少なくとも1つの冗長関節を有する7つ以上の自由度ロボットマニピュレータ
線形加速器(LINAC)およびLINACに連結するロボットマニピュレータを含む、ロボット治療施行システム。このロボットマニピュレータは、7つ以上の自由度に沿ってLINACを移動させ、7つ以上の自由度の少なくとも1つは、冗長自由度であるように構成される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2008年9月12日出願の米国仮特許出願第61/096,728号の恩恵を請求し、同仮出願の全体の内容を参照することによりここに援用する。
【0002】
本発明の実施形態は、医療用途で使用されるロボットマニピュレータの分野に関する。
【背景技術】
【0003】
従来式のロボットは、例えば組み立て用の組み立てラインなどにおけるように、全く同じことを何度も繰り返して行うように設計されている。それらのロボットは、特定の機能を遂行するために所与の動きを繰り返すようにプログラム化及び設定されている。ロボットは、多くの場合、人間に比べてより効率的に、及び多くの場合より正確に遂行するために組み入れられる。
【0004】
従来式のロボットは、典型的には、1つ又は2つのロボットアームを含んでいる。それらのロボットアームは、異なる自由度(DOF)で動きを促進ことに役立つ複数のセグメントを有する場合がある。幾つかの従来式のロボットは、対応するセグメントに接続される個別のステップモータの回転を作動させることによってロボットアームのセグメントを制御するためにコンピュータを採用している。他の設計では、アームセグメントの動きを作動させるために油圧技術又は空気圧技術を使用する場合もある。コンピュータは、ロボットアームの正確な再現可能な動きを可能にしている。
【0005】
先行の選択的に柔軟な多関節ロボットアーム(SCARA)ロボットは、4又はそれより少ない自由度(「DOF」)で動作している。言い換えれば、それらのロボットアームは、4つ又はそれより少ない軸に沿って動くように設計されている。従来式のロボットアームの標準的な用途は、ピックアンドプレース方式の機械の利用である。ピックアンドプレース方式機械は、自動化組み立て、自動化配置、プリント基板製造、集積回路ピックアンドプレース、及び機械加工、計測、検査及び溶接のような小項目を含む他の自動化業務で使用されている。それらのロボットアームは、ロボット周辺機器、ロボット付属品、ロボット又はロボット用具、アーム端末(EOA)用具又はアーム端末デバイスとしても知られているエンドエフェクタを含んでいる。エンドエフェクタは、ロボット把持部、プレス用具、塗装スプレーヤ、ブロートーチ、バリ取り用具、アーク溶接砲、ドリル等のような器具であり得る。それらのエンドエフェクタは、典型的には、ロボットアームの端部に設置され、上述の用途で使用される。1つの一般的なエンドエフェクタは、異なる目的物を把持及び運搬する手の簡略版である。そのようなエンドエフェクタは、標準的には、3kgから20kg(6.61ポンドから44.09ポンド)の範囲の最大積載量を支持する。
【0006】
放射線治療システムの放射線供給源の位置決めで使用されている別の型のロボットは、Adlerによる米国特許第5,207,223号に記載されるような、選択的に放射線を放つために、関節ロボットアームの遠位端部に取り付けられる直線加速度計(LINAC)のような放射線供給源を位置決めするための多関節ロボットアームを含んでいる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書で説明しているのは、7つ以上の自由度に沿って医療器具を移動することができるロボットマニピュレータに連結された医療器具を有する装置であり、ロボットマニピュレータは、少なくとも1つの冗長関節を有している。以下の説明では、本実施形態を深く理解頂くために、特定の構成要素、デバイス、方法等の実例のような多数の特定の細部が述べられている。しかしながら、当業者には自明のように、それらの特定の細部を、本実施形態を実施するために採用する必要はない。本実施形態を不必要に分かりにくくすることを回避するために、他の例では周知の材料又は方法を詳細に説明していない。
【0008】
ロボットマニピュレータは、7つ以上のDOFでロボットマニュピレータに取り付けられる医療器具を位置決めすることができる。ロボットマニュピレータは、7つ以上のDOFで医療器具を動かすために、関節で相互に接続されている複数の剛性リンクを含んでいる。剛性リンクの1つは、追加の関節(本明細書では冗長関節とも呼ばれている)を含んでいる。複数の剛性リンクは、関節によって相互接続されていて、医療器具の回転又は並進変位を可能にしている。一実施形態では、7つのDOFは、少なくとも1つの冗長DOFを含んでいる。追加の関節は、1つの冗長DOFで医療器具を動かすために使用することができる。例えば、複数の剛性リンクは、関節によって相互接続されていて、6DOFで医療器具を動かすために使用されてもよく、追加の関節は、第7のDOFで医療器具を動かすために使用されてもよく、第7のDOFは、冗長DOFである。あるいは、複数の剛性リンクは、関節によって相互接続されていて、7つより多いDOFで医療器具を動かすために使用されてもよく、剛性リンクのうちの1つの、2つの追加の関節は、2つの冗長DOFで医療器具を動かすために使用されている。
【0009】
ロボットマニュピレータは、例えば治療上の放射線処理の間、放射線供給源の位置及び方向性を調整するためのロボット治療施行システムで使用することができる。ロボット治療施行システムは、三次元(3D)空間においてLINACなどの放射線供給源を位置決め及び配向するための関節ロボットアームのようなロボットマニュピレータを含んでいる。しかしながら、従来式のロボット治療施行システムとは異なり、本明細書で説明している実施形態のロボットマニュピレータは、第7以上のDOFに沿って医療器具を動かすために、6DOFを有する従来式のロボットアームで使用されるものと比べて1つ以上の追加の関節を含んでいる。例えば、第3の軸(A3)及びリストアセンブリの間のリンクに追加の関節を加えることによって、ロボットマニュピレータは、患者又は治療台をロボットマニュピレータとの衝突の危険性に曝すこと無く、従来式のロボットアームと比較してより広範囲の動きが可能となるように、関節を位置決めすることができる。同様の結果は、ロボットマニュピレータが、大容積のロボットマニュピレータを例えば床に向けて回転させることを可能にするために第1及び第2の軸(A1及びA2)の場所に第3の関節を追加することによって実現することができる。この実例を用いれば、ロボットマニュピレータは、医療用具を複数の高さに位置決めすることができ、例えば、ロボットマニュピレータは、LINACを高所にあるアイソセンタには低い位置又は低所にあるアイソセンタには高い位置に位置決めすることができる。
【0010】
本明細書で説明している実施形態は、7つ以上の自由度の内の1つ以上の冗長DOFを含んでいるので、本明細書で説明している実施形態は、従来式の6DOFロボットアームと比べてより多くの可能性を有している。追加の自由度が与えられて、ロボットマニュピレータの作業空間が大幅に増大する一方で、1つ以上の冗長DOFを有するロボットマニュピレータは、医療器具の所与の用具姿勢のための無数の構成を提供する。作業空間は、ロボットマニュピレータの動作領域を表す。ロボットマニュピレータの1つ以上の冗長DOFは、更に、ロボットマニュピレータが、器具の位置を変えないままで動くこと、その上円滑な平面運動ができること、を可能にすることができる。それらの追加のDOFは、更に、ロバストな障害物回避に必要な動きを可能にすることができる。本明細書で説明している実施形態は、多くのノード及びノード(例えば現存するノード及び新しいノード)に達する多くのパスを提供することができる。本明細書で説明している実施形態は、更に、ノードに達するパスの最適化を提供することができる。例えば、本明細書で説明している実施形態は、ノードを横切る時間を減らすこと、ならびに可能な障害物の間の距離余裕又は隙間を増やすことを可能にしている。本明細書で説明している実施形態は、更に、ロボットマニュピレータを使用して医療器具を固定位置に位置決めし、医療器具を固定位置に維持しながら、ロボットマニピュレータを移動させることができる。本明細書で説明している実施形態は、更に、拘束体積の外部の物体と衝突することなく拘束体積(例えば障害物迷路)の中を通過させて医療器具を操作するために使用することができる。
【0011】
従来式のシステムでは、6より多いDOFを有するロボットアームは、ハードウェアの複雑性が増し、要求される運動学的分析が増すという理由で通例的には敬遠されてきたことを留意されたい。しかしながら、本明細書で説明している実施形態は、障害物を回避するために使用することができ、ロボットマニュピレータは、器具位置及び器具方向性の運動学的分析を単純化するために、2つのセグメント、アセンブリ及びアームアセンブリに分解することができる。例えば、各々のセグメントの運動学を解決するために異なる方法を用いることができる。
【0012】
本明細書で説明する実施形態は、LINACに連結されたロボットアームとして描写及び説明してきたが、他の実施形態では他のロボットマニュピレータ及び/又は他の医療器具を使用してもよいことを留意されたい。例えば、医療器具は、画像装置の画像形成供給源、外科手術用器具、インプラント器具、治療台等であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】7自由度を有するロボットアームを含んでいるロボット治療施行システムの一実施形態を図示している。
【図2】冗長関節を有するロボット治療施行システムの別の実施形態を図示している。
【図3A】7つの自由度を有する垂直に取り付けられたロボットアームを含んでいるロボット治療施行システム300の一実施形態を、第1の軸に沿った第1位置で図示している。
【図3B】図3Aのロボット治療施行システムの別の実施形態を、第1の軸に沿った第2位置で図示している。
【図3C】第7の自由度用の線形トラック上に水平に取り付けられた6自由度を有するロボットアームを含んでいるロボット治療施行システム350の別の実施形態を図示している。
【図4A】従来式のロボット治療施行システムの上面図を治療台に対する第1位置で図示している。
【図4B】一実施形態による、ロボット治療システムの上面図を治療台に対する第1位置で図示している。
【図4C】図4Aの従来式のロボット治療施行システムの上面図を治療台に対する第2位置で図示している。
【図4D】一実施形態による、図4Bのロボット治療施行システムの上面図を治療台に対する第2位置で図示している。
【図5】一実施形態による、ロボット治療施行システムの作業空間を図示している透視図である。
【図6】ロボットマニピュレータを使用して医療器具を位置付けるための方法の一実施形態を図示している。
【図7】固定位置で医療器具を維持するための方法の別の実施形態を図示している。
【図8】本発明の実施形態を実現し得る、放射線治療の実施に使用することができる治療システムの一実施形態のブロック図を図示している。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施形態は、添付図面の図中では、制限を課すためのものではなく例証として図示されている。
【0015】
図1は、7つの自由度を有するロボットアーム202を含んでいるロボット治療施行システム200の一実施形態を図示している。ロボット治療施行システム200は、LINAC203と、リストアセンブリ212及びアームアセンブリを有するロボットアーム202と、を含んでいる。リストアセンブリ212は、3つの回転DOF(軸5から軸7)でLINAC203を動かすように作られており、アームアセンブリは、4つのDOF(軸1から軸4)でLINAC203を動かすように作られており、1つは冗長DOFである。アームアセンブリは、冗長DOFを含む、4つのDOFでLINAC203を動かすために、関節で相互に接続されている複数の剛性リンクを含んでいる。
【0016】
LINAC203は、目標物に向けることができる放射線ビームを発するために使用されている。ロボットアームは、患者205を取り巻く作業体積の中で多数の角度から施行される放射線で病的状態の体の部位のような目標物を照射するようにLINAC203を適正に位置付ける及び配向するために複数の回転DOFを有している。患者205は、ヒト患者及びあるいは動物患者であってもよいものと留意されたい。更に、他の実施形態では、ヒト又は動物以外の他の目的物を使用し得る。ロボット治療施行システム200で実施される治療は、単一のアイソセンタ(収束点)、複数のアイソセンタを伴う又は特定のアイソセンタの無い、ビーム路程を含んでいてもよい。(即ちビームは、病的な目標物体積と交差しさえすればよく、目標物の範囲内の一点又はアイソセンタに収束する必要はない)。その上、治療は、治療計画中に決定されるように単一のセッション(モノフラクション)又は少数のセッション(ハイポフラクション)のどちらかで施行されてもよい。ロボット治療施行システム200は、術前治療計画段階の間に目標物体積の術中位置を目標物容積の位置に合わせるために患者を硬い外部フレームに固定すること無く治療計画に従って放射線ビームを送出する。
【0017】
LINAC203は、リストアセンブリ212に回転自在に取り付けられており、リストアセンブリ212は、器具ヨー関節、器具ピッチ関節及び器具ロール関節を含んでいる。リストアセンブリ212の器具ヨー関節は、取り付けプレート(図示せず)と連結することができ、取り付けプレートは、LINAC203の底部に取り付けられてもよい。あるいは、リストアセンブリ212の器具ヨー関節は、LINAC203の底部に直接的に連結されてもよい。リストアセンブリ212の器具ヨー関節は、z軸に沿ってヨー回転するLINAC203の回転性の動きを促進する。器具ピッチ関節は、器具ヨー関節と連結することができ、y軸に沿ってピッチ回転するLINAC203の回転性の動きを促進する。器具ロール関節は、器具ピッチ関節と連結することができ、x軸に沿ってロール回転するLINAC203の回転性の動きを促進する。z軸、y軸及びx軸は、ロボットアーム202の軸5から軸7であり得る。
【0018】
描写している実施形態では、アームアセンブリは、冗長関節アセンブリ212、肘アセンブリ213、第1の肩アセンブリ214及び第2の肩アセンブリ215を含んでいる。冗長関節アセンブリ211は、リストアセンブリ212の器具ロール関節に連結される。冗長関節アセンブリ213は、リストアセンブリ212の関節の回転性の動きを駆動するために3つの駆動軸及び3つのモータを含んでいてもよい。一実施形態では、本明細書で論じるモータはステップモータであってもよい。あるいは、モータは、当業者には理解頂けるように、サーボモータ又は他のモータであってもよい。第1の駆動軸は、器具ヨー関節及び第1のモータと連結することができる。第1のモータ及び駆動軸は、ヨー軸である軸7に沿ったLINAC203の回転性の動きを駆動する。第2の駆動軸は、器具ピッチ関節及び第2のモータと連結することができる。第2のモータ及び駆動軸は、ピッチ軸である軸6に沿ったLINAC203の回転性の動きを駆動する。第3の駆動軸は、器具ロール関節及び第3のモータと連結することができる。第3のモータ及び駆動軸は、ロール軸である軸5に沿ったLINAC203の回転性の動きを駆動する。これらの軸は、軸5から軸7の他の順序で設計されてもよいものと留意されたい。
【0019】
肘アセンブリ213は、冗長関節によって冗長関節アセンブリ211に連結されており、第1の肩アセンブリ214は、肘部関節によって肘アセンブリ213に連結されている。冗長関節は、回転軸、軸4での冗長関節アセンブリ211の回転性の動きを駆動するように作られることができる変速装置を含んでいる。肘部関節は、回転軸、軸3での肘アセンブリ213の回転性の動きを駆動するように作られることができる肘部変速装置を含んでいる。肩アセンブリ214は、回転軸、軸2での第1の肩アセンブリ214の回転性の動きを駆動するように作られることができる変速装置を含んでいる第1肩部関節を含んでいる。追加の関節、肘部関節及び肩部関節の変速装置は、3−D空間でのLINAC203の並進移動を促進することができる。第2の肩アセンブリ215は、第2の肩部関節によって第1の肩アセンブリ214に連結されており、第2の肩部関節は、回転軸、軸1で第2の肩アセンブリ215の回転性の動きを駆動するように作られることができる変速装置を含んでいる。他の実施形態では、ロボットアーム202は、制御装置からの方向性によって、LINAC203を動かすための変速装置以外の他の型の動作作動装置を含んでいてもよいものと留意されたい。
【0020】
描写している実施形態では、冗長関節アセンブリ211は、リストアセンブリ212及び肘アセンブリ213の間に連結されている。あるいは、冗長関節アセンブリ211は、アームアセンブリの他の構成要素の間に連結されてもよい。例えば、別の実施形態では、冗長関節アセンブリは、肘アセンブリ及び第1の肩アセンブリの間に連結されている。この実施形態では、肘部関節は、リストアセンブリ及び肘アセンブリに連結されている。肘部関節は、回転軸、軸4でロボットアームの回転性の動きを駆動するために肘部変速装置を含んでいる。更に、冗長関節は、肘アセンブリ及び第1の肩アセンブリに連結されている。冗長関節は、回転軸、軸3でロボットアームの回転性の動きを駆動するために変速装置を含んでいる。第1及び第2の肩アセンブリは、第1及び第2の肩部関節と、上述のように、回転軸、軸2及び軸1でロボットアームの回転性の動きを駆動するための対応する変速装置と、を含んでいる。別の実施形態では、肘アセンブリ213がリストアセンブリ212に直接的に連結される場合、肘アセンブリは、器具ヨー関節、器具ピッチ関節及び器具ロール関節にそれぞれ連結されている第1、第2及び第3の駆動軸と、器具ヨー、器具ピッチ及び器具ロールの関節の回転性の動きをそれぞれ駆動するための第1、第2及び第3のモータを含んでいる。
【0021】
ロボットアーム202は、第2の肩部関節によって取り付けアセンブリ216に連結することができる。取り付けアセンブリ216は、床、壁、天井、支柱等に連結されてもよい。あるいは、ロボットアーム202は、取り付けアセンブリ216を使用せずに、床、壁、天井、支柱等に直接的に連結されてもよい。
【0022】
別の実施形態では、第2の肩アセンブリ215は、ロボットアームの第8の軸でのロボットアームの回転性の動きを駆動するために第3の肩部変速装置を有する第3の肩部関節を含んでいる。別の実施形態では、取り付けアセンブリ216は、トラック226に連結されるトラック取り付けアセンブリに連結されている。あるいは、第2の肩アセンブリ215は、トラック取り付けアセンブリに連結されてもよい。トラック取り付けアセンブリ及びトラックは、実質的に線形軸でのLINAC203の並進移動を促進することができる。トラックは水平方向に置かれても又は垂直方向に置かれてもよい。この線形軸は、ロボットアームの第8のDOFであってもよい。別の実施形態では、上述のように、線形軸は、最後の回転軸、軸1の代わりに第7のDOFである。
【0023】
一実施形態では、実質的に線形DOFは、7つ又は8つのDOFの内の第1のDOFであり、ロボットアームの基端部から最も遠いロボットアームのエンドエフェクタ端部(先端部とも称される)にある最後のDOFではなく、ロボットアームの基端部に直近するDOFを意味している。第1のDOFは、ロボットアームの他の6又は7回転DOFを動かすように作られている。即ち医療器具及びロボットアームは、回転性の自由度に沿って医療器具を動かすこと無く、医療器具の動作の全範囲を通して実質的に線形軸に沿って動かすことができる。
【0024】
実質的に線形DOFは、相互に直交する、水平な座標軸であるx軸及びy軸に実質的に直角なz軸にある実質的な垂直線、又はz軸に実質的に直角な相互に直交する、水平な座標軸であるx軸及びy軸にある実施的な水平線、のどちらかに沿って医療器具が並進運動するための実質的な線形軸を含んでいる。一実施形態では、トラックは、垂直に配向されてもよく、例えば支柱の垂直側部に垂直に取り付けられている。支柱は、治療用放射線処置の間治療室の床に又はピットの中で床より下方に固定されても又は取り付けられてもよい。別の実施形態では、支柱は、治療用放射線処置の間治療室の天井に固定されても又は取り付けられてもよい。あるいは、トラックは、壁、台板、ブロック又は下部構造のような当業者には周知の他の構造に垂直方向に取り付けられてもよい。別の実施形態では、トラックは、水平に配向されてもよく、例えば治療用放射線処置の間治療室の床に又はピットの中で床より下方に固定される又は取り付けられている。別の実施形態では、トラックは、治療用放射線処置の間治療室の天井に固定されても又は取り付けられてもよい。あるいは、トラックは当業者には周知の他の構造に水平方向に取り付けられてもよい。
【0025】
一実施形態では、制御装置(説明図を簡略化するために図示せず)は、ロボットアーム及びLINAC203を7つ以上のDOFで動かすためにロボットアーム202に連結されている。ロボットアーム202は、制御装置から受け取る動作命令によって制御することができる。別の実施形態では、ユーザーインターフェイスユニットは、ロボットアーム202及びLINAC203を7つ以上のDOFで手動で動かすために制御装置に連結されている。
【0026】
リストアセンブリ212、肘アセンブリ213、第1の肩アセンブリ214、第2の肩アセンブリ215及び取り付けアセンブリ216の上述の配置は、1つの冗長DOFを含む、7つの回転DOFを使用するLINAC203の位置決めを促進している。ロボット治療施行システム200のロボットアーム202の7つのDOFは、ロボットアーム202の動作の機械的な範囲内の作業空間のような、所望の治療区画の中の実質的に任意の場所でLINAC203を位置決めする及び配向することができる。ロボットアーム202は、作業空間又は治療区画内の複数の場所で用具中心位置(TCP)、機械中心又はアイソセンタを有するようにLINAC203を位置決めすることができる。動作命令信号は、制御装置から生成されていて、様々なDOFでロボット治療施行システム200の補正動作を制御することができる。一実施形態では、協調運動を達成することができるように、治療台206に対するLINAC203の位置及び方向性を知ることができる。1つの例示的な実施形態では、LINAC203及び治療台206は、共に、共通(又は「空間」)座標システムに対して参照することができる。あるいは、ロボットアーム202は、8つのDOFに沿ったLINAC203の動作を促進するように作られてもよい。
【0027】
一実施形態では、8つのDOFは、2つの冗長DOFを含んでいる。別の実施形態では、8つのDOFは、1つの冗長DOFを含む7つの回転DOF、及び1つの並進DOFを含んでいる。あるいは、他の構成も可能である。1つの例示的な実施形態では、7つのDOFは、相互に直交するx座標軸、y座標軸及びz座標軸に沿ってLINAC203が並進して動くための4つの回転軸と、x軸、y軸及びz軸のそれぞれの周囲でLINAC203がロール回転、ピッチ回転及びヨー回転するための3つの回転軸と、を含んでいる。この実施形態では、4つの回転軸は、LINAC203が並進して動くための1つの冗長回転軸を含んでいる。別の例示的な実施形態では、8つのDOFは、相互に直交するx座標軸、y座標軸及びz座標軸に沿ってLINAC203が並進して動くための5つの回転軸と、x軸、y軸及びz軸の周囲でLINAC203がロール回転、ピッチ回転及びヨー回転するための3つの回転軸と、を含んでいる。
【0028】
別の例示的な実施形態では、8つのDOFは、相互に直交するx座標軸、y座標軸及びz座標軸に沿ってLINAC203が並進して動くための4つの回転軸と、x軸、y軸及びz軸のそれぞれの周囲でLINAC203がロール回転、ピッチ回転及びヨー回転するための3つの回転軸と、相互に直交する水平な座標軸であるx軸及びy軸に実質的に直角なz軸にある実質的な垂直線、又はz軸に実質的に直角である、相互に直交する水平な座標軸であるx軸及びy軸にある実質的な水平線、のどちらかに沿って医療器具が並進運動するための1つの実質的な線形DOFと、を含んでいる。あるいは、1つ以上の冗長DOFは、他の構成で使用されてもよい。
【0029】
ロボット治療施行システム200は、制御装置を使用することで、治療用放射線処置の間コンピュータ制御下の治療室の3D作業空間又は動作領域の中でLINAC203の位置及び方向性を調整するように作られている。制御装置は、ロボットアーム202、運動追跡システムシステム210、ユーザーインターフェイス、画像形成システム(x線供給源207及び検出器208を含む)及び治療台206を含む患者整位システム212と連結することができる。あるいは、制御装置は、図1で描写しているシステムの凡その構成部品に連結されている。
【0030】
一実施形態では、ロボット治療施行システム200は、LINACを利用する、フレーム無しの、画像誘導ロボットベース治療用放射線処理システムである。あるいは、ロボット治療施行システム200は、他の型のロボットベース医療システムであってもよい。一実施形態では、放射線供給源は、LINAC203のようなLINACである。あるいは、放射線供給源は、ロボットアームの遠位端部に取り付けることができる他の型の放射線供給源であってもよい。一実施形態では、LINAC203は、X線LINACである。あるいは、LINAC203は、当業者には理解頂けるであろう他の型のLINACであってもよい。
【0031】
描写している実施形態では、患者整位システム212は、リストアセンブリ222、肘アセンブリ223、肩アセンブリ224、トラック取り付けアセンブリ225及びトラック226を有するロボットアーム221に連結された治療台206を含んでいる。ロボットアーム221は、1つの実質的な線形DOFを含む6DOFで治療台を動かすように作られている。ロボットアーム221は、5つの回転DOFで治療台206を動かすために、関節によって相互接続されている複数の剛性リンクを含んでいる。ロボットアーム221は、実質的な線形DOFでの治療台206の動きを促進するトラック226に取り付けられている。リストアセンブリ222は、3つの回転DOF(軸4から軸6)で治療台206を動かすように作られており、肘、肩及びトラック取り付けのアセンブリである223から225及びトラック226は、3つのDOF、すなわち2つの回転DOF及び1つの実質的な線形DOFで治療台206を動かすように作られている。
【0032】
肘アセンブリ223は、手首アセンブリ222及び肩アセンブリ224に連結されている。トラック取り付けアセンブリ225は、トラック226及び肩アセンブリ214の肩部関節に連結されている。描写している実施形態では、トラック取り付けアセンブリ225及びトラック226は、実質的に垂直な、線形軸でのLINAC203の並進移動を促進している。実質的に垂直な線形軸(z)は、2次元水平面(x、y)に実質的に直角であってもよい。一実施形態では、トラックは、垂直に配向されていてもよく、例えば支柱の垂直側部に垂直に取り付けられている。支柱は、治療用放射線処置の間治療室の床に又はピットの中で床より下方に固定されても又は取り付けられてもよい。別の実施形態では、支柱は、治療用放射線処置の間治療室の天井に固定されても又は取り付けられてもよい。あるいは、トラック226は、壁、台板、ブロック又は下部構造のような当業者には周知の他の構造に垂直方向に取り付けられてもよい。
【0033】
図1では、治療台206がロボットアーム221に連結されているが、他の実施形態では、患者をロボット治療施行システム200に対して位置決めする及び配向するために他の患者整位システムを使用してもよい。例えば、LINAC203は、スタンド、床に取り付けられた治療台のようなロボットアームに連結されていない治療台206に、カリフォルニア州、サニーベールのアキュレイ社(Accuray Inc.)で開発されたAXUM(登録商標)治療台に又は他の患者整位システムに、対して位置決めされてもよい。
【0034】
一実施形態では、ロボットアーム221は、ロボットアーム202を制御している制御装置と同じ制御装置に連結されている。制御装置は、LINAC203及び治療台206の両方の動きを互いに連係させるために使用することができる。これは、これまで従来式のシステムでは障害物で通過できない場合があった追加の位置にある治療台に対してLINAC203を位置決めする及び配向することを可能にすることができる。別の実施形態では、ロボットアーム202及び221は、別々の制御装置に連結されている。
【0035】
別の実施形態では、ロボット治療施行システム200は、X線画像形成システムを含んでいる。X線画像形成システムは、目標物の1つ以上の実時間又は実時間に近い画像を代表する画像データを生成する。X線画像形成システムは、一対の診断用x線供給源207、各々のX線画像形成供給源に伴う電力供給装置、1つ又は2つの画像形成検出器208(又はカメラ)及び制御装置を含んでいてもよい。X線画像形成供給源207は、例えば約90度、角度的に離して取り付けること、治療目標物(例えば患者内部の腫瘍)を貫いて単数又は複数の検出器208に向けることができる。あるいは、各々のx線供給源によって照射される単一の大型検出器を用いてもよい。単一の検出器による画像形成システムでは、2つのx線供給源207は、両方の画像を単一の検出器表面で保つために90度未満の角度で離されて位置決めされてもよい。
【0036】
単数又は複数の検出器208は、治療目標物より下方、例えば床の上、治療台206の上又はLINAC203の真下に置かれてもよく、X線画像形成供給源207は、画像の拡大及びそれによって単数又は複数の検出器208の求められる大きさを最小化するために、治療目標物より上方(例えば治療室の天井)に位置決めされてもよい。代替的な実施形態では、X線画像形成供給源207及び単数又は複数の検出器208の位置は、例えばX線撮像源207が治療目標物より下方、単数又は複数の検出器208が治療目標物より上方、のように逆になってもよい。別の実施形態では、単数又は複数の検出器208は、それらが画像形成用の所定の位置に移動するような方法で配置され、LINAC203又は治療台206を位置決めする間又はLINAC203から放射線ビームを送出する間、邪魔にならないように移動される。
【0037】
単数又は複数の検出器208は、患者の画像情報を生成して制御装置へ送ることができる。制御装置は、所望の治療位置に関する患者の位置を確定するために全ての画像形成計算を実行し、種々のDOF用の補正値を生成する。補正値は、LINAC203を自動的に位置調整するためにロボット治療施行システム200に自動的に適用されること、及び/又はLINAC203に対して治療台206及びロボットアーム212を使用して患者の位置を自動的に調整するために制御装置に送られること、及び/又はユーザーがロボットアーム202及び221の一方又は両方を用いてLINAC206に対する患者の位置を手動で調整するためにユーザーインターフェイスユニットに送られること、が可能である。
【0038】
別の実施形態では、ロボット治療施行システム200の補正動作を、システムが使用可能な作業空間を最大化するような方法で、制御装置を使用して、治療台206及びロボットアーム221の動作と動的に連係させてもよい。制御装置を使用して治療台206及びLINAC203の動きを動的に連係することによって、例えば検出器208及び/又はX線画像形成供給源207、ロボットアーム又は治療室内の他の設備などによって邪魔されることの無いLINAC203及び治療台206の方向性及び位置の数が増える結果、治療目標物の利用可能な数は増える。この実施形態では、LINAC203のロボットが実行する動きは、LINAC203及び治療台206の間の相対的な動作が、目標領域全体に亘る所望の放射線パターンの送出を確実にするように、治療台206の補正動作によって補完される。
【0039】
治療台206は、治療の間患者205を支持しており、2つのX線カメラ及び画像形成システムのそれぞれの診断用x線供給源の間に位置決めされ得る。一実施形態では、治療台206は、放射線透過性材料で作られ得、患者を治療台206を通して撮像することができる。
【0040】
画像形成システムは、実時間に又はほぼ実時間に、治療座標フレームで目標物の位置及び方向性を示すX線画像を生成する。制御装置は、治療計画および送出ソフトウェアを含んでいてもよく、それは、各々が、一定の治療位置又はノードの各々で関連付けられる線量率及び継続時間を有する一連の所望のビーム路程から成る治療計画を生成するために、治療計画及び事前処理走査データCT(及び/又はMRIデータ、PETデータ、超音波走査データ及び/又は蛍光透視法画像データ)及びユーザー入力に応答することができる。制御装置の指図に応えて、ロボットアームは、各々のノードを通して連続的および順次にLINAC203を動かし、配向し、一方でLINAC203は、制御装置によって指図される要求線量を送出する。事前処理走査データは、例えばCT走査データ、MRI走査データ、PET走査データ、超音波走査データ及び/又は蛍光透視法画像データを含んでいてもよい。
【0041】
治療に先立ち、画像形成システムによって確立された基準のフレーム内部の患者の位置及び方向性は、患者が、治療を計画するために使用される画像を提供するCT(又はMRI又はPET又は蛍光透視法)走査装置の基準フレーム内で有する位置及び方向性に適合するように調整することができる。1つの例示的な実施形態では、この位置調整は、数十分の1ミリメータ及び全てのDOFに対して数十分の1度の範囲内まで実行することができる。
【0042】
制御装置は、更に、診断又は治療計画システムと通信して、患者体内の治療目標物の1つ以上の事前処理走査を表す事前処理走査データを受け取ることができる。事前処理走査は、事前処理座標システムに対する目標物の位置及び方向性を示すことができる。制御装置は、更に、画像形成システム(x線供給源207及び検出器208)から、目標物の実時間又はほぼ実時間の画像を表す画像データを受け取ることができる。画像データは、治療座標システムに関する目標物の実時間又はほぼ実時間の位置及び方向性に関する情報を含み得る。治療座標システム及び事前処理座標システムは、既知の変換パラメータによって関連付けられる。
【0043】
制御装置は、1)目標物の事前処理走査を表す事前処理走査データ及び2)目標物の実時間又はほぼ実時間の画像を表す実時間又はほぼ実時間の画像データ、を受け取るための入力モジュールを含んでいてもよい。事前処理走査は、事前処理座標システムに対する目標物の位置及び方向性を示している。ほぼ実時間の画像は、制御装置の指図の下で画像形成システムによって取得されたもので、治療座標システムに対する治療目標物の位置及び方向性を示している。治療座標システム及び事前治療座標システムは、既知の変換パラメータによって関連付けられる。制御装置は、事前処理走査データ、実時間又はほぼ実時間画像データ及び事前処理座標システムと治療座標システムの間の変換パラメータを使用して、治療座標システムの中で治療目標物の位置及び方向性を算出するTLS(目標位置決めシステム)処理ユニットを含んでいる。制御装置の処理ユニットは、更に、LINAC203のアイソセンタの位置及び方向性を算出してもよい。
【0044】
運動追跡システム210は、LINAC203及び/又は治療台206の位置を検出するために使用することができる。運動追跡システム210は、ロボット治療施行システム200の一部であってよく、又は当該システムから分離していてもよい。制御装置は、運動追跡システムから受け取ったデータに基づいて、治療室又は他の所定の治療座標システムに対するLINAC203の位置及び方向性を計算するために、運動追跡システム210に動作可能なように連結され得る。制御装置は、LINAC203がロボット治療施行システム200の動作中に障害物と衝突しないことを確実にするために、周囲の障害物のモデルに対するLINAC203の位置及び方向性を独立して検査することができる。制御装置は、更に、患者の部位内の治療目標物が、治療処理を通じてLINAC203の治療ビーム源に対して適切に整列している状態であり続けるように、ロボット治療施行システム200の動作を制御するために機能することができる。制御装置は、治療台206の位置決めを操作するために使用されてもよい。
【0045】
運動追跡システム210は、治療室又は他の治療座標システムに対するLINAC203の位置を検出するために治療室内部に配置されるレーザー走査システム又は光学追跡システムであってもよい。例示的なレーザー走査システムは、LINAC203の位置を確定するために約60回/秒で治療室を走査することができる。レーザー走査システムは、単一面走査又は二面走査又は複数面走査を実行するデバイスを含んでいてもよい。これに対応して、制御装置を含むロボット治療施行システム200がLINAC203の位置を常時知っているように、制御装置は、運動追跡システム210から情報を及びLINAC203、更に治療台又は治療室の他の設備の位置を計算することに適したソフトウェアを搭載していてもよい。制御装置は、自動的に又は周期的に、LINAC203を治療台に合わせて較正するようにプログラム化され得る。
【0046】
代替的な実施形態では、運動追跡システム210は、治療座標システムに対するLINAC203の位置を追跡するための磁気追跡システムを含んでいる。磁気追跡システムは、LINAC203に取り付けられる少なくとも1つの変換器を含んでいれば望ましい。あるいは、LINAC203の動作を感知するためにLINAC203に取り付けられる慣性センサー、レゾルバベースセンサーシステム、赤外線三角測量システム、光学エンコーダ等、当業者には理解頂けるような他のセンサーシステムを使用してもよい。運動追跡システム210は、ロボットアーム202、LINAC203、ロボットアーム221、治療台206、患者205又は治療室内部の他の目的物を追跡するために使用することができることに留意されたい。運動追跡システム210は、更に、患者205内部の目標物を追跡するために使用することもできる。
【0047】
制御装置は、治療目標物の位置をLINAC203のアイソセンタと比較することによって、患者が動くことに起因する、治療目標物のLINAC203のアイソセンタとのずれを検出する、及び治療目標物を放射線治療源(例えばLINAC203)に対して位置を揃えるためのロボット治療施行システム200の補正的な動作を実施するための動作命令信号を生成する、ように構成されてもよい。
【0048】
別の実施形態では、ロボット治療施行システム200の補正的な動作は、様々な動作、例えば呼吸運動、患者の心臓の心拍運動、くしゃみ、咳又はしゃっくり及び患者の1つ以上の部位の筋肉転位などに対応することができる。別の実施形態では、制御装置を含むロボット治療施行システム200は、実時間又はほぼ実時間の画像を事前処理画像と比較すること及びロボットアーム202を使用してLINAC203を及び/又は治療台を使用して患者を再配置すること又は治療計画に対応するためにLINAC203及び治療台の位置を調節すること、によって、組織変形に起因する可能性のある腫瘍の幾何学変化を検出し、それに適合するように構成されることができる。
【0049】
制御装置は、LINAC203との信頼性のある通信インターフェイスを確立及び維持するためのソフトウェアを含んでいる。ソフトウェアは、LINAC203用に開発されたインターフェイス規格を使用している。制御装置は、画像形成システムからの患者の位置及び方向性の情報をLINAC203の動作能力のDOFでの動きの適切な構成単位に変換するためのソフトウェアを更に含んでいる。制御装置は、患者を位置決めするためのロボット治療施行システム200の動作を監視及び起動するために、ユーザーインターフェイスユニットを治療施行システムのユーザー制御コンソールに提供するためのソフトウェアを含んでいてもよい。制御装置200は、LINAC203の通信又はソフトウェア制御の誤りを検出、報告及び処理するためのソフトウェアを更に含んでいてもよい。
【0050】
制御装置は、ユーザーが、1つ以上のユーザーによる選択可能な機能を実施することによって、ロボット治療施行システム200の動作又は補正動作を双方向的に制御することを可能にするための少なくとも1つのユーザーインターフェイスユニットを含んでいてもよい。ユーザーインターフェイスユニットは、手持ち式のユーザーインターフェイスユニット又は遠隔制御ユニットであってもよい。あるいは、ユーザーインターフェイスユニットは、ディスプレイ上のグラフィカルユーザーインターフェイス(GUI)であってもよい。
【0051】
制御装置及びロボット治療施行システム200の他の構成要素(例えばロボットアーム202、LINAC203、運動追跡システム210、ユーザーインターフェイス、治療台206及び画像形成システム)の間の通信リンクは、有線又は無線のリンクであってもよく、信頼性のある適時の通信を維持するために必要な帯域幅を備えている。
【0052】
上記の実施形態における追加の関節は、リストアセンブリ211及び肘アセンブリ213の間に連結される冗長関節アセンブリで実装されるが、しかしながら、他の実施形態では、冗長関節は、他の構成で実装されてもよいことを留意されたい。一実施形態では、ロボットアームは、LINAC203に連結されるリストアセンブリと、リストアセンブリに連結されるアームアセンブリと、を含んでいる。アームアセンブリは、1つ以上の冗長関節を含んでいてもよい。1つ以上の冗長関節は、1つ以上の冗長関節アセンブリと併せて、又はアームアセンブリの他のアセンブリへの追加の関節として実装されてもよい。例えば、図1の描写している実施形態は、リストアセンブリ211及び肘アセンブリ213の間の追加の関節を図示している。他の実施形態では、追加の関節は、肘アセンブリ213、第1の肩アセンブリ214、第2の肩アセンブリ215及び取り付けアセンブリ216の内の何れか2つの間に連結される冗長関節アセンブリで配置してもよい。他の実施形態では、追加の関節は、肘アセンブリ213、第1の肩アセンブリ214及び第2の肩アセンブリ215の内の何れか1つの関節と繋がる追加の関節として実装されてもよい。例えば、第1及び第2の肩アセンブリ(取り付けアセンブリ216とまとめて、ベースアセンブリと称してもよい)は、第1及び第2の肩部関節を含んでいる。追加の関節を、第1及び第2の軸(A1及びA2)の場所で(例えば第1及び第2の肩部関節を含むベースアセンブリで)追加してもよい。第1及び第2の肩部関節の場所に追加の関節を加えることによって、アームアセンブリは、患者又は治療台をロボットアーム又はLINAC203と衝突する危険に曝すこと無く、従来式のロボットアームと比較してより広範囲の動作が可能であるように、関節を位置決めすることができる。更に、追加の関節を第1及び第2の肩部関節の場所に加えることによって、アームアセンブリは、図2で示すように、ロボットアーム全体を例えば床に向けて回転させることを可能にしている。
【0053】
図2は、冗長関節を有するロボット治療施行システム250の別の実施形態を図示している。ロボット治療施行システム250は、ロボットアーム252に連結されるLINAC203を含んでいる。ロボットアーム252は、図1に関して上文で述べたように、リストアセンブリ212、肘アセンブリ213、第1の肩アセンブリ214、第2の肩アセンブリ215及び取り付けアセンブリ216を含んでいる。冗長関節アセンブリ211を有するのではなく、ロボットアーム252は、第1及び第2の肩アセンブリの位置で追加の関節253を含んでいる。ロボットアーム202は、ロボットアーム202をベースアセンブリの第1及び第2の回転軸(A1及びA2)に沿って動かすために第1及び第2の肩部関節を、及びロボットアーム202を第3及び第4の軸(A3及びA4)に沿って動かすために肘部の及び冗長な関節を、使用していることに留意されたい。ロボットアーム202のアームアセンブリは、第1及び第2の肩部関節を含んでいるベースアセンブリと、追加の関節及び肘部関節によって相互に接続されている3つの剛性リンクと、を含んでいる。対照的に、ロボットアーム252は、ロボットアーム252をベースアセンブリの第1、第2及び第3の回転軸(A1、A2及びA3)に沿って動かすために、第1及び第2の肩部関節と追加の関節253とを使用し、ロボットアーム252を第4の回転軸(A4)に沿って動かすために肘部関節を使用している。ロボットアーム252のアームアセンブリは、第1及び第2の肩部関節及び追加の関節253を含んでいるベースアセンブリと、肘部関節によって相互接続されている2つの剛性リンクと、を含んでいる。上述のように、追加の関節253をベースアセンブリに追加することによって、ロボットアーム252全体を、例えば床に向けて回転させることができる。
【0054】
描写している実施形態では、ロボットアーム250は、第1位置251(点線で表示)から第2位置253(実線で表示)まで回転される。それらの2つの位置251及び252は、LINAC203をより低所にあるアイソセンタを治療する高い位置に、及びより高所にあるアイソセンタを治療する低い位置に位置決めするために使用することができる。例えば、図2の治療台206は、高い位置に配置されているように図示されている。従って、アイソセンタは高所にあるアイソセンタであり得る。LINAC203を高所にあるアイソセンタより下方の幾つかの位置に位置決めするために、LINAC203を高所にあるアイソセンタの真下、例えば第2位置253に位置決めするようにロボットアーム252を追加の関節253の周囲で回転させることができる。しかしながら、治療台206がより低い位置へ動かされると、LINAC203を低所にあるアイソセンタより上方、例えば第1位置251に位置決めするようにロボットアーム252を追加の関節253の周囲で回転することができる。
【0055】
上記の実施形態は、LINAC203及びロボットアーム202をロボットアーム221に連結されている治療台206に対して動かすように述べられているが、他の実施形態では、LINAC203及びロボットアーム202は、ロボットアーム102のような従来式のロボットアームに連結され得る従来式の治療台106又は従来式のロボットアームに連結されていない従来式の治療台に対して動かされる。
【0056】
図1及び図2の実施形態は、取り付けアセンブリと同時に床に、水平に取り付けられているロボットアームを図示している。他の実施形態では、1つ以上の追加の関節を含んでいるロボットアームは、図3A及び図3Bに図示されるように、垂直に取り付けられてもよい。
【0057】
図3A及び図3Bは、第1の軸に沿った2つの位置321及び323にある7つ自由度を有する垂直に取り付けられたロボットアームを含んでいるロボット治療施行システム300の一実施形態を図示している。ロボット治療施行システム300は、ロボットアーム302に連結されたLINAC203を含んでいる。ロボットアーム302は、ロボットアーム202及び252のように、リストアセンブリ212及びアームアセンブリを含んでいる。上述のように、リストアセンブリ212は、3つの回転DOF(軸5から軸7)でLINAC203を動かすように作られている。図3Aのアームアセンブリの描写されている実施形態は、肘アセンブリ313、冗長関節アセンブリ311、肩アセンブリ314、トラック取り付けアセンブリ316及びトラック317を含んでいる。肘アセンブリ313は、リストアセンブリ212の器具ロール関節に連結されている。肘アセンブリ313は、冗長関節アセンブリ211に関して上文で述べたように、3つ駆動軸及び3つのモータを含んでいてもよい。冗長関節アセンブリ311は、肘部関節によって肘アセンブリ313に、冗長関節によってショルダアセンブリ314に連結されている。肩アセンブリ314は、肩部関節によってトラック取り付けアセンブリ316に連結されている。肘部関節、冗長関節及び肩部関節は、変速器を含んでいてもよく、当該変速機は、第4の回転軸(軸4)で肘アセンブリ313、第3の回転軸(軸3)で冗長関節アセンブリ311、第2の回転軸(軸2)で肩アセンブリ314の回転性の動きをそれぞれ駆動するように作られ得る。肘部関節、冗長関節及び肩部の変速器は、例えば床と平行な(x、y)平面における2次元水平面でのLINAC203の並進移動を促進することができる。トラック取り付けアセンブリ316及びトラック317は、実質的に垂直な線形軸(軸1)でLINAC203の並進移動を促進することができる。実質的に垂直な線形軸(z)は、2次元水平面(x、y)に対して実質的に直角であり得る。
【0058】
この実施形態では、トラック317は、支柱318の垂直側部に取り付けられている。支柱318は、治療用放射線処置の間治療室の床に又はピットの中で床より下方に固定されても又は取り付けられてもよい。別の実施形態では、支柱318は、治療用放射線処置の間治療室の天井に固定されても又は取り付けられてもよい。あるいは、トラック317は、壁、台板、ブロック又は下部構造のような当業者に知られている他の構造に垂直方向に取り付けられてもよい。
【0059】
制御装置201は、ロボットアーム302及びLINAC203を7つのDOFで動かすためにロボットアーム302に連結されている。ロボットアーム302は、制御装置201によって制御されており、6つの回転DOF及び1つの並進性の実質的に垂直な線形DOFを用いてLINAC203の位置決め及び配向を促進している。ロボットアーム202のように、ロボット治療施行システム200のロボットアーム302の6つの回転及び1つの実質的に水平な線形DOFは、ロボットアーム302の動作の機械的な範囲内の、作業空間のような、所望の治療区画の中の実質的に任意の場所にLINAC203を位置決めすることができる。ロボットアーム302は、作業空間又は治療区画内の複数の場所でTCPを有するようにLINAC203を適切に位置決めすることができる。
【0060】
一実施形態では、ロボットアーム302は、LINAC203の動作の全範囲を通して他の軸に沿ってLINAC203を動かすこと無く、単一軸に沿ってLINAC203を動かすように作られている。例えば、第1のDOFは、4、5又は6回転DOFに沿ってLINAC203を動かすこと無く、ロボットアームの動作の実質的に全範囲を通して実質的に線形軸に沿ってLINAC203を動かすように作られている。第1のDOFは、ロボットアームの基端部に直近しているDOFである。基端部は、ロボットアーム302が支柱318に取り付けられているところである。あるいは、基端部は、ロボットアーム302が床、天井、壁又は治療室の他の取り付け場所に取り付けられているところである。LINAC203は、ロボットアーム302の先端部とも称される、ロボットアーム302のエンドエフェクタの端部でロボットアーム202に連結されている。
【0061】
一実施形態では、制御装置201は、第1のDOFの第1の軸331に沿ってロボットアーム302を動かすように作られている。第1のDOFは、ロボットアーム302の他の6つの回転DOFを動かすように作られている。制御装置は、ロボットアーム302を別の位置まで軸331に沿って上下に動かす。例えば、ロボットアーム302は、図3Aで図示しているような第1位置321及び図3Bで図示しているような第2位置323に位置決めすることができる。図3A及び図3Bで図示しているように、ロボットアーム302は、6つの回転DOFに沿ってLINAC203を動かすこと無く、LINAC203の動作の実質的に全範囲を通して実質的に垂直な線形軸(例えば軸331)に沿ってロボットアーム302ならびにLINAC203も動かすように作ることができる。
【0062】
別の実施形態では、ロボットアーム302は、水平な実質的な線形DOFを有している。別の実施形態では、ロボットアーム302は、4つの回転DOF及び1つの実質的な線形DOFを有しており、第1のDOFは、ロボットアームの他の4つの回転DOFを動かすように作られている実質的な線形DOFである。この実施形態では、制御装置は、4つの回転DOFに沿ってLINAC203を動かすこと無く、LINAC203の動作の実質的に全範囲を通して実質的に線形軸(例えば軸331又は水平な第1の軸)に沿ってLINAC203を動かすことができる。第1のDOFが水平である実施形態では、制御装置は、垂直軸(例えばz軸)に実質的に直角である相互に直交する水平座標軸(例えばx軸及びy軸)の実質的な水平線に沿ってLINAC203を動かすように作られている。第1のDOFが垂直である実施形態では、制御装置は、相互に直交する水平座標軸(例えばx軸及びy軸)に実質的に直角である垂直軸(例えばz軸)の実質的な垂直線に沿ってLINAC203を動かすように作られている。
【0063】
図3Cは、第7の自由度用の線形トラック353に水平に取り付けられている6自由度を有するロボットアームを含んでいるロボット治療施行システム350の別の実施形態を図示している。線形トラック353は、第7のDOFとして述べられているが、第1のDOFが標準的にはロボットアーム352の基端部に直近するDOFであるので、線形トラック353は、第1のDOFと称することもできることに留意されたい。線形トラック353は、ロボットアーム352全体を治療室の中の或る位置から別の位置まで動かすことを可能にし、ロボットアーム352の6DOFに加えて第7のDOFを提供する。ロボット治療施行システム350は、6つの自由度を有する水平に取り付けられたロボットアーム352と、ロボットアーム352に連結されたLINAC203を含んでいる。ロボットアーム352は、例えば、ロボットアーム352を線形軸に沿って並進させることを可能にしているレール354を有している線形トラック353に水平に取り付けられている。ロボットアーム352は、ロボットアーム352をトラック353に沿って動かすことを可能にしているレール354と係合しているトラック取り付けアセンブリに連結されてもよい。あるいは、当業者には理解頂けるように、ロボットアーム352をトラック353に沿って動かすことを可能にするために、他の型の機構を使用してもよい。別の実施形態では、トラック353は、非線形トラックである。制御装置(図示せず)は、1つの並進DOF(例えば実質的に水平な)と、ロボットアーム352の6つの回転DOFを含んでいる7つのDOFでロボットアーム352及びLINAC203を動かすように作られている。制御装置は、LINAC203の動作の全範囲を通してロボットアーム352の他のDOFを動かすこと無く、単一軸(又は非線形経路)に沿ってロボットアーム352を動かすことができる。実際には、第7のDOFは、座標系全体を移動することを可能にしている。
【0064】
上述の実施形態は、水平に取り付けられていて、床に取り付けられている6つのDOFロボットアーム352であるが、他の構成も可能である。例えば、線形トラック353は、天井又は床内部のピットに取り付けられてもよい。更に、他の実施形態では、トラックは、支柱、壁等に垂直に取り付けられてもよい。他の実施形態では、ロボットアーム352は、本明細書で説明しているような冗長自由度を含んでいる。一実施形態では、ロボットアーム352は、6つの自由度を含んでいて、6つの自由度の内の1つは冗長DOFであり、第7のDOFは、トラックである。別の実施形態では、ロボットアーム352は、7つのDOFを含んでおり、7つのDOFの内の1つは冗長DOFであり、第8のDOFはトラックである。あるいは、ロボットアーム352は、1つより多い冗長DOFを含んでいてもよい。
【0065】
6つのDOFのみのロボットアームを使用すると、ロボットアームの動作領域を表す作業空間は、干渉性、及び可到達性の問題によって、患者を中心として非対称となり得る。例えば、ロボットアームが患者の一方の側に配置される場合、LINACは、患者、治療台、または室内の他の物体によって妨害されることによって、特定の位置に位置決めすることができない。直線トラック353は、ロボットアーム353を治療台の両側に位置決めし、対称的な作業空間を作り出すことを可能にする。直線トラック353はまた、作業空間を拡大して、従来は患者に近接することにより妨害され回避されたより多くの位置に、LINAC203を位置決めすることも可能にする。直線トラック353はまた、ロボットアーム353を患者により接近、または患者からより遠ざけるように動かすことによって、作業空間を拡大させることもできる。これは重量物を運搬する際に、体をすくめて腕を伸ばすか、または体に過度に近いか、といったことに類似し得る。近すぎる場合は、より遠くに離れればよく、遠すぎる場合は、その物体により近づけばよい。空間内でのLINAC203の一意的な位置決めは、6つのDOFによって為され得るため、第7のDOF(例えば、トラック)によって提供される柔軟性は、ロボットアーム352を、LINAC203の所与の位置に関して、治療室内の障害物または他の干渉物を回避するように位置決めするために使用することができる。第7のDOFはまた、例えば、ロボットアーム352が患者の上を通り越すことがないような、より望ましい位置を提供することもできる。第7のDOFはまた、ロボットアーム352の位置に基づいた移動時間を最適化することもできる。例えば、ロボットアーム352は、他のDOFを移動させずに、この直線のDOFに沿って移動させることができる。これらの機能の全ては同時に実行可能であるが、一実施形態では、制御装置により、順序付きリストのような優先度に従って、これらの機能のリストを完遂してもよいことに留意されたい。
【0066】
治療施行システム300および治療施行システム350は、図1に関して説明されるように、画像形成システム、運動追跡システム、および患者位置決めシステムと併用して使用することができる。
【0067】
一実施形態では、ロボットアーム202またはロボットアーム302の構成要素は、構成要素の外表面上にタッチセンス材料を含み得る。別の実施形態では、構成要素の外表面は、接触発泡材によって被覆してもよい。あるいは、他の材料を使用して、ロボットアーム202またはロボットアーム302の構成要素が、操作者に衝突するか、もしくは操作者を転倒させることを防いでもよい。当業者には既知のタッチセンス材料および接触発泡材に関する具体的な詳細は含まれてはいないが、これは、ロボットアームによる操作者の転倒または衝突を防ぐための材料で、ロボットアーム202またはロボットアーム302の外表面を被覆することに関する考察を不明瞭にしないためである。
【0068】
一実施形態では、図1、図2、図3A、および図3Bのロボットアームは、ドイツのKUKAロボット社によって製造された構成要素を含み得る。あるいは、ロボットアームの構成要素は、他の種類の構成要素を含んでもよい。
【0069】
図4Aは、治療台206に対して第1位置401にある、従来のロボット治療施行システム400の上面図を示す。従来のロボット治療施行システム400は、ロボットアーム102に連結するLINAC103を含む。ロボットアーム102は、単一の肘関節によって相互接続される2つの剛体リンクを有する。LINAC103は、治療台206に対して第1位置401に位置決めされている。第1位置401では、治療台206とLINAC103およびロボットアーム102との間に距離余裕410が存在する。
【0070】
図4Bは、一実施形態による、治療台206に対して第1位置401にある、ロボット治療システム450の上面図を示す。ロボット治療施行システム450は、ロボットアーム402に連結するLINAC203を含む。ロボットアーム402は、ロボットアーム102とは異なり、肘関節および冗長関節の2つの関節によって相互接続される3つの剛体リンクを有する。ロボットアーム102が、比較目的のために図4Dに(破線で)示されている。
【0071】
LINAC203は、治療台206に対し、同一の第1位置401に位置決めされている。第1位置では、治療台206とLINAC203およびロボットアーム402との間に距離余裕420が存在する。ロボット治療施行システム450の距離余裕420は、従来のロボット治療施行システム400の距離余裕410よりも大きい。冗長関節を含むロボットアーム402は、ロボットアームと治療室内の他の障害物との間の距離余裕を増大させるようにLINAC203を位置決めすることができる。距離余裕420が距離余裕410よりも大きいばかりではなく、ロボットアーム402は、LINAC203を第1経路を通じて第1位置401に位置決めすることができるが、この第1経路は、ロボットアーム102がLINAC103を位置決めするために採る経路のような、同一位置401への第2経路よりも、障害物(治療台206)とロボットアーム402との間に大きい距離余裕を有する。
【0072】
ロボットアーム402は、作業空間もしくは治療領域の範囲内の複数の位置において、TCPまたは治療標的を有するように、LINAC203を位置決めすることができる。しかしながら、作業空間もしくは治療領域は、例えば、LINAC203、治療台206、またはこれらの対応するアームのいずれかと、LINAC203、治療台206、画像形成供給源207、検出器208、並びに/またはロボットアーム202およびロボットアーム302のようなシステムの構成要素との間で起こり得る衝突に起因する妨害、あるいは上述のこれらの構成要素のいずれかによるLINAC203の放射線ビームの妨害、といった位置決め制限によって限定される場合がある。例えば、x線画像形成供給源207は、LINAC203がx線画像形成供給源207の取り付け場所に位置決めされることを阻止する場合があるが、これは、その場所へ位置決めすることが、想定される衝突を引き起こす恐れがあるためである(例、衝突妨害)。同様に、LINAC203は、検出器208の配置により、治療台206の下に位置決めすることができない(例、衝突妨害)。位置決め制限の別の例は、LINAC203からの放射線ビームが、他の構成要素、例えば検出器208、および/またはx線画像形成供給源207によって妨害される場合である(例、ビーム妨害)。別の妨害は、地面によって引き起こされる場合がある。少なくとも1つの冗長関節を有するロボットアームを使用して、これらの位置決め制限を克服することができる。位置決め制限を克服することにより、図5に関して説明するように、LINAC203の位置決めのための、より多くのノードが使用可能となるため、作業空間が増大し得る。作業空間内の利用可能なノードの増大に加えて、少なくとも1つの冗長関節を有するロボットアームは、作業空間内に既に存在するノードへ至る利用可能な経路の数を増大させ得る。また、いったんLINAC203を一定の位置に位置決めすると、ロボットアームの1つ以上のリンクを移動させることもできる。例えば、1つ以上のリンクを移動させて、ロボットアームと、治療台206のような治療室内の障害物との間の距離余裕を増大させることができる。更に、1つ以上の冗長関節を有する1つ以上のリンクを使用することで、ロボットアームは、拘束体積内で、その拘束体積外部の障害物と衝突することなく、医療器具を操作することができる。
【0073】
図4Cは、治療台206に対して第2位置402にある、図4Aの従来のロボット治療施行システム400の上面図を示す。ロボットアーム102がLINAC203を第2位置402に位置決めする場合は、ロボットアーム102と治療台206との間で衝突が起こり得る。したがって、第2位置402は妨害位置であり、作業空間内における可能なノードとして使用できない。
【0074】
図4Dは、一実施形態による、治療台206に対して第2位置402にある、ロボット治療施行システム450の上面図を示す。ロボットアーム102とは異なり、ロボットアーム402は、従来は位置決め制限に起因する妨害位置と見なされる第2位置402に、ロボットアーム402と治療台206との間の衝突を起こすことなく、LINAC203を位置決めすることができる。ロボットアーム102が、比較目的のために図4Dに(破線で)示されている。
【0075】
別の実施形態では、ロボットアーム402およびロボットアーム221の移動は、動的に連係し得る。治療台206とLINAC203との間の動的な移動の連係は、ロボットアームの機械的可動域内における治療標的の数を増大させることができ、ロボットアーム402の機械的可動域内、またはロボットアーム221の機械的可動域内において、位置決め制限に起因する従来の妨害位置に、治療標的を作り出すことができる。一実施形態では、従来の妨害位置は、例えば、LINAC203、治療台206、ロボットアーム202、ロボットアーム221、x線画像形成供給源207、検出器208、および/またはシステムの他の構成要素のいずれか2つの間で起こり得る衝突の妨害に起因し得るものである。あるいは、従来の妨害位置は、ロボットアーム202、ロボットアーム221、x線画像形成供給源207、検出器208、および/またはシステムの他の構成要素のいずれかによる、LINAC203の放射線ビームの妨害に起因し得るものである。別の実施形態では、患者身体を含む治療台206とシステム400の他の移動部分との間で起こり得る衝突を引き起こすような配向および/または位置に、患者を確実に配置させないように、衝突防止モデルを制御装置に組み込んでもよい。
【0076】
ロボットアーム402を使用して、LINAC203を治療台206に対して対称的な位置に位置決めすることができる。LINAC203を治療台206に対して対称的な位置に位置決めする能力は、治療計画中における治療計画システムによって計算されるもののような、治療施行前に計算される、経路計画および接触回避計画に関する単純化された経路を導き得る。LINAC203を治療台206に対して対称的な位置に位置決めする能力は、放射線を標的に直射するようにLINAC203を位置決めし得る作業空間を増大させることができる。作業空間内のノードの数が増大するため、患者の様々な部位の標的に対する放射線直射へのアクセスが増大し得る。例えば、治療台206の一方の側のノードはまた、治療台206の他方の側にも鏡像化することができる。
【0077】
使用可能な全表面積は、患者の治療標的に放射線を照射するようにLINAC203を位置決めすることができる位置またはノードを表し得る。ロボット治療施行システム450の使用可能な全表面積は、ロボット治療施行システム400の使用可能な全表面積とは異なり、上述の位置決め制限によって限定されない。ロボットアーム402を使用して、位置決め制限を低減または排除することができる。あるいは、ロボットアーム202またはロボットアーム302を使用して、位置決め制限を低減または排除し得る。
【0078】
ロボット治療施行システム400の到達不可領域は、ロボットアーム102を単に治療台206の反対側に取り付けることだけによって矯正することはできないが、これは、その場合に、反対側が治療台206およびロボットアーム102の妨害によって到達不可領域を有することになるためであることに留意されたい。換言すれば、ロボットをベースとする放射線手術システムを、単に他の側に取り付けるだけでは、ロボット治療施行システム400の到達不可領域を生じさせる妨害による位置決め制限は克服されない。
【0079】
図5は、一実施形態によるロボット治療施行システム200またはロボット治療施行システム300の作業空間511を示す透視図である。上述のように、空間ノードおよびこれらの空間ノードを相互接続する関連した安全経路の集合は、「作業空間」または「ノード群」と呼ばれる。作業空間は、ロボットアームの動作領域を表す。作業空間511は、放射線供給源を位置決めするための、作業空間511の表面上に存在する一群の空間ノード511を含む。各空間ノード511は、「+」記号(数個のみ表示)によって表される。空間ノード511は、従来の治療施行システムを位置決めし得る空間ノードを表す。上述のように、作業空間またはノード群は、空間ノードおよびこれらの空間ノードを相互接続する関連した安全経路の集合である。しかしながら、従来システムの作業空間とは異なり、作業空間511、および空間ノードの数は、治療施行システム200または治療施行システム300を使用することで増大し得る。したがって、作業空間511はまた、破線の「+」で示すような、一群の追加のまたは増大した空間ノード512も含む。作業空間511の、空間ノード511および増大した空間ノード512の総数は、従来システムの作業空間の空間ノード511の総数よりも多い。
【0080】
ロボットアーム202またはロボットアーム302を使用してLINAC203を移動させることにより、LINAC203は、従来のシステムにおいて以前にはブロックされるかまたは別様で到達不可であった、治療台206周囲の特定のゾーン(例えば、空間ノード)へアクセスすることができる。例えば、従来のロボットアームは、LINAC103を特定の位置に位置決めするために、治療台106の周囲にLINAC203を位置決めすることができなかった。しかしながら、本明細書に記載されるように、治療施行システム200および治療施行システム300に関しては、これらのブロックされた位置は、ブロックされず、到達可能である。従来システムにおいて以前には治療台によりブロックされるかまたは別様で到達不可であったそれら特定のゾーンへの、より高いアクセス可能性を有することで、作業空間511(例えば、LINAC203が放射線を標的に照射することができる空間ノード)が増大する。更に、従来のロボットアームと患者との間の距離余裕のために、従来のロボットアームではアクセスできなかった追加の空間ノードに、アクセスすることができる。
【0081】
作業空間511は球状であるが、代替的に、作業空間511は他の幾何学形状(例えば、楕円状)を有してもよく、また、患者の頭部内または患者の他の部位内に存在するVOIに関して画定されることに留意されたい。更には、複数の作業空間を、患者の異なる部分に関して画定してもよく、各作業空間は、650mmおよび800mmのような異なる半径または軸間距離(SAD)を有する。このSADは、LINAC203のコリメータとVOI内の標的との距離である。SADは、作業空間の表面積を規定する。楕円状作業空間の一実施形態では、SADを900mm〜1000mmの範囲とすることができる。他のSADを使用してもよい。
【0082】
空間ノード511および増大空間ノード512は、作業空間511の表面上に存在する。空間ノードは、LINAC203が停止して、患者内のVOIへ一定線量の放射線を照射するように予めプログラムされた場所を表す。治療計画を施行する間、ロボットアーム202は、既定の経路に従い、一定線量の照射が決定された空間ノード112および空間ノード412のそれぞれ全てに、LINAC203を移動させる。この既定の経路はまた、ロボットアーム202またはロボットアーム302の動きを単純化するために、照射線量が必要とされない空間ノード511および空間ノード512を含んでもよい。
【0083】
ノード群は、作業空間511の幾何学表面にわたって実質的に均一に分布する空間ノードを含み得る。ノード群は、プログラムされた空間ノード511および空間ノード412の全てを含み、ほとんどの病気および関連するVOIに対する治療計画解決法を効果的に演算するための、作業可能な数の空間ノード511および空間ノード512を提供する。ノード群は、多種多様な異なるVOIに対しての均一性および原体性の許容限界が達成され得るように、適度に多数の空間ノード511および空間ノード512を提供する一方で、患者内の重要組織を避けるための十分な視点を提供する。本明細書の実施形態を使用する場合、空間ノードの数は、従来システムの空間ノードの数よりも多い。ノード群は、空間ノード511および空間ノード512を、図示または論じられているものよりも多く、あるいは少なく含み得ることを理解されたい。例えば、処理能力が向上し、治療計画を作り出す経験が増すにつれて、空間ノード511および空間ノード512の平均数は時間と共に増大し、より高度な柔軟性およびより高い質の治療計画が提供され得る。
【0084】
放射線治療の間、患者は治療台206上に安置され、この治療台206は、標的を含む関心体積(「VOI」)を、設定位置に、またはLINAC203の放射線供給源にアクセス可能な動作範囲内に位置決めするように操作される。ロボットアーム202またはロボットアーム302は、LINAC203をほぼ無限の数の位置および配向でその動作領域内に位置決めすることが可能な、7つのDOFを有する。
【0085】
上述のように、本明細書に記載される実施形態は、LINACに連結するロボットアームとして図示し、説明しているが、しかしながら他の実施形態では、他のロボットマニピュレータおよび/または他の医療器具を使用してもよい。例えば、医療器具は、画像装置の画像形成供給源、外科手術用器具、インプラント器具、治療台であってもよい。治療台の場合では、ロボットアームは、ロボットアームと治療室内の他の障害物との間の距離余裕の増大、利用可能な作業空間の増大などのために、上述のLINACと同様に治療台を位置決めすることができる。
【0086】
本明細書に記載される実施形態によって、LINAC203を様々な位置で位置決めし、1つ以上の放射線ビームを治療台上の患者に向けて直射することが可能となる。例えば、治療台上に横たわる患者の頭部内の標的に放射線を直射するための第1位置に、LINAC203を位置決めすることができる。あるいは、臀部治療に関する患者内の標的に放射線を直射するための第2位置に、LINAC203を位置決めすることができる。臀部治療の間、患者が治療台上に仰臥位で横たわる状態で、LINAC203を患者に対して上方に向けるように位置決めし、臀部方向から治療ビームを照射することができる。LINAC203はまた、位置および/もしくは同一の場所での配向を移動させることによって、異なる場所に移動させることもでき、または同一の場所で異なる配向に移動させることもできる。例えば、ロボットアームは、実質的に垂直な直線DOF(例えば、トラック226)および追加のDOF(例えば、冗長関節、肘アセンブリ、および肩アセンブリ)を使用して、患者の上方にLINAC203を位置決めおよび配向させて垂直方向のリーチを提供する一方で、リストアセンブリ212が、臀部治療の標的に対してLINAC203の配向を提供することができる(例えば、リストアセンブリ212の器具ヨー関節を使用してLINAC203をピッチ軸を中心に回転させる)。あるいは、ロボットアーム202の他の動きを使用して、臀部治療の標的に対してLINAC203を位置決めおよび配向することができる。あるいは、位置283のLINAC203は、他の種類の治療の標的に放射線を直射するよう構成される。
【0087】
図6は、ロボットマニピュレータを使用して医療器具を位置決めするための方法600の一実施形態を示す。この方法600は、7つ以上のDOFを有するロボットマニピュレータに連結する医療器具(例えばLINAC203)を提供する、工程601、およびロボットマニピュレータを使用して、7つ以上のDOFに沿って医療器具を移動させる、工程602を含む。
【0088】
7つ以上のDOFに沿って医療器具を移動させることは、互いに直交するx座標軸、y座標軸、およびz座標軸に沿った、医療器具の並進移動のための4つの回転軸において、並びにx軸、y軸、およびz軸をそれぞれ中心とする、医療器具のロール回転、ピッチ回転、およびヨー回転のための3つの回転軸において、医療器具を移動させることを含む。一実施形態では、医療器具は、4つの回転軸を使用して医療器具を移動させることにより固定位置に位置決めされ、3つの回転軸を使用して固定位置で配向させることができる。医療器具はまた、実質的に直線のDOFに沿って移動させることもできる。実質的に直線のDOFは、上述の回転DOFに追加されてもよく、上述の回転DOFの1つの代わりであってもよい。一実施形態では、医療器具は、水平座標系のx軸およびy軸に対して実質的に垂直なz軸における実質的な垂直線に沿った、医療器具の並進移動のための実質的に直線の軸を有する、実質的に垂直、直線のDOFに沿って移動する。別の実施形態では、医療器具は、z軸に対し実質的に垂直な、互いに直交する水平座標系のx軸およびy軸における水平線に沿った、医療器具の並進移動のための実質的に直線の軸を有する、実質的に水平、直線のDOFに沿って移動する。医療器具は、6つ(7つのDOFについて)または7つ(8つのDOFについて)の回転DOFにおいて医療器具を回転させることなく、実質的に直線の軸に沿って、医療器具の可動域の実質的に全体にわたり移動することができる。
【0089】
別の実施形態では、医療器具は、ロボットマニピュレータの器具ヨー関節、器具ピッチ関節、および器具ロール関節を使用して、x軸、y軸、およびz軸を中心に回転させることができる。医療器具はまた、ロボットマニピュレータの冗長関節、肘関節、および第1肩関節をそれぞれ使用して、第1回転軸、第2回転軸、および第3回転軸を中心に回転させることもできる。医療器具は、第2肩関節を使用して第4回転軸を中心に回転させるか、または第7DOFに対するトラックおよびトラック取り付けアセンブリを使用して実質的に直線の軸を中心に並進移動させることができる。
【0090】
別の実施形態では、医療器具を、ロボットマニピュレータを使用して固定位置に位置決めし、また固定位置に維持しつつロボットマニピュレータを移動させることができる。医療器具は、拘束体積内に、その拘束体積外部の物体と衝突することなく、位置決めすることができる。
【0091】
この方法はまた、ロボットマニピュレータおよび医療器具の機械的可動域内における、位置決め制限に起因する従来の妨害位置に、医療器具を位置決めすることも含む。別の実施形態では、医療器具は、第1位置から第2位置へと、障害物に起因する同一の第2位置への妨害経路を通らずに、第1経路を通って位置決めされる。別の実施形態では、医療器具は、第1位置から第2位置へと、第1経路を通って位置決めされ、この第1経路は、同一の第2位置への第2経路よりも、障害物とロボットマニピュレータおよび医療器具との間に、大きい距離余裕を有する。
【0092】
図7は、医療器具を固定位置に維持するための方法の別の実施形態を示す。この方法は、ロボットマニピュレータを使用して医療器具を固定位置に位置決めする、工程701、および医療器具を固定位置に維持する一方で、ロボットマニピュレータを移動させる、工程702を含む。一実施形態では、ロボットマニピュレータは、関節によって相互接続された複数の剛体リンクを含む。医療器具を固定位置に維持する一方で、ロボットマニピュレータの剛体リンクの1つ以上を移動させることができる。医療器具は、拘束体積内に、その拘束体積外部の物体と衝突することなく、位置決めすることができる。
【0093】
別の実施形態では、この方法は、画像形成視野を有する画像形成システムを提供すること、およびLINAC203を、全ての支援治療位置に対して、画像形成視野の実質的な外部に維持することを含む。
【0094】
一実施形態では、LINAC203および治療台206の移動は、制御装置を使用して、LINAC203および治療台206の配向並びに位置を動的に連係させることを含む。別の実施形態では、LINAC203および治療台206の移動は、LINAC203の放射線供給源を、治療台206上に配置された患者内の治療標的と位置合わせすることを含む。別の実施形態では、LINAC203および治療台206の移動は、ロボットアーム202およびLINAC203の機械的可動域内における、従来の妨害位置内に、治療標的を作り出すように、LINAC203および治療台206を位置決めすることを更に含む。
【0095】
図8は、本発明の実施形態を実現し得る、放射線治療の実施に使用することができる治療システム800の一実施形態のブロック図を示す。図示の治療システム800は、診断画像形成システム810、治療計画システム830、および治療施行システム850を含む。他の実施形態では、治療システム800は、より少ない構成要素、またはより多い構成要素のシステムを含み得る。
【0096】
診断画像形成システム810は、患者内の関心体積(VOI)の医療診断画像を作り出すことが可能な任意のシステムを表し、その画像は、後続の医療診断、治療計画、および/または治療施行のために使用することができる。例えば、診断画像形成システム810は、コンピュータ断層撮影(CT)システム、単光子放出コンピュータ断層撮影(SPECT)システム、磁気共鳴画像(MRI)システム、ポジトロン放出断層撮影(PET)システム、近赤外線蛍光画像システム、超音波システム、または他の同様の画像形成システムとすることができる。考察の容易性のために、本明細書での、CT用x線画像形成システム(または他の特定のシステム)のような特定の画像形成システムへのいずれの具体的参照も、一般に、診断画像形成システム810を表すものであり、特に指定のない限り、他の画像診断法を排除するものではない。
【0097】
図示の診断画像形成システム810は、画像形成供給源812、画像形成検出器814、および処理デバイス816を含む。画像形成供給源812、画像形成検出器814、および処理デバイス816は、バスのような通信チャネルによって互いに連結される。一実施形態では、画像形成供給源812は画像形成ビーム(例えばx線、超音波、高周波など)を生成し、画像形成検出器814は画像形成ビームを検出して受け取る。あるいは、画像形成検出器814は、画像形成供給源からの画像形成ビームによって誘導された二次画像形成ビーム、または放射物を検出して受け取ることができる(例えば、MRIスキャンまたはPETスキャンにおいて)。一実施形態では、診断画像形成システム810は、2つ以上の診断画像形成供給源812、および対応する2つ以上の画像形成検出器814を含み得る。例えば、2つのx線供給源812を、画像形成される患者の周囲に配置し、互いに角度分離させて固定し(例えば、90度、45度など)、画像形成供給源814に直径方向で対向し得る、対応する画像形成検出器814に向けて、患者を通して照準を合わせてもよい。単一の大型画像形成検出器814、または複数の画像形成検出器814もまた、各x線画像形成供給源814によって照射することができる。あるいは、他の数および他の構成の画像形成供給源812並びに画像形成検出器814を使用してもよい。
【0098】
画像形成供給源812および画像形成検出器814は、診断画像形成システム810内における画像形成工程の制御および画像データの処理のために、処理デバイス816に連結される。一実施形態では、処理デバイス816は、画像形成供給源812および画像形成検出器814と通信を行なうことができる。処理デバイス816の実施形態は、1つ以上の、汎用プロセッサ(例えばマイクロプロセッサ)、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)のような専用プロセッサ、または制御装置もしくはフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)のような他の種類のデバイスを含み得る。処理デバイス816はまた、メモリ、ストレージデバイス、ネットワークアダプタなどのような、他の構成要素(図示せず)も含み得る。一実施形態では、処理デバイス816は、医療用デジタル画像通信(DICOM)形式のような標準形式で、デジタル診断画像を生成する。他の実施形態では、処理デバイス816は、標準または非標準の、他のデジタル画像形式を生成することができる。
【0099】
更には、処理デバイス816は、DICOMファイルのような診断画像ファイルを、データリンク860を経由して治療計画システム830に伝送することができる。一実施形態では、データリンク860は、直接リンク、ローカルエリアネットワーク(LAN)リンク、インターネットのような広域ネットワーク(WAN)リンク、または他の種類のデータリンクとすることができる。更には、診断画像形成システム810と治療計画システム830との間で伝送される情報は、遠隔診断または遠隔治療計画の構成におけるような、データリンク860を介した引き出し、または転送が可能である。例えば、ユーザは、本発明の実施形態を利用して、システムユーザと患者との間に物理的分離が存在するにもかかわらず、遠隔的な診断または治療計画を行なうことができる。
【0100】
図示の治療計画システム830は、処理デバイス832、システムメモリデバイス834、電子データストレージデバイス836、ディスプレイデバイス838、および入力デバイス840を含む。処理デバイス832、システムメモリ834、ストレージ836、ディスプレイ838、および入力デバイス840は、1つ以上のバスのような通信チャネル842によって互いに連結することができる。
【0101】
処理デバイス832は、画像データを受け取って処理する。処理デバイス832はまた、治療計画システム830内で、命令および動作の処理も行なう。特定の実施形態では、処理デバイス832は、1つ以上の、汎用プロセッサ(例えばマイクロプロセッサ)、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)のような専用プロセッサ、または制御装置もしくはフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)のような他の種類のデバイスを含み得る。
【0102】
具体的には、処理デバイス832は、本明細書で論じる治療工程を行なうための命令を実行するように構成することができる。例えば、処理デバイス832は、患者内の標的の非線形移動経路を識別し、非線形移動経路の非線形モデルを生成することができる。別の実施経路では、処理デバイス832は、複数の位置決め点および複数の方向表示に基づく非線形モデルを生成することができる。別の実施経路では、処理デバイス832は、複数の相関モデルを作成し、そのモデルの1つを選択して標的の位置を導き出すことができる。更には、処理デバイス832は、本明細書で論じる工程に関連する、他の診断、計画、および治療工程を容易にし得る。
【0103】
一実施形態では、システムメモリ834は、ランダムアクセスメモリ(RAM)または他の動的ストレージデバイスを含み得る。上述のように、システムメモリ834は、通信チャネル842によって、処理デバイス832に連結することができる。一実施形態では、システムメモリ834は、情報、および処理デバイス832によって実行される命令を記憶する。システムメモリ834はまた、処理デバイス832による命令の実行中に、一時的な変数または中間情報を記憶するために使用することもできる。別の実施形態では、システムメモリ834はまた、静的情報、および処理デバイス832に関する命令を記憶するための、読み取り専用メモリ(ROM)または他の静的ストレージデバイスも含み得る。
【0104】
一実施形態では、ストレージ836は、情報および命令を記憶するための、1つ以上の大容量ストレージデバイス(例えば、磁気ディスクドライブ、テープドライブ、光学ディスクドライブなど)を表す。ストレージ836および/またはシステムメモリ834はまた、機械可読媒体と呼ぶこともできる。特定の実施形態では、ストレージ836は、本明細書で論じるモデル化の工程を実行するための命令を記憶することができる。例えば、ストレージ836は、データ点の取得および記憶、画像の取得および記憶、非線形経路の識別、線形および/または非線形の相関モデルの生成などのための命令を記憶することができる。別の実施形態では、ストレージ836は、1つ以上のデータベースを含み得る。
【0105】
一実施形態では、ディスプレイ838は、陰極線管(CRT)ディスプレイ、液晶ディスプレイ(LCD)、または別の種類のディスプレイデバイスとすることができる。ディスプレイ838は、情報(例えば、VOIの2次元または3D表示)をユーザに対して表示する。入力デバイス840は、キーボード、マウス、トラックボール、または同様のデバイスのような、1つ以上のユーザインターフェイスデバイスを含み得る。入力デバイス840はまた、指向性情報の伝達、処理デバイス832に関するコマンドの選択、ディスプレイ838上のカーソル移動の制御などのために使用することもできる。
【0106】
治療計画システム830の一実施形態が本明細書に記載されるが、記載される治療計画システム830は、治療計画システム830の一例を表すのみである。治療計画システム830の他の実施形態は、多くの異なる構成およびアーキテクチャを有し得、より少ない構成要素またはより多くの構成要素を含み得る。例えば、他の実施形態は、周辺バスまたは専用キャッシュバスのような、複数のバスを含み得る。更には、治療計画システム830はまた、画像を融合させ、異なるシステム上に標的を明確に示し、次いで計画および線量計算のために治療計画システム830内に取り込むことができるように、DICOMの取り込みに対応する医療画像再生取り込みツール(MIRIT)を含み得る。別の実施形態では、治療計画システム830はまた、MRI、CT、PETなどのような様々な画像診断法の任意の1つにおいて、ユーザが治療を計画し、線量分布を視認できる、拡大画像融合機能を含み得る。更には、治療計画システム830は、従来の治療計画システムの機構を1つ以上含み得る。
【0107】
一実施形態では、治療計画システム830は、ストレージ836上のデータベースを、治療施行システム850と共有し、それによって治療施行システム850は、治療施行の前または治療施行の間に、そのデータベースにアクセスすることができる。治療計画システム830は、データリンク870を介して治療施行システム850にリンクすることができ、このデータリンク870は、データリンク860に関して上述したような、直接リンク、LANリンク、またはWANリンクとすることができる。LAN、WAN、または他の分散型の接続が実施される場合は、治療システム800のいずれの構成要素も分散化した場所に存在させることができ、そのため個々のシステム810、830、および850は、互いに物理的に遠く離れてもよい。あるいは、診断画像形成システム810、治療計画システム830、もしくは治療施行システム850の、機能上の特徴の一部または全てを、治療システム800内で互いに統合させてもよい。
【0108】
図示の治療施行システム850は、放射線供給源852、画像形成システム854、処理デバイス856、および治療台858を含む。放射線供給源852、画像形成システム854、処理デバイス856、および治療台858は、1つ以上の通信チャネル860を介して互いに連結させることができる。治療施行システム850の一例は、図4Aを参照して、より詳細に示され、説明される。
【0109】
一実施形態では、放射線供給源852は、治療計画に準拠して、既定の放射線量を標的体積に照射するための、治療的または外科的放射線供給源852である。一実施形態では、放射線供給源852は、本明細書に記載されるLINAC203である。あるいは、放射線供給源852は、当業者には明らかであるような、他の種類の放射線供給源であってもよい。例えば、標的体積は、内臓器官、腫瘍、体域とすることができる。上述のように、標的、標的体積、標的領域、標的部位、または内部標的への本明細書における言及は、臓器、腫瘍、体域、もしくは治療計画の対象である他の明確に示された体積の全体または部分のいずれを指すものである。
【0110】
一実施形態では、治療施行システム850の画像形成システム854は、放射線供給源に対する患者の位置決めを目的とする、上述の診断画像との位置合わせまたは関連付けのために、標的体積を含む患者体積の治療中画像を捕捉する。診断画像形成システム810と同様に、治療施行システム850の画像形成システム854は、1つ以上の供給源および1つ以上の検出器を含み得る。
【0111】
治療施行システム850はまた、放射線供給源852、画像形成システム854、および任意の患者支持デバイスを表す治療台858を制御するための、処理デバイス856も含み得る。一実施形態では、治療台858は、本明細書に記載の、ロボットアーム202またはロボットアーム302に連結する、治療台206である。別の実施形態では、治療台858は、本明細書に記載の、ロボットアーム106に連結する治療台である。あるいは、他の種類の患者支持デバイスを使用してもよい。一実施形態では、放射線供給源852は、第1のロボットアーム(例えば、ロボットアーム202)に連結され、治療台858は、第2のロボットアーム(例えば、ロボットアーム221)に連結される。第1のロボットアームおよび第2ロボットアームは、同じ制御装置(例えば、制御装置)または個別の制御装置に連結することができる。一実施形態では、第1のロボットアームおよび第2のロボットアームは、同一のロボットアームである。一実施形態では、第1のロボットアームおよび第2のロボットアームのそれぞれは、4つの回転DOF、および1つの実質的に直線のDOFを含む。別の実施形態では、第1のロボットアームおよび第2のロボットアームのそれぞれは、5つの回転DOF、および1つの実質的に直線のDOFを含む。あるいは、第1のロボットアームおよび第2ロボットアームのそれぞれは、6つの回転DOF、および1つの実質的に直線のDOFを含む。あるいは、第1のロボットアームおよび第2のロボットアームは、異なる数および異なる種類のDOFを含み得る。別の実施形態では、第1のロボットアームおよび第2のロボットアームは、異なる種類のロボットアームである。あるいは、治療台206に対してLINAC203を移動させるために、第1のロボットアームのみが使用される。
【0112】
処理デバイス856は、1つ以上の、汎用プロセッサ(例えばマイクロプロセッサ)、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)のような専用プロセッサ、または制御装置もしくはフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)のような他のデバイスを含み得る。更には、処理デバイス856は、メモリ、ストレージデバイス、ネットワークアダプタなどのような、他の構成要素(図示せず)も含み得る。
【0113】
図示の治療施行システム850はまた、ユーザインターフェイス862および測定デバイス864も含む。一実施形態では、ユーザインターフェイス862は、ユーザインターフェイス500である。別の実施形態では、ユーザインターフェイス862は、グラフィカルユーザインターフェイス600である。一実施形態では、ユーザインターフェイス862によって、ユーザは治療施行システム850と連携することが可能となる。具体的には、ユーザインターフェイス862は、キーボード、ディスプレイ画面などのような、入力デバイスおよび出力デバイスを含み得る。測定デバイス864は、標的領域20に実際に照射される放射線に影響を及ぼし得る上述の外的要因のような外的要因を測定する、1つ以上のデバイスとすることができる。一部の例示的な測定デバイスとしては、周囲温度を測定するための温度計、湿度を測定するための湿度計、空気圧を測定するための気圧計、または外的要因を測定するための、任意の他の種類の測定デバイスが挙げられる。
【0114】
上記明細書において、本発明の実施形態は、特定の例示的な実施形態を参照して説明されている。しかしながら、特許請求の範囲に記載される本実施形態の広い精神および範囲から逸脱することなく、様々な修正および変更を加え得ることは明白であろう。したがって、本明細書および図面は、限定的ではなく例示的な意味において解釈されたい。
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2008年9月12日出願の米国仮特許出願第61/096,728号の恩恵を請求し、同仮出願の全体の内容を参照することによりここに援用する。
【0002】
本発明の実施形態は、医療用途で使用されるロボットマニピュレータの分野に関する。
【背景技術】
【0003】
従来式のロボットは、例えば組み立て用の組み立てラインなどにおけるように、全く同じことを何度も繰り返して行うように設計されている。それらのロボットは、特定の機能を遂行するために所与の動きを繰り返すようにプログラム化及び設定されている。ロボットは、多くの場合、人間に比べてより効率的に、及び多くの場合より正確に遂行するために組み入れられる。
【0004】
従来式のロボットは、典型的には、1つ又は2つのロボットアームを含んでいる。それらのロボットアームは、異なる自由度(DOF)で動きを促進ことに役立つ複数のセグメントを有する場合がある。幾つかの従来式のロボットは、対応するセグメントに接続される個別のステップモータの回転を作動させることによってロボットアームのセグメントを制御するためにコンピュータを採用している。他の設計では、アームセグメントの動きを作動させるために油圧技術又は空気圧技術を使用する場合もある。コンピュータは、ロボットアームの正確な再現可能な動きを可能にしている。
【0005】
先行の選択的に柔軟な多関節ロボットアーム(SCARA)ロボットは、4又はそれより少ない自由度(「DOF」)で動作している。言い換えれば、それらのロボットアームは、4つ又はそれより少ない軸に沿って動くように設計されている。従来式のロボットアームの標準的な用途は、ピックアンドプレース方式の機械の利用である。ピックアンドプレース方式機械は、自動化組み立て、自動化配置、プリント基板製造、集積回路ピックアンドプレース、及び機械加工、計測、検査及び溶接のような小項目を含む他の自動化業務で使用されている。それらのロボットアームは、ロボット周辺機器、ロボット付属品、ロボット又はロボット用具、アーム端末(EOA)用具又はアーム端末デバイスとしても知られているエンドエフェクタを含んでいる。エンドエフェクタは、ロボット把持部、プレス用具、塗装スプレーヤ、ブロートーチ、バリ取り用具、アーク溶接砲、ドリル等のような器具であり得る。それらのエンドエフェクタは、典型的には、ロボットアームの端部に設置され、上述の用途で使用される。1つの一般的なエンドエフェクタは、異なる目的物を把持及び運搬する手の簡略版である。そのようなエンドエフェクタは、標準的には、3kgから20kg(6.61ポンドから44.09ポンド)の範囲の最大積載量を支持する。
【0006】
放射線治療システムの放射線供給源の位置決めで使用されている別の型のロボットは、Adlerによる米国特許第5,207,223号に記載されるような、選択的に放射線を放つために、関節ロボットアームの遠位端部に取り付けられる直線加速度計(LINAC)のような放射線供給源を位置決めするための多関節ロボットアームを含んでいる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書で説明しているのは、7つ以上の自由度に沿って医療器具を移動することができるロボットマニピュレータに連結された医療器具を有する装置であり、ロボットマニピュレータは、少なくとも1つの冗長関節を有している。以下の説明では、本実施形態を深く理解頂くために、特定の構成要素、デバイス、方法等の実例のような多数の特定の細部が述べられている。しかしながら、当業者には自明のように、それらの特定の細部を、本実施形態を実施するために採用する必要はない。本実施形態を不必要に分かりにくくすることを回避するために、他の例では周知の材料又は方法を詳細に説明していない。
【0008】
ロボットマニピュレータは、7つ以上のDOFでロボットマニュピレータに取り付けられる医療器具を位置決めすることができる。ロボットマニュピレータは、7つ以上のDOFで医療器具を動かすために、関節で相互に接続されている複数の剛性リンクを含んでいる。剛性リンクの1つは、追加の関節(本明細書では冗長関節とも呼ばれている)を含んでいる。複数の剛性リンクは、関節によって相互接続されていて、医療器具の回転又は並進変位を可能にしている。一実施形態では、7つのDOFは、少なくとも1つの冗長DOFを含んでいる。追加の関節は、1つの冗長DOFで医療器具を動かすために使用することができる。例えば、複数の剛性リンクは、関節によって相互接続されていて、6DOFで医療器具を動かすために使用されてもよく、追加の関節は、第7のDOFで医療器具を動かすために使用されてもよく、第7のDOFは、冗長DOFである。あるいは、複数の剛性リンクは、関節によって相互接続されていて、7つより多いDOFで医療器具を動かすために使用されてもよく、剛性リンクのうちの1つの、2つの追加の関節は、2つの冗長DOFで医療器具を動かすために使用されている。
【0009】
ロボットマニュピレータは、例えば治療上の放射線処理の間、放射線供給源の位置及び方向性を調整するためのロボット治療施行システムで使用することができる。ロボット治療施行システムは、三次元(3D)空間においてLINACなどの放射線供給源を位置決め及び配向するための関節ロボットアームのようなロボットマニュピレータを含んでいる。しかしながら、従来式のロボット治療施行システムとは異なり、本明細書で説明している実施形態のロボットマニュピレータは、第7以上のDOFに沿って医療器具を動かすために、6DOFを有する従来式のロボットアームで使用されるものと比べて1つ以上の追加の関節を含んでいる。例えば、第3の軸(A3)及びリストアセンブリの間のリンクに追加の関節を加えることによって、ロボットマニュピレータは、患者又は治療台をロボットマニュピレータとの衝突の危険性に曝すこと無く、従来式のロボットアームと比較してより広範囲の動きが可能となるように、関節を位置決めすることができる。同様の結果は、ロボットマニュピレータが、大容積のロボットマニュピレータを例えば床に向けて回転させることを可能にするために第1及び第2の軸(A1及びA2)の場所に第3の関節を追加することによって実現することができる。この実例を用いれば、ロボットマニュピレータは、医療用具を複数の高さに位置決めすることができ、例えば、ロボットマニュピレータは、LINACを高所にあるアイソセンタには低い位置又は低所にあるアイソセンタには高い位置に位置決めすることができる。
【0010】
本明細書で説明している実施形態は、7つ以上の自由度の内の1つ以上の冗長DOFを含んでいるので、本明細書で説明している実施形態は、従来式の6DOFロボットアームと比べてより多くの可能性を有している。追加の自由度が与えられて、ロボットマニュピレータの作業空間が大幅に増大する一方で、1つ以上の冗長DOFを有するロボットマニュピレータは、医療器具の所与の用具姿勢のための無数の構成を提供する。作業空間は、ロボットマニュピレータの動作領域を表す。ロボットマニュピレータの1つ以上の冗長DOFは、更に、ロボットマニュピレータが、器具の位置を変えないままで動くこと、その上円滑な平面運動ができること、を可能にすることができる。それらの追加のDOFは、更に、ロバストな障害物回避に必要な動きを可能にすることができる。本明細書で説明している実施形態は、多くのノード及びノード(例えば現存するノード及び新しいノード)に達する多くのパスを提供することができる。本明細書で説明している実施形態は、更に、ノードに達するパスの最適化を提供することができる。例えば、本明細書で説明している実施形態は、ノードを横切る時間を減らすこと、ならびに可能な障害物の間の距離余裕又は隙間を増やすことを可能にしている。本明細書で説明している実施形態は、更に、ロボットマニュピレータを使用して医療器具を固定位置に位置決めし、医療器具を固定位置に維持しながら、ロボットマニピュレータを移動させることができる。本明細書で説明している実施形態は、更に、拘束体積の外部の物体と衝突することなく拘束体積(例えば障害物迷路)の中を通過させて医療器具を操作するために使用することができる。
【0011】
従来式のシステムでは、6より多いDOFを有するロボットアームは、ハードウェアの複雑性が増し、要求される運動学的分析が増すという理由で通例的には敬遠されてきたことを留意されたい。しかしながら、本明細書で説明している実施形態は、障害物を回避するために使用することができ、ロボットマニュピレータは、器具位置及び器具方向性の運動学的分析を単純化するために、2つのセグメント、アセンブリ及びアームアセンブリに分解することができる。例えば、各々のセグメントの運動学を解決するために異なる方法を用いることができる。
【0012】
本明細書で説明する実施形態は、LINACに連結されたロボットアームとして描写及び説明してきたが、他の実施形態では他のロボットマニュピレータ及び/又は他の医療器具を使用してもよいことを留意されたい。例えば、医療器具は、画像装置の画像形成供給源、外科手術用器具、インプラント器具、治療台等であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】7自由度を有するロボットアームを含んでいるロボット治療施行システムの一実施形態を図示している。
【図2】冗長関節を有するロボット治療施行システムの別の実施形態を図示している。
【図3A】7つの自由度を有する垂直に取り付けられたロボットアームを含んでいるロボット治療施行システム300の一実施形態を、第1の軸に沿った第1位置で図示している。
【図3B】図3Aのロボット治療施行システムの別の実施形態を、第1の軸に沿った第2位置で図示している。
【図3C】第7の自由度用の線形トラック上に水平に取り付けられた6自由度を有するロボットアームを含んでいるロボット治療施行システム350の別の実施形態を図示している。
【図4A】従来式のロボット治療施行システムの上面図を治療台に対する第1位置で図示している。
【図4B】一実施形態による、ロボット治療システムの上面図を治療台に対する第1位置で図示している。
【図4C】図4Aの従来式のロボット治療施行システムの上面図を治療台に対する第2位置で図示している。
【図4D】一実施形態による、図4Bのロボット治療施行システムの上面図を治療台に対する第2位置で図示している。
【図5】一実施形態による、ロボット治療施行システムの作業空間を図示している透視図である。
【図6】ロボットマニピュレータを使用して医療器具を位置付けるための方法の一実施形態を図示している。
【図7】固定位置で医療器具を維持するための方法の別の実施形態を図示している。
【図8】本発明の実施形態を実現し得る、放射線治療の実施に使用することができる治療システムの一実施形態のブロック図を図示している。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施形態は、添付図面の図中では、制限を課すためのものではなく例証として図示されている。
【0015】
図1は、7つの自由度を有するロボットアーム202を含んでいるロボット治療施行システム200の一実施形態を図示している。ロボット治療施行システム200は、LINAC203と、リストアセンブリ212及びアームアセンブリを有するロボットアーム202と、を含んでいる。リストアセンブリ212は、3つの回転DOF(軸5から軸7)でLINAC203を動かすように作られており、アームアセンブリは、4つのDOF(軸1から軸4)でLINAC203を動かすように作られており、1つは冗長DOFである。アームアセンブリは、冗長DOFを含む、4つのDOFでLINAC203を動かすために、関節で相互に接続されている複数の剛性リンクを含んでいる。
【0016】
LINAC203は、目標物に向けることができる放射線ビームを発するために使用されている。ロボットアームは、患者205を取り巻く作業体積の中で多数の角度から施行される放射線で病的状態の体の部位のような目標物を照射するようにLINAC203を適正に位置付ける及び配向するために複数の回転DOFを有している。患者205は、ヒト患者及びあるいは動物患者であってもよいものと留意されたい。更に、他の実施形態では、ヒト又は動物以外の他の目的物を使用し得る。ロボット治療施行システム200で実施される治療は、単一のアイソセンタ(収束点)、複数のアイソセンタを伴う又は特定のアイソセンタの無い、ビーム路程を含んでいてもよい。(即ちビームは、病的な目標物体積と交差しさえすればよく、目標物の範囲内の一点又はアイソセンタに収束する必要はない)。その上、治療は、治療計画中に決定されるように単一のセッション(モノフラクション)又は少数のセッション(ハイポフラクション)のどちらかで施行されてもよい。ロボット治療施行システム200は、術前治療計画段階の間に目標物体積の術中位置を目標物容積の位置に合わせるために患者を硬い外部フレームに固定すること無く治療計画に従って放射線ビームを送出する。
【0017】
LINAC203は、リストアセンブリ212に回転自在に取り付けられており、リストアセンブリ212は、器具ヨー関節、器具ピッチ関節及び器具ロール関節を含んでいる。リストアセンブリ212の器具ヨー関節は、取り付けプレート(図示せず)と連結することができ、取り付けプレートは、LINAC203の底部に取り付けられてもよい。あるいは、リストアセンブリ212の器具ヨー関節は、LINAC203の底部に直接的に連結されてもよい。リストアセンブリ212の器具ヨー関節は、z軸に沿ってヨー回転するLINAC203の回転性の動きを促進する。器具ピッチ関節は、器具ヨー関節と連結することができ、y軸に沿ってピッチ回転するLINAC203の回転性の動きを促進する。器具ロール関節は、器具ピッチ関節と連結することができ、x軸に沿ってロール回転するLINAC203の回転性の動きを促進する。z軸、y軸及びx軸は、ロボットアーム202の軸5から軸7であり得る。
【0018】
描写している実施形態では、アームアセンブリは、冗長関節アセンブリ212、肘アセンブリ213、第1の肩アセンブリ214及び第2の肩アセンブリ215を含んでいる。冗長関節アセンブリ211は、リストアセンブリ212の器具ロール関節に連結される。冗長関節アセンブリ213は、リストアセンブリ212の関節の回転性の動きを駆動するために3つの駆動軸及び3つのモータを含んでいてもよい。一実施形態では、本明細書で論じるモータはステップモータであってもよい。あるいは、モータは、当業者には理解頂けるように、サーボモータ又は他のモータであってもよい。第1の駆動軸は、器具ヨー関節及び第1のモータと連結することができる。第1のモータ及び駆動軸は、ヨー軸である軸7に沿ったLINAC203の回転性の動きを駆動する。第2の駆動軸は、器具ピッチ関節及び第2のモータと連結することができる。第2のモータ及び駆動軸は、ピッチ軸である軸6に沿ったLINAC203の回転性の動きを駆動する。第3の駆動軸は、器具ロール関節及び第3のモータと連結することができる。第3のモータ及び駆動軸は、ロール軸である軸5に沿ったLINAC203の回転性の動きを駆動する。これらの軸は、軸5から軸7の他の順序で設計されてもよいものと留意されたい。
【0019】
肘アセンブリ213は、冗長関節によって冗長関節アセンブリ211に連結されており、第1の肩アセンブリ214は、肘部関節によって肘アセンブリ213に連結されている。冗長関節は、回転軸、軸4での冗長関節アセンブリ211の回転性の動きを駆動するように作られることができる変速装置を含んでいる。肘部関節は、回転軸、軸3での肘アセンブリ213の回転性の動きを駆動するように作られることができる肘部変速装置を含んでいる。肩アセンブリ214は、回転軸、軸2での第1の肩アセンブリ214の回転性の動きを駆動するように作られることができる変速装置を含んでいる第1肩部関節を含んでいる。追加の関節、肘部関節及び肩部関節の変速装置は、3−D空間でのLINAC203の並進移動を促進することができる。第2の肩アセンブリ215は、第2の肩部関節によって第1の肩アセンブリ214に連結されており、第2の肩部関節は、回転軸、軸1で第2の肩アセンブリ215の回転性の動きを駆動するように作られることができる変速装置を含んでいる。他の実施形態では、ロボットアーム202は、制御装置からの方向性によって、LINAC203を動かすための変速装置以外の他の型の動作作動装置を含んでいてもよいものと留意されたい。
【0020】
描写している実施形態では、冗長関節アセンブリ211は、リストアセンブリ212及び肘アセンブリ213の間に連結されている。あるいは、冗長関節アセンブリ211は、アームアセンブリの他の構成要素の間に連結されてもよい。例えば、別の実施形態では、冗長関節アセンブリは、肘アセンブリ及び第1の肩アセンブリの間に連結されている。この実施形態では、肘部関節は、リストアセンブリ及び肘アセンブリに連結されている。肘部関節は、回転軸、軸4でロボットアームの回転性の動きを駆動するために肘部変速装置を含んでいる。更に、冗長関節は、肘アセンブリ及び第1の肩アセンブリに連結されている。冗長関節は、回転軸、軸3でロボットアームの回転性の動きを駆動するために変速装置を含んでいる。第1及び第2の肩アセンブリは、第1及び第2の肩部関節と、上述のように、回転軸、軸2及び軸1でロボットアームの回転性の動きを駆動するための対応する変速装置と、を含んでいる。別の実施形態では、肘アセンブリ213がリストアセンブリ212に直接的に連結される場合、肘アセンブリは、器具ヨー関節、器具ピッチ関節及び器具ロール関節にそれぞれ連結されている第1、第2及び第3の駆動軸と、器具ヨー、器具ピッチ及び器具ロールの関節の回転性の動きをそれぞれ駆動するための第1、第2及び第3のモータを含んでいる。
【0021】
ロボットアーム202は、第2の肩部関節によって取り付けアセンブリ216に連結することができる。取り付けアセンブリ216は、床、壁、天井、支柱等に連結されてもよい。あるいは、ロボットアーム202は、取り付けアセンブリ216を使用せずに、床、壁、天井、支柱等に直接的に連結されてもよい。
【0022】
別の実施形態では、第2の肩アセンブリ215は、ロボットアームの第8の軸でのロボットアームの回転性の動きを駆動するために第3の肩部変速装置を有する第3の肩部関節を含んでいる。別の実施形態では、取り付けアセンブリ216は、トラック226に連結されるトラック取り付けアセンブリに連結されている。あるいは、第2の肩アセンブリ215は、トラック取り付けアセンブリに連結されてもよい。トラック取り付けアセンブリ及びトラックは、実質的に線形軸でのLINAC203の並進移動を促進することができる。トラックは水平方向に置かれても又は垂直方向に置かれてもよい。この線形軸は、ロボットアームの第8のDOFであってもよい。別の実施形態では、上述のように、線形軸は、最後の回転軸、軸1の代わりに第7のDOFである。
【0023】
一実施形態では、実質的に線形DOFは、7つ又は8つのDOFの内の第1のDOFであり、ロボットアームの基端部から最も遠いロボットアームのエンドエフェクタ端部(先端部とも称される)にある最後のDOFではなく、ロボットアームの基端部に直近するDOFを意味している。第1のDOFは、ロボットアームの他の6又は7回転DOFを動かすように作られている。即ち医療器具及びロボットアームは、回転性の自由度に沿って医療器具を動かすこと無く、医療器具の動作の全範囲を通して実質的に線形軸に沿って動かすことができる。
【0024】
実質的に線形DOFは、相互に直交する、水平な座標軸であるx軸及びy軸に実質的に直角なz軸にある実質的な垂直線、又はz軸に実質的に直角な相互に直交する、水平な座標軸であるx軸及びy軸にある実施的な水平線、のどちらかに沿って医療器具が並進運動するための実質的な線形軸を含んでいる。一実施形態では、トラックは、垂直に配向されてもよく、例えば支柱の垂直側部に垂直に取り付けられている。支柱は、治療用放射線処置の間治療室の床に又はピットの中で床より下方に固定されても又は取り付けられてもよい。別の実施形態では、支柱は、治療用放射線処置の間治療室の天井に固定されても又は取り付けられてもよい。あるいは、トラックは、壁、台板、ブロック又は下部構造のような当業者には周知の他の構造に垂直方向に取り付けられてもよい。別の実施形態では、トラックは、水平に配向されてもよく、例えば治療用放射線処置の間治療室の床に又はピットの中で床より下方に固定される又は取り付けられている。別の実施形態では、トラックは、治療用放射線処置の間治療室の天井に固定されても又は取り付けられてもよい。あるいは、トラックは当業者には周知の他の構造に水平方向に取り付けられてもよい。
【0025】
一実施形態では、制御装置(説明図を簡略化するために図示せず)は、ロボットアーム及びLINAC203を7つ以上のDOFで動かすためにロボットアーム202に連結されている。ロボットアーム202は、制御装置から受け取る動作命令によって制御することができる。別の実施形態では、ユーザーインターフェイスユニットは、ロボットアーム202及びLINAC203を7つ以上のDOFで手動で動かすために制御装置に連結されている。
【0026】
リストアセンブリ212、肘アセンブリ213、第1の肩アセンブリ214、第2の肩アセンブリ215及び取り付けアセンブリ216の上述の配置は、1つの冗長DOFを含む、7つの回転DOFを使用するLINAC203の位置決めを促進している。ロボット治療施行システム200のロボットアーム202の7つのDOFは、ロボットアーム202の動作の機械的な範囲内の作業空間のような、所望の治療区画の中の実質的に任意の場所でLINAC203を位置決めする及び配向することができる。ロボットアーム202は、作業空間又は治療区画内の複数の場所で用具中心位置(TCP)、機械中心又はアイソセンタを有するようにLINAC203を位置決めすることができる。動作命令信号は、制御装置から生成されていて、様々なDOFでロボット治療施行システム200の補正動作を制御することができる。一実施形態では、協調運動を達成することができるように、治療台206に対するLINAC203の位置及び方向性を知ることができる。1つの例示的な実施形態では、LINAC203及び治療台206は、共に、共通(又は「空間」)座標システムに対して参照することができる。あるいは、ロボットアーム202は、8つのDOFに沿ったLINAC203の動作を促進するように作られてもよい。
【0027】
一実施形態では、8つのDOFは、2つの冗長DOFを含んでいる。別の実施形態では、8つのDOFは、1つの冗長DOFを含む7つの回転DOF、及び1つの並進DOFを含んでいる。あるいは、他の構成も可能である。1つの例示的な実施形態では、7つのDOFは、相互に直交するx座標軸、y座標軸及びz座標軸に沿ってLINAC203が並進して動くための4つの回転軸と、x軸、y軸及びz軸のそれぞれの周囲でLINAC203がロール回転、ピッチ回転及びヨー回転するための3つの回転軸と、を含んでいる。この実施形態では、4つの回転軸は、LINAC203が並進して動くための1つの冗長回転軸を含んでいる。別の例示的な実施形態では、8つのDOFは、相互に直交するx座標軸、y座標軸及びz座標軸に沿ってLINAC203が並進して動くための5つの回転軸と、x軸、y軸及びz軸の周囲でLINAC203がロール回転、ピッチ回転及びヨー回転するための3つの回転軸と、を含んでいる。
【0028】
別の例示的な実施形態では、8つのDOFは、相互に直交するx座標軸、y座標軸及びz座標軸に沿ってLINAC203が並進して動くための4つの回転軸と、x軸、y軸及びz軸のそれぞれの周囲でLINAC203がロール回転、ピッチ回転及びヨー回転するための3つの回転軸と、相互に直交する水平な座標軸であるx軸及びy軸に実質的に直角なz軸にある実質的な垂直線、又はz軸に実質的に直角である、相互に直交する水平な座標軸であるx軸及びy軸にある実質的な水平線、のどちらかに沿って医療器具が並進運動するための1つの実質的な線形DOFと、を含んでいる。あるいは、1つ以上の冗長DOFは、他の構成で使用されてもよい。
【0029】
ロボット治療施行システム200は、制御装置を使用することで、治療用放射線処置の間コンピュータ制御下の治療室の3D作業空間又は動作領域の中でLINAC203の位置及び方向性を調整するように作られている。制御装置は、ロボットアーム202、運動追跡システムシステム210、ユーザーインターフェイス、画像形成システム(x線供給源207及び検出器208を含む)及び治療台206を含む患者整位システム212と連結することができる。あるいは、制御装置は、図1で描写しているシステムの凡その構成部品に連結されている。
【0030】
一実施形態では、ロボット治療施行システム200は、LINACを利用する、フレーム無しの、画像誘導ロボットベース治療用放射線処理システムである。あるいは、ロボット治療施行システム200は、他の型のロボットベース医療システムであってもよい。一実施形態では、放射線供給源は、LINAC203のようなLINACである。あるいは、放射線供給源は、ロボットアームの遠位端部に取り付けることができる他の型の放射線供給源であってもよい。一実施形態では、LINAC203は、X線LINACである。あるいは、LINAC203は、当業者には理解頂けるであろう他の型のLINACであってもよい。
【0031】
描写している実施形態では、患者整位システム212は、リストアセンブリ222、肘アセンブリ223、肩アセンブリ224、トラック取り付けアセンブリ225及びトラック226を有するロボットアーム221に連結された治療台206を含んでいる。ロボットアーム221は、1つの実質的な線形DOFを含む6DOFで治療台を動かすように作られている。ロボットアーム221は、5つの回転DOFで治療台206を動かすために、関節によって相互接続されている複数の剛性リンクを含んでいる。ロボットアーム221は、実質的な線形DOFでの治療台206の動きを促進するトラック226に取り付けられている。リストアセンブリ222は、3つの回転DOF(軸4から軸6)で治療台206を動かすように作られており、肘、肩及びトラック取り付けのアセンブリである223から225及びトラック226は、3つのDOF、すなわち2つの回転DOF及び1つの実質的な線形DOFで治療台206を動かすように作られている。
【0032】
肘アセンブリ223は、手首アセンブリ222及び肩アセンブリ224に連結されている。トラック取り付けアセンブリ225は、トラック226及び肩アセンブリ214の肩部関節に連結されている。描写している実施形態では、トラック取り付けアセンブリ225及びトラック226は、実質的に垂直な、線形軸でのLINAC203の並進移動を促進している。実質的に垂直な線形軸(z)は、2次元水平面(x、y)に実質的に直角であってもよい。一実施形態では、トラックは、垂直に配向されていてもよく、例えば支柱の垂直側部に垂直に取り付けられている。支柱は、治療用放射線処置の間治療室の床に又はピットの中で床より下方に固定されても又は取り付けられてもよい。別の実施形態では、支柱は、治療用放射線処置の間治療室の天井に固定されても又は取り付けられてもよい。あるいは、トラック226は、壁、台板、ブロック又は下部構造のような当業者には周知の他の構造に垂直方向に取り付けられてもよい。
【0033】
図1では、治療台206がロボットアーム221に連結されているが、他の実施形態では、患者をロボット治療施行システム200に対して位置決めする及び配向するために他の患者整位システムを使用してもよい。例えば、LINAC203は、スタンド、床に取り付けられた治療台のようなロボットアームに連結されていない治療台206に、カリフォルニア州、サニーベールのアキュレイ社(Accuray Inc.)で開発されたAXUM(登録商標)治療台に又は他の患者整位システムに、対して位置決めされてもよい。
【0034】
一実施形態では、ロボットアーム221は、ロボットアーム202を制御している制御装置と同じ制御装置に連結されている。制御装置は、LINAC203及び治療台206の両方の動きを互いに連係させるために使用することができる。これは、これまで従来式のシステムでは障害物で通過できない場合があった追加の位置にある治療台に対してLINAC203を位置決めする及び配向することを可能にすることができる。別の実施形態では、ロボットアーム202及び221は、別々の制御装置に連結されている。
【0035】
別の実施形態では、ロボット治療施行システム200は、X線画像形成システムを含んでいる。X線画像形成システムは、目標物の1つ以上の実時間又は実時間に近い画像を代表する画像データを生成する。X線画像形成システムは、一対の診断用x線供給源207、各々のX線画像形成供給源に伴う電力供給装置、1つ又は2つの画像形成検出器208(又はカメラ)及び制御装置を含んでいてもよい。X線画像形成供給源207は、例えば約90度、角度的に離して取り付けること、治療目標物(例えば患者内部の腫瘍)を貫いて単数又は複数の検出器208に向けることができる。あるいは、各々のx線供給源によって照射される単一の大型検出器を用いてもよい。単一の検出器による画像形成システムでは、2つのx線供給源207は、両方の画像を単一の検出器表面で保つために90度未満の角度で離されて位置決めされてもよい。
【0036】
単数又は複数の検出器208は、治療目標物より下方、例えば床の上、治療台206の上又はLINAC203の真下に置かれてもよく、X線画像形成供給源207は、画像の拡大及びそれによって単数又は複数の検出器208の求められる大きさを最小化するために、治療目標物より上方(例えば治療室の天井)に位置決めされてもよい。代替的な実施形態では、X線画像形成供給源207及び単数又は複数の検出器208の位置は、例えばX線撮像源207が治療目標物より下方、単数又は複数の検出器208が治療目標物より上方、のように逆になってもよい。別の実施形態では、単数又は複数の検出器208は、それらが画像形成用の所定の位置に移動するような方法で配置され、LINAC203又は治療台206を位置決めする間又はLINAC203から放射線ビームを送出する間、邪魔にならないように移動される。
【0037】
単数又は複数の検出器208は、患者の画像情報を生成して制御装置へ送ることができる。制御装置は、所望の治療位置に関する患者の位置を確定するために全ての画像形成計算を実行し、種々のDOF用の補正値を生成する。補正値は、LINAC203を自動的に位置調整するためにロボット治療施行システム200に自動的に適用されること、及び/又はLINAC203に対して治療台206及びロボットアーム212を使用して患者の位置を自動的に調整するために制御装置に送られること、及び/又はユーザーがロボットアーム202及び221の一方又は両方を用いてLINAC206に対する患者の位置を手動で調整するためにユーザーインターフェイスユニットに送られること、が可能である。
【0038】
別の実施形態では、ロボット治療施行システム200の補正動作を、システムが使用可能な作業空間を最大化するような方法で、制御装置を使用して、治療台206及びロボットアーム221の動作と動的に連係させてもよい。制御装置を使用して治療台206及びLINAC203の動きを動的に連係することによって、例えば検出器208及び/又はX線画像形成供給源207、ロボットアーム又は治療室内の他の設備などによって邪魔されることの無いLINAC203及び治療台206の方向性及び位置の数が増える結果、治療目標物の利用可能な数は増える。この実施形態では、LINAC203のロボットが実行する動きは、LINAC203及び治療台206の間の相対的な動作が、目標領域全体に亘る所望の放射線パターンの送出を確実にするように、治療台206の補正動作によって補完される。
【0039】
治療台206は、治療の間患者205を支持しており、2つのX線カメラ及び画像形成システムのそれぞれの診断用x線供給源の間に位置決めされ得る。一実施形態では、治療台206は、放射線透過性材料で作られ得、患者を治療台206を通して撮像することができる。
【0040】
画像形成システムは、実時間に又はほぼ実時間に、治療座標フレームで目標物の位置及び方向性を示すX線画像を生成する。制御装置は、治療計画および送出ソフトウェアを含んでいてもよく、それは、各々が、一定の治療位置又はノードの各々で関連付けられる線量率及び継続時間を有する一連の所望のビーム路程から成る治療計画を生成するために、治療計画及び事前処理走査データCT(及び/又はMRIデータ、PETデータ、超音波走査データ及び/又は蛍光透視法画像データ)及びユーザー入力に応答することができる。制御装置の指図に応えて、ロボットアームは、各々のノードを通して連続的および順次にLINAC203を動かし、配向し、一方でLINAC203は、制御装置によって指図される要求線量を送出する。事前処理走査データは、例えばCT走査データ、MRI走査データ、PET走査データ、超音波走査データ及び/又は蛍光透視法画像データを含んでいてもよい。
【0041】
治療に先立ち、画像形成システムによって確立された基準のフレーム内部の患者の位置及び方向性は、患者が、治療を計画するために使用される画像を提供するCT(又はMRI又はPET又は蛍光透視法)走査装置の基準フレーム内で有する位置及び方向性に適合するように調整することができる。1つの例示的な実施形態では、この位置調整は、数十分の1ミリメータ及び全てのDOFに対して数十分の1度の範囲内まで実行することができる。
【0042】
制御装置は、更に、診断又は治療計画システムと通信して、患者体内の治療目標物の1つ以上の事前処理走査を表す事前処理走査データを受け取ることができる。事前処理走査は、事前処理座標システムに対する目標物の位置及び方向性を示すことができる。制御装置は、更に、画像形成システム(x線供給源207及び検出器208)から、目標物の実時間又はほぼ実時間の画像を表す画像データを受け取ることができる。画像データは、治療座標システムに関する目標物の実時間又はほぼ実時間の位置及び方向性に関する情報を含み得る。治療座標システム及び事前処理座標システムは、既知の変換パラメータによって関連付けられる。
【0043】
制御装置は、1)目標物の事前処理走査を表す事前処理走査データ及び2)目標物の実時間又はほぼ実時間の画像を表す実時間又はほぼ実時間の画像データ、を受け取るための入力モジュールを含んでいてもよい。事前処理走査は、事前処理座標システムに対する目標物の位置及び方向性を示している。ほぼ実時間の画像は、制御装置の指図の下で画像形成システムによって取得されたもので、治療座標システムに対する治療目標物の位置及び方向性を示している。治療座標システム及び事前治療座標システムは、既知の変換パラメータによって関連付けられる。制御装置は、事前処理走査データ、実時間又はほぼ実時間画像データ及び事前処理座標システムと治療座標システムの間の変換パラメータを使用して、治療座標システムの中で治療目標物の位置及び方向性を算出するTLS(目標位置決めシステム)処理ユニットを含んでいる。制御装置の処理ユニットは、更に、LINAC203のアイソセンタの位置及び方向性を算出してもよい。
【0044】
運動追跡システム210は、LINAC203及び/又は治療台206の位置を検出するために使用することができる。運動追跡システム210は、ロボット治療施行システム200の一部であってよく、又は当該システムから分離していてもよい。制御装置は、運動追跡システムから受け取ったデータに基づいて、治療室又は他の所定の治療座標システムに対するLINAC203の位置及び方向性を計算するために、運動追跡システム210に動作可能なように連結され得る。制御装置は、LINAC203がロボット治療施行システム200の動作中に障害物と衝突しないことを確実にするために、周囲の障害物のモデルに対するLINAC203の位置及び方向性を独立して検査することができる。制御装置は、更に、患者の部位内の治療目標物が、治療処理を通じてLINAC203の治療ビーム源に対して適切に整列している状態であり続けるように、ロボット治療施行システム200の動作を制御するために機能することができる。制御装置は、治療台206の位置決めを操作するために使用されてもよい。
【0045】
運動追跡システム210は、治療室又は他の治療座標システムに対するLINAC203の位置を検出するために治療室内部に配置されるレーザー走査システム又は光学追跡システムであってもよい。例示的なレーザー走査システムは、LINAC203の位置を確定するために約60回/秒で治療室を走査することができる。レーザー走査システムは、単一面走査又は二面走査又は複数面走査を実行するデバイスを含んでいてもよい。これに対応して、制御装置を含むロボット治療施行システム200がLINAC203の位置を常時知っているように、制御装置は、運動追跡システム210から情報を及びLINAC203、更に治療台又は治療室の他の設備の位置を計算することに適したソフトウェアを搭載していてもよい。制御装置は、自動的に又は周期的に、LINAC203を治療台に合わせて較正するようにプログラム化され得る。
【0046】
代替的な実施形態では、運動追跡システム210は、治療座標システムに対するLINAC203の位置を追跡するための磁気追跡システムを含んでいる。磁気追跡システムは、LINAC203に取り付けられる少なくとも1つの変換器を含んでいれば望ましい。あるいは、LINAC203の動作を感知するためにLINAC203に取り付けられる慣性センサー、レゾルバベースセンサーシステム、赤外線三角測量システム、光学エンコーダ等、当業者には理解頂けるような他のセンサーシステムを使用してもよい。運動追跡システム210は、ロボットアーム202、LINAC203、ロボットアーム221、治療台206、患者205又は治療室内部の他の目的物を追跡するために使用することができることに留意されたい。運動追跡システム210は、更に、患者205内部の目標物を追跡するために使用することもできる。
【0047】
制御装置は、治療目標物の位置をLINAC203のアイソセンタと比較することによって、患者が動くことに起因する、治療目標物のLINAC203のアイソセンタとのずれを検出する、及び治療目標物を放射線治療源(例えばLINAC203)に対して位置を揃えるためのロボット治療施行システム200の補正的な動作を実施するための動作命令信号を生成する、ように構成されてもよい。
【0048】
別の実施形態では、ロボット治療施行システム200の補正的な動作は、様々な動作、例えば呼吸運動、患者の心臓の心拍運動、くしゃみ、咳又はしゃっくり及び患者の1つ以上の部位の筋肉転位などに対応することができる。別の実施形態では、制御装置を含むロボット治療施行システム200は、実時間又はほぼ実時間の画像を事前処理画像と比較すること及びロボットアーム202を使用してLINAC203を及び/又は治療台を使用して患者を再配置すること又は治療計画に対応するためにLINAC203及び治療台の位置を調節すること、によって、組織変形に起因する可能性のある腫瘍の幾何学変化を検出し、それに適合するように構成されることができる。
【0049】
制御装置は、LINAC203との信頼性のある通信インターフェイスを確立及び維持するためのソフトウェアを含んでいる。ソフトウェアは、LINAC203用に開発されたインターフェイス規格を使用している。制御装置は、画像形成システムからの患者の位置及び方向性の情報をLINAC203の動作能力のDOFでの動きの適切な構成単位に変換するためのソフトウェアを更に含んでいる。制御装置は、患者を位置決めするためのロボット治療施行システム200の動作を監視及び起動するために、ユーザーインターフェイスユニットを治療施行システムのユーザー制御コンソールに提供するためのソフトウェアを含んでいてもよい。制御装置200は、LINAC203の通信又はソフトウェア制御の誤りを検出、報告及び処理するためのソフトウェアを更に含んでいてもよい。
【0050】
制御装置は、ユーザーが、1つ以上のユーザーによる選択可能な機能を実施することによって、ロボット治療施行システム200の動作又は補正動作を双方向的に制御することを可能にするための少なくとも1つのユーザーインターフェイスユニットを含んでいてもよい。ユーザーインターフェイスユニットは、手持ち式のユーザーインターフェイスユニット又は遠隔制御ユニットであってもよい。あるいは、ユーザーインターフェイスユニットは、ディスプレイ上のグラフィカルユーザーインターフェイス(GUI)であってもよい。
【0051】
制御装置及びロボット治療施行システム200の他の構成要素(例えばロボットアーム202、LINAC203、運動追跡システム210、ユーザーインターフェイス、治療台206及び画像形成システム)の間の通信リンクは、有線又は無線のリンクであってもよく、信頼性のある適時の通信を維持するために必要な帯域幅を備えている。
【0052】
上記の実施形態における追加の関節は、リストアセンブリ211及び肘アセンブリ213の間に連結される冗長関節アセンブリで実装されるが、しかしながら、他の実施形態では、冗長関節は、他の構成で実装されてもよいことを留意されたい。一実施形態では、ロボットアームは、LINAC203に連結されるリストアセンブリと、リストアセンブリに連結されるアームアセンブリと、を含んでいる。アームアセンブリは、1つ以上の冗長関節を含んでいてもよい。1つ以上の冗長関節は、1つ以上の冗長関節アセンブリと併せて、又はアームアセンブリの他のアセンブリへの追加の関節として実装されてもよい。例えば、図1の描写している実施形態は、リストアセンブリ211及び肘アセンブリ213の間の追加の関節を図示している。他の実施形態では、追加の関節は、肘アセンブリ213、第1の肩アセンブリ214、第2の肩アセンブリ215及び取り付けアセンブリ216の内の何れか2つの間に連結される冗長関節アセンブリで配置してもよい。他の実施形態では、追加の関節は、肘アセンブリ213、第1の肩アセンブリ214及び第2の肩アセンブリ215の内の何れか1つの関節と繋がる追加の関節として実装されてもよい。例えば、第1及び第2の肩アセンブリ(取り付けアセンブリ216とまとめて、ベースアセンブリと称してもよい)は、第1及び第2の肩部関節を含んでいる。追加の関節を、第1及び第2の軸(A1及びA2)の場所で(例えば第1及び第2の肩部関節を含むベースアセンブリで)追加してもよい。第1及び第2の肩部関節の場所に追加の関節を加えることによって、アームアセンブリは、患者又は治療台をロボットアーム又はLINAC203と衝突する危険に曝すこと無く、従来式のロボットアームと比較してより広範囲の動作が可能であるように、関節を位置決めすることができる。更に、追加の関節を第1及び第2の肩部関節の場所に加えることによって、アームアセンブリは、図2で示すように、ロボットアーム全体を例えば床に向けて回転させることを可能にしている。
【0053】
図2は、冗長関節を有するロボット治療施行システム250の別の実施形態を図示している。ロボット治療施行システム250は、ロボットアーム252に連結されるLINAC203を含んでいる。ロボットアーム252は、図1に関して上文で述べたように、リストアセンブリ212、肘アセンブリ213、第1の肩アセンブリ214、第2の肩アセンブリ215及び取り付けアセンブリ216を含んでいる。冗長関節アセンブリ211を有するのではなく、ロボットアーム252は、第1及び第2の肩アセンブリの位置で追加の関節253を含んでいる。ロボットアーム202は、ロボットアーム202をベースアセンブリの第1及び第2の回転軸(A1及びA2)に沿って動かすために第1及び第2の肩部関節を、及びロボットアーム202を第3及び第4の軸(A3及びA4)に沿って動かすために肘部の及び冗長な関節を、使用していることに留意されたい。ロボットアーム202のアームアセンブリは、第1及び第2の肩部関節を含んでいるベースアセンブリと、追加の関節及び肘部関節によって相互に接続されている3つの剛性リンクと、を含んでいる。対照的に、ロボットアーム252は、ロボットアーム252をベースアセンブリの第1、第2及び第3の回転軸(A1、A2及びA3)に沿って動かすために、第1及び第2の肩部関節と追加の関節253とを使用し、ロボットアーム252を第4の回転軸(A4)に沿って動かすために肘部関節を使用している。ロボットアーム252のアームアセンブリは、第1及び第2の肩部関節及び追加の関節253を含んでいるベースアセンブリと、肘部関節によって相互接続されている2つの剛性リンクと、を含んでいる。上述のように、追加の関節253をベースアセンブリに追加することによって、ロボットアーム252全体を、例えば床に向けて回転させることができる。
【0054】
描写している実施形態では、ロボットアーム250は、第1位置251(点線で表示)から第2位置253(実線で表示)まで回転される。それらの2つの位置251及び252は、LINAC203をより低所にあるアイソセンタを治療する高い位置に、及びより高所にあるアイソセンタを治療する低い位置に位置決めするために使用することができる。例えば、図2の治療台206は、高い位置に配置されているように図示されている。従って、アイソセンタは高所にあるアイソセンタであり得る。LINAC203を高所にあるアイソセンタより下方の幾つかの位置に位置決めするために、LINAC203を高所にあるアイソセンタの真下、例えば第2位置253に位置決めするようにロボットアーム252を追加の関節253の周囲で回転させることができる。しかしながら、治療台206がより低い位置へ動かされると、LINAC203を低所にあるアイソセンタより上方、例えば第1位置251に位置決めするようにロボットアーム252を追加の関節253の周囲で回転することができる。
【0055】
上記の実施形態は、LINAC203及びロボットアーム202をロボットアーム221に連結されている治療台206に対して動かすように述べられているが、他の実施形態では、LINAC203及びロボットアーム202は、ロボットアーム102のような従来式のロボットアームに連結され得る従来式の治療台106又は従来式のロボットアームに連結されていない従来式の治療台に対して動かされる。
【0056】
図1及び図2の実施形態は、取り付けアセンブリと同時に床に、水平に取り付けられているロボットアームを図示している。他の実施形態では、1つ以上の追加の関節を含んでいるロボットアームは、図3A及び図3Bに図示されるように、垂直に取り付けられてもよい。
【0057】
図3A及び図3Bは、第1の軸に沿った2つの位置321及び323にある7つ自由度を有する垂直に取り付けられたロボットアームを含んでいるロボット治療施行システム300の一実施形態を図示している。ロボット治療施行システム300は、ロボットアーム302に連結されたLINAC203を含んでいる。ロボットアーム302は、ロボットアーム202及び252のように、リストアセンブリ212及びアームアセンブリを含んでいる。上述のように、リストアセンブリ212は、3つの回転DOF(軸5から軸7)でLINAC203を動かすように作られている。図3Aのアームアセンブリの描写されている実施形態は、肘アセンブリ313、冗長関節アセンブリ311、肩アセンブリ314、トラック取り付けアセンブリ316及びトラック317を含んでいる。肘アセンブリ313は、リストアセンブリ212の器具ロール関節に連結されている。肘アセンブリ313は、冗長関節アセンブリ211に関して上文で述べたように、3つ駆動軸及び3つのモータを含んでいてもよい。冗長関節アセンブリ311は、肘部関節によって肘アセンブリ313に、冗長関節によってショルダアセンブリ314に連結されている。肩アセンブリ314は、肩部関節によってトラック取り付けアセンブリ316に連結されている。肘部関節、冗長関節及び肩部関節は、変速器を含んでいてもよく、当該変速機は、第4の回転軸(軸4)で肘アセンブリ313、第3の回転軸(軸3)で冗長関節アセンブリ311、第2の回転軸(軸2)で肩アセンブリ314の回転性の動きをそれぞれ駆動するように作られ得る。肘部関節、冗長関節及び肩部の変速器は、例えば床と平行な(x、y)平面における2次元水平面でのLINAC203の並進移動を促進することができる。トラック取り付けアセンブリ316及びトラック317は、実質的に垂直な線形軸(軸1)でLINAC203の並進移動を促進することができる。実質的に垂直な線形軸(z)は、2次元水平面(x、y)に対して実質的に直角であり得る。
【0058】
この実施形態では、トラック317は、支柱318の垂直側部に取り付けられている。支柱318は、治療用放射線処置の間治療室の床に又はピットの中で床より下方に固定されても又は取り付けられてもよい。別の実施形態では、支柱318は、治療用放射線処置の間治療室の天井に固定されても又は取り付けられてもよい。あるいは、トラック317は、壁、台板、ブロック又は下部構造のような当業者に知られている他の構造に垂直方向に取り付けられてもよい。
【0059】
制御装置201は、ロボットアーム302及びLINAC203を7つのDOFで動かすためにロボットアーム302に連結されている。ロボットアーム302は、制御装置201によって制御されており、6つの回転DOF及び1つの並進性の実質的に垂直な線形DOFを用いてLINAC203の位置決め及び配向を促進している。ロボットアーム202のように、ロボット治療施行システム200のロボットアーム302の6つの回転及び1つの実質的に水平な線形DOFは、ロボットアーム302の動作の機械的な範囲内の、作業空間のような、所望の治療区画の中の実質的に任意の場所にLINAC203を位置決めすることができる。ロボットアーム302は、作業空間又は治療区画内の複数の場所でTCPを有するようにLINAC203を適切に位置決めすることができる。
【0060】
一実施形態では、ロボットアーム302は、LINAC203の動作の全範囲を通して他の軸に沿ってLINAC203を動かすこと無く、単一軸に沿ってLINAC203を動かすように作られている。例えば、第1のDOFは、4、5又は6回転DOFに沿ってLINAC203を動かすこと無く、ロボットアームの動作の実質的に全範囲を通して実質的に線形軸に沿ってLINAC203を動かすように作られている。第1のDOFは、ロボットアームの基端部に直近しているDOFである。基端部は、ロボットアーム302が支柱318に取り付けられているところである。あるいは、基端部は、ロボットアーム302が床、天井、壁又は治療室の他の取り付け場所に取り付けられているところである。LINAC203は、ロボットアーム302の先端部とも称される、ロボットアーム302のエンドエフェクタの端部でロボットアーム202に連結されている。
【0061】
一実施形態では、制御装置201は、第1のDOFの第1の軸331に沿ってロボットアーム302を動かすように作られている。第1のDOFは、ロボットアーム302の他の6つの回転DOFを動かすように作られている。制御装置は、ロボットアーム302を別の位置まで軸331に沿って上下に動かす。例えば、ロボットアーム302は、図3Aで図示しているような第1位置321及び図3Bで図示しているような第2位置323に位置決めすることができる。図3A及び図3Bで図示しているように、ロボットアーム302は、6つの回転DOFに沿ってLINAC203を動かすこと無く、LINAC203の動作の実質的に全範囲を通して実質的に垂直な線形軸(例えば軸331)に沿ってロボットアーム302ならびにLINAC203も動かすように作ることができる。
【0062】
別の実施形態では、ロボットアーム302は、水平な実質的な線形DOFを有している。別の実施形態では、ロボットアーム302は、4つの回転DOF及び1つの実質的な線形DOFを有しており、第1のDOFは、ロボットアームの他の4つの回転DOFを動かすように作られている実質的な線形DOFである。この実施形態では、制御装置は、4つの回転DOFに沿ってLINAC203を動かすこと無く、LINAC203の動作の実質的に全範囲を通して実質的に線形軸(例えば軸331又は水平な第1の軸)に沿ってLINAC203を動かすことができる。第1のDOFが水平である実施形態では、制御装置は、垂直軸(例えばz軸)に実質的に直角である相互に直交する水平座標軸(例えばx軸及びy軸)の実質的な水平線に沿ってLINAC203を動かすように作られている。第1のDOFが垂直である実施形態では、制御装置は、相互に直交する水平座標軸(例えばx軸及びy軸)に実質的に直角である垂直軸(例えばz軸)の実質的な垂直線に沿ってLINAC203を動かすように作られている。
【0063】
図3Cは、第7の自由度用の線形トラック353に水平に取り付けられている6自由度を有するロボットアームを含んでいるロボット治療施行システム350の別の実施形態を図示している。線形トラック353は、第7のDOFとして述べられているが、第1のDOFが標準的にはロボットアーム352の基端部に直近するDOFであるので、線形トラック353は、第1のDOFと称することもできることに留意されたい。線形トラック353は、ロボットアーム352全体を治療室の中の或る位置から別の位置まで動かすことを可能にし、ロボットアーム352の6DOFに加えて第7のDOFを提供する。ロボット治療施行システム350は、6つの自由度を有する水平に取り付けられたロボットアーム352と、ロボットアーム352に連結されたLINAC203を含んでいる。ロボットアーム352は、例えば、ロボットアーム352を線形軸に沿って並進させることを可能にしているレール354を有している線形トラック353に水平に取り付けられている。ロボットアーム352は、ロボットアーム352をトラック353に沿って動かすことを可能にしているレール354と係合しているトラック取り付けアセンブリに連結されてもよい。あるいは、当業者には理解頂けるように、ロボットアーム352をトラック353に沿って動かすことを可能にするために、他の型の機構を使用してもよい。別の実施形態では、トラック353は、非線形トラックである。制御装置(図示せず)は、1つの並進DOF(例えば実質的に水平な)と、ロボットアーム352の6つの回転DOFを含んでいる7つのDOFでロボットアーム352及びLINAC203を動かすように作られている。制御装置は、LINAC203の動作の全範囲を通してロボットアーム352の他のDOFを動かすこと無く、単一軸(又は非線形経路)に沿ってロボットアーム352を動かすことができる。実際には、第7のDOFは、座標系全体を移動することを可能にしている。
【0064】
上述の実施形態は、水平に取り付けられていて、床に取り付けられている6つのDOFロボットアーム352であるが、他の構成も可能である。例えば、線形トラック353は、天井又は床内部のピットに取り付けられてもよい。更に、他の実施形態では、トラックは、支柱、壁等に垂直に取り付けられてもよい。他の実施形態では、ロボットアーム352は、本明細書で説明しているような冗長自由度を含んでいる。一実施形態では、ロボットアーム352は、6つの自由度を含んでいて、6つの自由度の内の1つは冗長DOFであり、第7のDOFは、トラックである。別の実施形態では、ロボットアーム352は、7つのDOFを含んでおり、7つのDOFの内の1つは冗長DOFであり、第8のDOFはトラックである。あるいは、ロボットアーム352は、1つより多い冗長DOFを含んでいてもよい。
【0065】
6つのDOFのみのロボットアームを使用すると、ロボットアームの動作領域を表す作業空間は、干渉性、及び可到達性の問題によって、患者を中心として非対称となり得る。例えば、ロボットアームが患者の一方の側に配置される場合、LINACは、患者、治療台、または室内の他の物体によって妨害されることによって、特定の位置に位置決めすることができない。直線トラック353は、ロボットアーム353を治療台の両側に位置決めし、対称的な作業空間を作り出すことを可能にする。直線トラック353はまた、作業空間を拡大して、従来は患者に近接することにより妨害され回避されたより多くの位置に、LINAC203を位置決めすることも可能にする。直線トラック353はまた、ロボットアーム353を患者により接近、または患者からより遠ざけるように動かすことによって、作業空間を拡大させることもできる。これは重量物を運搬する際に、体をすくめて腕を伸ばすか、または体に過度に近いか、といったことに類似し得る。近すぎる場合は、より遠くに離れればよく、遠すぎる場合は、その物体により近づけばよい。空間内でのLINAC203の一意的な位置決めは、6つのDOFによって為され得るため、第7のDOF(例えば、トラック)によって提供される柔軟性は、ロボットアーム352を、LINAC203の所与の位置に関して、治療室内の障害物または他の干渉物を回避するように位置決めするために使用することができる。第7のDOFはまた、例えば、ロボットアーム352が患者の上を通り越すことがないような、より望ましい位置を提供することもできる。第7のDOFはまた、ロボットアーム352の位置に基づいた移動時間を最適化することもできる。例えば、ロボットアーム352は、他のDOFを移動させずに、この直線のDOFに沿って移動させることができる。これらの機能の全ては同時に実行可能であるが、一実施形態では、制御装置により、順序付きリストのような優先度に従って、これらの機能のリストを完遂してもよいことに留意されたい。
【0066】
治療施行システム300および治療施行システム350は、図1に関して説明されるように、画像形成システム、運動追跡システム、および患者位置決めシステムと併用して使用することができる。
【0067】
一実施形態では、ロボットアーム202またはロボットアーム302の構成要素は、構成要素の外表面上にタッチセンス材料を含み得る。別の実施形態では、構成要素の外表面は、接触発泡材によって被覆してもよい。あるいは、他の材料を使用して、ロボットアーム202またはロボットアーム302の構成要素が、操作者に衝突するか、もしくは操作者を転倒させることを防いでもよい。当業者には既知のタッチセンス材料および接触発泡材に関する具体的な詳細は含まれてはいないが、これは、ロボットアームによる操作者の転倒または衝突を防ぐための材料で、ロボットアーム202またはロボットアーム302の外表面を被覆することに関する考察を不明瞭にしないためである。
【0068】
一実施形態では、図1、図2、図3A、および図3Bのロボットアームは、ドイツのKUKAロボット社によって製造された構成要素を含み得る。あるいは、ロボットアームの構成要素は、他の種類の構成要素を含んでもよい。
【0069】
図4Aは、治療台206に対して第1位置401にある、従来のロボット治療施行システム400の上面図を示す。従来のロボット治療施行システム400は、ロボットアーム102に連結するLINAC103を含む。ロボットアーム102は、単一の肘関節によって相互接続される2つの剛体リンクを有する。LINAC103は、治療台206に対して第1位置401に位置決めされている。第1位置401では、治療台206とLINAC103およびロボットアーム102との間に距離余裕410が存在する。
【0070】
図4Bは、一実施形態による、治療台206に対して第1位置401にある、ロボット治療システム450の上面図を示す。ロボット治療施行システム450は、ロボットアーム402に連結するLINAC203を含む。ロボットアーム402は、ロボットアーム102とは異なり、肘関節および冗長関節の2つの関節によって相互接続される3つの剛体リンクを有する。ロボットアーム102が、比較目的のために図4Dに(破線で)示されている。
【0071】
LINAC203は、治療台206に対し、同一の第1位置401に位置決めされている。第1位置では、治療台206とLINAC203およびロボットアーム402との間に距離余裕420が存在する。ロボット治療施行システム450の距離余裕420は、従来のロボット治療施行システム400の距離余裕410よりも大きい。冗長関節を含むロボットアーム402は、ロボットアームと治療室内の他の障害物との間の距離余裕を増大させるようにLINAC203を位置決めすることができる。距離余裕420が距離余裕410よりも大きいばかりではなく、ロボットアーム402は、LINAC203を第1経路を通じて第1位置401に位置決めすることができるが、この第1経路は、ロボットアーム102がLINAC103を位置決めするために採る経路のような、同一位置401への第2経路よりも、障害物(治療台206)とロボットアーム402との間に大きい距離余裕を有する。
【0072】
ロボットアーム402は、作業空間もしくは治療領域の範囲内の複数の位置において、TCPまたは治療標的を有するように、LINAC203を位置決めすることができる。しかしながら、作業空間もしくは治療領域は、例えば、LINAC203、治療台206、またはこれらの対応するアームのいずれかと、LINAC203、治療台206、画像形成供給源207、検出器208、並びに/またはロボットアーム202およびロボットアーム302のようなシステムの構成要素との間で起こり得る衝突に起因する妨害、あるいは上述のこれらの構成要素のいずれかによるLINAC203の放射線ビームの妨害、といった位置決め制限によって限定される場合がある。例えば、x線画像形成供給源207は、LINAC203がx線画像形成供給源207の取り付け場所に位置決めされることを阻止する場合があるが、これは、その場所へ位置決めすることが、想定される衝突を引き起こす恐れがあるためである(例、衝突妨害)。同様に、LINAC203は、検出器208の配置により、治療台206の下に位置決めすることができない(例、衝突妨害)。位置決め制限の別の例は、LINAC203からの放射線ビームが、他の構成要素、例えば検出器208、および/またはx線画像形成供給源207によって妨害される場合である(例、ビーム妨害)。別の妨害は、地面によって引き起こされる場合がある。少なくとも1つの冗長関節を有するロボットアームを使用して、これらの位置決め制限を克服することができる。位置決め制限を克服することにより、図5に関して説明するように、LINAC203の位置決めのための、より多くのノードが使用可能となるため、作業空間が増大し得る。作業空間内の利用可能なノードの増大に加えて、少なくとも1つの冗長関節を有するロボットアームは、作業空間内に既に存在するノードへ至る利用可能な経路の数を増大させ得る。また、いったんLINAC203を一定の位置に位置決めすると、ロボットアームの1つ以上のリンクを移動させることもできる。例えば、1つ以上のリンクを移動させて、ロボットアームと、治療台206のような治療室内の障害物との間の距離余裕を増大させることができる。更に、1つ以上の冗長関節を有する1つ以上のリンクを使用することで、ロボットアームは、拘束体積内で、その拘束体積外部の障害物と衝突することなく、医療器具を操作することができる。
【0073】
図4Cは、治療台206に対して第2位置402にある、図4Aの従来のロボット治療施行システム400の上面図を示す。ロボットアーム102がLINAC203を第2位置402に位置決めする場合は、ロボットアーム102と治療台206との間で衝突が起こり得る。したがって、第2位置402は妨害位置であり、作業空間内における可能なノードとして使用できない。
【0074】
図4Dは、一実施形態による、治療台206に対して第2位置402にある、ロボット治療施行システム450の上面図を示す。ロボットアーム102とは異なり、ロボットアーム402は、従来は位置決め制限に起因する妨害位置と見なされる第2位置402に、ロボットアーム402と治療台206との間の衝突を起こすことなく、LINAC203を位置決めすることができる。ロボットアーム102が、比較目的のために図4Dに(破線で)示されている。
【0075】
別の実施形態では、ロボットアーム402およびロボットアーム221の移動は、動的に連係し得る。治療台206とLINAC203との間の動的な移動の連係は、ロボットアームの機械的可動域内における治療標的の数を増大させることができ、ロボットアーム402の機械的可動域内、またはロボットアーム221の機械的可動域内において、位置決め制限に起因する従来の妨害位置に、治療標的を作り出すことができる。一実施形態では、従来の妨害位置は、例えば、LINAC203、治療台206、ロボットアーム202、ロボットアーム221、x線画像形成供給源207、検出器208、および/またはシステムの他の構成要素のいずれか2つの間で起こり得る衝突の妨害に起因し得るものである。あるいは、従来の妨害位置は、ロボットアーム202、ロボットアーム221、x線画像形成供給源207、検出器208、および/またはシステムの他の構成要素のいずれかによる、LINAC203の放射線ビームの妨害に起因し得るものである。別の実施形態では、患者身体を含む治療台206とシステム400の他の移動部分との間で起こり得る衝突を引き起こすような配向および/または位置に、患者を確実に配置させないように、衝突防止モデルを制御装置に組み込んでもよい。
【0076】
ロボットアーム402を使用して、LINAC203を治療台206に対して対称的な位置に位置決めすることができる。LINAC203を治療台206に対して対称的な位置に位置決めする能力は、治療計画中における治療計画システムによって計算されるもののような、治療施行前に計算される、経路計画および接触回避計画に関する単純化された経路を導き得る。LINAC203を治療台206に対して対称的な位置に位置決めする能力は、放射線を標的に直射するようにLINAC203を位置決めし得る作業空間を増大させることができる。作業空間内のノードの数が増大するため、患者の様々な部位の標的に対する放射線直射へのアクセスが増大し得る。例えば、治療台206の一方の側のノードはまた、治療台206の他方の側にも鏡像化することができる。
【0077】
使用可能な全表面積は、患者の治療標的に放射線を照射するようにLINAC203を位置決めすることができる位置またはノードを表し得る。ロボット治療施行システム450の使用可能な全表面積は、ロボット治療施行システム400の使用可能な全表面積とは異なり、上述の位置決め制限によって限定されない。ロボットアーム402を使用して、位置決め制限を低減または排除することができる。あるいは、ロボットアーム202またはロボットアーム302を使用して、位置決め制限を低減または排除し得る。
【0078】
ロボット治療施行システム400の到達不可領域は、ロボットアーム102を単に治療台206の反対側に取り付けることだけによって矯正することはできないが、これは、その場合に、反対側が治療台206およびロボットアーム102の妨害によって到達不可領域を有することになるためであることに留意されたい。換言すれば、ロボットをベースとする放射線手術システムを、単に他の側に取り付けるだけでは、ロボット治療施行システム400の到達不可領域を生じさせる妨害による位置決め制限は克服されない。
【0079】
図5は、一実施形態によるロボット治療施行システム200またはロボット治療施行システム300の作業空間511を示す透視図である。上述のように、空間ノードおよびこれらの空間ノードを相互接続する関連した安全経路の集合は、「作業空間」または「ノード群」と呼ばれる。作業空間は、ロボットアームの動作領域を表す。作業空間511は、放射線供給源を位置決めするための、作業空間511の表面上に存在する一群の空間ノード511を含む。各空間ノード511は、「+」記号(数個のみ表示)によって表される。空間ノード511は、従来の治療施行システムを位置決めし得る空間ノードを表す。上述のように、作業空間またはノード群は、空間ノードおよびこれらの空間ノードを相互接続する関連した安全経路の集合である。しかしながら、従来システムの作業空間とは異なり、作業空間511、および空間ノードの数は、治療施行システム200または治療施行システム300を使用することで増大し得る。したがって、作業空間511はまた、破線の「+」で示すような、一群の追加のまたは増大した空間ノード512も含む。作業空間511の、空間ノード511および増大した空間ノード512の総数は、従来システムの作業空間の空間ノード511の総数よりも多い。
【0080】
ロボットアーム202またはロボットアーム302を使用してLINAC203を移動させることにより、LINAC203は、従来のシステムにおいて以前にはブロックされるかまたは別様で到達不可であった、治療台206周囲の特定のゾーン(例えば、空間ノード)へアクセスすることができる。例えば、従来のロボットアームは、LINAC103を特定の位置に位置決めするために、治療台106の周囲にLINAC203を位置決めすることができなかった。しかしながら、本明細書に記載されるように、治療施行システム200および治療施行システム300に関しては、これらのブロックされた位置は、ブロックされず、到達可能である。従来システムにおいて以前には治療台によりブロックされるかまたは別様で到達不可であったそれら特定のゾーンへの、より高いアクセス可能性を有することで、作業空間511(例えば、LINAC203が放射線を標的に照射することができる空間ノード)が増大する。更に、従来のロボットアームと患者との間の距離余裕のために、従来のロボットアームではアクセスできなかった追加の空間ノードに、アクセスすることができる。
【0081】
作業空間511は球状であるが、代替的に、作業空間511は他の幾何学形状(例えば、楕円状)を有してもよく、また、患者の頭部内または患者の他の部位内に存在するVOIに関して画定されることに留意されたい。更には、複数の作業空間を、患者の異なる部分に関して画定してもよく、各作業空間は、650mmおよび800mmのような異なる半径または軸間距離(SAD)を有する。このSADは、LINAC203のコリメータとVOI内の標的との距離である。SADは、作業空間の表面積を規定する。楕円状作業空間の一実施形態では、SADを900mm〜1000mmの範囲とすることができる。他のSADを使用してもよい。
【0082】
空間ノード511および増大空間ノード512は、作業空間511の表面上に存在する。空間ノードは、LINAC203が停止して、患者内のVOIへ一定線量の放射線を照射するように予めプログラムされた場所を表す。治療計画を施行する間、ロボットアーム202は、既定の経路に従い、一定線量の照射が決定された空間ノード112および空間ノード412のそれぞれ全てに、LINAC203を移動させる。この既定の経路はまた、ロボットアーム202またはロボットアーム302の動きを単純化するために、照射線量が必要とされない空間ノード511および空間ノード512を含んでもよい。
【0083】
ノード群は、作業空間511の幾何学表面にわたって実質的に均一に分布する空間ノードを含み得る。ノード群は、プログラムされた空間ノード511および空間ノード412の全てを含み、ほとんどの病気および関連するVOIに対する治療計画解決法を効果的に演算するための、作業可能な数の空間ノード511および空間ノード512を提供する。ノード群は、多種多様な異なるVOIに対しての均一性および原体性の許容限界が達成され得るように、適度に多数の空間ノード511および空間ノード512を提供する一方で、患者内の重要組織を避けるための十分な視点を提供する。本明細書の実施形態を使用する場合、空間ノードの数は、従来システムの空間ノードの数よりも多い。ノード群は、空間ノード511および空間ノード512を、図示または論じられているものよりも多く、あるいは少なく含み得ることを理解されたい。例えば、処理能力が向上し、治療計画を作り出す経験が増すにつれて、空間ノード511および空間ノード512の平均数は時間と共に増大し、より高度な柔軟性およびより高い質の治療計画が提供され得る。
【0084】
放射線治療の間、患者は治療台206上に安置され、この治療台206は、標的を含む関心体積(「VOI」)を、設定位置に、またはLINAC203の放射線供給源にアクセス可能な動作範囲内に位置決めするように操作される。ロボットアーム202またはロボットアーム302は、LINAC203をほぼ無限の数の位置および配向でその動作領域内に位置決めすることが可能な、7つのDOFを有する。
【0085】
上述のように、本明細書に記載される実施形態は、LINACに連結するロボットアームとして図示し、説明しているが、しかしながら他の実施形態では、他のロボットマニピュレータおよび/または他の医療器具を使用してもよい。例えば、医療器具は、画像装置の画像形成供給源、外科手術用器具、インプラント器具、治療台であってもよい。治療台の場合では、ロボットアームは、ロボットアームと治療室内の他の障害物との間の距離余裕の増大、利用可能な作業空間の増大などのために、上述のLINACと同様に治療台を位置決めすることができる。
【0086】
本明細書に記載される実施形態によって、LINAC203を様々な位置で位置決めし、1つ以上の放射線ビームを治療台上の患者に向けて直射することが可能となる。例えば、治療台上に横たわる患者の頭部内の標的に放射線を直射するための第1位置に、LINAC203を位置決めすることができる。あるいは、臀部治療に関する患者内の標的に放射線を直射するための第2位置に、LINAC203を位置決めすることができる。臀部治療の間、患者が治療台上に仰臥位で横たわる状態で、LINAC203を患者に対して上方に向けるように位置決めし、臀部方向から治療ビームを照射することができる。LINAC203はまた、位置および/もしくは同一の場所での配向を移動させることによって、異なる場所に移動させることもでき、または同一の場所で異なる配向に移動させることもできる。例えば、ロボットアームは、実質的に垂直な直線DOF(例えば、トラック226)および追加のDOF(例えば、冗長関節、肘アセンブリ、および肩アセンブリ)を使用して、患者の上方にLINAC203を位置決めおよび配向させて垂直方向のリーチを提供する一方で、リストアセンブリ212が、臀部治療の標的に対してLINAC203の配向を提供することができる(例えば、リストアセンブリ212の器具ヨー関節を使用してLINAC203をピッチ軸を中心に回転させる)。あるいは、ロボットアーム202の他の動きを使用して、臀部治療の標的に対してLINAC203を位置決めおよび配向することができる。あるいは、位置283のLINAC203は、他の種類の治療の標的に放射線を直射するよう構成される。
【0087】
図6は、ロボットマニピュレータを使用して医療器具を位置決めするための方法600の一実施形態を示す。この方法600は、7つ以上のDOFを有するロボットマニピュレータに連結する医療器具(例えばLINAC203)を提供する、工程601、およびロボットマニピュレータを使用して、7つ以上のDOFに沿って医療器具を移動させる、工程602を含む。
【0088】
7つ以上のDOFに沿って医療器具を移動させることは、互いに直交するx座標軸、y座標軸、およびz座標軸に沿った、医療器具の並進移動のための4つの回転軸において、並びにx軸、y軸、およびz軸をそれぞれ中心とする、医療器具のロール回転、ピッチ回転、およびヨー回転のための3つの回転軸において、医療器具を移動させることを含む。一実施形態では、医療器具は、4つの回転軸を使用して医療器具を移動させることにより固定位置に位置決めされ、3つの回転軸を使用して固定位置で配向させることができる。医療器具はまた、実質的に直線のDOFに沿って移動させることもできる。実質的に直線のDOFは、上述の回転DOFに追加されてもよく、上述の回転DOFの1つの代わりであってもよい。一実施形態では、医療器具は、水平座標系のx軸およびy軸に対して実質的に垂直なz軸における実質的な垂直線に沿った、医療器具の並進移動のための実質的に直線の軸を有する、実質的に垂直、直線のDOFに沿って移動する。別の実施形態では、医療器具は、z軸に対し実質的に垂直な、互いに直交する水平座標系のx軸およびy軸における水平線に沿った、医療器具の並進移動のための実質的に直線の軸を有する、実質的に水平、直線のDOFに沿って移動する。医療器具は、6つ(7つのDOFについて)または7つ(8つのDOFについて)の回転DOFにおいて医療器具を回転させることなく、実質的に直線の軸に沿って、医療器具の可動域の実質的に全体にわたり移動することができる。
【0089】
別の実施形態では、医療器具は、ロボットマニピュレータの器具ヨー関節、器具ピッチ関節、および器具ロール関節を使用して、x軸、y軸、およびz軸を中心に回転させることができる。医療器具はまた、ロボットマニピュレータの冗長関節、肘関節、および第1肩関節をそれぞれ使用して、第1回転軸、第2回転軸、および第3回転軸を中心に回転させることもできる。医療器具は、第2肩関節を使用して第4回転軸を中心に回転させるか、または第7DOFに対するトラックおよびトラック取り付けアセンブリを使用して実質的に直線の軸を中心に並進移動させることができる。
【0090】
別の実施形態では、医療器具を、ロボットマニピュレータを使用して固定位置に位置決めし、また固定位置に維持しつつロボットマニピュレータを移動させることができる。医療器具は、拘束体積内に、その拘束体積外部の物体と衝突することなく、位置決めすることができる。
【0091】
この方法はまた、ロボットマニピュレータおよび医療器具の機械的可動域内における、位置決め制限に起因する従来の妨害位置に、医療器具を位置決めすることも含む。別の実施形態では、医療器具は、第1位置から第2位置へと、障害物に起因する同一の第2位置への妨害経路を通らずに、第1経路を通って位置決めされる。別の実施形態では、医療器具は、第1位置から第2位置へと、第1経路を通って位置決めされ、この第1経路は、同一の第2位置への第2経路よりも、障害物とロボットマニピュレータおよび医療器具との間に、大きい距離余裕を有する。
【0092】
図7は、医療器具を固定位置に維持するための方法の別の実施形態を示す。この方法は、ロボットマニピュレータを使用して医療器具を固定位置に位置決めする、工程701、および医療器具を固定位置に維持する一方で、ロボットマニピュレータを移動させる、工程702を含む。一実施形態では、ロボットマニピュレータは、関節によって相互接続された複数の剛体リンクを含む。医療器具を固定位置に維持する一方で、ロボットマニピュレータの剛体リンクの1つ以上を移動させることができる。医療器具は、拘束体積内に、その拘束体積外部の物体と衝突することなく、位置決めすることができる。
【0093】
別の実施形態では、この方法は、画像形成視野を有する画像形成システムを提供すること、およびLINAC203を、全ての支援治療位置に対して、画像形成視野の実質的な外部に維持することを含む。
【0094】
一実施形態では、LINAC203および治療台206の移動は、制御装置を使用して、LINAC203および治療台206の配向並びに位置を動的に連係させることを含む。別の実施形態では、LINAC203および治療台206の移動は、LINAC203の放射線供給源を、治療台206上に配置された患者内の治療標的と位置合わせすることを含む。別の実施形態では、LINAC203および治療台206の移動は、ロボットアーム202およびLINAC203の機械的可動域内における、従来の妨害位置内に、治療標的を作り出すように、LINAC203および治療台206を位置決めすることを更に含む。
【0095】
図8は、本発明の実施形態を実現し得る、放射線治療の実施に使用することができる治療システム800の一実施形態のブロック図を示す。図示の治療システム800は、診断画像形成システム810、治療計画システム830、および治療施行システム850を含む。他の実施形態では、治療システム800は、より少ない構成要素、またはより多い構成要素のシステムを含み得る。
【0096】
診断画像形成システム810は、患者内の関心体積(VOI)の医療診断画像を作り出すことが可能な任意のシステムを表し、その画像は、後続の医療診断、治療計画、および/または治療施行のために使用することができる。例えば、診断画像形成システム810は、コンピュータ断層撮影(CT)システム、単光子放出コンピュータ断層撮影(SPECT)システム、磁気共鳴画像(MRI)システム、ポジトロン放出断層撮影(PET)システム、近赤外線蛍光画像システム、超音波システム、または他の同様の画像形成システムとすることができる。考察の容易性のために、本明細書での、CT用x線画像形成システム(または他の特定のシステム)のような特定の画像形成システムへのいずれの具体的参照も、一般に、診断画像形成システム810を表すものであり、特に指定のない限り、他の画像診断法を排除するものではない。
【0097】
図示の診断画像形成システム810は、画像形成供給源812、画像形成検出器814、および処理デバイス816を含む。画像形成供給源812、画像形成検出器814、および処理デバイス816は、バスのような通信チャネルによって互いに連結される。一実施形態では、画像形成供給源812は画像形成ビーム(例えばx線、超音波、高周波など)を生成し、画像形成検出器814は画像形成ビームを検出して受け取る。あるいは、画像形成検出器814は、画像形成供給源からの画像形成ビームによって誘導された二次画像形成ビーム、または放射物を検出して受け取ることができる(例えば、MRIスキャンまたはPETスキャンにおいて)。一実施形態では、診断画像形成システム810は、2つ以上の診断画像形成供給源812、および対応する2つ以上の画像形成検出器814を含み得る。例えば、2つのx線供給源812を、画像形成される患者の周囲に配置し、互いに角度分離させて固定し(例えば、90度、45度など)、画像形成供給源814に直径方向で対向し得る、対応する画像形成検出器814に向けて、患者を通して照準を合わせてもよい。単一の大型画像形成検出器814、または複数の画像形成検出器814もまた、各x線画像形成供給源814によって照射することができる。あるいは、他の数および他の構成の画像形成供給源812並びに画像形成検出器814を使用してもよい。
【0098】
画像形成供給源812および画像形成検出器814は、診断画像形成システム810内における画像形成工程の制御および画像データの処理のために、処理デバイス816に連結される。一実施形態では、処理デバイス816は、画像形成供給源812および画像形成検出器814と通信を行なうことができる。処理デバイス816の実施形態は、1つ以上の、汎用プロセッサ(例えばマイクロプロセッサ)、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)のような専用プロセッサ、または制御装置もしくはフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)のような他の種類のデバイスを含み得る。処理デバイス816はまた、メモリ、ストレージデバイス、ネットワークアダプタなどのような、他の構成要素(図示せず)も含み得る。一実施形態では、処理デバイス816は、医療用デジタル画像通信(DICOM)形式のような標準形式で、デジタル診断画像を生成する。他の実施形態では、処理デバイス816は、標準または非標準の、他のデジタル画像形式を生成することができる。
【0099】
更には、処理デバイス816は、DICOMファイルのような診断画像ファイルを、データリンク860を経由して治療計画システム830に伝送することができる。一実施形態では、データリンク860は、直接リンク、ローカルエリアネットワーク(LAN)リンク、インターネットのような広域ネットワーク(WAN)リンク、または他の種類のデータリンクとすることができる。更には、診断画像形成システム810と治療計画システム830との間で伝送される情報は、遠隔診断または遠隔治療計画の構成におけるような、データリンク860を介した引き出し、または転送が可能である。例えば、ユーザは、本発明の実施形態を利用して、システムユーザと患者との間に物理的分離が存在するにもかかわらず、遠隔的な診断または治療計画を行なうことができる。
【0100】
図示の治療計画システム830は、処理デバイス832、システムメモリデバイス834、電子データストレージデバイス836、ディスプレイデバイス838、および入力デバイス840を含む。処理デバイス832、システムメモリ834、ストレージ836、ディスプレイ838、および入力デバイス840は、1つ以上のバスのような通信チャネル842によって互いに連結することができる。
【0101】
処理デバイス832は、画像データを受け取って処理する。処理デバイス832はまた、治療計画システム830内で、命令および動作の処理も行なう。特定の実施形態では、処理デバイス832は、1つ以上の、汎用プロセッサ(例えばマイクロプロセッサ)、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)のような専用プロセッサ、または制御装置もしくはフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)のような他の種類のデバイスを含み得る。
【0102】
具体的には、処理デバイス832は、本明細書で論じる治療工程を行なうための命令を実行するように構成することができる。例えば、処理デバイス832は、患者内の標的の非線形移動経路を識別し、非線形移動経路の非線形モデルを生成することができる。別の実施経路では、処理デバイス832は、複数の位置決め点および複数の方向表示に基づく非線形モデルを生成することができる。別の実施経路では、処理デバイス832は、複数の相関モデルを作成し、そのモデルの1つを選択して標的の位置を導き出すことができる。更には、処理デバイス832は、本明細書で論じる工程に関連する、他の診断、計画、および治療工程を容易にし得る。
【0103】
一実施形態では、システムメモリ834は、ランダムアクセスメモリ(RAM)または他の動的ストレージデバイスを含み得る。上述のように、システムメモリ834は、通信チャネル842によって、処理デバイス832に連結することができる。一実施形態では、システムメモリ834は、情報、および処理デバイス832によって実行される命令を記憶する。システムメモリ834はまた、処理デバイス832による命令の実行中に、一時的な変数または中間情報を記憶するために使用することもできる。別の実施形態では、システムメモリ834はまた、静的情報、および処理デバイス832に関する命令を記憶するための、読み取り専用メモリ(ROM)または他の静的ストレージデバイスも含み得る。
【0104】
一実施形態では、ストレージ836は、情報および命令を記憶するための、1つ以上の大容量ストレージデバイス(例えば、磁気ディスクドライブ、テープドライブ、光学ディスクドライブなど)を表す。ストレージ836および/またはシステムメモリ834はまた、機械可読媒体と呼ぶこともできる。特定の実施形態では、ストレージ836は、本明細書で論じるモデル化の工程を実行するための命令を記憶することができる。例えば、ストレージ836は、データ点の取得および記憶、画像の取得および記憶、非線形経路の識別、線形および/または非線形の相関モデルの生成などのための命令を記憶することができる。別の実施形態では、ストレージ836は、1つ以上のデータベースを含み得る。
【0105】
一実施形態では、ディスプレイ838は、陰極線管(CRT)ディスプレイ、液晶ディスプレイ(LCD)、または別の種類のディスプレイデバイスとすることができる。ディスプレイ838は、情報(例えば、VOIの2次元または3D表示)をユーザに対して表示する。入力デバイス840は、キーボード、マウス、トラックボール、または同様のデバイスのような、1つ以上のユーザインターフェイスデバイスを含み得る。入力デバイス840はまた、指向性情報の伝達、処理デバイス832に関するコマンドの選択、ディスプレイ838上のカーソル移動の制御などのために使用することもできる。
【0106】
治療計画システム830の一実施形態が本明細書に記載されるが、記載される治療計画システム830は、治療計画システム830の一例を表すのみである。治療計画システム830の他の実施形態は、多くの異なる構成およびアーキテクチャを有し得、より少ない構成要素またはより多くの構成要素を含み得る。例えば、他の実施形態は、周辺バスまたは専用キャッシュバスのような、複数のバスを含み得る。更には、治療計画システム830はまた、画像を融合させ、異なるシステム上に標的を明確に示し、次いで計画および線量計算のために治療計画システム830内に取り込むことができるように、DICOMの取り込みに対応する医療画像再生取り込みツール(MIRIT)を含み得る。別の実施形態では、治療計画システム830はまた、MRI、CT、PETなどのような様々な画像診断法の任意の1つにおいて、ユーザが治療を計画し、線量分布を視認できる、拡大画像融合機能を含み得る。更には、治療計画システム830は、従来の治療計画システムの機構を1つ以上含み得る。
【0107】
一実施形態では、治療計画システム830は、ストレージ836上のデータベースを、治療施行システム850と共有し、それによって治療施行システム850は、治療施行の前または治療施行の間に、そのデータベースにアクセスすることができる。治療計画システム830は、データリンク870を介して治療施行システム850にリンクすることができ、このデータリンク870は、データリンク860に関して上述したような、直接リンク、LANリンク、またはWANリンクとすることができる。LAN、WAN、または他の分散型の接続が実施される場合は、治療システム800のいずれの構成要素も分散化した場所に存在させることができ、そのため個々のシステム810、830、および850は、互いに物理的に遠く離れてもよい。あるいは、診断画像形成システム810、治療計画システム830、もしくは治療施行システム850の、機能上の特徴の一部または全てを、治療システム800内で互いに統合させてもよい。
【0108】
図示の治療施行システム850は、放射線供給源852、画像形成システム854、処理デバイス856、および治療台858を含む。放射線供給源852、画像形成システム854、処理デバイス856、および治療台858は、1つ以上の通信チャネル860を介して互いに連結させることができる。治療施行システム850の一例は、図4Aを参照して、より詳細に示され、説明される。
【0109】
一実施形態では、放射線供給源852は、治療計画に準拠して、既定の放射線量を標的体積に照射するための、治療的または外科的放射線供給源852である。一実施形態では、放射線供給源852は、本明細書に記載されるLINAC203である。あるいは、放射線供給源852は、当業者には明らかであるような、他の種類の放射線供給源であってもよい。例えば、標的体積は、内臓器官、腫瘍、体域とすることができる。上述のように、標的、標的体積、標的領域、標的部位、または内部標的への本明細書における言及は、臓器、腫瘍、体域、もしくは治療計画の対象である他の明確に示された体積の全体または部分のいずれを指すものである。
【0110】
一実施形態では、治療施行システム850の画像形成システム854は、放射線供給源に対する患者の位置決めを目的とする、上述の診断画像との位置合わせまたは関連付けのために、標的体積を含む患者体積の治療中画像を捕捉する。診断画像形成システム810と同様に、治療施行システム850の画像形成システム854は、1つ以上の供給源および1つ以上の検出器を含み得る。
【0111】
治療施行システム850はまた、放射線供給源852、画像形成システム854、および任意の患者支持デバイスを表す治療台858を制御するための、処理デバイス856も含み得る。一実施形態では、治療台858は、本明細書に記載の、ロボットアーム202またはロボットアーム302に連結する、治療台206である。別の実施形態では、治療台858は、本明細書に記載の、ロボットアーム106に連結する治療台である。あるいは、他の種類の患者支持デバイスを使用してもよい。一実施形態では、放射線供給源852は、第1のロボットアーム(例えば、ロボットアーム202)に連結され、治療台858は、第2のロボットアーム(例えば、ロボットアーム221)に連結される。第1のロボットアームおよび第2ロボットアームは、同じ制御装置(例えば、制御装置)または個別の制御装置に連結することができる。一実施形態では、第1のロボットアームおよび第2のロボットアームは、同一のロボットアームである。一実施形態では、第1のロボットアームおよび第2のロボットアームのそれぞれは、4つの回転DOF、および1つの実質的に直線のDOFを含む。別の実施形態では、第1のロボットアームおよび第2のロボットアームのそれぞれは、5つの回転DOF、および1つの実質的に直線のDOFを含む。あるいは、第1のロボットアームおよび第2ロボットアームのそれぞれは、6つの回転DOF、および1つの実質的に直線のDOFを含む。あるいは、第1のロボットアームおよび第2のロボットアームは、異なる数および異なる種類のDOFを含み得る。別の実施形態では、第1のロボットアームおよび第2のロボットアームは、異なる種類のロボットアームである。あるいは、治療台206に対してLINAC203を移動させるために、第1のロボットアームのみが使用される。
【0112】
処理デバイス856は、1つ以上の、汎用プロセッサ(例えばマイクロプロセッサ)、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)のような専用プロセッサ、または制御装置もしくはフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)のような他のデバイスを含み得る。更には、処理デバイス856は、メモリ、ストレージデバイス、ネットワークアダプタなどのような、他の構成要素(図示せず)も含み得る。
【0113】
図示の治療施行システム850はまた、ユーザインターフェイス862および測定デバイス864も含む。一実施形態では、ユーザインターフェイス862は、ユーザインターフェイス500である。別の実施形態では、ユーザインターフェイス862は、グラフィカルユーザインターフェイス600である。一実施形態では、ユーザインターフェイス862によって、ユーザは治療施行システム850と連携することが可能となる。具体的には、ユーザインターフェイス862は、キーボード、ディスプレイ画面などのような、入力デバイスおよび出力デバイスを含み得る。測定デバイス864は、標的領域20に実際に照射される放射線に影響を及ぼし得る上述の外的要因のような外的要因を測定する、1つ以上のデバイスとすることができる。一部の例示的な測定デバイスとしては、周囲温度を測定するための温度計、湿度を測定するための湿度計、空気圧を測定するための気圧計、または外的要因を測定するための、任意の他の種類の測定デバイスが挙げられる。
【0114】
上記明細書において、本発明の実施形態は、特定の例示的な実施形態を参照して説明されている。しかしながら、特許請求の範囲に記載される本実施形態の広い精神および範囲から逸脱することなく、様々な修正および変更を加え得ることは明白であろう。したがって、本明細書および図面は、限定的ではなく例示的な意味において解釈されたい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置であって、
医療器具と、
前記医療器具に連結し、前記医療器具を7つ以上の自由度(DOF)に沿って移動させる、ロボットマニピュレータと、
を含み、前記7つ以上のDOFは、少なくとも1つの冗長DOFを含む、装置。
【請求項2】
前記ロボットマニピュレータが、回転運動または並進移動のいずれかを可能にする関節によって相互接続される、複数の剛体リンクを含み、前記関節の少なくとも1つは、前記ロボットマニピュレータを前記少なくとも1つの冗長DOFにおいて移動させる冗長関節である、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記ロボットマニピュレータがロボットアームであって、前記ロボットマニピュレータは、
前記医療器具に連結し、前記医療器具を3つのDOFにおいて移動させる、リストアセンブリと、
前記リストアセンブリに連結し、前記医療器具を4つのDOFにおいて移動させる、アームアセンブリと、
を含み、前記4つのDOFは、前記少なくとも1つの冗長DOFを含む、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記リストアセンブリが、
前記医療器具を支持する取り付けプレートに連結し、前記治療器具を第1回転軸に沿って回転させる、器具ヨー関節と、
前記器具ヨー関節に連結し、前記治療器具を第2回転軸に沿って回転させる、器具ピッチ関節と、
前記器具ピッチ関節に連結し、前記治療器具を第3回転軸に沿って回転させる、器具ロール関節と、
を含む、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記アームアセンブリが、
肘アセンブリと、
前記リストアセンブリと前記肘アセンブリとの間に連結する冗長関節アセンブリと、
前記肘アセンブリに連結する第1肩アセンブリと、
前記第1肩アセンブリに連結する第2肩アセンブリと、
を含む、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記冗長関節アセンブリおよび前記肘アセンブリに連結し、前記ロボットアームの第4回転軸において前記ロボットアームの回転移動を駆動させるギアボックスを含む、冗長関節と、
前記肘アセンブリおよび前記第1肩アセンブリに連結し、前記ロボットアームの第5回転軸において前記ロボットアームの回転移動を駆動させる肘ギアボックスを含む、肘関節と、
前記第1肩アセンブリおよび前記第2肩アセンブリに連結し、前記ロボットアームの第6回転軸において前記ロボットアームの回転移動を駆動させる第1肩ギアボックスを含む、第1肩関節と、
前記第2肩アセンブリおよび取り付けアセンブリに連結し、前記ロボットアームの第7回転軸において前記ロボットアームの回転移動を駆動させる第2肩ギアボックスを含む、第2肩関節と、
を更に含む、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記ロボットアームの前記第2肩アセンブリに連結するトラック取り付けアセンブリと、
前記トラック取り付けアセンブリに連結し、前記ロボットアームの第8並進軸に沿って前記トラック取り付けアセンブリを移動させるように構成された、トラックと、
を更に含む、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記アームアセンブリが、
前記リストアセンブリに連結する肘アセンブリと、
前記肘アセンブリに連結する第1肩アセンブリと、
前記第1肩アセンブリに連結する第2肩アセンブリと、
前記肘アセンブリおよび前記第1肩アセンブリに連結し、前記ロボットアームの第4回転軸において前記ロボットアームの回転移動を駆動させる肘ギアボックスを含む、肘関節と、
前記第1肩アセンブリおよび前記第2肩アセンブリに連結し、前記ロボットアームの第5回転軸において前記ロボットアームの回転移動を駆動させる第1肩ギアボックスを含む、第1肩関節と、
前記第2肩アセンブリおよび取り付けアセンブリに連結し、前記ロボットアームの第6回転軸において前記ロボットアームの回転移動を駆動させる第2肩ギアボックスを含む、第2肩関節と、
前記第1肩アセンブリおよび前記第2肩アセンブリに連結し、前記ロボットアームの第7回転軸において前記ロボットアームの回転移動を駆動させる第3肩ギアボックスを含む、冗長関節と、
を含む、請求項4に記載の装置。
【請求項9】
前記アームアセンブリが、
前記リストアセンブリに連結する肘アセンブリと、
前記肘アセンブリに連結する第1肩アセンブリと、
前記肘アセンブリと前記第1肩アセンブリとの間に連結する冗長関節アセンブリと、
前記第1肩アセンブリに連結する第2肩アセンブリと、
を含む、請求項4に記載の装置。
【請求項10】
前記リストアセンブリおよび前記肘アセンブリに連結し、前記ロボットアームの第4回転軸において前記ロボットアームの回転移動を駆動させる肘ギアボックスを含む、肘関節と、
前記肘アセンブリおよび前記第1肩アセンブリに連結し、前記ロボットアームの第5回転軸において前記ロボットアームの回転移動を駆動させるギアボックスを含む、冗長関節と、
前記第1肩アセンブリおよび前記第2肩アセンブリに連結し、前記ロボットアームの第6回転軸において前記ロボットアームの回転移動を駆動させる第1肩ギアボックスを含む、第1肩関節と、
前記第2肩アセンブリおよび取り付けアセンブリに連結し、前記ロボットアームの第7回転軸において前記ロボットアームの回転移動を駆動させる第2肩ギアボックスを含む、第2肩関節と、
を更に含む、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記7つ以上のDOFの7つのDOFが、
互いに直交するx座標軸、y座標軸、およびz座標軸に沿った、前記医療器具の並進移動のための、4つの回転軸と、
x軸、y軸、およびz軸をそれぞれ中心とする、前記医療器具のロール回転、ピッチ回転、およびヨー回転のための、3つの回転軸と、
を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項12】
第8のDOFを更に含み、前記第8のDOFは、実質的に直線の軸に沿った前記医療器具の並進移動のための前記実質的に直線の軸を含む、実質的に直線のDOFである、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記実質的に直線のDOFが、前記8つのDOFの第1DOFであって、前記第1DOFは、前記ロボットマニピュレータの前記他の7つのDOFを移動させるように構成され、前記第1DOFは、前記ロボットアームの前記基端部に直近する前記DOFである、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記7つ以上のDOFの7つのDOFが、
互いに直交するx座標軸、y座標軸、およびz座標軸に沿った、前記医療器具の並進移動のための、3つの回転軸と、
x軸、y軸、およびz軸をそれぞれ中心とする、前記医療器具のロール回転、ピッチ回転、およびヨー回転のための、3つの回転軸と、
実質的に直線の軸に沿った、前記医療器具の並進移動のための、並進軸と、
を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項15】
前記医療器具が線形加速器(LINAC)である、請求項1に記載の装置。
【請求項16】
前記少なくとも1つの冗長DOFを含む前記7つ以上のDOFに沿って、前記医療器具を移動させることにより、前記ロボットマニピュレータが前記LINACの作業空間を増大させ、前記作業空間は、放射線を標的に対して照射するように前記LINACを位置決めすることができる多数のノードを含む、請求項15に記載の装置。
【請求項17】
前記医療器具が、画像装置の画像形成供給源である、請求項1に記載の装置。
【請求項18】
前記医療器具が、外科手術用器具である、請求項1に記載の装置。
【請求項19】
前記医療器具が、移植器具である、請求項1に記載の装置。
【請求項20】
前記医療器具が、治療台である、請求項1に記載の装置。
【請求項21】
前記ロボットマニピュレータに連結し、前記ロボットマニピュレータおよび前記医療器具を、前記7つ以上のDOFにおいて移動させる制御装置を更に含む、請求項1に記載の装置。
【請求項22】
方法であって、
7つ以上の自由度(DOF)を有するロボットマニピュレータに連結する医療器具を提供することであって、前記7つのDOFは少なくとも1つの冗長DOFを含むことと、
前記ロボットマニピュレータを使用して、前記7つ以上の自由度(DOF)に沿って前記医療器具を移動させることと、
を含む、方法。
【請求項23】
前記7つ以上のDOFに沿って前記医療器具を移動させることが、
互いに直交するx座標軸、y座標軸、およびz座標軸に沿った、前記医療器具の並進移動のための、4つの回転軸において、前記医療器具を移動させることと、
x軸、y軸、およびz軸をそれぞれ中心とする、前記医療器具のロール回転、ピッチ回転、およびヨー回転のための、3つの回転軸において、前記医療器具を移動させることと、
を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記4つの回転軸を使用して前記医療器具を移動させることにより、前記医療器具を固定位置に位置決めすることと、
前記3つの回転軸を使用して前記医療器具を移動させることにより、前記医療器具を前記固定位置で配向させることと、
を更に含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
ロボットマニピュレータを使用して、前記医療器具を固定位置に位置決めすることと、
前記医療器具を前記固定位置に維持する一方で、前記ロボットマニピュレータを移動させることと、
を更に含む、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記ロボットマニピュレータおよび前記医療器具の機械的可動域内における、位置決め制限に起因する従来の妨害位置に、前記医療器具を位置決めすることを更に含む、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
前記医療器具を、第1位置から第2位置へと、障害物に起因する、前記同一の第2位置への妨害経路を通らずに、第1経路を通って位置決めすることを更に含む、請求項23に記載の方法。
【請求項28】
前記医療器具を、第1位置から第2位置へと、第1経路を通って位置決めすることを更に含み、前記第1経路は、前記同一の第2位置への第2経路よりも、障害物と前記ロボットマニピュレータおよび医療器具との間に、より大きい距離余裕を有する、請求項23に記載の方法。
【請求項29】
前記医療器具を、拘束体積内に、前記拘束体積外部の物体と衝突することなく位置決めすることを更に含む、請求項23に記載の方法。
【請求項30】
前記医療器具を、実質的に直線のDOFに沿って移動させることを更に含む、請求項23に記載の方法。
【請求項31】
方法であって、
ロボットマニピュレータを使用して、医療器具を固定位置に位置決めすることと、
前記医療器具を前記固定位置に維持する一方で、前記ロボットマニピュレータを移動させることと、
を含む、方法。
【請求項32】
前記ロボットマニピュレータが、関節によって相互接続された複数の剛体リンクを含み、前記医療器具を前記固定位置に維持することは、前記ロボットマニピュレータの前記複数の剛体リンクの1つ以上を移動させる一方で、前記医療器具を前記固定位置に維持することを含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
装置であって、
医療器具と、
前記医療器具を7つ以上の自由度(DOF)に沿って移動させるための手段と、
を含み、前記7つ以上のDOFは、少なくとも1つの冗長DOFを含む、装置。
【請求項34】
前記医療器具が線形加速器(LINAC)であって、前記少なくとも1つの冗長DOFを含む前記7つ以上のDOFに沿って、前記LINACを移動させることにより、前記LINACの作業空間を増大させるための手段を更に含み、前記作業空間は、放射線を標的に対して照射するように前記LINACを位置決めすることができる多数のノードを含む、請求項33に記載の装置。
【請求項35】
前記作業空間を増大させるための前記手段が、前記LINACと障害物との間の距離余裕を増大させる一方で、放射線を標的に対して照射するように前記LINACをノードに位置決めするための手段を含む、
請求項34に記載の装置。
【請求項36】
前記少なくとも1つの冗長DOFに沿って、前記医療器具を移動させるための前記手段が、前記医療器具の可動域を増大させる、請求項33に記載の装置。
【請求項37】
前記少なくとも1つの冗長DOFを含む前記7つ以上のDOFに沿って、前記LINACを移動させるための前記手段が、前記医療器具を、拘束体積内に、前記拘束体積外部の物体と衝突することなく位置決めすることを可能にする、請求項33に記載の装置。
【請求項38】
前記少なくとも1つの冗長DOFを含む前記7つ以上のDOFに沿って、前記LINACを移動させるための前記手段が、前記医療器具を、第1位置から第2位置へと、第1経路を通って位置決めすることを可能にし、前記第1経路は、前記同一の第2位置への第2経路よりも、障害物と前記LINACを移動させるための前記手段との間に、より大きい距離余裕を有する、請求項33に記載の装置。
【請求項39】
前記医療器具を固定位置に位置決めするための手段と、
前記医療器具を前記固定位置に維持する一方で、前記医療器具を位置決めするための前記手段を移動させるための手段と、
を更に含む、請求項33に記載の装置。
【請求項40】
前記医療器具を前記固定位置に維持するための前記手段が、前記医療器具を前記固定位置に位置決めするための経路の数を増大させる、請求項39に記載の装置。
【請求項41】
システム装置であって、
線形加速器(LINAC)と、
前記LINACに連結し、前記LINACを少なくとも7つの自由度(DOF)において移動させるように構成され、前記少なくとも7つのDOFは、少なくとも1つの冗長DOFを含む、ロボットマニピュレータと、
前記ロボットマニピュレータに連結し、前記LINACの移動を制御して、前記LINACの放射線供給源を治療標的に位置合わせする、制御装置と、
前記治療標的の複数の画像を生成するための画像形成システムと、
を含む、システム装置。
【請求項42】
前記制御装置が、前記ロボットマニピュレータおよび前記LINACの機械的可動域内における、位置決め制限に起因する従来の妨害位置内の治療標的にアクセスするべく、前記LINACを位置決めするように構成される、請求項41に記載のシステム。
【請求項43】
前記ロボットマニピュレータが、少なくとも1つの冗長関節を含み、前記LINACを少なくとも1つの冗長DOFにおいて移動させる、請求項41に記載のシステム。
【請求項44】
前記画像形成システムが、
1対のx線供給源と、
1対のx線画像検出器と、
を含み、各画像検出器は、対応する供給源に対向して配置される、請求項41に記載のシステム。
【請求項1】
装置であって、
医療器具と、
前記医療器具に連結し、前記医療器具を7つ以上の自由度(DOF)に沿って移動させる、ロボットマニピュレータと、
を含み、前記7つ以上のDOFは、少なくとも1つの冗長DOFを含む、装置。
【請求項2】
前記ロボットマニピュレータが、回転運動または並進移動のいずれかを可能にする関節によって相互接続される、複数の剛体リンクを含み、前記関節の少なくとも1つは、前記ロボットマニピュレータを前記少なくとも1つの冗長DOFにおいて移動させる冗長関節である、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記ロボットマニピュレータがロボットアームであって、前記ロボットマニピュレータは、
前記医療器具に連結し、前記医療器具を3つのDOFにおいて移動させる、リストアセンブリと、
前記リストアセンブリに連結し、前記医療器具を4つのDOFにおいて移動させる、アームアセンブリと、
を含み、前記4つのDOFは、前記少なくとも1つの冗長DOFを含む、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記リストアセンブリが、
前記医療器具を支持する取り付けプレートに連結し、前記治療器具を第1回転軸に沿って回転させる、器具ヨー関節と、
前記器具ヨー関節に連結し、前記治療器具を第2回転軸に沿って回転させる、器具ピッチ関節と、
前記器具ピッチ関節に連結し、前記治療器具を第3回転軸に沿って回転させる、器具ロール関節と、
を含む、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記アームアセンブリが、
肘アセンブリと、
前記リストアセンブリと前記肘アセンブリとの間に連結する冗長関節アセンブリと、
前記肘アセンブリに連結する第1肩アセンブリと、
前記第1肩アセンブリに連結する第2肩アセンブリと、
を含む、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記冗長関節アセンブリおよび前記肘アセンブリに連結し、前記ロボットアームの第4回転軸において前記ロボットアームの回転移動を駆動させるギアボックスを含む、冗長関節と、
前記肘アセンブリおよび前記第1肩アセンブリに連結し、前記ロボットアームの第5回転軸において前記ロボットアームの回転移動を駆動させる肘ギアボックスを含む、肘関節と、
前記第1肩アセンブリおよび前記第2肩アセンブリに連結し、前記ロボットアームの第6回転軸において前記ロボットアームの回転移動を駆動させる第1肩ギアボックスを含む、第1肩関節と、
前記第2肩アセンブリおよび取り付けアセンブリに連結し、前記ロボットアームの第7回転軸において前記ロボットアームの回転移動を駆動させる第2肩ギアボックスを含む、第2肩関節と、
を更に含む、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記ロボットアームの前記第2肩アセンブリに連結するトラック取り付けアセンブリと、
前記トラック取り付けアセンブリに連結し、前記ロボットアームの第8並進軸に沿って前記トラック取り付けアセンブリを移動させるように構成された、トラックと、
を更に含む、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記アームアセンブリが、
前記リストアセンブリに連結する肘アセンブリと、
前記肘アセンブリに連結する第1肩アセンブリと、
前記第1肩アセンブリに連結する第2肩アセンブリと、
前記肘アセンブリおよび前記第1肩アセンブリに連結し、前記ロボットアームの第4回転軸において前記ロボットアームの回転移動を駆動させる肘ギアボックスを含む、肘関節と、
前記第1肩アセンブリおよび前記第2肩アセンブリに連結し、前記ロボットアームの第5回転軸において前記ロボットアームの回転移動を駆動させる第1肩ギアボックスを含む、第1肩関節と、
前記第2肩アセンブリおよび取り付けアセンブリに連結し、前記ロボットアームの第6回転軸において前記ロボットアームの回転移動を駆動させる第2肩ギアボックスを含む、第2肩関節と、
前記第1肩アセンブリおよび前記第2肩アセンブリに連結し、前記ロボットアームの第7回転軸において前記ロボットアームの回転移動を駆動させる第3肩ギアボックスを含む、冗長関節と、
を含む、請求項4に記載の装置。
【請求項9】
前記アームアセンブリが、
前記リストアセンブリに連結する肘アセンブリと、
前記肘アセンブリに連結する第1肩アセンブリと、
前記肘アセンブリと前記第1肩アセンブリとの間に連結する冗長関節アセンブリと、
前記第1肩アセンブリに連結する第2肩アセンブリと、
を含む、請求項4に記載の装置。
【請求項10】
前記リストアセンブリおよび前記肘アセンブリに連結し、前記ロボットアームの第4回転軸において前記ロボットアームの回転移動を駆動させる肘ギアボックスを含む、肘関節と、
前記肘アセンブリおよび前記第1肩アセンブリに連結し、前記ロボットアームの第5回転軸において前記ロボットアームの回転移動を駆動させるギアボックスを含む、冗長関節と、
前記第1肩アセンブリおよび前記第2肩アセンブリに連結し、前記ロボットアームの第6回転軸において前記ロボットアームの回転移動を駆動させる第1肩ギアボックスを含む、第1肩関節と、
前記第2肩アセンブリおよび取り付けアセンブリに連結し、前記ロボットアームの第7回転軸において前記ロボットアームの回転移動を駆動させる第2肩ギアボックスを含む、第2肩関節と、
を更に含む、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記7つ以上のDOFの7つのDOFが、
互いに直交するx座標軸、y座標軸、およびz座標軸に沿った、前記医療器具の並進移動のための、4つの回転軸と、
x軸、y軸、およびz軸をそれぞれ中心とする、前記医療器具のロール回転、ピッチ回転、およびヨー回転のための、3つの回転軸と、
を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項12】
第8のDOFを更に含み、前記第8のDOFは、実質的に直線の軸に沿った前記医療器具の並進移動のための前記実質的に直線の軸を含む、実質的に直線のDOFである、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記実質的に直線のDOFが、前記8つのDOFの第1DOFであって、前記第1DOFは、前記ロボットマニピュレータの前記他の7つのDOFを移動させるように構成され、前記第1DOFは、前記ロボットアームの前記基端部に直近する前記DOFである、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記7つ以上のDOFの7つのDOFが、
互いに直交するx座標軸、y座標軸、およびz座標軸に沿った、前記医療器具の並進移動のための、3つの回転軸と、
x軸、y軸、およびz軸をそれぞれ中心とする、前記医療器具のロール回転、ピッチ回転、およびヨー回転のための、3つの回転軸と、
実質的に直線の軸に沿った、前記医療器具の並進移動のための、並進軸と、
を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項15】
前記医療器具が線形加速器(LINAC)である、請求項1に記載の装置。
【請求項16】
前記少なくとも1つの冗長DOFを含む前記7つ以上のDOFに沿って、前記医療器具を移動させることにより、前記ロボットマニピュレータが前記LINACの作業空間を増大させ、前記作業空間は、放射線を標的に対して照射するように前記LINACを位置決めすることができる多数のノードを含む、請求項15に記載の装置。
【請求項17】
前記医療器具が、画像装置の画像形成供給源である、請求項1に記載の装置。
【請求項18】
前記医療器具が、外科手術用器具である、請求項1に記載の装置。
【請求項19】
前記医療器具が、移植器具である、請求項1に記載の装置。
【請求項20】
前記医療器具が、治療台である、請求項1に記載の装置。
【請求項21】
前記ロボットマニピュレータに連結し、前記ロボットマニピュレータおよび前記医療器具を、前記7つ以上のDOFにおいて移動させる制御装置を更に含む、請求項1に記載の装置。
【請求項22】
方法であって、
7つ以上の自由度(DOF)を有するロボットマニピュレータに連結する医療器具を提供することであって、前記7つのDOFは少なくとも1つの冗長DOFを含むことと、
前記ロボットマニピュレータを使用して、前記7つ以上の自由度(DOF)に沿って前記医療器具を移動させることと、
を含む、方法。
【請求項23】
前記7つ以上のDOFに沿って前記医療器具を移動させることが、
互いに直交するx座標軸、y座標軸、およびz座標軸に沿った、前記医療器具の並進移動のための、4つの回転軸において、前記医療器具を移動させることと、
x軸、y軸、およびz軸をそれぞれ中心とする、前記医療器具のロール回転、ピッチ回転、およびヨー回転のための、3つの回転軸において、前記医療器具を移動させることと、
を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記4つの回転軸を使用して前記医療器具を移動させることにより、前記医療器具を固定位置に位置決めすることと、
前記3つの回転軸を使用して前記医療器具を移動させることにより、前記医療器具を前記固定位置で配向させることと、
を更に含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
ロボットマニピュレータを使用して、前記医療器具を固定位置に位置決めすることと、
前記医療器具を前記固定位置に維持する一方で、前記ロボットマニピュレータを移動させることと、
を更に含む、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記ロボットマニピュレータおよび前記医療器具の機械的可動域内における、位置決め制限に起因する従来の妨害位置に、前記医療器具を位置決めすることを更に含む、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
前記医療器具を、第1位置から第2位置へと、障害物に起因する、前記同一の第2位置への妨害経路を通らずに、第1経路を通って位置決めすることを更に含む、請求項23に記載の方法。
【請求項28】
前記医療器具を、第1位置から第2位置へと、第1経路を通って位置決めすることを更に含み、前記第1経路は、前記同一の第2位置への第2経路よりも、障害物と前記ロボットマニピュレータおよび医療器具との間に、より大きい距離余裕を有する、請求項23に記載の方法。
【請求項29】
前記医療器具を、拘束体積内に、前記拘束体積外部の物体と衝突することなく位置決めすることを更に含む、請求項23に記載の方法。
【請求項30】
前記医療器具を、実質的に直線のDOFに沿って移動させることを更に含む、請求項23に記載の方法。
【請求項31】
方法であって、
ロボットマニピュレータを使用して、医療器具を固定位置に位置決めすることと、
前記医療器具を前記固定位置に維持する一方で、前記ロボットマニピュレータを移動させることと、
を含む、方法。
【請求項32】
前記ロボットマニピュレータが、関節によって相互接続された複数の剛体リンクを含み、前記医療器具を前記固定位置に維持することは、前記ロボットマニピュレータの前記複数の剛体リンクの1つ以上を移動させる一方で、前記医療器具を前記固定位置に維持することを含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
装置であって、
医療器具と、
前記医療器具を7つ以上の自由度(DOF)に沿って移動させるための手段と、
を含み、前記7つ以上のDOFは、少なくとも1つの冗長DOFを含む、装置。
【請求項34】
前記医療器具が線形加速器(LINAC)であって、前記少なくとも1つの冗長DOFを含む前記7つ以上のDOFに沿って、前記LINACを移動させることにより、前記LINACの作業空間を増大させるための手段を更に含み、前記作業空間は、放射線を標的に対して照射するように前記LINACを位置決めすることができる多数のノードを含む、請求項33に記載の装置。
【請求項35】
前記作業空間を増大させるための前記手段が、前記LINACと障害物との間の距離余裕を増大させる一方で、放射線を標的に対して照射するように前記LINACをノードに位置決めするための手段を含む、
請求項34に記載の装置。
【請求項36】
前記少なくとも1つの冗長DOFに沿って、前記医療器具を移動させるための前記手段が、前記医療器具の可動域を増大させる、請求項33に記載の装置。
【請求項37】
前記少なくとも1つの冗長DOFを含む前記7つ以上のDOFに沿って、前記LINACを移動させるための前記手段が、前記医療器具を、拘束体積内に、前記拘束体積外部の物体と衝突することなく位置決めすることを可能にする、請求項33に記載の装置。
【請求項38】
前記少なくとも1つの冗長DOFを含む前記7つ以上のDOFに沿って、前記LINACを移動させるための前記手段が、前記医療器具を、第1位置から第2位置へと、第1経路を通って位置決めすることを可能にし、前記第1経路は、前記同一の第2位置への第2経路よりも、障害物と前記LINACを移動させるための前記手段との間に、より大きい距離余裕を有する、請求項33に記載の装置。
【請求項39】
前記医療器具を固定位置に位置決めするための手段と、
前記医療器具を前記固定位置に維持する一方で、前記医療器具を位置決めするための前記手段を移動させるための手段と、
を更に含む、請求項33に記載の装置。
【請求項40】
前記医療器具を前記固定位置に維持するための前記手段が、前記医療器具を前記固定位置に位置決めするための経路の数を増大させる、請求項39に記載の装置。
【請求項41】
システム装置であって、
線形加速器(LINAC)と、
前記LINACに連結し、前記LINACを少なくとも7つの自由度(DOF)において移動させるように構成され、前記少なくとも7つのDOFは、少なくとも1つの冗長DOFを含む、ロボットマニピュレータと、
前記ロボットマニピュレータに連結し、前記LINACの移動を制御して、前記LINACの放射線供給源を治療標的に位置合わせする、制御装置と、
前記治療標的の複数の画像を生成するための画像形成システムと、
を含む、システム装置。
【請求項42】
前記制御装置が、前記ロボットマニピュレータおよび前記LINACの機械的可動域内における、位置決め制限に起因する従来の妨害位置内の治療標的にアクセスするべく、前記LINACを位置決めするように構成される、請求項41に記載のシステム。
【請求項43】
前記ロボットマニピュレータが、少なくとも1つの冗長関節を含み、前記LINACを少なくとも1つの冗長DOFにおいて移動させる、請求項41に記載のシステム。
【請求項44】
前記画像形成システムが、
1対のx線供給源と、
1対のx線画像検出器と、
を含み、各画像検出器は、対応する供給源に対向して配置される、請求項41に記載のシステム。
【図1】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【公表番号】特表2012−501866(P2012−501866A)
【公表日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−526891(P2011−526891)
【出願日】平成21年8月12日(2009.8.12)
【国際出願番号】PCT/US2009/053560
【国際公開番号】WO2010/030463
【国際公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【出願人】(505172824)アキュレイ インコーポレイテッド (13)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年8月12日(2009.8.12)
【国際出願番号】PCT/US2009/053560
【国際公開番号】WO2010/030463
【国際公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【出願人】(505172824)アキュレイ インコーポレイテッド (13)
【Fターム(参考)】
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