説明

小児急性リンパ芽球性白血病の新規治療

本発明は、小児急性リンパ芽球性白血病(ALL)の治療、改善または排除のための方法であって、該治療、改善または排除の必要がある小児ALL患者にCD19xCD3二重特異性単鎖抗体構築物を含む医薬組成物を投与することを含む方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小児急性リンパ芽球性白血病(ALL)の治療、改善または排除を必要とする小児ALL患者へのCD19xCD3二重特異性単鎖抗体構築物を含む医薬組成物の投与を含む、小児急性リンパ芽球性白血病の治療、改善または排除のための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在の小児期ALL治療では、無再発生存率は約75%である。そのため、再発は依然として頻繁に起こる。ALL再発の管理における課題は、第一線の集中治療をすでに受けた後の、寛解率の低下ならびにその後の再発の高い発生率および全体の良くない結果を生じる二度目の治療に対する白血病細胞の抵抗性および患者の寛容性の低下である。従って現在では、第二の完全寛解の誘導のために、複数(poly)化学療法の強化が必須である。種々の予後因子に応じて、寛解は、化学療法および頭蓋照射単独により、または幹細胞移植による治療の強化により維持され得る(Henze G, von Stackelberg A, Relapsed acute lymphoblastic leukemia. In: Childhood Leukemias, C-H Pui ed. Cambridge: Cambridge University Press; 2006, p. 473-486)。
【0003】
急性リンパ芽球性白血病(ALL)を有する小児の治療は極めて大きく進歩しているが(例えば、Moericke et al., Blood 111 (2008), p. 4477; Moghrabi et al., Blood 109 (2007), p. 896参照)、ALLの再発は、依然として4番目に多い小児の悪性腫瘍である(Gaynon, Cancer 82 (1998), p. 1387)。特に診断の3年以内に早期の骨髄再発を有する患者について、これらの患者に対する治療は不充分であり、今のところ、同種幹細胞移植が唯一公知の治療アプローチである。造血幹細胞移植(HSCT)後の抗化学療性の再発は、不充分な予後を伴うが、移植後のドナーリンパ球注入(DLI)は、わずかな患者において、抗白血病移植片(GvL)効果の誘導を介して、寛解を誘導し得た(Loren et al., BMT 41 (2008), p. 483)。二度目のHSCTが1つ選択肢のであり得、いくらかの長期生存者が報告されている。しかし、HSCT前の疾患状態は、移植後の結果を予測するものとなり、形態学的疾患または>10-4の白血病芽細胞の永続的MRDレベルを有する患者は、非常に高い再発のリスクを有し、結果が非常に悪いことが知られている(Bader et al., J Clin Oncol. 27 (2009), p. 377-84)。このことを考慮すると、2度目のHSCT前の疾患の状態が最も重要であり、さらなる寛解を達成するために全ての労力を費やすべきである。抗療性白血病に対して最近導入された化学療法剤(Jeha, Semin Hematol. 46 (2009), 76-88)を使用しても、HSCT後に再発した患者は、しばしば抗化学療性疾患を有し、これらの患者は、化学療法に関連する毒性に対する感受性が非常に高い。これらの患者に関しては、かかる患者での寛解を誘導するために、非化学療法性であり、毒性が低いストラテジーが必要である。
【0004】
従来の小児ALL治療の上記の欠点を鑑みると、治療計画の向上が依然として必要である。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、小児急性リンパ芽球性白血病(ALL)の治療、改善または排除を必要とする小児ALL患者への、CD19xCD3二重特異性単鎖抗体構築物を含む医薬組成物の投与を含む、小児急性リンパ芽球性白血病の治療、改善または排除のための方法に関する。最初にT細胞動員(engaging)抗体を使用するこの免疫学的アプローチにより、非化学療法性で毒性の低い小児ALLの治療がもたらされる。
【0006】
最近では、フェーズI試験により、再発性CD19陽性B細胞非ホジキンリンパ腫(NHL)におけるCD19xCD3二重特異性単鎖抗体(ブリナツモマブ(blinatumomab))の有意な臨床活性が示されており、強い部分的および完全腫瘍後退が観察されている(Bargou et al., Science 321 (2008): 974-7)。
【0007】
さらに、依然進行中の臨床試験において、上述のCD19xCD3二重特異性単鎖抗体を用いた治療により、CD19+ ALLを有する移植していないMRD陽性成人患者の抗化学療性白血病細胞の排除がもたらされた。
【0008】
驚くべきことに、ここに、2種類の例外的使用において、前記CD19xCD3二重特異性単鎖抗体は、移植していない成人患者のALLの治療に適するだけでなく、化学療法および同種造血幹細胞移植(HSCT)などの従来のALL治療に抗療性の小児(または小児期)再発ALLの治療にも適することを見出した。
【0009】
ここに、本発明者らは、適合、非親族ハプロタイプ一致ドナーからの同種造血幹細胞移植(HSCT)後に抗化学療性再発を有していた、B前駆細胞急性リンパ芽球性白血病(ALL)を有する二人の子供(以降、患者1および患者2と称する)におけるCD19xCD3二重特異性抗体の強力な抗白血病効果を報告する。
【0010】
CD19xCD3二重特異性単鎖抗体での治療前、患者1は、同種HSCTおよび複数の化学療法で前処理された。しかし、これらの従来の小児ALL治療は失敗し、患者は繰り返し再発したところ、予後が非常に乏しくなった。その後、該小児ALL患者に、5週間の連続注入で15μg/m2/24時間のCD19xCD3二重特異性単鎖抗体を与えた。抗体治療の間、患者は、移植片対宿主病(GvHD)の徴候を見せることなくドナー由来のCD8+ Tリンパ球を増殖した。このT細胞増殖は、患者の白血病芽細胞の迅速な排除を伴い、抗体治療の開始から10日後、患者の骨髄中に10000細胞中1細胞の微小残存病変(MRD)検出レベルを超える芽細胞は検出できなかった。抗体治療を通じて患者はMRD陰性であった。CD19xCD3二重特異性単鎖抗体による治療終了の2週間後、患者はハプロタイプ一致の母親から二度目の幹細胞移植を受けたが、それ以来MRD陰性のままであった(2009年11月当時)。
【0011】
15歳の患者2は、2001年4月にフィラデルフィア染色体、CD19陽性B前駆細胞ALLと診断された。化学療法の後、彼は2001年10月にHLA同一の兄妹からHSCTを受けた。2002年に、骨髄再発と診断され、マチニブ(matinib)および化学療法により別の寛解を達成した。その後彼は、2004年10月にHLA同一の非親族ドナーから二度目のHSCTを受けた。2008年3月に、第二の再発と診断され、イマチニブ耐性のために低用量の化学療法およびダサチニブで治療を受けた。クロファラビンおよびシトシン/アラビノシドでのさらなる治療後、彼は分子寛解を達成し、6分の3のHLA対立遺伝子ミスマッチハプロタイプ一致の父親から3度目の同種HSCTを受け、移植後、ダサチニブでの治療を受けた。消化管出血および膨張性心筋症のために、ダサチニブは移植後5ヶ月で中断した。2009年4月に、中枢神経系(CNS)中7x109/Lの芽細胞と骨髄中3%の芽細胞を合わせたCNSの再発が診断された。次いで、患者は、ニロチニブ、鞘内化学療法および18GyのCNS分割照射法で治療された。この治療の3ヵ月後、患者の骨髄は、1.1x10-3のレベルでMRD陽性のままであったが、CNSに芽細胞はなくなった。末梢血のキメラ現象解析により、ハプロタイプ一致の父親からの完全なドナー由来造血が見出された。
【0012】
次いで、患者は、4週間、連続注入による15μg/m2/日の単一薬剤ブリナツモマブで副作用を示すことなく治療された。治療終了時の骨髄穿刺により、骨髄MRDが<1x10-4未満で検出できない完全な寛解が示された。患者1同様、患者2は、ブリナツモマブを用いた治療中または治療後にGvHDの徴候を示さなかった。彼は、現在は健康であり、通学している。
【0013】
このデータは、同種HSCT後に再発抗療性B前駆細胞ALLを有する小児患者において、T細胞動員二重特異性抗体は、GvHDを伴わずに強力な抗白血病移植片(GvL)効果を誘導し得るということを強く示している。従って、本明細書に記載した小児患者の治療において、CD19xCD3二重特異性単鎖抗体構築物が抗白血病移植片(GvL)効果を誘導することが好ましい。また、該治療は、小児患者に良好に許容される。このことを考慮すると、本発明の手段および方法は、小児急性リンパ芽球性白血病(ALL)に対して、特に小児ALLが化学療法および/または同種HSCTなどの従来の小児ALL治療に抗療性である場合に、驚くほどに向上した治療選択肢を提供する。従って、本発明のさらなる態様において、本明細書で使用されるT細胞動員二重特異性単鎖構築物(抗CD19xCD3)は、(同種)造血幹細胞移植(HSCT)を受けた小児患者においても使用できる。本明細書において説明されるように、適合非親族ドナーもしくはハプロタイプ一致ドナーからのHSCT後にALLを再発した小児患者、および/または化学療法に抗療性の患者であっても、本明細書に開示される手段および方法によって成功裡に治療することができる。本明細書に記載されるように、例示される患者は、本明細書に開示される薬学的介入によって強い抗白血病応答を示し、GvHD(宿主対移植片病)の徴候なくMRD陰性となった。ALLを有する子供の生存は、最近20年間で劇的に向上しているが、ALLの再発は、依然として治療不成功の主な原因である。2度目の再発の患者にとって、今のところ、HSCTが唯一の治療アプローチである。HSCTの主な抗白血病作用の一つは、GvL効果の誘導である。不運なことに、GvLの発現にはGvHDを伴うことがあり、これが依然としてHSCT後の罹患率および死亡率の主な原因である。そのため、GvHDを伴わないGvLの誘導が集中的な研究の主題である。GvL効果の誘導のための1つのアプローチは、移植後のドナーリンパ球注入(DLI)であり、これは、HSCT後の再発ALLの治療に優先的に使用される。DLIはCMLの治療には非常に有効であるが(Kolb, Blood 76 (1990), 2462)、再発ALLの移植後治療にはあまり有効でなく(Loren, BMT 41 (2008), 483)、しばしばGvHDの発症を引き起こす。
【0014】
本発明の薬学的および医学的な方法および手段により、GvHDを伴わないGvLの誘導ための新規のアプローチがもたらされる。このアプローチは、Tリンパ球を患者のCD19+ ALL芽細胞に指向するT細胞動員CD19xCD3二重特異性単鎖抗体を低用量で使用する、HSCT後のドナー由来リンパ球のインビボ活性化である。この抗体は、自家状態において強力な抗リンパ腫活性および抗白血病活性を示したが、HSCT後の再発小児ALLでは全く試験されていなかった。以下の実施例に記載される二人の小児患者は、適合非親族ドナーまたはハプロタイプ一致ドナーからのHSCT後にALLを再発しており、化学療法に対して抗療性であった。該患者は、治療の開始後に強力な抗白血病応答を示し、GvHDの徴候なくMRD陰性になった。CD19xCD3二重特異性単鎖抗体の免疫学的作用はペプチド抗原提示とは独立しており、このためにインビボにおける大規模なドナー由来T細胞の増殖にも関わらず、GvHDが誘導されなかったと思われる。低用量のCD19xCD3二重特異性単鎖抗体は、患者におけるMRD検出レベルを超えるALL芽細胞の排除に充分であった。従って、この抗体のT細胞動員作用様式は、非常に高用量を必要としかつT細胞上にFcレセプターがないために抗体分子のFc部分を介してT細胞を動員できない従来の抗体とは大きく異なる。CD19xCD3二重特異性単鎖抗体を介して、非常に有力なエフェクターT細胞が、GvHDを引き起こす同種反応性免疫応答を誘導することなく、ALL芽細胞に対して細胞傷害性となり得る。本願発明者らは、MRD陰性になった後の患者1に、ハプロタイプ一致ドナーからの第二の同種HSCTを行うことを決めた。今日(2009年11月)まで、この患者は依然MRD陰性である。
【0015】
移植後ALLの抗化学療性再発を有するこれら二人の患者の最初の臨床経験から、CD19xCD3二重特異性単鎖抗体は、GvHDを伴わない強力で完全な寛解を誘導し得ると結論付けられた。そのため、白血病負荷の免疫学的減少のためおよび移植後再発の治療のための移植前設定において、CD19xCD3二重特異性単鎖抗体を用いる治療により、進行したALLを有する小児患者に対して新たな治療の可能性が与えられる。
【0016】
本発明の方法は、以下の主要な利点をもたらす:
1. 以下の実施例に示すように、CD19xCD3二重特異性単鎖抗体の投与は、再発および/または抗療性の小児急性リンパ芽球性白血病(ALL)の治療に使用することができる。CD19xCD3二重特異性単鎖抗体は、同種幹細胞移植に適さない小児患者における従来の小児急性リンパ芽球性白血病(ALL)治療(例えば化学療法)に取って代わり得るだけではない。それは、前記移植に適する小児ALL患者を、MRD陰性状態に変換するためにも使用することができる。本発明のこの局面は、MRD陰性患者がMRD陽性患者よりも低い移植後の再発のリスクを有することにおいて重要である。最良の場合の筋書きにおいて、CD19xCD3二重特異性単鎖抗体を用いた小児ALL治療により、化学療法および/またはHSCTは余分なものになる。
【0017】
2. 形態学的疾患または>10-4白血病芽細胞の持続性のMRDレベルを有する小児患者は、非常に高い再発のリスクおよび非常に不良な転帰を有することが知られている(Bader et al., J Clin Oncol. 27 (2009), p. 377-84)。CD19xCD3二重特異性単鎖抗体で治療された子供は、治療の開始後に強力な抗白血病応答を示し、治療中にGvHDの徴候なく、MRD陰性になった。そのため、本発明の薬学的方法および手段により、小児ALLにおいてMRDの治療、改善または排除のための治療アプローチがもたらされ、それにより患者の再発のリスクが減少またはさらには根絶される。同種HSCTの治療可能性は、移植前のMRDレベルに依存する。CD19xCD3二重特異性単鎖抗体を用いた治療を使用して、前述のハイリスク小児患者をMRD陰性状態に変えることができる。従って、抗療性小児期ALLにおけるMRDは、CD19xCD3二重特異性単鎖抗体によって初めて治療することができる。
【0018】
3. 本発明の薬学的方法および手段は、強力な抗白血病効果を示すだけでなく、毒性が低く、化学療法および/または同種HSCTなどの従来の小児ALL治療よりも有害な影響を引き起こすことが少ない。今までのところ、CD19xCD3二重特異性単鎖抗体による治療後に、長期間の副作用は観察されていない。対照的に、従来の小児ALL治療は非常に攻撃的で、そのために小児患者にかなりの健康的リスクを伴う。また、小児期における従来のALL治療後の効果は遅いことが報告されている(例えば、Hudson MM, Late complications after leukemia therapy. In: Childhood Leukemias, C-H Pui ed. Cambridge: Cambridge University Press; 2006, p. 750-773; Schmoll, Hoeffken, Possinger: Kompendium Internistische Onkologie, S. 2660 ff.; 4. Auflage, Springer Medizin Verlag Heidelberg; http://www.cancer.gov/cancertopics/pdq/treatment/lateeffects/HealthProfessional参照)。実際に、従来の小児ALL治療は、成人ALLに使用される治療アプローチよりもさらに攻撃的な治療計画を使用している。しかしながら、小児ALLにおける約25%の再発率から分かるように、これらの攻撃的な治療も全ての患者を最終的に治療するには充分でない。このことを考慮すると、CD19xCD3二重特異性単鎖抗体を用いた抗療性および/または再発小児ALL患者の治療は、前記患者をMRD陰性状態にすることができ、かかるハイリスク患者に新たな治療の機会を与えることはさらに驚くべきことである。これは、化学療法および/またはHSCTなどの従来の小児ALL治療では達成できなかった成果である。
【0019】
4. 例えば、Ph+ ALL(bcr/abl)小児患者は、ALLサブタイプ(下記参照)にある全ての患者の中で非常に高い再発のリスクを有する。現在、同種HSCTは、小児Ph+ ALLに最適な治療であると考えられているが、移植された患者のおよそ1/3が再発する。また、以下にさらに詳細に示すように、ALLを有する幼児(<12ヶ月)は、従来のまたは標準的なALL治療を失敗するリスクが高く、MLL(t(4;11))遺伝子再配列を有する幼児の予後は最も不良である。以下の実施例における患者2について示された結果および上述の進行中の成人(移植していない)ALL患者を治療する臨床試験において得られたデータにより、Ph+ ALL(bcr/abl)およびMLL遺伝子再配列を有するALLであっても、CD19xCD3二重特異性単鎖抗体の投与により成功裡に治療することができると示唆される。そのため、CD19xCD3二重特異性単鎖抗体の投与は、小児Ph+ ALLまたはt(4;11)転座を有するALL、特に微小残存病変(MRD)を有する小児ALL患者に新規の治療アプローチをもたらす。これは、例えばPCRまたはFACS解析により規定される微小残存病変(MRD)を占める。
【0020】
5. 非常に高い細胞傷害活性のために、ほんの低用量のCD19xCD3二重特異性単鎖抗体で、小児ALLの成功裡の治療に充分であり、骨髄中の白血病細胞の排除も可能にする。
【0021】
6. 従来の小児ALL治療と比べて、CD19xCD3二重特異性単鎖抗体での治療の期間は短い。従来の小児ALL化学療法は通常2〜3年かかるが、以下の実施例において示される小児患者において、CD19xCD3二重特異性単鎖抗体に対しては非常に迅速な応答が観察され得る。さらに、該応答は長期持続性である:患者1は移植後12ヶ月よりも長くMRD陰性であり続ける;以下の実施例を参照。
【0022】
7. 再発を有する小児ALL患者は、抗化学療性の疾患を有することがあり、これらの患者は化学療法に関連する毒性に非常に影響を受け易い。これらの患者には、CD19xCD3二重特異性単鎖抗体での治療によって初めて、かかる患者に寛解を誘導するための非化学療法性で毒性の低い戦略がもたらされる。
【0023】
8. 成人患者ALLに関する上述の進行中の臨床試験に見られるように、CD19xCD3二重特異性単鎖抗体での治療により、CD19+ ALLを有する非移植MRD陽性成人患者における抗化学療性白血病細胞の排除がもたらされた。これらの患者において、動員された細胞障害性T細胞は患者由来であったが、動員されたT細胞がドナー由来である設定では、同種HSCT後のCD19xCD3二重特異性単鎖抗体の使用についてのデータはこれまでにはなかった。ここで、本発明者らは初めて、同種HSCT後にCD19+ALLの抗化学療性再発を有する二人の小児患者において、ドナー由来T細胞を動員するCD19xCD3二重特異性単鎖抗体によって誘導される、GvHDを伴わない強力なGvL効果の誘導に関して報告する。
【0024】
要約すると、CD19xCD3二重特異性単鎖抗体での治療により、小児ALL、特に抗療性および/または再発性小児ALLについて新規の向上した治療が提供される。
【0025】
本発明の薬学的方法および手段の好ましい態様において、小児または小児期急性リンパ芽球性白血病(ALL)は小児B細胞系ALL、好ましくは小児B前駆細胞急性リンパ芽球性白血病ALL、より好ましくは小児プロ(pro)B ALL、プレ(pre)B ALL、またはcommon型ALL(cALL)である。さらにより好ましい小児B前駆細胞ALLは、common型ALL(cALL)である。
【0026】
小児または小児期ALL症例のほぼ大部分(>85%)は、B前駆細胞表現型である(Schultz et al., Blood 109 (2007): 926-935)。本明細書に記載されるCD19xCD3二重特異性単鎖抗体は、B細胞関連マーカーCD19に指向されるので、前記抗体は特に、小児B細胞系急性リンパ芽球性白血病、より好ましくは小児B前駆細胞ALLのための治療剤として適切である。小児B前駆細胞ALLは、さらに、小児プロB ALL、プレB ALLおよびcommon型ALL(cALL)に細分化できる(例えばBehm F.G., Immunophenotyping. In: Childhood Leukemias, C-H Pui ed. Cambridge: Cambridge University Press; 2006, p. 150-209参照)。小児B前駆細胞急性リンパ芽球性白血病および他の種類の小児B(細胞)系ALLなどの小児急性リンパ芽球性白血病(ALL)、ならびにそれらの治療は、例えばPui CH, Clin Adv Hematol Oncol. 4 (2006): 884-6; Pui CH, Evans WE, N Engl J Med 354 (2006): 166-178; Pui CH et al., Lancet 371 (2008): 1030-1043; Pui CH, Jeha S, Nat Rev Drug Discov 6 (2007): 149-165)に概説される。小児ALLに関するさらなる情報は、例えばhttp://www.cancer.govまたはhttp://www.leukemia-lymphoma.orgでも見ることができる。
【0027】
歴史的観点から見ると、Pediatric Oncology Group(POG)およびChildren's Cancer Group(CCG)は、1993年に国立がん研究所に支持された国際学会で、共通のリスク基準の組を採択した(Smith M, et al., J Clin Oncol 14 (1996), 18-24)。NCI基準は、国際的な受諾および再現性を有した要因:年齢、最初の白血球数(WBC)、および診断時の髄外疾患の存在に基づくものであった。治療をさらに精密にするために、POGおよびCCGは共に、患者の結果に影響することが示されたさらなるリスク因子も使用した(例えば、倍数性、芽細胞核型、および初期の形態学的応答)。2000年に、CCGとPOGは統合されて、Children's Oncology Group(COG)が創設された。この合併により、急性リンパ芽球性白血病(ALL)の無再発生存(EFS)を予測する、臨床的、生物学的および早期応答データを解析して、新規の分類システムおよび治療アルゴリズムを開発することが可能になった。新たにB前駆細胞ALLと診断され、継続的にCCG(1988年12月〜1995年8月、n=4986)およびPOG(1986年1月〜1999年11月、n=6793)に登録された11,779人の子供(年齢1〜21.99歳)から、該試験により、情報細胞発生学データを有する6238人の患者(CCG、1182;POG、5056)を遡及的に解析した(Schultz et al., Blood 109 (2007): 926-935)。4リスク集団を、非常にハイリスク(VHR;5年EFS、45%以下)、低リスク(5年EFS、少なくとも85%)、標準およびハイリスク(これらはそれぞれの国立がん研究所[NCI]リスク集団のままである)として規定した。VHR基準は、極度の低二倍性(44染色体未満)、t(9;22)および/またはBCR/ABL、ならびに誘導失敗を含んだ。低リスク患者は、t(12;21)(TEL/AML1)または第4、10および17番染色体同時三倍体のいずれかを有するNCI標準リスクであった。治療の差があったとしても、CCGおよびPOGの解析には高い一致があった。COGリスク分類スキームは、COG試験におけるフローサイトメトリーによって、B先駆細胞ALLを、年齢、白血球(WBC)数、細胞遺伝学、14日目骨髄応答、および末期誘導微小残存病変(MRD)に基づいて、低(27%)、標準(32%)、高(37%)、および非常に高い(4%)リスク集団に分類するために使用されている。
【0028】
現在、小児期または小児急性リンパ芽球性白血病(ALL)には、リスクベース治療アサインメントが利用されている。このアプローチにより、病歴的に良好な結果を有する子供が、適切な治療で治療され、より強力で毒性の高い治療での治療を免れることが可能になり、一方で、病歴的に長期生存の可能性が低い子供に、治療の機会を増加し得るより強力な治療を受けさせることが可能になる。年齢の高い子供および青年(≧10歳)ならびに幼児(<12ヶ月)は1〜9歳で診断された子供よりも好ましくない結果を有し、これらの患者には一般的により攻撃的な治療が用いられることが見出された(Nachman J, Br J Haematol 130 (2005): 166-73)。ここで、CD19xCD3二重特異性単鎖抗体を用いた治療により、化学療法および/またはHSCTなどの従来のALL治療によってあまり好ましくない結果を受けるかかる小児患者集団、つまり年齢の高い子供および青年(≧10歳)ならびに幼児(<12ヶ月)に、改善された毒性の低い治療が提供される。
【0029】
ALLを有する子供の成功裡の治療には、全身性疾患(例えば、骨髄、肝臓および脾臓、リンパ節)の制御ならびに髄外、特に中枢神経系(CNS)の疾患の予防または治療が必要である。従来の基準では、診断時にわずか3%の患者が検出可能なCNS関与を有するだけである(≧5 WBC/マイクロリットル、リンパ芽球存在)。しかし、CNSに対して特定の治療を指向しなければ、50%〜70%以上の子供は、結局は明白なCNS白血病を発症する。そのため、現在では、ALLを有する全ての子供が、ある種のCNS予防と共に全身性併用化学療法を受けるべきだと推奨されている。現在、ほとんどのグループが、診断時に詳細に記録されたCNS白血病(>5 WBC/芽細胞μl;CNS3)を有する患者、ならびに診断でT細胞表現型および高WBC数を有する患者を、鞘内治療およびその後の頭蓋照射で治療する。従って、CD19xCD3二重特性単鎖抗体での治療は、好ましくは、鞘内治療および/または頭蓋照射などのCNS予防と組み合わせて実施される。
【0030】
ALLを有する子供の従来または標準的な治療は、いくつかの段階:それぞれの段階にCNS保護療法が組み合わされる、寛解誘導、地固めまたは強化および維持(もしくは継続)療法に分けられる。寛解誘導後の治療の強化段階は全ての患者に使用される。誘導療法および誘導後療法の両方の強化は、リスクベース治療アサインメントおよびいくつかの種類の早期応答評定に使用される臨床的および生物学的診断因子により決定される。この評定には、7日目および/または14日目の骨髄芽細胞のパーセント、8日目の末梢血芽細胞数、ならびに誘導時または誘導終了時の骨髄および/または末梢血の微小残存病変の測定が含まれ得る(Pui CH, Evans WE, N Engl J Med 354 (2006): 166-78)。ALLを有する子供の治療期間は、2〜3年である。対照的に、以下の実施例に示すように、小児患者において、CD19xCD3二重特異性単鎖抗体治療に対しては、非常に迅速な応答が観察できた。また、患者1は今日(2009年11月)までMRD陰性であり、長期治療が達成できたことが示される。
【0031】
現在の標準的な治療または従来の治療で予後が不良である患者のサブグループには異なる治療が必要な場合がある。例えば、ALLを有する幼児は治療の失敗のリスクが高く、MLL遺伝子再配列を有する幼児には予後が最も不良である(Rubnitz JE, et al.: Blood 84 (1994): 570-3; Biondi A, et al., Blood 96 (2000): 24-33; Pui CH, et al., Lancet 359 (2002): 1909-15; Silverman LB, et al.: Cancer 80 (1997): 2285-95)。これらの子供は通常、幼児向けに特別に設計された計画で治療される(Silverman, et al., (1997), loc. cit., Chessells JM, et al., J Haematol 117 (2002): 306-14; Reaman GH, et al., J Clin Oncol 17 (1999): 445-55; Pieters R, et al., Lancet 370 (2007): 240-50)。現在の幼児向け治療計画では、強化された治療アプローチが使用され、以前の強度の低いアプローチと比べて向上した疾患制御が提供されることがあるが、長期的な結果および毒性は分かっていない(Reaman (1999), loc. cit.; Pieters (2007), loc. cit.; Kosaka Y, et al., Blood 104 (2004): 3527-34; Hilden JM, et al., Blood 108 (2006): 441-51)。ALLを有する特定の子供(1歳より上)は、現在の治療で長期的な寛解を受ける可能性は50%未満であり得る(例えば、t[9;22]フィラデルフィア染色体陽性ALL、低二倍体患者および最初の誘導を失敗した患者)。これらの患者に対して、第一の寛解の間、ヒト白血球抗原(HLA)適合兄妹からの同種骨髄移植が考えられている(Snyder DS, et al., Leukemia 13 (1999): 2053-8; Arico M, et al., N Engl J Med 342 (2000): 998-1006; Schrauder A, et al., J Clin Oncol 24 (2006): 5742-9)。しかしながらHLA適合兄妹ドナー移植は、WBC数、性別および年齢だけでハイリスクであると規定されている患者において有益であるとは明らかにされていない(Ribera JM, et al., J Clin Oncol 25 (2007): 16-24)。
【0032】
骨髄抑制および一般的な免疫抑制は、白血病およびその化学療法による治療の両方に予想される結果であるが、従来の小児ALL治療の間は患者を厳密にモニターしなければならない。血液学的支援ならびに感染性および他の合併症の治療の両方のために、白血病治療の全段階を通じて、適切な便宜がすぐに利用可能となる必要がある。およそ1%の患者は導入補助治療中に死亡し、さらに1%〜3%が第一の寛解中に治療関連合併症により死亡する(Christensen MS, et al., Br J Haematol 131 (2005): 50-8)。
【0033】
CD19xCD3二重特異性単鎖抗体での治療により、小児ALL、特に抗療性および/または再発小児ALLのための選択的でより毒性が低い治療がもたらされる。前記治療により、治療の失敗、毒性および長期的な有害作用などの従来の小児期ALL治療の欠点が回避される。そのため、該治療は、非常に効果的であるが、毒性および健康リスクが低い、化学療法および/または同種HSCTの代替法である。
【0034】
従って、本発明の薬学的方法および手段の別の態様において、前記急性リンパ芽球性白血病は抗療性および/または再発ALLである。
【0035】
小児ALLは、化学療法もしくは同種造血幹細胞移植(HSCT)または化学療法および同種造血幹細胞移植(HSCT)に対して抗療性であり得る。ALLは、再発ALL、または化学療法および/または同種造血幹細胞移植(HSCT)などの従来のALL治療に抗療性の再発ALLであり得る。しかしながら、ALLが新たに診断されたALLであることも本発明の範囲内にある。この設定において、CD19xCD3二重特異性単鎖抗体による治療は、単独またはHSCTと組み合わせてのいずれかで第一選択(初期(frontline))治療として使用され得る。
【0036】
用語「抗療性小児ALL」は、本明細書で使用される場合、化学療法および/またはHSCTなどの従来または標準的な小児ALL治療に対する小児ALLの抵抗性を意味する。現在、小児ALLの再発率は約25%である。言い換えると、従来または標準的な小児ALL治療は、全ての小児患者を完全に治療することはできない。
【0037】
本明細書で使用される場合、用語「再発小児ALL」は、小児患者が寛解を享受した後のALL疾患の徴候および症状のぶり返しのことを示す。例えば、化学療法および/またはHSCTを使用した従来のALL治療後に、小児ALL患者はALLの徴候または症状なく寛解し得、寛解が数年間続くが、その後再発を患い、再度ALLについて治療する必要が生じる。
【0038】
再発小児ALL患者は、抗化学療性疾患を有することがある。これらの患者は、化学療法関連毒性に対して非常に離京を受け易いが、これはCD19xCD3二重特異性単鎖抗体での治療により回避することができる。
【0039】
本明細書で使用される場合、用語「標準的な治療」または「従来の治療」は、化学療法および/またはHSCTを使用した小児ALL治療のことをいう。小児B前駆細胞急性リンパ芽球性白血病および他の種類の小児B(細胞)系ALLなどの小児急性リンパ芽球性白血病(ALL)、ならびにその治療は、例えば、Pui CH, Clin Adv Hematol Oncol. 4 (2006): 884-6; Pui CH, Evans WE, N Engl J Med 354 (2006): 166-178; Pui CH et al., Lancet 371 (2008): 1030-1043; Pui CH, Jeha S, Nat Rev Drug Discov 6 (2007): 149-165); Henze G, von Stackelberg A, Relapsed acute lymphoblastic leukemia. In: Childhood Leukemias, C-H Pui ed. Cambridge: Cambridge UniversityPress; 2006, p. 473-486)に概説される。小児ALLに関するさらなる情報は、例えばhttp://www.cancer.govまたはhttp://www.leukemia-lymphoma.orgでも見ることができる。
【0040】
本発明による用語「二重特異性単鎖抗体」もしくは「単鎖二重特異性抗体」または関連用語は、完全長免疫グロブリンから定常部分および/またはFc部分(1つまたは複数)を除き、一本のポリペプチド鎖中で少なくとも2つの抗体可変領域を連結することにより得られる抗体構築物を意味する。本明細書で言及される二重特異性単鎖抗体は、単量体として機能的であり、つまり細胞傷害活性を有し、そのため二量体または多量体の場合にのみ機能的である従来技術に記載されるdiabodyまたはtandabとは明らかに区別可能である。本明細書で使用する「リンカー」は同じ特異性のVドメインを接続し、本明細書で使用する「スペーサー」は異なる特異性のVドメインを接続する。例えば、二重特異性単鎖抗体は、全部で2つの抗体可変領域、例えば2つのVH領域を有し、各領域が特異的に別々の抗原に結合でき、間にスペーサーが挿入された該2つの抗体可変領域が一本の連続ポリペプチド鎖として存在するように短い(通常10アミノ酸未満)合成ポリペプチドスペーサーを介して互いに接続される構築物であり得る。二重特異性単鎖抗体の別の例は、3つの抗体可変領域を有する一本ポリペプチド鎖であり得る。ここで、例えば1つがVHで1つがVLである2つの抗体可変領域はscFvを形成し得、該2つの抗体可変領域は、合成ポリペプチドリンカーを介して互いに接続され、VLは、しばしばタンパク質分解に対しては最大限に抵抗性でありながらも免疫原性が最小限になるように遺伝的に改変される。このscFvは、特定の抗原に特異的に結合でき、scFvが結合するものとは異なる抗原に結合できるさらなる抗体可変領域、例えばVH領域に接続される。二重特異性単鎖抗体のさらに別の例は、4つの抗体可変領域を有する単鎖ポリペプチドであり得る。ここで、第一の2つの抗体可変領域、例えばVH領域およびVL領域は、ある抗原に結合し得る1つのscFvを形成し得、第二のVH領域およびVL領域は、別の抗原に結合し得る第二のscFvを形成し得る。一本の連続ポリペプチド鎖中で、1つの特異性を有する個々の抗体可変領域は、上述の合成ポリペプチドリンカーにより有利に分離され得るが、それぞれのscFvsは、上述の短いポリペプチドスペーサーにより有利に分離され得る。二重特異性単鎖抗体およびそれらの製造方法の非限定的な例は、WO 99/54440、WO 2004/106381、WO 2007/068354、Mack, J. Immunol. (1997), 158, 3965-70; Mack, PNAS, (1995), 92, 7021-5; Kufer, Cancer Immunol. Immunother., (1997), 45, 193-7; Loeffler, Blood, (2000), 95, 6, 2098-103; Bruehl, J. Immunol., (2001), 166, 2420-2426に示される。
【0041】
本明細書で使用される場合、「CD3」は、T細胞、好ましくはヒトT細胞上に多分子T細胞レセプター複合体の一部として発現される抗原のことをいい、CD3は、5つの異なる鎖CD3-ε、CD3-γ、CD3-δ、CD3-ηおよびCD3ζからなる。抗CD3抗体によるT細胞上のCD3のクラスタリングにより、抗原の結合と同様であるが、T細胞サブセットのクローン特異性に非依存的なT細胞活性化がもたらされる。従って、用語「CD19xCD3二重特異性単鎖抗体」は、本明細書で使用する場合、ヒトT細胞上に発現するヒトCD3複合体に結合でき、標的細胞の排除/溶解を誘導できるCD3特異的構築物に関するが、ここでかかる標的細胞は、二重特異性単鎖抗体の他の非CD3結合部分に結合される抗原を有する/ディスプレイする。CD3特異的結合体(例えば、本発明の薬学的手段および方法により投与される二重特異性単鎖抗体)によるCD3複合体の結合により、当該技術分野で公知のようなT細胞の活性化がもたらされる;例えばWO 99/54440またはWO 2007/068354参照。従って、本発明の薬学的手段および方法に適した構築物は、インビボおよび/またはインビトロで標的細胞を有利に排除/溶解し得る。対応する標的細胞は、CD19などの上記構築物の第二の特異性(つまり、二重特異性単鎖抗体の非CD3結合部分)により認識される腫瘍抗原を発現する細胞を含む。好ましくは、前記第二の特異性は、すでにWO 99/54440、WO 2004/106381またはWO 2007/068354に記載されているヒトCD19に対するものである。この態様によると、二重特異性単鎖抗体のそれぞれの抗原特異的部分は、抗体VH領域および抗体VL領域を含む。この二重特異性単鎖抗体の有利なバリアントは、N末端からC末端に:
VL(CD19)-VH(CD19)-VH(CD3)-VL(CD3)である。
【0042】
本発明の意味において、用語「特異的に結合」または「特異性」などの関連用語は、主に2つのパラメータ:定性的パラメータ(結合エピトープまたは抗体が結合する場所)および定量的パラメータ(結合親和性または抗体が結合する場所にどのくらいの強度で結合するか)によって特徴付けられるものと解される。抗体がどのエピトープに結合するかは、例えば、FACS法、ELISA、ペプチドスポットエピトープマッピング、または質量分析によって有利に決定され得る。抗体が特定のエピトープに結合する強度は、例えば公知のBiacoreおよび/またはELISA法により有利に決定され得る。かかる技術の組合せにより、信号対雑音比を結合特異性の典型的な測定値として計算することが可能になる。かかる信号対雑音比において、信号は、目的のエピトープへの抗体結合の強度を示し、雑音は、目的のエピトープとは異なる他の関連のないエピトープへの抗体結合の強度を示す。例えばBiacore、ELISAまたはFACSにより測定される目的のそれぞれのエピトープについて、例えば少なくとも50、好ましくは約80の信号対雑音比は、評価される抗体が、特異的様式で目的のエピトープに結合する、つまり「特異的結合体」であることの指標として採用され得る。用語「と結合/相互作用する」は、ヒト標的分子またはその一部の2つ以上の領域からなる立体的エピトープ、構造的エピトープまたは非連続エピトープにも関し得る。立体的エピトープは、ポリペプチドが天然のタンパク質に折りたたまれた場合に分子表面上で一体となる、一次配列中で分離された2つ以上の別々のアミノ酸配列によって規定される(Sela, (1969) Science 166, 1365 and Laver, (1990) Cell 61, 553-6)。用語「非連続エピトープ」は、ポリペプチド鎖の離れた部分の残基から集合した非線形エピトープを意味する。これらの残基は、ポリペプチド鎖が三次元構造に折りたたまれて立体的/構造的エピトープを構成する場合、分子表面上で一体となる。
【0043】
本明細書で使用される場合、用語「治療」は、病気を和らげることを意図する、最も広い意味での医学的手順または適用を意味する。本発明の場合において、本明細書に記載されるような(小児ALL患者への投与用に調製された)CD19xCD3二重特異性単鎖抗体の投与は、小児ALL疾患の治療、改善または排除用である。
【0044】
本明細書で使用される場合、用語「改善」は、向上と同義である。小児ALL患者の状態が改善を見せる場合、患者は明確に良好になり、該患者の臨床的状態にある程度の向上がある。例えば、ALL疾患の安定化が達成され得る場合、つまり、ALL疾患がもはや進行性でない場合、ALL患者の状態に改善があり得る。この疾患段階は安定疾患とも称される。改善は、小児ALL患者のMRD状態の向上でもあり得る。例えば、CD19xCD3二重特異性単鎖抗体での治療前に、小児ALL患者には、104個の骨髄細胞当たり100個の白血病細胞が検出され得る。CD19xCD3二重特異性単鎖抗体での治療により、白血病細胞の数は、この例示的な場合において、104骨髄細胞当たり10個の白血病細胞またはさらに少ない白血病細胞(例えば、1個未満の白血病細胞)にまで減少し得る。
【0045】
本明細書で使用する場合、用語「排除」は、小児ALL患者の体内からの白血病細胞の除去を意味する。以下の実施例に示すように、CD19xCD3二重特異性単鎖抗体の投与により、MRD陽性急性リンパ芽球性白血病(ALL)をMRD陰性状態、つまりMRDが検出されない状態(<10-4、つまり104骨髄細胞当たり1個未満の白血病細胞が検出される)に変換することができる。この場合、完全な分子寛解が達成される。
【0046】
本明細書で使用される場合、用語「投与」は、治療有効量の前述のCD19xCD3二重特異性単鎖抗体(好ましくは配列番号1に示されるもの)の個体への、つまりヒト小児患者への投与を意味する。「治療有効量」は、投与されることによる効果、つまり急性リンパ芽球性白血病細胞を殺傷するのに充分な効果を生じる用量を意味する。好ましくは、投与用量のCD19xCD3二重特異性単鎖抗体により、小児患者体内からの全急性リンパ芽球性白血病細胞の排除がもたらされ、本明細書で規定されるようなMRD陰性ALL状態が生じる。厳密な用量は治療目的に依存し、公知技術を使用して当業者により確かめられる。かかりつけの医師および臨床要因により投与量計画が決定される。医学分野で周知なように、任意の小児患者への投与量は、小児患者の大きさ、体表面積、年齢、体重、投与される特定の化合物、性別、投与の期間および経路、一般的健康状態ならびに同時投与されている他の薬物などの多くの要因に依存する。
【0047】
典型的な用量は、例えば本発明の方法および手段ならびに添付の実施例の態様に記載される範囲内にあり得るが、特に前述の要因を考慮して、この例示的範囲未満またはこれを超える用量が想定される。
【0048】
用語「連続注入」は、長期間にわたり永久的に、つまり中断されることなく、進行させる注入のことをいう。「連続注入」は、永久的に投与される注入のことをいう。従って、本発明の文脈において、用語「永久的」と「連続的」は同義的に使用される。本発明の意味において、例えば用語「連続注入により(少なくとも)4週間投与される」等は、本発明による薬学的手段および方法に使用されるCD19xCD3二重特異性単鎖抗体を(少なくとも)4週間にわたり持続的に、一定の様式で、本発明の薬学的手段および方法に必要な期間中、小児患者に連続的に投与する状況を示す。CD19xCD3二重特異性単鎖抗体の連続投与スキームは、WO 2007/068354に、より詳細に記載される。CD19xCD3二重特性単鎖抗体の導入の中断は回避される。すなわち、投与されているCD19xCD3二重特異性単鎖抗体の供給の補充または医学的介入が必要となること等以外の理由のために本発明の薬学的手段および方法に必要な投与の期間の全体において、この抗体が小児患者の体内に投与される状態からこの抗体が小児患者の体内にもはや投与されなくなる状態への移行が起こらないかまたは有意に起こらない。投与される抗体の導入の一時的な中断がかかる必要な補充により生じる限りにおいては、かかる投与は依然として本発明の薬学的手段および方法の意味における「中断されていない」かまたは「永久的」であると解される。ほとんどの場合において、かかる補充は、一般的に、抗体が小児患者の体内に導入されていない時間が非常に短いため、本発明の薬学的手段および方法による全投与計画に関して計画された時間と比較して無視できるくらいわずかである。本発明によると、一回の治療サイクルは、(少なくとも)4週間のALL患者へのCD19xCD3二重特異性単鎖抗体の連続注入、その後2週間の治療なしの期間であると解されたい。本明細書において使用する場合、用語「少なくとも」は、連続注入を4週間よりも長い期間、例えば5、6、7または8週間以上、その後2週間の治療なしの期間を実施し得ることを意味する。(少なくとも)4週間の連続投与(または一回の治療サイクル)後の治療される小児患者のMRD段階付けの際に、MRD陰性ではなく最小または部分応答が達成され得ることもある。このような状況では、より良好な治療結果、例えば完全な血液学的またはさらには完全な分子応答を達成するために、連続投与はさらに1、2、3、4、5または10治療サイクルまで延長されてもよい。好ましくは、前記完全な分子的応答は、(後述されるように)ALL疾患の再発の危険性が低下したMRD陰性である。例えば、同種HSCT前の小児ALL患者におけるMRD陰性または低MRDレベルにより再発のリスクが低減されることが分かっている(Bader P, et al., J Clin Oncol 27 (2009): 377-384)。以下の実施例に示されるように、MRD陰性は、CD19xCD3二重特異性単鎖抗体を用いた小児ALL患者の治療により達成され得る。
【0049】
従って、本発明の薬学的方法および手段の一態様において、CD19xCD3二重特異性単鎖抗体が小児ALL患者に連続投与される一回以上の治療サイクルの後に、同種HSCTが行われる。言い換えると、この好ましい態様において、本発明の方法は、MRD陽性ALLをMRD陰性状態に転換するために、同種幹細胞移植(HSCT)よりも先にある。この方法では再発の危険性は有意に低減される。
【0050】
本発明の方法の別の態様において、該方法は同種造血幹細胞移植(HSCT)の後である。
【0051】
CD19xCD3二重特異性単鎖抗体を用いた一回以上のさらなる治療サイクルの後に移植手順を行ってもよい。本態様は、患者が化学療法およびHSCTを受けた再発小児ALLの場合に重要である。これらの従来の治療の失敗により、疾患が再発し得、次いで前記抗体の投与により治療され得る。また、CD19xCD3二重特異性単鎖抗体による治療は、ALL疾患の別の再発を回避するために、HSCT後の地固め療法として使用することができる。
【0052】
また、以下の実施例により、結合T細胞がドナー由来である同種HSCT後のCD19xCD3二重特異性単鎖抗体の使用に関するデータが提供される。同種造血HSCT後のCD19+ ALLの抗化学療性再発を有する二人の患者において、CD19xCD3二重特異性単鎖抗体を用いた治療により誘導される、移植片対宿主病(GvHD)を伴わない抗白血病移植片(GvL)効果の強力な誘導を観察することができた。従って、本発明の薬学的方法および手段の別の好ましい態様において、彼女/彼が同種HSCTを受けた後に、小児ALL患者をCD19xCD3二重特異性単鎖抗体により治療することができる。
【0053】
最良の症例シナリオでは、CD19xCD3二重特異性単鎖抗体を用いた小児ALL患者の治療が、化学療法および/または同種造血幹細胞移植(HSCT)などの従来の小児ALL治療の代わりに使用され得ると考えられる。
【0054】
以下の実施例に示すように、CD19xCD3二重特異性単鎖抗体を用いた小児急性リンパ芽球性白血病(ALL)患者の治療により、患者の体内から検出限界未満まで急性リンパ芽球性白血病細胞を排除することができる。好ましくは、CD19xCD3二重特異性単鎖抗体単独または同種HSCTと組み合わせたALL小児患者への投与の主要な治療目標は、本明細書下記の、白血病なしの生存をもたらす、MRD陽性状態のMRD陰性状態への転換である。本明細書において説明するように、MRD陽性小児ALL患者は、CD19xCD3二重特異性単鎖抗体を連続的に5週間(患者1)または4週間(患者2)投与した第一の治療サイクル後に、MRD陰性に変わった。患者1においては、治療サイクル後に単一HSCTを続けた。2009年11月、この患者は、MRD陰性完全寛解、つまり腫瘍なしのままである。
【0055】
本発明の薬学的手段および方法の様式での長期間のCD19xCD3二重特異性単鎖抗体の連続した中断されない投与により、実施例に記載されるように、体内から全ての急性リンパ芽球性白血病細胞を有利に除去するのに充分な期間、有利なT細胞活性化が発揮される。二重特異性単鎖抗体が中断されずに投与される速度は低く維持され、治療剤の適用は、患者に有害な副作用のリスクをもたらすことなく長く継続され得る。
【0056】
本明細書で使用する場合、CD19xCD3二重特異性単鎖抗体は、急性リンパ芽球性白血病(ALL)と診断されたヒト小児患者への投与用の医薬組成物の形態で有利に調製される。前記ALLは、新たに診断されたALL、化学療法および/または同種造血幹細胞移植(HSCT)に抗療性のALL、再発ALLまたは化学療法および/または同種造血幹細胞移植(HSCT)に抗療性の再発ALLであり得る。
【0057】
本発明の薬学的方法および手段の好ましい態様において、前記小児急性リンパ芽球性白血病(ALL)は、小児B細胞系急性リンパ芽球性白血病(ALL)、好ましくは小児B前駆細胞急性リンパ芽球性白血病である。大部分の小児ALL症例(>85%)は、B前駆細胞表現型のものである。B細胞系ALLのいくつかの分類が提唱されている(例えば、Schultz et al., Blood 109 (2007): 926-935参照)。患者の再発のリスクに対して治療の強度を調節するために、B前駆細胞ALL患者は、現在では、実験室パラメータおよび臨床パラメータ:患者年齢、性別、疾患提示時の白血球数(WBC)、および特定の細胞遺伝学的異常の有無を使用して、「低」、「標準」、「高」または「非常に高い」リスク集団に分類されている。これらのリスク集団の規定を補助する頻繁に生じる遺伝的異常としては、例えば:t(12;21)[TEL-AML1];t(1;19;)[E2A-PBX];t(4;11)[AF4-MLL];t(9;22)[BCR-ABL];高二倍体(または染色体4、10および17の三倍体)、および低二倍体が挙げられる;例えばSchultz et al.; Bader et al., loc. cit参照。種々の研究のデータを使用して、分類システムを開発し、COG AALL03B1(急性リンパ芽球性白血病の分類)として履行した(Raetz et al., Personalized Med. 2 (2005), 349-361; Schultz et al., Blood 109 (2007): 926-935)。本明細書に記載されるCD19xCD3二重特異性単鎖抗体は、B細胞関連マーカーCD19に指向されるので、前記抗体は、小児B細胞系急性リンパ芽球性白血病、好ましくは小児B前駆細胞ALLの治療剤として特に適している。小児B前駆細胞ALLは、小児プロB ALL、プレB ALLおよびcommon型ALL(cALL)にさらに細分化することができる。以下の実施例に示されるように、いずれの治療に対しても抗療性で、そのために致死であることが明らかなcommon型ALLを有する7歳の患者1の本発明の方法による治療により、完全血液寛解のみならず、完全分子寛解がもたらされた。言い換えると、CD19xCD3二重特異性単鎖抗体を用いた治療後のこの患者において、これ以上の微小残存病変は検出できなかった。特に好ましくは、小児急性リンパ芽球性白血病(ALL)はB前駆細胞ALLであり、より好ましくはcALLである。重要なことに、CD19xCD3二重特異性単鎖抗体は、TCRまたは免疫グロブリンの再配列を有するALL細胞のみならず、種々の他の細胞遺伝学的異常を有するALLも殺傷する。例えば、以下の実施例に記載される患者2および成人ALL患者においては、前記抗体により免疫グロブリンまたはTCRの再配列、t(4;11)転座またはbcr/abl融合転写産物(Ph+)を特徴とするALLを治療できることが見出されている。特に、Ph+ ALLおよびt(4;11)転座を有するALLは、従来のALL治療によって治療することは非常に困難であると報告されているが、CD19xCD3二重特異性単鎖抗体によれば成功裡に治療できた。記載されるデータによれば、CD19xCD3二重特異性単鎖抗体により、例えばt(12;21)[TEL-AML1];t(1;19;)[E2A-PBX];t(4;11)[AF4-MLL];t(9;22)[BCR-ABL];高二倍体(または染色体4、10および17の三倍体)、低二倍体ならびに免疫グロブリンもしくはTCRの再配列を特徴とするALLなどの種々の形態のALLを治療することができることが示される;表1も参照。
【0058】
小児ALLの診断は、細胞の形態学的、細胞化学的、および免疫学的特徴、例えばライト-ギムザ染色した骨髄のスメア上のリンパ芽球の形態、ターミナルデオキシヌクレオチドトランスフェラーゼ(TdT)についての陽性染色、ミエロペルオキシダーゼについての陰性染色、および2種類以上のB前駆細胞リンパ球分化抗原の細胞表面発現に基づく。免疫表現型決定は、例えばBehm F.G.(Immunophenotyping. In: Childhood Leukemias, C-H Pui ed. Cambridge: Cambridge University Press; 2006, p. 150-209)に記載され、間接免疫蛍光、免疫組織化学および/またはフローサイトメトリーにより実施され得る。
【0059】
本明細書で使用される場合、用語「患者」は、ヒト患者のことをいう。本明細書に言及される場合、用語「小児ALL」または「小児ALL患者」は、1ヶ月から18歳の子供のことをいう。表示年齢は、ALL疾患の診断時の子供の年齢であると解されたい。より詳しくは、子供は、幼児(1から12ヶ月の年齢)、1から9歳の若年子供、ならびに年長の子供および青年(≧10歳から18歳)の下位群に分けられる。本明細書で使用する場合、「XからY」で規定される時間は、「XとYの間」で規定される時間と同じである。具体的に、両方の時間は、上限および下限を含む。これは、例えば「1ヶ月から18歳」の時間が「1ヶ月」および「18歳」を含むことを意味する。好ましくは、本発明により治療される患者は、最年長で18歳である(18歳の患者を含む)。
【0060】
以下の実施例で示すように、患者1は、2歳でALLと診断され、CD19xCD3二重特異性単鎖抗体で治療された時は7歳であった。患者1は、2001年にALLと診断され、CD19xCD3二重特異性単鎖抗体で治療された時は15歳であった。
【0061】
上述の定義は、必要な変更を加えて用語「小児急性リンパ芽球性白血病(ALL)」、「小児期ALL」等に適用される。例えば、小児または小児期ALLは、1ヶ月(1ヶ月を含む)と18歳(18歳を含む)の間の年齢の小児患者において診断されたALLと解されよう。
【0062】
本明細書で使用する場合、CD19xCD3二重特異性単鎖抗体はそれ自体が投与されるが、投与は薬学的に許容され得る担体中でなされる。適切な医薬用担体の例は当該技術分野で周知であり、例としては、リン酸緩衝食塩水、水、リポソーム、種々の種類の湿潤剤、滅菌溶液等が挙げられる。かかる担体を含む組成物は、周知の従来技術の方法により製剤化することができる。これらの医薬組成物は、適切な用量で小児患者に投与することができる。投与計画は、かかりつけの医師および臨床要因により決定される。医学分野で周知のように、任意の小児患者に対する投与量は、患者の体格、体表面積、年齢、体重、投与される特定の化合物、性別、投与の期間および経路、一般的な健康状態、および同時に投与されている他の薬物などの多くの要因による。非経口投与用調製物としては、滅菌水溶液もしくは非水溶液、または懸濁液が挙げられる。非水性溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、およびオレイン酸エチルなどの注射可能有機エステルである。水性担体としては、水、水溶液、または懸濁液、例えば、食塩水および緩衝化媒体が挙げられる。非経口ビヒクルとしては、塩化ナトリウム溶液、リンガーデキストロース、デキストロースおよび塩化ナトリウム、または乳酸加リンガー液が挙げられる。静脈内ビヒクルとしては、液体および栄養補充液、電解質補充液(たとえば、リンガーデキストロースを基にしたもの)等が挙げられる。例えば抗菌剤、抗酸化剤、キレート剤、および不活性ガス等の保存剤および他の添加剤を存在させてもよい。また、該組成物は、例えば血清アルブミンまたは免疫グロブリンなどのタンパク質性の担体、好ましくはヒト起源のものを含み得る。該組成物は、タンパク質性二重特異性単鎖抗体の他に、医薬組成物の使用目的に応じて、さらに生物学的に活性な薬剤を含み得ることが構想される。かかる薬剤は、細胞増殖抑制剤(cytostatica)として作用する薬剤、高尿酸血症(hyperurikemia)を予防する薬剤、免疫反応を抑制する薬剤(例えばコルチコステロイド、FK506)、循環系に作用する薬物および/またはT細胞共刺激分子などの薬剤または当該技術分野で公知のサイトカインであり得る。例えば、CD19xCD3二重特異性単鎖抗体を用いた治療は、CNS予防剤としての鞘内化学治療剤、コルチコイドおよび/またはアロプリノールと組み合わせて実施され得る。
【0063】
好ましくは、本明細書で規定されるCD19xCD3二重特異性単鎖抗体は、バッファ、安定化剤および界面活性剤中に調製される。バッファは、リン酸、クエン酸、コハク酸または酢酸バッファであり得る。安定化剤は、1つまたは複数のアミノ酸および/または糖であり得る。界面活性剤は、洗剤、PEG等であり得る。より好ましくは、本明細書に規定されるCD19xCD3二重特異性単鎖抗体は、クエン酸、リジン、トレハロースおよびTween 80中に調製される。本発明の医薬組成物のための希釈剤としては等張食塩水およびTween 80が好ましい。
【0064】
好ましくは、本発明の薬学的方法および手段において、急性リンパ芽球性白血病(ALL)と診断されたヒト小児患者への投与用の医薬組成物が調製される。
【0065】
それぞれの疾患実体に関して、CD19xCD3二重特異性単鎖抗体治療の成功は、確立された標準的な方法によりモニタリングされ得る:
B細胞ALL治療について、蛍光細胞分析分離装置(FACS)、骨髄穿刺および種々の白血病特異的臨床化学パラメータならびに当該技術分野で公知の他の確立された標準的な方法を使用してもよい。微小残存病変(MRD)状態の決定のための方法および手段を、本明細書に記載している。
【0066】
CD19xCD3二重特異性単鎖抗体の細胞傷害活性は、当該技術分野で公知の方法および例えばWO 99/54440、WO 2004/106381、WO 2007/068354に示される方法によって検出することができる。
【0067】
本発明の薬学的方法および手段の好ましい態様において、小児患者(1人または複数)のB前駆細胞性ALLは、再発性および/または治療に対して抗療性である。現在の小児期ALL治療では、無再発生存率は約75%である。したがって、患者の25%は、毒性で健康上リスクのある治療にもかかわらず再発する。ALL再発の管理における問題は、既に集中的な第一線の治療を受けた後の2回目の治療に対する白血病性細胞の抵抗性および小児患者の許容度の低下により、寛解率の低下ならびにその後の再発の高発生率ならびに全体的に良好でない転帰がもたらされることである。次いで、第2の完全寛解の誘導のために強化された多剤(poly)化学療法が不可欠である(Henze G,von Stackelberg A,Relapsed acute lymphoblastic leukemia. In:Childhood Leukemias,C-H Pui編 Cambridge:Cambridge University Press;2006,p. 473-486)。用語「化学療法および/または同種異系幹細胞移植に対して抗療性」は、本明細書で使用されるように、小児ALL患者がこれらの治療に抵抗性であり、したがって、従来のALL治療後に再発することを意味する。また、CD19xCD3二重特異性単鎖抗体での治療後に再発した小児患者は、治療された小児をMRD陰性にするため、前記抗体での1回以上のさらなる治療サイクルを受けることが構想される。次いで、前記患者は、例えば、第2の同種異系HSCTを受ける。
【0068】
以下の実施例に示すように、本発明の薬学的方法および手段は、従来のALL治療に抵抗性の小児患者の治療に特に適している。示した小児患者は、化学療法および同種異系幹細胞移植の両方でかなり予備治療したが、患者は数回再発した。したがって、患者は、極めて不良な予後を有した。しかしながら、CD19xCD3二重特異性単鎖抗体での治療後では、患者はMRD陰性であった、すなわち、分子的完全寛解を示した。言い換えると:該治療により、急性リンパ芽球性白血病細胞が小児患者の身体から検出限界未満に排除された。最も重要なことは、小児患者の骨髄から白血病性細胞が除去されたことである。
【0069】
本発明の薬学的方法および手段の好ましい態様において、小児患者(1人または複数)の急性リンパ芽球性白血病(ALL)は、MRDに関して化学療法および/または同種異系HSCTに抗療性である。言い換えると:小児ALL患者のMRDは、化学療法および/または同種異系HSCTに抵抗性である。
【0070】
本発明の薬学的手段および方法は、化学療法および/または同種異系HSCTなどの従来の小児ALL治療計画の代替法を提供するため、新たに診断された小児ALLの治療にも適していることが構想される。
【0071】
さらに好ましい態様において、前記急性リンパ芽球性白血病(ALL)は、診断の3年以内、好ましくは診断の2年以内、さらにより好ましくは診断の1年以内に再発する。好ましくは、前記再発は骨髄再発である。
【0072】
用語「化学療法」は、本明細書で使用される場合、小児急性リンパ芽球性白血病(ALL)の治療に使用される化学療法を表す。化学療法は小児ALLの初期治療選択肢である(例えば、Pui CH、Jeha S、Nat Rev Drug Discov 6(2007):149-165;Schmiegelow K、Gustaffson G. Acute lymphoblastic leukemia. In:Cancer in Children:Clinical Management. Voute PA、Barret A、Stevens MCG、Caron HN(編).London、UK、Oxford University Press、2005,p. 138-170;Schmoll、Hoeffken、Possinger(上記引用)参照)。ほとんどの小児ALL患者は、結局、異なる治療の組合せを受けることになる。小児ALLの治療では、悪性細胞の分布は全身性であるため、手術オプションはない。一般に、小児ALLに対する細胞傷害性化学療法は、多種類の抗白血病性薬物を種々の組合せで併用する。小児ALLに対する化学療法は、3つの相:寛解誘導、強化、および維持療法からなる。化学療法はまた、中枢神経系を白血病から保護するために指示される。寛解誘導の目的は、腫瘍細胞の大部分を迅速に死滅させ、小児患者を血液学的完全寛解にすることである。これは、骨髄中5%未満の白血病性芽細胞の存在と定義する(光学顕微鏡検査によって測定時)。例えば、クロファラビン、シクロホスファミド、VP16、アムサクリン、プレドニゾン、メルファラン、またはシタラビンが、寛解を誘導するために単独または組合せで使用される。強化には、腫瘍負荷をさらに低減させるため、高用量の静脈内多剤化学療法剤が使用される。典型的な強化プロトコルでは、ビンクリスチン、シクロホスファミド、シタラビン、ダウノルビシン、エトポシド、チオグアニンまたはメルカプトプリンが使用され、ブロックとして異なる組合せで投与される。ALL細胞は中枢神経系(CNS)に浸透することもあるので、ほとんどのプロトコルは、髄腔内化学療法として一般的に知られるCNS液中への化学療法剤の送達を含む。一部の腫瘍中心には、オマヤレザバー(頭皮下に外科的に配置され、種々の試験のために、CNS液に薬物を送達するため、およびCNS液を抜き取るために使用されるデバイス)によって薬物が送達される。他の中心には、試験および治療剤の送達に必要なだけ多数回の腰椎穿刺が行なわれる。この目的には、通常、髄腔内メトトレキサートまたはシタラビンが使用される。維持療法の目的は、寛解誘導および強化計画によって死滅しなかった任意の残留細胞を死滅させることである。かかる細胞はごくわずかであるが、根絶されなければ、再発を引きこす。この目的のため、毎日の経口メルカプトプリン、週1回の経口メトトレキサート、月1回の5日間コースの静脈内ビンクリスチン。維持療法の長さは、男児で3年間、女児および成人で2年間である。神経系の再発は、ヒドロコルチゾン、メトトレキサート、およびシタラビンの髄腔内投与で治療される。化学療法計画は集中的で長期的(しばしば、GMALL UKALL、HyperCVADまたはCALGB プロトコルの場合は約2年間;COGプロトコルにおいて男性で約3年間)となり得るため、多くの患者は、大静脈内に挿入された静脈内カテーテル(中心静脈カテーテルもしくはヒックマンラインと称される)、またはPortacath(皮下、通常、鎖骨付近に外科的に埋め込まれるシリコーン製突出部を有する円錐形ポート)を有する。しかしながら、化学療法は、小児患者には、なお高度に毒性の手順である。
【0073】
患者は、初期治療後、ALLの再発を経験し得る、および/または治療後、化学療法に抗療性となり得る。化学療法に抗療性の小児ALL患者は顕著に不良な予後を有する。特に、化学療法のみで治療されたPh+ ALLまたはt(4;11)転座を有するALLを有する小児患者の予後は不良である。本発明の方法は、小児ALL患者をMRD陰性にすることができるため、化学療法および/または同種異系HSCTに抗療性のALL患者の治療に特に有用である。これに鑑み、用語「化学療法および/または同種異系HSCTに抗療性」は、本明細書で使用される場合、化学療法および/または同種異系HSCTに対する急性リンパ芽球性白血病細胞の抵抗性を表す。
【0074】
用語「同種異系造血幹細胞移植(HSCT)」は、本明細書で使用されるように、造血幹細胞(HSC)の移植を伴う血液学および腫瘍学の分野の医療処置である同種異系造血幹細胞移植(HSCT)または骨髄移植を意味する。これは、たいてい、ALLなどの、血液もしくは骨髄の疾患または特定の型の癌を有する患者に対して行なわれる。HSCTのほとんどのレシピエントは、高用量の化学療法または全身照射での治療の恩恵を被り得る白血病(例えば、ALL)患者である。ALLを有する小児における同種異系HSCTは、例えば、Schrauder A,et al.(Bone Marrow Transplantation 41(2008):Suppl2 S71-74)に記載されている。しかしながら、同種異系幹細胞移植は、小児患者にはなお危険な手順である。
【0075】
用語「同種異系造血幹細胞移植(HSCT)に適格」は、本明細書で使用されるように、同種異系幹細胞移植が小児ALL患者の治療に必要とされることを意味する。小児ALL患者が同種異系幹細胞移植に適格である場合、以下の2つの状況が構想され得る。第1に、本発明の薬学的方法および手段の一態様において、CD19xCD3二重特異性単鎖抗体の投与(単独または好ましくは、医薬組成物として)は、移植に適格な小児ALL患者の従来の治療として使用されている同種異系幹細胞移植の代わりに使用され得る。そのため、本発明の方法により、同種異系HSCTに関連する小児ALL患者の健康リスクが回避され得る。また、移植を受けた小児ALL患者の約30%は、通常、移植後に再発する。そのため、本発明の方法は、これらの患者を治療するために使用され得る。代替的な態様において、小児ALL患者へのCD19xCD3二重特異性単鎖抗体の連続注入の後、同種異系幹細胞移植が行なわれ得る。この態様では、CD19xCD3二重特異性単鎖抗体構築物を含む医薬組成物の投与は、移植に適格な小児ALL患者を、移植を受ける前にMRD陰性状態に変換するために使用され得る。このようにして、本発明の方法は、MRDを排除するために使用され得、MRD陽性患者の移植治療よりも低い再発リスクがもたらされる。以下の実施例に、まず、CD19xCD3二重特異性単鎖抗体での治療でMRD陰性状態に変換した後、同種異系移植を行なった小児患者(患者1)を示す。現時点(2009年11月)まで、この小児患者はなおMRD陰性である。
【0076】
用語「同種異系造血幹細胞移植(HSCT)に不適格」は、本明細書で使用されるように、例えば、医学的理由のため、同種異系幹細胞移植がALL治療選択肢でない小児患者を意味する。同種異系幹細胞移植のために入手可能な適切なドナーがいないということが起こり得る。
【0077】
したがって、一態様において、急性リンパ芽球性白血病(ALL)は、同種異系HSCTに不適格またはもはや適格でない小児患者において、化学療法および/または同種異系HSCTに抗療性である。例えば、小児患者は非常に悪い臨床症状であり得るため、医学的理由で同種異系幹細胞移植を行なうことができない患者であり得る。
【0078】
以下の実施例に示す患者1は、CD19xCD3二重特異性単鎖抗体での治療前は、健康状態が悪いため、同種異系幹細胞移植に適格でなかった。かかる場合において、CD19xCD3二重特異性単鎖抗体での治療により、小児ALLに対する新たな治療アプローチが提供される。
【0079】
これまで、ALLは、化学療法に抗療性で同種異系HSCTに不適格な小児患者にとっては死の宣告を意味していた。本発明の方法は、排除されなければ再発が引き起こされ得、最終的に前記患者は死亡し得る微小残存病変(MRD)が排除されるため、初めて、この小児患者集団に対する治療を提供する。
【0080】
単独または同種異系幹細胞移植との組合せで化学療法を受け、その後再発した小児ALL患者にCD19xCD3二重特異性単鎖抗体構築物を投与することは、本発明の薬学的方法および手段の範囲内である。
【0081】
別の好ましい態様において、本発明の方法は、急性リンパ芽球性白血病(ALL)を有する小児患者における微小残存病変(MRD)の治療、改善または排除のためのものである。
【0082】
用語「微小残存病変(MRD)」は、本明細書において定義されるように、例えば、化学療法での治療後、顕微鏡による方法などの標準的な試験を用いて骨髄中に白血病性細胞が見られ得ない場合に使用される用語を表す。むしろ、小児ALL患者の骨髄中に白血病細胞の残留の証拠を見出すためには、フローサイトメトリー(FACS系の方法)またはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)などのより感度のよい試験が使用されなければならない。より詳しくは、細胞学的検出限界(5%白血病性細胞)未満の白血病細胞の存在を微小残存病変(MRD)と定義する。MRDが検出可能でない場合(<10-4、すなわち、検出可能な104個の骨髄細胞あたり白血病細胞1つ未満)、分子的完全寛解に達する(MRD陰性またはMRD陰性状態)。「MRD陽性状態」は、本明細書において定義するように、PCRもしくはFACSによって測定される検出限界または定量的閾値より上のシグナルを意味する。「MRD陰性状態」は、本明細書において定義するように、PCRまたはFACSによって測定される検出限界未満および/または定量的閾値未満を意味する。小児期ALLにおける微小残存病変定量の予後値は、例えば、Bader et al.(J. Clin. Oncol. 27(2009):377-384)またはEckert et al.(Lancet 358(2001):1239-41)に記載されている。MRD状態は、本明細書に記載の個々の細胞遺伝学的異常、および/または免疫グロブリン遺伝子の再配列もしくはT細胞受容体(TCR)再配列が定量的に検出されるため、PCRまたはFACS解析によって測定され得る。例えば、PCR解析により、bcr/ablなどの融合転写物またはt(4;11)転座ならびに免疫グロブリン(IgH)および/または T細胞受容体遺伝子(TCR)の個々のクローン再配列が検出され得る。
【0083】
以下の実施例に示すように、本明細書に記載のCD19xCD3二重特異性単鎖抗体で治療すると、すべての急性リンパ芽球性白血病細胞が、小児ALL患者の体から排除され得、その結果、分子的完全寛解(すなわち、MRD陰性状態)が達成され得た。
【0084】
急性リンパ芽球性白血病を有する小児および成人患者の悪性細胞における再発性の染色体異常は該疾患の顕著な特徴である(HarrisonおよびForoni、Rev. Clin. Exp. Hematol. 6(2002)、91-113)。一貫して存在する分子的病変を高頻度に示す具体的な異常により診断が補助され、さらに確立され、最適治療が決定され得る。小児期ALLにおいて、患者を具体的な治療に階層化するために定例的に使用される数多くの良好なハイリスク細胞遺伝学的亜群が確認された(PuiおよびEvans,N. Engl. J. Med. 354(2006)、166-178)。成人ALLでは、患者の管理における細胞遺伝学の役割は、通常、t(9;22)(q34;q11.2)から生じ、BCR-ABL融合をもたらすフィラデルフィア(Ph)染色体の存在に大きく集中している(Faderl et al.,Blood 91(1998)、3995-4019)。成人におけるPh+ ALLの全体的な発生率はほぼ25%であるが、これは年齢と相関しており、年齢が55歳より高い患者では50%より多くで発生する(Appelbaum、American Society of Clinical Oncology 2005 education book. Alexandria:ASCO、2005:528-532)。急性リンパ芽球性白血病(ALL)の特定の分子遺伝学的異常と関連している他の細胞遺伝学的転座を表1に示す。また、上記引用のSchultz et al.またはBader et al.にも記載されている。
【0085】

【0086】
細胞遺伝学は、ALLの転帰の重要な予測因子であると次第に認識されてきている(Moormann et al.,Blood 109(2007)、3189-97)。
【0087】
一部の細胞遺伝学的サブタイプは他のものよりも不良な予後を有する。これらとしては、例えば、
(i)第9染色体と第22染色体間での転座、フィラデルフィア染色体(Ph+)は成人ALL症例の約20%および小児ALL症例の5%で起こること、
(ii)第4染色体と第11染色体間の転座は症例の約4%で起こり、12ヶ月未満の乳児で最も一般的であること
が挙げられる。
【0088】
免疫グロブリン遺伝子の再配列またはT細胞受容体(TCR)再配列およびそのALLにおける役割は当該技術分野において記載されている(例えば、Szczepanski et al.,Leukemia 12(1998)、1081-1088参照)。
【0089】
本発明の薬学的方法および手段の別の好ましい態様において、前記小児ALL患者が血液学的完全寛解においてMRD陽性である。
【0090】
用語「寛解」または「血液学的完全寛解」は、本明細書で使用される場合、標準的な治療後、例えば、化学療法および/または移植後、ALL疾患の徴候を有しないことであると理解されたい。これは、光学顕微鏡検査によって測定したとき、骨髄に含まれる芽細胞が5%より少なく、血球数が正常範囲内であり、ALL疾患の徴候または症状がないことを意味する。それでもなお、すべての白血病細胞が身体から排除され得ないことが起こり得る。かかる患者は、寛解または血液学的完全寛解に病期分類されるが、なおMRD陽性である。これらの残存腫瘍細胞により再発性の白血病が引き起こされ得る。本発明の薬学的手段および方法は、一次治療後に体内に残存する潜伏白血病細胞から起こる白血病の再発を予防するために、これらの残存腫瘍細胞を死滅させるために使用され得る。このようにして、該薬学的手段および方法により、小児ALL患者の疾患再発の予防が補助される。
【0091】
対照的に、「分子的完全寛解」は、PCRまたはFACS解析などの非常に感度のよい試験を用いた場合でも、骨髄の生検材料中に白血病細胞の徴候がないことを意味する。言い換えると:MRDが検出可能でない場合(<10-4、すなわち、1つ未満の白血病細胞/104骨髄細胞)、分子的完全寛解に達する。
【0092】
本発明の薬学的方法および手段の別の好ましい態様において、前記医薬組成物の投与により、MRD陽性小児急性リンパ芽球性白血病(ALL)がMRD陰性状態に変換される。
【0093】
本発明の薬学的方法および手段の別の好ましい態様において、MRDは、
t(12;21)[TEL-AML1];
t(1;19;)[E2A-PBX];
t(4;11)[AF4-MLL];
t(9;22)[BCR-ABL];
高二倍体または第4、10および17染色体の同時トリソミー;
低二倍体(すなわち、44個未満の染色体);
免疫グロブリン遺伝子の再配列;ならびに
T細胞受容体(TCR)再配列
からなる群より選択される細胞遺伝学的異常または再配列の少なくとも1つの定量的検出により測定される。
【0094】
MRDは、(i)t(12;21)[TEL-AML1];t(1;19;)[E2A-PBX];t(4;11)[AF4-MLL];t(9;22)[BCR-ABL];高二倍体(もしくは第4、10および17染色体の同時トリソミー)、低二倍体(すなわち、44個未満の染色体)、または(ii)免疫グロブリン遺伝子の再配列もしくはT細胞受容体(TCR)再配列などの本明細書に記載の個々の細胞遺伝学的異常の少なくとも1つの定量的検出により測定される;表1も参照のこと。記載の細胞遺伝学的異常または再配列の前記定量的検出は、好ましくは、例えば、PCRまたはFACS解析を使用することにより行なわれる。
【0095】
本発明の方法は、MRDの治療、改善または排除し、それにより、小児ALL患者の再発のリスクを低減またはさらに排除するための治療アプローチを提供する。注目すべきことに、治癒性の小児ALL患者のMRDの治療は、現在まで、まだ入手され得ていなかった。
【0096】
本発明の薬学的方法および手段の別の好ましい態様において、MRDを有する前記小児患者は、検出限界より上の細胞遺伝学的異常のシグナルおよび/または≧10-4の感度で再配列による少なくとも1つのマーカーを示す。好ましくは、MRDは、PCRおよび/またはFACS解析によって検出される。
【0097】
本明細書に記載の個々の細胞遺伝学的異常としては、例えば、t(12;21)[TEL-AML1];t(1;19;)[E2A-PBX];t(4;11)[AF4-MLL];t(9;22)[BCR-ABL];高二倍体(または第4、10および17染色体のトリソミー)、低二倍体が挙げられる。再配列としては、例えば、免疫グロブリン遺伝子の再配列またはT細胞受容体(TCR)再配列が挙げられる;表1も参照のこと。前記細胞遺伝学的異常および/または再配列を有するALL細胞によって示されるMRDは、PCRまたはFACS解析によって検出され得る。
【0098】
例えば、用語「検出限界より上のbcr/ablシグナルより上」は、本明細書で使用されるように、PCRまたはFACS解析により、検出可能なbcr/ablシグナルがもたらされることを意味する。同様に、t(4;11)転座シグナルは、前記転座は、PCRまたはFACSによって検出され得ることを意味する。これは、必要な変更を加えて、本明細書に記載のその他の細胞遺伝学的異常または再配列にも適用される。用語「≧10-4の感度で」は、再配列との関連において、104個の骨髄細胞あたり少なくとも1つの白血病細胞または1つより多くの白血病細胞(記載のTCRまたは免疫グロブリン再配列を有する)が記載の方法によって検出され得ることを意味する。
【0099】
本発明の薬学的方法および手段の別の好ましい態様において、分子再発(上記のアッセイにより検出可能)までの期間は6ヶ月より長く、好ましくは、7、8、9、10、11もしくは12ヶ月より長く、またはさらにより好ましくは2、3、4、5年間またはそれ以上である。
【0100】
用語「分子再発」は、本明細書で使用されるように、前記小児患者は、上記のPCRおよび/またはFACSにより検出限界より上の細胞遺伝学的異常のシグナルおよび/または再配列による少なくとも1つのマーカーを≧10-4の感度で示すことを意味する。
【0101】
本発明の薬学的方法および手段の別の好ましい態様において、前記CD19xCD3二重特異性単鎖抗体構築物内の対応する可変重鎖領域(VH)および対応する可変軽鎖領域(VL)領域は、N末端からC末端に、VL(CD19)-VH(CD19)-VH(CD3)-VL(CD3)の順に配列される。
【0102】
CD19xCD3二重特異性単鎖抗体のCD3およびCD19結合ドメインの対応する可変重鎖領域(VH)および対応する可変軽鎖領域(VL)領域を、それぞれ、配列番号3〜10に示す。記載のCD19xCD3二重特異性単鎖抗体のそれぞれのVHおよびVL領域の対応するCDR領域を配列番号11〜22に示す。
【0103】
本発明の薬学的方法および手段の別の好ましい態様において、前記CD19xCD3二重特異性単鎖抗体構築物は、配列番号1に示すアミノ酸配列、または配列番号1と少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0104】
本発明は、配列番号1に示すアミノ酸配列、ならびに配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも90%または好ましくは95%同一、最も好ましい少なくとも96、97、98もしくは99%同一であるアミノ酸配列を含むCD19xCD3二重特異性単鎖抗体分子を記載する。また、本発明は、配列番号2に示す対応する核酸配列ならびに配列番号2に示す核酸配列と少なくとも90%、好ましくは、95%同一、最も好ましい少なくとも96、97、98または99%同一である核酸配列を記載する。配列同一性は、ヌクレオチドまたはアミノ酸配列全体において測定されることを理解されたい。さらに、配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも90%または好ましくは95%同一、最も好ましい少なくとも96、97、98もしくは99%同一であるアミノ酸配列を含む二重特異性単鎖抗体分子は、配列番号11〜22に示すCDR配列をすべて含むことを理解されたい。配列の整列のためには、例えば、GCGソフトウェアパッケージ(Genetics Computer Group、575 Science Drive、Madison、Wisconsin、USA 53711(1991)に含まれたプログラムGapまたはBestFitが使用され得る(NeedlemanおよびWunsch J. Mol. Biol. 48(1970)、443-453;SmithおよびWaterman、Adv. Appl. Math 2(1981)、482-489)。本明細書に記載のCD19xCD3二重特異性単(single single)鎖抗体のヌクレオチドまたはアミノ酸配列と例えば、90%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有するヌクレオチドまたはアミノ酸配列を調べ、同定することは、当業者にとって定型の方法である。例えば、CrickのWobble仮説によれば、アンチコドン上の5’塩基は、その他の2つの塩基ほど空間的に拘束されず、したがって、標準的でない塩基対形成を有し得る。言い換えると:コドントリプレット内の第3の位置は、この第3の位置が異なる2つのトリプレットが同じアミノ酸残基をコードし得るように異なり得る。前記仮説は当業者に周知である(例えば、http://en.wikipedia.org/wiki/Wobble_Hypothesis;Crick、J Mol Biol 19(1966):548-55参照)。さらに、当業者にとって、本明細書に記載のCD19xCD3二重特異性単鎖抗体のヌクレオチドまたはアミノ酸配列と、例えば、90%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有するかかるアミノ酸配列の細胞傷害活性を測定することは定型の手順である。CD19xCD3二重特異性単鎖抗体、またはCD19xCD3二重特異性単鎖抗体のアミノ酸配列と、例えば、90%、95%、96%、97%、98%もしくは99%の配列同一性を有する抗体構築物の細胞傷害活性は、例えば、WO99/54440、WO 2004/106381、またはWO 2007/068354に例示された方法によって測定され得る。
【0105】
本発明の薬学的方法および手段の別の好ましい態様において、CD19xCD3二重特異性単鎖抗体構築物を含む医薬組成物は、連続注入によって少なくとも4週間投与した後、2週間、無治療期間にする。1回の治療サイクルは、前記抗体を少なくとも4週間の連続注入の後、2週間の無治療期間にすることと理解されたい。この期間の次に、1回以上の治療サイクルまたは同種異系HSCTが続けられ得る。好ましくは、CD19xCD3二重特異性単鎖抗体の連続注入による前記投与(すなわち、1回の治療サイクル)は、MRD陰性状態の測定後、地固めのために、少なくとも2回、3回、4、5、6、7、8、9回またはさらに10回まで繰り返される。
【0106】
本発明の薬学的方法および手段の一態様において、該方法は、MRD陽性ALLをMRD陰性状態に変換するために同種異系幹細胞移植の前にする。
【0107】
本発明の薬学的方法および手段の別の態様において、該方法は、例えば、化学療法および/または同種異系幹細胞移植を用いた従来のALL治療の後に小児ALLが再発した場合は、同種異系HSCTの後である。
【0108】
本発明の薬学的方法および手段の別の好ましい態様において、CD19xCD3二重特異性単鎖抗体構築物は、患者の体表面積1平方メートルあたり10μg〜100μgの日用量で投与される。
【0109】
本明細書で使用するように、「X to Y(X〜Y)」で規定する用量範囲は、「between X and Y(X〜Y)」で規定する用量範囲と同じである。該範囲は、上限、また下限も含む。これは、例えば、患者の体表面積1平方メートルあたり10μg〜100μgの日用量は、「10μg]および「100μg」を含むことを意味する。
【0110】
本発明の薬学的方法および手段のさらにより好ましい態様において、CD19xCD3二重特異性単鎖抗体構築物は、患者の体表面積1平方メートルあたり15μg、30μg、60μgまたは90μgの日用量で投与される。さらにより好ましくは、前記抗体は、患者の体表面積1平方メートルあたり15〜30μgの日用量で、最も好ましくは患者の体表面積1平方メートルあたり15または30μgの日用量で投与される。
【0111】
ここで、小児患者の平均体表面積は、本発明による方法または使用の状況において、約0.2〜2.2m2の範囲であると計算する。計算については、例えば、http://www.cato.eu/koerperoberflaeche-kinder.htmlに提供された式を参照のこと。
【0112】
本発明の薬学的方法および手段の別の態様において、小児急性リンパ芽球性白血病(ALL)は、新規に診断されたALL、抗療性もしくは再発した小児ALL、または抗療性で再発したALLである。新規に診断された小児ALLは、本明細書において使用するように、その小児患者においてALL疾患が初めて診断されたことを意味する。
【0113】
本発明の薬学的方法および手段の別の態様において、前記方法は、急性リンパ芽球性白血病のCOGAALL03B1分類により再発のリスクが高い患者のためのものである。
【0114】
好都合には、本明細書に記載のCD19xCD3二重特異性単鎖抗体を含む医薬組成物は、さらに、任意に(a)反応バッファー(1種類もしくは複数種)、保存溶液および/または記載の方法もしくは使用に必要とされる残りの試薬もしくは物質
を含む。さらに、前記成分は、バイアルもしくはボトル内に個々に、または容器もしくは多容器ユニット内に組合せでパッケージされ得る。
【0115】
本明細書に記載のCD19xCD3二重特異性単鎖抗体の安全性および許容性を評価するためには、該化合物は、長期連続注入によって投与される。
【0116】
本発明の薬学的手段および方法の有益で予想外の効果は、CD19xCD3二重特異性単鎖抗体を、体表面積1平方メートルあたり10マイクログラム〜100マイクログラムの日用量で投与することにより得られ得ることがわかった。日用量は、投与期間にわたって一定に維持され得る。しかしながら、本明細書に記載の薬学的方法の前の注入期間の最初の日(1日または複数)では、低用量のCD19xCD3二重特異性単鎖抗体を投与する(「初期用量」)が、残りの注入期間では高用量(「維持用量」)を適用することもこの態様の範囲に含まれる。この測定により、抗体治療に対する患者の身体の適合および/または望ましくない副作用の回避が補助され得る。例えば、体表面積1平方メートルあたり5マイクログラムの二重特異性単鎖抗体が注入期間の最初の日(1日または複数)(例えば、初日、または初日と2日目、または初日、2日目および3日目など、7日目まで)に初期用量として投与され得、続いて、残りの期間は、体表面積1平方メートルあたり15マイクログラムが日用量として投与される。または体表面積1平方メートルあたり5マイクログラムの二重特異性単鎖抗体が注入期間の最初の日(1日または複数)に初期用量として投与され得、続いて、残りの期間は、体表面積1平方メートルあたり30または45マイクログラムが日用量として投与される。また、体表面積1平方メートルあたり5マイクログラムのCD19xCD3二重特異性単鎖抗体が、注入期間の最初の日(1日または複数)に投与され得、続いて、体表面積1平方メートルあたり15マイクログラムのCD19xCD3二重特異性単鎖抗体が注入期間のその後の日(1日または複数)に投与され、続いて、体表面積1平方メートルあたり30または45マイクログラムが日(維持)用量として、合計少なくとも4週間の残りの投与期間に投与されることが構想される。2種類の初期用量を、1日だけでなく、2、3、4、5、6もしくは7日間またはさらに長期間投与してもよい。患者の平均体表面積は、本明細書では、本発明による薬学的方法および手段の状況において、0.2〜2.2m2の範囲であると計算する。
【0117】
CD19xCD3二重特異性単鎖抗体の非断続投与は、静脈内、非経口、皮下、経皮、腹腔内、筋肉内または肺内であり得る。静脈内投与様式は、ほとんどの場合、CD19xCD3二重特異性単鎖抗体を非断続投与するため、場合によっては、同時治療計画の一部としての医薬剤の共投与のために選択される様式である。そのため、静脈内投与は特に好ましい。この場合、Baxter製の多治療剤注入ポンプモデル6060などの適当な定量デバイスが有利に選択され得る。どのような定量デバイスが選択されようと、それは、カートリッジの交換および/または電源セルの交換もしくは充電事象の際に、治療薬剤の投与の中断が最小限になる、よりよくは防止されるような設計および構成であるべきである。これは、例えば、交換するカートリッジとは別の、CD19xCD3二重特異性単鎖抗体溶液の二次レザーバを有するデバイスを選択し、この二次レザーバから小児患者への連続注入が、空またはほとんど空のカートリッジを取り出して新しいものと交換している間であっても継続され得るようにすることによりなされ得る。
【0118】
静脈内投与、場合によっては同時治療計画の一部としての共投与の様式は、かかる投与の定量のために、小児患者体内へのポンプの埋め込みを伴う。当業者には、かかる定量ポンプ、例えば上記のBaxter製のモデル6060が認識されよう。
【0119】
非限定的な例として、非断続、すなわち連続投与が、患者の体内への治療薬剤の流入の定量のための小児患者が着用した、または埋め込まれた小型ポンプシステムによって実現されることがあり得る。かかるポンプシステムは、当該技術分野で一般に知られており、一般的に、注入する治療薬剤を含むカートリッジの定期的な交換に依存する。かかるポンプシステムのカートリッジを交換する場合、交換しなければ非断続的な小児患者の体内への治療薬剤の流れの一時的な中断は起こり得る。かかる場合において、カートリッジ交換前の投与期間およびカートリッジ交換後の投与期間は、なお本発明の薬学的手段および方法の意味に含まれるとみなされ得、一緒になってかかる治療薬剤の1回の「非断続投与」を構成する。同じことが、カートリッジが1回より多くの交換を必要とし得るか、またはポンプを駆動する電源セルが交換を必要とし得、患者の体内への治療溶液の流れの一時的なオフセットがもたらされる非常に長期間の投与に当てはまり得る。
【0120】
また、かかる長期創傷は特に感染が起こり易いため、患者の体内への穿刺投与部位での感染の危険を最小限にするように適切な測定が行なわれるべきである。上記のことは、同様の送達系による筋肉内投与にも当てはまる。
【0121】
連続投与は、皮膚上に着用され、間を空けて交換される貼付剤による経皮的であり得る。当業者は、この目的に適した薬物送達のための貼付剤系を認識している。消耗された第1の貼付剤のすぐ近くに、消耗された第1の貼付剤を除去する直前に、消耗された第1の貼付剤の交換が、例えば皮膚の表面上への新しい第2の貼付剤の配置と同時に有利になされ得るため、経皮投与は非断続投与に特に適していることに注意されたい。流れの中断または電源セルの故障の問題は生じない。
【0122】
さらに、本発明は、小児急性リンパ芽球性白血病(ALL)の治療、改善または排除のためのCD19xCD3二重特異性単鎖抗体構築物であって、前記CD19xCD3二重特異性単鎖抗体が小児患者への投与のために調製されるものである構築物に関する。
【0123】
さらに、本発明は、小児急性リンパ芽球性白血病(ALL)の治療、改善または排除のための医薬組成物の調製のためのCD19xCD3二重特異性単鎖抗体構築物の使用に関する。したがって、本発明はまた、小児急性リンパ芽球性白血病(ALL)の治療、改善または排除のための本明細書に定義したCD19xCD3二重特異性単鎖抗体構築物に関する。本明細書に開示した態様は、本薬学的手段および方法の状況で、本明細書において、必要な変更を加えて、特に、小児急性リンパ芽球性白血病(ALL)の治療、改善または排除において小児患者への投与のための、単鎖構築物である抗CD19xCD3構築物を含む対応する医薬組成物の調製に適用される。
【0124】
好ましくは、前記小児急性リンパ芽球性白血病(ALL)は、小児B細胞系急性リンパ芽球性白血病(ALL)、好ましくは小児B前駆細胞性急性リンパ芽球性白血病ALL、より好ましくは小児プロB ALL、プレB ALLまたはcommon型ALL(cALL)である。さらにより好ましくは、ALLはcALLである。
【0125】
記載の医学的使用の好ましい態様において、前記B前駆細胞性ALLは、再発性および/または化学療法および/またはHSCTなどの従来のALL治療に抗療性である。
【0126】
好ましくは、前記急性リンパ芽球性白血病(ALL)は、診断の約3年以内に再発する。
【0127】
記載の医学的使用の別の好ましい態様において、CD19xCD3二重特異性単鎖抗体構築物は、急性リンパ芽球性白血病(ALL)を有する小児患者における微小残存病変(MRD)の治療、改善または排除のためのものである。好ましくは、前記小児患者が血液学的完全寛解においてMRD陽性である。
【0128】
記載の医学的使用のさらに好ましい態様において、前記CD19xCD3二重特異性単鎖抗体の投与により、MRD陽性小児急性リンパ芽球性白血病(ALL)がMRD陰性状態に変換される。
【0129】
好ましくは、MRDは、PCRおよび/またはFACS解析を使用し、本明細書において定義した個々の細胞遺伝学的異常または再配列の定量的検出によって測定される。
【0130】
さらにより好ましくは、小児ALL患者は、検出限界より上の細胞遺伝学的異常のシグナルおよび/または≧10-4の感度で再配列による少なくとも1つのマーカーを示す。
【0131】
記載の医学的使用の別の好ましい態様において、記載した検出方法によって検出可能な分子再発までの期間は6ヶ月より長い。
【0132】
記載の医学的使用の別の好ましい態様において、前記CD19xCD3二重特異性単鎖抗体構築物内の対応する可変重鎖領域(VH)および対応する可変軽鎖領域(VL)領域は、N末端からC末端にVL(CD19)-VH(CD19)-VH(CD3)-VL(CD3)の順に配列される。
【0133】
好ましくは、前記CD19xCD3二重特異性単鎖抗体構築物は、配列番号1に示すアミノ酸配列、または配列番号1と少なくとも90%、好ましくは95%同一のアミノ酸配列を含む。
【0134】
記載の医学的使用のさらに好ましい態様において、1回の治療サイクルは、少なくとも4週間の連続注入、続いて2週間の無治療期間である。
【0135】
好ましくは、前記投与は、MRD陰性状態の決定後、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9または(of)10回繰り返される。
【0136】
別の態様において、MRD陽性ALLをMRD陰性状態に変換するために、投与を同種異系幹細胞移植の前にする。
【0137】
代替的な態様において、投与は、同種異系幹細胞移植の後である。
【0138】
記載の医学的使用の別の好ましい態様において、CD19xCD3二重特異性単鎖抗体構築物は、患者の体表面積1平方メートルあたり10μg〜100μgの日用量で投与される。
【0139】
好ましくは、CD19xCD3二重特異性単鎖抗体構築物は、患者の体表面積1平方メートルあたり15μg〜30μgの日用量で投与される。
【0140】
記載の医学的使用の別の態様において、CD19xCD3二重特異性単鎖抗体構築物の投与により、同種異系幹細胞移植に適格な小児患者において、同種異系幹細胞移植が置き換えられる。
【0141】
本発明の薬学的方法および手段に関して示した態様、定義および説明は、必要な変更を加えて、本明細書に記載のCD19xCD3二重特異性単鎖抗体構築物の医学的使用に適用される。
【図面の簡単な説明】
【0142】
【図1】図1は、CD19xCD3二重特異性単鎖抗体(CD19xCD3 bscab)の作用様式を示す。CD19xCD3二重特異性単鎖抗体(配列番号1)は、CD3陽性細胞傷害性T細胞に、CD19抗原を有するヒト急性リンパ芽球性白血病細胞を排除するよう再指令する。
【図2】図2は、common型ALLを有する7歳の患者における従来のALL治療の不成功を示す。HSCTの1年後、小児患者は、2回目の骨髄再発を経験し、その後、1サイクルのクロファラビン/シクロホスファミド/VP16、2サイクルのアムサクリン、VP16、プレドニゾンおよび1サイクルのメルファラン/シタラビンを含む化学療法を受けた。この集中的な化学療法にもかかわらず、患者は、高いMRDレベルによって示されるように、治療中、持続的な形態学的疾患を有した。左のy軸はFACS-MRD%を示し、右のy軸はPCR-MRDを示し(100〜<10-4)、x軸は、最初のHSCTからの日数を示す;実施例4参照。
【図3】図3は、前記抗体での治療前、治療中および治療後のMRDによって示されるように、CD19xCD3二重特異性単鎖抗体(CD19xCD3 bscab;配列番号1)の投与による小児患者の成功裡の治療を示す。従来のALL治療の不成功後、患者を、15μg/m2CD19xCD3二重特異性単鎖抗体(配列番号1)の5週間の連続注入で治療した。抗体治療を行なうと、MRD陰性を達成することができた。2008年10月、すなわち、CD19xCD3二重特異性単鎖抗体での治療終了の2週間後(図3〜5の第0日)、コンディショニング(conditioning)バーで示したクロファラビン、チオテパおよびメルファラン(Lang)からなる非骨髄除去的予備計画を用いたハプロタイプ一致の自身の母親からの2回目のHSCTを受けた。左のy軸はFACS-MRD%を示し、右のy軸はPCR-MRDを示し(100〜<10-4)、x軸は、最初のHSCTからの日数を示し、第「0」日は、2回目のHSCTの日(抗体治療後) を示す;実施例4参照。
【図4】図4は、CD19xCD3二重特異性単鎖抗体での治療前および治療後(CD19xCD3 bscab;配列番号1)の一時的な芽細胞発生数を示す。CD19xCD3二重特異性単鎖抗体治療の10日目の骨髄解析により、抗体による骨髄芽細胞の完全な除去(MRD < 10-4)が示された。35日目のCD19xCD3二重特異性単鎖抗体治療の終了時の別のBM解析により、骨髄由来の白血病性芽細胞の完全な非存在(MRD <10-4)が確認された。左のy軸は、フローサイトメトリーによる芽細胞数(単位:%)を示し、右のy軸は、顕微鏡検査による芽細胞数(単位:%)を示し、x軸は、HSCTからの日数を示し、マイナスの日数は、最初のHSCTからの日数を示し、第「0」日は、2回目のHSCTの日(抗体治療後)を示し、プラスの日数は、2回目のHSCT後の日数を示す。
【図5】図5は、CD19xCD3二重特異性単鎖抗体(CD19xCD3 bscab;配列番号1)での治療時のMRDレベルの減少を示す。抗体治療を行なうと、MRD陰性を達成することができた。2009年6月の時点で、患者はMRD陰性分子的完全寛解のままであった。左のy軸はFACS-MRD%を示し、右のy軸はPCR-MRDを示し(100〜<10-4)、x軸は、HSCTからの日数を示し、マイナスの日数は最初のHSCTからの日数を示し、「0」は、2回目のHSCTの日を示し、プラスの日数は2回目のHSCTからの日数を示す。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0143】
本発明を、以下の実施例によってさらに説明する。
【0144】
実施例:
1. CD19xCD3二重特異性単鎖抗体
CD19xCD3二重特異性単鎖抗体の生成、発現および細胞傷害活性はWO99/54440に記載されている。CD19xCD3二重特異性単鎖抗体の対応するアミノ酸および核酸配列を、それぞれ、配列番号1および2に示す。CD19xCD3二重特異性単鎖抗体のCD3結合ドメインのVHおよびVL領域を、それぞれ、配列番号7〜10に示し、CD19xCD3二重特異性単鎖抗体のCD19結合ドメインのVHおよびVL領域を、それぞれ配列番号3〜6に示す。
【0145】
2.リンパ球の表現型分類解析およびキメラ現象解析
リンパ球の表現型分類解析およびキメラ現象解析のため、CD19xCD3二重特異性単鎖抗体での治療前、治療中および治療後に、EDTA含有収集チューブを用いて患者の血液試料を収集した。Adviaでの識別的血液分析によって血液試料中のリンパ球の絶対数を測定した。CD3、CD4、CD8、CD19およびCD56(すべて、Becton-Dickinson、Heidelberg、Germanyから入手)に対する蛍光標識抗体を用いてリンパ球を染色した。標識細胞の解析およびデータ収集は、FACSCalibur(Becton-Dickinson)を用いて行なった。
【0146】
3. MRDの検出
MRDの検出のため、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)系アッセイ(上記引用のBader et al.)またはFACS解析のいずれかを使用した。簡単には、DNAを、DNeasy Blood&Tissue Kit(Qiagen GmbH、Hilden、Germany)によって単離した。PCR系標的としての免疫グロブリンおよびT細胞受容体遺伝子再配列は、最近、幹細胞移植後の急性リンパ芽球性白血病におけるMRDをモニタリングするための安定なマーカーであることが示された(Kreyenberg、Leukemia、2009)。
【0147】
4. 症例報告
4.1 症例報告 患者1
この7歳の患者は、2004年に、高リスクCD10+ common型ALL(CD19-、CD34陽性;CD45減少;TCR再配列;CNS陰性)と診断された。治療後、患者は、2006年6月に骨髄再発を経験し、S3部門のALL-REZ BFM試験に従って治療された。2回の化学療法サイクル後、患者は持続的な疾患を有し、3回のクロファラビン過程後、完全寛解が達成された。2007年、患者は、全身照射およびエトポシドでのコンディショニング後、10名のHLA-対立遺伝子適合の血縁関係のないドナーのうち9名から同種異系HSCTを受けた。HSCTの1年後、患者は、さらなる骨髄再発を経験し、その後、1サイクルのクロファラビン/シクロホスファミド/VP16(Nobuko)、2サイクルのアムサクリン、VP16、プレドニゾン(Hamburg)および1サイクルのメルファラン/シタラビンを含む化学療法を受けた;図2参照。この集中的な化学療法にもかかわらず、患者は、図2の高いMRDレベルから明白なように、治療中、持続的な形態学的疾患を有した。次いで、患者は、5週間の15μg/m2のCD19xCD3二重特異性単鎖抗体(ブリナツモマブ;配列番号1)の連続注入による特別な配慮により認められた(compassionate)使用下で治療された;図3参照。記載の抗体での治療前(第0日)および治療中のリンパ球集団の連続解析により、CD8+ Tリンパ球の印象的な拡大が示されたが、CD4+ T細胞およびCD56+ NK細胞では変化はみられなかった。抗体治療を行なうと、MRD陰性が達成され得た。同時のキメラ現象解析により、100%ドナーキメラ現象が示された。図4に示されるように、10日目のCD19xCD3二重特異性単鎖抗体治療の骨髄解析により、骨髄芽細胞(MRD < 10-4)の完全な除去が示された。CD19xCD3二重特異性単鎖抗体治療の終了時の別のBM解析により、再度、骨髄由来の白血病性芽細胞の完全な非存在(MRD <10-4)が示された。前記抗体での治療前、治療中および治療後のMRDの連続解析を図5に示す。抗体治療の前は、小児患者は非常に不良な予後を有し、臨床症状が悪いため、HSCTに適格でなかった。抗体治療を行なうと、MRD陰性が達成され得た。失調の一過性の孤立性の徴候以外は、主な副作用は観察されず、ドナー由来CD8+ Tリンパ球の印象的な拡大にもかかわらず、GvHDの徴候は見られなかった。2008年10月、CD19xCD3二重特異性単鎖抗体での治療終了の2週間後(すなわち、図3〜5の第0日)、患者は、クロファラビン、チオテパおよびメルファラン(Lang)からなる非骨髄除去的予備計画を用いて、ハプロタイプ一致の自身の母親から2回目のHSCTを受けた。2009年11月時点で、患者はMRD陰性完全寛解のままであった。
【0148】
4.2 症例報告 患者2
この15歳の患者は、2001年4月にフィラデルフィア染色体-およびCD19-陽性B前駆細胞性ALLと診断された。化学療法後、患者は、2001年10月、12GyのTBIおよびエトポシドでのコンディショニング後、HLA一致の兄弟姉妹からのHSCTを受けた。2002年、再発骨髄が診断され、マチニブおよび化学療法により新たに寛解が達成された。2004年10月、次いで、患者は、HLA一致の血縁関係のないドナーから2回目のHSCTを受けた。2008年3月、2回目の再発が診断され、患者は、イマチニブに対する抵抗性のため、低用量化学療法およびダサチニブで治療した。クロファラビンおよびシトシン/アラビノシドでのさらなる化学療法後、患者は、分子寛解が達成され、ダサチニブでの移植後治療により、6つのうちの3つのHLA-対立遺伝子不適合ハプロタイプ一致の自身の父親から3回目の同種異系HSCTを受けた。胃腸管出血および拡張性心筋症のため、ダサチニブは、移植の5ヶ月後に中止した。2009年4月、CNS中に7×109/Lの芽細胞および骨髄中に3%の芽細胞を有する複合型中枢神経系(CNS)再発が診断された。次いで、患者をニロチニブ、髄腔内化学療法および18GyでのCNSの分別照射で治療した。この治療の3ヶ月、患者の骨髄は、1.1×10-3のレベルでMRD陽性のままであったが、CNSには芽細胞がなかった。末梢血のキメラ現象解析により、ハプロタイプ一致の自身の父親による完全なドナー由来造血が示された。
【0149】
次いで、患者を、連続注入による4週間の15μg/m2/日での単独薬剤ブリナツモマブでの特別な配慮により認められた使用下で治療し、何も副作用はなかった。治療終了時の骨髄吸引で完全寛解が示され、骨髄中のMRD は<1×10-4で検出不可能であった。患者1のように、患者2は、ブリナツモマブでの治療中または治療後、なんらGvHDの徴候を示さなかった。ブリナツモマブでの治療の終了から2週間後、患者は、感染によって引き起こされた一過性の溶血性反応を経験した。患者2は、その時点で、治療後、4週間、再発なしであった。患者は良好であり、通学している。
【0150】
4.3 まとめ
ALLの治療に利用可能なこれまでの薬物は、特異性が低く、種々の他の細胞に影響を及ぼして、免疫抑制、骨髄形成不全、粘液分泌抑制(mucositis)、神経障害、心臓毒性、および脱毛などの重度副作用をもたらす。したがって、副作用がより少ない、より良好な標的化アプローチが緊急に必要とされている。さらに、一部の患者では、ALLクローン、特に、HSCT後に生じたクローンが、従来の化学療法に完全抵抗性を発現するため、異なる作用様式を有する薬物が望ましい。化学療法と組合せたNK細胞のFc受容体および顆粒球による抗体依存性細胞傷害性の有効性を、モノクローナルキメラ抗体リツキシマブを用いて小児ALLにおいて示すことができた。現在、ブリナツモマブは、B細胞非ホジキンリンパ腫およびリンパ性白血病においてCD19を標的化するための細胞傷害性T細胞動員を可能にする臨床試験中の唯一の抗体である。T細胞は、従来のモノクローナル抗体によって動員される免疫細胞よりも高い細胞傷害潜在性を有するとみなされる。
【0151】
同種異系GvL効果は、HSCTの抗白血病性有効性の主な理由の1つであると仮定される。残念ながら、GvLの発生は、しばしば、依然として同種異系HSCT後の罹病率および死亡率の主要な原因であるGvHDと関連している。したがって、GvHDの非存在下におけるGvLの誘導は、さかんな研究の主題である。GvL効果の誘導のためのアプローチの1つは、ドナーリンパ球注入(DLI)である。DLIは、CMLの治療において非常に有効であるが、再発ALLの移植後治療には、あまり有効でなく、しばしば、罹患小児の生活の質の相当な障害を伴う慢性GvHDの発生がもたらされる。
【0152】
GvHDなくGvLを誘導するための可能なアプローチの1つは、Tリンパ球を患者のCD19陽性ALL芽細胞に指向し得る低用量のT細胞動員抗体ブリナツモマブを用いたHSCT後のドナー由来Tリンパ球のインビボ活性化である。この抗体は、自己由来の状況では印象的な抗リンパ腫および抗白血病活性を示したが、HSCT後の再発ALLまたは小児では試験されていなかった。自己由来の状況では、MRD陽性ALLを有する16名の評価可能な成人患者のうち13名で分子寛解が誘導された。上記の両方の小児患者は、治療開始後、印象的な抗白血病性応答を示した。両方の場合で、MRDは、ドナー由来T細胞の広範囲の拡大にもかかわらず、GvHDの徴候は何もなく、検出レベル未満に低下した。これは、ブリナツモマブの作用は、通常のペプチド抗原提示とは独立しており、ナイーブT細胞レパートリーの動員を伴わないものであり得るという事実によるものであり得る。
【0153】
1日あたり15μg/m2という低いブリナツモマブの用量レベルは、ドナー由来Tリンパ球の拡大を誘導し、ALL芽細胞をMRDの検出レベル未満に排除するのに充分であった。これにより、T細胞動員が、ずっと高用量を必要とし、Fc受容体の欠如のため細胞傷害性T細胞が動員され得ない従来のモノクローナル抗体の作用様式とは非常に異なることが強調される。
【0154】
ブリナツモマブは、両方の患者において充分耐性であり、わずかに疲労感、軽度の失調およびCTCAEグレード1〜2の震えが引き起こされた。患者2では、集中的な予備治療にもかかわらず、副作用は全く見られなかった。数週間にわたる連続i.v.注入は、両方の小児患者に充分許容された。
【0155】
小児ALLにおけるこの最初の臨床試験から、本発明者らは、ブリナツモマブは充分耐性であり、同種異系HSCT後にCD19陽性B前駆細胞性ALLの多数回の再発の後、治療抗療性の疾患を有する小児において血液学的およびMRD陰性完全寛解を容易に誘導し得ると結論付ける。どの患者もドナー由来Tリンパ球の拡大にもかかわらず、ミスマッチハプロタイプ一致の移植の後であっても、GvHDの徴候を何も示さなかったことは注億に値する。
【0156】
これらの最初の結果は、CD19xCD3二重特異性単鎖抗体での小児急性リンパ芽球性白血病(ALL)患者の治療により、小児患者の体内から急性リンパ芽球性白血病細胞が完全に排除され得ることを示す。重要なことに、この治療により、血液学的完全寛解だけでなく、微小残存病変(MRD)陽性急性リンパ芽球性白血病(ALL)がMRD陰性状態に変換されたため分子的完全寛解もたらされた。治療は充分耐性であった。これに鑑み、本明細書に記載のCD19xCD3二重特異性単鎖抗体の投与により、小児急性リンパ芽球性白血病(ALL)、特に、化学療法および/または同種異系HSCTに抗療性のALLおよび/または再発ALLに対する改善された治療オプションが提供される。
【0157】
結果は、以下のように簡単にまとめられ得る。
・2名の小児患者は特別な配慮により認められた使用に基づいて治療された。
・前記患者はMRD陰性状態が継続中
・大きな有害事象(AE)の観察はなし
・AEはすべて一過性、治療の中断の必要なし

【特許請求の範囲】
【請求項1】
小児急性リンパ芽球性白血病(ALL)の治療、改善または排除のための方法であって、該治療、改善または排除の必要がある小児ALL患者にCD19xCD3二重特異性単鎖抗体構築物を含む医薬組成物を投与することを含む、方法。
【請求項2】
前記小児急性リンパ芽球性白血病(ALL)が小児B細胞系急性リンパ芽球性白血病(ALL)、好ましくは小児B前駆細胞性急性リンパ芽球性白血病ALL、より好ましくは小児プロB ALL、プレB ALLまたはcommon型ALL(cALL)である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記急性リンパ芽球性白血病(ALL)が抗療性および/または再発ALLである、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記急性リンパ芽球性白血病(ALL)が再発ALL、好ましくは、診断の3年以内に再発したALLである、請求項3記載の方法。
【請求項5】
小児ALL患者の微小残存病変(MRD)の治療、改善または排除のための請求項1〜4いずれか記載の方法。
【請求項6】
前記小児ALL患者が血液学的完全寛解においてMRD陽性である、請求項5記載の方法。
【請求項7】
MRD陽性ALLをMRD陰性状態に変換させる、請求項5または6記載の方法。
【請求項8】
MRDが、
t(12;21)[TEL-AML1];
t(1;19;)[E2A-PBX];
t(4;11)[AF4-MLL];
t(9;22)[BCR-ABL];
高二倍体または第4、10および17染色体のトリソミー;
低二倍体;
免疫グロブリン遺伝子の再配列;ならびに
T細胞受容体(TCR)再配列
からなる群より選択される細胞遺伝学的異常または再配列の少なくとも1つの定量的検出により測定される、請求項5〜7いずれか記載の方法。
【請求項9】
前記小児ALL患者が、検出限界より上の細胞遺伝学的異常のシグナルおよび/または≧10-4の感度で再配列による少なくとも1つのマーカーを示す、請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記CD19xCD3二重特異性単鎖抗体構築物内の対応する可変重鎖領域(VH)および対応する可変軽鎖領域(VL)領域が、N末端からC末端に、VL(CD19)-VH(CD19)-VH(CD3)-VL(CD3)の順に配列される、請求項1〜9いずれか記載の方法。
【請求項11】
前記CD19xCD3二重特異性単鎖抗体構築物が、配列番号1に示すアミノ酸配列、または配列番号1と少なくとも90%、好ましくは95%同一のアミノ酸配列を含む、請求項10記載の方法。
【請求項12】
CD19xCD3二重特異性単鎖抗体構築物を含む医薬組成物を連続注入によって少なくとも4週間投与した後、2週間、無治療期間にする、請求項1〜11いずれか記載の方法。
【請求項13】
前記投与が、MRD陰性状態の決定後、10回のうち少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9 回繰り返される、請求項12記載の方法。
【請求項14】
MRD陽性ALLをMRD陰性状態に変換するために同種異系幹細胞移植(HSCT)前になされる、請求項12または13記載の方法。
【請求項15】
同種異系造血幹細胞移植(HSCT)後になされる、請求項12または13記載の方法。
【請求項16】
CD19xCD3二重特異性単鎖抗体構築物により対白血病移植片(GvL)効果が誘導される、請求項15記載の方法。
【請求項17】
CD19xCD3二重特異性単鎖抗体構築物が、患者の体表面積1平方メートルあたり10μg〜100μgの日用量で投与される、請求項1〜16いずれか記載の方法。
【請求項18】
CD19xCD3二重特異性単鎖抗体構築物が、患者の体表面積1平方メートルあたり15μg〜30μgの日用量で投与される、請求項17記載の方法。
【請求項19】
急性リンパ芽球性白血病のCOGAALL03B1分類による再発のリスクが高い小児ALL患者のためのものである、請求項1〜18いずれか記載の方法。
【請求項20】
前記患者が同種異系幹細胞移植に適格でない、請求項1または2記載の方法。
【請求項21】
小児急性リンパ芽球性白血病(ALL)の治療、改善または排除のためのCD19xCD3二重特異性単鎖抗体構築物。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2012−508163(P2012−508163A)
【公表日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−533632(P2011−533632)
【出願日】平成21年11月6日(2009.11.6)
【国際出願番号】PCT/EP2009/007969
【国際公開番号】WO2010/052013
【国際公開日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【出願人】(502343861)マイクロメット アーゲー (6)
【Fターム(参考)】