説明

尿温測定装置

【課題】採尿器に尿を迅速に溜めることが可能であり、採尿器の内部の尿を排泄直後の新鮮な尿に置換することが可能な尿温測定装置を提供することを目的とする。
【解決手段】採尿口を有し、尿を採集する採尿容器と、前記採尿容器の内部に設けられ、前記採尿容器の内部に貯留された尿の温度を温度検出素子により測定する温度検出部と、を備え、前記採尿容器の底部には内部と外部とを連通するスリットが設けられ、前記温度検出部が尿に浸されるまでは、前記採尿容器の内部に貯留された尿の前記スリットからの排出を抑制して前記採尿容器の内部に尿を貯留し、前記温度検出部が尿に浸されると、前記採尿容器の内部に貯留された尿を前記スリットから排出させて前記採尿容器の内部の尿を新鮮な尿に置換させることを促進させることを特徴とする尿温測定装置が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の態様は、一般的に、尿温測定装置に関し、具体的には放尿された尿を受尿して尿温を測定することができる尿温測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
短時間で体温を精度良く測定するために、体内から排泄された尿の温度を測定する装置がある。例えば、便器の便鉢空間(ボウル内)において採尿器で尿を採集し、採尿器の内部に設けたサーミスタ等の感温素子で形成された感温部によって、その尿の温度を測定する装置がある(特許文献1)。特許文献1に記載された装置では、貫通孔が採尿器に設けられ、採集した尿の流路が採尿器に形成されたことにより、被験者の排泄する新鮮な尿が感温部の周囲に絶えず供給される。これによれば、被験者の排泄した尿が外気や受尿器に接触して放熱することによる感温部の検知温度への影響量を少なくできる。
【0003】
また、尿貯留部で採尿した尿を尿貯留部に溜めながらも、排出孔を通して古い尿を新しい尿に置換しつつ尿温を検出する装置がある(特許文献2)。特許文献2に記載された装置では、古い尿は排出され、新しい尿が供給されるため、便器や尿貯留部のカバー部によって尿が冷えることを抑制できる。
【0004】
しかしながら、特許文献1および2に記載された装置では、貫通孔や排出孔が大きく開けられているため、排泄された尿の尿流率(単位時間当たりに流れる尿の流量)が小さいときには、採尿器や尿貯留部に尿が溜まりにくい。そのため、温度検出部が尿に浸されるまでに時間がかかり、排尿中に温度検出部が尿に浸されず、尿温を正しく測定できないおそれがある。
【特許文献1】特開2008−89520号公報
【特許文献2】特開昭63−171933号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、かかる課題の認識に基づいてなされたものであり、採尿器に尿を迅速に溜めることが可能であり、採尿器の内部の尿を排泄直後の新鮮な尿に置換することが可能な尿温測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明は、採尿口を有し、尿を採集する採尿容器と、前記採尿容器の内部に設けられ、前記採尿容器の内部に貯留された尿の温度を温度検出素子により測定する温度検出部と、を備え、前記採尿容器の底部には内部と外部とを連通するスリットが設けられ、前記温度検出部が尿に浸されるまでは、前記採尿容器の内部に貯留された尿の前記スリットからの排出を抑制して前記採尿容器の内部に尿を貯留し、前記温度検出部が尿に浸されると、前記採尿容器の内部に貯留された尿を前記スリットから排出させて前記採尿容器の内部の尿を新鮮な尿に置換させることを促進させることを特徴とする尿温測定装置である。
この尿温測定装置によれば、温度検出部が尿に浸されるまではスリットからの尿の漏れを抑制できるため、温度検出部を迅速に尿で浸すことができる。また、尿温検出の応答性を向上させることができ、迅速な尿温測定が可能となる。さらに、スリットから尿の排出が開始されれば排出量が増加するため、採尿部内の尿を新鮮な尿へ置換することが促進される。
【0007】
また、第2の発明は、第1の発明において、前記スリットのうちの、前記採尿容器の内部に貯留された尿の液面よりも上の部分を通して、前記採尿容器の外部から前記採尿容器の内部に空気を導入可能としたことを特徴とする尿温測定装置である。
この尿温測定装置によれば、採尿口に設けられた網体が尿の表面張力により目詰まり状態になっても、採尿部の内部に貯留された尿の液面よりも上のスリットを通して空気が導入される。そのため、採尿部内の尿の排出が促進され、新しい尿の導入が促進されるため、尿部の内部の尿の置換をより確実に行うことができる。
【0008】
また、第3の発明は、第1または第2の発明において、前記採尿容器は、複数の部材を有し、前記複数の部材のうちのいずれかは、前記採尿口を有する上部部材であり、前記複数の部材のうちの他の部材の少なくともいずれかは、前記上部部材と分割可能とされたことを特徴とする尿温測定装置である。
この尿温測定装置によれば、採尿部の上部が開放されるため、温度検出部のクリーニングを容易に行うことができ、尿石の除去作業を行いやすい。
【0009】
また、第4の発明は、第3の発明において、前記上部部材と前記他の部材の少なくともいずれかとを当接させた際に形成される隙間を通して、前記採尿容器の外部から前記採尿容器の内部に空気を導入可能としたことを特徴とする尿温測定装置である。
この尿温測定装置によれば、採尿口に設けられた網体が尿の表面張力により目詰まり状態になっても、上部部材と他の部材との間の隙間を通して空気が導入される。そのため、採尿部内の尿の排出が促進され、新しい尿の導入が促進されるため、尿部の内部の尿の置換をより確実に行うことができる。
【0010】
また、第5の発明は、第3または第4の発明において、前記他の部材は、前記採尿容器の底部を形成する底部部材と、前記温度検出部が取り付けられた側壁部材と、を有し、前記上部部材と前記底部部材とは、ヒンジ結合され、前記底部部材と前記側壁部材とは、ヒンジ結合され、前記上部部材の一部が前記側壁部材の一部に係合することにより、前記複数の部材が一体化されることを特徴とする尿温測定装置である。
この尿温測定装置によれば、複数の部材を分割可能にしたため、温度検出部の全周が開放される。そのため、温度検出部やスリットにこびり付いた尿石等の異物を部材を分割した状態で除去することができ、清掃性が向上する。
【0011】
第6の発明は、第5の発明において、前記スリットは、前記底部部材と前記側壁部材とを当接させた際に形成される隙間であることを特徴とする尿温測定装置である。
この尿温測定装置によれば、スリット部分を境にして複数の部材が分割されるため、スリットに付着した尿石の除去を行いやすい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の態様によれば、採尿器に尿を迅速に溜めることが可能であり、採尿器の内部の尿を排泄直後の新鮮な尿に置換することが可能な尿温測定装置が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
図1は、本発明の第1の実施の形態にかかる尿温測定装置が設置されたトイレ室を例示する模式図である。
【0014】
本実施形態にかかる尿温測定装置は、例えば側壁10aなどに隣接したライニング12の内部に設けられた尿温測定部100と、使用者が放尿した尿を受尿して採集する採尿容器120と、スイングアーム142を介して採尿容器120を回動させるスイングアーム駆動部140と、を備えている。尿温測定部100は制御部110を有しており、その制御部110は温度検出部121(図2参照)で検知した尿の温度(尿温)などを配線144を介して受信し、例えば側壁10bなどに設けられた表示部16に信号を送信して尿温などを表示させることができる。
【0015】
また、制御部110は、スイングアーム駆動部140を駆動してスイングアーム142を回動させ、スイングアーム142の一端に設けられた採尿容器120を洋式腰掛便器14のボウル14a内に移動させることができる。なお、図1に表した採尿容器120は、受尿位置にある状態を表している。一方、使用者が尿温測定装置を使用しない場合には、制御部110はスイングアーム駆動部140を駆動してスイングアーム142を回動させ、採尿容器120を図示しない収納部に収納できる。そのため、使用者が尿温測定装置を使用しない場合に、採尿容器120が用便の邪魔になることはない。
【0016】
図2は、本実施形態の採尿容器を斜め上方から眺めた斜視模式図である。
また、図3は、本実施形態の採尿容器を斜め下方から眺めた斜視模式図である。
また、図4は、本実施形態の採尿容器を分解して斜め上方から眺めた分解模式図である。
【0017】
採尿容器120は、受尿して採集した尿を一時的に貯留する底部部材124と、温度検出部121と発光部122とを保持する側壁部材126と、採尿容器120の内部に尿を取り込む採尿口127cが設けられた上部部材127と、を有する。側壁部材126は、温度検出部121などを保持するとともに、底部部材124と同様に、尿を一時的に貯留する貯尿部129の少なくとも一部を形成している。すなわち、使用者が排泄した尿は、底部部材124と側壁部材126とで形成された空間(貯尿部129)に一時的に貯留される。そして、温度検出部121は貯尿部129に貯留された尿の温度を検出できる。
【0018】
採尿容器120の内部には、図示しない温度検出素子により尿の温度を測定する温度検出部121と、底部部材124の内部を照射する発光部122と、が設けられている。温度検出部121は、貯尿部129に溜まった尿の温度を測定し、配線144を介して制御部110に測定結果を出力する。発光部122は、底部部材124の内部を明るく照射することで、採尿容器120を見やすくして尿を当てやすくすることができる。なお、図2に表したように、底部部材124に溜まった尿を吸引する吸尿部123を設け、図示しない搬送管を通して尿糖測定部に尿を搬送して、使用者が排泄した尿の尿糖を測定できるようにしてもよい。
【0019】
底部部材124と側壁部材126と上部部材127とは別体として設けられているため、図4に表したように、それぞれを分割することができる。そのため、採尿容器120の内部に付着した尿石などを容易に除去することができる。
【0020】
そして、側壁部材126は、ヒンジ部126aにおいて底部部材124に対して回動自在に軸支されている。そのため、ヒンジ部126aを中心に側壁部材126を回動させて、底部部材124に当接させた状態では、図3に表したように、底部部材124と側壁部材126との間において採尿容器120の内部と外部とを連通するスリット131が、その採尿容器120の底部(下部)に形成される。スリット131は、採尿容器120の底部から上部部材127にかけて延在している。
【0021】
上部部材127は、ヒンジ部127aにおいて底部部材124に対して回動自在に軸支されている。ヒンジ部127aを中心に上部部材127を回動させて、上部部材127が有する係合孔127bを側壁部材126が有する突起部126bに係合させることにより、図2および図3に表したように、底部部材124と側壁部材126と上部部材127とを相対的に固定し一体化させることができる。そのため、ヒンジ部127aを中心に上部部材127を回動させて、係合孔127bを突起部126bに係合させた状態では、図3に表したように、底部部材124と上部部材127との間、および側壁部材126と上部部材127との間において採尿容器120の内部と外部とを連通するスリット(隙間)133が、その採尿容器120の上部に形成される。スリット133は、上部部材127の周縁に略沿うように周状に延在している。
【0022】
採尿容器120の内部に尿を取り込む採尿口127cには、網体(メッシュ)128が設けられている。網体128は、採尿容器120の内部に取り込まれた尿が飛び跳ねて採尿容器120の外部に逃げることを防止したり、使用者から排泄された尿を採尿容器120が受尿したときの尿の泡立ちを防止したりする。なお、図2および図4に表した網体128は、採尿口127cに設けられた一部を表している。
【0023】
温度検出部121は、例えばサーミスタである。サーミスタは、金属製の保護管の内部の先端に図示しない温度検出素子を内蔵した構造を有する。そして、被温度測定物(尿)の温度が保護管に伝達され、保護管に内蔵された温度検出素子は、その伝達された温度を検出する。サーミスタの保護管は金属製であり、径が小さいため、温度検出素子への温度(熱)の伝達速度は速く、温度変化に対する応答速度も速い。
【0024】
一方、サーミスタの保護管は金属製であるため、温度検出素子へ熱を伝えやすいとともに、外部へ放熱しやすい。そのため、温度検出部121に接触している外気や側壁部材126などを介して、採尿容器120の外部に尿の熱が放熱されやすい。これにより、貯尿部129に溜められた尿は冷めてしまい、尿温(体温)を精度良く測定できないおそれがある。
【0025】
これに対して、採尿容器120に貫通孔を設け、その貫通孔を通して古い尿を新しい尿に置換して、貯尿部129に溜められた尿が冷めないようにすることも可能である。しかしながら、使用者から排泄された尿の尿流率(単位時間当たりに流れる尿の流量)が小さい場合には、尿温測定を行うために十分な尿が貯尿部129に溜まらないおそれがある。サーミスタが尿に浸らない場合には、精度良く尿温を測定することができない。
【0026】
一方、尿流率が小さい場合でも十分な尿が貯尿部129に溜まるように貫通孔の径を小さくすると、尿の表面張力によって尿が十分に排出されず、古い尿を新しい尿に置換できないおそれがある。すなわち、貫通孔を設けて尿を置換すると、径が小さい場合には尿を置換できず、尿を置換できるほどに径が大きい場合には十分な尿が貯尿部129に溜まらないおそれがある。
【0027】
そこで、本実施形態にかかる尿温測定装置は、前述したように、底部部材124と側壁部材126との間において採尿容器120の内部と外部とを連通するスリット131が、その採尿容器120の底部に設けられている。スリット131は、図3に表したように、採尿容器120の底部から上部部材127にかけて延在しており、細い隙間(細隙)の形状を有している。そのため、本実施形態にかかる尿温測定装置は、採尿容器120に尿を迅速に溜めることが可能であり、採尿容器120の内部の尿を排泄直後の新鮮な尿に置換することが可能である。以下、この作用の詳細について、図面を参照しつつ説明する。
【0028】
図5は、温度検出部が尿に浸された直後の採尿容器の内部を例示する断面模式図である。
また、図6は、図5に表した採尿容器のスリット近傍を拡大して表した拡大模式図である。
なお、図5は、図2に表したA−A断面図に相当する。
【0029】
使用者が排泄した尿は、採尿口127cに設けられた網体128を通って、底部部材124と側壁部材126とで形成された貯尿部129に一時的に貯留される。ここで、スリット131は、図6に表したように、幅が狭い細隙形状を有しており、底部部材124と側壁部材126との一部が上下方向に重複した鉤形を有している。そのため、採尿容器120の底部からスリット131を通して、貯尿部129を直視することはできない。
【0030】
そして、スリット131は細隙形状および鉤形を有しているため、貯尿部129に貯留された尿160はスリット131を通過し難い。また、尿160には表面張力が作用するため、同様に尿160はスリット131を通過し難い。すなわち、貯尿部129に貯留された尿160は、スリット131が細隙形状を有することと、尿160に表面張力が作用することと、によりスリット131から抵抗を受けて排出され難い。
【0031】
そのため、図5に表したように、温度検出部121が尿160に浸されるまでは、貯尿部129に貯留された尿160はスリット131から採尿容器120の外部に排出されない。これにより、本実施形態にかかる尿温測定装置は、採尿容器120に尿を迅速に溜めることができる。そして、使用者から排泄された尿の尿流率が小さい場合であっても、尿温測定を行うために十分な尿を貯尿部129に貯留することができる。その結果、より短時間で精度良く尿温を測定することができる。
【0032】
図7は、採尿容器の内部に尿が満たされた状態を例示する断面模式図である。
また、図8は、図7に表した採尿容器のスリット近傍を拡大して表した拡大模式図である。
なお、図7は、図2に表したA−A断面図に相当する。
【0033】
温度検出部121が尿160に浸された直後の状態(図5参照)から、さらに尿160が採尿容器120の内部に供給されると、尿160はスリット131から抵抗を受けているため排出されないまま、採尿容器120の内部(貯尿部129)は、図7に表したように尿160で満たされる。この状態では、温度検出部121が尿160に浸された直後の状態(図5参照)よりも大きな圧力(水圧)が、採尿容器120の内部から外部に向かってスリット131にかかっている。
【0034】
そして、スリット131において、尿160の水圧による荷重が表面張力などの抵抗力よりも大きくなると、図7および図8に表した矢印Cのように、尿160はスリット131を通って採尿容器120の底部から排出される。このように、本実施形態にかかる尿温測定装置では、温度検出部121が尿160に浸された状態で、尿160の水圧による荷重が表面張力などの抵抗力よりも大きくなるように、スリット131の幅が適宜設定されている。つまり、温度検出部121が尿160に浸されると、貯尿部129に貯留された尿160はスリット131を通って採尿容器120の底部から排出される。このスリット131の幅は、例えば約0.2〜0.3ミリメートル程度である。
【0035】
貯尿部129に貯留された尿がスリット131を通って採尿容器120の底部から排出されると、尿160の水位は下がり、排泄直後の新鮮な尿が供給される。そのため、採尿容器120内の温度検出部121の周囲では、古い尿が排泄直後の新鮮な尿に置換される。このように、採尿容器120の内部において尿160が循環されることにより、貯尿部129に溜められた尿が冷めないようにすることが可能であり、精度良く尿温を測定することができる。
【0036】
また、図7に表した矢印AおよびBのように採尿容器120の上部から排出される尿は、網体128を介して流入する新鮮な尿によりその排出を妨げられる。そのため、採尿容器120の上部から排出される尿の量は、スリット131を通って採尿容器120の底部から排出される尿の量よりも少ない。そのため、採尿容器120の内部の尿160は、スリット131からより多く排出されることにより、採尿容器120の上部から流入する新鮮な尿に効率よく置換される。
【0037】
本実施形態の採尿容器120には、図2〜図4に関して前述したように、底部部材124と上部部材127との間、および側壁部材126と上部部材127との間において採尿容器120の内部と外部とを連通するスリット133が、上部部材127の周縁に略沿うように周状に延在している。そのため、採尿容器120の内部に尿160が満たされ、尿160の表面張力により採尿口127cに設けられた網体128が目詰まり状態になっても、スリット133から採尿容器120の内部に空気を導入できる。したがって、貯尿部129に貯留された尿160の排出が促進され、新しい尿の導入が促進されるため、採尿容器120の内部の尿の置換(循環)をより確実に行うことができる。
【0038】
さらに、本実施形態の採尿容器120には、図2〜図4に関して前述したように、底部部材124と側壁部材126との間において採尿容器120の内部と外部とを連通するスリット131が、採尿容器120の底部から上部部材127にかけて延在している。そのため、貯尿部129に貯留された尿160の液面よりも上の採尿容器120内の空間は、スリット131を介して採尿容器120外に連通している。したがって、採尿口127cに設けられた網体128が表面張力により付着した尿によって目詰まり状態になっても、貯尿部129に貯留された尿160の液面よりも上の部分のスリット131から採尿容器120の内部に空気を導入できる。これにより、前述したように、貯尿部129に貯留された尿160の排出が促進され、新しい尿の導入が促進されるため、採尿容器120の内部の尿の置換(循環)をより確実に行うことができる。
【0039】
なお、使用者の放尿が終了し、新しい尿が網体128を介して採尿容器120の内部に供給されなくなると、その内部の尿160の水位は下がり、スリット131において、尿160の水圧による荷重が表面張力などの抵抗力よりも小さくなる。そのため、採尿容器120が受尿位置にある状態では、尿160は完全には採尿容器120の外部に排出されない。これに対して、採尿容器120が図示しない収納部に収納された状態では、採尿口127cは下に向かって開口するため、採尿容器120の内部に残った尿160は採尿口172から排出される。なお、採尿容器120の内部に吸尿部123が設けられている場合には、その吸尿部123を介して採尿容器120の内部に残った尿160を吸い込み排出することもできる。
【0040】
図9は、本実施形態の変形例にかかる採尿容器を例示する模式図である。
また、図10は、本変形例にかかる採尿容器の内部を例示する断面模式図である。
なお、図9は、図2に表したA−A断面図に相当する。
【0041】
本変形例にかかる採尿容器170は、図2〜図4に表した採尿容器120のようには、底部部材124と側壁部材126とは別体として設けられていない。すなわち、本変形例にかかる採尿容器170は、底部部材と側壁部材とが一体化された底部部材174を有する。そして、底部部材174の底部には、採尿容器120の内部と外部とを連通するスリット181が設けられている。スリット181は、採尿容器120の底部から上部部材127に向かう途中にかけて延在している。
【0042】
上部部材127は、図2〜図4に表した採尿容器120と同様に、ヒンジ部127aにおいて底部部材174に対して回動自在に軸支されている。ヒンジ部127aを中心に上部部材127を回動させて、上部部材127が有する係合孔127bを底部部材174が有する突起部174bに係合させることにより、底部部材174と上部部材127とを相対的に固定し一体化させることができる。その他の構造については、図2〜図4に表した採尿容器120と同様である。
【0043】
スリット181は、図10に表したように、幅が狭い細隙形状を有しており、略直線形を有している。そのため、採尿容器120の底部からスリット181を通して、貯尿部129を直視することができる。このスリット181の幅は、例えば約0.2〜0.3ミリメートル程度である。この場合であっても、貯尿部129に貯留された尿160は、スリット181が細隙形状を有することと、尿160に表面張力が作用することと、によりスリット181から抵抗を受けて排出され難い。そのため、図5〜図8に関して前述した作用と同様の作用が生じ、同様の効果を得ることができる。
【0044】
また、底部部材174と上部部材127との間、側壁部材126と上部部材127との間において採尿容器170の内部と外部とを連通するスリット133が、上部部材127の周縁に略沿うように周状に延在している。そのため、採尿容器170の内部に尿が満たされ、尿の表面張力により採尿口に設けられた網体が目詰まり状態になっても、スリット133から採尿容器170の内部に空気を導入できる。したがって、図7および図8に関して前述した効果と同様の効果を得ることができる。
【0045】
さらに、本変形例にかかる採尿容器170は、底部部材と側壁部材とが一体化された底部部材174を有するため、採尿容器170全体としてより大きな強度を得ることができる。また、図4に表したヒンジ部126aを設ける必要がないため、採尿容器170の構造をより簡略化でき、採尿容器170を小型化することもできる。
【0046】
以上説明したように、本実施形態によれば、採尿容器120の底部に細隙形状のスリット131が設けられている。そのため、採尿容器120に尿を迅速に溜めることが可能であり、採尿容器120の内部の尿を排泄直後の新鮮な尿に置換することが可能である。また、図9および図10に表した変形例のように、底部部材と側壁部材とが一体化された底部部材174に細隙形状のスリット181が設けられていることによっても、同様の効果を得ることができる。これらによれば、より短時間で精度良く尿温を測定することができる。
【0047】
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。
図11は、本発明の第2の実施の形態にかかる尿温測定装置を例示する模式図である。 また、図12は、本実施形態の変形例にかかる尿温測定装置を例示する模式図である。 本実施形態にかかる尿温測定装置は、使用者が持ち運び可能な装置である。すなわち、携帯できる尿温測定装置である。これによれば、本実施形態にかかる尿温測定装置を携帯することで、外出先などでも使用者の尿温(体温)を測定することができる。
【0048】
図11に表した尿温測定装置は、表示部316と、「入/切」スイッチ317と、「体温」スイッチ318と、スピーカ315と、を有する尿温測定部300と、使用者が放尿した尿を受尿して採集する採尿容器320と、尿温測定部300と採尿容器320とを連結し、使用者が把持可能な把持部340と、を備えている。尿温測定部300は制御部310をさらに有しており、その制御部110は温度検出部121で検知した尿の温度(尿温)を配線344を介して受信し、表示部316にその尿温を表示させることができる。
【0049】
採尿容器320は、図11に表したように、受尿して採集した尿を一時的に貯留する底部部材324と、温度検出部321と発光部322とを保持する側壁部材326と、採尿容器120の内部に尿を取り込む採尿口327cが設けられた上部部材327と、を有する。但し、図9および図10に表した変形例のように、底部部材324と側壁部材326とは、一体として設けられていてもよい。そして、側壁部材326は、温度検出部321などを保持するとともに、底部部材324と同様に、尿を一時的に貯留する貯尿部329の少なくとも一部を形成している。すなわち、使用者が排泄した尿は、底部部材324と側壁部材326とで形成された空間(貯尿部329)に一時的に貯留される。採尿口327cには、網体(メッシュ)328が設けられている。
【0050】
採尿容器320の内部には、図示しない温度検出素子により尿の温度を測定する温度検出部321と、底部部材324の内部を照射する発光部322と、が設けられている。温度検出部321は、底部部材324と側壁部材326とで形成された貯尿部329に溜まった尿の温度を測定し、配線344を介して制御部310に測定結果を出力する。発光部322は、底部部材124の内部を明るく照射することで、採尿容器320を見やすくして尿を当てやすくすることができる。
【0051】
なお、図12に表したように、底部部材324に溜まった尿を吸引する吸尿部323をさらに設け、図示しない搬送管を通して尿糖測定部に尿を搬送して、使用者が排泄した尿の尿糖を測定できるようにしてもよい。この測定は、尿温測定部300にさらに設けられた「尿糖」スイッチ319を使用者が押すことにより開始される。
【0052】
図11および図12に表した尿温測定装置は、底部部材324と側壁部材326との間において採尿容器320の内部と外部とを連通するスリット331が、その採尿容器320の底部(下部)に形成される。スリット331は、採尿容器320の底部から上部部材327にかけて延在している。また、底部部材324と上部部材327との間において採尿容器320の内部と外部とを連通するスリットが、その採尿容器320の上部に形成される。このスリットは、上部部材327の周縁に略沿うように周状に延在している。
【0053】
スリット331は、図5〜図8に表したスリット131と同様に、幅が狭い細隙形状を有している。スリット331の幅は、例えば約0.2〜0.3ミリメートル程度である。そのため、貯尿部329に貯留された尿はスリット331を通過し難い。また、尿には表面張力が作用するため、同様に尿はスリット331を通過し難い。すなわち、貯尿部329に貯留された尿は、スリット331が細隙形状を有することと、尿に表面張力が作用することと、によりスリット331から抵抗を受けて排出され難い。そのため、温度検出部321が尿に浸されるまでは、貯尿部329に貯留された尿はスリット331から採尿容器320の外部に排出されない。
【0054】
一方、採尿容器320内部が尿で満たされ、スリット331において、尿の水圧による荷重が表面張力などの抵抗力よりも大きくなると、尿はスリット331を通って採尿容器320の底部から排出される。そして、貯尿部329に貯留された尿がスリット331を通って採尿容器320の底部から排出されると、尿の水位は下がり、排泄直後の新鮮な尿が供給される。そのため、採尿容器320内の温度検出部321の周囲では、古い尿が排泄直後の新鮮な尿に置換される。このように、採尿容器320の内部において尿が循環されることにより、貯尿部329に溜められた尿が冷めないようにすることが可能であり、精度良く尿温を測定することができる。
【0055】
また、第1の実施の形態にかかる尿温測定装置と同様に、スリット331は採尿容器320の底部から上部部材327にかけて延在し、底部部材324と上部部材327との間におけるスリットは上部部材327の周縁に略沿うように周状に延在している。そのため、尿の表面張力により採尿口327cに設けられた網体328が目詰まり状態になっても採尿容器320の内部に空気を導入でき、貯尿部329に貯留された尿の排出が促進され、新しい尿の導入が促進されるため、採尿容器320の内部の尿の置換をより確実に行うことができる。
【0056】
以上、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの記述に限定されるものではない。前述の実施の形態に関して、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、尿温測定装置などが備える各要素の形状、寸法、材質、配置などや尿温測定部の設置形態などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。つまり、例えば、尿温測定部は、ライニング12の内部に設けられていなくともよく、便座に座った使用者の「おしり」などに向けて水を噴射する図示しない衛生洗浄装置の内部に設けられてもよい。
また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の第1の実施の形態にかかる尿温測定装置が設置されたトイレ室を例示する模式図である。
【図2】本実施形態の採尿容器を斜め上方から眺めた斜視模式図である。
【図3】本実施形態の採尿容器を斜め下方から眺めた斜視模式図である。
【図4】本実施形態の採尿容器を分解して斜め上方から眺めた分解模式図である。
【図5】温度検出部が尿に浸された直後の採尿容器の内部を例示する断面模式図である。
【図6】図5に表した採尿容器のスリット近傍を拡大して表した拡大模式図である。
【図7】採尿容器の内部に尿が満たされた状態を例示する断面模式図である。
【図8】図7に表した採尿容器のスリット近傍を拡大して表した拡大模式図である。
【図9】本実施形態の変形例にかかる採尿容器を例示する模式図である。
【図10】本変形例にかかる採尿容器の内部を例示する断面模式図である。
【図11】本発明の第2の実施の形態にかかる尿温測定装置を例示する模式図である。
【図12】本実施形態の変形例にかかる尿温測定装置を例示する模式図である。
【符号の説明】
【0058】
10a、10b 側壁、 12 ライニング、 14 洋式腰掛便器、 14a ボウル、 16 表示部、 100 尿温測定部、 110 制御部、 120 採尿容器、 121 温度検出部、 122 発光部、 123 吸尿部、 124 底部部材、 126 側壁部材、 126a ヒンジ部、 126b 突起部、 127 上部部材、 127a ヒンジ部、 127b 係合孔、 127c 採尿口、 128 網体、 129 貯尿部、 131、133 スリット、 140 スイングアーム駆動部、 142 スイングアーム、 144 配線、 160 尿、 170 採尿容器、 174 底部部材、 174b 突起部、 181 スリット、 300 尿温測定部、 310 制御部、 315 スピーカ、 316 表示部、 317、318、319 スイッチ、 320 採尿容器、 321 温度検出部、 322 発光部、 323 吸尿部、 324 底部部材、 326 側壁部材、 327 上部部材、 327c 採尿口、 328 網体、 329 貯尿部、 331 スリット、 340 把持部、 344 配線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
採尿口を有し、尿を採集する採尿容器と、
前記採尿容器の内部に設けられ、前記採尿容器の内部に貯留された尿の温度を温度検出素子により測定する温度検出部と、
を備え、
前記採尿容器の底部には内部と外部とを連通するスリットが設けられ、
前記温度検出部が尿に浸されるまでは、前記採尿容器の内部に貯留された尿の前記スリットからの排出を抑制して前記採尿容器の内部に尿を貯留し、
前記温度検出部が尿に浸されると、前記採尿容器の内部に貯留された尿を前記スリットから排出させて前記採尿容器の内部の尿を新鮮な尿に置換させることを促進させることを特徴とする尿温測定装置。
【請求項2】
前記スリットのうちの、前記採尿容器の内部に貯留された尿の液面よりも上の部分を通して、前記採尿容器の外部から前記採尿容器の内部に空気を導入可能としたことを特徴とする請求項1記載の尿温測定装置。
【請求項3】
前記採尿容器は、複数の部材を有し、
前記複数の部材のうちのいずれかは、前記採尿口を有する上部部材であり、
前記複数の部材のうちの他の部材の少なくともいずれかは、前記上部部材と分割可能とされたことを特徴とする請求項1または2に記載の尿温測定装置。
【請求項4】
前記上部部材と前記他の部材の少なくともいずれかとを当接させた際に形成される隙間を通して、前記採尿容器の外部から前記採尿容器の内部に空気を導入可能としたことを特徴とする請求項3記載の尿温測定装置。
【請求項5】
前記他の部材は、
前記採尿容器の底部を形成する底部部材と、
前記温度検出部が取り付けられた側壁部材と、
を有し、
前記上部部材と前記底部部材とは、ヒンジ結合され、
前記底部部材と前記側壁部材とは、ヒンジ結合され、
前記上部部材の一部が前記側壁部材の一部に係合することにより、前記複数の部材が一体化されることを特徴とする請求項3または4に記載の尿温測定装置。
【請求項6】
前記スリットは、前記底部部材と前記側壁部材とを当接させた際に形成される隙間であることを特徴とする請求項5記載の尿温測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−48704(P2010−48704A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−214059(P2008−214059)
【出願日】平成20年8月22日(2008.8.22)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】