説明

小便器

【課題】臭い及び尿石の発生を少量の水によって防止することができる小便器を提供する。
【解決手段】小便器は、下端部に排出口12を設けた便鉢部11を有する便器本体10と、便鉢部11の表面に向けて水を噴霧する噴霧器50とを備えており、噴霧器50以外に便鉢部11に水を供給する給水装置を備えていない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は小便器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は従来の小便器を開示している。この小便器は、便鉢部を有する便器本体と、便鉢部内に向けて液体消臭剤を噴霧する噴霧器とを備えている。この小便器は、噴霧器が液体消臭剤を便鉢部内に向け噴霧するため、便鉢部内を霧化した液体消臭剤で充満させることができる。このため、小便器の消臭を確実に行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−317122号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の小便器では、噴霧器が噴霧する液体消臭剤が一時的に臭いを消臭することができるが、臭いの発生原因となる尿を便鉢部から能動的に排出させることができない。このため、時間の経過とともに便鉢部の表面に残留した尿から臭いが発生したり、便鉢部の表面に尿石が形成されてしまったりするおそれがある。つまり、尿は排泄された直後には臭いを発生せず、尿がバクテリアの作用によって尿中の成分が分解されて生成するアンモニアによって臭いを発生する。このため、便鉢部の表面に尿が残留していると時間の経過とともに臭いが発生する。また、アンモニアの生成によって、pHが上昇すると尿中のカルシウムイオン等が炭酸塩、リン酸塩として析出し、尿石を形成する。このため、便鉢部の表面に尿が残留していると時間の経過とともに便鉢部の表面に尿石が形成される。さらに、尿石が多孔質のため、様々なバクテリアや有機物の温床となり、さらに強烈な臭いを放出することになる。
【0005】
便鉢部の表面に洗浄水を流すことによって、尿を便鉢部から排出し、臭いや尿石の発生を防止することができる水洗式小便器が存在するが、1回の便器洗浄に2〜3Lの洗浄水を消費する。
【0006】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、臭い及び尿石の発生を少量の水によって防止することができる小便器を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の小便器は、下端部に排出口を設けた便鉢部を有する便器本体と、
前記便鉢部の表面に向けて水を噴霧する噴霧器とを備えており、
前記噴霧器以外に前記便鉢部に水を供給する給水装置を備えていないことを特徴とする。
【0008】
この小便器は、噴霧器によって水を便鉢部の表面に噴霧するため、少量の水で便鉢部の表面の必要範囲を濡らすことができ、便鉢部の表面に尿が残留することを防止することができる。このため、この小便器では、便鉢部の表面で尿の成分がバクテリアの作用によって分解され、アンモニアが生成されることを防止することができる。また、アンモニアが生成されないため、便鉢部の表面のpHの上昇も防止することができる。
【0009】
したがって、本発明の小便器は臭い及び尿石の発生を少量の水によって防止することができる。
【0010】
前記排出口に連続して設けられ、非溶水性であり、尿よりも比重が軽く、貯留された尿より上方にシール層を形成するシール液が注入された排水トラップを備え得る。この場合、通常の水洗式小便器に備えられる排水トラップが貯留した水によって下流側の臭気が上流の便鉢部側に逆流することを防止するものであるのに対し、この排水トラップはシール液が形成するシール層によって下流側の臭気が便鉢部側に逆流すること防止することができる。このため、この排水トラップは水を貯留する必要がなく、節水化を図ることができる。よって、この排水トラップは少量の水を噴霧器によって便鉢部の表面に噴霧して便鉢部の表面に尿が残留することを防止する小便器に好適である。また、便鉢部から排水トラップの流入する水が少量であり、その勢いが弱いため、排水トラップ内のシール液が流出し難く、排水トラップの下流側の臭気が上流側の便鉢部側に逆流することを長期間、確実に防止することができる。
【0011】
前記噴霧器は前記便鉢部の表面が常に濡れた状態を保つように定期的に噴霧し得る。この場合、便鉢部の表面が常に濡れた状態に保たれるため、便鉢部の表面が乾燥して尿が固着してしまうことを確実に防止することができる。このため、噴霧器から噴霧される水が少量であっても、尿が便鉢部の表面に残留することを確実に防止し、臭い及び尿石の発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施例の小便器を示す断面図である。
【図2】実施例の小便器を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の小便器を具体化した実施例について、図面を参照しつつ説明する。
【0014】
<実施例>
実施例の小便器は、図1及び図2に示すように、便鉢部11を有する便器本体10と、便鉢部11の表面に設けられた3つの噴霧器50とを備えている。便器本体10は、壁面に係止され、固定されている。便器本体10は便鉢部11の下端部に円形状の排出口12を設けている。便器本体10は、排出口12に連続しており、上端が開口し、底部を有する円筒形状の収納容器20を有している。収納容器20は下端から延びた連結管21を有している。収納容器20は連結管21を介して壁面に引き出された排水管30に接続されている。
【0015】
収納容器20はカートリッジ形態に形成された排水トラップ40を着脱自在に収納している。排水トラップ40は、上面部41の中央に流入口41Aを形成し、底面部42の角部に流出口42Aを形成している。排水トラップ40は、流入口41Aから流入した尿等を一時的に貯留する貯留部43と、貯留部43から溢流した尿等が流下する流出路44とを有している。流出路44の下端は流出口42Aに連通している。貯留部43は、排水トラップ40の上面部41から垂下した隔壁45によって、流入口41A側の第1室43Aと、流出口42A側の第2室43Bとに仕切られている。第1室43Aと第2室43Bとは隔壁45の下端より下方で連通している。第1室43Aには、非溶水性であり、尿よりも比重が軽く、貯留された尿より上方にシール層46を形成するシール液が注入されている。
【0016】
このように、排水トラップ40はシール液が形成するシール層46によって下流側の臭気が便鉢部11側に逆流することを防止することができる。このため、排水トラップ40は水を多量に貯留する必要がなく、節水化を図ることができる。よって、この排水トラップ40は少量の水を噴霧器50によって便鉢部11の表面に噴霧して便鉢部11の表面に尿が残留することを防止する小便器に好適である。
【0017】
収納容器20に排水トラップ40を収納した状態で、便鉢部11の排出口12と、収納容器20の上端開口と、排水トラップ40の上端周縁とは水密状に連続している。このため、便鉢部11の表面を流下した尿等は、排水トラップ40の上面部41の表面を流れ、中央部に形成した流入口41Aから排水トラップ40の第1室43A内に流入する。このように、小便器は排出口12に連続して設けられた排水トラップ40を備えている。
【0018】
噴霧器50は、便鉢部11の表面の上端縁部11Aの中央と、左右縁部11Bの上部とに夫々取り付けられている。これら噴霧器50は便鉢部11の表面に向けて水を噴霧する複数の噴出口51を有している。噴出口51は、便鉢部11の表面の広い範囲に水を噴霧することができるように、様々な方向を向いている。これら噴霧器50は、図示しない給水路に連通している。給水路は、給水路を開閉する開閉弁を有するバルブ装置を途中に設けており、上流端を給水圧を有する給水源に連通している。
【0019】
給水路に設けられたバルブ装置は小便器の使用者を検知する人体検知センサーを有している。バルブ装置は、小便器を利用した使用者が便器本体10の前から設定距離を離れたことを人体検知センサーが検知すると、開閉弁を開弁する。これによって、噴霧器50は便鉢部11の表面に向けて水を噴霧する。この際、噴霧器50が噴霧する水量は、便鉢部11の表面を濡らし、それによって、尿が便鉢部11の表面を流下して排水トラップ40に流入する程度の少量でよい。
【0020】
このように、この小便器は、少量の水で便鉢部11の表面の必要範囲を濡らすことができ、便鉢部11の表面に尿が残留することを防止することができる。このため、この小便器では、便鉢部11の表面で尿の成分がバクテリアの作用によって分解され、アンモニアが生成されることを防止することができる。また、アンモニアが生成されないため、便鉢部11の表面のpHの上昇も防止することができる。
【0021】
したがって、実施例の小便器は臭い及び尿石の発生を少量の水によって防止することができる。
【0022】
また、給水路の設けられたバルブ装置は、人体検知センサーが小便器の使用者を検知しない時間が設定時間以上になると、設定した時間間隔毎に定期的に開閉弁を開弁する。この際、噴霧器50が噴霧する水量は、便鉢部11の表面を濡らす程度の少量でよい。また、開閉弁を開弁する時間間隔は、便鉢部11の表面が常に濡れた状態を保つことを目的に設定される。このため、この時間間隔は、小便器を設置した現場ごと、及び季節ごと等、小便器が設置される環境に応じて変更することができる。
【0023】
このように、この小便器は、便鉢部11の表面が常に濡れた状態に保たれるため、便鉢部11の表面が乾燥して尿が固着してしまうことを確実に防止することができる。このため、噴霧器50から噴霧される水が少量であっても、尿が便鉢部11の表面に残留することを確実に防止し、臭い及び尿石の発生を防止することができる。
【0024】
また、この小便器は、便鉢部11から排水トラップ40の流入する水が少量であり、その勢いが弱いため、排水トラップ40内のシール液が流出し難く、排水トラップ40の下流側の臭気が上流側の便鉢部11側に逆流することを長期間、確実に防止することができる。
【0025】
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、例えば次のような実施例も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)実施例では、小便器は排水トラップを備えていたが、排水トラップを備えない小便器であってもよい。また、排水トラップは他の形態のものであってもよい。
(2)実施例では、着脱自在なカートリッジ形態の排水トラップを備えていたが、排水トラップは、全体又は一部が小便器と一体的に形成されたものでもよい。
(3)実施例では、3つの噴霧器を備えていたが、噴霧器は、便鉢部の表面の必要範囲に水を噴霧することができればよく、その数はいくつ備えていてもよく、形状も適宜変更してもよい。
(4)実施例では、噴霧器に連通する給水路の途中に設けたバルブ装置が人体検知センサーを有し、人体検知センサーの使用者の検知によって、バルブ装置の開閉弁を開閉したが、バルブ装置が人体検知センサーを有さず、開閉弁を手動によって開閉する手動ボタンを有してもよい。この場合、小便器の使用者が使用した後に手動ボタンを操作して開閉弁を開弁し、便鉢部の表面に水を噴霧するようにすればよい。
【符号の説明】
【0026】
10…便器本体
11…便鉢部
12…排出口
40…排水トラップ
46…シール層
50…噴霧器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下端部に排出口を設けた便鉢部を有する便器本体と、
前記便鉢部の表面に向けて水を噴霧する噴霧器とを備えており、
前記噴霧器以外に前記便鉢部に水を供給する給水装置を備えていないことを特徴とする小便器。
【請求項2】
前記排出口に連続して設けられ、非溶水性であり、尿よりも比重が軽く、貯留された尿より上方にシール層を形成するシール液が注入された排水トラップを備えていることを特徴とする請求項1記載の小便器。
【請求項3】
前記噴霧器は前記便鉢部の表面が常に濡れた状態を保つように定期的に噴霧することを特徴とする請求項1又は2記載の小便器。

【図1】
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【図2】
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