い、これら金属製ロールと樹脂製ロール間にサンプルを通し、荷重400kgf/cm(1960N/cm)にてサンプルに対してカレンダー処理を行うことにより、実施例1に係る導電膜を得た。このとき、サンプルをカレンダー処理工程に投入する際の搬送力(投入搬送力P1)は20(kg/幅)、カレンダー処理を終えたサンプルをカレンダー処理工程から排出する際の搬送力(排出搬送力P2)は20(kg/幅)で、P1/P2=1とした。また、サンプルの搬送速度を10m/分とした。
これにより、導電膜を得た。得られた導電膜を実施例1−1の導電膜とした。
【0085】
<実施例1−2>
実施例1−1において、クロムミョウバンの添加量を、その塗布量が25mg/mとなる量に変えた以外は実施例1−1と同様にして、導電膜を形成した。
【0086】
<実施例2−1>
実施例1において、乳剤層中にクロムミョウバンを用いず、クロムミョウバンの塗布量が25mg/mとなる保護層を、乳剤層上に形成した以外は実施例1−1と同様にして、導電膜を形成した。
なお、保護層は以下のようにして形成されたものである。
即ち、乳剤層上に、クロムミョウバンが上記の塗布量となる量踏まれ、更にゼラチン塗布量が0.3g/mとなるような量のゼラチンを含有する保護層用塗布液を塗布し、その後、乾燥させて、保護層を形成した。
【0087】
<実施例2−2>
実施例2−1において、クロムミョウバンの塗布量が50mg/mとなる量に変えた以外は実施例2−1と同様にして、導電膜を形成した。
【0088】
<比較例1−1>
実施例1−1において、乳剤層へのクロムミョウバンの添加を行わなかった以外は実施例1と同様にして、導電膜を形成した。
【0089】
<比較例2−1>
実施例2−1において、保護層へのクロムミョウバンの添加を行わなかった以外は実施例2−1と同様にして、導電膜を形成した。
【0090】
≪評価≫
−膨潤率の測定−
実施例1−1、1−2、2−1、2−2、比較例1−1、2−1において、形成された塗布試料(導電膜形成用感光材料)中の乳剤層の膨潤率を、前述の方法で測定した。
結果を表3に示す。
【0091】
−現像装置適性−
実施例1−1、1−2、2−1、2−2、比較例1−1、2−1において、形成された塗布試料(導電膜形成用感光材料)を、自動現像機(FG710、富士フィルムグラフィックシステムズ株式会社製)に供し、乳剤層の膜剥れについて目視にて評価した。
結果を表1に示す。
【0092】
−表面抵抗値の測定−
実施例1−1、1−2、2−1、2−2、3比較例1、2、3にて得られた導電膜について、その表面抵抗値を、Loresta−GP(4端子法測定、三菱化学社製)によって測定した。
結果を表1に示す。
【0093】
【表3】

【0094】
<実施例3−1>
実施例1−1において、クロムミョウバンを添加しないこと以外は同様にして感光材料を得た。
その感光材料を、露光後であって、現像処理の前に、クロムミョウバンの濃度1質量%)のクロムミョウバン溶液に1分間浸漬させた。その際、溶液の温度は25℃であった。
浸漬後、実施例1−1と同様にして定着処理まで行った。その後、定着処理後の感光材料を硫酸溶液(pH1.5)に浸漬させて酸処理をし、感光材料中のミョウバンを除去した。
その後、実施例1−1と同様にして、水洗、乾燥を行い、更に、カレンダー処理を施して、導電膜を得た。
得られた導電膜を実施例3−1の導電膜とした。
【0095】
<比較例3−1>
実施例3−1において、ミョウバン溶液への浸漬を行わなかった以外は実施例3−1と同様にして、導電膜を形成した。
【0096】
≪評価≫
得られた実施例3−1及び比較例3−1の導電膜について、実施例1−1の導電膜と同様にして、クロムミョウバン溶液への浸漬後の感光材料について、膨潤率の測定、及び現像装置適性の評価を行い、更に、この感光材料から得られた導電膜について、表面抵抗値の測定を行った。
結果を下記表4に示す。
【0097】
【表4】

【0098】
上記表3及び表4に示されるように、ミョウバンを含有する層を有する、実施例における感光材料は、乳剤層の膨潤率が小さく、乳剤層の硬度が十分に高いことが分かり、また、自動現像機に適用しても膜剥れが起きず、製造適性にも優れていることが分かった。更に、この感光材料から得られた導電膜は、表面抵抗値が低く、高い導電性を示していることが分かった。
【0099】
なお、本発明に係る導電膜の製造方法は、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に銀塩を含有する乳剤層を有し、
前記支持体上の少なくとも1層がミョウバンを含有する導電膜形成用感光材料。
【請求項2】
前記ミョウバンがクロムミョウバンである請求項1に記載の導電膜形成用感光材料。
【請求項3】
前記ミョウバンを含有する層が乳剤層又は乳剤層に隣接する層である請求項1又は請求項2に記載の導電膜形成用感光材料。
【請求項4】
前記ミョウバンを含有する層が乳剤層である請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の導電膜形成用感光材料。
【請求項5】
前記乳剤層がバインダを更に含有しており、当該乳剤層中の銀と該バインダとの体積比率(銀/バインダ)が1/1以上である請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の導電膜形成用感光材料。
【請求項6】
前記乳剤層は、銀量が5g/m以上となる層である請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の導電膜形成用感光材料。
【請求項7】
前記ミョウバンを含有する層は、膨潤率が90%以下である請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の導電膜形成用感光材料。
【請求項8】
支持体上に銀塩を含有する乳剤層を少なくとも有する導電膜形成用感光材料を露光し、現像処理することにより金属銀部を形成して導電膜を作製する金属銀形成工程と、
該金属銀形成工程における前記現像処理の前に、前記導電膜形成用感光材料をミョウバン含有溶液に浸漬させ、当該導電膜形成用感光材料における支持体上の少なくとも1層にミョウバンを含有させるミョウバン含有溶液浸漬工程と、
を有する導電膜の製造方法。
【請求項9】
前記金属銀形成工程において、前記現像処理後に、前記導電膜形成感光材料を定着液に浸漬させる定着処理を更に含むこと請求項8に記載の導電膜の製造方法。
【請求項10】
前記定着処理において、現像処理での金属銀部の形成に加えて、更に金属銀部での金属銀量の増加が起きる請求項9に記載の導電膜の製造方法。
【請求項11】
前記金属銀形成工程において、前記定着処理後、前記導電膜形成感光材料中のミョウバンを除去する酸処理を更に含む請求項9又は請求項10に記載の導電膜の製造方法。
【請求項12】
前記酸処理が、硫酸溶液、クエン酸溶液、又は塩酸溶液を用いて行われる請求項11に記載の導電膜の製造方法。
【請求項13】
前記乳剤層がバインダを更に含有しており、当該乳剤層中の銀と該バインダとの体積比率(銀/バインダ)が1/1以上である請求項8〜請求項12のいずれか1項に記載の導電膜の製造方法。

【公開番号】特開2011−131500(P2011−131500A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−293139(P2009−293139)
【出願日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】