説明

小型のUV放射モジュール

本発明は、UV光でもって基板を照射するための照射ユニットを有する、少なくとも1つの基板を照射するための装置にかんする。照射ユニットは反射器が組み込まれている放電ランプを有する。さらに本発明は、UV光でもって基板を照射する照射モジュールを製造するための方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板を照射するUV(紫外線)光を形成するモジュールに関する。
【0002】
放射を形成するための放電ランプ、殊にUV放射を所期のように形成するための放電ランプは従来技術から既に周知となっている。発光スペクトルの形状に所期のように影響を及ぼすため、また種々のタスクに関して放射器を最適化するために、ガス充填物をドーピングすることも種々の刊行物に記載されている。この種の放射器を低圧放射器、中圧放射器もしくは高圧放射器として実施することができる。また動作時に放電が行われる圧力によって、スペクトル以外に出力も放電の体積に関して影響を受ける。
【0003】
しかしながら、放電ランプが最適にドーピングされており、かつ、最適な圧力範囲において作動する場合であっても、放出された放射の一部しか所望のプロセスに作用しない。何故ならば、放電ランプのスペクトルには可視または赤外線の範囲の成分も常に含まれており、さらには出力の一部によって管が加熱され、この管自体が遠赤外線を放射するからである。放出される放射のスペクトルの一部はプロセスにとって有害で不所望なものであるので、そのようなスペクトル部分は多くの場合フィルタを用いて全体の放射スペクトルから除去される。
【0004】
その種の放電ランプないし放射源として使用される放電ランプは全ての空間方向に光を放出するので、少なくとも半径方向においては、ランプと基板が成す角度と放出される光の強度との関係性は無視できる程度のものしか生じない。
【0005】
放出される放射を可能な限り効率的に利用できるようにするために、殊に、放射器からあらゆる方向に均等に放出される放射が反射器により例えば基板に偏向される。金属の吸収率が高く、またセラミックは透過性でもなければ、やはり吸収率も高いので、スペクトル的に広帯域の鏡面反射器はUVに対して良好な効率(すなわち高い反射率)を提供することができない。鏡面反射とは実質的に平坦な表面における反射と解され、そのような反射では放射の角度情報が維持されたままである。
【0006】
可視領域(Ag,AI)または赤外線領域(ほぼ全ての金属)とは異なる単純な材料境界面は効率的な反射を提供できないので、層毎に屈折率が異なる層列を備えた、複数の放射材料から成る誘電性の反射器が使用される。この種の反射器において、実際に反射が行われる帯域幅は制限的なものでしかない。したがって誘電性の反射器はフィルタとしても使用することができる。その種の反射器の製造は、非常に研磨された高価な支持体の上に複数の異なる層を被着させなければならないのでコストが掛かる。
【0007】
誘電性の反射器の反射領域は反射器に入射する光の角度に依存するので、この種の反射器は動作する幾何学的な状況に応じて設計されなければならない。利用される表面にわたるある程度均一な反射率を達成するためには、この表面が放射源に対して一定の角度で配置されなければならない。また反射器は光源の過度に近くに取り付けられてはならない。何故ならば、ランプから放出される放射は点源ではなく、放電の表面全体に由来することから種々の角度で反射器に入射するが、高効率を達成するためには、反射器に入射する放射の角度の大きい変化は許容されないからである。
【0008】
この種の反射器の持続的な動作はコストが掛かる。何故ならば、反射器は大抵の場合、冷却されなければならないからである。つまり、反射器はUVまたはVIS(可視光)の範囲における高い反射率に関して最適化されており、したがって反射するスペクトル領域外では非常に吸収率が高い。したがって通常の場合、小型の装置は水冷式であり、このことは高いコスト、また煩雑な構造につながる。
【0009】
UV放射またはVIS放射のためのモジュール、すなわち放射源、反射器、また必要に応じてシャッタが収容されるケーシングは常に複数の構成要素から成るものであり、反射器およびシャッタの冷却のために通常は冷却水を必要とする。出力の非常に低いユニットしか空冷式に実施できない。この種のモジュールは例えばWO 2005/105448において従来技術として挙げられている。DE 20 2004 006 274 U1には、ハンドランプを非常に小型で簡単に構成することが如何に困難であるかが例示的に説明されている。つまり、そのような構成には外部反射器が選択されなければならない。非常に大きい寸法の空冷部を使用して放射器および反射器の過熱を阻止するために、ランプの出力は非常に低いものでしかない。このことから、システムは本来の光源の寸法に比べて比較的大きく寸法設計されており、またより多くの構成部材から構成されていることが推測される。
【0010】
さらには、長い寿命、したがってUV放射器のユーザにとっての高い有用性に関して、放射器および放射管のピンチ部の温度が重要になる。ピンチ部の温度は300℃を超えるべきではないが、放射管はそれよりも著しく高い温度を有する可能性があるので、より高い出力密度の放射器ではピンチ部を別個に冷却するための付加的な措置が必要となる。
【0011】
DE 33 05 173には、比較的複雑な流管を利用し、また出力密度の低いランプを使用する場合に、空気だけで冷却される装置をどのように設計することができるかが記載されている。出力密度とは出力と放電の長さとの比によって定義されるものである。
【0012】
上述のモジュールの構造は全て非常に複雑でコストが掛かるか、僅かな出力/装置体積での放射しか行うことができない。
【0013】
したがって本発明の課題は、放電ランプを用いてUV放射またはVIS放射を形成する簡単で小型なモジュールを提供することである。多数の構成要素が省略され、構造の大きさ、また製造および実装に関するコストなどが著しく低減されるべきである。
【0014】
この課題は、独立請求項の特徴部分に記載されている構成により解決される。
【0015】
有利な実施形態は各従属請求項に記載されている。
【0016】
基板を照射するUV放射を形成する本発明によるモジュールは、石英ガラスから成る反射器が組み込まれている放電ランプを有する放射装置を含み、また反射器が放電ランプ内に配置されている。
【0017】
したがって反射器が放電ランプ内に設けられているので、これにより放射をランプ自体によって配向させて放射することができる。反射器の位置および配向を、放射が実質的に所望の方向にのみ放出されるように適合させることができる。
【0018】
ランプ管を180°以上の範囲にわたり包囲している反射器が組み込まれているこの種の装置は、放電ランプが細長い場合にはその前面側においてほぼ2倍の放射量が生じる。裏面側では、コーティングされていない放射器もしくはコーティングされていない放電ランプに比べて、放射は25%以上低減される。放射出力はスペクトル領域全体にわたり積分されたものであると見なされる。
【0019】
放電ランプ内に反射器をこのように配置することによって、放射を放出するためにこの種の装置においては通常配置されている裏面側の放射器を省略することができるか、通常はその裏面側に配置されている水冷部を簡略化することができる。したがって、冷却を有利には対流によって簡単に行うことができ、また最終的には構造空間も縮小され、最小の小型モジュールに縮小することもできる。別の外部反射器が取り付けられる場合には、その取り付け個所における放射出力もやはり実質的に低くなる。
【0020】
本発明の有利な実施形態においては、反射器が不透明な石英ガラスから成るコーティング部を含む。この種のコーティングはUVCからFIRまで、すなわち200nm〜3000nmの波長領域の広帯域反射器の統合を実現し、また、放電により放射管から放出される全体の放射を効果的に配向させて放出させることができる。
【0021】
有利には、コーティングは合成石英ガラスを含有する。このような石英ガラスはUV吸収性が低いので殊に効果的なUV反射を達成する。
【0022】
UV生成系に関して、ソラリゼーション耐性のある石英ガラスを放射管にも不透明な反射器にも使用することが考えられる。
【0023】
不透明な石英ガラスから成るその種のコーティング部は層厚が十分であればUV、VIS、さらにはIRの範囲のほぼ全ての放射を反射する。しかしながら、ランプの動作時に熱くなるこの種の材料から成る反射器自体は約3000nm、殊に4500nmを上回る放射を放出するので、裏面側から放出される放射は約2500nmを上回るほぼ純粋な赤外線である。不透明な反射器は驚くべきことに、有用なフィルタとしても付加的に機能する。
【0024】
本発明の有利な実施形態においては、ランプとして水銀中圧放射器、またショートアーク型の水銀中圧放射器が使用される。しかしながら、本発明を低圧放射器または高圧放射器に対しても、さらには一般的に使用されている全てのUV放射器にも十分適用することができる。
【0025】
以下では、添付の図面を参照しながら有利な実施形態に基づき本発明を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】フィルタが設けられていない小型のモジュールを示す。
【図2】付加的なフィルタが設けられている放電ランプを示す。
【図3】光導波路に直接的に入力結合するための放射器を示す。
【0027】
図1は、放射器の受動的で対流的な冷却部を備えた本発明によるモジュールの長手方向の断面図を示す。モジュール内には、ピンチ部(11)および給電部(12)を備えたUV放射器(10)が配置されている。放射器には不透明な石英から成る反射器(13)が直接的に被着されている。放射器はケーシング(14)内に取り付けられており、このケーシング(14)は単に対流的な空気流によって冷却される。この実施例においてケーシング(14)は複数の領域に分割されている。中央領域(16)はシャフトとして実施されている。このシャフトはUV散乱放射を制限するために図面では薄板(15)によって覆われている。薄板(15)には、暖められて上昇した空気を流出するための開口部が打ち抜かれている。暖められた空気(15)を排出するための開口部は殊に簡単な実現形態として表されている。通常の進歩性の範囲において、空気を排出するための技術的な解決手段は、(有害な)UV放射をより多く遮蔽し、それと同時に良好な対流を実現することに見出される。
【0028】
したがって本発明は、薄板(15)を用いた簡単な構成に制限されるものではなく、シャフト(16)および散乱放射遮蔽部(15)のより複雑な実施形態、例えば、平坦もしくは折り曲げられたカバーも通常の発明的活動の範囲に含まれている。殊に大きなシャフトにおいて達成される可能な限り連続的で高速な対流を達成し、構造的に必要とされる散乱放射の放出を阻止し、またそれと同時に、構造の大きさを可能な限り小さく保つために、このような幾何学が生じる。仕切り(17)はピンチ部および給電部のシールに使用され、また別個に能動的に冷却される放射器の図示していない機械的な保持部としても使用される。
【0029】
図2には、放射器の能動的な対流式冷却部を備えた本発明によるモジュールが断面図で示されている。放射管(21)には不透明な石英から成る反射器(22)が取り付けられており、この反射器(22)はモジュールケーシング(24)に達する放射が可能な限り少なくなるようにするために180°よりも大きい範囲にわたり放射管(21)を包囲している。能動的な冷却に使用される送風機(23)が配置されている。吸気にも排気にも使用することができる軸流送風機が示されている。ラジアル送風機または圧縮機、空気供給器、すなわち空気流を能動的に形成する装置なども代替的な手段として使用することができる。この送風機は、放射管(21)を通り過ぎてシャフト(24)を通り窓(25)に向かって偏向され、流出開口部(27)を通りモジュールから再び排出される冷たい空気を供給することができるか、開口部(27)を介して空気を吸入する。窓(25)には付加的に機能層(26)が取り付けられており、この機能層(26)は付加的な反射層として放射の特定の部分のみを透過させることができる。しかしながら機能層(26)を省略してもよい。窓(25)は有利にはUV透過材料、例えば石英ガラスから構成されており、また反射器には複数の誘電性または金属性の層を被着させることができる。
【0030】
図示されている構造は本発明の原理を説明するものであると解するべきである。チャネルおよび送風機の他の配置構成も有効であり、本発明の範囲に含まれる。
【0031】
さらには、放射を高速に遮断するシャッタを窓の手前に取り付けることもできる。原理的には、そのようなディスク状のシャッタを、UV透過性のガラスから成り、内部に水が流れる中空体に置換することができ、そのような中空体はIRフィルタとして使用され、それと同時に非常に冷たい表面を有する。
【0032】
図3は、本発明による別の装置を示し、この装置においてはUV放射が放電ランプから直接的に光学窓に入力結合される。石英ガラスから成るランプボディ(41)は不透明な石英ガラスから成る反射性のコーティング部によってほぼ完全に包囲されている。ピンチ部(43)はガラスバルブ(41)に溶接されており、ピンチ部(43)にはモリブデンフィルム(45)が気密にシールされている。モリブデンフィルム(45)には電流を供給するための外部給電ピン(46)および内部電極(44)が溶接されている。バルブには石英ガラスから成るテーパ状の素子(47)が設けられており、この素子(47)内にランプバルブからの放射の大分部が放出され、またその放射は表面における全反射に基づきこの素子から離れることはできない。この素子は適切な結合素子を介して実際の光ファイバと接続されているが、これは図面には示されていない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
石英ガラスから成る反射器が組み込まれている放電ランプを有する放射装置を含む、基板を照射するためのUV放射を形成するモジュールにおいて、
前記反射器が放電ランプ内に配置されていることを特徴とする、モジュール。
【請求項2】
前記反射器は不透明な石英ガラスから成るコーティング部を含む、基板を照射するための請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記コーティング部は合成石英ガラスを包含する、請求項1または2のうちの少なくとも1項記載の装置。
【請求項4】
前記反射器は広帯域の反射器である、請求項1から3までのいずれか1項または複数項記載の装置。
【請求項5】
前記放電ランプはUVランプである、請求項1から4までのいずれか1項または複数項記載の装置。
【請求項6】
前記放電ランプは水銀中圧放射器である、請求項1から5までのいずれか1項または複数項記載の装置。
【請求項7】
前記放電ランプは低圧放射器である、請求項1から6までのいずれか1項または複数項記載の装置。
【請求項8】
前記放電ランプは高圧放射器である、請求項1から7までのいずれか1項または複数項記載の装置。
【請求項9】
放射モジュールの放電ランプ内に反射器に設ける、請求項1から8に記載のモジュールの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2011−524616(P2011−524616A)
【公表日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−513937(P2011−513937)
【出願日】平成21年6月15日(2009.6.15)
【国際出願番号】PCT/EP2009/004296
【国際公開番号】WO2010/003511
【国際公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【出願人】(593129320)ヘレーウス ノーブルライト ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (11)
【氏名又は名称原語表記】Heraeus Noblelight GmbH
【住所又は居所原語表記】Heraeusstrasse 12−14, Hanau, Germany
【Fターム(参考)】