説明

小動物用の移動規制部材

【課題】ヤモリやイタチ等の小動物を威嚇することなく無動力で移動を規制する。
【解決手段】
本発明の移動規制部材10は、小動物が移動する壁面に取り付けられる取り付け部20と、この取り付け部20が壁面SFに取り付けられた状態で、この壁面SFにおける敷地側部分SF1に対しては鈍角θ1をなし、壁面SFにおける敷地外側部分SF2に対しては鋭角θ2をなすように、取り付け部20に設けられる庇部30と、庇部30における取り付け部20とは反対側の端部31から、この端部31に沿って毛体41が設けられるブラシ部40とを有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヤモリやイタチといった小動物の移動を規制する移動規制部材に関する。
【背景技術】
【0002】
小動物には貴重種として保護されるべき種が存在する。例えば、タワヤモリやニホンイタチは貴重種に選定されている。貴重種保護の観点から、これらの小動物については施設敷地内への侵入を規制し、また敷地内に侵入したものについては敷地外へと誘導する必要がある。とりわけ、原子力発電施設では自然との共生が強く求められているため、貴重種の保護は、施設の建設時点から十分な注意を払う必要がある。
【0003】
小動物の侵入を規制する装置として、例えば、特許文献1には、絶縁シートの表面に一対の櫛歯状電極を互いに近接させた状態に設け、これらの電極同士の間に電圧パルスを印加する装置が提案されている。この装置では、電極を通じて微小な電流を小動物に流すことで刺激を与え、刺激による威嚇で小動物を寄せ付けないようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−357520号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の装置は、電流による刺激で小動物を威嚇しているため、小動物との共生という観点から好ましくない。また、電極対が露出する構造であるため、屋外のように水が存在する環境下では短絡の可能性がある。さらに、電気エネルギーを消費するため、省電力の観点からも好ましくない。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、小動物を威嚇することなく無動力で、小動物の移動を規制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明は、施設側敷地と敷地外との境界に設置され、前記施設側敷地から前記敷地外への小動物の移動は許容し、前記敷地外から前記施設側敷地への小動物の移動を規制する移動規制部材であって、前記小動物が移動する壁面に取り付けられる取り付け部と、前記取り付け部が前記壁面に取り付けられた状態で、前記壁面における敷地側部分に対しては鈍角をなし、前記壁面における敷地外側部分に対しては鋭角をなすように、前記取り付け部に設けられる庇部と、前記庇部における前記取り付け部とは反対側の端部から、当該端部に沿って設けられた複数の毛体からなるブラシ部と、を有することを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、端部に毛体が設けられた庇部が、壁面における敷地外側の部分に対して鋭角をなすように設けられているので、壁面を通って敷地内へ浸入しようとする小動物に対しては、庇部等がオーバーハングした状態となる。このため、小動物は、移動規制部材を越えて敷地内へ移動するために身体をのけ反らせる必要があり、移動が困難になる。また、毛体によってオーバーハング部分が拡張されているので、小動物に対して視覚的にも移動の困難性を与えることができる。さらに、この毛体は、小動物が移動する際の足場となり難いため、この点でも小動物の移動が困難になる。特に、ヤモリについては、足の吸着作用によって移動をするので、毛体の上を移動することは困難であるので、毛体によって高い規制効果が得られる。その結果、小動物を威嚇することなく無動力で、小動物の移動を規制することができる。
【0009】
本発明において、弾性を有する樹脂製細線を複数並べたものによって、前記毛体を構成した場合には、屋外に長期間に亘って移動規制部材を設置しても、毛体の劣化を抑制することができる。これにより、長期間に亘って、小動物の移動を規制することができる。
【0010】
本発明において、前記取り付け部を板状部材によって作製し、前記庇部を、断面がくの字となるように、前記取り付け部と一体に設けた場合には、取り付け部と庇部とが一体となるので構成を簡素化できる。また、水分の浸入を抑制することもできる。
【0011】
本発明において、前記取り付け部を、内壁面が前記小動物の移動する通路となるパイプ材の内部に接合される円筒状部材によって作製し、前記庇部を、前記取り付け部の開口縁から前記取り付け部の軸芯方向の外側に向かって次第に縮径される漏斗状部材によって作製した場合には、パイプ材において小動物を一方向に誘導することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、小動物を威嚇することなく無動力で、小動物の移動を規制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】移動規制部材の基本構成を説明するための断面図である。
【図2】移動規制部材の効果を確認するための試験を説明する図であり、(a)は試験装置の全体図、(b)は実験容器の第二室を説明する断面図である。
【図3】(a)〜(f)は、それぞれ比較例を説明する図である。
【図4】実験結果を説明する図である。
【図5】移動規制部材の作用を説明する部分拡大図である。
【図6】移動規制部材を排水溝に適用した応用例を説明する図である。
【図7】(a)は、移動規制部材を誘導パイプに適用した応用例を説明する図である。(b)は、誘導管の入口部分を説明する図である。
【図8】図7(a)におけるA部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<移動規制部材について>
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づいて説明する。本実施形態の移動規制部材は、例えば原子力発電施設の敷地内と敷地外との境界に設置され、施設側の敷地内から敷地外への小動物(イタチやヤモリ等)の移動は許容し、敷地外から敷地内への小動物の移動を規制する。図1において、移動規制部材10は、小動物が移動する壁面SFに取り付けられている。
【0015】
この移動規制部材10は、取り付け部20と、庇部30と、ブラシ部40とを有している。取り付け部20は、壁面SFに取り付けられる部分であり、固定ネジ51が貫通するねじ孔21が設けられている。従って、ねじ孔21に固定ネジ51を挿入して締め込むことで、取り付け部20を壁面SFに取り付けることができる。
【0016】
庇部30は、壁面SFから斜め下方に延びるように設けられた板状部材であり、取り付け部20の端部から一連に設けられている。また、取り付け部20との間において、断面がくの字状となるように屈曲されている。そして、壁面SFは、庇部30と取り付け部20の境界BDで、施設側の部分SF1と施設外の部分SF2とに分けられる。
【0017】
この庇部30は、壁面SFにおける施設側の部分SF1に対して符号θ1で示すように鈍角をなし、施設外の部分SF2に対して符号θ2で示すように鋭角をなすように設けられる。言い換えれば、小動物が壁面SFを敷地内から敷地外へと進む場合に鈍角θ1のスロープ部を構成し、敷地外から敷地内へと進む場合に鋭角θ2のオーバーハング部を構成する。例えばヤモリを対象にする場合、鈍角θ1が130度〜140度に定められ、鋭角θ2が50度〜40度に定められる。また、庇部30の長さは、1cm〜2cmに定められる。
【0018】
ブラシ部40は、庇部30における取り付け部20とは反対側の端部31から、この端部31に沿って横並びに設けられた複数の毛体41によって構成されている。各毛体41は、ヤモリを対象にする場合、太さが0.3mm以下であって庇部30からの突出長さが1.5cm〜3cmの極細線によって作製される。そして、毛体41の素材としては、ポリエチレンやポリプロピレンといった合成樹脂が好適に用いられる。これは、毛体41を合成樹脂によって作製することで、長期間に亘って移動規制部材10を屋外に設置しても、毛体41の劣化を抑制することができ、小動物の移動を規制することができるからである。また、隣り合う毛体41同士の間隔(配設ピッチ)は、ヤモリを対象にする場合、2mm〜10mmに定められる。
【0019】
本実施形態において、取り付け部20及び庇部30は、1枚のステンレス板もしくはプラスチック板を折り畳むことで作製されている。そして、ブラシ部40における根元側の部分が、折り畳まれた取り付け部20及び庇部30の内側に、サンドイッチ状に固定されている。
【0020】
なお、各部の寸法・材質はあくまで一例であり、対象とする小動物の体長に応じて適宜定められる。
【0021】
<効果確認実験について>
次に、前述の移動規制部材10による小動物の移動規制効果を確認する実験について説明する。この確認実験では、対象となる小動物としてヤモリを選定した。
【0022】
図2(a)に示すように、この確認実験では、2つのペットボトルで作製した実験容器100を用いた。すなわち、胴体部が円筒形状をしたペットボトルを2本用意し、注ぎ口同士を向かい合わせて接続することで実験容器100を作製した。この実験容器100を縦方向に設置し、下側に位置するペットボトルによって第一室110を、上側に位置するペットボトルによって第二室120をそれぞれ区画した。そして、互いに接続された注ぎ口によって、ヤモリが通過し得る大きさの狭窄通路130を構成した。従って、第一室110と第二室120は、狭窄通路130によってヤモリが行き来できるように連通されている。
【0023】
また、遮光性を有する筒状部材の天井部分を同じく遮光性の円盤部材で塞ぎ、下端が開放された遮光筒140を作製した。この遮光筒140によって第二室120の全体及び第一室110の上半分を一連に覆った。これにより、第二室120をヤモリが好む暗室とし、第一室110に放したヤモリを第二室120へと誘導するようにした。
【0024】
図2(b)に示すように、第一室110の上部には、移動規制部材150を設けた。確認実験で用いた移動規制部材150は、第一室110を区画するペットボトルの内周部にちょうど収まる大きさの筒状とした。すなわち、取り付け部151は、外径が第一室110の内径に等しい円筒状部材によって構成される。また、庇部152は、取り付け部151の下端に設けられ、下方(取り付け部151の軸芯方向の外側)に向かって次第に縮径する漏斗状部材によって構成される。さらに、ブラシ部153は、庇部152の下端から取り付け部151の軸芯に向かって斜め下方に設けられる複数の毛体154によって構成される。
【0025】
この確認実験において、庇部152と第一室110の内壁面との間の角度(図1における鋭角θ2に相当する)は、45度に定めた。また、庇部152の長さは1.5cmに定め、ブラシ部153(毛体154)の長さも1.5cmに定めた。
【0026】
次に、比較例について説明する。図3に示すように、この確認実験では、複数種類の比較例を用いて移動規制部材150の効果を確認した。
【0027】
第1比較例は、図3(a)に示すように、ヤモリの移動を規制するための部材を第一室110内に配置してない場合の例である。この第1比較例によって、実験容器100内をヤモリが上れるか否かを確認する。
【0028】
第2比較例は、図3(b)に示すように、移動規制部材150に代えて複数の毛体162で作製した一重ブラシ161を用いた例である。すなわち、第一室110の内壁面から円筒の軸心に向かって複数本の毛体162をほぼ水平に支持して一重ブラシ162とした場合の例である。この第2比較例によって一重ブラシだけでも移動抑制効果があるか否かを確認する。
【0029】
第3,4比較例は、図3(c)に示すように、移動規制部材150に代えて多重構造のブラシ163を用いた例である。すなわち、多重構造のブラシ163を、第一室110の内壁面に沿って周回させた状態で取り付けた例である。多重構造のブラシ163は、試験管ブラシのように、芯材となる針金から放射状に多数の毛体を設けたものである。そして、第3比較例では直径が14mmのブラシ163を用いた。また、第4比較例では直径が28mmのブラシ163を用いた。
【0030】
第5比較例は、図3(d)に示すように、移動規制部材150に代えて水を含ませた布164を用いた例である。すなわち、水を含ませた布164を第一室110の内壁面に沿って周回させた状態で貼付した例である。この第5比較例において、布164の幅は20mmとした。
【0031】
第6比較例は、図3(e)に示すように、移動規制部材150に代えて多重構造のブラシ163及び水を含ませた布164を用いた例である。すなわち、多重構造のブラシ163のすぐ上に水を含ませた布164を貼付した例である。この第6比較例において、ブラシ163の直径は14mmとし、布164の幅は20mmとした。
【0032】
第7比較例は、図3(f)に示すように、移動規制部材150に代えて表面に多数の突起166を有する樹脂性シート165を、第一室110の内壁面SFに沿って周回させた状態で貼付した例である。
【0033】
確認試験は、移動規制部材150を設けた実施形態と、上述の各比較例のそれぞれについて行った。この確認試験では、生後3年程度のニホンヤモリを2匹第一室110に放し、第二室120への移動をあきらめて2匹のヤモリが第一室110に留まっていた場合にOKとし、一方のヤモリが第二室120へ移動した場合にNGとした。
【0034】
ここで、ニホンヤモリを選定した理由は、貴重種であるタワヤモリよりも活動が活発であること、及び、貴重種として選定されていないことによる。また、生後3年程度のニホンヤモリを選定した理由は、他の年代に比べて活動が活発なことによる。さらに、2匹のニホンヤモリを放した理由は、第二室120への誘導を促すためである。すなわち、ヤモリは、互いのテリトリーを守るため、離れて過ごす性質を有している。このため、2匹のニホンヤモリを第一室110に放すことで、一方のニホンヤモリは、互いのテリトリーを確保すべく第二室120へ誘導され易くなる。
【0035】
<実験結果について>
確認実験の結果を図4に示す。本実施形態の移動規制部材150は、一晩放置しても2匹のニホンヤモリが第一室110へ留まっていた。これにより、ヤモリに対する移動規制の効果があることが確認できた。
【0036】
これに対し、第1、第2、第7比較例は、何れも移動規制の効果がなかった。すなわち、ニホンヤモリは、垂直方向に延びる第一室110の内壁面を上ることができることが確認された。また、一重ブラシ161や表面に突起166を設けた樹脂シート165では、ヤモリの移動を規制できないことも確認された。
【0037】
また、第3〜第6比較例では、足止めの効果はあったものの、ヤモリの移動を規制するまでの効果はみられなかった。すなわち、ニホンヤモリは、多重構造のブラシ163を乗り越えて進むことができ、水を含ませた布164の上も進むことができることが確認された。
【0038】
ここで、移動規制部材150による作用効果について考察する。図5に示すように、移動規制部材150を用いた場合、第一室110から壁面を通って第二室120へ侵入しようとするヤモリからは、庇部152及びブラシ部153がオーバーハングした状態となる。確認試験において、ヤモリは、庇部152とブラシ部153を視認するが、前足を庇部152側へ伸ばそうとはしなかった。
【0039】
なぜ前足を伸ばさなかったかについては定かではないが、庇部152及びブラシ部153がオーバーハングした状態で設けられているためと推察される。すなわち、ヤモリは、内壁面を第二室152側(敷地内側に相当する)へ移動するために身体をのけ反らせる必要があり、前足を内壁面から離してのけ反る体制になると、不安定になって落下してしまうからと推察される。
【0040】
また、ヤモリは、ブラシ状のものを苦手としている知見がある。この知見では、ヤモリが足の吸着作用によって移動をするため、細長い毛体154の上を移動することは困難であるからと理由付けられている。そして、ヤモリが苦手とするブラシ部153によって、オーバーハングした部分が斜め下方に向けて拡張されているため、視覚的にも移動が困難であるとの印象を与えていると推察される。
【0041】
さらに、内壁面から離した前足がブラシ部153に届いたとしても、このブラシ部153は弾性を有する複数本の毛体154で構成されているため、ヤモリが移動する際の足場にはなり難い。このため、前足がブラシ部153に届いたとしても、ヤモリはバランスを崩して落下する可能性が高い。従って、落下を事前に回避すべく、前足を伸ばさなかった可能性もある。
【0042】
以上の確認実験より、本実施形態の移動規制部材150を用いることにより、ヤモリを威嚇することなく無動力で、小動物の移動を規制することが確認できた。
【0043】
<応用例について>
次に、移動規制部材の応用例について説明する。図6は、移動規制部材210を排水溝220に適用した第1応用例を説明する図である。この第1応用例では、移動規制部材210を帯状に構成し、施設側の敷地と敷地外の境界に設けられる排水溝220に設けている。具体的には、排水溝220における敷地側の立ち上がり壁面221に、庇部212やブラシ部213を斜め下方に向けた状態で取り付け部211を取り付けている。そして、移動規制部材210は、敷地を囲む排水溝220の全体に亘って設けられている。
【0044】
このように構成することで、排水溝220の底面から施設側の壁面221を上ってきたヤモリは、前述の確認実験と同様に、オーバーハングして設けられた庇部212及びブラシ部213によって、敷地内への移動を規制される。このため、排水溝220を通じてヤモリが敷地内に入り込むことを防止できる。一方、何らかの理由で敷地内に入り込んだヤモリが排水溝220における施設側の壁面221を下りてきた場合、庇部212はスロープのように機能する。このため、ヤモリは、特に支障なく移動規制部材210を越えることができる。そして、移動規制部材210を越えた後は、敷地内に戻ろうとしても移動規制部材210によって移動が規制される。従って、敷地内に入り込むことを防止できる。
【0045】
従って、この第1応用例では、威嚇を行わなくとも敷地内の小動物を敷地外に誘導することができ、かつ、敷地外の小動物が敷地内に入り込むことを規制できる。さらに、電気などの動力も不要である。
【0046】
図7及び図8は、移動規制部材310を、小動物を敷地外へ誘導する誘導パイプ320の途中に設けた第2応用例を説明する図である。図7(a),(b)に示すように、この第2応用例では、小動物が逃げ込み易いように敷地内に掘られた枡状部330の底面と敷地外とを誘導パイプ320で連通し、この誘導パイプ320内の空間を、小動物を誘導するための通路として用いている。そして、敷地外への下流側パイプ323を、枡状部330からの上流側パイプ321よりも下方に設け、下流側パイプ323における上流側端部と上流側パイプ321における下流側端部との間を鉛直方向に設置された中間パイプ322によって連通している。
【0047】
図8に示すように、中間パイプ322の内部には移動規制部材310が設けられている。この移動規制部材310は、確認実験で説明したものと同様に、円筒状部材によって構成された取り付け部311と、漏斗状部材によって構成された庇部312と、庇部312の先端に設けられた毛体314からなるブラシ部313とを有している。そして、庇部312における縮径部分が下向きとなる状態で設けられている。
【0048】
この第2応用例では、イタチやヤモリ等の小動物が枡状部330に入ると、この小動物は、上流側パイプ321を通って敷地外へ向けて移動する。そして、上流側パイプ321の下流端まで到達すると、中間パイプ322の内部を落下し、移動規制部材310を通過して下流側パイプ323の上流端に到達する。落下した小動物は、中間パイプ322に設けられた移動規制部材310により、上方向への移動を規制されるため、下流側パイプ323を敷地外側へ移動する。そして、下流側パイプ323を抜けて敷地外に放たれる。
【0049】
一方、敷地外から下流側パイプ323に入り込んだ小動物は、下流側パイプ323を上流側に進むことはできるが、中間パイプ322に設けられた移動規制部材310により、上方向への移動を規制される。このため、下流側パイプ323を敷地外側へ移動し、下流側パイプ323を抜けて敷地外に戻ることになる。
【0050】
従って、この第2応用例でも、威嚇を行わなくとも敷地内の小動物を敷地外に誘導することができ、かつ、敷地外の小動物が敷地内に入り込むことを規制できる。さらに、電気などの動力も不要である。
【0051】
以上、本発明の好適な実施形態や応用例について説明したが、これらの実施形態等は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、その等価物が含まれる。
【0052】
例えば、前述の実施形態等では、鉛直方向の壁面に移動規制部材10等が取り付けられる場合について説明したが、斜め上方に立ち上がる壁面に取り付けたとしても同様な作用効果を奏する。
【0053】
また、前述の実施形態では、取り付け部20等と庇部30等とを1つの部材として設けた例について説明したが、この構成に限定されない。例えば、取り付け部20等と庇部30等とを別部材として設け、接着等によって一体化してもよい。
【0054】
また、前述の実施形態では、ブラシ部40等を構成する毛体41等が合成樹脂製の極細線によって構成されていたが、この構成に限定されない。例えば、動物の体毛によってブラシ部313を構成してもよい。
【0055】
さらに、ブラシ部40等に関し、一重のものに限られない。複数本の毛体41等を束ねて刷毛のように構成してもよい。
【0056】
また、対象とする小動物に関し、庇部30等やブラシ部40等で構成されるオーバーハング部分によって、敷地内側への移動を規制できれば、ヤモリ以外の他の種の小動物であっても対象となり得る。
【符号の説明】
【0057】
10…移動規制部材,20…取り付け部,21…ねじ孔,30…庇部,31…庇部の端部,40…ブラシ部,41…毛体,51…固定ネジ,100…実験容器,110…第一室,120…第二室,130…狭窄通路,140…遮光筒,150…移動規制部材,151…取り付け部,152…庇部,153…ブラシ部,154…毛体,161…一重ブラシ,162…毛体,163…多重構造のブラシ,164…水を含ませた布,165…樹脂性シート,166…突起,210…移動規制部材,211…取り付け部,212…庇部,213…ブラシ部,220…排水溝,221…排水溝における敷地側の立ち上がり壁面,310…移動規制部材,311…取り付け部,312…庇部,313…ブラシ部,314…毛体,320…誘導パイプ,321…上流側パイプ,322…中間パイプ,323…下流側パイプ,330…枡状部,SF…壁面,SF1…壁面の施設側部分,SF2…壁面の施設外部分,BD…境界

【特許請求の範囲】
【請求項1】
施設側敷地と敷地外との境界に設置され、前記施設側敷地から前記敷地外への小動物の移動は許容し、前記敷地外から前記施設側敷地への小動物の移動を規制する移動規制部材であって、
前記小動物が移動する壁面に取り付けられる取り付け部と、
前記取り付け部が前記壁面に取り付けられた状態で、前記壁面における敷地側部分に対しては鈍角をなし、前記壁面における敷地外側部分に対しては鋭角をなすように、前記取り付け部に設けられる庇部と、
前記庇部における前記取り付け部とは反対側の端部から、当該端部に沿って設けられる複数の毛体からなるブラシ部と、
を有することを特徴とする移動規制部材。
【請求項2】
前記毛体は、弾性を有する樹脂製細線を複数並べたものであることを特徴とする請求項1に記載の移動規制部材。
【請求項3】
前記取り付け部は、板状部材によって作製され、
前記庇部は、断面がくの字となるように、前記取り付け部と一体に設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の移動規制部材。
【請求項4】
前記取り付け部は、内壁面が前記小動物の移動する通路となるパイプ材の内部に接合される円筒状部材によって作製され、
前記庇部は、前記取り付け部の開口縁から前記取り付け部の軸芯方向の外側に向かって次第に縮径される漏斗状部材によって作製され、
前記小動物を一方向へ誘導することを特徴とする請求項1または2に記載の移動規制部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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