説明

少量の着色粒子を有するメチルヒドロキシアルキルセルロースの製造方法

【課題】本発明は、温水に不溶性のメチルヒドロキシアルキルセルロースと温水中の上述の副生成物の懸濁液を分離し洗浄するために高い有用性と高い処理量を有する効果的で経済的な連続方法を提供する。
【解決手段】少なくとも一つの乾燥ゾーンを含む、分離プレートによって互いに隔てられた複数のゾーンを含んで成る回転加圧濾過器であって、乾燥ゾーンを密封する分離プレートは、耐熱性、耐摩耗性プラスチックから形成され、他のゾーンを密封する分離プレートは、良好な滑性及び摩耗性を有するプラスチックから形成される濾過器である。その濾過器を用いて、水性懸濁液からメチルヒドロキシアルキルセルロースを分離することを含む、メチルヒドロキシアルキルセルロースの製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特別装備の回転加圧濾過器を用いて、水性懸濁液からメチルヒドロキシアルキルセルロースを分離し、次にメチルヒドロキシアルキルセルロースを洗浄することによる、少量の着色粒子を有するメチルヒドロキシアルキルセルロースの製造方法を開示する。
【背景技術】
【0002】
メチルヒドロキシアルキルセルロースは、一般に、パルプのアルカリ化後、適する溶媒又は懸濁媒体の存在下、塩化メチル、エチレンオキサイド又はプロピレンオキサイド等のエーテル化剤を用いる反応によって製造される(参照、Ullmanns Enzyklopaedie der technischen Chemie、4th Edition、Volume 9、page 205、 又は Houben-Weyl、Methoden der organischen Chemie、4th Edition、Volume E 20、part 3、page 2047)。メチルヒドロキシアルキルセルロースの製造で得られる粗メチルヒドロキシアルキルセルロースは、塩化ナトリウム、メタノール、グリコール等の好ましくない副生成物を含む。置換度(又は置換の程度)に応じて、製造されるメチルヒドロキシアルキルセルロースは、水性媒体に、種々の温度依存性溶解挙動(又は溶出挙動)を示す。本明細書に記載するメチルヒドロキシアルキルセルロースは、一般に温水(湯又は熱水)に不溶であり凝集し、その結果、先行技術に基づくと、好ましくない副生成物は、温水中の粗メチルヒドロキシアルキルセルロースの懸濁液に溶け、次の分離及び洗浄工程で粗メチルヒドロキシアルキルセルロースから洗い流される。以下で、用語「メチルヒドロキシアルキルセルロースの懸濁液」を用いる場合、他に特に記載がない場合、常に、粗メチルヒドロキシアルキルセルロースと、温水中の粗メチルヒドロキシアルキルセルロースの製造で得られる副生成物の懸濁液(又はサスペンジョン)を意味する。先行技術に基づいて用いられる分離方法、精製方法及び洗浄方法は、EP 03 05 898 A2、EP 03 05 899 A2、及び EP 0 632 056 B1に記載されている。メチルヒドロキシアルキルセルロースの応用分野に応じて、程度の差はあるが、厳密な純度の要求を満たさなければならず、その結果、適切な洗浄工程が、製造方法の必須の一部分でなければならない。
【0003】
種々の用途のための生成物を製造することができるように、種々の置換度を有するメチルヒドロキシアルキルセルロースを製造することが可能でなければならない。アルキル置換は、セルロースエーテル化学で、DSによって表される。DSは、アンヒドログルコース(anhydroglucose)単位当たりの平均置換OH基数(mean number of substituted OH groups)である。メチル置換は、例えば、DS(メチル)又はDS(M)として報告される。ヒドロキシアルキル置換は、MSによって通常記載される。MSは、アンヒドログルコース単位当たりエーテル結合を介して結合した平均エーテル化剤モル数である。エーテル化剤としてエチレンオキサイドを用いるエーテル化は、例えば、MS(ヒドロキシエチル)又はMS(HE)として報告される。エーテル化剤としてプロピレンオキサイドを用いるエーテル化は、同様に、MS(ヒドロキシプロピル)又はMS(HP)として報告される。側基の測定は、Zeisel 法によって行われる(参照:G. Bartelmus 及び R. Ketterer、Z. Anal. Chem. 286(1997) 161-190)。
【0004】
メチルヒドロキシアルキルセルロースの置換度は、洗浄工程で使用される洗浄液と温水懸濁液の所要の(又は要求)温度に影響する。洗浄液と温水懸濁液の温度は、通常、80〜100℃、好ましくは85〜98℃の範囲である。
【0005】
メチルヒドロキシアルキルセルロースの種々の性質、例えば、熱凝集点、水又は有機溶媒中の溶解性、製造される溶液の粘度、膜形成能、保水力又は接着強度は、エーテル化度と置換基のタイプを介して設定される。
【0006】
これらの多くの優れた性質のために、メチルヒドロキシアルキルセルロースは、広範な用途に使用される。
【0007】
第一に、例えば、増粘剤、接着剤、バインダー、分散剤、保水剤、保護コロイド、安定剤、懸濁媒体、乳化剤、膜形成剤として、及び堅さ(稠度又は濃度)調整剤及び無機物中の加工助剤及び分散系建築資材システムとして使用される。
【0008】
第二に、例えば、化粧品及び医薬品の製造、錠剤のコーティング、目薬の懸濁液、コンタクトレンズクリーナー等又は特に高い純度を有するセルロースエーテルが必要とされる食料品の製造等の敏感な用途に使用される(参照:WO 00/32637)。高純度とは、例えば、置換度、重金属含有量、溶液の粘度、有機不純物等に関して、適切な医薬標準(例えば、医薬モノグラフ)を厳守することを意味する。更に、法的規制と追加の広範囲の顧客の要求を満たさなければならない。
【0009】
第三に、メチルヒドロキシアルキルセルロースは、例えば、ファイン・セラミックスの製造及び懸濁重合等の特に高純度を同様に必要とする、高価値の商業上の用途に使用される。これらの用途では、高純度とは、物理的タイプの特に低汚染物を意味する。
【0010】
敏感な用途及び高価値の商業上用途の顧客の重要な品質基準は、着色粒子として既知の物理的汚染に関するメチルヒドロキシアルキルセルロースの目視評価である。
【0011】
敏感な用途及び高価値の商業上用途に対するメチルヒドロキシアルキルセルロースの着色粒子に関して、医薬も他の調整剤も、仕様(又は規格)を与えない。この品質の基準の評価は、顧客によって行われなければならず、一般に主観的な目視評価を用いて行われる。従って、着色粒子に関するメチルヒドロキシアルキルセルロースの評価は、顧客による試料の供給後、評価される試料との比較により行われる。
【0012】
以下の四つの分類が得られる:
(1)極めて良好、即ち、顧客により提供される比較試料より良好
(2)良好、顧客により提供される比較試料と同程度
(3)許容できる、顧客により提供される比較試料よりわずかに悪化、及び
(4)許容できない、即ち、顧客により提供される比較試料より悪い。
【0013】
EP 1 375 523 A1 は、第一に、メチルヒドロキシアルキルセルロースの水性液の濾過で向上した性質を得るために、第二に、メチルヒドロキシアルキルセルロースの水性液から欠陥のない膜を得るために、メチルヒドロキシアルキルセルロースを選択する方法を開示する。ここで開示される方法は、原則として、低含有量の着色粒子を有するメチルヒドロキシアルキルセルロースを製造するためにも適する。しかし、EP 1 375 523 A1 に記載の方法の短所は、商業的製造方法での選択は、選択基準を満たさない、従って、処分すべき、再処理工程にかけるべき、又は更に他の方法で処理すべき、避けられない量の生成物の形成を常にもたらし、これは費用がかかることが明白であるということである。
【0014】
粗メチルヒドロキシアルキルセルロースを、温水に懸濁させた後、先行技術の方法、一般に、加圧、遠心分離又は濾過により、不連続的に及び連続的に動作(又は運転)する分離技術を区別して用いて、懸濁媒体からメチルヒドロキシアルキルセルロースを分離する(Grundoperationen chemischer Verfahrenstechnik、11th Edition、page 164)。
【0015】
原則として、連続的に及び不連続的に動作する加圧装置、例えば、多段プレス(multiplate press)、ストレーナ・プレス(strainer press)、プレート・フィルター・プレス(plate filter press)、トラベリング・スクリーン・プレス(travelling screen press)及びスクリュープレス(screw press)は、懸濁媒体からメチルヒドロキシアルキルセルロースを分離するために適する。同様に、遠心機は、懸濁媒体からメチルヒドロキシアルキルセルロースを分離するために適する。既知のタイプの遠心機は、例えば、ターンアウト(turnout)遠心機、ピーラー(peeler)遠心機、プッシャー(pusher)遠心機、メッシュ・スクリュー(mesh screw)遠心機、バイブレイティング(vibrating)遠心機及びスライディング(sliding)遠心機及びデカンター(decanter)が含まれる。
【0016】
メチルヒドロキシアルキルセルロースを分離する重要性を達成する更なる方法は、濾過である。本明細書でも、同様に、不連続的及び連続的装置を区別する。不連続動作濾過器には、例えば、固定層濾過器(fixed-bed filter)吸込濾過器(suction filter)、キャンドル濾過器(candle filter)、葉状濾過器及び平面濾過器が含まれる。不連続動作濾過器を用いる、懸濁媒体からメチルヒドロキシアルキルセルロースの分離は、一般により好ましくない。短所は、濾過器への充填と取り出しであり、相当の時間を要する。従って、不連続動作濾過器は、十分に大規模な経済的処理量には不適当である。
【0017】
ベルト濾過器(belt filter)及び回転濾過器(rotary filter)等の連続的に動作する濾過器は、分離装置として最も有用であることが見出された。WO 02/100512 A1 から既知であるような回転加圧濾過器(rotary pressure filter)は、特に適する。
【0018】
これらの回転加圧濾過器は、例えば商業上の用途に使用されるメチルヒドロキシアルキルセルロースを、商業規模で経済的に分離することを可能にする。しかし、もしメチルヒドロキシアルキルセルロースを、高純度を要求する高価値の商業上用途又は敏感な用途に使用するならば、懸濁液と接触する従ってメチルヒドロキシアルキルセルロースと接触する対応する材料と商業上用途に最適化された常套の回転加圧濾過器は適切でない。
【0019】
高価値の商業上用途及び敏感な用途のためにメチルヒドロキシアルキルセルロースの製造の際の常套の回転加圧濾過器の使用は、メチルヒドロキシアルキルセルロースに許容できない数の着色粒子をもたらす。粒子の色は、使用する回転加圧濾過器に応じて、灰色がかった色から茶色がかった色を通り黒色まで、様々である。
【0020】
これらの着色粒子が生成し得る一つの考慮すべき経路は、使用されるプラスチックの避けることができない摩耗(又は摩擦)と関連する。このすり減った材料は、商業上用途のためにメチルヒドロキシアルキルセルロースを製造する際に生成物の損傷を全くもたらさない。
【0021】
高価値の商業上用途及び敏感な用途のためのメチルヒドロキシアルキルセルロースの製造方法において、粗メチルヒドロキシアルキルセルロースと関連する副生成物の懸濁液は、メチルヒドロキシアルキルセルロースの製造の際に、回転加圧濾過器技術に通常用いられるプラスチックに対して増加した摩耗度を示す。
【0022】
高価値の商業上用途及び敏感な用途のためのメチルヒドロキシアルキルセルロースの製造の際に得られる懸濁液のこの増加した摩耗作用は、最終生成物に増加した許容できない数の着色粒子をもたらし得る。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0023】
発明の要約
本発明は、少なくとも一つの乾燥ゾーン(区画又は区分)を含む、分離プレート(又は板)によって互いに隔てられた複数のゾーンを含んで成る回転加圧濾過器(又は回転型圧力濾過器:rotary pressure filter)であって、乾燥ゾーンを密封する(封ずる又は閉じる)分離プレートは、耐熱性、耐摩耗性プラスチックから形成され、他のゾーンを密封する分離プレートは、良好な滑性及び摩耗性(耐摩耗性又は耐摩擦性)を有するプラスチックから形成されることを特徴とする回転加圧濾過器に関する。
【0024】
従って、本発明の目的は、温水(又は熱水)に不溶性のメチルヒドロキシアルキルセルロースと温水中の上述の副生成物の懸濁液(又はサスペンジョン)を分離し洗浄するために高い有用性と高い処理量を有する効果的で経済的な連続方法であって、その結果、最終生成物は、第一に、目的とする仕方で製造することができ、大量の生成物から選択されるべきではなく、第二に、敏感な用途及び高価値の商業上用途のために許容できる少量のみの着色粒子を含む方法を提供することである。
【0025】
本発明に基づいて、この目的は、懸濁液を分離し、メチルヒドロキシアルキルセルロースを洗浄する手段として使用される分離プレートを特定の方法で備えた連続的に動作する回転加圧濾過器によって上述のタイプの方法で達成される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
発明の詳細な説明
回転加圧濾過器は、商業上既知である。回転加圧濾過器は、圧密(プレッシャータイト:pressure-tight)設計を有する連続的に動作する濾過器である。それは、連続的に調節可能な速度で回転する金属製フィルタードラム、関連するコントロールヘッド及び金属製定格圧力ハウジングから本質的になる。ドラムとハウジングとの間の環状空間は、スタッフィング・ボックス(stuffing box)又は他の封止系を用いて、側方で封じられる。ドラム上に空気圧で押し付けられるゾーンセパレーターを用いて、ハウジングは半径方向に圧密チャンバーに分割される。ドラムの表面は、出口チューブを介してコントロールヘッドと接続される個々のフィルターセルを含んで成る。詳細な説明は、WO 02/100512 A1 に見ることができる。濾過すべき懸濁液は、一定の導入圧の下、回転加圧濾過器の分離ゾーン中に継続的に供給され、回転ドラムのフィルターセル(filter cell)にたまるフィルターケーク(filtercake)をもたらし、その後、後処理、例えば、洗浄及び/又はスチーム処理のために次のチャンバー内に運ばれる。フィルターケークは、濾過器の加圧されていないゾーンで、自動的に動作する調整可能な機械的スクレーパーを用いて及び/又は典型的には加圧空気、窒素又はスチームの標的反転パルスを用いて、取り除かれる。ゾーンセパレーターの正確な記載は、例えば、WO 02/100512 A1 に見ることができる。
【0027】
回転加圧濾過器を用いてメチルヒドロキシアルキルセルロース懸濁液を分離し洗浄する場合、先行技術に基づいてフィルターケークをスチームで処理する。特に、フィルターケークをスチームで処理して、加圧されていない排出ゾーンの前で、乾燥ゾーンとして既知の別の分離ゾーンで残留水分を調節する。先に述べた方法では、0.1棒ゲージ(bar gauge)〜6.0棒ゲージ、好ましくは0.5棒ゲージ〜4.5棒ゲージ及び特に好ましくは0.8棒ゲージ〜3.0棒ゲージの圧力を有する飽和スチームを用いることが通常である。物理の法則に基づいて、上述の圧力は、下記飽和スチーム温度と明らかに関連する:102.3℃(0.1棒ゲージ)、111.4℃(0.5棒ゲージ)、116.9℃(0.8棒ゲージ)、143.6℃(3.0棒ゲージ)、155.5℃(4.5棒ゲージ)、165.0℃(6.0棒ゲージ)(参照:例えば、VDI−Waermeatlas)。
【0028】
更に、本発明は、ゾーンセパレーター、即ちシーリング層、以下本明細書では分離プレートともいう、の個々の部分に関し、それは、適切に適するプラスチックで形成されなければならない。この分離プレートは、特定の要求を満たさなければならない。なぜならば、第一に、それは、回転加圧濾過器のハウジングにしっかりと固定され、金属ドラムに押しつけられ、その結果、ドラムの回転運動の間、ドラムの表面の個々のチャンバーを形成するリブに対して摩擦し、そして第二に、濾過し洗浄すべきメチルヒドロキシアルキルセルロース懸濁液と直接接触するようになり、従ってフィルターケークとも接触するようになるからである。
【0029】
回転加圧濾過器の分離プレートは、適当であれば、例えば40%の、例えばガラス繊維、雲母(又はマイカ)、カーボン及び/又はグラファイト、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)及びポリエーテルエーテルケトン(PEEK)を添加した、例えばポリエチレン(PE)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のプラスチックで典型的には作られるが、これらに制限されるものではない。先行技術に基づいて、各用途に適するプラスチックを選択し、回転加圧濾過器の全ての分離プレートは、それらから作られる。しかし、敏感な用途及び高価値の商業上用途のためのメチルヒドロキシアルキルセルロースの製造の一部分として関連する副生成物と、粗メチルヒドロキシアルキルセルロースとの温水懸濁液の分離と洗浄に使用すべき回転加圧濾過器の分離要素のために適するプラスチックを選択するための助力として、これらのプラスチックの一般的に既知の機械的及び熱的性質は、限られた範囲でのみ用いることができる。なぜならば、メチルヒドロキシアルキルセルロースから分離すべき濾液は、種々の副生成物、例えば、高濃度のNaClを含み、75℃より高い、好ましくは85℃より高い、特に好ましくは92℃より高い温度を有するからである。両方のファクターは、回転加圧濾過器の金属ドラム上の分離要素として摩擦用途のプラスチックの性質に相当影響する。従って、対応する系「プラスチック、スチール、メチルヒドロキシアルキルセルロース懸濁液(存在する副生成物を含む)」は、特に耐性、耐熱性、摩耗性、耐摩耗性、摩擦性等の性能を評価する際、常に考慮に入れなければならない。敏感な用途と高価値の商業上用途のためのメチルヒドロキシアルキルセルロース懸濁液の分離及び洗浄のための上述の方法では、分離プレートのために一般的に使用される全てのプラスチックは、上述の方法の条件下での耐性、経済的使用について、又は耐摩耗性について、従って最終生成物の多量の着色粒子について、相当の不都合を有する。
【0030】
そのような分離プレートを製造するための典型的で通例の材料は、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、典型的には10%〜40%のガラス繊維、マイカ、カーボン及び/又はグラファイトを加えたポリテトラフルオロエチレン(PTFE)及びポリエーテルエーテルケトン(PEEK)である。
【0031】
全ての分離プレートが上述の材料の一つで作られる(即ち、全ての分離プレートが同じ材料で作られる)回転加圧濾過器の常套の設計では、メチルヒドロキシアルキルセルロースの製造の際の最終生成物に見出される大量の着色物質は、敏感な用途及び高価値の商業上用途に対して許容されない。
【0032】
驚くべきことに、本発明者らは、上述のプラスチックから形成されるが、個々の分離プレートは異なるプラスチックで作られる分離プレートを回転加圧濾過器に備える場合、上述の不利益は生じないということを見出した。
【0033】
本発明に基づくこの設計において、分離プレートのプラスチックは、乾燥ゾーンを両側で密封する分離プレートについては、耐熱性、耐摩耗性プラスチック、好ましくはポリエーテルエーテルケトン(PEEK)で形成され、残りの分離プレートについては、良好な滑性及び摩耗性(耐摩耗性又は耐摩擦性)を有するプラスチック、好ましくはポリフッ化ビニリデン(PVDF)で形成されるように選択すべきである。
【0034】
本発明に基づくそのような分離プレートを備えた回転加圧濾過器を用いる場合、他のプラスチックでできている分離プレートを有する回転加圧濾過器を使用する又は他の装置を使用する際の全ての上述の不利益は、避けられる。
【0035】
従って、本発明は、第一に、乾燥ゾーンを含み、分離プレートによって相互に分離される複数のゾーンを有する回転加圧濾過器であって、乾燥ゾーンを両側で密封する分離プレートは、耐熱性(145℃より高い、好ましくは165℃より高い)、耐摩耗性(0.5〜0.31、好ましくは0.4〜0.31のスチールに対する滑り摩擦係数、乾燥)プラスチック、特に好ましくはポリエーテルエーテルケトン(PEEK)で形成され、残る分離プレートは、良好な滑性と摩耗性(0.4より小さい、好ましくは0.35より小さいスチールに対する滑り摩擦係数、乾燥)及び適する耐熱性(140℃まで)を有する一又はそれ以上のプラスチック、特に好ましくはポリフッ化ビニリデン(PVDF)で形成されることを特徴とする回転加圧濾過器を提供する。
【0036】
本発明は、更に、本発明に基づく回転加圧濾過器を用いてメチルヒドロキシアルキルセルロース懸濁液を濾過及び/又は洗浄することを含んで成るメチルヒドロキシアルキルセルロースの製造方法を提供する。
【0037】
好ましい態様において、メチルヒドロキシアルキルセルロースは、3.0〜35.0%、特に4.0〜32.0%の重量割合の(又は3.0〜35.0重量%、特に4.0〜32.0重量%の)ヒドロキシプロポキシ基を有し、15.0〜35.0%、特に16.5〜30.0%の重量割合の(又は15.0〜35.0重量%、特に16.5〜30.0重量%の)メトキシ基を有するメチルヒドロキシプロピルセルロース(MHPC)である。
【0038】
他の好ましい態様において、メチルヒドロキシアルキルセルロースは、0.10〜1.00、特に0.15〜0.80の置換度MS(HE)と、1.25〜2.20、特に1.40〜2.00の置換度DS(M)を有するメチルヒドロキシエチルセルロース(MHEC)である。
本発明を下記例により説明する。下記例は、本発明を何ら限定するものではない
【実施例】
【0039】
生成物例1
Type 2910としての ファーマ・モノグラフィー(又は医薬のモノグラフ:Pharma Monographie)に基づく ハイプロメローゼ(Hypromellose):分離し洗浄すべき粗メチルヒドロキシプロピルセルロースを、Houben-Weyl、Methoden der Organischen Chemie、Makromolekulare Stoffe、4th Edition、Volume E 20、p.2042(1987)に記載の方法により製造する。過剰量の反応物質の除去後、得られる粗メチルヒドロキシプロピルセルロースは、下記性質を有していた:
DS(M): 1.95
MS(HP): 0.31
塩化ナトリウム含有量: 20%
【0040】
生成物例2
Type 2208としての ファーマ・モノグラフィーに基づくハイプロメローゼ:分離し洗浄すべき粗メチルヒドロキシプロピルセルロースを、上述の方法で製造する。過剰量の反応物質の除去後、得られる粗メチルヒドロキシプロピルセルロースは、下記性質を有していた:
DS(M): 1.47
MS(HP): 0.21
塩化ナトリウム含有量: 16%
【0041】
生成物例3
分離し洗浄すべき粗メチルヒドロキシエチルセルロースを、上述の方法で製造する。過剰量の反応物質の除去後、得られる粗メチルヒドロキシエチルセルロースは、下記性質を有していた:
DS(M): 1.58
MS(HP): 0.29
塩化ナトリウム含有量: 18%
【0042】
比較例1
温水に懸濁した粗メチルヒドロキシプロピルセルロース(生成物例1又は生成物例2)又は粗メチルヒドロキシエチルセルロース(生成物例3)を、上述の回転加圧濾過器を用いて分離し洗浄する。この場合回転加圧濾過器は、25%のカーボン/グラファイトを加えたポリテトラフルオロエチレン(PTFE)からできている分離プレートが備えられている。次の乾燥粉砕工程後、メチルヒドロキシプロピルセルロース又はメチルヒドロキシエチルセルロースは、着色粒子の割合に関して上述のように特定される。全ての場合について、許容できない割合の直色粒子が見だされた(分類:4)。
【0043】
例2
温水に懸濁した粗メチルヒドロキシプロピルセルロース(生成物例1又は生成物例2)又は粗メチルヒドロキシエチルセルロース(生成物例3)を、上述の回転加圧濾過器を用いて分離し洗浄する。この場合回転加圧濾過器は、乾燥ゾーンを両側で密封する分離プレートはポリエーテルエーテルケトン(PEEK)から形成され、残りの分離プレートはポリフッ化ビニリデン(PVDF)から形成されるような分離プレートを備える。
【0044】
次の洗浄粉砕工程後、メチルヒドロキシプロピルセルロース又はメチルヒドロキシエチルセルロースは、着色粒子の割合に関して上述のように特定される。全ての場合について、容易に許容できる割合の直色粒子が見だされた(分類:1〜2)。
上述の全ての参考文献は、全ての有用な目的のためにそのまま参照することで組み込まれる。
【0045】
本発明を具体化する特定の構成を示し記載したが、基礎をなす本発明の概念の精神及び範囲を離れることなく、部分の種々の変更及び配列を変更してもよいということ、及び本明細書に示し記載した具体的な形態に制限されるものではないということは、当業者に明白であろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つの乾燥ゾーンを含む、分離プレートによって互いに隔てられた複数のゾーンを含んで成る回転加圧濾過器であって、乾燥ゾーンを密封する分離プレートは、耐熱性、耐摩耗性プラスチックから形成され、他のゾーンを密封する分離プレートは、良好な滑性及び摩耗性を有するプラスチックから形成されることを特徴とする回転加圧濾過器。
【請求項2】
乾燥ゾーンを密封する分離プレートのプラスチックは、145℃より高い耐熱性があり、0.5〜0.31のスチールに対する滑り摩擦係数(乾燥)を有する請求項1に記載の回転加圧濾過器。
【請求項3】
乾燥ゾーンを密封する分離プレートのプラスチックは、165℃より高い耐熱性があり、0.5〜0.31のスチールに対する滑り摩擦係数(乾燥)を有する請求項1に記載の回転加圧濾過器。
【請求項4】
他のゾーンを密封する分離プレートのプラスチックは、140℃までの耐熱性があり、0.4より小さいスチールに対する滑り摩擦係数(乾燥)を有する請求項1に記載の回転加圧濾過器。
【請求項5】
他のゾーンを密封する分離プレートのプラスチックは、140℃までの耐熱性があり、0.35より小さいスチールに対する滑り摩擦係数(乾燥)を有する請求項3に記載の回転加圧濾過器。
【請求項6】
乾燥ゾーンを密封する分離プレートは、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)から形成される請求項1に記載の回転加圧濾過器。
【請求項7】
乾燥ゾーンを密封する分離プレートは、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)から形成される請求項5に記載の回転加圧濾過器。
【請求項8】
他のゾーンを密封する分離プレートは、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)から形成される請求項1に記載の回転加圧濾過器。
【請求項9】
他のゾーンを密封する分離プレートは、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)から形成される請求項7に記載の回転加圧濾過器。
【請求項10】
請求項1に記載の回転加圧濾過器を用いて、水性懸濁液からメチルヒドロキシアルキルセルロースを分離することを含む、メチルヒドロキシアルキルセルロースの製造方法。
【請求項11】
メチルヒドロキシアルキルセルロースは、メチルヒドロキシエチルセルロース(MHEC)又はメチルヒドロキシプロピルセルロース(MHPC)である請求項10に記載の製造方法。
【請求項12】
メチルヒドロキシアルキルセルロースは、3.0〜35.0%の重量割合のヒドロキシプロポキシ基と15.0〜35.0%の重量割合のメトキシ基を有するメチルヒドロキシプロピルセルロース(MHPC)である請求項10に記載の製造方法。
【請求項13】
メチルヒドロキシアルキルセルロースは、4.0〜32.0%の重量割合のヒドロキシプロポキシ基と16.5〜30.0%の重量割合のメトキシ基を有するメチルヒドロキシプロピルセルロース(MHPC)である請求項10に記載の製造方法。
【請求項14】
メチルヒドロキシアルキルセルロースは、0.10〜1.00の置換度MS(HE)と1.25〜2.20の置換度DS(M)を有するメチルヒドロキシエチルセルロース(MHEC)である請求項10に記載の製造方法。
【請求項15】
メチルヒドロキシアルキルセルロースは、0.15〜0.80の置換度MS(HE)と1.40〜2.00の置換度DS(M)を有するメチルヒドロキシエチルセルロース(MHEC)である請求項10に記載の製造方法。

【公開番号】特開2007−83231(P2007−83231A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−251014(P2006−251014)
【出願日】平成18年9月15日(2006.9.15)
【出願人】(503166780)ヴォルフ セルロシックス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト (6)
【氏名又は名称原語表記】Wolff Cellulosics GmbH & Co. KG
【住所又は居所原語表記】29656 Walsrode, Germany
【Fターム(参考)】