小便器の洗浄装置
【課題】小便器の使用を自動判断して洗浄を行うことができるとともに、安価で簡易な構成の洗浄装置を提供する。
【解決手段】水洗弁を有する小便器の裏面に設置され、小便器の振動を検出する振動検出器と、振動検出器で検出した振動信号から小便器に固有の共振周波数を含む所定帯域の信号を抽出するフィルタ回路と、フィルタ回路で抽出した信号の振幅レベルに基づいて、小便器の水洗弁の開閉制御を行う駆動部とを備える小便器を提供する。安価で簡易な構成の振動検出器を用いることにより、安価で且つ簡易な洗浄装置で小便器の使用を的確に判断し、小便器の洗浄を確実に行うことができる。
【解決手段】水洗弁を有する小便器の裏面に設置され、小便器の振動を検出する振動検出器と、振動検出器で検出した振動信号から小便器に固有の共振周波数を含む所定帯域の信号を抽出するフィルタ回路と、フィルタ回路で抽出した信号の振幅レベルに基づいて、小便器の水洗弁の開閉制御を行う駆動部とを備える小便器を提供する。安価で簡易な構成の振動検出器を用いることにより、安価で且つ簡易な洗浄装置で小便器の使用を的確に判断し、小便器の洗浄を確実に行うことができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小便器の洗浄装置に関し、より詳細には、使用後に自動洗浄を行う小便器に使用して好適な洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
便器の洗浄技術においては、使用後にレバー操作などにより水を流して便器を洗浄する手法が一般的である。しかしながら、特に男子用の小便器においては、使用後に、このレバー操作による洗浄が行われない場合もしばしば見かけられる。
【0003】
上記問題を解決するために、従来、一定時間毎に水を流す洗浄方法が実施されている。しかしながら、この方法では、使用されていないときにも水が流れるので、水資源の無駄遣いになるといった問題があった。この問題を解決するために、人感センサを用いた自動洗浄装置が開発されている。
【0004】
従来開発されている自動洗浄装置では、使用後に使用者が小便器から離れたことを人感センサで検知して、自動的に水を流して便器を洗浄する。このような便器の自動洗浄装置では、人感センサとして、例えば赤外線を用いた装置(例えば、特許文献1参照)や、マイクロ波を利用したドップラセンサを用いた装置(例えば、特許文献2及び3参照)が提案されている。
【0005】
【特許文献1】特開2003−96870号公報
【特許文献2】特開2004−285765号公報
【特許文献3】特開2002−286833号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のように、従来、様々な小便器の自動洗浄装置が提案されているが、例えば、特許文献1に記載されているような赤外線による人感センサを用いた自動洗浄装置では、次のような問題がある。特許文献1の自動洗浄装置では、図18に示すように小便器の上面部に人感センサが設けられている。しかしながら、このような構成では、陶器で製造される小便器の上面部にセンサを設置する窓を設けるための製造工程が別途必要になる。この場合、製造工程の増加による製品価格の上昇等を招くことになる。
【0007】
上記問題をより具体的に説明すると、一般に陶製の小便器にセンサの設置窓を設けるためには、窓部を形成するための型などを別途に設ける工程が必要になる。また、このような窓部は小便器の構造的な強度を弱くするので、小便器を安定に製造するためには、製造工程の改善や、製造工程に時間的な余裕を持たせる必要が生じる。さらに、窓部にセンサを設置する工程も必要となる。これらの製造工程の改善や増加は、製造コストの上昇の要因となる。
【0008】
上記問題を解決するために、従来、人感センサを小便器の上方の配管などに別体として設けることも実施されている。しかしながら、人感センサを小便器から離して設けた場合には、小便器が使用されていない時にも、人体などが人感センサの前を通過するだけで人感センサが反応し、誤動作するおそれがある。また、人感センサを特に小便器の上方に設けた場合には、子供等の身長の低い使用者の検知が困難になるという問題も生じる。さらに、人感センサを別体として設けた場合には、人感センサが目立つため、悪戯等による破損の被害が発生しやすくなる。
【0009】
一方、特許文献2に記載されている洗浄装置では、小便器の裏面に設置されたドップラセンサから10GHz程度のマイクロ波を発射し、小便器を透過したマイクロ波が使用者から反射して戻ってくるマイクロ波を受信する。したがって、このような洗浄装置では、小便器を透過するマイクロ波を検出するので、小便器に特別なセンサ窓等を設ける必要はない。しかしながら、10GHzのマイクロ波の発信器や受信機の設備が極めて高価であるという問題がある。
【0010】
本発明は、上述した様々な問題を解決するためになされたものであり、本発明の目的は、小便器の使用を自動判断して洗浄を行うことができるとともに、安価で簡易な構成の洗浄装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、第1の本発明の小便器の洗浄装置は、水洗弁を有する小便器の裏面に設置された振動検出器と、フィルタ回路と、駆動部とを備える構成とし、各部の機能は次の通りとした。振動検出部は、小便器の振動を検出する。フィルタ回路は、振動検出器で検出した振動信号から小便器に固有の共振周波数を含む所定帯域の信号を抽出する。そして、駆動部は、フィルタ回路で抽出した信号のレベルに基づいて、小便器の水洗弁の開閉制御を行う。
【0012】
また、上記課題を解決するために、第2の本発明の小便器の洗浄装置は、小便器の裏面に設置された第1の振動検出器と、小便器の裏面の長手方向に第1の振動検出器から所定距離離して設置された第2の振動検出器とを備える構成とした。また、第2の本発明の洗浄装置は、第1〜3フィルタ回路と、位相差検出回路と、駆動部とを構成とした。そして、各部の機能は次の通りとした。第1及び第2の振動検出器は、小便器の振動を検出する。第1フィルタ回路は、第1及び第2の振動検出器の少なくとも一方で検出した振動信号から小便器に固有の共振周波数を含む所定帯域の第1信号を抽出する。第2フィルタ回路は、第1の振動検出器で検出した振動信号から小便器に固有の共振周波数を含む所定帯域の第2信号を抽出する。第3フィルタ回路は、第2の振動検出器で検出した振動信号から小便器に固有の共振周波数を含む所定帯域の第3信号を抽出する。位相差検出回路は、第2及び第3信号の位相差を検出する。そして、駆動部は、第1信号の振幅レベルと、第2及び第3信号の位相差とに基づいて、小便器の水洗弁の開閉制御を行う。
【0013】
なお、本明細書で言う「小便器の振動を検出する振動検出器」は、例えば圧電素子のように小便器の振動を直接検出する振動検出器のみならず、例えばマイクロフォンのように小便器の振動を空気振動を介して(音声で)間接的に検出する振動検出器も含む。
【発明の効果】
【0014】
本発明の小便器の洗浄装置では、小便器の裏面に設置された振動検出器で検出した振動信号から小便器に固有の共振周波数成分の信号を抽出し、その信号(振幅レベルまたは振幅レベル及び位相差)に基づいてユーザが小便器を使用しているか否かの判断を行う。この際、振動検出に用いる振動検出器としては、後述するように、安価で簡易な構成の振動検出器を用いることができる。それゆえ、本発明によれば、安価で且つ簡易な設備で小便器の使用を的確に判断し、小便器の洗浄を確実に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を、添付図面を参照しながら説明する。本発明の実施形態は以下の順で説明する。なお、本発明は以下の例に限定されるものではない。
1.第1の実施形態:基本構成例
2.第2の実施形態:2つの振動検出器を備える構成例
3.第3の実施形態:フーリエ変換回路部を備える構成例
4.第4の実施形態:2つの振動検出器及びフーリエ変換回路部を備える構成例
【0016】
[第1の実施形態]
[装置構成]
図1は、本発明に係る小便器の洗浄装置の第1の実施形態の構成例を示すブロック図である。本実施形態の洗浄装置100は、図1に示すように、小便器1のリム部1bの裏面に設置された振動検出素子2と、適応型ローパスフィルタ3と、バンドパスフィルタ4と、減算器5とを備える。また、洗浄装置100は、2つのレベル検出器6及び7と、比率計算部8と、比較部9と、判定信号出力回路10と、電源11とを備える。なお、図1には示していないが、洗浄装置100の各部は電源11から電力供給されている。ただし、電力供給の形態はこれに限定されず、外部電源から電力供給を行ってもよい。
【0017】
小便器1は、陶製の小便器であり、尿水が主に当たるリム部1bと、その上下端にそれぞれ設けられた上面部1a及び底面部1cとから構成される。すなわち、本実施形態の小便器1は、従来使用されている周知のものである。陶製の小便器1は、外力が与えられた際に固有の共振周波数で振動する性質を有している。この共振周波数は約2.5kHzであり、小便器1が陶製であれば、小便器1の材質や形状が大幅に変更されない限り、その値はほぼ変わらない。
【0018】
ここで、本実施形態の洗浄装置100を構成する各部の機能を簡単に説明する。
【0019】
振動検出素子2(振動検出器)は、小便器1の振動を検出して、その振動に対応した電圧等の信号(図1中のSa:以下、振動信号ともいう)を出力する。本実施形態では、振動検出素子2として、振動を電圧に変換する圧電素子を用いた。
【0020】
図2は、本実施形態で用いた圧電素子の概略構成図である。振動検出素子2は、板状の圧電部材50と、その上下面に形成された2つの電極51及び52とで構成される。また、電極51及び52は、リード線53を介して適応型ローパスフィルタ3に接続されている。なお、振動検出素子2は、両面粘着テープを用いて小便器1に接着固定する。振動検出素子2の配置位置は、小便器1のサイズや振動検出素子2の感度等により適宜変更し得るが、十分な振幅レベルの振動信号を検出するために、尿水が当たる可能性の高い位置の近傍が望ましい。
【0021】
なお、小便器1の使用時の振動には、尿水が小便器1に当たったときの振動成分(小便器1に固有の共振周波数を含む所定帯域の振動成分)だけでなく、雑音による振動成分が含まれる。その主な雑音としては、例えば配管を流れる水の音(振動)や換気扇などの小便器周辺で恒常的に存在する背景雑音(任意の周波数特性を有する)や、例えば人の移動(足音)や声、エレベータの移動等の突発的な雑音がある。
【0022】
適応型ローパスフィルタ3は、振動検出素子2の出力端子に接続されており、振動検出素子2の出力信号Saから、上述した恒常的な背景雑音(配管等の雑音)を除去する。適応型ローパスフィルタ3としては、最小2乗平均(LMS:Least Mean Square)ローパスフィルタを用い得る。この場合、適応型ローパスフィルタ3は、単位遅延素子を縦続して接続した構成となる。そして、適応型ローパスフィルタ3は、単位遅延素子の各段の出力を重み付け加算すると共に、各段の出力を最小2乗法等により計算して重み付けを定めるような構成となる。
【0023】
バンドパスフィルタ4(フィルタ回路)は、適応型ローパスフィルタ3の出力端子に接続されており、適応型ローパスフィルタ3の出力信号(図1中の信号Sb)から、小便器1の共振周波数を含む(中心周波数とする)所定帯域の周波数信号成分(図1中の信号Sc)を抽出する。
【0024】
減算器5は、適応型ローパスフィルタ3の出力端子及びバンドパスフィルタ4の出力端子に接続されている。減算器5は、適応型ローパスフィルタ3の出力信号Sbとバンドパスフィルタ4の出力信号Scとの差を計算し、その差信号(図1中の信号Sd)を出力する。すなわち、減算器5は、振動検出素子2で検出された検出信号のうち、主に、上述した突発的な雑音の信号成分を含んだ信号(差信号Sd)を出力する。
【0025】
レベル検出部6及び7は、それぞれ、バンドパスフィルタ4からの出力信号Sc及び減算器5からの出力信号Sdの振幅レベル(Lc及びLd)を検出する。より具体的には、バンドパスフィルタ4からの出力信号Sc及び減算器5からの出力信号Sdのエンベロープ(包絡線)を検出する。
【0026】
比率計算部8は、レベル検出部6及び7の出力端子に接続されており、レベル検出部6及び7からそれぞれ出力されたレベル信号Lc及びLdのレベル比率Lr=Lc/Ldを計算して出力する。すなわち、比率計算部8は、小便器1に固有の共振周波数を含む所定帯域の信号成分が雑音成分に対してどの程度の割合となるかを算出する。
【0027】
比較部9(駆動部)は、比率計算部8及び判定信号出力回路10の出力端子に接続されている。比較部9は、比率計算部8から出力されたレベル比率Lrの信号と判定信号出力回路10の出力信号P1との大小関係を判定して、ユーザが小便器1を使用しているか否かの判定をする。また、比較部9の出力端子は水洗弁12に接続されており、比較部9の判定結果に基づいて、水洗弁12の開閉制御を行う。
【0028】
判定信号出力回路10は、コンデンサ10aと可変抵抗器10bとで構成され、可変抵抗器10aは電源11に接続されている。判定信号出力回路10は、可変抵抗器10aによりコンデンサ10bにかかる電圧、すなわち、判定信号P1の値を調節できる構成になっている。なお、判定信号P1は任意の値であり、小便器1の使用環境等に応じて適宜設定される値である。
【0029】
[洗浄装置の動作]
次に、本実施形態の小便器の洗浄装置の動作を図3〜7を参照しながらより詳細に説明する。
【0030】
図3は、本実施形態の洗浄動作の手順を示したフローチャートである。なお、以下の説明では、小便器1が使用されている場合について説明する。ただし、小便器1が使用されていない場合であっても、以下の処理が行われる。その場合には、検出した振動信号には小便器1に固有の共振周波数を含む信号成分が含まれないので、後述するステップS18でNO判定となり、比較部9からは駆動信号Sfが出力されない。
【0031】
まず、ユーザが小便器1を使用すると、尿水は小便器1のリム部1bに当たり、その後、底面部1cに溜まって排水される。この際、振動検出素子2は、尿水が小便器1のリム部1bに当たった際に小便器1に発生する共振振動(共振音)を含む小便器1の振動を検出する(ステップS11)。そして、振動検出素子2は、検出信号Saを適応型ローパスフィルタ3に出力する。
【0032】
図4Aに、ステップS11において振動検出素子2で検出される信号Saの周波数特性を示す。なお、図4Aの横軸は周波数であり、縦軸はゲインである。検出信号Saには、尿水の衝突により小便器1で発生する共振振動の信号成分S1だけでなく、上述した恒常的な背景雑音成分S2及び突発的な雑音成分S3が含まれる。共振振動成分S1は、小便器1に固有の共振によるものであるので、その信号成分の周波数は小便器1の固有の共振周波数f0の近傍になる。一方、背景雑音成分S2は、雑音の発生源に応じてその周波数特性は変わるが、所定の周波数近傍でゲインが大きくなるような周波数特性となる。また、突発的な雑音成分S3の周波数特性は、振幅が略一律のホワイトノイズに近いものになるものと考えられている。なお、図4Aに示していないが、振動検出素子2で検出される信号Saに含まれる雑音成分としては、上述した恒常的な背景雑音成分S2や突発的な雑音成分S3以外の様々な雑音成分も含まれる。これらの雑音成分のレベルは雑音成分S2やS3に比べて小さく、その成分の影響も小さいので、ここでは省略している。また、検出信号Saの時系列の信号波形(不図示)において、小便器1の使用されている時間帯では、図4Aに示した雑音信号成分S2及びS3の振幅に、共振信号成分S1の振幅が加わるので、使用時の振幅は小便器1が使用されていない時間帯の振幅より大きくなる。
【0033】
次いで、適応型ローパスフィルタ3は、入力された検出信号Saから恒常的な背景雑音成分S2を除去する(ステップS12)。そして、適応型ローパスフィルタ3は、恒常的な背景雑音成分S2が除去された信号Sbをバンドパスフィルタ4及び減算器5に出力する。
【0034】
図4Bに、ステップS12において適応型ローパスフィルタ3から出力される信号Sbの周波数特性を示す。なお、図4Bの横軸は周波数であり、縦軸はゲインである。適応型ローパスフィルタ3では、恒常的な背景雑音成分S2を除去するので、適応型ローパスフィルタ3の出力信号Sbの周波数特性では背景雑音成分S2が無くなり、尿水の衝突により小便器1で発生する共振振動成分S1と突発的な雑音成分S3とが主に残る。
【0035】
次いで、バンドパスフィルタ4は、入力された信号Sbから小便器1の固有の共振周波数f0(バンドパスフィルタ4の中心周波数)を含む所定帯域Δfの信号を抽出する(ステップS13)。なお、本実施形態では、バンドパスフィルタ4で抽出された信号に、尿水の衝突により小便器1で発生する共振振動の信号成分S1全体が含まれるように周波数帯域Δfを設定した。具体的には、抽出する周波数帯域を1kHz〜4kHz(Δf=3kHz)とした。そして、バンドパスフィルタ4は、抽出した信号Scを減算器5及びレベル検出部6に出力する。
【0036】
図4Cに、ステップS13においてバンドパスフィルタ4で抽出された信号Scの周波数特性を示す。なお、図4Cの横軸は周波数であり、縦軸はゲインである。抽出信号Scには、尿水の衝突により小便器1で発生する共振振動成分S1及び同じ帯域の突発的な雑音成分S3が含まれている。しかしながら、信号Scのレベル値Lcは、主に小便器1で発生する共振振動の信号成分S1に依存すると考えられる。
【0037】
なお、バンドパスフィルタ4の中心周波数f0を設定する際には、上述したような陶製の小便器1に共通した共振周波数f0(約2.5kHz)をバンドパスフィルタ4の中心周波数として用いてもよい。また、小便器1により共振周波数f0が多少ばらつくので、実際に用いる小便器1の固有の共振周波数f0をあらかじめ測定して求めておき、その値をバンドパスフィルタ4の中心周波数として用いてもよい。
【0038】
また、本実施形態では、小便器1の共振振動の信号成分S1が全て含まれるようにバンドパスフィルタ4で抽出する帯域幅Δfを設定している。これは、小便器1により共振周波数f0のばらつきが存在しても、確実に共振周波数f0近傍の信号成分を取り出すためである。それゆえ、実際に用いる小便器1の固有の共振周波数f0をあらかじめ測定している場合には、帯域幅Δfをより狭くして、求めた共振周波数f0近傍のみの成分を抽出してもよい。
【0039】
ここで、図3のフローチャートに戻って、次に、減算器5は、適応型ローパスフィルタ3の出力信号Sbからバンドパスフィルタ4の出力信号Scを減算する(ステップS14)。そして、減算器5は、減算された信号Sdをレベル検出部7に出力する。
【0040】
図4Dに、ステップS14において減算器5から出力される減算信号Sdの周波数特性を示す。なお、図4Dの横軸は周波数であり、縦軸はゲインである。減算信号Sdは、周波数帯域Δfの周波数成分を含まない信号となる。また、減算器5では、適応型ローパスフィルタ3の出力信号Sbから、主に、小便器1で発生する共振振動成分S1を除去しているので、減算信号Sdに含まれる主な信号成分は突発的な雑音成分S3(ホワイトノイズ)となる。それゆえ、減算信号Sdの時系列の信号波形(図6A参照)は、ほぼ振幅一定の平坦な特性となる。
【0041】
次いで、レベル検出器6は、バンドパスフィルタ4の出力信号Scの振幅のレベル信号Lcを検出する(ステップS15)。そして、レベル検出器6は検出したレベル信号Lcを比率計算部8に出力する。
【0042】
図5A及び5Bに、ステップS15におけるレベル信号Lcの検出の様子を示す。図5Aは、レベル検出器6の入力波形であり、図5Bは、レベル検出器6の出力波形である。なお、図5A及び5Bの横軸は時間であり、図5Aの縦軸は振幅であり、そして、図5Bの縦軸は信号レベルである。レベル検出器6の入力信号Scの波形は、図5A中の実線で示すような高周波信号であり、小便器1が使用されている時間帯でその振幅が大きくなる。レベル検出器6は、このような高周波信号のエンベロープ(包絡線:図5A中の破線)を検出して出力する。それゆえ、レベル検出器6から出力されるレベル信号Lcは、図5Bに示すように、小便器1が使用されている時間帯で信号レベルが大きくなり、それ以外の時間帯では、ほぼ均一レベルの信号波形となる。
【0043】
次いで、レベル検出器7は、減算器5の出力信号Sdの振幅のレベル信号Ldを検出する(ステップS16)。そして、レベル検出器7は検出したレベル信号Ldを比率計算部8に出力する。なお、本実施形態では、ステップS16をステップS15の後に行っているが、ステップS16をステップS15の前に行ってもよいし、同時に平行して行ってもよい。
【0044】
図6A及び6Bに、ステップS16におけるレベル信号Ldの検出の様子を示す。図6Aは、レベル検出器7の入力波形であり、図6Bは、レベル検出器7の出力波形である。なお、図6A及び6Bの横軸は時間であり、図6Aの縦軸は振幅であり、そして、図6Bの縦軸は信号レベルである。レベル検出器7の入力信号Sdに含まれる信号成分は、上述のように、主に突発的な背景雑音成分であるので、レベル検出器7の入力信号Sdの波形は、図6A中の実線で示すような振幅略一定の高周波信号(ホワイトノイズ)となる。それゆえ、レベル検出器7から出力されるレベル信号Ldは、図6Bに示すように、信号レベルが略均一の信号波形となる。
【0045】
次いで、比率計算部8は、入力されたレベル信号Lc及びLdのレベル比率Lr=Lc/Ldを計算し(ステップS17)、レベル比率Lrの信号を比較部9に出力する。
【0046】
図7Aに、ステップS17において比率計算部8から出力されるレベル比率Lrの信号波形を示す。なお、図7Aの横軸は時間であり、図7Aの縦軸は信号レベルである。比率計算部8から出力されたレベル比率Lrは、図7Aに示すように、小便器1が使用されている間はレベル比率Lrが大きくなり、それ以外の時間帯は平坦な特性となる。なお、上述のように、突発的な雑音成分S3は一般的にホワイトノイズである。それゆえ、レベル検出器6に入力されるΔfの帯域の信号Scに含まれる突発的な雑音成分S3の信号レベルと、減算器5から出力されたΔf以外の帯域の信号Sdに含まれる突発的な雑音成分S3の信号レベルとは、ほぼ同一となる。したがって、レベル比率Lr=Lc/Ldの信号波形において、小便器1が使用されていない平坦な部分の値は約1となる。
【0047】
次いで、比較部9は、比率計算部8から出力されたレベル比率Lrの信号と判定信号P1との大小関係を比較する(ステップS18)。なお、本実施形態では、判定信号P1の信号レベルが、小便器1が使用していない時の信号レベル、すなわち、1より大きく且つ、小便器1を使用している際に得られる信号レベルの最大値より小さくなるように設定した。
【0048】
レベル比率Lrの信号レベルが判定信号P1以上である場合(ステップS18でYES判定となった場合)に、比較部9は、所定レベルの信号Sf(駆動信号)を水洗弁12に出力する(ステップS19)。一方、レベル比率Lrの信号レベルが判定信号P1より小さい場合(ステップS18でNO判定となった場合)に、比較部9は、信号Sfを水洗弁12に出力しない(ステップS20)。
【0049】
図7Bに、ステップS19において比較部9から出力される駆動信号Sfの信号波形を示す。なお、図7Bの横軸は時間であり、図7Bの縦軸は信号レベルである。本実施形態では、レベル比率Lrが判定信号P1以上である場合に、比較部9から所定レベルの信号を出力し続けるので、比較部9から出力される駆動信号Sfの波形は、図7Bに示すように、矩形状の波形となる。
【0050】
そして、比較部9は、駆動信号Sfを出力して小便器1の水洗弁12の開閉制御を行う。具体的には、所定レベルの駆動信号Sfが立ち下がった時点(小便器1の使用が終了した時点)で、水洗弁12を開けて、所定時間の間小便器1を洗浄する。なお、水洗弁12は、水洗弁12の開放から所定時間経過すれば自動的に水洗弁12が閉じる構成となっている。
【0051】
図8に、本実施形態における小便器1の使用状況、駆動信号Sfの出力状況及び水洗弁12の開閉状況のタイミングチャートを示す。本実施形態では、図8に示すように、ユーザが小便器1を使用している間、洗浄装置100は水洗弁12に駆動信号Sfを出力し続ける。そして、小便器1の使用が終了した時点で、駆動信号Sfが立ち下がり、この立ち下がりを検出した水洗弁12は、弁を所定期間開放して水を流し、洗浄を行う。
【0052】
本実施形態では、上述のようにして小便器1の使用の有無を判断し、小便器1の使用が終了次第、水洗弁12を開けて小便器1を洗浄する。
【0053】
上述のように、本実施形態では、比較的安価な圧電素子を振動検出素子2として小便器1の裏面に設置し、それにより検出された振動信号から小便器1の固有の共振周波数を含む帯域の信号を抽出する。そして、その抽出した信号の振幅レベルに基づいて小便器1の水洗弁12を駆動する。また、上述のように、本実施形態では、従来のように、例えば陶製の便器に特別な窓等を設けたり、10GHzのマイクロ波の発信器や受信機等の高価な設備を設けたりする必要はない。すなわち、本実施形態によれば、極めて安価な設備(圧電素子や回路等)で小便器1の使用を的確に判断し、小便器1の洗浄を確実に行うことができる。
【0054】
また、本実施形態によれば、小便器1の裏面に振動検出素子2を接着して取り付けているので、その設置を容易に行うことができ、装置構成もより簡易になる。
【0055】
[第2の実施形態]
本発明の第2の実施形態では、例えば、公衆用に設置された小便器に使用して好適な洗浄装置について説明する。小便器の使用の有無を検出する際、小便器が個室に設置されている場合には上述した第1の実施形態の洗浄装置で問題はない。しかしながら、公衆用に設置された小便器では、その正面等で大声の会話が行われると、その会話の音声に小便器が共振し、その共振振動を振動検出器が検出する。この場合、洗浄装置は小便器が使用されていると誤判断する可能性がある。本実施形態では、このような誤判断を防止することができる小便器の洗浄装置を説明する。
【0056】
[装置構成]
図9は、本発明に係る小便器の洗浄装置の第2の実施形態の構成例を示すブロック図である。なお、図9において、第1の実施形態と同じ構成部分には同一符号を付した。なお、図9には図示していないが、本実施形態の洗浄装置は、第1の実施形態と同様に電源を内蔵している。
【0057】
本実施形態の洗浄装置200は、図9に示すように、小便器1のリム部1bの裏面に設置された2つの振動検出素子2a及び2bと、2つの振動検出素子2a及び2bで検出した信号を加算する加算器21とを備える。また、洗浄装置200は、振動検出素子2a及び2bで検出した信号のレベルを判定するレベル判定回路29と、2つの振動検出素子2a及び2bで検出した信号の位相差を検出する位相差判定回路30とを備える。さらに、洗浄装置200は、レベル判定回路29及び位相差判定回路30の出力信号に基づいて、小便器1の使用の有無を判定するAND回路部28を備える。本実施形態では、レベル判定回路29及び位相差判定回路30の両方でそれぞれ別個に小便器1の使用の有無を判定し、その両判定結果に基づいてAND回路部28で最終的な判定を行う。以下に、本実施形態の洗浄装置200を構成する各部の機能を簡単に説明する。
【0058】
2つの振動検出素子2a及び2b(第1及び第2の振動検出器)は、図9に示すように、小便器1のリム部1bの裏面に取り付けられ、その上下方向(長手方向)に所定間隔離して接着固定されている。また、小便器1の使用時に尿水がリム部1bに当たる平均の高さが、振動検出素子2a及び2bを結ぶ線の中央位置より下となるように、2つの振動検出素子2a及び2bは、上下に離間して配置されている。なお、後述する2つの振動検出素子2a及び2bで検出する信号間の位相差をより確実に検出するためには、2つの振動検出素子2a及び2bは、約20cm程度離して設置することが好ましい。
【0059】
加算器21は、2つの振動検出素子2a及び2bで検出された信号Sa1及びSa2を加算し、その加算信号Saをレベル判定回路29に出力する。なお、本実施形態において、2つの振動検出素子2a及び2bで検出された信号を加算する理由は次のとおりである。
【0060】
図9に示すように、尿水が当たる位置は、上方の振動検出素子2aより下方の振動検出素子2bの方が近くなる。それゆえ、下方の振動検出素子2bでは十分なレベルの振動信号を検出することができるが、上方の振動検出素子2aでは振動信号の検出レベルが低くなる。それゆえ、上方の振動検出素子2aからの検出信号のみを用いた場合には、レベル判定回路29で正確に小便器1の使用の有無を判定できなくなる恐れがある。したがって、本実施形態では、上下2つの振動検出素子2a及び2bで検出された信号を加算器21で加算して、レベル判定回路29での判定に必要な十分な信号レベルを確保する。なお、上下2つの振動検出素子2a及び2bで検出された信号には後述するように位相差が生じるので、加算器21で加算された信号のレベルは、上下2つの振動検出素子2a及び2bで検出された信号を同位相で加算した場合のレベルより低くなるが、レベル判定回路29での判定に必要な十分な信号レベルは確保することができる。
【0061】
なお、本発明はこれに限定されず、下方の振動検出素子2bでは、ある程度大きな信号レベルの振動信号を検出することができるので、レベル判定回路29の入力信号として、下方の振動検出素子2bからの検出信号のみを用いてもよい。また、より高感度の振動検出素子を用いた場合には、上方の振動検出素子2aの検出信号のみをレベル判定回路29に入力してもよい。これらの場合には加算器21を設ける必要は無い。
【0062】
レベル判定回路29は、2つの振動検出素子2a及び2bで検出した振動信号から、小便器1に固有の共振周波数の信号成分を抽出して、その抽出信号の振幅レベルに基づいて小便器1の使用の有無を判定する。本実施形態では、図1と図10の比較から明らかなように、レベル判定回路29の構成は、第1の実施形態の洗浄装置100と同様の構成である。それゆえ、ここでは、レベル判定回路29の構成の詳細な説明は省略する。
【0063】
位相差判定回路30は、図9に示すように、2つのバンドパスフィルタ(BPF)22及び23と、位相比較回路24と、ローパスフィルタ(LPF)25と、比較部26と、判定信号出力回路27とを備える。
【0064】
2つのバンドパスフィルタ22及び23(第2及び第3フィルタ回路)は、それぞれ上方の振動検出素子2a及び下方の振動検出素子2bに接続されている。2つのバンドパスフィルタ22及び23は、それぞれ、上方の振動検出素子2a及び下方の振動検出素子2bで検出された振動信号Sa1及びSa2から小便器1に固有の共振周波数を含む(中心周波数とする)所定の帯域の信号を抽出する。そして、バンドパスフィルタ22及び23は、それぞれ抽出した信号Sc1及びSc2を位相比較回路24に出力する。
【0065】
なお、バンドパスフィルタ22及び23には、レベル判定回路29内のバンドパスフィルタ4(第1フィルタ回路)と同様のフィルタを用いる。また、バンドパスフィルタ4,22及び23で抽出する信号の周波数帯域Δf及び中心周波数f0(小便器1に固有の共振周波数)は同じとする。
【0066】
位相比較回路24(位相差検出回路)は、バンドパスフィルタ22及び23で抽出された信号の位相差を検出する。本実施形態では、図9に示すように、尿水の当たる位置から2つの振動検出素子2a及び2bまで距離は異なるので、尿水の当たった位置で発生した共振振動がそれぞれの振動検出素子2a及び2bに到達するまでの時間に差が生じる。それゆえ、バンドパスフィルタ22及び23で抽出された信号には位相差が生じる。位相比較回路24は、この位相差に対応した信号Δφを出力する。なお、この位相差は、尿水が当たっている位置によって変化する。
【0067】
なお、会話の音声による振動は小便器1の全体に音圧が加わるので、その場合には、振動が振動検出素子2a及び2bに到達する時間に差が生じることはなく、会話の音声による共振信号の位相は小便器1の位置にかかわらず同じであると考えられる。それゆえ、振動検出素子2a及び2bで検出された信号に位相差が有るか否かを判定することにより、会話の音声により発生する振動信号と、小便器1の使用により発生する振動信号とを区別するができる。
【0068】
ローパスフィルタ25は、位相比較回路24から出力された位相差信号Δφを連続性のある信号に変換し、その信号Sgを比較部26に出力する。
【0069】
比較部26は、ローパスフィルタ25及び判定信号出力回路27に接続されている。そして、比較部26は、ローパスフィルタ25の出力信号Sgと、判定信号出力回路27から出力される判定信号P2との大小関係を判定し、小便器1が使用されているか否かを判定する。
【0070】
判定信号出力回路27は、レベル検出回路29の判定信号出力回路10(第1の実施形態の判定信号出力回路10:図1参照)と同様に構成を有する。なお、判定信号出力回路27から出力される判定信号P2は、2つの振動検出素子2a及び2bの配置位置等に応じて適宜設定される。
【0071】
AND回路部28(駆動部)は、水洗弁12に接続されており、レベル判定回路29及び位相差判定回路30の両方からの出力信号に基づいて水洗弁12の開閉を制御する。具体的には、レベル判定回路29及び位相差判定回路30の両方から所定レベル信号Sf及びShが出力されている場合にのみ、AND回路部28は、所定レベルの信号Sj(駆動信号)を水洗弁12に出力する。そして、その駆動信号Sjが立ち下がった際に、水洗弁12は、その弁を所定期間開放して水を流して洗浄を行う。
【0072】
[洗浄装置の動作]
次に、本実施形態の小便器の洗浄装置の動作を図10及び11を参照しながらより詳細に説明する。
【0073】
図10は、本実施形態の洗浄装置200の動作の手順を示したフローチャートである。なお、本実施形態のレベル判定回路29の動作(図10中のステップS23〜28)は第1の実施形態(図3中のステップS12〜S17)と同様であるので、その説明は省略する。また、以下の説明では、小便器1が使用されている場合について説明する。ただし、小便器1が使用されていない場合であっても、以下の処理が行われる。その場合には、検出した振動信号には小便器1に固有の共振周波数を含む信号成分が含まれないので、後述するステップS32でNO判定となり、AND回路部28からは駆動信号Sjが出力されない。
【0074】
まず、位相差判定回路30の処理系統の動作を説明する。
【0075】
ユーザが小便器1を使用すると、尿水は小便器1のリム部1bに当たり、その後、底面部1cに溜まって排水される。この際、2つの振動検出素子2a及び2bは、小便器1に発生する共振振動を含む振動を検出する(ステップS21)。そして、振動検出素子2a及び2bは、検出信号Sa1及びSa2をそれぞれバンドパスフィルタ22及び23に出力する。なお、振動検出素子2a及び2bは、検出信号Sa1及びSa2を加算器21にも出力する。
【0076】
次いで、バンドパスフィルタ22及び23は、それぞれ検出信号Sa1及びSa2から小便器1の固有の共振周波数を含む(共振周波数f0を中心周波数とする)所定帯域の周波数成分の信号Sc1及びSc2を抽出する(ステップS29)。そして、バンドパスフィルタ22及び23は、抽出した信号Sc1及びSc2を位相比較回路24に出力する。
【0077】
図11A及び11Bに、ステップS29において2つのバンドパスフィルタ22及び23で抽出された信号の信号波形を示す。図11Aは、下方の振動検出素子2bの検出信号Sa2からバンドパスフィルタ23で小便器1の固有の共振周波数を含む所定帯域の周波数成分の信号Sc2を抽出した際の信号波形である。そして、図11Bは、上方の振動検出素子2aの検出信号Sa1からバンドパスフィルタ22で小便器1の固有の共振周波数を含む所定帯域の周波数成分の信号Sc1を抽出した際の信号波形である。なお、図11A及び11Bの横軸は時間であり、縦軸は振幅である。
【0078】
なお、図11A及び11Bの信号波形では、信号Sc1及びSc2に含まれる小便器1に固有の共振周波数の信号成分の位相関係を明確にするために、雑音成分の記載を省略している。実際の信号波形は、雑音成分が含まれるので、例えば、図5Aの実線に示すような複雑な高周波信号となる。また、小便器1のリム部1bに尿水が当たることにより発生する共振振動は、連続して発生する場合もあるが、断続的な振動が継続する場合もある。図11A及び11Bには、断続的な振動が継続する場合の例を示した。
【0079】
2つの振動検出素子2a及び2bで検出される共振信号成分の波形は、図11A及び11Bに示すように、同様の形状の波形となるが、尿水の当たる位置に近い下方の振動検出素子2bの方が、波形の変動部分が上方の振動検出素子2aより早い時間で現れる。なお、図11A及び11Bの例では、2つの抽出信号Sc1及びSc2の変動部分の位相差(時間差)が時間によって変化しているが、これは、例えば、尿水の当たる位置により変化したものである。また、上述したように、検出信号に会話の音声による振動成分が含まれる場合、会話の音声による振動は小便器1の全体に音圧が加わるので、そのような振動源による波形変動の位相差は生じない。
【0080】
ここで、図10のフローチャートに戻って、次に、位相比較回路24は、バンドパスフィルタ22及び23の出力信号間の位相差を算出し(ステップS30)、その位相差信号Δφをローパスフィルタ25に出力する。
【0081】
図11Cに、ステップS30において位相比較回路24から出力される信号(位相差信号Δφ)の波形を示す。なお、図11Cの横軸は時間であり、縦軸は位相差である。図11A及び11Bの例のように断続的な振動が継続する場合には、位相比較回路24からの出力信号もまた、図11Cに示すように、位相差が断続的に変化する信号になる。なお、位相差信号Δφは、尿水が当たっている位置によって変化する。
【0082】
次いで、ローパスフィルタ25は、入力された断続的な位相差信号Δφを、信号レベルが連続的に変化する信号Sgに変換し(ステップS31)、その信号Sgを比較部26に出力する。図11Dに、ステップS31においてローパスフィルタ25から出力される信号波形を示す。なお、図11Dの横軸は時間であり、縦軸は信号レベルである。この処理により、図11Cに示すような断続的な位相差信号Δφに対しても安定動作が可能になる。
【0083】
次いで、比較部26は、ローパスフィルタ25の出力信号Sgと判定信号P2との大小関係を判定する。なお、本実施形態では、図11Dに示すように、判定信号P2の信号レベルを、ローパスフィルタ25の出力信号Sgが飽和した際の値より小さく且つSg=0より大きくなるように設定した。
【0084】
そして、ローパスフィルタ25の出力信号Sgの信号レベルが判定信号P2以上となる場合に、比較部26は、所定レベルの信号ShをAND回路28に出力する。図11Eに、比較部26の出力信号Shの波形を示す。比較部26は、ローパスフィルタ25の出力信号Sgの信号レベルが判定信号P2以上となっている間(検出した2つの信号間に位相差が存在する間)、小便器1が使用されていると判定し、所定レベルの信号ShをAND回路28に出力し続ける。それゆえ、比較部26の出力信号Shの波形は矩形状となる。
【0085】
次に、レベル判定回路29の処理系統の動作を説明する。
【0086】
まず、加算器21は、ステップS21において2つの振動検出素子2a及び2bで検出された信号Sa1及びSa2を加算し(ステップS22)、その加算信号Saをレベル判定回路29に出力する。
【0087】
次いで、レベル判定回路29は、第1の実施形態と同様にして、加算信号Saから小便器1に固有の共振周波数成分を抽出し、その抽出信号の振幅レベルに基づいて、比較部9から図7Bに示すような出力信号SfをAND回路部28に出力する(ステップS23〜28)。
【0088】
次いで、AND回路部28は、レベル判定回路29及び位相差判定回路30からそれぞれ出力された信号Sf及びShに基づいて、小便器1の水洗弁12の開閉制御を行う。具体的には、まず、レベル判定回路29及び位相差判定回路30の両方から信号Sf及びShがAND回路部28に入力されているか否かを判定する(ステップS32)。すなわち、AND回路部28は、2つの振動検出素子2a及び2bで検出した振動信号から抽出した小便器1に固有の共振振動成分のレベル比率Lrが第1の設定信号P1以上であり、且つ、抽出された共振振動成分間の位相差Δφが第2の設定信号P2以上であるか否かを判定する。
【0089】
次いで、レベル判定回路29及び位相差判定回路30の両方から信号Sf及びShがAND回路部28に入力されている場合(ステップS32でYES判定の場合)、AND回路部28は、駆動信号Sjを水洗弁12に出力する(ステップS33)。この駆動信号Sjにより水洗弁12の開閉制御をする。具体的には、第1の実施形態と同様に、駆動信号Sjが立ち下がった際に、水洗弁12を所定期間開放し、洗浄を行う。
【0090】
一方、レベル判定回路29及び位相差判定回路30の両方から信号Sf及びShがAND回路部28に入力されていない場合(ステップS32でNO判定の場合)には、AND回路部28は、駆動信号Sjを水洗弁12に出力せず、水洗弁12を閉めた状態に維持する(ステップS34)。
【0091】
本実施形態では、上述のようにして、2つの振動検出素子2a及び2bで検出した信号から、小便器1に固有の共振周波数成分の信号の振幅レベル及び検出した信号間の位相差に基づいて小便器1の使用の有無を判定する。
【0092】
上述のように、本実施形態では、比較的安価な圧電素子を振動検出素子2として2つ小便器1の裏面に設置し、それにより検出された振動信号から、小便器1の固有の共振周波数を含む帯域の信号を抽出する。そして、その抽出した信号の振幅レベルに基づいて小便器1の使用の有無を判定し、小便器1の水洗弁12を駆動する。したがって、第1の実施形態と同様に、本実施形態においても、極めて安価な設備で小便器1の使用を的確に判断し、小便器1の洗浄を確実に行うことができる。また、本実施形態では、装置構成もより簡易にすることができる。
【0093】
また、本実施形態では、2つの振動検出素子2a及び2bで検出された小便器1の固有の共振周波数を含む帯域の信号の振幅レベルだけでなく、信号間の位相差も用いて小便器1の使用の有無を判断する。それゆえ、例えば、公衆用に設置された小便器の正面で大声の会話が行われたような場合であっても、それらの会話により発生する振動信号と、小便器1の使用により発生する振動信号とを区別するができる。それゆえ、本実施形態では、上述のような状況においても確実に小便器1の使用の有無を判断することができる。
【0094】
[第3の実施形態]
本発明の第3の実施形態では、例えば、比較的大きな(高価な)小便器に使用して好適な洗浄装置について説明する。一般に、小便器が大きくなると、小便器のリム部の厚さも厚くなる。この場合、次のような問題が生じる。小便器のリム部の厚みが厚くなると、振動検出器で検出できる振動信号のレベルが小さくなる。また、このような場合、小便器の共振振動成分に対して、小便器の周辺に設置されている配管を流れる水等の恒常的な雑音の割合が大きくなる。したがって、小便器のリム部の厚さも厚くなると、小便器に固有の共振周波数成分の信号を十分な振幅レベルで抽出することが困難になり、正確に小便器の有無を判定することができなくなる可能性がある。
【0095】
第3の実施形態では、小便器のリム部の厚さも厚くなった場合でも、上述のような問題を解決し、小便器の使用の有無を的確に判断でき、小便器の洗浄を確実に行うことができる洗浄装置の例を説明する。
【0096】
[装置構成]
図12は、本発明に係る小便器の洗浄装置の第3の実施形態の構成例を示すブロック図である。なお、図12において、第1の実施形態と同じ構成部分には同一符号を付した。
【0097】
本実施形態の洗浄装置300は、図12に示すように、小便器1のリム部1bの裏面に設置された振動検出素子2と、フーリエ変換回路33と、バンドパスフィルタ4と、減算器5とを備える。また、洗浄装置300は、2つのレベル検出器6及び7と、比率計算部8と、比較部9と、判定信号出力回路10とを備える。なお、図12には図示していないが、本実施形態の洗浄装置は、第1の実施形態と同様に電源を内蔵している。
【0098】
図12の本実施形態の洗浄装置の構成と、図1に示した第1の実施形態のそれとの比較から明らかなように、本実施形態では、第1の実施形態の洗浄装置100の適応型ローパスフィルタ3をフーリエ変換回路33で置き換えた構成となる。本実施形態では、フーリエ変換回路33以外の構成は、第1の実施形態と同様とする。それゆえ、ここではフーリエ変換回路33についてのみ説明する。
【0099】
フーリエ変換回路33は、フーリエ変換部34と、記憶部35と、減算器36と、逆フーリエ変換部37と、スイッチ38と、スイッチの動作を制御するNOT回路39及びOR回路40から回路群とを備える。フーリエ変換回路33を構成する各部の機能は次の通りである。
【0100】
フーリエ変換部34は、振動検出素子2に接続されており、振動検出素子2で検出された小便器1の振動信号Saを高速フーリエ変換(FFT:Fast Fourier Transform)して該振動信号Saに対応するスペクトルに変換する。小便器1が使用されていない時に得られるスペクトルは、小便器1周辺の恒常的な背景雑音や突発的な雑音等の雑音スペクトルである。そして、小便器1の使用時には、小便器1周辺の恒常的な背景雑音や突発的な雑音等だけでなく、尿水が小便器1に当たったときに生じる小便器1に固有の共振周波数成分が含まれたスペクトル(振動スペクトル)が得られる。
【0101】
記憶部35は、小便器1周辺の恒常的な背景雑音や突発的な雑音等の雑音スペクトルを記憶する。なお、本実施形態では、この雑音スペクトルは、小便器1が使用されていない時にスイッチ38をON状態することにより、フーリエ変換部34を介して取得する。
【0102】
減算器36は、フーリエ変換部34及び記憶部35に接続されており、フーリエ変換部34の出力スペクトルから記憶部35に記憶された雑音スペクトルを減算する。小便器1の使用時には、この演算により、尿水が小便器1に当たったとき生じる小便器1に固有の共振周波数成分のスペクトルを抽出することができる。
【0103】
逆フーリエ変換部37は、減算器36の出力スペクトルを、逆高速フーリエ変換(IFFT:Inverse Fast Fourier Transform)して、減算器36の出力スペクトルに対応する時間軸上の信号に変換する。
【0104】
スイッチ36は、小便器1の雑音スペクトルを検出する期間と、それ以外の期間とを切換えられる。具体的には、小便器1の雑音スペクトルを検出する期間には、スイッチ36はON状態となり、それ以外ではOFF状態になる。
【0105】
NOT回路39及びOR回路40は、直列に接続されており、OR回路40の入力端子は比較部9の出力端子及び水洗弁12に接続されている。また、NOT回路39の出力端子はスイッチ38に接続されている。NOT回路39及びOR回路40は、スイッチ38の開閉を制御する回路群であり、振動検出素子2で小便器1の雑音スペクトルを検出して記憶部35に記憶する処理のタイミングを制御する。
【0106】
NOT回路39及びOR回路40からなる回路群の動作をより具体的に説明すると、まず、OR回路40には、比較部9から出力される駆動信号Sj、及び、水洗弁12から出力される水洗弁12の開閉状況の情報が入力される。なお、水洗弁12は常にその開閉状況に関する情報を認識している。次いで、これらの入力情報に基づいて、NOT回路39及びOR回路40からなる回路群は、スイッチ38の開閉を制御する。この際、比較部9から駆動信号Sjが入力されているとき(小便器1の使用中)、または、水洗弁12が開放状態にあるとき(小便器1の洗浄中)には、回路群は、スイッチ38がOFF状態となるようにスイッチ38に制御する。それ以外の場合には、回路群はスイッチ38がON状態となるようにスイッチ38に制御する。
【0107】
[洗浄装置の動作]
次に、本実施形態の洗浄装置300の動作を図13及び14を参照しながら説明する。図13は、本実施形態の洗浄装置300の動作の手順を示すフローチャートである。また、図14A〜14Cは、フーリエ変換回路33を構成する各部の出力スペクトルを示した図であり、横軸には周波数をとり、縦軸にはゲイン(スペクトル強度)をとった。なお、フーリエ変換回路33の動作以外の動作は第1の実施形態と同様であるので、ここでは、主に、フーリエ変換回路33の動作を説明する。
【0108】
まず、小便器1が使用されていない時の雑音スペクトルを検出する。具体的には、まず、小便器1が使用されていない時に、振動検出素子2が小便器1の振動を検出する(ステップS41)。この際、小便器1周辺の恒常的な背景雑音や突発的な雑音等を含む振動が振動検出素子2で検出される。そして、振動検出素子2は、検出信号Saをフーリエ変換回路34に出力する。なお、ここでいう「小便器が使用されていない時」は、ユーザが小便器1を使用している期間及び小便器1の洗浄期間以外の時間帯のことをいう。
【0109】
次いで、フーリエ変換部34は、ステップS41で検出した雑音信号を高速フーリエ変換により該雑音信号に対応する雑音スペクトルに変換して出力する(ステップS42)。この際、スイッチ38は、NOT回路39及びOR回路40からなる回路群の制御により、ON状態であるので、ステップS42で出力された雑音スペクトルは記憶部35に記憶される(ステップS43)。本実施形態では、以上のようにして、小便器1が使用されていない時の雑音スペクトルを検出する。なお、本発明はこれに限定されず、例えば、小便器1の設置時等に、小便器1の雑音スペクトルを予め測定しておき、記憶部35に記憶しておいてもよい。この場合、NOT回路39及びOR回路40からなる回路群、並びにスイッチ38を設ける必要がないので、装置構成がより簡易になる。
【0110】
図14Bに、ステップS42で得られる雑音信号の周波数特性(雑音スペクトル)を示す。雑音スペクトルには、例えば配管を流れる水の音(振動)などの小便器周辺の恒常的な背景雑音成分S2や、例えば人の移動(足音)や声、エレベータの移動等の突発的な雑音成分S3が含まれる。
【0111】
次いで、振動検出素子2は、再度、小便器1の振動を検出し(ステップS44)、その振動信号Saをフーリエ変換部34に出力する。この際、小便器1が使用されている場合、振動検出素子2で検出した振動信号には、小便器1周辺の恒常的な背景雑音や突発的な雑音等だけでなく、尿水が小便器1に当たったとき生じる小便器1に固有の共振周波数成分の信号が含まれる。以下に説明する処理では、小便器1が使用されている場合、すなわち、スイッチ38がOFF状態となっている場合について説明する。なお、小便器1が使用されていない場合であっても、以下の処理が行われる。この場合には、検出した振動信号には小便器1に固有の共振周波数を含む信号成分が含まれないので、比較部9からは駆動信号Sfが出力されない。
【0112】
次いで、フーリエ変換部34は、振動検出素子2で検出した振動信号Saを高速フーリエ変換により、振動信号Saに対応する振動スペクトルに変換する(振動スペクトル)(ステップS45)。そして、フーリエ変換部34は、変換した振動スペクトルを減算器36に出力する。
【0113】
図14Aに、ステップS45において振動検出素子2で検出される信号Saの周波数特性(振動スペクトル)を示す。検出信号Saには、尿水の衝突により小便器1で発生する共振振動の信号成分S1だけでなく、上述した小便器周辺の恒常的な背景雑音成分S2や突発的な雑音成分S3が含まれる。共振振動成分S1は、小便器1に固有の共振によるものであるので、その信号成分の周波数は小便器1の固有の共振周波数f0の近傍になる。
【0114】
次いで、減算器36は、記憶部35に記憶された雑音スペクトル(図14B)を読み出し、フーリエ変換部34から入力された振動スペクトル(図14A)から雑音スペクトルを減算する(ステップS46)。この処理により、主に、尿水が小便器1に当たったとき生じる小便器1に固有の共振周波数成分のスペクトルを抽出する。図14Cに、ステップS46において減算器36から出力されるスペクトルの特性を示す。減算器36の出力スペクトルに含まれる信号成分は、主に、尿水の衝突により小便器1で発生する共振振動の信号成分S1になる。
【0115】
次いで、逆フーリエ変換部37は、逆高速フーリエ変換により、減算器36の出力スペクトルを該出力スペクトルに対応する時間軸上の信号に変換する(ステップS47)。そして、逆フーリエ変換部37は、その変換された信号をバンドパスフィルタ4及び減算器5に出力する。その後は、第1の実施形態と同様にして、図3中にステップS13〜S20の処理を行い、小便器1の使用の有無を判定し、小便器1の水洗弁12の開閉制御を行う。
【0116】
図15に、本実施形態における小便器1の使用状況、駆動信号Sfの出力状況、水洗弁12の開閉状況及びスイッチ38の開閉状況のタイミングチャートを示す。本実施形態では、図15に示すように、ユーザが小便器1を使用している間、洗浄装置300は水洗弁12に駆動信号Sfを出力し続ける。そして、小便器1の使用が終了した時点で、駆動信号Sfが立ち下がり、この立ち下がりを検出した水洗弁12は、弁を所定期間開放して洗浄を行う。また、本実施形態では、ユーザが小便器1を使用している間、または、水洗弁12が開いている間(洗浄期間)には、スイッチ38はOFF状態となり、それ以外の期間にはスイッチ38はON状態となる。洗浄装置300は、スイッチ38がON状態である間は、周期的または適宜、小便器1周辺の雑音スペクトルを更新し続ける。
【0117】
第1の実施形態では、適応型ローパスフィルタ3により小便器1周辺の恒常的な背景雑音成分S2は除去したが、例えば、人の移動や声、エレベータの移動等の突発的な雑音(ホワイトノイズ)成分S3は除去していない(図4B参照)。それに対して、本実施形態では、フーリエ変換回路部33で小便器1周辺の恒常的な背景雑音成分S2だけでなく、突発的な雑音成分S3も除去することができる(図14C参照)。それゆえ、本実施形態では、上述したように小便器1のリム部1bの厚さが厚くなり、小便器1の共振振動成分に対する雑音成分の割合が大きくなっても、その雑音成分を十分除去することができる。また、本実施形態では、主に、小便器1に固有の共振周波数成分の信号のみを抽出して、その信号に基づいて小便器1の有無を判定することができる。したがって、本実施形態によれば、上述したような小便器1のリム部1bの厚さが厚くなった際の問題を解消し、小便器1の使用を的確に判断して、小便器1の洗浄を確実に行うことができる。
【0118】
また、本実施形態では、第1の実施形態と同様に、小便器1の使用の有無の判定に用いる振動信号の検出器として、比較的安価な圧電素子を用いている。それゆえ、本実施形態においても、第1の実施形態と同様に、安価で簡易な設備で小便器1の使用を的確に判断し、小便器1の洗浄を確実に行うことができる。
【0119】
[第4の実施形態]
第4の実施形態では、第3の実施形態で説明したフーリエ変換回路を第2の実施形態の洗浄装置に適用した例を説明する。
【0120】
[装置構成]
図16は、本発明に係る小便器の洗浄装置の第4の実施形態の構成例を示すブロック図である。なお、図16において、第2及び第3の実施形態と同じ構成部分には同一符号を付した。
【0121】
本実施形態の洗浄装置400は、図16に示すように、小便器1のリム部1bの裏面に設置された2つの振動検出素子2a及び2bと、2つの振動検出素子2a及び2bで検出した信号を加算する加算器21とを備える。また、洗浄装置400は、振動検出素子2a及び2bで検出した信号のレベルを判定するレベル判定回路49と、2つの振動検出素子2a及び2bで検出した信号の位相差を検出する位相差判定回路30とを備える。さらに、洗浄装置400は、レベル判定回路49及び位相差判定回路30の出力信号に基づいて、小便器1の使用の有無を判定するAND回路部28を備える。なお、図16には図示していないが、本実施形態の洗浄装置は、第1の実施形態と同様に電源を内蔵している。
【0122】
図16の本実施形態の洗浄装置の構成と、図9に示した第2の実施形態のそれとの比較から明らかなように、本実施形態では、第2の実施形態の洗浄装置200の適応型ローパスフィルタ3をフーリエ変換回路33で置き換えた構成となる。そして、フーリエ変換回路33は、第3の実施形態と同様の構成である。
【0123】
本実施形態の洗浄装置400の動作は、図10に示した第2の実施形態の処理のステップS22及びS23の代わりに、図13に示した第3の実施形態の処理(ステップS41〜S47)を行う。それゆえ、本実施形態においても、第3の実施形態と同様に、小便器1のリム部1bの厚さが厚くなった際の問題を解消し、小便器1の使用を的確に判断して、小便器1の洗浄を確実に行うことができる。
【0124】
また、本実施形態では、第2の実施形態と同様に、2つの振動検出素子2a及び2bで検出された小便器1の固有の共振周波数を含む帯域の信号の振幅レベルだけでなく、信号間の位相差も用いて小便器1の使用の有無を判断する。それゆえ、例えば、公衆用に設置された小便器の正面で大声の会話が行われたような場合であっても、それらの会話により発生する振動信号と、小便器1の使用により発生する振動信号とを区別するができる。それゆえ、本実施形態では、上述のような状況においても確実に小便器1の使用の有無を判断することができる。
【0125】
さらに、本実施形態では、第1の実施形態と同様に、小便器1の使用の有無の判定に用いる振動信号の検出器として、比較的安価な圧電素子を用いている。それゆえ、本実施形態においても、第1の実施形態と同様に、安価で簡易な設備で小便器1の使用を的確に判断し、小便器1の洗浄を確実に行うことができる。
【0126】
なお、第4の実施形態では、加算器21の後段にフーリエ変換回路33を設けているが、本発明はこれに限定されない。例えば、フーリエ変換回路33を2つ用意し、各フーリエ変換回路33をそれぞれ振動検出素子2a及び2bに直接接続してもよい。
【0127】
上記実施形態では、振動検出器として圧電素子を用いた例を説明したが、本発明はこれに限定されず、小便器1の振動を検出することができる振動検出器であれば、任意の振動検出器を用いることができる。例えば、加速度センサ、マイクロフォン、光距離センサ、静電型距離センサ、G(Gravity)センサ、圧力センサなどを用いてもよい。特に、マイクロフォンは圧電素子や加速度センサに比べて非常に安価であるので、マイクロフォンを振動検出素子2として用いた場合には、より安価な洗浄装置を提供することができる。
【0128】
ここで、マイクロフォンを振動検出素子2として用いた場合のマイクロフォンの設置例を図17に示す。マイクロフォン54を用いる場合には、マイクロフォン54の吸音部54aを小便器1のリム部1bと対向するように配置し、マイクロフォン54の背部を接着剤55で覆うようにして接着固定することが好ましい。このようにマイクロフォン54を接着固定することにより、小便器1の背部の配管等からの雑音を抑制することができる。
【0129】
また、上記実施形態では、振動検出素子2を設置する小便器1の裏面に対して何の加工もせずに粘着テープで振動検出素子2を接着固定したが、本発明はこれに限定されない。振動検出素子2が設置される小便器1の裏面部分に、平面部等の部位を設けて振動検出素子2を設置し易くしてもよい。この場合、小便器1の裏面に平面部等の部位を設けることは、製造時の金型等の処理を少し変更することで達成できるので、製造工程の増加等を伴わずに簡単に実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0130】
【図1】第1の実施形態の洗浄装置のブロック構成図である。
【図2】圧電素子の概略構成図である。
【図3】第1の実施形態における洗浄処理の手順を示すフローチャートである。
【図4】図4Aは振動検出素子の出力スペクトルであり、図4Bは適応型ローパスフィルタの出力スペクトルであり、図4Cはバンドパスフィルタの出力スペクトルであり、そして、図4Dは減算器の出力スペクトルである。
【図5】図5Aはレベル検出器の入力波形であり、図5Bはレベル検出器の出力波形である。
【図6】図6Aはレベル検出器の入力波形であり、図6Bはレベル検出器の出力波形である。
【図7】図7Aは比率計算部の出力波形であり、図7Bは比較部の出力波形である。
【図8】第1の実施形態の洗浄処理のタイミングチャートである。
【図9】第2の実施形態の洗浄装置のブロック構成図である。
【図10】第2の実施形態における洗浄処理の手順を示すフローチャートである。
【図11】図11Aは下方の振動検出素子で検出された共振振動成分の信号波形であり、図11Bは上方の振動検出素子で検出された共振振動成分の信号波形であり、図11Cは位相差比較回路の出力波形であり、図11Dはローパスフィルタの出力波形であり、そして、図11Eは比較部の出力波形である。第2の実施形態の洗浄装置を構成する各部の出力信号の特性図である。
【図12】第3の実施形態の洗浄装置のブロック構成図である。
【図13】第3の実施形態における洗浄処理の手順を示すフローチャートである。
【図14】図14Aはフーリエ変換部から出力されたスペクトル(周波数特性)であり、図14Bは記憶部に記憶された雑音スペクトルであり、そして、図14Cは減算器から出力されたスペクトルである。
【図15】第3の実施形態の洗浄処理のタイミングチャートである。
【図16】第4の実施形態の洗浄装置のブロック構成図である。
【図17】マイクロフォンの一設置例を示す図である。
【図18】従来の小便器の概略正面図である。
【符号の説明】
【0131】
1…小便器、2,2a,2b…振動検出素子、3…適応型ローパスフィルタ、4,22,23…バンドパスフィルタ、5,36…減算器、6,7…レベル検出器、8…比率計算部、9,26…比較部、10,27…判定信号出力回路、11…電源、12…水洗弁、24…位相比較回路、25…ローパスフィルタ、28…AND回路、29…レベル判定回路、30…位相差判定回路、33…フーリエ変換回路、34…フーリエ変換部、35…記憶部、37…逆フーリエ変換部、38…スイッチ、39…NOT回路、40…OR回路、100,200,300…洗浄装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、小便器の洗浄装置に関し、より詳細には、使用後に自動洗浄を行う小便器に使用して好適な洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
便器の洗浄技術においては、使用後にレバー操作などにより水を流して便器を洗浄する手法が一般的である。しかしながら、特に男子用の小便器においては、使用後に、このレバー操作による洗浄が行われない場合もしばしば見かけられる。
【0003】
上記問題を解決するために、従来、一定時間毎に水を流す洗浄方法が実施されている。しかしながら、この方法では、使用されていないときにも水が流れるので、水資源の無駄遣いになるといった問題があった。この問題を解決するために、人感センサを用いた自動洗浄装置が開発されている。
【0004】
従来開発されている自動洗浄装置では、使用後に使用者が小便器から離れたことを人感センサで検知して、自動的に水を流して便器を洗浄する。このような便器の自動洗浄装置では、人感センサとして、例えば赤外線を用いた装置(例えば、特許文献1参照)や、マイクロ波を利用したドップラセンサを用いた装置(例えば、特許文献2及び3参照)が提案されている。
【0005】
【特許文献1】特開2003−96870号公報
【特許文献2】特開2004−285765号公報
【特許文献3】特開2002−286833号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のように、従来、様々な小便器の自動洗浄装置が提案されているが、例えば、特許文献1に記載されているような赤外線による人感センサを用いた自動洗浄装置では、次のような問題がある。特許文献1の自動洗浄装置では、図18に示すように小便器の上面部に人感センサが設けられている。しかしながら、このような構成では、陶器で製造される小便器の上面部にセンサを設置する窓を設けるための製造工程が別途必要になる。この場合、製造工程の増加による製品価格の上昇等を招くことになる。
【0007】
上記問題をより具体的に説明すると、一般に陶製の小便器にセンサの設置窓を設けるためには、窓部を形成するための型などを別途に設ける工程が必要になる。また、このような窓部は小便器の構造的な強度を弱くするので、小便器を安定に製造するためには、製造工程の改善や、製造工程に時間的な余裕を持たせる必要が生じる。さらに、窓部にセンサを設置する工程も必要となる。これらの製造工程の改善や増加は、製造コストの上昇の要因となる。
【0008】
上記問題を解決するために、従来、人感センサを小便器の上方の配管などに別体として設けることも実施されている。しかしながら、人感センサを小便器から離して設けた場合には、小便器が使用されていない時にも、人体などが人感センサの前を通過するだけで人感センサが反応し、誤動作するおそれがある。また、人感センサを特に小便器の上方に設けた場合には、子供等の身長の低い使用者の検知が困難になるという問題も生じる。さらに、人感センサを別体として設けた場合には、人感センサが目立つため、悪戯等による破損の被害が発生しやすくなる。
【0009】
一方、特許文献2に記載されている洗浄装置では、小便器の裏面に設置されたドップラセンサから10GHz程度のマイクロ波を発射し、小便器を透過したマイクロ波が使用者から反射して戻ってくるマイクロ波を受信する。したがって、このような洗浄装置では、小便器を透過するマイクロ波を検出するので、小便器に特別なセンサ窓等を設ける必要はない。しかしながら、10GHzのマイクロ波の発信器や受信機の設備が極めて高価であるという問題がある。
【0010】
本発明は、上述した様々な問題を解決するためになされたものであり、本発明の目的は、小便器の使用を自動判断して洗浄を行うことができるとともに、安価で簡易な構成の洗浄装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、第1の本発明の小便器の洗浄装置は、水洗弁を有する小便器の裏面に設置された振動検出器と、フィルタ回路と、駆動部とを備える構成とし、各部の機能は次の通りとした。振動検出部は、小便器の振動を検出する。フィルタ回路は、振動検出器で検出した振動信号から小便器に固有の共振周波数を含む所定帯域の信号を抽出する。そして、駆動部は、フィルタ回路で抽出した信号のレベルに基づいて、小便器の水洗弁の開閉制御を行う。
【0012】
また、上記課題を解決するために、第2の本発明の小便器の洗浄装置は、小便器の裏面に設置された第1の振動検出器と、小便器の裏面の長手方向に第1の振動検出器から所定距離離して設置された第2の振動検出器とを備える構成とした。また、第2の本発明の洗浄装置は、第1〜3フィルタ回路と、位相差検出回路と、駆動部とを構成とした。そして、各部の機能は次の通りとした。第1及び第2の振動検出器は、小便器の振動を検出する。第1フィルタ回路は、第1及び第2の振動検出器の少なくとも一方で検出した振動信号から小便器に固有の共振周波数を含む所定帯域の第1信号を抽出する。第2フィルタ回路は、第1の振動検出器で検出した振動信号から小便器に固有の共振周波数を含む所定帯域の第2信号を抽出する。第3フィルタ回路は、第2の振動検出器で検出した振動信号から小便器に固有の共振周波数を含む所定帯域の第3信号を抽出する。位相差検出回路は、第2及び第3信号の位相差を検出する。そして、駆動部は、第1信号の振幅レベルと、第2及び第3信号の位相差とに基づいて、小便器の水洗弁の開閉制御を行う。
【0013】
なお、本明細書で言う「小便器の振動を検出する振動検出器」は、例えば圧電素子のように小便器の振動を直接検出する振動検出器のみならず、例えばマイクロフォンのように小便器の振動を空気振動を介して(音声で)間接的に検出する振動検出器も含む。
【発明の効果】
【0014】
本発明の小便器の洗浄装置では、小便器の裏面に設置された振動検出器で検出した振動信号から小便器に固有の共振周波数成分の信号を抽出し、その信号(振幅レベルまたは振幅レベル及び位相差)に基づいてユーザが小便器を使用しているか否かの判断を行う。この際、振動検出に用いる振動検出器としては、後述するように、安価で簡易な構成の振動検出器を用いることができる。それゆえ、本発明によれば、安価で且つ簡易な設備で小便器の使用を的確に判断し、小便器の洗浄を確実に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を、添付図面を参照しながら説明する。本発明の実施形態は以下の順で説明する。なお、本発明は以下の例に限定されるものではない。
1.第1の実施形態:基本構成例
2.第2の実施形態:2つの振動検出器を備える構成例
3.第3の実施形態:フーリエ変換回路部を備える構成例
4.第4の実施形態:2つの振動検出器及びフーリエ変換回路部を備える構成例
【0016】
[第1の実施形態]
[装置構成]
図1は、本発明に係る小便器の洗浄装置の第1の実施形態の構成例を示すブロック図である。本実施形態の洗浄装置100は、図1に示すように、小便器1のリム部1bの裏面に設置された振動検出素子2と、適応型ローパスフィルタ3と、バンドパスフィルタ4と、減算器5とを備える。また、洗浄装置100は、2つのレベル検出器6及び7と、比率計算部8と、比較部9と、判定信号出力回路10と、電源11とを備える。なお、図1には示していないが、洗浄装置100の各部は電源11から電力供給されている。ただし、電力供給の形態はこれに限定されず、外部電源から電力供給を行ってもよい。
【0017】
小便器1は、陶製の小便器であり、尿水が主に当たるリム部1bと、その上下端にそれぞれ設けられた上面部1a及び底面部1cとから構成される。すなわち、本実施形態の小便器1は、従来使用されている周知のものである。陶製の小便器1は、外力が与えられた際に固有の共振周波数で振動する性質を有している。この共振周波数は約2.5kHzであり、小便器1が陶製であれば、小便器1の材質や形状が大幅に変更されない限り、その値はほぼ変わらない。
【0018】
ここで、本実施形態の洗浄装置100を構成する各部の機能を簡単に説明する。
【0019】
振動検出素子2(振動検出器)は、小便器1の振動を検出して、その振動に対応した電圧等の信号(図1中のSa:以下、振動信号ともいう)を出力する。本実施形態では、振動検出素子2として、振動を電圧に変換する圧電素子を用いた。
【0020】
図2は、本実施形態で用いた圧電素子の概略構成図である。振動検出素子2は、板状の圧電部材50と、その上下面に形成された2つの電極51及び52とで構成される。また、電極51及び52は、リード線53を介して適応型ローパスフィルタ3に接続されている。なお、振動検出素子2は、両面粘着テープを用いて小便器1に接着固定する。振動検出素子2の配置位置は、小便器1のサイズや振動検出素子2の感度等により適宜変更し得るが、十分な振幅レベルの振動信号を検出するために、尿水が当たる可能性の高い位置の近傍が望ましい。
【0021】
なお、小便器1の使用時の振動には、尿水が小便器1に当たったときの振動成分(小便器1に固有の共振周波数を含む所定帯域の振動成分)だけでなく、雑音による振動成分が含まれる。その主な雑音としては、例えば配管を流れる水の音(振動)や換気扇などの小便器周辺で恒常的に存在する背景雑音(任意の周波数特性を有する)や、例えば人の移動(足音)や声、エレベータの移動等の突発的な雑音がある。
【0022】
適応型ローパスフィルタ3は、振動検出素子2の出力端子に接続されており、振動検出素子2の出力信号Saから、上述した恒常的な背景雑音(配管等の雑音)を除去する。適応型ローパスフィルタ3としては、最小2乗平均(LMS:Least Mean Square)ローパスフィルタを用い得る。この場合、適応型ローパスフィルタ3は、単位遅延素子を縦続して接続した構成となる。そして、適応型ローパスフィルタ3は、単位遅延素子の各段の出力を重み付け加算すると共に、各段の出力を最小2乗法等により計算して重み付けを定めるような構成となる。
【0023】
バンドパスフィルタ4(フィルタ回路)は、適応型ローパスフィルタ3の出力端子に接続されており、適応型ローパスフィルタ3の出力信号(図1中の信号Sb)から、小便器1の共振周波数を含む(中心周波数とする)所定帯域の周波数信号成分(図1中の信号Sc)を抽出する。
【0024】
減算器5は、適応型ローパスフィルタ3の出力端子及びバンドパスフィルタ4の出力端子に接続されている。減算器5は、適応型ローパスフィルタ3の出力信号Sbとバンドパスフィルタ4の出力信号Scとの差を計算し、その差信号(図1中の信号Sd)を出力する。すなわち、減算器5は、振動検出素子2で検出された検出信号のうち、主に、上述した突発的な雑音の信号成分を含んだ信号(差信号Sd)を出力する。
【0025】
レベル検出部6及び7は、それぞれ、バンドパスフィルタ4からの出力信号Sc及び減算器5からの出力信号Sdの振幅レベル(Lc及びLd)を検出する。より具体的には、バンドパスフィルタ4からの出力信号Sc及び減算器5からの出力信号Sdのエンベロープ(包絡線)を検出する。
【0026】
比率計算部8は、レベル検出部6及び7の出力端子に接続されており、レベル検出部6及び7からそれぞれ出力されたレベル信号Lc及びLdのレベル比率Lr=Lc/Ldを計算して出力する。すなわち、比率計算部8は、小便器1に固有の共振周波数を含む所定帯域の信号成分が雑音成分に対してどの程度の割合となるかを算出する。
【0027】
比較部9(駆動部)は、比率計算部8及び判定信号出力回路10の出力端子に接続されている。比較部9は、比率計算部8から出力されたレベル比率Lrの信号と判定信号出力回路10の出力信号P1との大小関係を判定して、ユーザが小便器1を使用しているか否かの判定をする。また、比較部9の出力端子は水洗弁12に接続されており、比較部9の判定結果に基づいて、水洗弁12の開閉制御を行う。
【0028】
判定信号出力回路10は、コンデンサ10aと可変抵抗器10bとで構成され、可変抵抗器10aは電源11に接続されている。判定信号出力回路10は、可変抵抗器10aによりコンデンサ10bにかかる電圧、すなわち、判定信号P1の値を調節できる構成になっている。なお、判定信号P1は任意の値であり、小便器1の使用環境等に応じて適宜設定される値である。
【0029】
[洗浄装置の動作]
次に、本実施形態の小便器の洗浄装置の動作を図3〜7を参照しながらより詳細に説明する。
【0030】
図3は、本実施形態の洗浄動作の手順を示したフローチャートである。なお、以下の説明では、小便器1が使用されている場合について説明する。ただし、小便器1が使用されていない場合であっても、以下の処理が行われる。その場合には、検出した振動信号には小便器1に固有の共振周波数を含む信号成分が含まれないので、後述するステップS18でNO判定となり、比較部9からは駆動信号Sfが出力されない。
【0031】
まず、ユーザが小便器1を使用すると、尿水は小便器1のリム部1bに当たり、その後、底面部1cに溜まって排水される。この際、振動検出素子2は、尿水が小便器1のリム部1bに当たった際に小便器1に発生する共振振動(共振音)を含む小便器1の振動を検出する(ステップS11)。そして、振動検出素子2は、検出信号Saを適応型ローパスフィルタ3に出力する。
【0032】
図4Aに、ステップS11において振動検出素子2で検出される信号Saの周波数特性を示す。なお、図4Aの横軸は周波数であり、縦軸はゲインである。検出信号Saには、尿水の衝突により小便器1で発生する共振振動の信号成分S1だけでなく、上述した恒常的な背景雑音成分S2及び突発的な雑音成分S3が含まれる。共振振動成分S1は、小便器1に固有の共振によるものであるので、その信号成分の周波数は小便器1の固有の共振周波数f0の近傍になる。一方、背景雑音成分S2は、雑音の発生源に応じてその周波数特性は変わるが、所定の周波数近傍でゲインが大きくなるような周波数特性となる。また、突発的な雑音成分S3の周波数特性は、振幅が略一律のホワイトノイズに近いものになるものと考えられている。なお、図4Aに示していないが、振動検出素子2で検出される信号Saに含まれる雑音成分としては、上述した恒常的な背景雑音成分S2や突発的な雑音成分S3以外の様々な雑音成分も含まれる。これらの雑音成分のレベルは雑音成分S2やS3に比べて小さく、その成分の影響も小さいので、ここでは省略している。また、検出信号Saの時系列の信号波形(不図示)において、小便器1の使用されている時間帯では、図4Aに示した雑音信号成分S2及びS3の振幅に、共振信号成分S1の振幅が加わるので、使用時の振幅は小便器1が使用されていない時間帯の振幅より大きくなる。
【0033】
次いで、適応型ローパスフィルタ3は、入力された検出信号Saから恒常的な背景雑音成分S2を除去する(ステップS12)。そして、適応型ローパスフィルタ3は、恒常的な背景雑音成分S2が除去された信号Sbをバンドパスフィルタ4及び減算器5に出力する。
【0034】
図4Bに、ステップS12において適応型ローパスフィルタ3から出力される信号Sbの周波数特性を示す。なお、図4Bの横軸は周波数であり、縦軸はゲインである。適応型ローパスフィルタ3では、恒常的な背景雑音成分S2を除去するので、適応型ローパスフィルタ3の出力信号Sbの周波数特性では背景雑音成分S2が無くなり、尿水の衝突により小便器1で発生する共振振動成分S1と突発的な雑音成分S3とが主に残る。
【0035】
次いで、バンドパスフィルタ4は、入力された信号Sbから小便器1の固有の共振周波数f0(バンドパスフィルタ4の中心周波数)を含む所定帯域Δfの信号を抽出する(ステップS13)。なお、本実施形態では、バンドパスフィルタ4で抽出された信号に、尿水の衝突により小便器1で発生する共振振動の信号成分S1全体が含まれるように周波数帯域Δfを設定した。具体的には、抽出する周波数帯域を1kHz〜4kHz(Δf=3kHz)とした。そして、バンドパスフィルタ4は、抽出した信号Scを減算器5及びレベル検出部6に出力する。
【0036】
図4Cに、ステップS13においてバンドパスフィルタ4で抽出された信号Scの周波数特性を示す。なお、図4Cの横軸は周波数であり、縦軸はゲインである。抽出信号Scには、尿水の衝突により小便器1で発生する共振振動成分S1及び同じ帯域の突発的な雑音成分S3が含まれている。しかしながら、信号Scのレベル値Lcは、主に小便器1で発生する共振振動の信号成分S1に依存すると考えられる。
【0037】
なお、バンドパスフィルタ4の中心周波数f0を設定する際には、上述したような陶製の小便器1に共通した共振周波数f0(約2.5kHz)をバンドパスフィルタ4の中心周波数として用いてもよい。また、小便器1により共振周波数f0が多少ばらつくので、実際に用いる小便器1の固有の共振周波数f0をあらかじめ測定して求めておき、その値をバンドパスフィルタ4の中心周波数として用いてもよい。
【0038】
また、本実施形態では、小便器1の共振振動の信号成分S1が全て含まれるようにバンドパスフィルタ4で抽出する帯域幅Δfを設定している。これは、小便器1により共振周波数f0のばらつきが存在しても、確実に共振周波数f0近傍の信号成分を取り出すためである。それゆえ、実際に用いる小便器1の固有の共振周波数f0をあらかじめ測定している場合には、帯域幅Δfをより狭くして、求めた共振周波数f0近傍のみの成分を抽出してもよい。
【0039】
ここで、図3のフローチャートに戻って、次に、減算器5は、適応型ローパスフィルタ3の出力信号Sbからバンドパスフィルタ4の出力信号Scを減算する(ステップS14)。そして、減算器5は、減算された信号Sdをレベル検出部7に出力する。
【0040】
図4Dに、ステップS14において減算器5から出力される減算信号Sdの周波数特性を示す。なお、図4Dの横軸は周波数であり、縦軸はゲインである。減算信号Sdは、周波数帯域Δfの周波数成分を含まない信号となる。また、減算器5では、適応型ローパスフィルタ3の出力信号Sbから、主に、小便器1で発生する共振振動成分S1を除去しているので、減算信号Sdに含まれる主な信号成分は突発的な雑音成分S3(ホワイトノイズ)となる。それゆえ、減算信号Sdの時系列の信号波形(図6A参照)は、ほぼ振幅一定の平坦な特性となる。
【0041】
次いで、レベル検出器6は、バンドパスフィルタ4の出力信号Scの振幅のレベル信号Lcを検出する(ステップS15)。そして、レベル検出器6は検出したレベル信号Lcを比率計算部8に出力する。
【0042】
図5A及び5Bに、ステップS15におけるレベル信号Lcの検出の様子を示す。図5Aは、レベル検出器6の入力波形であり、図5Bは、レベル検出器6の出力波形である。なお、図5A及び5Bの横軸は時間であり、図5Aの縦軸は振幅であり、そして、図5Bの縦軸は信号レベルである。レベル検出器6の入力信号Scの波形は、図5A中の実線で示すような高周波信号であり、小便器1が使用されている時間帯でその振幅が大きくなる。レベル検出器6は、このような高周波信号のエンベロープ(包絡線:図5A中の破線)を検出して出力する。それゆえ、レベル検出器6から出力されるレベル信号Lcは、図5Bに示すように、小便器1が使用されている時間帯で信号レベルが大きくなり、それ以外の時間帯では、ほぼ均一レベルの信号波形となる。
【0043】
次いで、レベル検出器7は、減算器5の出力信号Sdの振幅のレベル信号Ldを検出する(ステップS16)。そして、レベル検出器7は検出したレベル信号Ldを比率計算部8に出力する。なお、本実施形態では、ステップS16をステップS15の後に行っているが、ステップS16をステップS15の前に行ってもよいし、同時に平行して行ってもよい。
【0044】
図6A及び6Bに、ステップS16におけるレベル信号Ldの検出の様子を示す。図6Aは、レベル検出器7の入力波形であり、図6Bは、レベル検出器7の出力波形である。なお、図6A及び6Bの横軸は時間であり、図6Aの縦軸は振幅であり、そして、図6Bの縦軸は信号レベルである。レベル検出器7の入力信号Sdに含まれる信号成分は、上述のように、主に突発的な背景雑音成分であるので、レベル検出器7の入力信号Sdの波形は、図6A中の実線で示すような振幅略一定の高周波信号(ホワイトノイズ)となる。それゆえ、レベル検出器7から出力されるレベル信号Ldは、図6Bに示すように、信号レベルが略均一の信号波形となる。
【0045】
次いで、比率計算部8は、入力されたレベル信号Lc及びLdのレベル比率Lr=Lc/Ldを計算し(ステップS17)、レベル比率Lrの信号を比較部9に出力する。
【0046】
図7Aに、ステップS17において比率計算部8から出力されるレベル比率Lrの信号波形を示す。なお、図7Aの横軸は時間であり、図7Aの縦軸は信号レベルである。比率計算部8から出力されたレベル比率Lrは、図7Aに示すように、小便器1が使用されている間はレベル比率Lrが大きくなり、それ以外の時間帯は平坦な特性となる。なお、上述のように、突発的な雑音成分S3は一般的にホワイトノイズである。それゆえ、レベル検出器6に入力されるΔfの帯域の信号Scに含まれる突発的な雑音成分S3の信号レベルと、減算器5から出力されたΔf以外の帯域の信号Sdに含まれる突発的な雑音成分S3の信号レベルとは、ほぼ同一となる。したがって、レベル比率Lr=Lc/Ldの信号波形において、小便器1が使用されていない平坦な部分の値は約1となる。
【0047】
次いで、比較部9は、比率計算部8から出力されたレベル比率Lrの信号と判定信号P1との大小関係を比較する(ステップS18)。なお、本実施形態では、判定信号P1の信号レベルが、小便器1が使用していない時の信号レベル、すなわち、1より大きく且つ、小便器1を使用している際に得られる信号レベルの最大値より小さくなるように設定した。
【0048】
レベル比率Lrの信号レベルが判定信号P1以上である場合(ステップS18でYES判定となった場合)に、比較部9は、所定レベルの信号Sf(駆動信号)を水洗弁12に出力する(ステップS19)。一方、レベル比率Lrの信号レベルが判定信号P1より小さい場合(ステップS18でNO判定となった場合)に、比較部9は、信号Sfを水洗弁12に出力しない(ステップS20)。
【0049】
図7Bに、ステップS19において比較部9から出力される駆動信号Sfの信号波形を示す。なお、図7Bの横軸は時間であり、図7Bの縦軸は信号レベルである。本実施形態では、レベル比率Lrが判定信号P1以上である場合に、比較部9から所定レベルの信号を出力し続けるので、比較部9から出力される駆動信号Sfの波形は、図7Bに示すように、矩形状の波形となる。
【0050】
そして、比較部9は、駆動信号Sfを出力して小便器1の水洗弁12の開閉制御を行う。具体的には、所定レベルの駆動信号Sfが立ち下がった時点(小便器1の使用が終了した時点)で、水洗弁12を開けて、所定時間の間小便器1を洗浄する。なお、水洗弁12は、水洗弁12の開放から所定時間経過すれば自動的に水洗弁12が閉じる構成となっている。
【0051】
図8に、本実施形態における小便器1の使用状況、駆動信号Sfの出力状況及び水洗弁12の開閉状況のタイミングチャートを示す。本実施形態では、図8に示すように、ユーザが小便器1を使用している間、洗浄装置100は水洗弁12に駆動信号Sfを出力し続ける。そして、小便器1の使用が終了した時点で、駆動信号Sfが立ち下がり、この立ち下がりを検出した水洗弁12は、弁を所定期間開放して水を流し、洗浄を行う。
【0052】
本実施形態では、上述のようにして小便器1の使用の有無を判断し、小便器1の使用が終了次第、水洗弁12を開けて小便器1を洗浄する。
【0053】
上述のように、本実施形態では、比較的安価な圧電素子を振動検出素子2として小便器1の裏面に設置し、それにより検出された振動信号から小便器1の固有の共振周波数を含む帯域の信号を抽出する。そして、その抽出した信号の振幅レベルに基づいて小便器1の水洗弁12を駆動する。また、上述のように、本実施形態では、従来のように、例えば陶製の便器に特別な窓等を設けたり、10GHzのマイクロ波の発信器や受信機等の高価な設備を設けたりする必要はない。すなわち、本実施形態によれば、極めて安価な設備(圧電素子や回路等)で小便器1の使用を的確に判断し、小便器1の洗浄を確実に行うことができる。
【0054】
また、本実施形態によれば、小便器1の裏面に振動検出素子2を接着して取り付けているので、その設置を容易に行うことができ、装置構成もより簡易になる。
【0055】
[第2の実施形態]
本発明の第2の実施形態では、例えば、公衆用に設置された小便器に使用して好適な洗浄装置について説明する。小便器の使用の有無を検出する際、小便器が個室に設置されている場合には上述した第1の実施形態の洗浄装置で問題はない。しかしながら、公衆用に設置された小便器では、その正面等で大声の会話が行われると、その会話の音声に小便器が共振し、その共振振動を振動検出器が検出する。この場合、洗浄装置は小便器が使用されていると誤判断する可能性がある。本実施形態では、このような誤判断を防止することができる小便器の洗浄装置を説明する。
【0056】
[装置構成]
図9は、本発明に係る小便器の洗浄装置の第2の実施形態の構成例を示すブロック図である。なお、図9において、第1の実施形態と同じ構成部分には同一符号を付した。なお、図9には図示していないが、本実施形態の洗浄装置は、第1の実施形態と同様に電源を内蔵している。
【0057】
本実施形態の洗浄装置200は、図9に示すように、小便器1のリム部1bの裏面に設置された2つの振動検出素子2a及び2bと、2つの振動検出素子2a及び2bで検出した信号を加算する加算器21とを備える。また、洗浄装置200は、振動検出素子2a及び2bで検出した信号のレベルを判定するレベル判定回路29と、2つの振動検出素子2a及び2bで検出した信号の位相差を検出する位相差判定回路30とを備える。さらに、洗浄装置200は、レベル判定回路29及び位相差判定回路30の出力信号に基づいて、小便器1の使用の有無を判定するAND回路部28を備える。本実施形態では、レベル判定回路29及び位相差判定回路30の両方でそれぞれ別個に小便器1の使用の有無を判定し、その両判定結果に基づいてAND回路部28で最終的な判定を行う。以下に、本実施形態の洗浄装置200を構成する各部の機能を簡単に説明する。
【0058】
2つの振動検出素子2a及び2b(第1及び第2の振動検出器)は、図9に示すように、小便器1のリム部1bの裏面に取り付けられ、その上下方向(長手方向)に所定間隔離して接着固定されている。また、小便器1の使用時に尿水がリム部1bに当たる平均の高さが、振動検出素子2a及び2bを結ぶ線の中央位置より下となるように、2つの振動検出素子2a及び2bは、上下に離間して配置されている。なお、後述する2つの振動検出素子2a及び2bで検出する信号間の位相差をより確実に検出するためには、2つの振動検出素子2a及び2bは、約20cm程度離して設置することが好ましい。
【0059】
加算器21は、2つの振動検出素子2a及び2bで検出された信号Sa1及びSa2を加算し、その加算信号Saをレベル判定回路29に出力する。なお、本実施形態において、2つの振動検出素子2a及び2bで検出された信号を加算する理由は次のとおりである。
【0060】
図9に示すように、尿水が当たる位置は、上方の振動検出素子2aより下方の振動検出素子2bの方が近くなる。それゆえ、下方の振動検出素子2bでは十分なレベルの振動信号を検出することができるが、上方の振動検出素子2aでは振動信号の検出レベルが低くなる。それゆえ、上方の振動検出素子2aからの検出信号のみを用いた場合には、レベル判定回路29で正確に小便器1の使用の有無を判定できなくなる恐れがある。したがって、本実施形態では、上下2つの振動検出素子2a及び2bで検出された信号を加算器21で加算して、レベル判定回路29での判定に必要な十分な信号レベルを確保する。なお、上下2つの振動検出素子2a及び2bで検出された信号には後述するように位相差が生じるので、加算器21で加算された信号のレベルは、上下2つの振動検出素子2a及び2bで検出された信号を同位相で加算した場合のレベルより低くなるが、レベル判定回路29での判定に必要な十分な信号レベルは確保することができる。
【0061】
なお、本発明はこれに限定されず、下方の振動検出素子2bでは、ある程度大きな信号レベルの振動信号を検出することができるので、レベル判定回路29の入力信号として、下方の振動検出素子2bからの検出信号のみを用いてもよい。また、より高感度の振動検出素子を用いた場合には、上方の振動検出素子2aの検出信号のみをレベル判定回路29に入力してもよい。これらの場合には加算器21を設ける必要は無い。
【0062】
レベル判定回路29は、2つの振動検出素子2a及び2bで検出した振動信号から、小便器1に固有の共振周波数の信号成分を抽出して、その抽出信号の振幅レベルに基づいて小便器1の使用の有無を判定する。本実施形態では、図1と図10の比較から明らかなように、レベル判定回路29の構成は、第1の実施形態の洗浄装置100と同様の構成である。それゆえ、ここでは、レベル判定回路29の構成の詳細な説明は省略する。
【0063】
位相差判定回路30は、図9に示すように、2つのバンドパスフィルタ(BPF)22及び23と、位相比較回路24と、ローパスフィルタ(LPF)25と、比較部26と、判定信号出力回路27とを備える。
【0064】
2つのバンドパスフィルタ22及び23(第2及び第3フィルタ回路)は、それぞれ上方の振動検出素子2a及び下方の振動検出素子2bに接続されている。2つのバンドパスフィルタ22及び23は、それぞれ、上方の振動検出素子2a及び下方の振動検出素子2bで検出された振動信号Sa1及びSa2から小便器1に固有の共振周波数を含む(中心周波数とする)所定の帯域の信号を抽出する。そして、バンドパスフィルタ22及び23は、それぞれ抽出した信号Sc1及びSc2を位相比較回路24に出力する。
【0065】
なお、バンドパスフィルタ22及び23には、レベル判定回路29内のバンドパスフィルタ4(第1フィルタ回路)と同様のフィルタを用いる。また、バンドパスフィルタ4,22及び23で抽出する信号の周波数帯域Δf及び中心周波数f0(小便器1に固有の共振周波数)は同じとする。
【0066】
位相比較回路24(位相差検出回路)は、バンドパスフィルタ22及び23で抽出された信号の位相差を検出する。本実施形態では、図9に示すように、尿水の当たる位置から2つの振動検出素子2a及び2bまで距離は異なるので、尿水の当たった位置で発生した共振振動がそれぞれの振動検出素子2a及び2bに到達するまでの時間に差が生じる。それゆえ、バンドパスフィルタ22及び23で抽出された信号には位相差が生じる。位相比較回路24は、この位相差に対応した信号Δφを出力する。なお、この位相差は、尿水が当たっている位置によって変化する。
【0067】
なお、会話の音声による振動は小便器1の全体に音圧が加わるので、その場合には、振動が振動検出素子2a及び2bに到達する時間に差が生じることはなく、会話の音声による共振信号の位相は小便器1の位置にかかわらず同じであると考えられる。それゆえ、振動検出素子2a及び2bで検出された信号に位相差が有るか否かを判定することにより、会話の音声により発生する振動信号と、小便器1の使用により発生する振動信号とを区別するができる。
【0068】
ローパスフィルタ25は、位相比較回路24から出力された位相差信号Δφを連続性のある信号に変換し、その信号Sgを比較部26に出力する。
【0069】
比較部26は、ローパスフィルタ25及び判定信号出力回路27に接続されている。そして、比較部26は、ローパスフィルタ25の出力信号Sgと、判定信号出力回路27から出力される判定信号P2との大小関係を判定し、小便器1が使用されているか否かを判定する。
【0070】
判定信号出力回路27は、レベル検出回路29の判定信号出力回路10(第1の実施形態の判定信号出力回路10:図1参照)と同様に構成を有する。なお、判定信号出力回路27から出力される判定信号P2は、2つの振動検出素子2a及び2bの配置位置等に応じて適宜設定される。
【0071】
AND回路部28(駆動部)は、水洗弁12に接続されており、レベル判定回路29及び位相差判定回路30の両方からの出力信号に基づいて水洗弁12の開閉を制御する。具体的には、レベル判定回路29及び位相差判定回路30の両方から所定レベル信号Sf及びShが出力されている場合にのみ、AND回路部28は、所定レベルの信号Sj(駆動信号)を水洗弁12に出力する。そして、その駆動信号Sjが立ち下がった際に、水洗弁12は、その弁を所定期間開放して水を流して洗浄を行う。
【0072】
[洗浄装置の動作]
次に、本実施形態の小便器の洗浄装置の動作を図10及び11を参照しながらより詳細に説明する。
【0073】
図10は、本実施形態の洗浄装置200の動作の手順を示したフローチャートである。なお、本実施形態のレベル判定回路29の動作(図10中のステップS23〜28)は第1の実施形態(図3中のステップS12〜S17)と同様であるので、その説明は省略する。また、以下の説明では、小便器1が使用されている場合について説明する。ただし、小便器1が使用されていない場合であっても、以下の処理が行われる。その場合には、検出した振動信号には小便器1に固有の共振周波数を含む信号成分が含まれないので、後述するステップS32でNO判定となり、AND回路部28からは駆動信号Sjが出力されない。
【0074】
まず、位相差判定回路30の処理系統の動作を説明する。
【0075】
ユーザが小便器1を使用すると、尿水は小便器1のリム部1bに当たり、その後、底面部1cに溜まって排水される。この際、2つの振動検出素子2a及び2bは、小便器1に発生する共振振動を含む振動を検出する(ステップS21)。そして、振動検出素子2a及び2bは、検出信号Sa1及びSa2をそれぞれバンドパスフィルタ22及び23に出力する。なお、振動検出素子2a及び2bは、検出信号Sa1及びSa2を加算器21にも出力する。
【0076】
次いで、バンドパスフィルタ22及び23は、それぞれ検出信号Sa1及びSa2から小便器1の固有の共振周波数を含む(共振周波数f0を中心周波数とする)所定帯域の周波数成分の信号Sc1及びSc2を抽出する(ステップS29)。そして、バンドパスフィルタ22及び23は、抽出した信号Sc1及びSc2を位相比較回路24に出力する。
【0077】
図11A及び11Bに、ステップS29において2つのバンドパスフィルタ22及び23で抽出された信号の信号波形を示す。図11Aは、下方の振動検出素子2bの検出信号Sa2からバンドパスフィルタ23で小便器1の固有の共振周波数を含む所定帯域の周波数成分の信号Sc2を抽出した際の信号波形である。そして、図11Bは、上方の振動検出素子2aの検出信号Sa1からバンドパスフィルタ22で小便器1の固有の共振周波数を含む所定帯域の周波数成分の信号Sc1を抽出した際の信号波形である。なお、図11A及び11Bの横軸は時間であり、縦軸は振幅である。
【0078】
なお、図11A及び11Bの信号波形では、信号Sc1及びSc2に含まれる小便器1に固有の共振周波数の信号成分の位相関係を明確にするために、雑音成分の記載を省略している。実際の信号波形は、雑音成分が含まれるので、例えば、図5Aの実線に示すような複雑な高周波信号となる。また、小便器1のリム部1bに尿水が当たることにより発生する共振振動は、連続して発生する場合もあるが、断続的な振動が継続する場合もある。図11A及び11Bには、断続的な振動が継続する場合の例を示した。
【0079】
2つの振動検出素子2a及び2bで検出される共振信号成分の波形は、図11A及び11Bに示すように、同様の形状の波形となるが、尿水の当たる位置に近い下方の振動検出素子2bの方が、波形の変動部分が上方の振動検出素子2aより早い時間で現れる。なお、図11A及び11Bの例では、2つの抽出信号Sc1及びSc2の変動部分の位相差(時間差)が時間によって変化しているが、これは、例えば、尿水の当たる位置により変化したものである。また、上述したように、検出信号に会話の音声による振動成分が含まれる場合、会話の音声による振動は小便器1の全体に音圧が加わるので、そのような振動源による波形変動の位相差は生じない。
【0080】
ここで、図10のフローチャートに戻って、次に、位相比較回路24は、バンドパスフィルタ22及び23の出力信号間の位相差を算出し(ステップS30)、その位相差信号Δφをローパスフィルタ25に出力する。
【0081】
図11Cに、ステップS30において位相比較回路24から出力される信号(位相差信号Δφ)の波形を示す。なお、図11Cの横軸は時間であり、縦軸は位相差である。図11A及び11Bの例のように断続的な振動が継続する場合には、位相比較回路24からの出力信号もまた、図11Cに示すように、位相差が断続的に変化する信号になる。なお、位相差信号Δφは、尿水が当たっている位置によって変化する。
【0082】
次いで、ローパスフィルタ25は、入力された断続的な位相差信号Δφを、信号レベルが連続的に変化する信号Sgに変換し(ステップS31)、その信号Sgを比較部26に出力する。図11Dに、ステップS31においてローパスフィルタ25から出力される信号波形を示す。なお、図11Dの横軸は時間であり、縦軸は信号レベルである。この処理により、図11Cに示すような断続的な位相差信号Δφに対しても安定動作が可能になる。
【0083】
次いで、比較部26は、ローパスフィルタ25の出力信号Sgと判定信号P2との大小関係を判定する。なお、本実施形態では、図11Dに示すように、判定信号P2の信号レベルを、ローパスフィルタ25の出力信号Sgが飽和した際の値より小さく且つSg=0より大きくなるように設定した。
【0084】
そして、ローパスフィルタ25の出力信号Sgの信号レベルが判定信号P2以上となる場合に、比較部26は、所定レベルの信号ShをAND回路28に出力する。図11Eに、比較部26の出力信号Shの波形を示す。比較部26は、ローパスフィルタ25の出力信号Sgの信号レベルが判定信号P2以上となっている間(検出した2つの信号間に位相差が存在する間)、小便器1が使用されていると判定し、所定レベルの信号ShをAND回路28に出力し続ける。それゆえ、比較部26の出力信号Shの波形は矩形状となる。
【0085】
次に、レベル判定回路29の処理系統の動作を説明する。
【0086】
まず、加算器21は、ステップS21において2つの振動検出素子2a及び2bで検出された信号Sa1及びSa2を加算し(ステップS22)、その加算信号Saをレベル判定回路29に出力する。
【0087】
次いで、レベル判定回路29は、第1の実施形態と同様にして、加算信号Saから小便器1に固有の共振周波数成分を抽出し、その抽出信号の振幅レベルに基づいて、比較部9から図7Bに示すような出力信号SfをAND回路部28に出力する(ステップS23〜28)。
【0088】
次いで、AND回路部28は、レベル判定回路29及び位相差判定回路30からそれぞれ出力された信号Sf及びShに基づいて、小便器1の水洗弁12の開閉制御を行う。具体的には、まず、レベル判定回路29及び位相差判定回路30の両方から信号Sf及びShがAND回路部28に入力されているか否かを判定する(ステップS32)。すなわち、AND回路部28は、2つの振動検出素子2a及び2bで検出した振動信号から抽出した小便器1に固有の共振振動成分のレベル比率Lrが第1の設定信号P1以上であり、且つ、抽出された共振振動成分間の位相差Δφが第2の設定信号P2以上であるか否かを判定する。
【0089】
次いで、レベル判定回路29及び位相差判定回路30の両方から信号Sf及びShがAND回路部28に入力されている場合(ステップS32でYES判定の場合)、AND回路部28は、駆動信号Sjを水洗弁12に出力する(ステップS33)。この駆動信号Sjにより水洗弁12の開閉制御をする。具体的には、第1の実施形態と同様に、駆動信号Sjが立ち下がった際に、水洗弁12を所定期間開放し、洗浄を行う。
【0090】
一方、レベル判定回路29及び位相差判定回路30の両方から信号Sf及びShがAND回路部28に入力されていない場合(ステップS32でNO判定の場合)には、AND回路部28は、駆動信号Sjを水洗弁12に出力せず、水洗弁12を閉めた状態に維持する(ステップS34)。
【0091】
本実施形態では、上述のようにして、2つの振動検出素子2a及び2bで検出した信号から、小便器1に固有の共振周波数成分の信号の振幅レベル及び検出した信号間の位相差に基づいて小便器1の使用の有無を判定する。
【0092】
上述のように、本実施形態では、比較的安価な圧電素子を振動検出素子2として2つ小便器1の裏面に設置し、それにより検出された振動信号から、小便器1の固有の共振周波数を含む帯域の信号を抽出する。そして、その抽出した信号の振幅レベルに基づいて小便器1の使用の有無を判定し、小便器1の水洗弁12を駆動する。したがって、第1の実施形態と同様に、本実施形態においても、極めて安価な設備で小便器1の使用を的確に判断し、小便器1の洗浄を確実に行うことができる。また、本実施形態では、装置構成もより簡易にすることができる。
【0093】
また、本実施形態では、2つの振動検出素子2a及び2bで検出された小便器1の固有の共振周波数を含む帯域の信号の振幅レベルだけでなく、信号間の位相差も用いて小便器1の使用の有無を判断する。それゆえ、例えば、公衆用に設置された小便器の正面で大声の会話が行われたような場合であっても、それらの会話により発生する振動信号と、小便器1の使用により発生する振動信号とを区別するができる。それゆえ、本実施形態では、上述のような状況においても確実に小便器1の使用の有無を判断することができる。
【0094】
[第3の実施形態]
本発明の第3の実施形態では、例えば、比較的大きな(高価な)小便器に使用して好適な洗浄装置について説明する。一般に、小便器が大きくなると、小便器のリム部の厚さも厚くなる。この場合、次のような問題が生じる。小便器のリム部の厚みが厚くなると、振動検出器で検出できる振動信号のレベルが小さくなる。また、このような場合、小便器の共振振動成分に対して、小便器の周辺に設置されている配管を流れる水等の恒常的な雑音の割合が大きくなる。したがって、小便器のリム部の厚さも厚くなると、小便器に固有の共振周波数成分の信号を十分な振幅レベルで抽出することが困難になり、正確に小便器の有無を判定することができなくなる可能性がある。
【0095】
第3の実施形態では、小便器のリム部の厚さも厚くなった場合でも、上述のような問題を解決し、小便器の使用の有無を的確に判断でき、小便器の洗浄を確実に行うことができる洗浄装置の例を説明する。
【0096】
[装置構成]
図12は、本発明に係る小便器の洗浄装置の第3の実施形態の構成例を示すブロック図である。なお、図12において、第1の実施形態と同じ構成部分には同一符号を付した。
【0097】
本実施形態の洗浄装置300は、図12に示すように、小便器1のリム部1bの裏面に設置された振動検出素子2と、フーリエ変換回路33と、バンドパスフィルタ4と、減算器5とを備える。また、洗浄装置300は、2つのレベル検出器6及び7と、比率計算部8と、比較部9と、判定信号出力回路10とを備える。なお、図12には図示していないが、本実施形態の洗浄装置は、第1の実施形態と同様に電源を内蔵している。
【0098】
図12の本実施形態の洗浄装置の構成と、図1に示した第1の実施形態のそれとの比較から明らかなように、本実施形態では、第1の実施形態の洗浄装置100の適応型ローパスフィルタ3をフーリエ変換回路33で置き換えた構成となる。本実施形態では、フーリエ変換回路33以外の構成は、第1の実施形態と同様とする。それゆえ、ここではフーリエ変換回路33についてのみ説明する。
【0099】
フーリエ変換回路33は、フーリエ変換部34と、記憶部35と、減算器36と、逆フーリエ変換部37と、スイッチ38と、スイッチの動作を制御するNOT回路39及びOR回路40から回路群とを備える。フーリエ変換回路33を構成する各部の機能は次の通りである。
【0100】
フーリエ変換部34は、振動検出素子2に接続されており、振動検出素子2で検出された小便器1の振動信号Saを高速フーリエ変換(FFT:Fast Fourier Transform)して該振動信号Saに対応するスペクトルに変換する。小便器1が使用されていない時に得られるスペクトルは、小便器1周辺の恒常的な背景雑音や突発的な雑音等の雑音スペクトルである。そして、小便器1の使用時には、小便器1周辺の恒常的な背景雑音や突発的な雑音等だけでなく、尿水が小便器1に当たったときに生じる小便器1に固有の共振周波数成分が含まれたスペクトル(振動スペクトル)が得られる。
【0101】
記憶部35は、小便器1周辺の恒常的な背景雑音や突発的な雑音等の雑音スペクトルを記憶する。なお、本実施形態では、この雑音スペクトルは、小便器1が使用されていない時にスイッチ38をON状態することにより、フーリエ変換部34を介して取得する。
【0102】
減算器36は、フーリエ変換部34及び記憶部35に接続されており、フーリエ変換部34の出力スペクトルから記憶部35に記憶された雑音スペクトルを減算する。小便器1の使用時には、この演算により、尿水が小便器1に当たったとき生じる小便器1に固有の共振周波数成分のスペクトルを抽出することができる。
【0103】
逆フーリエ変換部37は、減算器36の出力スペクトルを、逆高速フーリエ変換(IFFT:Inverse Fast Fourier Transform)して、減算器36の出力スペクトルに対応する時間軸上の信号に変換する。
【0104】
スイッチ36は、小便器1の雑音スペクトルを検出する期間と、それ以外の期間とを切換えられる。具体的には、小便器1の雑音スペクトルを検出する期間には、スイッチ36はON状態となり、それ以外ではOFF状態になる。
【0105】
NOT回路39及びOR回路40は、直列に接続されており、OR回路40の入力端子は比較部9の出力端子及び水洗弁12に接続されている。また、NOT回路39の出力端子はスイッチ38に接続されている。NOT回路39及びOR回路40は、スイッチ38の開閉を制御する回路群であり、振動検出素子2で小便器1の雑音スペクトルを検出して記憶部35に記憶する処理のタイミングを制御する。
【0106】
NOT回路39及びOR回路40からなる回路群の動作をより具体的に説明すると、まず、OR回路40には、比較部9から出力される駆動信号Sj、及び、水洗弁12から出力される水洗弁12の開閉状況の情報が入力される。なお、水洗弁12は常にその開閉状況に関する情報を認識している。次いで、これらの入力情報に基づいて、NOT回路39及びOR回路40からなる回路群は、スイッチ38の開閉を制御する。この際、比較部9から駆動信号Sjが入力されているとき(小便器1の使用中)、または、水洗弁12が開放状態にあるとき(小便器1の洗浄中)には、回路群は、スイッチ38がOFF状態となるようにスイッチ38に制御する。それ以外の場合には、回路群はスイッチ38がON状態となるようにスイッチ38に制御する。
【0107】
[洗浄装置の動作]
次に、本実施形態の洗浄装置300の動作を図13及び14を参照しながら説明する。図13は、本実施形態の洗浄装置300の動作の手順を示すフローチャートである。また、図14A〜14Cは、フーリエ変換回路33を構成する各部の出力スペクトルを示した図であり、横軸には周波数をとり、縦軸にはゲイン(スペクトル強度)をとった。なお、フーリエ変換回路33の動作以外の動作は第1の実施形態と同様であるので、ここでは、主に、フーリエ変換回路33の動作を説明する。
【0108】
まず、小便器1が使用されていない時の雑音スペクトルを検出する。具体的には、まず、小便器1が使用されていない時に、振動検出素子2が小便器1の振動を検出する(ステップS41)。この際、小便器1周辺の恒常的な背景雑音や突発的な雑音等を含む振動が振動検出素子2で検出される。そして、振動検出素子2は、検出信号Saをフーリエ変換回路34に出力する。なお、ここでいう「小便器が使用されていない時」は、ユーザが小便器1を使用している期間及び小便器1の洗浄期間以外の時間帯のことをいう。
【0109】
次いで、フーリエ変換部34は、ステップS41で検出した雑音信号を高速フーリエ変換により該雑音信号に対応する雑音スペクトルに変換して出力する(ステップS42)。この際、スイッチ38は、NOT回路39及びOR回路40からなる回路群の制御により、ON状態であるので、ステップS42で出力された雑音スペクトルは記憶部35に記憶される(ステップS43)。本実施形態では、以上のようにして、小便器1が使用されていない時の雑音スペクトルを検出する。なお、本発明はこれに限定されず、例えば、小便器1の設置時等に、小便器1の雑音スペクトルを予め測定しておき、記憶部35に記憶しておいてもよい。この場合、NOT回路39及びOR回路40からなる回路群、並びにスイッチ38を設ける必要がないので、装置構成がより簡易になる。
【0110】
図14Bに、ステップS42で得られる雑音信号の周波数特性(雑音スペクトル)を示す。雑音スペクトルには、例えば配管を流れる水の音(振動)などの小便器周辺の恒常的な背景雑音成分S2や、例えば人の移動(足音)や声、エレベータの移動等の突発的な雑音成分S3が含まれる。
【0111】
次いで、振動検出素子2は、再度、小便器1の振動を検出し(ステップS44)、その振動信号Saをフーリエ変換部34に出力する。この際、小便器1が使用されている場合、振動検出素子2で検出した振動信号には、小便器1周辺の恒常的な背景雑音や突発的な雑音等だけでなく、尿水が小便器1に当たったとき生じる小便器1に固有の共振周波数成分の信号が含まれる。以下に説明する処理では、小便器1が使用されている場合、すなわち、スイッチ38がOFF状態となっている場合について説明する。なお、小便器1が使用されていない場合であっても、以下の処理が行われる。この場合には、検出した振動信号には小便器1に固有の共振周波数を含む信号成分が含まれないので、比較部9からは駆動信号Sfが出力されない。
【0112】
次いで、フーリエ変換部34は、振動検出素子2で検出した振動信号Saを高速フーリエ変換により、振動信号Saに対応する振動スペクトルに変換する(振動スペクトル)(ステップS45)。そして、フーリエ変換部34は、変換した振動スペクトルを減算器36に出力する。
【0113】
図14Aに、ステップS45において振動検出素子2で検出される信号Saの周波数特性(振動スペクトル)を示す。検出信号Saには、尿水の衝突により小便器1で発生する共振振動の信号成分S1だけでなく、上述した小便器周辺の恒常的な背景雑音成分S2や突発的な雑音成分S3が含まれる。共振振動成分S1は、小便器1に固有の共振によるものであるので、その信号成分の周波数は小便器1の固有の共振周波数f0の近傍になる。
【0114】
次いで、減算器36は、記憶部35に記憶された雑音スペクトル(図14B)を読み出し、フーリエ変換部34から入力された振動スペクトル(図14A)から雑音スペクトルを減算する(ステップS46)。この処理により、主に、尿水が小便器1に当たったとき生じる小便器1に固有の共振周波数成分のスペクトルを抽出する。図14Cに、ステップS46において減算器36から出力されるスペクトルの特性を示す。減算器36の出力スペクトルに含まれる信号成分は、主に、尿水の衝突により小便器1で発生する共振振動の信号成分S1になる。
【0115】
次いで、逆フーリエ変換部37は、逆高速フーリエ変換により、減算器36の出力スペクトルを該出力スペクトルに対応する時間軸上の信号に変換する(ステップS47)。そして、逆フーリエ変換部37は、その変換された信号をバンドパスフィルタ4及び減算器5に出力する。その後は、第1の実施形態と同様にして、図3中にステップS13〜S20の処理を行い、小便器1の使用の有無を判定し、小便器1の水洗弁12の開閉制御を行う。
【0116】
図15に、本実施形態における小便器1の使用状況、駆動信号Sfの出力状況、水洗弁12の開閉状況及びスイッチ38の開閉状況のタイミングチャートを示す。本実施形態では、図15に示すように、ユーザが小便器1を使用している間、洗浄装置300は水洗弁12に駆動信号Sfを出力し続ける。そして、小便器1の使用が終了した時点で、駆動信号Sfが立ち下がり、この立ち下がりを検出した水洗弁12は、弁を所定期間開放して洗浄を行う。また、本実施形態では、ユーザが小便器1を使用している間、または、水洗弁12が開いている間(洗浄期間)には、スイッチ38はOFF状態となり、それ以外の期間にはスイッチ38はON状態となる。洗浄装置300は、スイッチ38がON状態である間は、周期的または適宜、小便器1周辺の雑音スペクトルを更新し続ける。
【0117】
第1の実施形態では、適応型ローパスフィルタ3により小便器1周辺の恒常的な背景雑音成分S2は除去したが、例えば、人の移動や声、エレベータの移動等の突発的な雑音(ホワイトノイズ)成分S3は除去していない(図4B参照)。それに対して、本実施形態では、フーリエ変換回路部33で小便器1周辺の恒常的な背景雑音成分S2だけでなく、突発的な雑音成分S3も除去することができる(図14C参照)。それゆえ、本実施形態では、上述したように小便器1のリム部1bの厚さが厚くなり、小便器1の共振振動成分に対する雑音成分の割合が大きくなっても、その雑音成分を十分除去することができる。また、本実施形態では、主に、小便器1に固有の共振周波数成分の信号のみを抽出して、その信号に基づいて小便器1の有無を判定することができる。したがって、本実施形態によれば、上述したような小便器1のリム部1bの厚さが厚くなった際の問題を解消し、小便器1の使用を的確に判断して、小便器1の洗浄を確実に行うことができる。
【0118】
また、本実施形態では、第1の実施形態と同様に、小便器1の使用の有無の判定に用いる振動信号の検出器として、比較的安価な圧電素子を用いている。それゆえ、本実施形態においても、第1の実施形態と同様に、安価で簡易な設備で小便器1の使用を的確に判断し、小便器1の洗浄を確実に行うことができる。
【0119】
[第4の実施形態]
第4の実施形態では、第3の実施形態で説明したフーリエ変換回路を第2の実施形態の洗浄装置に適用した例を説明する。
【0120】
[装置構成]
図16は、本発明に係る小便器の洗浄装置の第4の実施形態の構成例を示すブロック図である。なお、図16において、第2及び第3の実施形態と同じ構成部分には同一符号を付した。
【0121】
本実施形態の洗浄装置400は、図16に示すように、小便器1のリム部1bの裏面に設置された2つの振動検出素子2a及び2bと、2つの振動検出素子2a及び2bで検出した信号を加算する加算器21とを備える。また、洗浄装置400は、振動検出素子2a及び2bで検出した信号のレベルを判定するレベル判定回路49と、2つの振動検出素子2a及び2bで検出した信号の位相差を検出する位相差判定回路30とを備える。さらに、洗浄装置400は、レベル判定回路49及び位相差判定回路30の出力信号に基づいて、小便器1の使用の有無を判定するAND回路部28を備える。なお、図16には図示していないが、本実施形態の洗浄装置は、第1の実施形態と同様に電源を内蔵している。
【0122】
図16の本実施形態の洗浄装置の構成と、図9に示した第2の実施形態のそれとの比較から明らかなように、本実施形態では、第2の実施形態の洗浄装置200の適応型ローパスフィルタ3をフーリエ変換回路33で置き換えた構成となる。そして、フーリエ変換回路33は、第3の実施形態と同様の構成である。
【0123】
本実施形態の洗浄装置400の動作は、図10に示した第2の実施形態の処理のステップS22及びS23の代わりに、図13に示した第3の実施形態の処理(ステップS41〜S47)を行う。それゆえ、本実施形態においても、第3の実施形態と同様に、小便器1のリム部1bの厚さが厚くなった際の問題を解消し、小便器1の使用を的確に判断して、小便器1の洗浄を確実に行うことができる。
【0124】
また、本実施形態では、第2の実施形態と同様に、2つの振動検出素子2a及び2bで検出された小便器1の固有の共振周波数を含む帯域の信号の振幅レベルだけでなく、信号間の位相差も用いて小便器1の使用の有無を判断する。それゆえ、例えば、公衆用に設置された小便器の正面で大声の会話が行われたような場合であっても、それらの会話により発生する振動信号と、小便器1の使用により発生する振動信号とを区別するができる。それゆえ、本実施形態では、上述のような状況においても確実に小便器1の使用の有無を判断することができる。
【0125】
さらに、本実施形態では、第1の実施形態と同様に、小便器1の使用の有無の判定に用いる振動信号の検出器として、比較的安価な圧電素子を用いている。それゆえ、本実施形態においても、第1の実施形態と同様に、安価で簡易な設備で小便器1の使用を的確に判断し、小便器1の洗浄を確実に行うことができる。
【0126】
なお、第4の実施形態では、加算器21の後段にフーリエ変換回路33を設けているが、本発明はこれに限定されない。例えば、フーリエ変換回路33を2つ用意し、各フーリエ変換回路33をそれぞれ振動検出素子2a及び2bに直接接続してもよい。
【0127】
上記実施形態では、振動検出器として圧電素子を用いた例を説明したが、本発明はこれに限定されず、小便器1の振動を検出することができる振動検出器であれば、任意の振動検出器を用いることができる。例えば、加速度センサ、マイクロフォン、光距離センサ、静電型距離センサ、G(Gravity)センサ、圧力センサなどを用いてもよい。特に、マイクロフォンは圧電素子や加速度センサに比べて非常に安価であるので、マイクロフォンを振動検出素子2として用いた場合には、より安価な洗浄装置を提供することができる。
【0128】
ここで、マイクロフォンを振動検出素子2として用いた場合のマイクロフォンの設置例を図17に示す。マイクロフォン54を用いる場合には、マイクロフォン54の吸音部54aを小便器1のリム部1bと対向するように配置し、マイクロフォン54の背部を接着剤55で覆うようにして接着固定することが好ましい。このようにマイクロフォン54を接着固定することにより、小便器1の背部の配管等からの雑音を抑制することができる。
【0129】
また、上記実施形態では、振動検出素子2を設置する小便器1の裏面に対して何の加工もせずに粘着テープで振動検出素子2を接着固定したが、本発明はこれに限定されない。振動検出素子2が設置される小便器1の裏面部分に、平面部等の部位を設けて振動検出素子2を設置し易くしてもよい。この場合、小便器1の裏面に平面部等の部位を設けることは、製造時の金型等の処理を少し変更することで達成できるので、製造工程の増加等を伴わずに簡単に実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0130】
【図1】第1の実施形態の洗浄装置のブロック構成図である。
【図2】圧電素子の概略構成図である。
【図3】第1の実施形態における洗浄処理の手順を示すフローチャートである。
【図4】図4Aは振動検出素子の出力スペクトルであり、図4Bは適応型ローパスフィルタの出力スペクトルであり、図4Cはバンドパスフィルタの出力スペクトルであり、そして、図4Dは減算器の出力スペクトルである。
【図5】図5Aはレベル検出器の入力波形であり、図5Bはレベル検出器の出力波形である。
【図6】図6Aはレベル検出器の入力波形であり、図6Bはレベル検出器の出力波形である。
【図7】図7Aは比率計算部の出力波形であり、図7Bは比較部の出力波形である。
【図8】第1の実施形態の洗浄処理のタイミングチャートである。
【図9】第2の実施形態の洗浄装置のブロック構成図である。
【図10】第2の実施形態における洗浄処理の手順を示すフローチャートである。
【図11】図11Aは下方の振動検出素子で検出された共振振動成分の信号波形であり、図11Bは上方の振動検出素子で検出された共振振動成分の信号波形であり、図11Cは位相差比較回路の出力波形であり、図11Dはローパスフィルタの出力波形であり、そして、図11Eは比較部の出力波形である。第2の実施形態の洗浄装置を構成する各部の出力信号の特性図である。
【図12】第3の実施形態の洗浄装置のブロック構成図である。
【図13】第3の実施形態における洗浄処理の手順を示すフローチャートである。
【図14】図14Aはフーリエ変換部から出力されたスペクトル(周波数特性)であり、図14Bは記憶部に記憶された雑音スペクトルであり、そして、図14Cは減算器から出力されたスペクトルである。
【図15】第3の実施形態の洗浄処理のタイミングチャートである。
【図16】第4の実施形態の洗浄装置のブロック構成図である。
【図17】マイクロフォンの一設置例を示す図である。
【図18】従来の小便器の概略正面図である。
【符号の説明】
【0131】
1…小便器、2,2a,2b…振動検出素子、3…適応型ローパスフィルタ、4,22,23…バンドパスフィルタ、5,36…減算器、6,7…レベル検出器、8…比率計算部、9,26…比較部、10,27…判定信号出力回路、11…電源、12…水洗弁、24…位相比較回路、25…ローパスフィルタ、28…AND回路、29…レベル判定回路、30…位相差判定回路、33…フーリエ変換回路、34…フーリエ変換部、35…記憶部、37…逆フーリエ変換部、38…スイッチ、39…NOT回路、40…OR回路、100,200,300…洗浄装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水洗弁を有する小便器の裏面に設置され、前記小便器の振動を検出する振動検出器と、
前記振動検出器で検出した振動信号から前記小便器に固有の共振周波数を含む所定帯域の信号を抽出するフィルタ回路と、
前記フィルタ回路で抽出した前記信号の振幅レベルに基づいて、前記小便器の前記水洗弁の開閉制御を行う駆動部と、
を備える小便器の洗浄装置。
【請求項2】
さらに、前記振幅レベルを検出するレベル検出器を備える請求項1に記載に洗浄装置。
【請求項3】
さらに、前記振動検出器で検出した前記振動信号から雑音信号成分を除去する適応型ローパスフィルタを備える請求項1または2に記載の洗浄装置。
【請求項4】
さらに、前記振動検出器で検出した前記振動信号をフーリエ変換して振動スペクトルを出力するフーリエ変換部と、
前記小便器が使用されていない時に予め求められた雑音スペクトルを記憶する記憶部と、
前記振動スペクトルと、前記雑音スペクトルとを減算する減算器と、
前記減算器の出力スペクトルを逆フーリエ変換し、該変換された信号を前記フィルタ回路に出力する逆フーリエ変換部と、
を備える請求項1または2に記載の洗浄装置。
【請求項5】
水洗弁を有する小便器の裏面に設置され、前記小便器の振動を検出する第1の振動検出器と、
前記小便器の裏面に設置され且つ前記小便器の長手方向に第1の振動検出器から所定距離離して設置され、前記小便器の振動を検出する第2の振動検出器と、
第1及び第2の振動検出器の少なくとも一方で検出した振動信号から前記小便器に固有の共振周波数を含む所定帯域の第1信号を抽出する第1フィルタ回路と、
第1の振動検出器で検出した振動信号から前記小便器に固有の共振周波数を含む所定帯域の第2信号を抽出する第2フィルタ回路と、
第2の振動検出器で検出した振動信号から前記小便器に固有の共振周波数を含む所定帯域の第3信号を抽出する第3フィルタ回路と、
第2及び第3信号の位相差を検出する位相差検出回路と、
第1信号の振幅レベルと、第2及び第3信号の位相差とに基づいて、前記小便器の前記水洗弁の開閉制御を行う駆動部と、
を備える小便器の洗浄装置。
【請求項6】
さらに、第1信号の前記振幅レベルを検出するレベル検出器を備える請求項5に記載に洗浄装置。
【請求項7】
さらに、第1及び第2の振動検出器の少なくとも一方で検出した前記振動信号から雑音信号成分を除去して、該雑音信号成分を除去した信号を第1フィルタ回路に出力する適応型ローパスフィルタを備える請求項5または6に記載の洗浄装置。
【請求項8】
さらに、第1及び第2の振動検出器の少なくとも一方で検出した前記振動信号をフーリエ変換して振動スペクトルを出力するフーリエ変換部と、
前記小便器が使用されていない時に予め求められた雑音スペクトルを記憶する記憶部と、
前記振動スペクトルと、前記雑音スペクトルとを減算する減算器と、
前記減算器の出力スペクトルを逆フーリエ変換し、該変換された信号を第1フィルタ回路に出力する逆フーリエ変換部と、
を備える請求項5または6に記載の洗浄装置。
【請求項9】
さらに、第1及び第2の振動検出器で検出した振動信号を加算し、該加算した信号を第1フィルタ回路に出力する加算器を備える請求項5〜8のいずれか一項に記載の洗浄装置。
【請求項10】
前記振動検出器が、圧電素子であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の洗浄装置。
【請求項11】
前記振動検出器が、前記小便器の裏面に接着されていることを特徴とする請求項1〜12のいずれか一項に記載の洗浄装置。
【請求項1】
水洗弁を有する小便器の裏面に設置され、前記小便器の振動を検出する振動検出器と、
前記振動検出器で検出した振動信号から前記小便器に固有の共振周波数を含む所定帯域の信号を抽出するフィルタ回路と、
前記フィルタ回路で抽出した前記信号の振幅レベルに基づいて、前記小便器の前記水洗弁の開閉制御を行う駆動部と、
を備える小便器の洗浄装置。
【請求項2】
さらに、前記振幅レベルを検出するレベル検出器を備える請求項1に記載に洗浄装置。
【請求項3】
さらに、前記振動検出器で検出した前記振動信号から雑音信号成分を除去する適応型ローパスフィルタを備える請求項1または2に記載の洗浄装置。
【請求項4】
さらに、前記振動検出器で検出した前記振動信号をフーリエ変換して振動スペクトルを出力するフーリエ変換部と、
前記小便器が使用されていない時に予め求められた雑音スペクトルを記憶する記憶部と、
前記振動スペクトルと、前記雑音スペクトルとを減算する減算器と、
前記減算器の出力スペクトルを逆フーリエ変換し、該変換された信号を前記フィルタ回路に出力する逆フーリエ変換部と、
を備える請求項1または2に記載の洗浄装置。
【請求項5】
水洗弁を有する小便器の裏面に設置され、前記小便器の振動を検出する第1の振動検出器と、
前記小便器の裏面に設置され且つ前記小便器の長手方向に第1の振動検出器から所定距離離して設置され、前記小便器の振動を検出する第2の振動検出器と、
第1及び第2の振動検出器の少なくとも一方で検出した振動信号から前記小便器に固有の共振周波数を含む所定帯域の第1信号を抽出する第1フィルタ回路と、
第1の振動検出器で検出した振動信号から前記小便器に固有の共振周波数を含む所定帯域の第2信号を抽出する第2フィルタ回路と、
第2の振動検出器で検出した振動信号から前記小便器に固有の共振周波数を含む所定帯域の第3信号を抽出する第3フィルタ回路と、
第2及び第3信号の位相差を検出する位相差検出回路と、
第1信号の振幅レベルと、第2及び第3信号の位相差とに基づいて、前記小便器の前記水洗弁の開閉制御を行う駆動部と、
を備える小便器の洗浄装置。
【請求項6】
さらに、第1信号の前記振幅レベルを検出するレベル検出器を備える請求項5に記載に洗浄装置。
【請求項7】
さらに、第1及び第2の振動検出器の少なくとも一方で検出した前記振動信号から雑音信号成分を除去して、該雑音信号成分を除去した信号を第1フィルタ回路に出力する適応型ローパスフィルタを備える請求項5または6に記載の洗浄装置。
【請求項8】
さらに、第1及び第2の振動検出器の少なくとも一方で検出した前記振動信号をフーリエ変換して振動スペクトルを出力するフーリエ変換部と、
前記小便器が使用されていない時に予め求められた雑音スペクトルを記憶する記憶部と、
前記振動スペクトルと、前記雑音スペクトルとを減算する減算器と、
前記減算器の出力スペクトルを逆フーリエ変換し、該変換された信号を第1フィルタ回路に出力する逆フーリエ変換部と、
を備える請求項5または6に記載の洗浄装置。
【請求項9】
さらに、第1及び第2の振動検出器で検出した振動信号を加算し、該加算した信号を第1フィルタ回路に出力する加算器を備える請求項5〜8のいずれか一項に記載の洗浄装置。
【請求項10】
前記振動検出器が、圧電素子であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の洗浄装置。
【請求項11】
前記振動検出器が、前記小便器の裏面に接着されていることを特徴とする請求項1〜12のいずれか一項に記載の洗浄装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2010−31585(P2010−31585A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−196578(P2008−196578)
【出願日】平成20年7月30日(2008.7.30)
【出願人】(504174135)国立大学法人九州工業大学 (489)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年7月30日(2008.7.30)
【出願人】(504174135)国立大学法人九州工業大学 (489)
【Fターム(参考)】
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