説明

小型舟同士の連結装置

【課題】小型引き舟と小型被曳舟とを一直線状となす連結装置を提供する。
【解決手段】小型舟同士の連結装置は、小型引き舟の後部に配置せられる先端2aが高く後端2bが低い傾斜上面2を有する上方突出軸3付き固定円柱台4と、円柱台4に嵌め被せられ、円柱台4の上面に重ねられる傾斜上底面5を有する下向き凹所6、下向き凹所6の上方に隔壁7を介して形成せられたばね収容室8、上方突出軸3に嵌められた隔壁7の貫通孔9およびばね収容室8後方の前拡大部10a付き縦溝10を有する水平方向揺動自在な可動体11と、上方突出軸3上端のばね受板12と、ばね受板12とばね収容室8の底13との間の可動体押圧用コイルばね14と、拡大部10aに入れられる抜け止め15付き縦溝嵌入水平棒状突出部16を先端に有しかつ後端が後続小型被曳舟(B)の前部に固定せられる連結部材17とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小型舟同士の連結装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の小型舟同士の連結装置(30)は、図5および図6に示すように、小型引き舟(A)の後部に設けられかつ上端に球状部(31)を有する直立柱(32)と、前端に球状部(31)に上から嵌め被せられる下向き椀状部(33)を有する横断面逆U形の水平部材(34)と、水平部材(34)内の先端寄りに配置せられ、後端部がピン(35)で水平部材(34)の両側壁に上下揺動自在に取付けられた横断面逆U形でかつ球状部(31)後面中程から若干下方に至る球面にそう凹球面状前壁(36)を有する揺動自在な球状部当接片(37)と、球状部当接片(37)の上壁を小径部が貫通してその内面に下端に設けられた円盤部(38)が引掛けられかつ小径部から上にのび水平部材(34)を貫通してこれより上方に突出している垂直棒(39)と、横断面逆U形でかつ垂直前壁(40)を有しかつ前部下縁が凹弧状でその前後が小さな凸円弧状となされ、後凸円弧部より後方が緩やかな凹円弧状となされており、垂直棒(39)の上端が両側壁間で前壁(40)に近く前部下縁から相対的に遠い位置にあるピン(41)で止められ、ピン(41)を支点として垂直と水平姿勢をとりうるように揺動自在となされた操作片(42)と、垂直棒(39)に嵌められかつ球状部当接片(37)と水平部材(34)の上壁間に配されたコイルばね(43)と、横断面逆U形の水平部材(34)内に嵌入れられてこれの両側壁に固定せられている前水平部(44)、前水平部(44)から斜め下後方に伸びた中間傾斜部(45)およびを後続小型被曳舟(B)の前部に固定せられる後水平部(46)を有する角管状連結部材(47)とよりなるものである。小型被曳舟(B)が複数艘存在する場合は、先行小型被曳舟(B)の後部に上端に球状部(31)を有する直立柱(32)が設けられている。
【0003】
上記小型舟同士の連結装置(30)により小型引き舟(A)と小型被曳舟(B)を連結する場合には、予め角管状連結部材(47)の後水平部(46)を後続小型被曳舟(B)の前部に取付けておく。そして、角管状連結部材(47)の前水平部(46)に取付けられた水平部材(34)にある操作片(42)を図6の鎖線で示すように垂直にすると、その前壁(40)が水平になって水平部材(34)の上壁に圧接する。その結果、垂直棒(39)は降下してコイルばね(43)が伸びることにより球状部当接片(37)が鎖線で示すようにピン(35)を支点として前下斜め状態になる。この状態で小型引き舟(A)後部にある直立柱(32)上端の球状部(31)に水平部材(34)前端の下向き椀状部(33)を上から嵌め被る。その後、実線で示すように、操作片(42)を水平にすると、球状部当接片(37)がコイルばね(43)を水平部材(34)の上壁との間で圧縮しつつ引上げられ、それにともなって球状部当接片(34)の凹球面状前壁(36)が直立柱(32)上端の球状部(31)の後面後下寄り部分に当接し、球状部(31)をこれと水平部材(34)前端の下向き椀状部(33)とで挟む。このようにして、小型引き舟(A)と小型被曳舟(B)は連結せられる。先行小型被曳舟(B)と後行小型被曳舟(B)も同様にして連結せられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記連結装置を用いて連結せられた小型引き舟(A)と小型被曳舟(B)にはつぎのような問題があった。すなわち、図7で示すように、桟橋(C)に着岸する場合、先頭の小型引き舟(A)は桟橋(C)に横着けできても後続の複数の小型被曳舟(B)は、潮流や風などの影響で小型被曳舟(A)と平面視同方向に向かず、斜めになって横着けすることができないという問題があった。水上で停止したさいにも同じ理由で小型引き舟(A)と後続の小型被曳舟(B)が同方向に向かない場合があり、水上で作業するようなさいに不都合があった。それは、小型引き舟(A)の後部にある直立柱(32)上端の球状部(31)に小型被曳舟(B)に取付けられた連結部材(47)の前部に固定せられている水平部材(34)前端の下向き椀状部(33)を上から嵌め被せ、球状部(31)を球状部当接片(37)の凹球面状前壁(36)とで挟止めているので、小型被曳舟(B)に加わった外力により球状部(31)を球状部当接片(37)の凹球面状前壁(36)が滑るからである。複数の小型被曳舟(B)同士の連結にも同様のことが言える。
【0005】
本発明の目的は、潮流や風があっても小型引き舟と小型被曳舟とを平面視常に一直線状に並べ得る小型舟同士の連結装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明による小型舟同士の連結装置は、小型引き舟の後部または小型被曳舟が複数艘存在する場合小型被曳舟の後部に配置せられる先端が最も高く後端が最も低いかまたは後端が最も高く先端が最も低い傾斜上面を有しかつ中央に上方突出軸を有する固定円柱台と、円柱台に嵌め被せられかつ円柱台の上面に重ねられる傾斜上底面を有する下向き凹所、下向き凹所の上方に隔壁を介して形成せられたばね収容室、隔壁にあけられて上方突出軸に嵌められている貫通孔およびばね収容室の後方に形成せられて上方と後方に開口しかつ前拡大部付き縦溝を有する水平方向揺動自在な可動体と、上方突出軸の上端にこれから周囲に張出すように取付けられたばね受板と、上方突出軸の周囲でかつばね受板とばね収容室の底との間に介在された可動体押圧用コイルばねと、拡大部に入れられる抜け止め付き縦溝嵌入水平棒状突出部を先端に有しかつ後端が後続小型被曳舟の前部に固定せられる連結部材とを備えているものである。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1記載の小型舟同士の連結装置において、小型引き舟が水上オートバイであり、小型被曳舟が水難者救助舟、観覧舟、物資運搬舟または漁業舟であるものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明による小型舟同士の連結装置は、小型引き舟の後部または小型被曳舟が複数艘存在する場合小型被曳舟の後部に配置せられる先端が最も高く後端が最も低いかまたは後端が最も高く先端が最も低い傾斜上面を有しかつ中央に上方突出軸を有する固定円柱台と、円柱台に嵌め被せられかつ円柱台の上面に重ねられる傾斜上底面を有する下向き凹所、下向き凹所の上方に隔壁を介して形成せられたばね収容室、隔壁にあけられて上方突出軸に嵌められている貫通孔およびばね収容室の後方に形成せられて上方と後方に開口しかつ前拡大部付き縦溝を有する水平方向揺動自在な可動体と、上方突出軸の上端にこれから周囲に張出すように取付けられたばね受板と、上方突出軸の周囲でかつばね受板とばね収容室の底との間に介在された可動体押圧用コイルばねと、拡大部に入れられる抜け止め付き縦溝嵌入水平棒状突出部を先端に有しかつ後端が後続小型被曳舟の前部に固定せられる連結部材とを備えているから、この連結装置により連結せられた小型引き舟および小型被曳舟は、小型引き舟が左旋回または右旋回する場合、後端が後続小型被曳舟の前部に固定せられている連結部材の先端水平棒状突出部は、小型引き舟の水平方向揺動自在な可動体を傾斜上面付き固定円柱台上のコイルばねを上方突出軸の上端のばね受板とで圧縮しながら上方突出軸を中心として左または右に揺動させ、小型被曳舟を円滑に旋回せしめる。再び小型引き舟が直進した場合は、圧縮されたコイルばねの復元に伴なって可動体が元に戻り、連結部材を介して後続小型被曳舟は小型引き舟とともに平面視一直線状に並ぶ。したがって、両舟ともに並んで桟橋に着岸することができる。そして、可動体は、常時コイルばねで押圧されているので、潮流や風などでは小型被曳舟は小型引き舟と異なる方向に動くことはない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の連結装置を用いて連結せられた小型引き舟と小型被曳舟の平面図である。
【図2】図1のII−II線にそう拡大断面図である。
【図3】本発明の連結装置の分解斜視図である。
【図4】小型被曳舟が図1の鎖線の位置に動いたさいにおける図2相当の連結装置の断面図である。
【図5】従来の連結装置を用いて連結せられた小型引き舟後部と小型被曳舟前部の側面図である。
【図6】従来の連結装置の要部拡大垂直断面図である。
【図7】従来の連結装置を用いて連結せられた小型引き舟が桟橋に横着けされたさい、複数の後続の小型被曳舟が潮流や風などの影響で平面視小型引き舟と同方向に向かず、斜めになっている状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1ないし図4は、本発明の実施形態を示すもので、小型舟同士の連結装置(1)は、水上オートバイである小型引き舟(A)の後部に配置せられる先端(2a)が最も高く後端(2b)が最も低い傾斜上面(2)を有しかつ中央に上方突出軸(3)を有する固定円柱台(4)と、円柱台(4)に嵌め被せられかつ円柱台(4)の上面に重ねられる傾斜上底面(5)を有する下向き凹所(6)、下向き凹所(6)の上方に隔壁(7)を介して形成せられたばね収容室(8)、隔壁(7)にあけられて上方突出軸(3)に嵌められている円形貫通孔(9)およびばね収容室(8)の後方に形成せられて上方と後方に開口しかつ前拡大部(10a)付き縦溝(10)を有する水平方向揺動自在な可動体(11)と、上方突出軸(3)の上端にこれから周囲に張出すように取付けられたばね受板(12)と、上方突出軸(3)の周囲でかつばね受板(12)とばね収容室(8)の底(13)との間に介在された可動体押圧用コイルばね(14)と、拡大部(10a)に入れられる抜け止め(15)付き縦溝嵌入水平棒状突出部(16)を先端に有しかつ後端が後続小型被曳舟(B)の前部に固定せられる連結部材(17)とを備えているものである。固定円柱台(4)は、小型引き舟(A)の後部に取付けられる長方形の平板状取付板(18)に設けられている。ばね収容室(8)には、着脱自在な蓋(19)が施されている。縦溝嵌入水平棒状突出部(16)は横断面円形でその先端の抜け止め(15)はこれより径の大きい球状である、それにともない縦溝(10)の上端は球状抜け止め(15)を入れ易いように、漏斗状に拡がっている。ばね受板(12)は円形でその中央にあけられた貫通孔(20)を通じ、上方突出軸(3)の上端にあけられたねじ孔(21)にねじ込まれた止めねじ(22)により固定されている。可動体押圧用コイルばね(14)は、上方突出軸(3)に嵌められてばね収容室(8)の底(13)に配された平らな円環(23)上にあるが、この円環(23)はなくてもよい。連結部材(17)は角管であり、その先端に縦溝嵌入水平棒状突出部(16)の後端にある直方体状部(24)が嵌入れられ、これの四方にあけられたねじ孔にボルト(25)が角管製連結部材(17)の4壁の貫通孔を介してねじ込まれている。
【0011】
上記連結装置により連結せられた小型引き舟(A)および小型被曳舟(B)は、小型引き舟(A)が図1に示すように、左旋回した場合、連結部材(17)の先端水平棒状突出部(16)が小型引き舟(A)の水平方向揺動自在な可動体(11)を図4に示すように傾斜上面(2)付き固定円柱台(4)上のコイルばね(14)を上方突出軸(3)の上端のばね受板(12)とで圧縮しながら上方突出軸(3)を中心として左に回動させ、連結部材(17)の後端が前部に固定せられている後続小型被曳舟(B)を左に旋回せしめる。コイルばね(14)が圧縮されるのは、固定円柱台(4) の傾斜上面(2)の最も低い後端(2b)上にあった可動体(11)の後端が傾斜上面(2)周縁の後端(2b)より高い位置(2c)に移動するからである。もちろん、可動体(11)の後端が傾斜上面(2)周縁のどこに移動するかは、可動体(11)の回動の大きさによるが、最も高いい先端(2a)位置に至るまでは、この移動に伴う可動体(11)の上昇により、その上方のばね受板(12)とで常にコイルばね(14)を圧縮する。
【0012】
再び小型引き舟(A)が直進した場合は、圧縮されたコイルばね(14)の復元に伴なって可動体(11)が降下しつつ右に回動して元の状態に戻り、連結部材(17)を介して後続小型被曳舟(B)は小型引き舟(A)とともに平面視一直線状に並ぶ。
【0013】
この実施形態においては、固定円柱台(4) の傾斜上面(2)は、先端(2a)が最も高く後端(2b)が最も低いが、逆に先端(2a)が最も低く後端(2b)が最も高くても
上記と同じ作用をする。
【符号の説明】
【0014】
(A) 小型引き舟
(B) 小型被曳舟
(1) 小型舟同士の連結装置
(2) 固定円柱台の傾斜上面
(2a) 傾斜上面の先端
(2b) 傾斜上面の後端
(3) 上方突出軸
(4) 固定円柱台
(5) 下向き凹所の傾斜上底面
(6) 下向き凹所
(7) 隔壁
(8) ばね収容室
(9) 貫通孔
(10) 縦溝
(10a) 縦溝の前拡大部
(11) 可動体
(12) ばね受板
(13) ばね収容室の底
(14) 可動体押圧用コイルばね
(15) 抜け止め
(16) 縦溝嵌入水平棒状突出部
(17) 連結部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
小型引き舟の後部上面または小型被曳舟が複数艘存在する場合先行小型被曳舟の後部上面に配置せられる先端が最も高く後端が最も低いかまたは後端が最も高く先端が最も低い傾斜上面を有しかつ中央に上方突出軸を有する固定円柱台と、円柱台に嵌め被せられかつ円柱台の上面に重ねられる傾斜上底面を有する下向き凹所、下向き凹所の上方に隔壁を介して形成せられたばね収容室、隔壁にあけられて上方突出軸に嵌められている貫通孔およびばね収容室の後方に形成せられて上方と後方に開口しかつ前拡大部付き縦溝を有する水平方向揺動自在な可動体と、上方突出軸の上端にこれから周囲に張出すように取付けられたばね受板と、上方突出軸の周囲でかつばね受板とばね収容室の底との間に介在された可動体押圧用コイルばねと、拡大部に入れられる抜け止め付き縦溝嵌入水平棒状突出部を先端に有しかつ後端が後続小型被曳舟の前部に固定せられる連結部材とを備えた小型舟同士の連結装置。
【請求項2】
小型引き舟が水上オートバイであり、小型被曳舟が水難者救助舟、観覧舟、物資運搬舟または漁業舟である請求項1記載の小型舟同士の連結装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−43473(P2013−43473A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−180638(P2011−180638)
【出願日】平成23年8月22日(2011.8.22)
【特許番号】特許第4897106号(P4897106)
【特許公報発行日】平成24年3月14日(2012.3.14)
【出願人】(511108677)有限会社タキモトワークス (1)