説明

小口止め型枠

【課題】
本発明は、板状または網状の高分子材料をはちの巣構造にしたハニカム状立体補強材に土砂・砕石などの充填材を充填したハニカム構造体を水平に積層して構築するハニカム擁壁の、小口部からの充填材の崩落や浸食を防止するために用いる小口止め型枠およびその構築方法を提供することである。
【解決手段】
板状または網状の高分子材料をはちの巣構造にしたハニカム状立体補強材に充填材を充填したハニカム構造体を水平に積層して構築するハニカム擁壁の小口部に設置される小口止め型枠であって、壁面部と底面部とからなるL字状の小口止め型枠。前記壁面部と底面部とが格子体から形成され、該壁面部格子体の縦軸上端部分が擁壁側に一度折り曲がりさらにそこから該壁面部と平行になるように折り曲がるクランク形状をしたクランク部と、該クランク部の先の差込部からなることを特徴とする小口止め型枠。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板状や網状の高分子材料からなるストリップ材をはちの巣構造にしたハニカム状立体補強材に充填材を充填したハニカム構造体を積層して構築する擁壁の小口止め型枠に関する。
【背景技術】
【0002】
以前より板状や網状の高分子材料からなるストリップ材をはちの巣構造にしたハニカム状立体補強材は知られており、このハニカム状立体補強材に土砂や砕石などの充填材を充填したハニカム構造体は(以下、ハニカム状立体補強材に充填材を充填した構造体を「ハニカム構造体」と記す)地盤の補強材、道路の路盤材、歩道の基礎材、仮設道路、擁壁の資材に利用されてきた(特許文献1)。
【0003】
さらに、ハニカム構造体を一定の高さまで積層し擁壁として使用した構造体(以下、「ハニカム擁壁」と記す)もよく知られている(「特許文献2〜4」、「非特許文献1」の「119ページ」)。下部のハニカム構造体に対して、その上に載せるハニカム構造体を下部よりも地山側に後退させることにより、階段状にハニカム構造体を形成して階段状のハニカム擁壁を作ることができる。その際、後退幅を調節することにより、構築するハニカム擁壁の法面勾配を調整することができる。
【0004】
ハニカム擁壁を構築する際、ハニカム擁壁の法面勾配と地山の勾配が一致しない場合には、ハニカム擁壁部の小口部分と地山との間には「ずれ」が発生した。地山の勾配よりもハニカム擁壁の法面ほうが急勾配に施工されることが一般的であるために、ハニカム擁壁の小口部から充填材の崩落や浸食をおこすことがあった。
【0005】
従来、ハニカム擁壁小口部からの充填材の崩落や浸食を解決するには、コンクリート構造物による小口止めを構築したり、植生土のうを積み上げてアンカーピンなどで固定したりする方法がとられてきた。しかし、前者のコンクリート構造物による方法は手間が掛かるために、簡単に施工できることが特徴であるハニカム擁壁の構築にとって足かせになっていた。また後者の植生土のうによる方法では、土砂の崩落や浸食対策としては不十分であり、またハニカム擁壁を縁取るように並ぶ植生土のうの列は見た目にも悪いという欠点があった。
【0006】
【特許文献1】特許第2825897号公報
【特許文献2】実用新案第2582267号公報
【特許文献3】特開2008−75389号公報
【特許文献4】特開2008−82093号公報
【非特許文献1】「基礎工 1996年12月号」 総合土木研究所刊 119ページ
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、板状または網状の高分子材料をはちの巣構造にしたハニカム状立体補強材に土砂・砕石などの充填材を充填したハニカム構造体を水平に積層して構築するハニカム擁壁の、小口部からの充填材の崩落や浸食を防止するために用いる小口止め型枠およびその構築方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明はこの課題を解決するためになされたものであり請求項1記載の発明は、板状または網状の高分子材料をはちの巣構造にしたハニカム状立体補強材に充填材を充填したハニカム構造体を水平に積層して構築するハニカム擁壁の小口部に設置される小口止め型枠であって、壁面部と底面部とからなるL字状の小口止め型枠である。
【0009】
請求項2記載の発明は、前記壁面部と底面部とが格子体から形成され、該壁面部格子体の縦軸上端部分が擁壁側に一度折り曲がりさらにそこから該壁面部と平行になるように折り曲がるクランク形状をしたクランク部と、該クランク部の先の差込部からなることを特徴とする請求項1記載の小口止め型枠である。
【0010】
請求項3記載の発明は、前記壁面部と前記底面部との結合部に最も近い壁面部横軸材と、該壁面部と該底面部との結合部に最も近い底面部横軸材との間に、前記差込部を差し込むための受け部を設けたことを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の小口止め型枠である。
【0011】
請求項4記載の発明は、前記小口止め型枠を設置し、該小口止め型枠の擁壁側にハニカム構造体を前記クランク部の高さまで構築した後、該小口止め型枠の差込部がそのすぐ上に設置される小口止め型枠の受け部に差し込んで、小口止め型枠同士を連結することにより小口部を形成できることを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載の小口止め型枠である。
【0012】
請求項5記載の発明は、前記小口止め型枠を設置し、ハニカム構造体を該小口止め型枠の底面部に載るように設置した後、該ハニカム構造体の天端にさらに小口止め型枠を設置し、以下前述の工程を所定の高さまで繰り返してハニカム擁壁の小口部を構築することを特徴とするハニカム擁壁の小口部構築方法である。
【0013】
請求項6記載の発明は、前記小口止め型枠を設置し、ハニカム構造体を該小口止め型枠の底面部に載るように前記クランク部の高さまで設置した後、該ハニカム構造体の天端に、該小口止め型枠の差込部にその上にくる小口止め型枠の受け部を差し込むように該小口止め型枠を設置し、以下前述の工程を所定の高さまで繰り返してハニカム擁壁の小口部を構築することを特徴とするハニカム擁壁の小口部構築方法である。
【発明の効果】
【0014】
本発明による小口止め型枠を用いることにより、簡単にハニカム擁壁小口部からの充填材の崩落や浸食を防止することができ、安定性の高いハニカム擁壁を構築できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。
【0016】
図1は、ハニカム状立体補強材1の展張前の斜視図である。ハニカム状立体補強材1は、複数枚の高密度ポリエチレンのストリップ材2を一定間隔の結合部位4にて結合したものである。このハニカム状立体補強材1は展張方向5に展張してハニカム状のセル構造を形成する。
【0017】
ハニカム状立体補強材1のストリップ材には排水性を向上させるために孔3を設けた方がよい。孔の大きさや形状はどのようなものでもよいが、特に大きさが1cm程度の円形のものがよい。さらに孔の数は多い方が良いが、多すぎるとストリップ材の強度が低下するため、ストリップ材の面積の40%を越えない程度の数がよい。また孔の配置は直列でも千鳥配置でもよい。
【0018】
図2は、ハニカム状立体補強材1のうち、法面を形成する部分である法面部ストリップ材6を除くストリップ材に複数の孔を有するハニカム状立体補強材の展張前の斜視図である。ストリップ材に有する孔の径より粒度の細かい充填材をハニカム状立体補強材に充填し法面部を形成する場合、法面部からの土こぼれを防止するために法面部ストリップ材に孔のないハニカム状立体補強材を用いる。ただし、法面部ストリップ材内側のセルに不織布を張るなどの土こぼれ防止の対策を行えば、法面部ストリップ材に孔のあるハニカム状立体補強材を利用して法面部を形成することもできる。排水のためには法面部ストリップ材に孔があるほうがよい。
【0019】
図3は、図2で示した法面部ストリップ材6を除くストリップ材に孔を有するハニカム状立体補強材を展張した際の斜視図である。ハニカム状立体補強材1を展張すると、ハニカム状のセル7が形成される。セル7内に土砂や砕石などの充填材8を充填して締め固めを行うことにより、剛性のあるハニカム構造体を形成させる。
【0020】
図4はハニカム構造体9を積み上げたハニカム擁壁の斜視図である。図4のハニカム構造体9を積み重ねて施工することにより、ハニカム擁壁を形成する。ハニカム構造体を積み重ねるたびに各層ごと背面地山部10の側に後退させることによりステップを形成し、その後退の度合いに応じて様々な法面勾配のハニカム擁壁を構築することができる。
【0021】
ハニカム擁壁9は地山切土面の前面に構築されることが多いが、側面地山部11との勾配差によりどうしても小口部12ができてしまう。小口部12は、ハニカム擁壁の中でもハニカム立体補強材におけるセルの機能を果たしていない部分であるため、充填材の崩落や浸食の原因となる。
【0022】
本発明は、板状または網状の高分子材料をはちの巣構造にしたハニカム状立体補強材に充填材を充填したハニカム構造体を水平に積層して構築するハニカム擁壁の小口部に設置される小口止め型枠であって、壁面部と底面部とからなるL字状の小口止め型枠である。
【0023】
図5、図6、図9は、本発明のハニカム擁壁の小口部に用いる小口止め型枠の一例を示した斜視図である。図5はエキスパンドメタル状の小口止め型枠である。図6は平板に多数の孔を付した小口止め型枠である。図9は格子状でかつ上下の連結が可能な連結型小口止め型枠である。
【0024】
小口止め型枠13は、壁面部14と底面部15からなるL字状構造をしている。壁面部14は小口部の壁面を構成する部分である。底面部15は、最下段の場合には基礎地盤に、それ以外の場合にはハニカム構造体の天端部に設置され、該底面部の上にハニカム構造体を構築することで小口止め型枠13は固定される。小口止め型枠13の底面部15には、設置の際に仮止め程度にアンカーピンなどの固定具を用いると、施工中に小口止め型枠が動くことがなく好適である。
【0025】
小口止め型枠の壁面部と底面部のなす角度は45°以上で90°以下になるようにする。角度は小さい方が安定であるが、一般的には90°程度である。また、90°より大きければ安定したハニカム擁壁が構築できない。
【0026】
小口止め型枠は、ハニカム擁壁内から壁外への排水のための機能を付していることが望ましい。排水のための機能とは、具体的には、図5のようなエキスパンドメタル状、図6のような平板にたくさんの孔を付した形状、図7のような格子状などが挙げられる。排水のための機能を付さないと、ハニカム擁壁内に雨水やわき水などからなる水が溜まり、ハニカム擁壁の安定性を低下させる恐れがある。
【0027】
ただし排水のための機能を向上させるために、小口止め型枠に孔などをたくさん付与すると、充填材に細粒分を含む土砂等を用いる場合、土こぼれをおこす場合がある。これを防止するために、小口止め型枠の壁面部のハニカム擁壁側に吸出防止材を張り付けてもよい。吸出防止材は、網目状に孔を有する樹脂製のシートや不織布などである。吸出防止材の孔径は小口止め型枠のメッシュや孔より細かい必要がある。また壁面の緑化させたい場合、吸出防止材には不織布などに植物の種子を埋め込んだ植生マットを用いてもよい。充填材が砕石などの小口止め型枠のメッシュや孔より大きなものであれば、吸出防止材を設置しなくてもよい
【0028】
本発明の小口止め型枠は、どのような材料でも製造可能であるが、望ましくはプラスチックや金属などである。利用できるプラスチックとしては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどが挙げられるがそれに限定されない。また金属の場合には自然環境中に設置されるため、ポリエチレン被覆やメッキなどを施し、耐食性を高めることが望ましい。耐食性の向上のために好適なのは、亜鉛80〜95重量%及びアルミニウム5〜20重量%からなる合金でメッキ処理されている鋼線から製造される小口止め型枠である。
【0029】
図7は、図5に示したエキスパンドメタル状の小口止め型枠の施工手順を図示した斜視図である。
【0030】
図7に示した小口止め型枠は、壁面部の高さがハニカム構造体の高さと同程度の例である。以下、小口止め型枠の高さがハニカム構造体の高さと同程度の場合の小口止めを付したハニカム擁壁の施工手順を示す。ハニカム擁壁の最下層のハニカム構造体を設置する前に、小口止め型枠を小口部となる位置に設置する。設置された小口止め型枠の底面部に1層目のハニカム構造体が載るように施工する。
【0031】
図7では、1層目の小口止め型枠およびハニカム構造体を設置後に、その上部に2層目の小口止め型枠とハニカム構造体を設置する時点を示している。2層目の小口止め型枠を、すでに設置した1層目のハニカム構造体および小口止め型枠の上に、壁面部の位置を合わせながら設置する。設置した2層目の小口止め型枠の背面に2層目のハニカム構造体を設置する。3層目以降も同様な手順を繰り返してハニカム構造体および小口止め型枠を所定の高さまで積層させて、小口止めが付加されたハニカム擁壁を構築する。
【0032】
図7に示した小口止め型枠は、壁面部の高さがハニカム構造体の高さと同程度の例を示した。しかし、小口止め型枠の壁面部の高さは必ずしも同程度の高さである必要はない。その場合でも小口止め型枠の壁面部の高さは、ハニカム構造体の高さの整数倍であることが望ましく、整数倍であればハニカム構造体をその整数倍の段数積層するたびに小口止め型枠を設置してゆけばよい。小口止め型枠の壁面部の高さとハニカム構造体の高さが異なる場合には、小口止め型枠と階段状のハニカム擁壁法面部の間に小口止め型枠の不要部分が発生するが、この小口止め型枠の不要部分は番線カッターやボルトクリッパーなどで切断するとよい。
【0033】
図8は、図5に示したエキスパンドメタル状の小口止め型枠を用いてハニカム擁壁を構築し完成した際の斜視図である。
【0034】
図9は、本発明の格子状でかつ上下の連結が可能な連結型小口止め型枠の斜視図である。
【0035】
図9に示す本発明の連結型小口止め型枠は、壁面部と底面部とが格子体から形成され、該壁面部格子体の縦軸上端部分が擁壁側に一度折り曲がりさらにそこから該壁面部と平行になるように折り曲がるクランク形状をしたクランク部と、該クランク部の先の差込部からなることを特徴とする小口止め型枠である。
【0036】
また、本発明の連結型小口止め型枠は、壁面部と底面部との結合部に最も近い壁面部横軸材と、該壁面部と該底面部との結合部に最も近い底面部横軸材との間に、前記差込部を差し込むための受け部を設けたことを特徴とする小口止め型枠である。
【0037】
連結型小口止め型枠16の壁面部14格子体の縦軸上端部分にはクランク部17および差込部18がある。クランク部17は擁壁側に一度折り曲がりさらにそこから該壁面部と平行になるように折り曲がったクランク形状をしている。該クランク部17のさらに上部に差込部18があり、差込部18は該連結型小口止め型枠の上に次の連結型小口止め型枠を積み重ねる際に上下の連結型小口止め型枠を接続するために用いられる。
【0038】
また連結型小口止め型枠の壁面部と底面部との結合部分に、積み重ねた際に下にくる連結型小口止め型枠の差込部18が差し込まれるための、受け部19が設けられている。底面部15の背面側には、ハニカム構造体との一体性をよくするために突起部20が設けられている。
【0039】
連結型小口止め型枠は、1枚の格子体を折り曲げたり、または2枚の格子体を溶接するなどして製造されるが、製造方法や素材は特に問わない。連結型小口止め型枠の大きさは特には限定されないが、連結型小口止め型枠の壁面部と底面部との結合部分からクランク部までの高さがハニカム構造体の高さと同じかもしくはハニカム構造体の高さの整数倍に等しいことが望ましい。大きさは人力で運ぶことができる程度のものが望ましい。
【0040】
図10〜図12に、本発明の連結型小口止め型枠を用いてハニカム擁壁を構築する手順を示した。以下に、連結型小口止め型枠の壁面部と底面部との結合部分からクランク部までの高さがハニカム構造体の高さの2倍程度である連結型小口止め型枠の施工例を示す。
【0041】
本発明の連結型小口止め型枠は、前記小口止め型枠を設置し、該小口止め型枠の擁壁側にハニカム構造体を前記クランク部の高さまで構築した後、該小口止め型枠の差込部がそのすぐ上に設置される小口止め型枠の受け部に差し込んで、小口止め型枠同士を連結することにより小口部を形成できることを特徴とする小口止め型枠である。
【0042】
図10は、連結型小口止め型枠16およびハニカム構造体9の1層目を設置した際の斜視図である。連結型小口止め型枠16はハニカム擁壁の小口部にあたる位置に設置する。連結型小口止め型枠16の設置は設置面に静置するだけでもよいが、施工中に動いてしまうこともあるため、底面部にアンカーピンなどで仮止めしたほうがよい。
【0043】
設置した連結型小口止め型枠16の壁面部14のハニカム構造体側に、壁面側への充填材のこぼれを防止するために不織布などからなる吸出防止材21を張り付ける。充填材に細粒分を含む土砂等を用いる場合、連結型小口止め型枠のみであれば、目が粗すぎて土こぼれをおこしたり、水による表面浸食をおこす。これらを防止するために吸出防止材を用いる。吸出防止材21は、網目状に孔を有する樹脂製のシートや不織布などである。吸出防止材の孔径は小口止め型枠のメッシュより細かい必要がある。また壁面の緑化させる場合、吸出防止材は不織布などに植物の種子を埋め込んだ植生マットでもよい。充填材が砕石などの小口止め型枠の格子より大きなものであれば、吸出防止材を設置しなくてもよい。
【0044】
連結型小口止め型枠を設置した後、1層目のハニカム構造体を設置する。1層目設置後、2層目のハニカム構造体を積層する。
【0045】
図11は、ハニカム構造体を2層設置後、その上にさらに連結型小口止め型枠を設置する際の斜視図である。2層目のハニカム構造体の天端部分に、下にある連結型小口止め型枠(下)22にはめ込むように連結型小口止め型枠(上)23を設置する。連結型小口止め型枠(上)23にも吸出防止材21を張り付ける。
【0046】
図12は、本発明の連結型小口止め型枠同士を上下に接続する際の接続部分を拡大した斜視図である。
【0047】
連結型小口止め型枠(下)22を設置後、2層分のハニカム構造体9を構築するが、2層目のハニカム構造体9の天端部分は連結型小口止め型枠(下)22のクランク部17の位置と同程度の高さになっている。2層目のハニカム構造体9の天端に上段小口止め型枠23の底面部を設置する。この際、連結型小口止め型枠(下)22の差込部18が連結型小口止め型枠(上)23の受け部19に差し込まれるように設置する。
【0048】
連結型小口止め型枠(上)23の受け部19は、壁面部と底面部との結合部に最も近い壁面部横軸材24と、壁面部と底面部との結合部に最も近い底面部横軸材25との隙間で構成されている。この隙間は差込部18の外径よりも大きくなければ、差込部18を受け部19に挿入できない。しかし、広すぎると連結型小口止め型枠(上)23の擁壁側にハニカム構造体を構築するまでの間、連結型小口止め型枠(上)を安定した状態で設置しておくことができない。壁面部横軸材24と底面部横軸材25との隙間は、差込部18の太さの1.2倍から5倍程度が望ましい。
【0049】
クランク部17のクランク幅は、壁面部の縦軸材と壁面部横軸材24との和よりも少し大きい程度が望ましい。最も良いのは壁面部の縦軸材と壁面部横軸材24との和の1.2倍から4倍程度である。あまり大きすぎると、連結型小口止め型枠(下)22と連結型小口止め型枠(上)23の壁面部を合わせることが難しくなる。差込部18と底面部横軸材25は上下に連結する際に嵌合しないように小口止め型枠を製造する。
【0050】
図13は、本発明の連結型小口止め型枠を用いてハニカム擁壁を構築し完成した際の斜視図である。
【0051】
連結型小口止め型枠の壁面部と底面部との結合部分からクランク部までの高さがハニカム構造体の高さと異なる連結型小口止め型枠を施工に用いた場合、連結型小口止め型枠と階段状のハニカム擁壁法面部の間に、ハニカム擁壁の小口部分からはみ出た連結型小口止め型枠の不要部分が発生するが、この連結型小口止め型枠の不要部分は番線カッターやボルトクリッパーなどで切断する。連結型小口止め型枠の底面部からクランク部までの高さがハニカム構造体の高さと同程度である連結型小口止め型枠を施工に用いた場合には、ハニカム擁壁のステップ間隔と連結型小口止め型枠の間隔が一致するため、上記の切断作業を行う必要がない。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明のハニカム擁壁小口部から充填材の崩落や浸食を防止するために用いる小口止め型枠を用いることで、より強固で安定性の高いハニカム擁壁を構築することができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】ハニカム状立体補強材(ストリップ材に孔あり)の展張前の斜視図である。
【図2】ハニカム状立体補強材(法面部ストリップ材を除くストリップ材に孔あり)の展張前の斜視図である。
【図3】ハニカム状立体補強材(法面部ストリップ材を除くストリップ材に孔あり)の展張時の斜視図である。
【図4】ハニカム構造体を積み上げたハニカム擁壁の斜視図である。
【図5】本発明の小口止め型枠(エキスパンドメタル状)の斜視図である。
【図6】本発明の小口止め型枠(平板に多数の孔を付した形状)の斜視図である。
【図7】本発明の小口止め型枠の施工時の斜視図である。
【図8】本発明の小口止め型枠を用いたハニカム擁壁完成時の斜視図である。
【図9】本発明の連結型小口止め型枠の斜視図である。
【図10】本発明の連結型小口止め型枠の施工時の斜視図である。
【図11】本発明の連結型小口止め型枠の施工時の斜視図である。
【図12】本発明の連結型小口止め型枠の上下連結時の断面図である。
【図13】本発明の連結型小口止め型枠を用いたハニカム擁壁完成時の斜視図である。
【符号の説明】
【0054】
1 ハニカム状立体補強材
2 ストリップ材
3 孔
4 結合部位
5 展帳方向
6 法面部ストリップ材
7 セル
8 充填材
9 ハニカム構造体
10 背面地山部
11 側面地山部
12 小口部
13 小口止め型枠
14 壁面部
15 底面部
16 連結型小口止め型枠
17 クランク部
18 差込部
19 受け部
20 突起部
21 吸出防止材
22 連結型小口止め型枠(下)
23 連結型小口止め型枠(上)
24 壁面部横軸材
25 底面部横軸材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状または網状の高分子材料をはちの巣構造にしたハニカム状立体補強材に充填材を充填したハニカム構造体を水平に積層して構築するハニカム擁壁の小口部に設置される小口止め型枠であって、壁面部と底面部とからなるL字状の小口止め型枠。
【請求項2】
前記壁面部と底面部とが格子体から形成され、該壁面部格子体の縦軸上端部分が擁壁側に一度折り曲がりさらにそこから該壁面部と平行になるように折り曲がるクランク形状をしたクランク部と、該クランク部の先の差込部からなることを特徴とする請求項1記載の小口止め型枠。
【請求項3】
前記壁面部と前記底面部との結合部に最も近い壁面部横軸材と、該壁面部と該底面部との結合部に最も近い底面部横軸材との間に、前記差込部を差し込むための受け部を設けたことを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の小口止め型枠。
【請求項4】
前記小口止め型枠を設置し、該小口止め型枠の擁壁側にハニカム構造体を前記クランク部の高さまで構築した後、該小口止め型枠の差込部がそのすぐ上に設置される小口止め型枠の受け部に差し込んで、小口止め型枠同士を連結することにより小口部を形成できることを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載の小口止め型枠。
【請求項5】
前記小口止め型枠を設置し、ハニカム構造体を該小口止め型枠の底面部に載るように設置した後、該ハニカム構造体の天端にさらに小口止め型枠を設置し、以下前述の工程を所定の高さまで繰り返してハニカム擁壁の小口部を構築することを特徴とするハニカム擁壁の小口部構築方法。
【請求項6】
前記小口止め型枠を設置し、ハニカム構造体を該小口止め型枠の底面部に載るように前記クランク部の高さまで設置した後、該ハニカム構造体の天端に、該小口止め型枠の差込部にその上にくる小口止め型枠の受け部を差し込むように該小口止め型枠を設置し、以下前述の工程を所定の高さまで繰り返してハニカム擁壁の小口部を構築することを特徴とするハニカム擁壁の小口部構築方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−281084(P2009−281084A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−135521(P2008−135521)
【出願日】平成20年5月23日(2008.5.23)
【出願人】(000219912)東京インキ株式会社 (120)
【Fターム(参考)】