説明

小豆発酵食品

【課題】 機能性食品でもある小豆のを更に美味しく摂食できる小豆発酵食品を提供する。
【解決手段】
小豆にクエン酸発酵を行う黒麹菌または白麹菌を接種して閉鎖系環境下で発酵させた小豆発酵食品の製造方法及び発酵小豆を使った小豆飲料又は小豆食品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は麹菌発酵食品およびその製造方法に関する。より詳細には小豆を原料とした麹菌発酵飲料又は麹菌発酵食品およびそれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
小豆の歴史は大変古く、弥生時代の遺跡からも発見されており「古事記」や「日本書紀」にも登場する。小豆には強い抗酸化作用のあるポリフェノールが大量に含まれており、抗酸化作用があるといわれている。
一方、小豆の用途としては和菓子などに利用される餡、ぜんざい或いは季節の節目の日(節句)、祝い事に赤飯を炊く習慣などが主なものであり、その用途はこれまで幅広いものではなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
小豆には体に良い成分が多く抗酸化作用のあるポリフェノール、コレステロールや中性脂肪を抑えるサポニン、血圧降下作用のあるカリウム、血液をサラサラにする効果があるといわれる赤い色素のアントシアニン、疲労回復に効果的なビタミンB群類等が知られている。 また、小豆の漢方で有名なものに赤小豆湯がある。 このように小豆そのものが機能性食品でもある。このような効能を有効に利用するために、小豆を発酵するという新たな加工方法を見出し、味覚的にも食感的にも向上させることで小豆の食習慣を広げることを目的とする。さらには生活習慣病などの予防にも役立つことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、上記目的を達成するために、次の構成を有する。
【0005】
請求項1の発明は、小豆に麹菌を接種して発酵させることを特徴とする小豆発酵食品の製造方法を特徴とする。
【0006】
請求項2の発明は、小豆に麹菌を接種して閉鎖系環境下で発酵させることを特徴とする小豆発酵食品の製造方法を特徴とする。
【0007】
請求項3の発明は、前記の麹菌が、クエン酸発酵を行う黒麹菌または白麹菌であることを特徴とする小豆発酵食品の製造方法を特徴とする。
【0008】
請求項4の発明は、前記の製造方法により得られた発酵小豆を使った小豆飲料又は小豆食品を特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の麹菌発酵小豆を使った小豆加工食品のほうが、従来のそのままの小豆を使った小豆加工食品より味、香り、触感的にはるかに優れているものであった。また、発酵することにより小豆の表皮あるいは小豆そのものが軟化されることで食感的になめらかになり、小豆の良い成分が消化吸収されやすくなっていると推定される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明において、原料として小豆を使用するが、その品種あるいは産地は限定されるものではない。小豆の発酵工程の順序概略は次のようになる。
【0011】
小豆→洗浄→水浸漬→加熱殺菌→麹菌接種→発酵
【0012】
水浸漬の工程において、小豆重量の3〜4倍量の水に一晩浸漬して十分に膨潤させておく。次に余分な水を切り、加熱殺菌をおこなう。
【0013】
加熱処理の温度は95〜125℃、より好ましくは100〜120℃の温度範囲で加熱時間が5分以上、加熱方法としては蒸煮、加圧蒸煮、マイクロ波等の手段が採用される。
【0014】
次に、殺菌工程を経た小豆に麹菌を摂取する。麹菌としては、醸造食品に利用される麹菌類が使用できる。好ましくは、クエン酸発酵を行う黒麹菌または白麹菌を使用できる。例えばAspergillus phoenicis、Aspergillus kawachii、Aspergillus oryzae などである。
【0015】
発酵終了時の水素イオン濃度は4.0〜6.5、望ましくは4.5〜6.0がよい。
【0016】
このとき雑菌などを予防するためにもまた、請求項2にあるように麹菌に胞子を作らせないためにも、閉鎖系容器内で発酵させると良い。
【0017】
発酵条件は、たとえば温度範囲は25〜35℃、より望ましくは25〜30℃、培養期間は1日〜10日、より望ましくは2日〜6日間であるが、発酵温度条件に最適発酵日数は依存する。
【0018】
麹菌は生育(発酵)がすすむと胞子を形成する。胞子の色はその麹菌の種類により黒色、緑色、黄色等様々である。且つ胞子自体は発酵食品の味、色合い等にマイナスの影響を与える場合がある。その場合には、胞子を形成させず、白色の菌糸を十分に増殖させることができる。そのためには、閉鎖系容器内で、加熱殺菌処理した小豆に麹菌を摂取し発酵させることが有効である。すなわち麹菌が発酵するとき必要とする酸素量を制御する。次の表は、容器容量に対する小豆の充填量に対して胞子形成の有無を検討したものである。
【0019】
【表1】

【0020】
この結果、容器容量に対する小豆の充填量は、容量1000ml当たり50〜300g、好ましくは100g〜200gとするのが好ましい。
【実施例1】
【0021】
Aspergillus phoenicis発酵小豆(温度条件30℃で2、4,6日発酵)と無発酵の蒸煮しただけの小豆を、同条件でジュース化してその味、香り、食感(のどごし)に及ぼす効果を、20代〜50代の各2人ずつ8人をパネラーとして官能評価した。上記の各種小豆60部に対しブドウ糖40部、水350部を加えミキサーでジュース化した。評価方法は良い:+、普通:±、悪い:−とし、良いものから順に2、1、0点の評価方法であらわした。
【0022】
【表2】

【0023】
評価理由として無発酵小豆は、小豆の味が弱く物足りない、コク、濃厚感がない、水っぽい等であった。2日4日発酵小豆は、さわやかな酸味がよい、小豆の味を強く感じる、コク、濃厚感がある等であった。また、6日発酵は酸味が強い、発酵臭が強すぎる等の意見があった。
【実施例2】
【0024】
Aspergillus phoenicis、及びAspergillus oryzaeを使って温度30℃で3日間醗酵させた小豆と、対照となる無発酵の小豆を使って小豆羊羹をつくり味、食感等を点数化した。また、評価は実施例1と同じ方法で行った。
小豆60部、液糖100部、ショ糖35部、寒天7部、水500部の配合で羊羹を作った。
【0025】
【表3】

【0026】
官能評価は、発酵小豆で作った羊羹のほうが圧倒的に優れていた。評価理由として、発酵したほうが小豆の味、香りが強く感じた。また、食感も滑らかであった。
【実施例3】
【0027】
発酵小豆200部、砂糖80部、塩少々、水400部を煮込んで、ぜんざいを作った。通常の小豆(未発酵)を使ったぜんざいに比べ、仕上がり時間が少なく味も濃厚でコクがあり、食感も滑らかであった。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明は、小豆を原料とした麹菌発酵食品およびその製造方法に適用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
小豆に麹菌を接種して発酵させることを特徴とする小豆発酵食品の製造方法。
【請求項2】
小豆に麹菌を接種して閉鎖系環境下で発酵させることを特徴とする小豆発酵食品の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2の麹菌が、クエン酸発酵を行う黒麹菌または白麹菌であることを特徴とする小豆発酵食品の製造方法。
【請求項4】
請求項1乃至3記載の製造方法により得られた発酵小豆を使った小豆飲料又は小豆食品。

【公開番号】特開2008−263904(P2008−263904A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−113688(P2007−113688)
【出願日】平成19年4月24日(2007.4.24)
【出願人】(506022278)株式会社小出物産 (1)
【出願人】(301074285)
【Fターム(参考)】