説明

小型ライトの防水構造及び小型ライト

【課題】防水性に極めて優れる小型ライトの防水構造及び当該防水構造を採用した小型ライトの提供を目的とする。
【解決手段】本発明は、開口を有するケーシングと、この開口に配設される別体部とを備える小型ライトにおけるケーシング及び別体部の隙間を防水するための構造であって、上記別体部外面及びケーシングの表壁及び側壁を被覆する内側カバーと、上記開口以外のケーシング外面を被覆する外側カバーとを備え、この内側カバー及び外側カバーが同質のエラストマー材料から形成されていることを特徴とする小型ライトの防水構造及び上記防水構造を備える小型ライトである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小型ライトの防水構造及びこの防水構造を有する小型ライトに関するものである。
【背景技術】
【0002】
内蔵電池により発光する携帯用ライトは、今日では、懐中電灯以外にも、自転車等のヘッドランプとして使用されたり、トレッキング、登山、ダイビングなどのレジャーにおける照明及び相互位置確認用に使用されている。このように、携帯用ライトは雨天時など水に触れやすい環境で使用されるため、携帯性、装着性、スイッチ操作性だけではなく、優れた防水性を有することが要求されている。
【0003】
従来の一般的な携帯用ライトとしては、非常に小型で高輝度のLED(発光ダイオード;Light Emitting Diode)を光源として用い、発光部や電池収納部を小型化することにより、全体としてコンパクト化及び軽量化された携帯用ライトが提供されている(例えば特許文献1等参照)。
【0004】
かかるLEDを用いた携帯用ライトは、一般的には、(a)透明な前端部及び後部が螺合してなる円筒状のケーシングと、(b)ケーシング内の前端部付近に配設されるLEDと、(c)ケーシング内に収納される電池と、(d)LED及び電池を電気的に接続可能に構成する電気的回路と、(e)ケーシング側面に配設され、電気的回路を断続するためのスイッチとを備えている。
【0005】
しかし、上記従来の携帯用ライトは、充分な防水対策が施されていないものが多く、防水対策が施されている場合でもその防水性は十分ではない。このような従来の携帯用ライトの防水構造としては、例えば、ライト以外の部材の接続部分の隙間を防水カバーで覆ったものや(例えば特許文献1等参照)、部材の接続部分の隙間にパテ材やゴム材等からなる防水パッキンを設置したもの(例えば特許文献2等参照)等が提供されているが、いずれも水に触れる環境下での長期間の使用に耐え得るものではない。このように自転車等のヘッドランプやダイビング等の水に曝される環境下で長期間使用する場合においても、ライト内部に浸水することのない優れた防水性を有する防水構造が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−266630号公報
【特許文献2】特開2003−308724号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明はこれらの不都合に鑑みてなされたものであり、コンパクト性、軽量性及び高輝度性を維持しつつ、構造が簡易で優れた防水性を有する小型ライトの防水構造及びこの防水構造を有する小型ライトの提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するためになされた発明は、
開口を有するケーシングと、この開口に配設される別体部とを備える小型ライトにおけるケーシング及び別体部の隙間を防水するための構造であって、
上記別体部外面とケーシングの表壁及び側壁とを被覆する内側カバーと、
上記開口以外のケーシング外面を被覆する外側カバーと
を備え、
この内側カバー及び外側カバーが同質のエラストマー材料から形成されていることを特徴とする小型ライトの防水構造である。
【0009】
当該小型ライトの防水構造は、内側カバー及び外側カバーを備えており、内側カバーは別体部外面とケーシングの表壁及び側壁とを一体的に被覆し、外側カバーは開口以外のケーシング外面を内側カバーの外側から更に被覆している。このように、内側カバーが別体部とケーシングの間に生じる隙間を一体的に被覆することにより、極めて優れた防水性を発揮する。また、当該小型ライトの防水構造は構造が簡易であり、部材の繋ぎ目やスイッチ部分に対してOリング等の防水部材を用いることなく浸水を防止することができるため低コストで優れた防水性を発揮することができる。
【0010】
また、当該小型ライトの防水構造において、上記内側カバー及び外側カバーは同質のエラストマー材料から形成されている。エラストマー材料は柔軟で伸縮性を有するため、内側カバー及び外側カバーは内包する部材の形状に沿って変形して密着し、部材の間に生じる隙間を効果的に封止することができる。また、内側カバー及び外側カバーが同質のエラストマー材料で形成されていることにより、内側カバー及び外側カバーは互いにぴったりと密着し合い、当該小型ライトの防水性をより促進させている。
【0011】
さらに、上述のエラストマー材料は薄く延伸することにより透過性を有するため、内側カバーが光源(LED)を被覆しても光量の低減が抑制され、ライトとして充分な光を透過させることができる。このように、当該小型ライトの防水構造は、光の利用効率が非常に優れており、当該小型ライトの防水構造を採用した小型ライトに優れた防水性だけでなく充分な輝度を付与することができる。
【0012】
上記内側カバーと外側カバーとが真空接着状態で重ね合わされているとよい。このように、内側カバーと外側カバーとをこれら二つの部材間に空気や水等が入らないように、いわゆる実質的に真空状態となるように密着して重ね合わせることにより、当該小型ライトの防水構造の防水性を更に促進することができる。
【0013】
上記エラストマー材料としてはシリコーンゴム(シリコーン樹脂を含む)が好ましい。かかるシリコーンゴムは、可塑性、柔軟性、変形性、シーリング性能、耐熱性、耐候性等が良好であることから内側カバー及び外側カバーの形成材料としてシリコーンゴムを用いることにより、被覆する部材の形状に合わせて柔軟に変形し、当該小型ライトの防水構造において良好な真空接着状態を形成することができる。その結果、当該防水構造の防水性が促進され、当該防水構造を採用する小型ライトの耐熱性、耐候性等も促進することができる。
【0014】
また、上記課題を解決するためになされた別の発明は、
表面中央部に円形の開口を有する扁平な有底円筒状のケーシングと、
ケーシング内の底部側に収納される扁平形状の電池と、
ケーシング内の電池の表面側に配設収納され、LED、このLEDの点滅状態を制御する制御部及びこの制御部によるLEDの点滅状態を切り替える押圧スイッチを表面側に搭載する円板状の回路基板と、
LEDを覆う透明なドーム部及びそのドーム部の底部開口から外側に延出する円環状のフランジ部を有し、フランジ部がケーシング内の回路基板の表面側に配設され、ドーム部がケーシングの開口から突出するよう収納されるLEDカバーと、
請求項1、請求項2又は請求項3に記載の防水構造とを備えており、
上記押圧スイッチがLEDカバーのフランジ部に当接するよう回路基板の外周部に配設され、
上記防水構造の別体部がLEDカバーのドーム部とされ、ケーシングとLEDカバーのドーム部との隙間を防水するよう構成されている小型ライトである。
【0015】
当該小型ライトは上述の防水構造を備えているため極めて防水性に優れている。そのため、自転車等のヘッドランプや、トレッキング、登山、ダイビングなどの水に触れやすい環境下において長期間好適に使用することができる。
【0016】
上記内側カバーにおけるLEDカバーのドーム部の被覆厚さが、0.1mm以上1mm以下であるとよい。内側カバーの厚さをこのように設定することにより、内側カバーとしての充分な耐久性及び防水性を備えるだけでなく、内側カバーによる光量の低減を最小限とすることができ、小型ライトとしての充分な輝度を保持することができる。
【0017】
上記外側カバーが、左右に延出する環状の一対の取付片を有するとよい。この外側カバーはエラストマー材料から形成されているため、軟質で、柔軟性及び伸縮性を有する。よって、外側カバーが左右に延出する環状の一対の取付片を有することにより、付属の係合片を用いることで当該小型ライトを自転車、バイク等のハンドル部分に巻き付けて係止させたり、杖、指・腕等の身体等に取り付けたりすることが可能となり、径及び形状の異なる種々の目的箇所に容易かつ簡便に当該小型ライトを装着することができる。
【0018】
ここで、上記「真空接着状態」とは、例えば内側カバーと外側カバーとの間等、異なる部材の間に空気や水等が入らないように部材同士が互いにぴったりと密着して重ね合わされている状態を意味する。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように、本発明の小型ライトの防水構造は、複雑な部品や構造を必要とすることなく、内側カバー及び外側カバーの材質及び形状を組み合わせることにより非常に優れた防水性を発揮することができる。また、本発明の小型ライトは、携帯性、装着性、スイッチ操作性に優れているだけでなく、上述の防水構造を採用することにより極めて優れた防水性を有している。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態に係る小型ライトを示す模式的分解斜視図
【図2】図1の小型ライトの組み立てた状態を示す模式的斜視図
【図3】図1の小型ライトを組み立てた状態の内側カバー及び外側カバー部分を示す模式的部分断面図
【図4】図1の小型ライトを円柱に取り付けた状態を示す模式的斜視図
【図5】図1の小型ライトの回路基板を示す模式的平面図
【図6】図1の小型ライトの回路基板及びLEDカバー部分の模式的中央縦断面図
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、適宜図面を参照しつつ本発明の実施の形態を詳説する。
【0022】
図1の小型ライトは、ケーシング1、電池2、回路基板3、LEDカバー4、内側カバー5及び外側カバー6を主に備えている。また、図1の小型ライトは、ケーシング1、LEDカバー4、内側カバー5及び外側カバー6で構成される防水構造を備えており、LEDカバー4が別体部に相当する。
【0023】
ケーシング1は表面中央部に円形の開口7を有する扁平な有底円筒状のものである。このケーシング1は、ケーシング本体1aとケーシング蓋部1bとを有している。ケーシング本体1aは、扁平な円筒体であり、下端が開口し、中央部に開口7を有する表壁8を有している。つまり、ケーシング本体1aは、表面側にフランジ状かつ円環状の表壁8及び円筒状の側壁9を有する円筒体である。一方、ケーシング蓋部1bは、ケーシング本体1aと略同径の極扁平な有底円筒体である。このケーシング本体1aの側壁9外面の下端近傍には、周方向の溝部10が形成され、ケーシング蓋部1bの側壁内面の上端には周方向の凸条部11が形成されており、この溝部10に凸条部11が嵌合するよう構成されている。この溝部10及び凸条部11からなる係合構造によりケーシング本体1aとケーシング蓋部1bとの着脱が可能になる。また、ケーシング蓋部1bの側壁の一部にはケーシング本体1aに係合したケーシング蓋部1bの取り外しを容易にするための切り欠き部12が形成されている。
【0024】
ケーシング1の形成材料としては、特に限定されるものではなく、例えば合成樹脂、金属材料、木材等が用いられるが、軽量化の観点からは合成樹脂が好ましい。このケーシング1に用いられる合成樹脂としては、例えば(a)フェノール樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂等の熱硬化性樹脂、(b)ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ABS樹脂等の汎用熱可塑性樹脂、(c)ナイロン(ポリアミド)、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のエンジニアリングプラスチック、(d)ポリフェニレンオキシド、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアミドイミド、ポリイミド、フッ素樹脂等の特殊エンジニアリングプラスチックなどが挙げられる。中でも、ケーシング本体1aの形成材料としては、耐候性が高いポリ塩化ビニル、強度及び耐久性に優れるABS樹脂やエンジニアリングプラスチックが好ましい。ケーシング蓋部1bの形成材料としては、比較的柔軟性を有し、着脱が容易になるポリプロピレンが好ましい。なお、ケーシング1に用いられる金属材料としては、例えばアルミニウム合金、銅合金、鉄、鋼、ステンレス鋼等が挙げられる。
【0025】
電池2は、扁平形状のものが使用される。この電池2としては、厚みが小さいボタン型電池又はコイン型電池が好ましく、ケーシング1ひいては当該小型ライトの小型軽量化に大きく寄与する。このように電池2として、扁平形状のボタン型電池又はコイン型電池を使用しても、光源として使用されるLED14は消費電力が小さいため、当該小型ライトを十分に作動させることができる。また電池2は、ケーシング本体1aからケーシング蓋部1bを取り外すことで交換可能になっている。
【0026】
当該小型ライトにおいては、2個の電池2が重ねて直列に用いられており、プラス側を底面に向けてケーシング1の底部側に収納されている。この底部側の電池2とケーシング1(ケーシング蓋部1b)の底面との間には、電池2を回路基板3裏面の電池接点に押圧する目的及び電池2のケーシング1への衝撃を緩和する目的のために円板状の弾性体13が配設されている。この弾性体13の形成材料としては、弾性を有するものであれば特に限定されず、例えば発砲ポリウレタン等が採用される。
【0027】
回路基板3は、円板状のものでありケーシング1内の電池2(表面側の電池2)の直上に配設収納されている。この回路基板3の表面側には、図5に示すように、電池2に電通する電気回路(図示せず)、LED14、制御部15、押圧スイッチ16などが主に搭載されている。また、回路基板3上には、その他に必要に応じてコンデンサー、抵抗等が組み込まれる。なお、回路基板3の外縁部には、略等角度間隔で半円状の凹部22が形成されており、ケーシング1(ケーシング本体1a)の内面に略等角度間隔で形成される凸部(図示しない)と嵌合し、ケーシング1内で回路基板3が回転しないように構成されている。
【0028】
LED14は、回路基板3の中央部に突設されており、電気回路に電通されている。このLED14は、回路基板3上の中央部に突設される円筒状のLED支架17に下方の周囲が包囲され、保護及び支持されている。このLED14の種類は、特に限定されるものではないが、高輝度の白色光を出射するものが好ましく、その他の赤色、青色等の光線を出射するものも適宜採用される。
【0029】
制御部15は、LED14の点滅状態(例えば、点灯、消灯、所定の点滅パターン等)を制御するものであり、電気回路に電通されている。制御部15の具体的構造としては、上記LED14の点滅状態を制御できれば特に限定されず、例えばIC等からなり、防水等のために表面がゴム等で被覆されている。
【0030】
押圧スイッチ16は、押圧によって制御部15によるLED14の点滅状態を切り替えるものであり、電気回路に電通されている。当該小型ライトは、2個の押圧スイッチ16を回路基板3の外周部にかつ略等角度間隔に(つまり、180°対偶する位置)配設されている。このよう、2個の押圧スイッチ16を回路基板3の外周部に略等角度間隔に配設することで、後述するように点滅状態の切り替えのためにLEDカバー4をケーシング1の軸方向に押圧する際に、少し斜めに押圧してもスイッチングが可能になり、スイッチ操作性がさらに促進される。なお、複数の押圧スイッチ16を設ける場合、制御部15による点滅状態の切り替えは、いずれかの押圧スイッチ16による最初の信号で切り替え、最初の信号から所定時間内の次の信号は無視する等の制御を行うとよい。
【0031】
押圧スイッチ16の具体的構造は、図6に示すように、中央接点18、周辺接点19及びクリックバネ20を主に有している。この中央接点18は、回路基板3上に形成されており、電気回路に電通されている。周辺接点19は、中央接点18から離間して略同一円周軌道上に形成されており、電気回路に電通されている。クリックバネ20は、導電性を有する弾性金属板からなり、略円形のドーム状(皿状)に形成されており、押圧により反転するよう構成されている。このクリックバネ20は、その外縁部が周辺接点19上に乗るよう配設されている。かかる構造の押圧スイッチ16は、クリックバネ20の中央を押圧するとクリックバネ20が反転してクリック感覚を生じると同時にクリックバネ20の中央下面が中央接点18に当接し、中央接点18と周辺接点19がクリックバネ20を介して導通状態(オン)となる。一方、クリックバネ20への押圧を解除すると、クリック感覚を生じながらクリックバネ20は元の形状に自動復帰し、中央接点18と周辺接点19間は非導通状態(オフ)となる。かかる構造の押圧スイッチ16を用いることで、LEDカバー4を軽くタッチすることでスイッチングが可能になり、かつスイッチングにクリック感覚が付与され、その結果、スイッチ操作性がさらに促進される。
【0032】
押圧スイッチ16のクリックバネ20は、その中央部に部分球面状の凹部21を有している。一方、後述するLEDカバー4のフランジ部25は、その裏面のうちクリックバネ20の凹部21に合致する位置に凸部26を有している。このようにクリックバネ20の中央部に凹部21を有し、LEDカバー4のフランジ部25裏面に凹部21と嵌合する凸部26を有することで、LEDカバー4の押圧によるスイッチングがさらに簡易かつ確実になり、加えてクリックバネ20の裏面側に形成される凸部によって中央接点との良好な接触状態が確保される結果、スイッチング操作性がさらに促進される。
【0033】
一方、回路基板3の裏面側には、電池2の一方の電極(マイナス)と接触する電池接点が設けられている。さらに、回路基板3には、その側方から下方に延出して電池2の他方の電極(プラス)に接触する電池接触片23が設けられている。この電池接点及び電池接触片23は、電気回路に電通されている。
【0034】
LEDカバー4は、LED14を覆う透明な半球状のドーム部24と、そのドーム部24の底部開口から外側に延出する円環状のフランジ部25とを有している。このLEDカバー4は、そのフランジ部25がケーシング1内の回路基板3上に配設され、そのドーム部24がケーシング1の開口7から突出するよう収納されている。また、LEDカバー4のドーム部24は、その先端部にLED14から発せられる光線を集光するための凸レンズ部27が一体成形されている。さらに、上述のようにLEDカバー4のフランジ部25は、その裏面のうちクリックバネ20の凹部21に合致する位置に凸部26が一体成形されている。なお、LEDカバー4のフランジ部25の外縁部には、略等角度間隔で半円状の凹部28が形成されており、ケーシング1(ケーシング本体1a)の内面に略等角度間隔で形成される凸部(図示せず)と嵌合し、ケーシング1内でLEDカバー4が回転しないよう構成されている。
【0035】
LEDカバー4の形成材料としては、透明なガラス又は合成樹脂が用いられ、軽量化の観点からは合成樹脂が好ましい。LEDカバー4の形成材料として用いられる合成樹脂としては、例えばアクリル樹脂、アクリロニトリル樹脂、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリアミド等が挙げられ、中でも透明性が高いアクリル樹脂が好ましく、ポリメチルメタクリレート(PMMA)が特に好ましい。
【0036】
内側カバー5は、ドーム状の突出部分29とその突出部分29の底部開口から下方に延出する表壁30及び円筒部分31とを有している。この内側カバー5は、その突出部分29がケーシング1の開口7から突出するLEDカバー4のドーム部24の外面を覆うように、また表壁30及び円筒部分31がケーシング1の表壁8及び側壁9をそれぞれ覆うように配設される。
【0037】
内側カバー5の突出部分29は、光源となるLED14を格納するLEDカバー4のドーム部24の外面を被覆するように配設されるため、その厚さはできる限り薄い方が好ましい。具体的には、LEDカバー4のドーム部24の被覆厚さとなる突出部分29の厚さの下限としては、0.1mmが好ましく、0.2mmがより好ましく、0.3mmがさらに好ましい。一方、上記突出部分29の厚さの上限としては、1mmが好ましく、0.8mmがより好ましく、0.5mmがさらに好ましい。突出部分29の厚さをこのように設定することにより、内側カバー5としての充分な強度及び耐久性を保持しつつ、光量の減少を最小限にすることができ、その結果、光源からの光を効率よく透過させ利用することができる。また、円筒部分31の厚さは突出部分29の厚さと同じでも異なってもよく、円筒部分31の方が突出部分29よりも厚い方が好ましい。円筒部分31の厚さの下限としては、0.1mmが好ましく、0.3mmがより好ましく、0.5mmがさらに好ましい。一方、上記円筒部分31の厚さの上限としては、2mmが好ましく、1.8mmがより好ましく、1.5mmがさらに好ましい。円筒部分31の厚さをこのように設定することにより、円筒部分31の有する弾力性によって内側カバー5と後述する外側カバー6とが互いに密着・弾圧し合い、当該小型ライトの防水性をより促進することができる。
【0038】
外側カバー6は、防水部32と一対の取付片33とを有している。この防水部32は、表面中央部に円形の開口34を有する扁平な有底円筒体であり、上記内側カバー5の表壁30及び円筒部分31の外側を一体的に被覆するように配設される。一対の取付片33は対称なリング状に形成されており、防水部32の底部から左右両側に延出している。
【0039】
外側カバー6の防水部32の底部35は、その他の部分(例えば側壁、前壁等)より厚く形成されている。このように防水部32の底部を他の部分より厚く形成することで、当該小型ライトをハンドル等に取り付ける際に一対の取付片33を引っ張っても、防水部32が湾曲して防水性が低下することを防止することができる。この防水部32の底部35の平均厚さは、その他の部分の平均厚さの2倍〜4倍程度が好ましい。この程度の厚さの差を設けることで、上述の防水部32の湾曲による防水性の低下を効果的に防止することができる。
【0040】
内側カバー5及び外側カバー6は、同質のエラストマー材料から形成されている。このようなエラストマー材料としては、ゴム又は熱可塑性エラストマーが用いられる。このゴムとしては、例えば、天然ゴム、ポリイソプレン、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、ポリクロロプレン、イソブチレン−イソプレン共重合体、シリコーンゴム等が用いられる。また、熱可塑性エラストマーとしては、例えば、スチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、エステル系熱可塑性エラストマー、ウレタン系熱可塑性エラストマー、アミド系熱可塑性エラストマー、フッ素系熱可塑性エラストマー等が用いられる。中でも、内側カバー5及び外側カバー6を形成するエラストマー材料としては、シリコーンゴム(シリコーン樹脂を含む)が好ましい。かかるシリコーンゴムは、密着性、変形性、シーリング性能、耐熱性、耐候性等が良好であることから、このように内側カバー5及び外側カバー6の形成材料としてシリコーンゴムを用いることにより、内側カバー5及び外側カバー6が内包する部材の形状に合わせて柔軟に変形し、当該小型ライトの防水性が飛躍的に向上し、加えて耐候性、耐熱性等も促進される。
【0041】
また、内側カバー5及び外側カバー6は、両者の接着面が真空接着状態となるように重ね合わされていることが好ましい。このように、内側カバー5と外側カバー6の間に空気や水等の異物が介在しないように、すなわち内側カバー5と外側カバー6との間が実質的な真空状態となるように両部材を重ね合わせて密着させることにより、内側カバー5と外側カバー6との間からの水分の侵入を防止し、結果として、ケーシング1とLEDカバー4のドーム部24との間に生じる隙間からの水分の侵入をより効果的に防止することができる。
【0042】
上記構成要素を備える当該小型ライトは、ケーシング本体1aの底部開口からLEDカバー4、回路基板3、2個の電池2及び弾性体13をこの順に挿入し、ケーシング本体1aの底部開口にケーシング蓋部1bを嵌め込んだ後、内側カバー5の突出部分29がケーシング本体1aの開口7から突出したLEDカバー4のドーム部24外面を、また表壁30及び円筒部分31がケーシング1の表壁8及び側壁9をそれぞれ覆うように内側カバー5を配設し、更に、外側カバー6の防水部32が内側カバー5の表壁30及び円筒部分31を一体的に覆うように外側カバー6を内側カバー5の外側に配設する。このように上記構成要素を組み立てることで図2に示すような完成体となる。
【0043】
なお、当該小型ライトは装着対象Xへ装着するために、上記外側カバー6の一対の取付片33に加えて係合片36を備えている。この係合片36は、断面がS字形状に湾曲した板状体であり、両湾曲部に一対の取付片33が掛けられるよう構成されている。また、係合片36の形成材料としては、特に限定されず、例えばポリアミド等の合成樹脂が好ましい。
【0044】
当該小型ライトの装着方法としては、図4に示すように、柔軟性及び伸縮性を有する外側カバー6の一対の取付片33を引っ張って円柱等の装着対象Xに捲回し、係合片36に掛合させることで、容易かつ確実に装着対象Xに装着することができる。そのため、当該小型ライトは、二輪車のハンドル、杖、指・腕等の身体などの径及び形状の異なる種々の箇所に容易かつ確実に装着することができる。
【0045】
また、当該小型ライトは、一対の押圧スイッチ16がLEDカバー4のフランジ部25(特にフランジ部25裏面の凸部26)に当接するよう回路基板3の外周部に搭載されていることから、正面に突出しているLEDカバー4をケーシング1の軸方向に押圧することで点滅状態の切り替えができ、非常に高いスイッチ操作性を有している。特に、自転車等の二輪車のハンドルや杖等に照明用として取り付けている場合、従来の携帯用ライトのようにボディの側面にあるスイッチをスライド等させる必要はなく、正面のLEDカバー4を手でた叩くことで点滅状態の切り替えが可能になり、スイッチの操作が非常に簡易かつ確実になる。
【0046】
また、当該小型ライトは、上述のようにスイッチをLEDカバー4で代用し、従来の携帯用ライトのような個別のスイッチを省略したことや、コイン型電池等の扁平形状の電池2を採用したこと、及びケーシング1から突出させたLEDカバー4にLED14を収納するよう構成したことから、照明装置である本体部分が非常にコンパクトになり、全体として小型軽量化及び携帯性が格段に向上されている。
【0047】
さらに、当該小型ライトは小型軽量化及び携帯性が格段に向上されているだけでなく、優れた防水構造を備えている。当該小型ライトの防水構造は、内側カバー5及び外側カバー6を備えている。図3に示すように、当該小型ライトの防水構造における別体部はLEDカバー4のドーム部24とされ、内側カバー5はLEDカバー4のドーム部24外面(図示せず)とケーシング1の表壁8(図示せず)及び側壁9(図示せず)とを一体的に被覆し、この内側カバー5の上からケーシング1の表壁8及び側壁9部分を更に被覆するように外側カバー6が配設されている。内側カバー5の円筒部分31の長さは特に限定されないが、ケーシング1の側壁9をより広く被覆できるように設定する方が好ましく、ケーシング1の側壁9を裾まで被覆するように設定することがより好ましい。このようにケーシング1の側壁9をより広く被覆することにより、内側カバー5と外側カバー6との接触面積が広くなり、内側カバー5と外側カバー6との間からの水分の侵入をより効果的に防止することができる。
【0048】
当該小型ライトの防水構造において、内側カバー5及び外側カバー6は同質のエラストマー材料から形成されている。エラストマー素材は柔軟で伸縮性を有するため、内側カバー5及び外側カバー6を互いを重ね合わせた場合、両部材は内包する部材の形状に沿って変形・密着し、部材間に生じる隙間を効果的に封止することができる。このように両部材の接着面がいわゆる真空接着状態となることで、内側カバー5と外側カバー6との間に生じる隙間からの浸水をより効果的に防止することができ、結果として、ケーシング1と別体部との間に生じる隙間からの浸水をより効果的に防止することができる。また、当該小型ライトの防水構造はこのように構造が簡易であり、Oリング等の特別な防水措置を施す必要がないため、低コストで大量に製造することができる。
【0049】
なお、本発明の小型ライトの防水構造は上記実施形態に限定されるものではない。例えばケーシングの開口に配設される別体部は、上記LEDカバーのドーム部分に限定されるものではなく、ケーシングの開口面と略同一平面に納まるスイッチボタン等でも可能である。また、電池の個数は、上記2個に限定されず、1個又は3個以上でも可能である。また、ケーシングにおけるケーシング本体とケーシング蓋部との結合手段は、上記凹凸嵌合構造に限定されず、例えば螺合等の手段でもよい。LEDは、回路基板上に複数配設されてもよい。押圧スイッチの構造は、押圧によりスイッチングが可能なものであれば特に限定されず、例えば弾発バネを用いたもの等が適宜採用される。また、押圧スイッチの個数は、上記2個に限定されるものではなく、1個又は3個以上でも可能である。3個以上の押圧スイッチを回路基板の外周部に略等角度間隔に配設することで、スイッチングの容易性及び確実性がさらに向上する。
【産業上の利用可能性】
【0050】
以上のように、本発明の小型ライトの防水構造は構造が簡易であり、極めて高い防水性を有する。また、当該防水構造を採用した小型ライトは、コンパクト化、構造の簡易化、軽量化、外面のシール化、携帯性、装着性及びスイッチ操作性が促進されているだけでなく、上記防水構造を採用していることにより防水性に極めて優れている。これにより、防水性が要求される携帯用の照明装置として有用であり、特に自転車等のヘッドランプや、トレッキング、登山、ダイビングなどの水に触れやすい環境下において好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0051】
1 ケーシング
1a ケーシング本体
1b ケーシング蓋部
2 電池
3 回路基板
4 LEDカバー
5 内側カバー
6 外側カバー
7 開口
8 表壁
9 側壁
10 溝部
11 凸条部
12 切り欠き部
13 弾性体
14 LED
15 制御部
16 押圧スイッチ
17 支架
18 中央接点
19 周辺接点
20 クリックバネ
21 凹部
22 凹部
23 電池接触片
24 ドーム部
25 フランジ部
26 凸部
27 凸レンズ部
28 凹部
29 突出部分
30 表壁
31 円筒部分
32 防水部
33 取付片
34 開口
35 底部
36 係合片
X 装着対象

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口を有するケーシングと、この開口に配設される別体部とを備える小型ライトにおけるケーシング及び別体部の隙間を防水するための構造であって、
上記別体部外面とケーシングの表壁及び側壁とを被覆する内側カバーと、
上記開口以外のケーシング外面を被覆する外側カバーと
を備え、
この内側カバー及び外側カバーが同質のエラストマー材料から形成されていることを特徴とする小型ライトの防水構造。
【請求項2】
上記内側カバーと外側カバーとが真空接着状態で重ね合わされている請求項1に記載の小型ライトの防水構造。
【請求項3】
上記エラストマー材料が、シリコーンゴムである請求項1又は請求項2に記載の小型ライトの防水構造。
【請求項4】
表面中央部に円形の開口を有する扁平な有底円筒状のケーシングと、
ケーシング内の底部側に収納される扁平形状の電池と、
ケーシング内の電池の表面側に配設収納され、LED、このLEDの点滅状態を制御する制御部及びこの制御部によるLEDの点滅状態を切り替える押圧スイッチを表面側に搭載する円板状の回路基板と、
LEDを覆う透明なドーム部及びそのドーム部の底部開口から外側に延出する円環状のフランジ部を有し、フランジ部がケーシング内の回路基板の表面側に配設され、ドーム部がケーシングの開口から突出するよう収納されるLEDカバーと、
請求項1、請求項2又は請求項3に記載の防水構造とを備えており、
上記押圧スイッチがLEDカバーのフランジ部に当接するよう回路基板の外周部に配設され、
上記防水構造の別体部がLEDカバーのドーム部とされ、ケーシングとLEDカバーのドーム部との隙間を防水するよう構成されている小型ライト。
【請求項5】
上記内側カバーにおけるLEDカバーのドーム部の被覆厚さが、0.1mm以上1mm以下である請求項4に記載の小型ライト。
【請求項6】
上記外側カバーが、左右に延出する環状の一対の取付片を有する請求項4又は請求項5に記載の小型ライト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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