説明

尿素を除去するための透析処置デバイス

透析処置デバイスおよび透析老廃物ストリームから尿素を除去するための方法が、提供される。一般的実施形態において、本開示は、1)濾過膜(22)を有する第1のフィルタ(20)、2)ウレアーゼを有しかつ上記第1のフィルタと流体連絡した状態にある、尿素除去ユニット(30)、および3)イオン排除膜(42)を有しかつ上記第1のフィルタおよび上記尿素除去ユニットと流体連絡した状態にある、第2のフィルタ(40)を含む、透析処置デバイスを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(背景)
本開示は、透析処置デバイスおよび方法の一般的分野に、特に、透析老廃物ストリームから尿素を除去するためにある。
【背景技術】
【0002】
血液透析および腹膜透析は、腎機能の喪失を処置するために一般に使用される透析治療のうちの2つのタイプである。血液透析処置は、上記患者の血液を利用して、老廃物、毒素および過剰な水を上記患者から除去する。上記患者は、血液透析機械に接続され、上記患者の血液は、上記機械を介してポンプ輸送される。カテーテルは、血液が、上記血液透析機械へとおよび上記血液透析機械から流れ得るように、上記患者の静脈および動脈へと挿入される。上記血液は、上記機械の透析器を通過する。上記機械は、老廃物、毒素および過剰な水を上記血液から除去する。このきれいにされた血液は、上記患者に戻される。多量の透析物(例えば、約120リットル)が、1回の血液透析治療の間に、上記血液を透析するために消費される。血液透析処置は、数時間続き、一般に、1週間に約3回もしくは4回、処置施設で行われる。
【0003】
腹膜透析は、透析溶液(透析物ともいわれる)を使用し、これは、カテーテルを介して患者の腹腔に注入される。上記透析物は、上記腹腔の腹膜と接触する。老廃物、毒素および過剰な水は、拡散および浸透(すなわち、透析勾配が上記膜にまたがって生じる)に起因して、上記患者の血流から、上記腹膜を通って、上記透析物の中へと通過する。上記消費された透析物は、上記患者から排出され、老廃物、毒素および過剰な水分を上記患者から除去する。このサイクルが反復される。
【0004】
種々のタイプの腹膜透析治療が存在し、これらとしては、連続携行式腹膜透析(「CAPD」)、自動化腹膜透析(「APD」)、タイダルフロー(tidal flow)APDおよび連続フロー腹膜透析(「CFPD」)が挙げられる。CAPDは、手動透析処置である。上記患者は、手動で埋め込まれたカテーテルをドレインに繋ぎ、消費された透析物流体を上記腹腔から排出することを可能にする。次いで、上記患者は、上記カテーテルを新鮮な透析物のバッグに繋ぎ、新鮮な透析物を、上記カテーテルを介して上記患者の中へと注入する。上記患者は、上記カテーテルを上記新鮮な透析物バッグから外し、上記透析物を、上記腹腔内にとどめることを可能にする。ここで老廃物、毒素および過剰な水分の移動が起こる。滞留期間(dwell period)の後、上記患者は、上記手動透析手順を、例えば、1日に4回反復し、各処理は、約1時間続く。手動の腹膜透析は、上記患者の十分量の時間および努力を必要とし、改善には十分な余地がある。
【0005】
自動化腹膜透析(「APD」)は、上記透析処置が排出、充填、および滞留サイクルを含む点で、CAPDに似ている。しかし、APD機械は、上記サイクルを自動的に、代表的には、上記患者が眠っている間に行う。APD機械は、患者を手動で上記処置サイクルを行う必要性から、およびその日の間に供給物を運ぶ必要性から解放する。APD機械は、移植されたカテーテルへ、新鮮な透析物の源もしくはバッグへ、および流体ドレインへ流動的に繋ぐ。APD機械は、新鮮な透析物を透析物源から、上記カテーテルを通じて、上記患者の腹腔へとポンプ輸送し、上記透析物が、上記腔内にとどまることを可能にし、老廃物、毒素および過剰な水の移動が起こることを可能にする。上記源は、複数の滅菌透析物溶液バッグであり得る。
【0006】
APD機械は、消費された透析物を、上記腹腔から上記カテーテルを介して上記ドレインへとポンプ輸送する。上記手動プロセスと同様に、いくつかの排出、充填および滞留サイクルは、APDの間に生じる。「最後の充填」は、CAPDおよびAPDの最後に起こり、次の処置まで上記患者の腹腔に残ったままである。
【0007】
CAPDおよびAPDの両方は、消費された透析流体をドレインへ送るバッチタイプのシステムである。タイダルフローシステムは、改変されたバッチシステムである。タイダルフローでは、長時間にわたって、上記患者から上記流体の全てを除去する代わりに、上記流体のうちの一部を除去し、より短い時間増分の後に置換する。
【0008】
連続フロー(もしくはCFPD)透析システムは、消費された透析物を、これを廃棄する代わりに、きれいにするかもしくは再生する。上記システムは、上記患者の中および外へ、ループを介して流体をポンプ輸送する。透析物は、上記腹腔へと1本のカテーテル管腔を介してかつ別のカテーテル管腔の外へ流れる。上記患者を出る流体は、糖は異物を上記透析物から、例えば、ウレアーゼを使用して尿素をアンモニア(例えば、アンモニウムカチオン)に酵素変換する尿素除去カラムを介して除去する再構築デバイスを通過する。次いで、上記アンモニアは、上記透析物を上記腹腔へ再導入する前に、吸着によって上記透析物から除去される。さらなるセンサーが、アンモニアの除去をモニターするために使用される。CFPDシステムは、代表的には、バッチシステムより複雑である。
【0009】
血液透析および腹膜透析の両方において、「吸着剤」技術は、廃棄透析物から尿毒症毒素を除去し、治療剤(例えば、イオンおよび/もしくはグルコース)を、上記処理された流体へ再注入し、その流体を再利用して、上記患者の透析を継続するために使用され得る。1つの一般的に使用される吸着剤は、リン酸ジルコニウムから作製され、これは、尿素の加水分解から生じたアンモニアを除去するために使用される。代表的には、大量の吸着剤が、透析処置の間に生じたアンモニアを除去するために必要である。
【0010】
上記吸着剤ベースのアプローチの主要な利点は、非常に低い体積の水が、高体積透析処置を達成するために必要とされることである。上記吸着剤システムの主要な欠点は、上記使い捨て吸着剤のコストが高いこと、上記吸着剤を収容するために必要とされる空間の大きさ、および上記再循環される溶液の純度に関する懸念である。なぜなら、多くのイオンが、処理後に上記流体中に残っており、純度の確認は、行うには技術的に困難であるからである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
(要旨)
本開示は、血液透析および腹膜透析の間の透析老廃物ストリームを処理する透析処置デバイスおよび方法を提供する。一般的実施形態において、本開示は、透析処置デバイスを提供し、上記デバイスは、1)濾過膜を有する、第1のフィルタ、2)ウレアーゼを有しかつ上記第1のフィルタと流体連絡した状態にある、尿素除去ユニット、ならびに3)イオン排除膜を有しかつ上記第1のフィルタおよび上記尿素除去ユニットと流体連絡した状態にある、第2のフィルタを含む。
【0012】
一実施形態において、上記透析処置デバイスは、上記第1のフィルタと上記第2のフィルタとの間に配置された流れ制限器を含む。上記透析処置デバイスは、装着可能な腎臓のためのカートリッジ内に含まれ得る。上記カートリッジは、取り外し可能および/もしくは使い捨てであるように構成され得る。
【0013】
さらなる代替の実施形態において、本開示は、透析処置デバイスを提供し、上記デバイスは、1)吸着層、濾過膜およびイオン交換吸着剤を有する、フィルタ、ならびに2)上記フィルタと流体連絡した状態にある、尿素除去ユニットを含む。上記ウレアーゼ除去ユニットは、ウレアーゼ層、アンモニア吸着剤層およびイオン排除膜を含み得る。
【0014】
よって、改善された透析処置デバイスを提供することは、本開示の利点である。
【0015】
改善された尿素除去カートリッジを提供することは、本開示の別の利点である。
【0016】
装着可能な腎臓のための吸着剤なしの尿素除去カートリッジを提供することは、本開示のなお別の利点である。
【0017】
なおさらに、アンモニア吸着剤の必要性が低下した装着可能な腎臓のための尿素除去カートリッジを提供することは、本開示の利点である。
【0018】
本開示の別の利点は、透析老廃物ストリームから尿素を除去するための改善された方法を提供することである。
【0019】
さらなる特徴および利点は、本明細書に記載され、以下の詳細な説明および図面から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、本開示の一実施形態における複数フィルタを使用する透析処置デバイスの模式図である。
【図2】図2は、本開示の第3の実施形態における透析処置デバイスの模式図である。
【図3A】図3Aは、種々の透析処置技術において使用される上記透析処置デバイスの模式図である。
【図3B】図3Bは、種々の透析処置技術において使用される上記透析処置デバイスの模式図である。
【図3C】図3Cは、種々の透析処置技術において使用される上記透析処置デバイスの模式図である。
【図3D】図3Dは、種々の透析処置技術において使用される上記透析処置デバイスの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(詳細な説明)
本開示は、血液透析もしくは腹膜透析の間に、透析老廃物ストリームから尿素を除去するための透析処置デバイスおよび方法に関する。一般的実施形態において、上記透析処置デバイスは、ウレアーゼによる尿素の加水分解によって生成されたアンモニアを捕捉するために吸着剤を必要としないように構築および配置される。別の実施形態において、上記透析処置デバイスは、上記透析老廃物ストリームから尿素を除去するために必要な吸着剤の量を顕著に低下させるように構築および配置される。このことは、尿素を除去する透析処置システムのコスト、サイズおよび複雑さを顕著に低下させ得る。
【0022】
上記透析処置デバイスおよび方法は、種々の血液透析技術および腹膜透析技術(例えば、米国特許第5,244,568号、同第5,350,357号、同第5,662,806号、同第6,592,542号および同第7,318,892号(これらは、本明細書に参考として援用される)に記載されるもの)において使用され、実行され得る。上記血液透析技術および腹膜透析技術は、医療施設用に設計および構成され得、現場でもしくは自宅での透析処置で実行され得る。上記透析処置デバイスおよび方法は、携帯式透析処置デバイス(例えば、患者が透析の間に自由に動くことができる装着可能な人工腎臓)においてさらに使用され得る。携帯式透析処置デバイスの非限定的例は、米国特許第5,873,853号、同第5,984,891号および同第6,196,992号、ならびに米国特許公開第2007/0213665号および同第2008/0051696号(これらは、本明細書に参考として援用される)に記載されている。
【0023】
ここで図面および特に図1を参照すると、本開示の透析処置デバイス10の一実施形態が図示される。透析処置デバイス10は、第1のフィルタ20、尿素除去ユニット30、および第2のフィルタ40を含む。この構成において、尿素除去ユニット20は、上記フィルタとは別個の構成要素である。透析処置デバイス10は、第1のフィルタ20と第2のフィルタ40との間に配置された、拘束間仕切りもしくは流れ制限器50をさらに含み得る。透析処置デバイス10は、携帯式透析処置デバイス(例えば、装着可能な腎臓)のための処理カートリッジ内に含まれるように一定の大きさに作られかつ構成され得る。このような場合の上記処理カートリッジは、使い捨て可能もしくは再使用可能であり得る。
【0024】
第1のフィルタ20は、濾過膜22を有する。濾過膜22は、例えば、膜スキンを有する中空繊維カートリッジの形態にあり得る。上記膜は、非常に小さな分子(例えば、尿素)を、荷電しかつより大きな分子を保持する間に通過させるように設計され得る。濾過膜22として使用され得る適切な膜としては、ナノ濾過膜もしくは逆浸透膜が挙げられる。ナノ濾過膜の例は、WO公開番号2004/009158(これは、本明細書に参考として援用される)に記載されている。さらに、イオンコーティングが、濾過膜22として使用されて、上記透析老廃物ストリーム中のイオン性化合物をさらに捕捉もしくは交換するナノ濾過膜もしくは逆浸透膜に、付加され得る。
【0025】
別の実施形態において、第1のフィルタ20の濾過膜22は、カチオン排除膜もしくはアニオン排除膜である。イオン排除膜22は、負に荷電したイオンおよび非イオン性種の通過を可能にするが、特定の正に荷電したイオンの通過を制限するように設計され得る。あるいは、イオン排除膜22は、正に荷電したイオンおよび非イオン性種の通過を可能にするが、特定の負に荷電したイオンの通過を制限することを可能にし得る。
【0026】
尿素除去ユニット30は、ウレアーゼ(尿素の二酸化炭素(例えば、炭酸水素塩)およびアンモニア(例えば、アンモニウムカチオン)への加水分解を触媒する酵素)を含む。上記透析老廃物ストリームからの尿素は、この位置において上記ウレアーゼに曝される。上記ウレアーゼは、任意の適切な様式において、尿素除去ユニット30中に含まれ得る。例えば、上記ウレアーゼは、ビーズもしくは樹脂の層の中に固定化されてもよいし、膜の一部として浸漬された架橋ウレアーゼ酵素結晶であってもよい。尿素除去ユニット30は、流路32を介して、第1のフィルタ20と流体連絡した状態にある。流路32、および実際には、本明細書に記載される流路のうちのいずれかは、ある長さのチュービングとして、または剛性および/もしくは可撓性の、使い捨て可能なもしくは再使用可能なカセット中に規定される流路として提供され得る。
【0027】
代替の実施形態において、尿素除去ユニット20は、第1のフィルタ20と一体化され得る。例えば、固定化ウレアーゼは、イオン排除膜22の中空繊維の外側に配置され得る。
【0028】
第2のフィルタ40は、イオン排除膜42を有し、流路26を介して第1のフィルタ20と、および流路36を介して尿素除去ユニット30と、流体連絡した状態にある。異なる実施形態において、第2のフィルタ40のイオン排除膜42は、カチオン排除膜もしくはアニオン排除膜であり得る。別の実施形態において、第2のフィルタ40のイオン排除膜42は、逆浸透膜である。
【0029】
代替の実施形態において、透析処置デバイス10は、第1のフィルタ20と流体連絡した状態にある、吸着チャンバもしくは炭素チャンバ80を含む。この様式において、上記透析老廃物ストリームの有機毒素は、上記炭素の吸着層表面(例えば、活性炭素もしくは他の適切な有機中和表面)の上への吸着を介して、第1のフィルタ20に入る前に、老廃物ストリームから除去され得る。
【0030】
別の実施形態において、透析処置デバイス10は、透析処置デバイス10を通過する上記流体からいかなるアンモニアをも完全に除去するための予防的手段として第2のフィルタ40と流体連絡した状態にある、補助的なアンモニア吸着剤ユニット90を含む。上記アンモニア吸着剤ユニットは、例えば、上記処理された流体ストリーム中の任意の残りのアンモニアを捕捉するために、リン酸ジルコニウムを含み得る。
【0031】
図1に認められるように、ポンプ60は、患者からの消費された透析もしくは透析老廃物ストリームの流体流路12が、流路24を介して第1のフィルタ20に入らせる。上記透析老廃物ストリームは、透析処置デバイス10に入る前に、例えば、活性炭素を使用して処理されてもよいし、そうでなくてもよい。ポンプ70は、流体を第1のフィルタ20から尿素除去ユニット30へと、流路32および34を介して輸送する。濾過膜22は、荷電した種(例えば、Ca2+、Mg2+、Naおよび第1のフィルタ20内のタンパク質)を保持し得る。この種は、第2のフィルタ40の中へと流路26を介して流れる。結果として、水および尿素から主に構成される流体ストリームは、尿素除去ユニット30へと流れる。
【0032】
尿素除去ユニット30は、尿素を、アンモニアおよび二酸化炭素へと変換し、これらは、第2のフィルタ40へと、流路36を介して移動する。第2のフィルタ40は、イオン排除膜42として、中空繊維カチオン排除膜を提供し得る。結果として、上記アンモニアは、イオン排除膜42の外側に保持されたままであり、流路28を介して進まない。透析処置デバイス10の処理能を改善するために、尿素除去ユニット30と第2のフィルタ40との間の流路36は、尿素除去ユニット30中に含まれる上記ウレアーゼが、アンモニアで飽和しないように十分長いはずである。
【0033】
上記最終の処理された透析物ストリームは、さらなる使用もしくは処理(例えば、イオン交換)のために、第2のフィルタ40を、流路28を介して出て、次いで、上記患者に戻る。さらに、イオンおよび/もしくは流体は、上記ストリームにおいて、例えば、適切な流体源から、濃縮された透析成分(例えば、浸透因子(例えば、デキストロース、イコデキストリン、グルコースポリマー、グルコースポリマー誘導体、アミノ酸)、緩衝化剤(例えば、ラクトース、炭酸水素塩)および電解質(例えば、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム))を添加することを介して、置換され得る。
【0034】
代替の実施形態において、流れ制限器50および/もしくはポンプ70は、第1のフィルタ20および/もしくは第2のフィルタ40において高い圧力勾配を作り出すために使用され得る。この点に関して、流れ制限器50ならびに/もしくはポンプ60および70は、濾過膜22を介して、および第1のフィルタ20から、流路32および34を介して流体を押し出すために十分に高い圧力を提供し得る。
【0035】
図2に図示される別の実施形態において、透析処置デバイス100は、フィルタ110、ならびに流路142および144を介してフィルタ110と流体連絡した状態にある尿素除去ユニット120を含む。ポンプ130は、フィルタ110と尿素除去ユニット120との間に配置されて、上記2つの構成要素の間の流れを容易にし得る。透析処置デバイス100は、透析処置デバイスの上記に列挙されたタイプのうちのいずれかについて処理カートリッジ内に含まれるように一定の大きさに作られかつ構成され得る。
【0036】
フィルタ110は、吸着層112、濾過膜114およびイオン交換吸着剤116を含み得る。吸着層112は、例えば、炭素であり得る。この様式において、上記透析老廃物ストリームの有機毒素は、上記吸着層表面の上に吸着を介して上記老廃物ストリームから除去され得る。
【0037】
濾過膜114は、例えば、非常に小さな分子が、荷電したかつ大きな分子を保持している間に通過することを可能にするように設計された膜スキンを有する中空繊維カートリッジの形態にあり得る。濾過膜114として使用され得る適切な膜は、ナノ濾過膜もしくは逆浸透膜を含む。あるいは、フィルタ110の濾過膜114は、カチオン排除膜もしくはアニオン排除膜であり得る。一実施形態において、イオン交換吸着剤116は、アニオン(例えば、ホスフェートおよびスルフェート)を除去するためのアニオン交換吸着剤である。
【0038】
尿素除去ユニット120は、ウレアーゼ層122、アンモニア吸着剤層124およびイオン排除膜126を含み得る。イオン排除膜126は、カチオン排除膜であり得る。上記ウレアーゼは、任意の適切な様式において尿素除去ユニット120中に含まれ得る。図2に図示されるように、流路146における尿素除去ユニット120からの上記処理された透析流体は、流路140におけるフィルタ110からの上記処理された透析物流体と合わさって、その後の処理/再循環のために、合わさった処置された流体流路150を形成し得る。別の実施形態において、イオン排除膜126は、逆浸透膜である。
【0039】
代替の実施形態において、透析処置デバイス100は、フィルタ110と流体連絡した状態にある吸着チャンバもしくは炭素チャンバ160を含む。この様式において、上記透析老廃物ストリームの有機毒素は、上記炭素の吸着層表面(例えば、活性炭もしくは他の適切な有機性中和表面)上への吸着を介して、フィルタ110に入る前に、上記老廃物ストリームから除去され得る。
【0040】
別の実施形態において、透析処置デバイス100は、透析処置デバイス100を通過する上記流体からいかなるアンモニアをも完全に除去するために、予備的手段としてフィルタ110および尿素除去ユニット120のうちの少なくとも一方と流体連絡した状態にある補助的アンモニア吸着剤ユニット170を含む。アンモニア吸着剤ユニット170は、上記処理された流体ストリームにおける任意の残りのアンモニアを捕捉するために、例えば、リン酸ジルコニウムを含み得る。
【0041】
透析処置デバイス10および100の設計に起因して、吸着剤(例えば、リン酸ジルコニウム、炭酸水素ジルコニウムおよび/もしくは代表的には、アンモニア除去のために使用されるイオン交換層)は、不要であり得る。あるいは、透析処置デバイス10および100は、アンモニア除去のために吸着剤を使用する代表的な透析処置システムと比較して、必要な低下した量の吸着剤を可能にする。
【0042】
本明細書で議論される上記透析処置デバイス10および100のうちのいずれかは、図3A〜3Dにそれぞれ示されるように、腹膜透析(「PD」)、血液透析(「HD」)、血液濾過(「HF」)もしくは血液濾過透析(「HDF」)のために使用され得る。図3Aは、患者200に対して行われているPD処置の模式図を図示する。患者200からの消費された透析流体は、処理/尿素除去のために、透析処置デバイス10および100のうちの一方に入る。再生された透析は、再使用のために上記患者に戻される。これは、連続ベース(「CFPD」)で、透析流体が一定期間患者200内にとどまるバッチベースで、または半連続もしくはタイダルベースで、行われ得る。
【0043】
図3Bは、患者200に対して行われているHD処置の模式図を図示する。患者200の血液は、透析器202を介してポンプ輸送され、きれいにされ、患者200に戻される。透析器202からの消費された透析流体は、処理/尿素除去のために、上記透析処置デバイス10もしくは100のうちの1つに送られる。次いで、上記処理された流体は、上記患者の血液を連続してきれいにするために、連続ベースで透析器202に戻される。
【0044】
図3Cは、HF処置技術の模式図を図示する。HFは、HDに類似の技術である。血液濾過では、透析物は使用されない。代わりに、正の静水圧が、その血液区画からその濾液区画(そこから、濾液が排出される)へと、血液濾過器203のフィルタ膜にわたって、水および溶質を駆動する。上記消費された透析流体は、処理/尿素除去のために、上記透析処置デバイス10もしくは100のうちの一方に送られる。次いで、上記処理された流体は、1つ以上の発熱物質フィルタ204(例えば、毒素およびエンドトキシンを除去する、限外濾過器、発熱物質フィルタもしくはナノフィルタ)を介して送られることによって、さらに精製される。得られた置換流体は、上記血液中へ直接ポンプ輸送され、上記患者の矯正的クリーニングを引き起こす。PDおよびHDと同様に、流体の正味の体積は、上記患者が処置の間に蓄積した過剰な水を除去するために限外濾過液として上記患者から取り出される。
【0045】
図3Dは、HDF処置技術の模式図を図示する。HDFは、HDおよびHFの組み合わせである。血液は、HDおよびHFに類似の様式で、透析器202の血液区画を介してポンプ輸送される。高速の限外濾過が使用されるので、上記血液から上記透析物への水および溶質の移動は高速であり、これらは、きれいにされた透析物透析器202、および発熱物質フィルタ、ナノフィルタ、もしくは限外濾過器のうちの1種以上を介して上記患者の血管系(blood line)に直接、再び注入される置換流体を戻すことによって置換される。HDFは、高分子量溶質および低分子量溶質の両方の良好な除去を生じる。処理デバイス10および100は、直接、透析器202、および限外濾過器204を介して直接、上記患者の血管系統へ、の両方へ送達し戻すために、透析器202からの消費された流体を再生する。
【0046】
代替の実施形態において、本開示は、吸着剤なしのもしくは低下した吸着剤カートリッジの形態において、上記透析デバイスのうちの1種以上を組み込む透析技術もしくは装置の流体循環中に、透析流体を循環させる工程を包含する方法を提供する。上記透析装置は、装着可能な透析デバイスであり得る。
【0047】
上記消費された透析流体は、処置された患者からの老廃物を含む。上記消費された透析流体は、上記透析技術へと送られ得、老廃物(例えば、尿素)は、上記カートリッジを使用して除去される。次いで、上記処理された流体は、さらなる使用のために、上記患者に戻して再循環され得る。
【0048】
本明細書に記載される現在好ましい実施形態に対する種々の変更および改変は、当業者に明らかであることが理解されるべきである。このような変更および改変は、本発明の主題の趣旨および範囲から逸脱することなく、かつその意図された利点を減少させることなく、行われ得る。従って、このような変更および改変は、添付の特許請求の範囲によって網羅されることが意図される。
(項目1)
透析処置デバイスであって、
濾過膜を含む、第1のフィルタ;
ウレアーゼを含みかつ該第1のフィルタと流体連絡した状態にある、尿素除去ユニット;および
イオン排除膜を含みかつ該第1のフィルタおよび該尿素除去ユニットと流体連絡した状態にある、第2のフィルタ、
を含む、デバイス。
(項目2)
前記濾過膜は、ナノ濾過膜、逆浸透膜、イオン排除膜およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、項目1に記載の透析処置デバイス。
(項目3)
前記第1のフィルタの前記濾過膜は、カチオン排除膜を含み、前記第2のフィルタの前記イオン排除膜は、カチオン排除膜を含む、項目1または2のいずれか1項に記載の透析処置デバイス。
(項目4)
前記第1のフィルタと前記第2のフィルタとの間に配置された流れ制限器をさらに含む、前記項目のいずれか1項に記載の透析処置デバイス。
(項目5)
前記透析処置デバイスは、装着可能な腎臓のためのカートリッジ内に含まれる、前記項目のいずれか1項に記載の透析処置デバイス。
(項目6)
前記尿素除去ユニットと前記第1のフィルタとの間に配置されたポンプをさらに含む、前記項目のいずれか1項に記載の透析処置デバイス。
(項目7)
前記尿素除去ユニットと前記第2のフィルタとの間の流路は、前記ウレアーゼがアンモニアで飽和しないように十分長い、前記項目のいずれか1項に記載の透析処置デバイス。
(項目8)
前記第1のフィルタと流体連絡した状態にある活性炭ユニットをさらに含む、前記項目のいずれか1項に記載の透析処置デバイス。
(項目9)
前記イオン排除膜は、逆浸透膜である、前記項目のいずれか1項に記載の透析処置デバイス。
(項目10)
前記第2のフィルタと流体連絡した状態にあるリン酸ジルコニウム層をさらに含む、前記項目のいずれか1項に記載の透析処置デバイス。
(項目11)
透析処置デバイスであって、
吸着層、濾過膜およびイオン交換吸着剤を含むフィルタ;ならびに
該フィルタと流体連絡した状態にある、尿素除去ユニットであって、該ウレアーゼ除去ユニットは、ウレアーゼ層、アンモニア吸着剤層およびイオン排除膜を含む、尿素除去ユニット
を含む、デバイス。
(項目12)
前記透析処置デバイスは、装着可能な腎臓のためのカートリッジ内に含まれる、項目11に記載の透析処置デバイス。
(項目13)
前記イオン交換膜は、アニオン交換膜であり、前記イオン排除膜は、カチオン排除膜である、項目11または12のいずれか1項に記載の透析処置。
(項目14)
前記フィルタと前記尿素除去ユニットとの間に配置されたポンプをさらに含む、項目11〜13のいずれか1項に記載の透析処置デバイス。
(項目15)
前記フィルタと流体連絡した状態にある活性炭ユニットをさらに含む、項目11〜14のいずれか1項に記載の透析処置デバイス。
(項目16)
前記イオン排除膜は、逆浸透膜である、項目11〜15のいずれか1項に記載の透析処置デバイス。
(項目17)
前記フィルタおよび前記尿素除去ユニットのうちの少なくとも一方と流体連絡した状態にあるリン酸ジルコニウム層をさらに含む、項目11〜16のいずれか1項に記載の透析処置デバイス。
(項目18)
透析流体から尿素を除去するための方法であって、該方法は、
該透析流体を、1)濾過膜を含む、第1のフィルタ、2)ウレアーゼを含みかつ該第1のフィルタと流体連絡した状態にある、尿素除去ユニット、ならびに3)イオン排除膜を含みかつ該第1のフィルタおよび該尿素除去ユニットと流体連絡した状態にある、第2のフィルタ、を含むカートリッジを有する透析装置を含む流体回路中に循環させる工程;
尿素を該透析流体から、該カートリッジで除去する工程;ならびに
該透析流体を患者に戻して再循環させる工程、
を含む、方法。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透析処置デバイスであって、
濾過膜を含む、第1のフィルタ;
ウレアーゼを含みかつ該第1のフィルタと流体連絡した状態にある、尿素除去ユニット;および
イオン排除膜を含みかつ該第1のフィルタおよび該尿素除去ユニットのそれぞれと流体連絡した状態にある、第2のフィルタ、
を含む、デバイス。
【請求項2】
前記濾過膜は、ナノ濾過膜、逆浸透膜、イオン排除膜およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項1に記載の透析処置デバイス。
【請求項3】
前記第1のフィルタの前記濾過膜は、カチオン排除膜を含み、前記第2のフィルタの前記イオン排除膜は、カチオン排除膜を含む、請求項1または2のいずれか1項に記載の透析処置デバイス。
【請求項4】
前記第1のフィルタと前記第2のフィルタとの間に配置された流れ制限器をさらに含む、前記請求項のいずれか1項に記載の透析処置デバイス。
【請求項5】
前記透析処置デバイスは、装着可能な腎臓のためのカートリッジ内に含まれる、前記請求項のいずれか1項に記載の透析処置デバイス。
【請求項6】
前記尿素除去ユニットと前記第1のフィルタとの間に配置されたポンプをさらに含む、前記請求項のいずれか1項に記載の透析処置デバイス。
【請求項7】
前記尿素除去ユニットと前記第2のフィルタとの間の流路は、前記ウレアーゼがアンモニアで飽和しないように十分長い、前記請求項のいずれか1項に記載の透析処置デバイス。
【請求項8】
前記第1のフィルタと流体連絡した状態にある活性炭ユニットをさらに含む、前記請求項のいずれか1項に記載の透析処置デバイス。
【請求項9】
前記イオン排除膜は、逆浸透膜である、前記請求項のいずれか1項に記載の透析処置デバイス。
【請求項10】
前記第2のフィルタと流体連絡した状態にあるリン酸ジルコニウム層をさらに含む、前記請求項のいずれか1項に記載の透析処置デバイス。
【請求項11】
透析処置デバイスであって、
吸着層、濾過膜およびイオン交換吸着剤を含むフィルタ;ならびに
該フィルタと流体連絡した状態にある、尿素除去ユニットであって、該ウレアーゼ除去ユニットは、ウレアーゼ層、アンモニア吸着剤層およびイオン排除膜を含む、尿素除去ユニット
を含む、デバイス。
【請求項12】
前記透析処置デバイスは、装着可能な腎臓のためのカートリッジ内に含まれる、請求項11に記載の透析処置デバイス。
【請求項13】
前記イオン交換膜は、アニオン交換膜であり、前記イオン排除膜は、カチオン排除膜である、請求項11または12のいずれか1項に記載の透析処置。
【請求項14】
前記フィルタと前記尿素除去ユニットとの間に配置されたポンプをさらに含む、請求項11〜13のいずれか1項に記載の透析処置デバイス。
【請求項15】
前記フィルタと流体連絡した状態にある活性炭ユニットをさらに含む、請求項11〜14のいずれか1項に記載の透析処置デバイス。
【請求項16】
前記イオン排除膜は、逆浸透膜である、請求項11〜15のいずれか1項に記載の透析処置デバイス。
【請求項17】
前記フィルタおよび前記尿素除去ユニットのうちの少なくとも一方と流体連絡した状態にあるリン酸ジルコニウム層をさらに含む、請求項11〜16のいずれか1項に記載の透析処置デバイス。
【請求項18】
透析流体から尿素を除去するための方法であって、該方法は、
該透析流体を、1)濾過膜を含む、第1のフィルタ、2)ウレアーゼを含みかつ該第1のフィルタと流体連絡した状態にある、尿素除去ユニット、ならびに3)イオン排除膜を含みかつ該第1のフィルタおよび該尿素除去ユニットのそれぞれと流体連絡した状態にある、第2のフィルタ、を含むカートリッジを有する透析装置を含む流体回路中に循環させる工程;
尿素を該透析流体から、該カートリッジで除去する工程;ならびに
該透析流体を患者に戻して再循環させる工程、
を含む、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【公表番号】特表2012−529343(P2012−529343A)
【公表日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−514961(P2012−514961)
【出願日】平成22年5月4日(2010.5.4)
【国際出願番号】PCT/US2010/033482
【国際公開番号】WO2010/144189
【国際公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【出願人】(591013229)バクスター・インターナショナル・インコーポレイテッド (448)
【氏名又は名称原語表記】BAXTER INTERNATIONAL INCORP0RATED
【出願人】(501453189)バクスター・ヘルスケヤー・ソシエテ・アノニム (289)
【氏名又は名称原語表記】BAXTER HEALTHCARE S.A.
【Fターム(参考)】