説明

少なくとも1つの標本スライドを処理する装置

【課題】標本スライド処理装置の2つのコンポーネント相互の正しい位置決めを簡単に実施できる装置を提供すること。
【解決手段】標本スライド処理装置10は、基礎フレーム26、マガジン18、ピックアップユニット30、線形ストローク要素44、アングル要素48、移送アーム46を有し、基礎フレーム26は、センサユニット50を有し、マガジン18は、センサユニット52を有し、ピックアップユニット30は、センサユニット54を有し、線形ストローク要素44は、センサユニット56を有し、アングル要素48は、センサユニット58を有し、移送アーム46は、センサユニット60を有する。接続された各コンポーネントの回転を検知するミクロエレクトロメカニカル系をそれぞれ構成するセンサユニット50〜60は、それぞれ、コンポーネントの位置と無関係の三次元座標系の2つの軸のまわりに、可動である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの標本スライドを処理する装置に関する。この場合、確実な機能のために、装置の2つのコンポーネントは、相互に正しい位置に設置しなければならない。
【背景技術】
【0002】
特に、標本スライドの処理時に作業工程を自動的に実施する標本スライド処理装置の状態において、しばしば、各装置のコンポーネントを相互に関して正しく配位させる必要がある。このようなコンポーネントは、標本スライドに直接に接触し、および/または、試料を標本スライドに接触させるか、他の要素を標本スライドに接触させる。標本スライドおよび/または試料または他の要素の正しい位置決めのため、装置のコンポーネントは、相互に正しく配位させなければならない。このような標本スライド処理装置は、特に、生物学的試料を標本スライドに自動的に付着させるユニット、生物学的試料を自動的に洗浄するユニット、および/または、標本スライド上に設置された生物学的標本にカバースリッピング剤および/またはカバースリップを自動的に被覆するユニットを含む。
【0003】
標本スライドおよびカバースリップを処理する装置は知られている(例えば、特許文献1参照)。この場合、カバースリップは、作動アームによって案内されたピックアップユニットによってピックアップして、標本スライドの所望位置に設置する。標本スライド上にカバースリップを付着させるためのこの種の自動装置は、更に、“カバースリッパ”と呼ばれる。これに関連して、カバースリップは、標本スライド上の調製ずみ標本をカバーするのに役立つ。この種の調製ずみ標本は、特に、生物学的試料(例えば、組織学的切片)である。カバースリップは、薄く、好ましくは、厚さが約0.17mmであり、スタックとして利用できる。従って、スタックからカバースリップをピックアップするため、ピックアップユニットは、スタックの最上のカバースリップをピックアップするためスタックに関して正確に位置決めしなければならない。同様に、標本スライド上にカバースリップを設置した際、カバースリップまたはカバースリップを有するピックアップユニットは、標本スライドに関して正確に位置決めしなければならない。
【0004】
カバースリッピング剤およびカバースリップを標本スライドに被覆するカバースリッピング装置は知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
カバースリッピング装置の場合、通常、基礎装置の基礎フレームを水平とする補助手段によって、基礎装置自体を三次元に配位し、更に、位置決め可能な作動要素を基礎フレームに関して配位させるか、作動要素の保持要素を基礎フレームに関して配位させ、かくして、これらの要素を、同様に、水平面に関して三次元に正確に配位させる。作動アームまたは作動アームの支持台は、通常、基礎フレームに接続され、更に、カバースリッピング装置の基礎フレームに関して作動アームを配位するため、配列手段を設けることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】DE1014408A1
【特許文献2】DE102005020426A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1については、カバースリップおよびピックアップユニットの位置決めの際に偏差が生じた場合、カバースリップおよび/または標本スライドのガラスが破損すると云う危険性が存在する。
また特許文献2の場合、特に、カバースリップをピックアップして標本スライド上に位置決めする手段は、カバースリップの正確な位置決めを実施できるよう、且つ更に、カバースリップに対する損傷またはカバースリップの破損を避けるため、標本スライドのホルダに関して正確に配位させなければならない。
検鏡試料の好ましくは自動的調製を実施するための他の標本スライド処理装置についても、カバースリッピング装置に関する問題と類似の問題が生ずる。
【0008】
本発明の課題は、少なくとも1つの標本スライドの処理装置であって、装置の2つのコンポーネント相互の正しい位置決めを簡単に実施できる形式の装置を開示することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一視点において、少なくとも1の標本スライドの処理装置が提供される。この装置において、三次元座標系の少なくとも1つの第1軸のまわりの装置の第1コンポーネントの第1回転を検知する第1センサユニットと;該座標系の少なくとも1つの第1軸のまわりの装置の第2コンポーネントの第2回転を検知する第2センサユニットとを有し、かつ該座標系は、第1コンポーネントの位置および第2コンポーネントの位置とは独立であり;第1コンポーネントに対して第2コンポーネントを位置決めする位置決めユニット;を有することを特徴とする。
なお、特許請求の範囲に付記した図面参照符号は専ら理解を助けるためのものであり、図示の態様に限定することを意図するものではない。
本発明の一視点に示す構成により、標本スライドの処理装置の2つのコンポーネント相互の正しい位置決めが簡単に実施できる。
本発明の有利な更なる実施例は、従属請求項に開示されている。
【0010】
センサユニットによって、座標系の第1軸のまわりの装置のコンポーネントの少なくとも1つの各回転を確認する。座標系の1つの軸に関してかくして確認された且つ装置のコンポーネントの位置とは独立である回転にもとづき、更に、上記軸に関するコンポーネントの回転差を確認でき、この回転差から、補正値を求め、次いで、この補正値を、第2コンポーネントの位置決めのための位置決めユニットによって考慮するか、第1コンポーネントに対する第2コンポーネントの位置決めのための初期変数として使用する。別の方式として、位置決めユニットを手操作で作動でき、確認された回転差または確認された補正値を、手操作位置決めによって誘起される補正の指示として使用できる。補正値を反復して求めることができ、かくして、第1コンポーネントに対する第2コンポーネントの所望の休止相対位置へ第2コンポーネントを第1コンポーネントに対して段階的に位置決めするために出力できる。更に、装置のコンポーネントの位置と独立の座標系は、三次元座標系とも呼ばれ、例えば、無限座標系または基礎座標系であり得る。
【0011】
有利な他の実施形態の場合、位置決めユニットは、少なくとも1つの駆動ユニットと、少なくとも1つの制御ユニットとを含む。制御ユニットは、駆動ユニットを制御し、かくして、駆動ユニットは、第1センサユニットによって検知された第1コンポーネントの第1軸のまわりの回転の関数として且つ第2センサユニットによって検知された第2コンポーネントの第1軸に関する回転の関数として第2コンポーネントを位置決めし、かくして、装置の操作中、第1コンポーネントは、選択的に、第2コンポーネントに関する第1目標位置または第2目標位置を取る。目標位置は、少なくとも、第1軸に関する第1コンポーネントの回転と第1軸に関する第2コンポーネントの回転と間の差に関係する。これに関連して、駆動ユニットが少なくとも1つのステップモータおよび/または少なくとも1つのリニアモータを含んでいれば有利である。
【0012】
特に、第1コンポーネントは、装置の基礎モジュールを含むことができる。基礎モジュールは、少なくとも1つの標本スライドおよび/または多数の標本スライドを有するカセットをピックアップするピックアップユニットを有する。カセットの1つの標本スライドおよび/または複数の標本スライドは、ピックアップの結果として、基礎モジュールに関連する位置を取り、この位置は、基礎モジュールによって定義される。第2コンポーネントは、基礎モジュールに対して可動な装置作動要素を含む。作動要素は、駆動ユニットによって、基礎モジュールに対して移動させることができる。このような構成によって、作動要素は、基礎モジュールに対して正しく配位、位置決めでき、かくして、要素は、標本スライドに関して所望の運動を実施できる。作動要素は、特に、標本スライドのピックアップに使用できるか、試料、物質および/または要素を標本スライド上に付着させるのに役立つ。
【0013】
これに関連して、装置が、装置の基礎モジュールに関して可動な第2作動要素の回転、即ち、座標系の少なくとも1つの軸のまわりの要素の回転を検知する第3センサユニットを有していれば有利である。結果として、更に、第1作動要素および第2作動要素の相互の相対回転を確認でき、必要あれば、補正できる。特に、第1作動要素および/または第2作動要素の運動に関して考慮される補正値を求めることができる。
【0014】
別の方式として、装置の第1コンポーネントは、装置の基礎モジュールに対して可動である、即ち、駆動ユニットによって基礎モジュールに対して移動させ得る作動ユニットであればよい。この場合、第2コンポーネントは、装置の基礎モジュールに対して可動であって他の駆動ユニットによって基礎モジュールに対しておよび/または装置の第1コンポーネントに対して移動させ得る作動ユニットであればよい。別の方式として、第2コンポーネントは、基礎モジュールに不動に接続させることができる。かくして達成されることは、第1作動要素および第2作動要素を相互に目標位置に位置決めできると云うことである。これは、更に、装置の基礎モジュールに関するコンポーネントの位置とは無関係に起こり得る。
【0015】
駆動ユニットに加えてまたは駆動ユニットの代わりに、位置決めユニットは、少なくとも第1コンポーネントの休止三次元位置を変更するためおよび/または第2コンポーネントの休止三次元位置を変更するため、少なくとも1つの配列手段を有することができる。更に、付加してまたは別の方式として、第2コンポーネントに対する第1コンポーネントの休止位置を変更するため、整列手段(aligning means)を設けることができる。この種の整列手段は、特に、コンポーネントを相互に所望の目標位置に置くため、手操作で作動でき、かくして、以降の操作中にコンポーネントの円滑で正しい機能を保証できる。この種の整列手段は、例えば、コンポーネントの相互位置または三次元位置を変更できる調節ネジであってよい。
【0016】
更に、第1回転の指示として第1コンポーネントの基準軸と座標系の第2軸との間の角度を確認するのが有利である。更に、第2コンポーネントの基準軸と座標系の第2軸との間の角度を第2回転の指示として確認できる。座標系の第2軸に関する角度によって、各コンポーネントの基準軸に関する第1コンポーネントの角度と第2コンポーネントの角度との差を求め、この差を目標角度差と比較することは容易である。目標角度差に対して確認された角度差の偏差の関数として、補正値を計算できるか、少なくとも1のコンポーネントの位置決め操作を承認でき、この操作によって、コンポーネントの基準軸の間の角度差を目標角度差に対応させる。
【0017】
これに関連して、座標系の第1軸に対して直角に延び且つ座標系の第2軸および第3軸を含む平面にコンポーネントの基準軸を投影すれば特に有利である。別の方式として、既に、基準軸を平面内に置くことができる。これは、第2コンポーネントについても同様に確認できる。かくして、座標系の第2軸に関するコンポーネントの基準軸の角度偏差を容易に求めることができる。かくして確認された角度によって、更に、角度の間の角度差を確認し、この角度差を目標角度差と比較することが容易である。目標角度差に対する確認された角度差の偏差にもとづき、少なくとも1つのコンポーネントの位置決めのための対応する補正値を求めることができ,次いで、これらの数値によって、コンポーネントを相互に関して所望の目標角度に設置する。
【0018】
センサユニットが、それぞれ、少なくとも1つのミクロエレクトロメカニカル系(MEMS)を含んでいれば好ましい。この種のミクロエレクトロメカニカル系が、ジャイロスコープおよび/または加速度センサを含んでいれば好ましい。特に、傾斜計を使用する。ジャイロスコープの使用にもとづき、三次元座標系(例えば、無限座標系または基礎座標系)の2つの軸に関する位置偏差を簡単な方式で確認するのが容易である。特に、ジャイロスコープによって、座標系の平面内にある座標系軸のまわりの回転を確認できる。上記軸のまわりの回転に起因するコンポーネントの目標位置に対する偏差を検知でき、コンポーネント上のセンサユニットの適切な配置にもとづき排除できる。別の方式として、補正値を計算でき、次いで、少なくとも1つのコンポーネントの制御および移動に関して考慮できる。
【0019】
更に、第1センサユニットで、座標系の第1軸のまわりの第1コンポーネントの第1回転および座標系の第2軸のまわりの第1コンポーネントの第3回転を検知し、第2センサユニットで、座標系の第1軸のまわりの第2コンポーネントの第2回転および座標系の第2軸のまわりの第2コンポーネントの第4回転を検知すれば有利である。
【0020】
有利な実施例にもとづき、水平面内にあるX軸およびY軸のコンポーネントの回転を確認する。
【0021】
更に、第1センサユニットで、座標系の第3軸(好ましくは、Z軸)のまわりの第1コンポーネントの第5回転を検知できる。次いで、第2センサユニットで、好ましくは更に、座標系の第3軸のまわりの第2コンポーネントの第6回転を検知できる。かくして、コンポーネントの各三次元位置を求めることができ、かくして、コンポーネントの位置の相互位置偏差を、対応する差計算および幾何学的関係によって、簡単に確認できる。
【0022】
このために、各センサユニットは、それぞれ、少なくとも2つのセンサモジュールを含み、この場合、これらのセンサモジュールは、それぞれ、座標系の2つの軸のまわりのコンポーネントの回転を検知する。
【0023】
第1センサユニットは、第1コンポーネントの構成要素であるか、第1コンポーネントに接続するのが好ましい。この場合、第2センサユニットは、第2コンポーネントの構成要素であるか、第2コンポーネントに接続するのが好ましい。装置の各コンポーネントは、装置の少なくとも1つのサブアセンブリを含む。結果として、装置のサブアセンブリの相互位置を簡単に確認でき、必要に応じて補正できる。補正のため、補正値を計算し、次いで、装置のサブアセンブリの位置決めのための少なくとも1つの駆動ユニットを制御する際に上記補正値を考慮するのが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第1実施例にもとづく、カバースリップで標本スライドを被覆するための装置のコンポーネントの休止位置の構成を示す側面図である。
【図2】図1にもとづく、第1操作位置の構成を示す側面図である。
【図3】図1および図2にもとづく、第2操作位置の構成を示す側面図である。
【図4】図1〜3にもとづく、第3操作位置の構成を示す側面図である。
【図5】本発明の第2実施例にもとづく、標本スライドの処理装置の基礎モジュールおよび作動アームの構成を示す斜視図である。
【図6】本発明の第3実施例にもとづく、図5の構成を有するカバースリッピング装置の略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の更なる特徴および利点は、添付の図面と組合せた実施例にもとづき本発明を詳細に記述する下記の説明から明らかであろう。
【0026】
図1に、少なくとも1つの標本スライド12およびスタック14に配列したカバースリップを処理する装置10を模式的に示した。スタック14の上部カバースリップには、参照記号16が付してある。スタック14は、マガジン18内に設置されている。マガジン18は、調節ネジ20〜24を介して装置10の基礎フレーム26に接続されている。基礎フレーム26に関するマガジン18およびスタック14の位置は、調節ネジ20〜24を介して変更できる。
【0027】
基礎フレーム26は、少なくとも1つの標本スライド12を受容する受容範囲28を有する。標本スライド12は、好ましくは、他の装置(図示してない)によって、標本スライドマガジンから自動的に取出し、以降の処理のため基礎フレーム26の受容範囲28に設置する。装置10は、更に、ピックアップユニット30を含み、図示の実施例の場合、このピックアップユニットは、2つのピックアップ要素32,34を含む。ピックアップ要素32,34は、それぞれ、ピックアップユニット30に関して要素縦軸の方向へ移動させることができ、ピックアップ要素32,34は、要素縦軸が平行に延びず、好ましくは、ピックアップ要素32,34の間で鋭角をなすよう、配置される。
【0028】
ピックアップ要素32,34は、ピックアップユニット30の中心軸36に関して鏡像対称に配置されている。ピックアップ要素32,34は、それぞれ、スタック14へ向く要素端面に、少なくとも1つの吸引要素38,40を含み、上記吸引要素は、スタック14の上部カバースリップ16と接触して、この場合に吸引要素38,40に加えられる負圧にもとづく吸引によって、それ自体、確保される。少なくとも1つの吸引要素38,40が、吸引によってカバースリップ16上に確保された後、吸引要素38,40を含むピックアップ要素32,34は、印加された負圧によって、その各縦軸に沿って更に移動され、かくして、吸引要素38,40は、ピックアップユニット30内に引込み、即ち、図1において上昇され、かくして、吸引要素は、ピックアップユニット30の湾曲端面42からもはや突出することはないか、有意に突出することはない。スタック14から取出されたカバースリップ16は、ピックアップユニット30のピックアップ要素32,34および湾曲端面42の配列の結果として湾曲される。ピックアップユニット30のピックアップ要素32,34と基礎フレームとの間には、ベローが設置されており、各吸引要素38,40が吸引によって上部カバースリップ16上に吸引されると、このベローは、ベローに加えられる負圧によって圧縮される。ベローの圧縮の結果として、各ピックアップ要素32,34は、その縦軸の方向へ変位される。ピックアップユニット30は、線形ストローク要素44を介して、移送アーム46に可動に設置されたアングル要素48に接続されている。図1に、ピックアップユニット30の初期位置を示した。
【0029】
図示の実施例の場合、基礎フレーム26は、センサユニット50を有し、マガジン18は、センサユニット52を有し、ピックアップユニット30は、センサユニット54を有し、線形ストローク要素44は、センサユニット56を有し、アングル要素48は、センサユニット58を有し、移送アーム46は、センサユニット60を有する。接続された各コンポーネントの回転を検知するミクロエレクトロメカニカル系をそれぞれ構成するセンサユニット50〜60は、それぞれ、コンポーネントの位置と無関係の三次元座標系の2つの軸のまわりに、好ましくは、1つの水平面内にある三次元座標系の軸のまわりに可動である。かくして、それぞれセンサ50〜60に接続された2つのサブアセンブリの間の角度偏差を確認できる。確認されたこの角度オフセットが、目標オフセットからシフトした場合、このシフトに関する情報項目を、適切なディスプレイユニットを介して出力できる。別の方式としてまたは付加して、各サブアセンブリの位置決めのための駆動ユニットの制御に際して考慮できる補正値を計算できる。上記補正値は、特に、駆動ユニットによる位置決めのための目標位置を定めるため、オフセット値として使用できる。
【0030】
センサユニット50,52によって確認されたマガジン18と基礎フレーム26との間の角度偏差の関数として、位置修正のために、即ち、配列(整列)のために位置調節ネジ20〜24を使用でき、即ち、上記調節ネジ20〜24によって基礎フレーム26に対するマガジン18の相対位置を変更することができる。
【0031】
マガジン18は、水平面に関して傾斜状態に設置されており、かくして、マガジン18の側壁18aは、スタック14のための側部ストッパを形成し、ピックアップユニット30によってスタックから上方へ取出した際の上部カバースリップ16の位置は、所望の所定位置を取る。
【0032】
図2に、図1の装置10の操作位置を示した。構造同一または機能同一の要素は、同一の参照記号を有する。線形ストローク要素44は、駆動ユニット(図示してない)によってアングル要素48に沿って距離Aだけ下方へ移動されており、かくして、ピックアップ要素32,34の吸引要素38,40は、上部カバースリップ16に接触し、上部カバースリップ16は、ピックアップ要素32,34に印加された負圧の結果として、吸引要素38,40に吸着される。要素縦軸に沿うピックアップ要素32,34の変位の結果として、ピックアップされたカバースリップ16は、ピックアップユニット30の端面42に載り、かくして、カバースリップ16は、ピックアップ要素32,34の配列状態および端面42の形状の双方にもとづき湾曲される。
【0033】
図3に、図1および2の装置10の第2操作位置を示した。この場合、線形ストローク要素48は、図2に示した第1作業位置と比較して、図1に示した位置へもどされている。アングル要素48は、移送アーム46に沿って距離Dだけ移動されており、かくして、カバースリップ16を含むピックアップユニット30は、標本スライド12上に配置されている。カバースリップ16が、標本スライド12上の正しい位置に置かれると、線形ストローク要素44は、距離Bだけ下方へ移動され、かくして、カバースリップ16と標本スライド12の被覆される表面との間の最初の接触が、カバースリップ16の側端17に近い範囲において行われる。塗布ユニット(図示してない)によって、カバースリッピング剤、例えば、透明な接着剤が、標本スライド12の基礎フレーム26とは反対の側に接触された試料(図示してない)に既に塗布されており、この場合、上記接着剤は、標本スライド12上のカバースリップ16の確実な保持に役立ち、標本スライド12上にある試料を囲む。線形ストローク要素44を更に下降すると、ピックアップユニット30の端面42が、カバースリップ16とともに、標本スライド12の表面に転動接触され、かくして、ピックアップユニット30は、図3の直線距離Bから図4の直線距離Cまでの線形ストローク要素44の移動に従って回転軸64のまわりに回転する。適切なストッパによって、ピックアップユニット30が図1〜3に示した旋回位置から更に線形ストローク要素44から離れるのを阻止することができる。距離Bから距離Cまでの線形ストローク要素44の移動に関連して、ピックアップ要素34に印加された負圧が(大気圧に)平衡化されるか、正圧が加えられると、カバースリップ16は、吸引要素40から離れ、カバースリップは、標本スライド12上の一端側に残留して止まる。
【0034】
図5に、本発明の第2実施例に係る、標本スライドを処理する装置70のコンポーネント72,74を示した。装置70のコンポーネント74は、カセットの受容範囲に挿入された多数の標本スライドを有するカセットのため基礎フレーム74に接続されたカセット受容ユニット76を有する基礎フレームであり、この場合、スライドは、以降の処理のため装置70によってカセットから個々に取出される。コンポーネント72は、二重矢印P1〜P3の方向へ可動の要素を有する作動要素である。作動装置72の把持要素78は、カセット受容ユニット76に設置された標本スライドの取出のために位置決めできる。
【0035】
標本スライドは、カセットの側縁に垂直に配置されており、標本スライドの取出のため、把持要素78が設置されており、即ち、上記把持要素は、標本スライドが乗る側に隣接する側において、押圧要素80,82によってカセットを把持し、各標本スライドをカセットから上方へ引出す。作動ユニット72の更なる移動および回転軸84のまわりの把持要素の90°の回転によって、標本スライドは、垂直位置から水平位置へ置かれ、次いで、この水平位置において、標本スライドの上側に設置された試料にカバースリッピング剤およびカバースリップが接触される。
【0036】
このために、把持要素78によって水平に設置された標本スライドに下面から接触し且つ以降の処理中に標本スライドを下方から支持する他の作動アーム(図示してない)が設けてあり、かくして、カバースリップを標本スライドに押圧した場合は特に、標本スライドは、一定位置を取る。作動アームの正しい位置決めにもとづき、標本スライドもカバースリップも損傷または破損されることはない。他の作動アームを介して使用できる接触圧支持部材は、把持要素78および把持要素に固定された標本スライドに関して正確に位置決めしなければならない。このために、本発明にもとづき、個々のコンポーネント(ないしアセンブリ)72,74の回転およびコンポーネント72,74の他の構成要素または部分の回転を確認する少なくとも2つのセンサ要素が設けてある。これは、特に、座標系の軸のまわりの回転を確認することによって、達成される。図示の実施例の場合、センサユニット86は、装置70の基礎フレーム74に設置されており、センサユニット88は、矢印P1の方向へ可動な支持要素94に設置されており、センサユニット90は、矢印P2の方向へ可動な位置決めユニット96に設置されており、センサユニット92は、旋回自在な把持要素78に設置されている。結果として、作動ユニット(コンポーネント)72の要素の相互位置および基礎フレーム(コンポーネント)74に対する位置または基礎フレーム74のカセット受容ユニット76に設置された標本スライド保持カセットに対する位置を決定でき、要素74,94,96,98を目標位置に正確に三次元状態に設置するため且つまた他の要素を相互に対して目標位置に設置するため、上記要素74,94,96,98の移動を考慮できる。かくして、各コンポーネントを相互に正確に配列(整)するための配列作業実験は、もはや不要であるか、センサユニット86〜92から出力されたセンサ信号によって配列作業を支援できる。図示の実施例の場合、基礎フレーム74のセンサユニット86は、座標系のX軸のまわりの回転およびY軸のまわりの回転を確認し、回転は、矢印P4およびP5によって示してある。更に、他のセンサユニット88〜92は、X軸およびY軸のまわりの各コンポーネントの回転を検知し、かくして、X軸およびY軸のまわりの個々のサブアセンブリの回転に関して個々のサブアセンブリの位置および配位を簡単に確認でき、相互に比較できる。他のコンポーネントまたは座標系に関して目標位置に対して変位が確認された場合は、補正値を確認でき、次いで、駆動ユニットによる位置決めに関連して上記補正値を考慮できるか、別の方式として、適切な配列手段によるサブアセンブリ相互の正しい配列のため上記補正値を使用できる。
【0037】
図6は、図5に係る構成70を有するカバースリッピング装置100の斜視図である。
カバースリッピング装置は、カバースリッピング剤を供給容器104から標本スライド(図示してない)に塗布する中空針102を有する。中空針102は、ガイド106に設置され、上記ガイド106に沿って二重矢印の方向へ可動である。カバースリッピング装置100は、更に、洗浄液を含む容器110を有する洗浄装置108を含む。カバースリッピング装置100は、図5に示した装置70のコンポーネントを含み、個々の要素は、カバースリッピング装置100のハウジングによって囲まれている。押圧要素80,82と把持要素78に接続されたセンサユニット92とを有する把持要素78は、作業位置に示してある。カバースリッピング装置100は、更に、カバースリップを処理するサブアセンブリ112と、カバースリップの被覆時に標本スライドを支持するサブアセンブリ114とを含む。これら2つのサブアセンブリは、関連の構成部材に設置されたセンサユニットを含み、上記センサユニットの各々によって、正しい相互配位を必要とする、カバースリッピング装置100の他の構成部材に関する構成部材の位置を確認できる。
【0038】
本発明にもとづき、受動配位補助機構(例えば、アルコール水準器、自動水平化装置、特に、ハウジングの基板の電動支持脚、個々のコンポーネントを三次元に配位するための類似の配位手段)を使用する必要はない。本発明にもとづき、誤配位を回避するため、垂線とは無関係に、可動のアセンブリを相互に自動的に配位できる。かくして、標本スライドを処理するための装置の初期指令に関する計画作業を可成り節減できる。装置にもとづき、装置の基板または基礎モジュールを、もはや、水平面内に正確に配位させる必要はない。なぜならば、可動のアセンブリは、少なくとも作業位置において、必ず、基礎モジュールに関して所定の角度を取り、この場合、この所定角度は、座標系の少なくとも1つの軸まわりの基礎フレーム74の回転の情報にもとづく基礎フレーム74の位置偏差の情報として確認され、基礎フレーム74に関する可動のアセンブリの位置決めに考慮されるからである。従って、個々のコンポーネントおよびアセンブリの手操作配列実験は、不要である。更に、かくして、製造公差も補償できる。個々のコンポーネントの位置は、センサユニットによって求め、幾何学的法則にもとづき、コンポーネントの三次元配位のためまたはコンポーネント相互の正しい位置決めのため補正値を計算する。基礎フレーム74のセンサユニット86によって、基礎フレーム74に関する可動アセンブリの所望の目標位置にもとづき、正しい位置にある可動アセンブリ78のセンサユニット92によって出力された数値を目標値として特定でき、サブアセンブリ78のセンサ92がこの数値を出力するまで、駆動ユニットによってサブアセンブリ78を移動できる。
【0039】
図示の実施例のすべてのセンサユニットが、それぞれ、少なくとも1つのミクロエレクトロメカニカル系(MEMS)を含んでいれば好ましい。この種のミクロエレクトロメカニカル系が、ジャイロスコープおよび/または加速度センサを含んでいれば好ましい。特に、傾斜計を使用する。
【0040】
本発明の全記載事項の範囲内において、本発明の請求項及び実施形態ないし実施例の記載に基づき、開示した構成要素と操作の適宜の修正は、必要に応じ可能である。また、開示した各構成要素の置換、代替ないし組合せの変更も開示事項として含まれるものとする。
【符号の説明】
【0041】
10,70 装置
12 標本スライド
14 スタック
16 カバースリップ
17 カバースリップの側部
18 マガジン
18a マガジンの側壁
20〜24 調節ネジ
26 基礎フレーム
28 標本スライド受容範囲
30 ピックアップユニット
32,34 ピックアップ要素
36 中心軸
38,40 吸引要素
42 端面
44 線形ストローク要素
46 移送アーム
48 アングル要素
50〜60 センサ要素
64 回転軸
72,74 コンポーネント
76 カセット受容ユニット
78 把持要素
80,82 押圧要素
84 回転軸
86〜92 センサユニット
94 変位可能な支持要素
96 変位可能な
100 カバースリッピング装置
102 中空針
104 供給容器
106 ガイド
108 洗浄ユニット
110 容器
P1〜P5 移動方向矢印
A〜D 位置決め距離

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの標本スライドを処理する装置において、
三次元座標系の少なくとも1つの第1軸(X,Y)のまわりの装置の第1コンポーネント(26)の第1回転を検知する第1センサユニット(50)と;
該座標系の少なくとも1つの第1軸(X)のまわりの装置の第2コンポーネント(30)の第2回転を検知する第2センサユニット(54)とを有し、かつ該座標系は、第1コンポーネントの位置および第2コンポーネントの位置とは独立であり;
第1コンポーネントに対して第2コンポーネントを位置決めする位置決めユニット(44,48);
を有することを特徴とする装置。
【請求項2】
位置決めユニットが、少なくとも1つの駆動ユニットと、少なくとも1つの制御ユニットとを含み、制御ユニットは、駆動ユニットを制御し、
かくして、駆動ユニットは、第1センサユニット(50)によって検知された第1コンポーネント(26)の第1軸(X)のまわりの回転の関数として、且つ第2センサユニット(54)によって検知された第2コンポーネント(30)の第1軸(X,Y)のまわりの第2回転の関数として第2コンポーネント(30)の位置決めを行い、
かくして、装置の操作中、第1コンポーネントが、少なくとも第1軸(X)のまわりのその回転に関連して、選択的に、第2コンポーネント(30)に関する第1目標位置または第2目標位置を取ることを特徴とする請求項1の装置。
【請求項3】
駆動ユニットが、少なくとも1つのステップモータまたは少なくとも1つのリニアモータを含むことを特徴とする請請求項2の装置。
【請求項4】
第1コンポーネント(26)が、装置の基礎モジュールを含み、上記基礎モジュールは、少なくとも、標本スライド(16)および/または多数の標本スライドを有するカセットをピックアップするのに役立ち、カセットの1つおよび/または複数の標本スライド(16)が、ピックアップの結果として、基礎モジュール(26)に関連し且つ基礎モジュール(26)によって定義される位置を有し;
第2コンポーネント(30)が、基礎モジュール(26)に対して可動な装置作動要素を含み、上記要素が、駆動ユニットによって基礎モジュール(26)に対して移動されることを特徴とする先行請求項の1つに記載の装置。
【請求項5】
装置が、装置の基礎モジュール(26)に対して可動な第2作動要素(44,46,48)の回転、即ち、座標系の少なくとも1つの第1(X)軸のまわりの要素の回転を検知する第3センサユニット(56,58,60)を有することを特徴とする請求項4の装置。
【請求項6】
装置の第1コンポーネントが、装置の基礎モジュールに対して可動である、即ち、駆動ユニットによって基礎モジュール(26)に対して移動させ得る第1作動要素(44,46,48)であり;
第2コンポーネントが、装置の基礎モジュールに対して可動である、即ち、他の駆動ユニットによって基礎モジュール(26)に対しておよび/または装置の第1コンポーネントに対して移動させ得る第2作動要素(30)であることを特徴とする請求項1〜3の1つに記載の装置。
【請求項7】
位置決めユニットが、少なくとも第1コンポーネント(26)の休止三次元位置を変更するためおよび/または第2コンポーネント(30)の休止三次元位置を変更するためおよび/または第2コンポーネント(30)に対する第1コンポーネント(26)の休止位置を変更するため、少なくとも1つの整列手段を有することを特徴とする請求項1〜6の1つに記載の装置。
【請求項8】
第1コンポーネント(26)の基準軸と座標系の第2軸(Y)との間の角度が、第1回転の指示として確認され、第2コンポーネント(30)の基準軸と座標系の第2軸(Y)との間の角度が、第2回転の指示として確認されることを特徴とする先行請求項の1つに記載の装置。
【請求項9】
座標系の第2軸(Y)と1つの平面に投影された各コンポーネント(26,30)の基準軸との間の角度が、確認され、座標系の第2軸(X)および第3軸(Z)が、上記平面内に延在し、座標系の第1軸(X)が、上記平面を介して直角に延在することを特徴とする請求項8の装置。
【請求項10】
センサユニット(50〜60)が、それぞれ、少なくとも1つのミクロエレクトロメカニカル系を含むことを特徴とする請求項1〜9の1つに記載の装置。
【請求項11】
ミクロエレクトロメカニカル系が、ジャイロスコープおよび/または加速度計を含むことを特徴とする請求項10の装置。
【請求項12】
第1センサユニット(50)が、座標系の第1軸(X)のまわりの第1コンポーネント(76)の第1回転および座標系の第2軸(Y)のまわりの第1コンポーネント(26)の第3回転を検知し;
第2センサユニット(52)が、座標系の第1軸(X)のまわりの第2コンポーネント(30)の第2回転および座標系の第2軸(Y)のまわりの第2コンポーネント(30)の第4回転を検知することを特徴とする請求項1〜11の1つに記載の装置。
【請求項13】
第1センサユニット(50)が、更に、座標系の第3軸(Z)のまわりの第1コンポーネント(26)の第5回転を検知し;第2センサユニット(52)が、更に、座標系の第3軸(Z)のまわりの第2コンポーネント(30)の第6回転を検知することを特徴とする請求項12の装置。
【請求項14】
第1センサユニット(50)が、第1センサモジュールと、少なくとも1つの第2センサモジュールとを含み、第1センサモジュールが、第1軸(X)のまわりの第1コンポーネント(26)の回転および第2軸(Y)のまわりの第1コンポーネント(26)の回転を確認し、第2センサモジュールが、第1軸(X)のまわりの第1コンポーネント(26)の回転および第3軸(Z)のまわりの第1コンポーネント(26)の回転を確認し;
第2センサユニット(52)が、第3センサモジュールと、少なくとも1つの第4センサモジュールとを含み、第3センサモジュールが、第1軸(X)のまわりの第2コンポーネント(30)の回転および第2軸(Y)のまわりの第2コンポーネント(30)の回転を確認し、第4センサモジュールが、第1軸(X)のまわりの第2コンポーネント(30)の回転および第3軸(Z)のまわりの第2コンポーネント(30)の回転を確認することを特徴とする請求項13の装置。
【請求項15】
装置が、生物学的試料を標本スライド(16)に付着させる自動付着ユニット、生物学的試料を囲む物質を除去する自動洗浄するユニット、標本スライド(16)上に設置された生物学的試料を染色する自動染色装置、および/または、標本スライド(16)上に設置された生物学的標本にカバースリッピング剤および/またはカバースリップを被覆する自動カバースリッピングユニットを含むことを特徴とする請求項1〜14の1つに記載の装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2010−72646(P2010−72646A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−215208(P2009−215208)
【出願日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【出願人】(500113648)ライカ ビオズュステムス ヌスロッホ ゲーエムベーハー (45)
【Fターム(参考)】