小動物用放射線断層撮影装置
【課題】一度に複数の被検体の撮影をすることができる小動物用放射線断層撮影装置を提供する。
【解決手段】本発明によれば、複数の被検体Mを一度に撮影できるX線断層撮影装置が提供できる。すなわち、実施例1の構成に係るX線断層撮影装置は、ハニカム状に配列されている多角形形状の開口5aを有するホルダ5を備えている。この様にすることで、ホルダ5に設けられる開口5aの個数を可能な限り増加させることができる。また、ホルダ5に保持できる被検体Mの個数を増大させることができるので、実験の作業効率が高いX線断層撮影装置が提供できる。また、隔壁5bが薄くなることでより鮮明な断層画像を生成することができる。
【解決手段】本発明によれば、複数の被検体Mを一度に撮影できるX線断層撮影装置が提供できる。すなわち、実施例1の構成に係るX線断層撮影装置は、ハニカム状に配列されている多角形形状の開口5aを有するホルダ5を備えている。この様にすることで、ホルダ5に設けられる開口5aの個数を可能な限り増加させることができる。また、ホルダ5に保持できる被検体Mの個数を増大させることができるので、実験の作業効率が高いX線断層撮影装置が提供できる。また、隔壁5bが薄くなることでより鮮明な断層画像を生成することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研究対象として小動物の断層画像を撮影する小動物用放射線断層撮影装置に係り、特に、複数の小動物を一度に撮影することができる小動物用放射線断層撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
研究対象としての小動物をイメージングする装置の一つに小動物用放射線断層撮影装置がある。この装置は、小動物の断層画像を生成することができるものであり、実験者は、この画像を参照して小動物の内部の構造を知ることができる(例えば特許文献1参照)。
【0003】
この様な小動物用放射線断層撮影装置の従来の構成について説明する。従来装置は、図11に示す様に、開口が設けられたガントリ51を有し、このガントリ51の内部には、放射線を照射する放射線源53と、放射線を検出する放射線検出器54とが設けられている。放射線源53と放射線検出器54とは、ガントリ51の開口を挟むように配置されており、互いの相対位置を保った状態で、開口を中心に回転することができる。この開口の内部には、被検体である小動物が配置される。
【0004】
従来の小動物用放射線断層撮影装置の動作について説明する。従来装置により、被検体の断層画像を取得するには、まず、被検体がガントリ51の開口に挿入される。そして、放射線源53と放射線検出器54とを被検体を中心に回転させながら複数回の撮影を行う。得られた透視画像の各々には、撮影方向が異なる被検体の像が写り込んでいる。これらの透視画像を組み立てると、被検体の断層画像が生成できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2007/141831号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の構成によれば、次のような問題点がある。
すなわち、従来の構成によれば、一回の撮影で一体の小動物についての断層画像しか取得できず、実験の作業効率が低い。
【0007】
生理的な実験においては小動物の個体差や測定誤差により、得られる結果に多少のバラツキがあるのが一般的である。そこで、小動物を用いた実験においては、同じ実験処理を複数の小動物について行い、結果のバラツキを考慮した実験結果を得るようにしている。従って、小動物用放射線断層撮影装置のイメージングは、複数の小動物について行うのが通常である。つまり、1つの実験をするときは、小動物の撮影が一体ずつ繰り返されることになる。
【0008】
断層画像の撮影は、ガントリ51内部の小動物をガントリ51内で移動させながら行われる。その際、小動物のガントリ51に対する移動と、複数の透視画像の取得とが交互に繰り返されて、小動物の全身における断層画像が撮影される。従って、一度撮影が始まってしまうと、次の撮影を直ちに開始することができない。このように、従来の構成では、実験操作を迅速に終了させることができない。
【0009】
そこで、一度に複数の小動物が撮影できるような断層撮影装置があれば、実験操作の効率は、より改善することになる。また、この様な装置によれば、各被検体の撮影時間を一致させることができるので、より安定した実験結果が導き出せるようになる。
【0010】
本発明は、この様な事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、一度に複数の被検体の撮影をすることができる小動物用放射線断層撮影装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は上述の課題を解決するために次のような構成をとる。
すなわち、本発明に係る小動物用放射線断層撮影装置は、放射線を照射する放射線源と、放射線を検出する放射線検出手段と、放射線源と放射線検出手段を結ぶ線分上にある中心点を中心に、両者を互いの位置関係を保った状態で回転させる回転手段と、放射線源と放射線検出手段との間に設置されるとともに、放射線源が回転される際の軌跡である仮想円に直交する方向に伸びた複数の開口を有する複数被検体保持用のホルダとを備え、ホルダに設けられた開口の各々は多角形形状となっており、複数の開口は、隔壁で隔離されることによりハニカム状に配列されていることを特徴とするものである。
【0012】
[作用・効果]本発明によれば、複数の被検体を一度に撮影できる小動物用放射線断層撮影装置が提供できる。すなわち、本発明に係る小動物用放射線断層撮影装置は、ハニカム状に配列されている多角形形状の開口を有するホルダを備えている。ホルダの開口の配列をハニカム状とすることにより、各開口を隔てる隔壁を極力薄くすることができる。この様にすることで、ホルダに設けられる開口の個数を可能な限り増加させることができる。また、ホルダに保持できる被検体の個数を増大させることができるので、実験の作業効率が高い小動物用放射線断層撮影装置が提供できる。また、隔壁が薄くなることでホルダに吸収される放射線が少なくなるので、放射線源から照射された放射線は確実にホルダを通過して放射線検出手段に入射することになる。つまり、本発明によればより鮮明な断層画像を生成することができる。
【0013】
また、上述の小動物用放射線断層撮影装置において、ホルダに設けられた開口の各々は、六角形の形状となっていればより望ましい。
【0014】
[作用・効果]上述の構成は、本発明のより具体的な態様を示すものとなっている。開口の形状を六角形とすれば、ホルダの機械的強度はより強固なものとなる。
【0015】
また、上述の小動物用放射線断層撮影装置において、ホルダに設けられた開口の各々に一体の被検体が挿入されればより望ましい。
【0016】
[作用・効果]上述の構成は、本発明のより具体的な態様を示すものとなっている。開口の各々に一体の被検体を挿入させるようにすれば、被検体を個別に隔離した状態で撮影が可能であるので、被検体が折り重なることにより被検体同士の境目が不明で診断しにくい画像が取得されるのを防止することができる。
【0017】
また、上述の小動物用放射線断層撮影装置において、ホルダがアクリル樹脂製であればより望ましい。
【0018】
[作用・効果]上述の構成は、本発明のより具体的な態様を示すものとなっている。ホルダが放射線を透過しやすいアクリル樹脂で構成すれば、より鮮明な断層画像を取得できる小動物用放射線断層撮影装置が提供できる。
【0019】
また、上述の小動物用放射線断層撮影装置において、ホルダには、隔壁に仮想円の直交方向に伸びた複数の切れ目が設けられており、ホルダを切れ目から分解すると、開口が互いに向き合った2つの樋状の凹部に分断されればより望ましい。
【0020】
[作用・効果]上述の構成は、本発明のより具体的な態様を示すものとなっている。ホルダの開口が互いに向き合った2つの樋状の凹部に分断されるようにホルダが分解できるようにすれば、ホルダの開口に被検体を挿入することが容易となる。
【0021】
また、上述の小動物用放射線断層撮影装置において、ホルダを載置する天板と、天板を仮想円の直交方向に移動させる天板移動手段とを備えればより望ましい。
【0022】
[作用・効果]上述の構成は、本発明のより具体的な態様を示すものとなっている。ホルダが載置可能で摺動自在の天板を備えるようにすれば、容易に被検体を撮影視野内に導入することができる小動物用放射線断層撮影装置が提供できる。
【0023】
また、上述の小動物用放射線断層撮影装置において、放射線源、放射線検出手段に対して仮想円の直交方向から隣接するように設けられたポジトロン放出断層撮影装置を備えればより望ましい。
【0024】
[作用・効果]上述の構成は、本発明のより具体的な態様を示すものとなっている。ポジトロン放出断層撮影装置を備えるようにすれば、被検体の機能的な画像と構造的な画像との両方が取得でき、撮影で取得できる情報をより多く取得することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、複数の被検体を一度に撮影できる小動物用放射線断層撮影装置が提供できる。すなわち、本発明に係る小動物用放射線断層撮影装置は、ハニカム状に配列されている多角形形状の開口を有するホルダを備えている。この様にすることで、ホルダに設けられる開口の個数を可能な限り増加させることができる。また、ホルダに保持できる被検体の個数を増大させることができるので、実験の作業効率が高い小動物用放射線断層撮影装置が提供できる。また、隔壁が薄くなることでより鮮明な断層画像を生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】実施例1に係るX線断層撮影装置の構成を説明する機能ブロック図である。
【図2】実施例1に係るX線管およびFPDの回転移動を説明する模式図である。
【図3】実施例1に係るホルダを説明する平面図である。
【図4】実施例1に係るホルダを説明する斜視図である。
【図5】実施例1に係るホルダを説明する模式図である。
【図6】実施例1に係るホルダを説明する模式図である。
【図7】実施例1に係るホルダを説明する模式図である。
【図8】実施例1に係るX線断層撮影装置の動作を説明するフローチャートである。
【図9】実施例1に係るX線断層撮影装置の動作を説明する断面図である。
【図10】実施例2に係るX線断層撮影装置の構成を説明する機能ブロック図である。
【図11】従来構成の放射線撮影装置の構成を説明する模式図である。
【実施例1】
【0027】
以降、本発明の実施例を説明する。実施例におけるX線は、本発明の放射線に相当する。また、FPDは、フラット・パネル・ディテクタの略である。また、本発明のX線断層撮影装置は、マウスなどの小動物撮影用となっている。
【0028】
まず、実施例1に係るX線断層撮影装置について説明する。X線断層撮影装置1は、図1に示す様に被検体Mを載置する天板2と、天板2の伸びる方向に貫通した貫通孔を有するガントリ10とを備えている。天板2は、ガントリ10の貫通孔に挿通されており、天板2を支持する支持台2aに対して天板2の伸びる方向(後述における仮想円VCの直交方向)に進退自在に移動することができる。この天板2の移動は天板移動機構15が行う。天板移動制御部16は、天板移動機構15を制御するものである。天板移動機構15は、本発明の天板移動手段に相当する。
【0029】
ガントリ10の内部には、X線を照射するX線管3と、X線を検出するFPD4とが設けられている。X線管3から照射されたX線は、ガントリの貫通孔を横切るように通過して、FPD4に到達する。X線管3は、本発明の放射線源に相当し、FPD4は、本発明の放射線検出手段に相当する。
【0030】
X線管制御部6は、所定の管電流、管電圧、パルス幅でX線管3を制御する目的で設けられている。FPD4は、X線管3から発せられ、被検体Mを透過したX線を検出して検出信号を生成する。この検出信号は、画像生成部11に送出され、そこで被検体Mの投影像が写り込んだ透視画像P0が生成される。断層画像生成部12は、画像生成部11で生成された透視画像P0を基に、被検体Mを任意の断層面で裁断したときの断層画像P1を生成する。
【0031】
X線管3およびFPD4の回転について説明する。X線管3およびFPD4は、回転機構7により、天板2の伸びる方向に伸びた中心軸を中心に一体的に回転される。より具体的には、X線管3およびFPD4は、図2に示す様に互いの相対的な位置関係を保った状態で回転移動される。このとき、X線管3は、回転機構7によりX線管3とFPD4とを結ぶ線分上にある中心点を中心とした仮想円VCの軌跡を描きながら回転することになる。この仮想円VCと直交する方向(図2における紙面貫通方向:Z方向)が、天板2の延伸方向と一致する。回転機構7は、本発明の回転手段に相当する。回転制御部8は回転機構7を制御するものである。
【0032】
天板2には、被検体Mを保持するためのホルダ5が載置されている。このホルダ5の構造について説明する。ホルダ5は、図3に示す様に、Z方向に伸びた正六角形(立体として捕らえれば正六角柱)の形状の開口5aを有している。この開口5aの各々に被検体Mが一体ずつ挿入されることになる。図3によるとホルダ5は、六角柱状の角筒が互いの面同士を当接させながら隙間なく積み重ねられて、天板2に近い側の一段目に3個の開口5aが、天板2に遠い側の二段目に2個の開口5aが形成されているような形状をしている。しかし、実際には、各開口5aを分断する隔壁5bは単層となっていて、ホルダ5を六角柱状の角筒に分解することはできない。このように、複数の開口5aは隔壁5bで隔離されることによりハニカム状に配列されている。
【0033】
このホルダ5は、開口5aに被検体Mを挿入しやすいように分解可能な構成となっている。すなわち図4に示すように、ホルダ5の隔壁5bにはZ方向に伸びた複数の切れ目が設けられており、ホルダ5は、上段部材5d,中段部材5eおよび下段部材5fの3部材に分解可能である。すなわち、上段部材5dを中段部材5eに対してZ方向に摺動させると、上段部材5dが中段部材5eから分離し、中段部材5eを下段部材5fに対してZ方向に摺動させると、中段部材5eが下段部材5fから分離する。このように、ホルダ5を分解すると、開口5aが互いに向き合った2つの樋状の凹部に分断される。
【0034】
上段部材5dと中段部材5eとの接合部には、それぞれ互いにかみ合うレールL1,L2が設けられていて、このレールL1,L2により中段部材5eに対する上段部材5dの移動可能な方向がZ方向のみに限定される。また、中段部材5eと下段部材5fの接合部には、それぞれ互いにかみ合うレールL3,L4が設けられていて、このレールL3,L4により下段部材5fに対する中段部材5eの移動可能な方向がZ方向のみに限定される。この様にして、ホルダ5は、衝撃が与えられても簡単に分解されない構造となっている。そうでありながらも、実験者が各部材5d,5e,5fを摺動させると、ホルダ5は簡単に分解される。なお、レールL1,L2,L3,L4は、Z方向に伸びているとともに、各部材5d,5e,5fがガントリ10に挿入された状態においてガントリ10の貫通孔を形成する内壁に隣接する両端に設けられている。つまり、ホルダ5の外側に露出した切れ目には、レールが設けられており、内側の切れ目にはレールが設けられていない。
【0035】
このように、ホルダ5を分解できるようにしたのは、被検体Mを開口5aに容易に挿入できるようにするためである。図5は、ホルダ5の開口5aの一つを抜き出したものである。この開口5aは、上段部材5dおよび中段部材5eにより形成されている。上段部材5dを中段部材5eに対してZ方向にスライドさせると、図6に示すように、開口5aは、互いに向き合った2つの樋状の凹部に分断される。この凹部に被検体Mを容易に載置することができる。
【0036】
被検体Mが載置された状態で、上段部材5dを中段部材5eに対して先程とは逆方向にスライドさせると、図7に示す様に、再び開口5aが形成され、開口5aには被検体Mが内接した状態となっている。このように、ホルダ5が分解可能となっていることにより、被検体Mを容易にホルダ5に収納させることができる。
【0037】
なお、このホルダ5は、X線を容易に透過するアクリル樹脂で構成される。
【0038】
表示部25は、X線撮影により取得された断層画像P1を表示する目的で設けられている。操作卓26は、実験者によるX線照射開始などの指示を入力させる目的で設けられている。また、主制御部27は、各制御部を統括的に制御する目的で設けられている。この主制御部27は、CPUによって構成され、各種のプログラムを実行することにより各制御部6,8,16および各部11,12を実現している。また、上述の各部は、それらを担当する演算装置に分割されて実行されてもよい。記憶部28は、撮影に用いられるパラメータ、画像処理に伴って生成される中間画像等のX線断層撮影装置1の制御に関するパラメータの一切を記憶する。
【0039】
<X線断層撮影装置の動作>
次に、X線断層撮影装置1の動作について説明する。実施例1に係るX線断層撮影装置1を用いて小動物の断層画像P1を取得するには、図8に示すように、まず、被検体Mがホルダ5に収納され(被検体収納ステップS1),透視画像P0の撮影が開始される(撮影開始ステップS2)。そして、断層画像P1が生成される(断層画像生成ステップS3)。以降これらの各ステップについて順を追って説明する。
【0040】
<被検体収納ステップS1>
撮影に先立って、被検体Mが撮影中に移動しない様に被検体Mを麻酔しておく。麻酔された被検体Mは、図5,図6,図7で説明した要領でホルダ5の開口5aに収納される。このとき、ホルダ5の開口5a1つ当たり一体の被検体Mが収納される。ホルダ5には、5つの開口5aが設けられているので、ホルダ5には5体の被検体Mを収納することができる。複数の被検体Mを収納したホルダ5は天板2に載置される。
【0041】
<撮影開始ステップS2>
実験者が操作卓26を通じてX線断層撮影装置1に断層撮影開始の指示を行うと、天板2が摺動し、被検体Mがガントリ10の貫通孔の内部に導入される(図1参照)。X線管制御部6は、記憶部28に記憶されている照射時間・管電流・管電圧に従い、X線を間欠的に照射する。その間に回転機構7は、X線管3およびFPD4を回転させる。FPD4は、X線管3が照射したX線のうち被検体Mを通過してきたX線を検出し、このときの検出データを画像生成部11に送出する。
【0042】
画像生成部11は、FPD4から送出された検出データを画像化して、X線の強さがマッピングされた透視画像P0を生成する。FPD4は、X線管3がX線を照射する度に検出データを画像生成部11に送出するので、画像生成部11は、複数枚の透視画像P0を生成することになる。X線管3およびFPD4が回転移動されながら複数枚の透視画像P0が取得されるのであるから、透視画像P0の各々には、被検体Mの透視像が透視する方向を変えながら写り込んでいることになる。X線管3およびFPD4が撮影開始から一回転したところで、X線管3はX線の照射を終了する。
【0043】
撮影開始後の天板2の移動について説明する。X線断層撮影装置1は、一度の撮影で被検体Mの一部分しか撮影できない。X線断層撮影装置1の撮影視野におけるZ方向の幅が被検体MのZ方向の幅よりも小さいからである。そこで、実施例1の構成によれば、上述のX線管3・FPD4が一回転して終了する撮影を複数回行うことで、被検体Mの全体像について断層画像を取得するようにしている。すなわち、図9の左側が示すように、まず被検体Mの尾部の撮影を行った後、天板2が摺動されることにより被検体Mとガントリ10の相対位置を変更し、今度は図9の中央が示すように、被検体Mの腹部の撮影を行う。その後、再び天板2を摺動して今度は図9の右側が示すように被検体Mの頭部の撮影を行う。こうして、被検体全身について透視画像P0が取得される。
【0044】
<断層画像生成ステップS3>
透視画像P0は、断層画像生成部12に送出される。断層画像生成部12では、方向を変えながら撮影されることにより被検体Mの立体的な構造に関する情報を有している一連の透視画像P0を再構成してZ方向を体軸とする被検体Mを輪切りにするような断層画像P1を生成する。この断層画像P1は、輪切りにする位置をZ方向について変更しながら複数枚生成される。この様にして生成された断層画像P1が表示部25に表示されて撮影は終了となる。
【0045】
以上のように、実施例1の構成によれば、複数の被検体Mを一度に撮影できるX線断層撮影装置1が提供できる。すなわち、実施例1の構成に係るX線断層撮影装置1は、ハニカム状に配列されている多角形形状の開口5aを有するホルダ5を備えている。ホルダ5の開口5aの配列をハニカム状とすることにより、各開口5aを隔てる隔壁5bを極力薄くすることができる。この様にすることで、ホルダ5に設けられる開口5aの個数を可能な限り増加させることができる。また、ホルダ5に保持できる被検体Mの個数を増大させることができるので、実験の作業効率が高いX線断層撮影装置1が提供できる。また、隔壁5bが薄くなることでホルダ5に吸収されるX線が少なくなるので、X線管3から照射されたX線は確実にホルダ5を通過してFPD4に入射することになる。つまり、実施例1の構成によればより鮮明な断層画像P1を生成することができる。
【0046】
また、開口5aの形状を六角形とすれば、ホルダ5の機械的強度はより強固なものとなる。さらに、開口5aの各々に一体の被検体Mを挿入させるようにすれば、被検体Mを個別に隔離した状態で撮影が可能であるので、被検体Mが折り重なることにより被検体同士の境目が不明で診断しにくい画像が取得されるのを防止することができる。
【0047】
また、ホルダ5がX線を透過しやすいアクリル樹脂で構成すれば、より鮮明な断層画像を取得できるX線断層撮影装置1が提供できる。さらに、ホルダ5の開口5aが互いに向き合った2つの樋状の凹部に分断されるようにホルダ5が分解できるようにすれば、ホルダ5の開口5aに被検体Mを挿入することが容易となる。
【実施例2】
【0048】
続いて実施例2に係る断層撮影装置20について説明する。実施例2に係る断層撮影装置20は、図10に示す様に、実施例1に係る装置構成にポジトロン放出断層撮影装置(PET装置)を併設したものとなっている。そこで、実施例2に係る断層撮影装置20において、実施例1に係る装置構成と同様の部分については説明を省略する。
【0049】
断層撮影装置20には、ガントリ10の他、PET装置1aに係るガントリ10aを有している。このガントリ10aも、Z方向に伸びた貫通孔を有しており、天板2が挿通されている。したがって、PET装置1aは、X線管3・FPD4に対してZ方向から隣接するように設けられている。
【0050】
ガントリ10aの内部にはガントリ10aの形状にならってリング状の検出器リング32が設けられている。この検出器リング32は、γ線を検出可能な検出器がリング状に配列されて構成されている。
【0051】
同時計数部33は、検出器リング32から出力された検出データに同時計数処理を施す目的で設けられている。この同時計数部33により検出器リング32の異なる部分に同時に入射した消滅γ線対の検出頻度と検出位置とが特定される。同時計数部33は、同時計数の結果をPET画像生成部34に出力する。PET画像生成部34は、同時計数部33が特定した消滅γ線対の検出頻度と検出位置とを基に、消滅γ線対の発生位置を算出し、消滅γ線対の発生強度がマッピングされたPET画像P2を生成する。PET画像P2は、消滅γ線対の発生の分布を示す断層画像となっている。
【0052】
断層撮影装置20は、X線による断層画像P1と消滅γ線対によるPET画像P2との両画像を一度の検査で取得できるようになっている。断層撮影装置20を用いて両画像P1,P2を生成するには、まず、被検体Mに陽電子放出型の放射性薬剤が注射される。放射性薬剤は、被検体Mの病巣などの特定の部分に集中する性質を有している。放射性薬剤は陽電子を放出し、この陽電子は180度反対方向に飛び去る消滅γ線対を発生させる。したがって、被検体Mからは、消滅γ線対が放射されることになる。放射性薬剤の分布は被検体内で異なっているのであるから、消滅γ線対の発生の頻度は被検体Mの部分によって異なっていることになる。
【0053】
放射性薬剤の注射から十分に時間が経過した後、被検体Mは麻酔され、ホルダ5に収納される。すなわち、図5,図6,図7で説明した要領でホルダ5の開口5aの各々に麻酔された被検体Mの一体が収納される。そして、複数の被検体Mを収納した状態となったホルダ5は、天板2に載置される。実験者が操作卓26を通じて断層撮影装置20にPET画像撮影開始の指示を行うと、天板2が摺動し、被検体Mがガントリ10aの貫通孔の内部に導入される(図10参照)。この時点から検出器リング32は、消滅γ線対の検出を開始し、PET画像生成部34がPET画像P2を生成する。PET画像P2には、被検体Mの部分によって異なる消滅γ線対の発生の頻度がマッピングされている。消滅γ線対の発生頻度の分布はそのまま放射線薬剤の分布なのであるから、実験者はPET画像P2を診断することで被検体中の放射性薬剤の分布を知ることができる。なお、撮影の際に、PET装置1aのZ方向における視野範囲が被検体Mの全身をカバーしきれないときは、天板2をZ方向に摺動させながらPET画像P2の撮影をするようにしてもよい。
【0054】
後の動作は、上述のステップS2以降と同様である。断層画像P1,PET画像P2およびこれらが重ねられた合成画像が表示部25に表示されて撮影は終了となる。
【0055】
以上のように、実施例2の構成によれば、複数の被検体Mの断層画像とPET画像P2の両方を一度の撮影で取得できるので、実験作業の効率の優れた断層撮影装置20が提供できる。
【0056】
本発明は、上述の構成に限られず、下記のように変形実施することができる。
【0057】
(1)実施例1の構成によれば、ホルダ5は、6角柱状の開口5aを有していたが、開口5aの形状を3角柱状、または4角柱状としてもよい。
【0058】
(2)実施例1の構成によれば、被検体Mはマウスであったが、他の小動物を被検体Mとすることもできる。
【0059】
(3)実施例1の構成によれば、ホルダ5は5つの開口5aを有していたが、開口5aの個数を撮影対象の小動物のサイズに合わせて変更させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0060】
VC 仮想円
2 天板
3 X線管(放射線源)
4 FPD(放射線検出手段)
5 ホルダ
5a 開口
5b 隔壁
7 回転機構(回転手段)
15 天板移動機構(天板移動手段)
【技術分野】
【0001】
本発明は、研究対象として小動物の断層画像を撮影する小動物用放射線断層撮影装置に係り、特に、複数の小動物を一度に撮影することができる小動物用放射線断層撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
研究対象としての小動物をイメージングする装置の一つに小動物用放射線断層撮影装置がある。この装置は、小動物の断層画像を生成することができるものであり、実験者は、この画像を参照して小動物の内部の構造を知ることができる(例えば特許文献1参照)。
【0003】
この様な小動物用放射線断層撮影装置の従来の構成について説明する。従来装置は、図11に示す様に、開口が設けられたガントリ51を有し、このガントリ51の内部には、放射線を照射する放射線源53と、放射線を検出する放射線検出器54とが設けられている。放射線源53と放射線検出器54とは、ガントリ51の開口を挟むように配置されており、互いの相対位置を保った状態で、開口を中心に回転することができる。この開口の内部には、被検体である小動物が配置される。
【0004】
従来の小動物用放射線断層撮影装置の動作について説明する。従来装置により、被検体の断層画像を取得するには、まず、被検体がガントリ51の開口に挿入される。そして、放射線源53と放射線検出器54とを被検体を中心に回転させながら複数回の撮影を行う。得られた透視画像の各々には、撮影方向が異なる被検体の像が写り込んでいる。これらの透視画像を組み立てると、被検体の断層画像が生成できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2007/141831号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の構成によれば、次のような問題点がある。
すなわち、従来の構成によれば、一回の撮影で一体の小動物についての断層画像しか取得できず、実験の作業効率が低い。
【0007】
生理的な実験においては小動物の個体差や測定誤差により、得られる結果に多少のバラツキがあるのが一般的である。そこで、小動物を用いた実験においては、同じ実験処理を複数の小動物について行い、結果のバラツキを考慮した実験結果を得るようにしている。従って、小動物用放射線断層撮影装置のイメージングは、複数の小動物について行うのが通常である。つまり、1つの実験をするときは、小動物の撮影が一体ずつ繰り返されることになる。
【0008】
断層画像の撮影は、ガントリ51内部の小動物をガントリ51内で移動させながら行われる。その際、小動物のガントリ51に対する移動と、複数の透視画像の取得とが交互に繰り返されて、小動物の全身における断層画像が撮影される。従って、一度撮影が始まってしまうと、次の撮影を直ちに開始することができない。このように、従来の構成では、実験操作を迅速に終了させることができない。
【0009】
そこで、一度に複数の小動物が撮影できるような断層撮影装置があれば、実験操作の効率は、より改善することになる。また、この様な装置によれば、各被検体の撮影時間を一致させることができるので、より安定した実験結果が導き出せるようになる。
【0010】
本発明は、この様な事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、一度に複数の被検体の撮影をすることができる小動物用放射線断層撮影装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は上述の課題を解決するために次のような構成をとる。
すなわち、本発明に係る小動物用放射線断層撮影装置は、放射線を照射する放射線源と、放射線を検出する放射線検出手段と、放射線源と放射線検出手段を結ぶ線分上にある中心点を中心に、両者を互いの位置関係を保った状態で回転させる回転手段と、放射線源と放射線検出手段との間に設置されるとともに、放射線源が回転される際の軌跡である仮想円に直交する方向に伸びた複数の開口を有する複数被検体保持用のホルダとを備え、ホルダに設けられた開口の各々は多角形形状となっており、複数の開口は、隔壁で隔離されることによりハニカム状に配列されていることを特徴とするものである。
【0012】
[作用・効果]本発明によれば、複数の被検体を一度に撮影できる小動物用放射線断層撮影装置が提供できる。すなわち、本発明に係る小動物用放射線断層撮影装置は、ハニカム状に配列されている多角形形状の開口を有するホルダを備えている。ホルダの開口の配列をハニカム状とすることにより、各開口を隔てる隔壁を極力薄くすることができる。この様にすることで、ホルダに設けられる開口の個数を可能な限り増加させることができる。また、ホルダに保持できる被検体の個数を増大させることができるので、実験の作業効率が高い小動物用放射線断層撮影装置が提供できる。また、隔壁が薄くなることでホルダに吸収される放射線が少なくなるので、放射線源から照射された放射線は確実にホルダを通過して放射線検出手段に入射することになる。つまり、本発明によればより鮮明な断層画像を生成することができる。
【0013】
また、上述の小動物用放射線断層撮影装置において、ホルダに設けられた開口の各々は、六角形の形状となっていればより望ましい。
【0014】
[作用・効果]上述の構成は、本発明のより具体的な態様を示すものとなっている。開口の形状を六角形とすれば、ホルダの機械的強度はより強固なものとなる。
【0015】
また、上述の小動物用放射線断層撮影装置において、ホルダに設けられた開口の各々に一体の被検体が挿入されればより望ましい。
【0016】
[作用・効果]上述の構成は、本発明のより具体的な態様を示すものとなっている。開口の各々に一体の被検体を挿入させるようにすれば、被検体を個別に隔離した状態で撮影が可能であるので、被検体が折り重なることにより被検体同士の境目が不明で診断しにくい画像が取得されるのを防止することができる。
【0017】
また、上述の小動物用放射線断層撮影装置において、ホルダがアクリル樹脂製であればより望ましい。
【0018】
[作用・効果]上述の構成は、本発明のより具体的な態様を示すものとなっている。ホルダが放射線を透過しやすいアクリル樹脂で構成すれば、より鮮明な断層画像を取得できる小動物用放射線断層撮影装置が提供できる。
【0019】
また、上述の小動物用放射線断層撮影装置において、ホルダには、隔壁に仮想円の直交方向に伸びた複数の切れ目が設けられており、ホルダを切れ目から分解すると、開口が互いに向き合った2つの樋状の凹部に分断されればより望ましい。
【0020】
[作用・効果]上述の構成は、本発明のより具体的な態様を示すものとなっている。ホルダの開口が互いに向き合った2つの樋状の凹部に分断されるようにホルダが分解できるようにすれば、ホルダの開口に被検体を挿入することが容易となる。
【0021】
また、上述の小動物用放射線断層撮影装置において、ホルダを載置する天板と、天板を仮想円の直交方向に移動させる天板移動手段とを備えればより望ましい。
【0022】
[作用・効果]上述の構成は、本発明のより具体的な態様を示すものとなっている。ホルダが載置可能で摺動自在の天板を備えるようにすれば、容易に被検体を撮影視野内に導入することができる小動物用放射線断層撮影装置が提供できる。
【0023】
また、上述の小動物用放射線断層撮影装置において、放射線源、放射線検出手段に対して仮想円の直交方向から隣接するように設けられたポジトロン放出断層撮影装置を備えればより望ましい。
【0024】
[作用・効果]上述の構成は、本発明のより具体的な態様を示すものとなっている。ポジトロン放出断層撮影装置を備えるようにすれば、被検体の機能的な画像と構造的な画像との両方が取得でき、撮影で取得できる情報をより多く取得することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、複数の被検体を一度に撮影できる小動物用放射線断層撮影装置が提供できる。すなわち、本発明に係る小動物用放射線断層撮影装置は、ハニカム状に配列されている多角形形状の開口を有するホルダを備えている。この様にすることで、ホルダに設けられる開口の個数を可能な限り増加させることができる。また、ホルダに保持できる被検体の個数を増大させることができるので、実験の作業効率が高い小動物用放射線断層撮影装置が提供できる。また、隔壁が薄くなることでより鮮明な断層画像を生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】実施例1に係るX線断層撮影装置の構成を説明する機能ブロック図である。
【図2】実施例1に係るX線管およびFPDの回転移動を説明する模式図である。
【図3】実施例1に係るホルダを説明する平面図である。
【図4】実施例1に係るホルダを説明する斜視図である。
【図5】実施例1に係るホルダを説明する模式図である。
【図6】実施例1に係るホルダを説明する模式図である。
【図7】実施例1に係るホルダを説明する模式図である。
【図8】実施例1に係るX線断層撮影装置の動作を説明するフローチャートである。
【図9】実施例1に係るX線断層撮影装置の動作を説明する断面図である。
【図10】実施例2に係るX線断層撮影装置の構成を説明する機能ブロック図である。
【図11】従来構成の放射線撮影装置の構成を説明する模式図である。
【実施例1】
【0027】
以降、本発明の実施例を説明する。実施例におけるX線は、本発明の放射線に相当する。また、FPDは、フラット・パネル・ディテクタの略である。また、本発明のX線断層撮影装置は、マウスなどの小動物撮影用となっている。
【0028】
まず、実施例1に係るX線断層撮影装置について説明する。X線断層撮影装置1は、図1に示す様に被検体Mを載置する天板2と、天板2の伸びる方向に貫通した貫通孔を有するガントリ10とを備えている。天板2は、ガントリ10の貫通孔に挿通されており、天板2を支持する支持台2aに対して天板2の伸びる方向(後述における仮想円VCの直交方向)に進退自在に移動することができる。この天板2の移動は天板移動機構15が行う。天板移動制御部16は、天板移動機構15を制御するものである。天板移動機構15は、本発明の天板移動手段に相当する。
【0029】
ガントリ10の内部には、X線を照射するX線管3と、X線を検出するFPD4とが設けられている。X線管3から照射されたX線は、ガントリの貫通孔を横切るように通過して、FPD4に到達する。X線管3は、本発明の放射線源に相当し、FPD4は、本発明の放射線検出手段に相当する。
【0030】
X線管制御部6は、所定の管電流、管電圧、パルス幅でX線管3を制御する目的で設けられている。FPD4は、X線管3から発せられ、被検体Mを透過したX線を検出して検出信号を生成する。この検出信号は、画像生成部11に送出され、そこで被検体Mの投影像が写り込んだ透視画像P0が生成される。断層画像生成部12は、画像生成部11で生成された透視画像P0を基に、被検体Mを任意の断層面で裁断したときの断層画像P1を生成する。
【0031】
X線管3およびFPD4の回転について説明する。X線管3およびFPD4は、回転機構7により、天板2の伸びる方向に伸びた中心軸を中心に一体的に回転される。より具体的には、X線管3およびFPD4は、図2に示す様に互いの相対的な位置関係を保った状態で回転移動される。このとき、X線管3は、回転機構7によりX線管3とFPD4とを結ぶ線分上にある中心点を中心とした仮想円VCの軌跡を描きながら回転することになる。この仮想円VCと直交する方向(図2における紙面貫通方向:Z方向)が、天板2の延伸方向と一致する。回転機構7は、本発明の回転手段に相当する。回転制御部8は回転機構7を制御するものである。
【0032】
天板2には、被検体Mを保持するためのホルダ5が載置されている。このホルダ5の構造について説明する。ホルダ5は、図3に示す様に、Z方向に伸びた正六角形(立体として捕らえれば正六角柱)の形状の開口5aを有している。この開口5aの各々に被検体Mが一体ずつ挿入されることになる。図3によるとホルダ5は、六角柱状の角筒が互いの面同士を当接させながら隙間なく積み重ねられて、天板2に近い側の一段目に3個の開口5aが、天板2に遠い側の二段目に2個の開口5aが形成されているような形状をしている。しかし、実際には、各開口5aを分断する隔壁5bは単層となっていて、ホルダ5を六角柱状の角筒に分解することはできない。このように、複数の開口5aは隔壁5bで隔離されることによりハニカム状に配列されている。
【0033】
このホルダ5は、開口5aに被検体Mを挿入しやすいように分解可能な構成となっている。すなわち図4に示すように、ホルダ5の隔壁5bにはZ方向に伸びた複数の切れ目が設けられており、ホルダ5は、上段部材5d,中段部材5eおよび下段部材5fの3部材に分解可能である。すなわち、上段部材5dを中段部材5eに対してZ方向に摺動させると、上段部材5dが中段部材5eから分離し、中段部材5eを下段部材5fに対してZ方向に摺動させると、中段部材5eが下段部材5fから分離する。このように、ホルダ5を分解すると、開口5aが互いに向き合った2つの樋状の凹部に分断される。
【0034】
上段部材5dと中段部材5eとの接合部には、それぞれ互いにかみ合うレールL1,L2が設けられていて、このレールL1,L2により中段部材5eに対する上段部材5dの移動可能な方向がZ方向のみに限定される。また、中段部材5eと下段部材5fの接合部には、それぞれ互いにかみ合うレールL3,L4が設けられていて、このレールL3,L4により下段部材5fに対する中段部材5eの移動可能な方向がZ方向のみに限定される。この様にして、ホルダ5は、衝撃が与えられても簡単に分解されない構造となっている。そうでありながらも、実験者が各部材5d,5e,5fを摺動させると、ホルダ5は簡単に分解される。なお、レールL1,L2,L3,L4は、Z方向に伸びているとともに、各部材5d,5e,5fがガントリ10に挿入された状態においてガントリ10の貫通孔を形成する内壁に隣接する両端に設けられている。つまり、ホルダ5の外側に露出した切れ目には、レールが設けられており、内側の切れ目にはレールが設けられていない。
【0035】
このように、ホルダ5を分解できるようにしたのは、被検体Mを開口5aに容易に挿入できるようにするためである。図5は、ホルダ5の開口5aの一つを抜き出したものである。この開口5aは、上段部材5dおよび中段部材5eにより形成されている。上段部材5dを中段部材5eに対してZ方向にスライドさせると、図6に示すように、開口5aは、互いに向き合った2つの樋状の凹部に分断される。この凹部に被検体Mを容易に載置することができる。
【0036】
被検体Mが載置された状態で、上段部材5dを中段部材5eに対して先程とは逆方向にスライドさせると、図7に示す様に、再び開口5aが形成され、開口5aには被検体Mが内接した状態となっている。このように、ホルダ5が分解可能となっていることにより、被検体Mを容易にホルダ5に収納させることができる。
【0037】
なお、このホルダ5は、X線を容易に透過するアクリル樹脂で構成される。
【0038】
表示部25は、X線撮影により取得された断層画像P1を表示する目的で設けられている。操作卓26は、実験者によるX線照射開始などの指示を入力させる目的で設けられている。また、主制御部27は、各制御部を統括的に制御する目的で設けられている。この主制御部27は、CPUによって構成され、各種のプログラムを実行することにより各制御部6,8,16および各部11,12を実現している。また、上述の各部は、それらを担当する演算装置に分割されて実行されてもよい。記憶部28は、撮影に用いられるパラメータ、画像処理に伴って生成される中間画像等のX線断層撮影装置1の制御に関するパラメータの一切を記憶する。
【0039】
<X線断層撮影装置の動作>
次に、X線断層撮影装置1の動作について説明する。実施例1に係るX線断層撮影装置1を用いて小動物の断層画像P1を取得するには、図8に示すように、まず、被検体Mがホルダ5に収納され(被検体収納ステップS1),透視画像P0の撮影が開始される(撮影開始ステップS2)。そして、断層画像P1が生成される(断層画像生成ステップS3)。以降これらの各ステップについて順を追って説明する。
【0040】
<被検体収納ステップS1>
撮影に先立って、被検体Mが撮影中に移動しない様に被検体Mを麻酔しておく。麻酔された被検体Mは、図5,図6,図7で説明した要領でホルダ5の開口5aに収納される。このとき、ホルダ5の開口5a1つ当たり一体の被検体Mが収納される。ホルダ5には、5つの開口5aが設けられているので、ホルダ5には5体の被検体Mを収納することができる。複数の被検体Mを収納したホルダ5は天板2に載置される。
【0041】
<撮影開始ステップS2>
実験者が操作卓26を通じてX線断層撮影装置1に断層撮影開始の指示を行うと、天板2が摺動し、被検体Mがガントリ10の貫通孔の内部に導入される(図1参照)。X線管制御部6は、記憶部28に記憶されている照射時間・管電流・管電圧に従い、X線を間欠的に照射する。その間に回転機構7は、X線管3およびFPD4を回転させる。FPD4は、X線管3が照射したX線のうち被検体Mを通過してきたX線を検出し、このときの検出データを画像生成部11に送出する。
【0042】
画像生成部11は、FPD4から送出された検出データを画像化して、X線の強さがマッピングされた透視画像P0を生成する。FPD4は、X線管3がX線を照射する度に検出データを画像生成部11に送出するので、画像生成部11は、複数枚の透視画像P0を生成することになる。X線管3およびFPD4が回転移動されながら複数枚の透視画像P0が取得されるのであるから、透視画像P0の各々には、被検体Mの透視像が透視する方向を変えながら写り込んでいることになる。X線管3およびFPD4が撮影開始から一回転したところで、X線管3はX線の照射を終了する。
【0043】
撮影開始後の天板2の移動について説明する。X線断層撮影装置1は、一度の撮影で被検体Mの一部分しか撮影できない。X線断層撮影装置1の撮影視野におけるZ方向の幅が被検体MのZ方向の幅よりも小さいからである。そこで、実施例1の構成によれば、上述のX線管3・FPD4が一回転して終了する撮影を複数回行うことで、被検体Mの全体像について断層画像を取得するようにしている。すなわち、図9の左側が示すように、まず被検体Mの尾部の撮影を行った後、天板2が摺動されることにより被検体Mとガントリ10の相対位置を変更し、今度は図9の中央が示すように、被検体Mの腹部の撮影を行う。その後、再び天板2を摺動して今度は図9の右側が示すように被検体Mの頭部の撮影を行う。こうして、被検体全身について透視画像P0が取得される。
【0044】
<断層画像生成ステップS3>
透視画像P0は、断層画像生成部12に送出される。断層画像生成部12では、方向を変えながら撮影されることにより被検体Mの立体的な構造に関する情報を有している一連の透視画像P0を再構成してZ方向を体軸とする被検体Mを輪切りにするような断層画像P1を生成する。この断層画像P1は、輪切りにする位置をZ方向について変更しながら複数枚生成される。この様にして生成された断層画像P1が表示部25に表示されて撮影は終了となる。
【0045】
以上のように、実施例1の構成によれば、複数の被検体Mを一度に撮影できるX線断層撮影装置1が提供できる。すなわち、実施例1の構成に係るX線断層撮影装置1は、ハニカム状に配列されている多角形形状の開口5aを有するホルダ5を備えている。ホルダ5の開口5aの配列をハニカム状とすることにより、各開口5aを隔てる隔壁5bを極力薄くすることができる。この様にすることで、ホルダ5に設けられる開口5aの個数を可能な限り増加させることができる。また、ホルダ5に保持できる被検体Mの個数を増大させることができるので、実験の作業効率が高いX線断層撮影装置1が提供できる。また、隔壁5bが薄くなることでホルダ5に吸収されるX線が少なくなるので、X線管3から照射されたX線は確実にホルダ5を通過してFPD4に入射することになる。つまり、実施例1の構成によればより鮮明な断層画像P1を生成することができる。
【0046】
また、開口5aの形状を六角形とすれば、ホルダ5の機械的強度はより強固なものとなる。さらに、開口5aの各々に一体の被検体Mを挿入させるようにすれば、被検体Mを個別に隔離した状態で撮影が可能であるので、被検体Mが折り重なることにより被検体同士の境目が不明で診断しにくい画像が取得されるのを防止することができる。
【0047】
また、ホルダ5がX線を透過しやすいアクリル樹脂で構成すれば、より鮮明な断層画像を取得できるX線断層撮影装置1が提供できる。さらに、ホルダ5の開口5aが互いに向き合った2つの樋状の凹部に分断されるようにホルダ5が分解できるようにすれば、ホルダ5の開口5aに被検体Mを挿入することが容易となる。
【実施例2】
【0048】
続いて実施例2に係る断層撮影装置20について説明する。実施例2に係る断層撮影装置20は、図10に示す様に、実施例1に係る装置構成にポジトロン放出断層撮影装置(PET装置)を併設したものとなっている。そこで、実施例2に係る断層撮影装置20において、実施例1に係る装置構成と同様の部分については説明を省略する。
【0049】
断層撮影装置20には、ガントリ10の他、PET装置1aに係るガントリ10aを有している。このガントリ10aも、Z方向に伸びた貫通孔を有しており、天板2が挿通されている。したがって、PET装置1aは、X線管3・FPD4に対してZ方向から隣接するように設けられている。
【0050】
ガントリ10aの内部にはガントリ10aの形状にならってリング状の検出器リング32が設けられている。この検出器リング32は、γ線を検出可能な検出器がリング状に配列されて構成されている。
【0051】
同時計数部33は、検出器リング32から出力された検出データに同時計数処理を施す目的で設けられている。この同時計数部33により検出器リング32の異なる部分に同時に入射した消滅γ線対の検出頻度と検出位置とが特定される。同時計数部33は、同時計数の結果をPET画像生成部34に出力する。PET画像生成部34は、同時計数部33が特定した消滅γ線対の検出頻度と検出位置とを基に、消滅γ線対の発生位置を算出し、消滅γ線対の発生強度がマッピングされたPET画像P2を生成する。PET画像P2は、消滅γ線対の発生の分布を示す断層画像となっている。
【0052】
断層撮影装置20は、X線による断層画像P1と消滅γ線対によるPET画像P2との両画像を一度の検査で取得できるようになっている。断層撮影装置20を用いて両画像P1,P2を生成するには、まず、被検体Mに陽電子放出型の放射性薬剤が注射される。放射性薬剤は、被検体Mの病巣などの特定の部分に集中する性質を有している。放射性薬剤は陽電子を放出し、この陽電子は180度反対方向に飛び去る消滅γ線対を発生させる。したがって、被検体Mからは、消滅γ線対が放射されることになる。放射性薬剤の分布は被検体内で異なっているのであるから、消滅γ線対の発生の頻度は被検体Mの部分によって異なっていることになる。
【0053】
放射性薬剤の注射から十分に時間が経過した後、被検体Mは麻酔され、ホルダ5に収納される。すなわち、図5,図6,図7で説明した要領でホルダ5の開口5aの各々に麻酔された被検体Mの一体が収納される。そして、複数の被検体Mを収納した状態となったホルダ5は、天板2に載置される。実験者が操作卓26を通じて断層撮影装置20にPET画像撮影開始の指示を行うと、天板2が摺動し、被検体Mがガントリ10aの貫通孔の内部に導入される(図10参照)。この時点から検出器リング32は、消滅γ線対の検出を開始し、PET画像生成部34がPET画像P2を生成する。PET画像P2には、被検体Mの部分によって異なる消滅γ線対の発生の頻度がマッピングされている。消滅γ線対の発生頻度の分布はそのまま放射線薬剤の分布なのであるから、実験者はPET画像P2を診断することで被検体中の放射性薬剤の分布を知ることができる。なお、撮影の際に、PET装置1aのZ方向における視野範囲が被検体Mの全身をカバーしきれないときは、天板2をZ方向に摺動させながらPET画像P2の撮影をするようにしてもよい。
【0054】
後の動作は、上述のステップS2以降と同様である。断層画像P1,PET画像P2およびこれらが重ねられた合成画像が表示部25に表示されて撮影は終了となる。
【0055】
以上のように、実施例2の構成によれば、複数の被検体Mの断層画像とPET画像P2の両方を一度の撮影で取得できるので、実験作業の効率の優れた断層撮影装置20が提供できる。
【0056】
本発明は、上述の構成に限られず、下記のように変形実施することができる。
【0057】
(1)実施例1の構成によれば、ホルダ5は、6角柱状の開口5aを有していたが、開口5aの形状を3角柱状、または4角柱状としてもよい。
【0058】
(2)実施例1の構成によれば、被検体Mはマウスであったが、他の小動物を被検体Mとすることもできる。
【0059】
(3)実施例1の構成によれば、ホルダ5は5つの開口5aを有していたが、開口5aの個数を撮影対象の小動物のサイズに合わせて変更させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0060】
VC 仮想円
2 天板
3 X線管(放射線源)
4 FPD(放射線検出手段)
5 ホルダ
5a 開口
5b 隔壁
7 回転機構(回転手段)
15 天板移動機構(天板移動手段)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線を照射する放射線源と、
放射線を検出する放射線検出手段と、
前記放射線源と前記放射線検出手段を結ぶ線分上にある中心点を中心に、両者を互いの位置関係を保った状態で回転させる回転手段と、
前記放射線源と前記放射線検出手段との間に設置されるとともに、前記放射線源が回転される際の軌跡である仮想円に直交する方向に伸びた複数の開口を有する複数被検体保持用のホルダとを備え、
前記ホルダに設けられた開口の各々は多角形形状となっており、複数の開口は、隔壁で隔離されることによりハニカム状に配列されていることを特徴とする小動物用放射線断層撮影装置。
【請求項2】
請求項1に記載の小動物用放射線断層撮影装置において、
前記ホルダに設けられた開口の各々は、六角形の形状となっていることを特徴とする小動物用放射線断層撮影装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の小動物用放射線断層撮影装置において、
前記ホルダに設けられた開口の各々に一体の被検体が挿入されることを特徴とする小動物用放射線断層撮影装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の小動物用放射線断層撮影装置において、
前記ホルダがアクリル樹脂製であることを特徴とする小動物用放射線断層撮影装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の小動物用放射線断層撮影装置において、
前記ホルダには、隔壁に前記仮想円の直交方向に伸びた複数の切れ目が設けられており、前記ホルダを切れ目から分解すると、開口が互いに向き合った2つの樋状の凹部に分断されることを特徴とする小動物用放射線断層撮影装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の小動物用放射線断層撮影装置において、
前記ホルダを載置する天板と、
前記天板を前記仮想円の直交方向に移動させる天板移動手段とを備えることを特徴とする小動物用放射線断層撮影装置。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の小動物用放射線断層撮影装置において、
前記放射線源、前記放射線検出手段に対して前記仮想円の直交方向から隣接するように設けられたポジトロン放出断層撮影装置を備えることを特徴とする小動物用放射線断層撮影装置。
【請求項1】
放射線を照射する放射線源と、
放射線を検出する放射線検出手段と、
前記放射線源と前記放射線検出手段を結ぶ線分上にある中心点を中心に、両者を互いの位置関係を保った状態で回転させる回転手段と、
前記放射線源と前記放射線検出手段との間に設置されるとともに、前記放射線源が回転される際の軌跡である仮想円に直交する方向に伸びた複数の開口を有する複数被検体保持用のホルダとを備え、
前記ホルダに設けられた開口の各々は多角形形状となっており、複数の開口は、隔壁で隔離されることによりハニカム状に配列されていることを特徴とする小動物用放射線断層撮影装置。
【請求項2】
請求項1に記載の小動物用放射線断層撮影装置において、
前記ホルダに設けられた開口の各々は、六角形の形状となっていることを特徴とする小動物用放射線断層撮影装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の小動物用放射線断層撮影装置において、
前記ホルダに設けられた開口の各々に一体の被検体が挿入されることを特徴とする小動物用放射線断層撮影装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の小動物用放射線断層撮影装置において、
前記ホルダがアクリル樹脂製であることを特徴とする小動物用放射線断層撮影装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の小動物用放射線断層撮影装置において、
前記ホルダには、隔壁に前記仮想円の直交方向に伸びた複数の切れ目が設けられており、前記ホルダを切れ目から分解すると、開口が互いに向き合った2つの樋状の凹部に分断されることを特徴とする小動物用放射線断層撮影装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の小動物用放射線断層撮影装置において、
前記ホルダを載置する天板と、
前記天板を前記仮想円の直交方向に移動させる天板移動手段とを備えることを特徴とする小動物用放射線断層撮影装置。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の小動物用放射線断層撮影装置において、
前記放射線源、前記放射線検出手段に対して前記仮想円の直交方向から隣接するように設けられたポジトロン放出断層撮影装置を備えることを特徴とする小動物用放射線断層撮影装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−115559(P2012−115559A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−269432(P2010−269432)
【出願日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】
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