説明

尿素含有肥料における固化を抑制するための組成物及び方法

処理された尿素含有肥料における固化を有効に排除するのに足る水準まで、肥料中に形成される結晶の結晶アスペクト比を減少させることによって、肥料における固化または塊状化を抑制するための組成物及び方法が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概括的に述べると、肥料における固化または塊状化を抑制するための組成物及び方法、もっと詳細に述べると、時間の経過に伴う肥料中の尿素の結晶成長を緩和させることによって尿素含有肥料における固化または塊状化を抑制するための組成物及び方法、に関する。
【背景技術】
【0002】
尿素含有肥料組成物は何年間も知られ且つ使用されてきた。特に尿素−ホルムアルデヒド肥料は高水準の窒素可用性を提供し、このことは芝生の成長及び色を維持するのに必要である。これらの目標を達成している有用で且つ有効な尿素−ホルムアルデヒド肥料の実例とそれらの調製方法とが、VictorA.Rennerに対して発行された米国特許第3,076,700号及び第3,231,363号に開示されている。尿素−ホルムアルデヒド肥料とそれらの調製方法及び施用方法とにおける改良が、LouisI.Hansonに対して発行された米国特許第3,223,518号と、HarveyMauriceGoertzに対して発行された米国特許第4,025,329号と、HarveyMauriceGoertz他に対して発行された米国特許第6,039,781号と、WilliamGallant他に対して発行された米国特許第5,102,440号との様な特許中に教示されている。
【特許文献1】米国特許第3,076,700号明細書
【特許文献2】米国特許第3,231,363号明細書
【特許文献3】米国特許第3,223,518号明細書
【特許文献4】米国特許第4,025,329号明細書
【特許文献5】米国特許第6,039,781号明細書
【特許文献6】米国特許第5,102,440号明細書
【0003】
上記の特許中に開示されている尿素−ホルムアルデヒド肥料によって例証されている様に一般に尿素−ホルムアルデヒド肥料は非常に有用であることが知られているが、尿素−ホルムアルデヒド肥料の様な固体で顆粒状の尿素含有肥料には保管中の様に時間の経過に伴って固化または塊状化する傾向があり、このことがその結果の固化または塊状化された肥料生成物を撒くこと及び/または散布することに問題を生じさせる、ということが知られている。
【0004】
吸湿性の肥料、特に顆粒状の尿素含有肥料、は結晶を発達させ、詳細に述べると、典型的な保管状態で吸湿性の肥料が古くなるに連れて結晶が架橋する、ということが知られている。尿素結晶の成長と結晶架橋の形成とが、尿素含有肥料の望ましくない固化及び/または塊状化を生じさせる主な要因である。これらの問題を解決する試みでは、固化抑制剤と結晶緩和剤とが今まで提案されてきた。しかし、その様な以前に提案された薬品は、尿素含有肥料における固化/塊状化問題を十分には解決しなかった。
【0005】
例えば、公知の固化抑制剤は、通常は肥料粒子の表面に施され、非効率的な塗布技術のために、部分的にしか塗布されていない顆粒を生じて、顆粒の固化を有効には減少させなかった。更に、時間の経過に伴って、表面に施されたその様な塗布がその顆粒から離脱する可能性があり、そのためにその処理が有効性を徐々に失う。
【0006】
従って、尿素含有肥料における結晶成長は、時間の経過に伴ってその様な肥料の固化を生じさせる主な要因であることが知られている。例えば、比較的純粋な溶液から成長させられると、50:1を超えることがある幅に対する長さの比率(『結晶アスペクト比』)を有する長い針に尿素が結晶化する。これらの高い結晶アスペクト比が肥料、特にメチレン尿素肥料、の典型的な保管中における硬い固化の発達にかなり寄与している、と思われる。
【0007】
更に、メチレン尿素高分子鎖を含む溶液から成長させられても、保管中における硬い固化の発達に寄与する長い針へ尿素が結晶化する。例えば、メチレン尿素高分子濃度が全樹脂窒素分布の約45%に接近すると、高分子鎖は尿素アスペクト比を多少減じる可能性があり、その結果、メチレン尿素高分子と混合されている尿素を含んでいる混合物中において相当な肥料固化を発達させるのに足るほどに高いことが知られている約30:1のやや低い結晶アスペクト比を観察することができる。
【0008】
肥料粒子の表面からのその様な長い結晶針の外方への成長が、他の粒子の外方へ成長している結晶針と結合することを可能にし、このことが固化効果または塊状化効果を生じさせている、と思われる。例えば、上記の結晶アスペクト比を達成する尿素結晶の能力がその尿素粒子を他の粒子と結合させ、このことがこれらの粒子を時間の経過に伴ってコンクリートの様な塊へ互いに固着させる。
【0009】
ビウレットを尿素と混合することができ、これによってその結晶成長傾向の分子レベルでの緩和を生じさせる、ということが提案された。ビウレット処理された尿素結晶には多くの小さなアスペクト比がある。しかし、顆粒の固化を十分に減少させるための結晶成長の緩和に必要とされる濃度では、ビウレットは、多くの芝生にとって植物毒性であり、従って尿素含有肥料の処理に有用であるとは考えることができなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、尿素含有肥料における固化を抑制するのに有用な濃度において多くの芝生にとって植物毒性ではない、その様な固化を抑制するための組成物を提供することが、本発明の目的である。
【0011】
本発明の別の目的は、尿素含有肥料における結晶の形成を緩和させる、その肥料における固化を抑制するための組成物を、提供することである。
【0012】
本発明の更に別の目的は、尿素含有肥料における固化を抑制するための組成物の調製のための方法を、提供することである。
【0013】
本発明の更に別の目的は、尿素含有肥料における固化を抑制する方法を、提供することである。
【0014】
詳細に述べると、尿素含有肥料における固化を抑制するための組成物であって、処理された上記肥料における固化を有効に排除するのに足るほどに、上記肥料中に形成される結晶の結晶アスペクト比が減らされる水準まで、上記尿素含有肥料における結晶の形成を緩和させるのに足る量で、少なくとも一つの化合物を前記組成物が含んでいる、組成物を提供することが、本発明の目的である。
【0015】
もっと詳細に述べると、尿素含有肥料における固化を抑制するための組成物であって、第四級アンモニウム化合物、第四級アンモニウム化合物の塩、カルボン酸塩系デンドリマー、ポリオール、及びこれらの混合物から成る群から選択される少なくとも一つの化合物を含む水性製剤を含んでおり、上記組成物で処理された尿素含有肥料における固化を有効に排除するのに足るほどに、上記肥料中に形成される結晶の結晶アスペクト比が減らされる水準まで、上記処理された肥料における結晶の形成を緩和させるのに足る量で、上記少なくとも一つの化合物が上記組成物中に存在している、組成物を提供することが、本発明の目的である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明によると、尿素含有肥料における固化を抑制するための組成物が提供され、処理された上記肥料における固化を有効に排除するのに足るほどに、上記肥料中に形成される結晶の結晶アスペクト比が減らされる水準まで、上記尿素含有肥料における結晶の形成を緩和させるのに足る量で、少なくとも一つの化合物を前記組成物が含んでいる。これらの化合物は以下において時々結晶成長緩和剤と呼ばれる。
【0017】
上述の組成物中における上記少なくとも一つの結晶成長緩和剤化合物は、第四級アンモニウム化合物、第四級アンモニウム化合物の塩、カルボン酸塩系デンドリマー、ポリオール、及びこれらの混合物から成る群から選択される。好ましい第四級アンモニウム化合物及びそれらの塩は、牛脂アルキルトリメチルアンモニウム及び牛脂アルキルトリメチル塩化アンモニウムである。特に好ましい牛脂アルキルトリメチル塩化アンモニウムは、米国イリノイ州シカゴのAkzoNobelSurfactantsによって市販されており73%の水を含んでいる、Arquad(登録商標)T−27Wとして入手可能である。好ましいカルボン酸塩系デンドリマーは、米国カリフォルニア州ヴィスタのProfessionalWaterTechnologies,Inc.によって市販されており60%の水を含んでいる、SpectraGuard(登録商標)SCとして入手可能なポリカルボン酸塩デンドリマーである。好ましいポリオールは、総て米国デラウェア州ニューカッスルのSPI Polyolsによって市販されている、Hystar(登録商標)3375(25%の水、15%のソルビトール、最少20%のマルチトール)、Malltisweet(登録商標)3145(約25.0%の水、約5%のソルビトール、約65%のマルチトール)、及びSORB(登録商標)(28.5〜31.5%の水、64%以上のD−ソルビトール)である。マルチトールは4−O−α−グルコピラノシル−D−ソルビトールとしても知られている。
【0018】
時間の経過に伴う尿素含有肥料における尿素の結晶成長の抑制と固化の抑制とを達成するために、任意の尿素含有肥料を本発明の結晶成長緩和剤化合物で処理することができると思われるが、例えば、総てが異なる肥料と異なる農業組成物とを含んでいてもよい、米国特許第3,076,700号中に記載されており顆粒状担体を用いている尿素−ホルムアルデヒド肥料と、米国特許第3,231,363号及び米国特許第5,102,440号中に記載されている自己支持構造の尿素−ホルムアルデヒド肥料との様な、顆粒形状の尿素−ホルムアルデヒド肥料が、本発明の組成物に対して特に有用である。
【0019】
米国特許第5,102,440号中に記載されている様に、2.4〜13.3までの範囲に亙るホルムアルデヒドに対する尿素の比率を有する尿素−ホルムアルデヒド樹脂組成物を、細かく分割されている固体材料上に噴霧し、且つ、その樹脂組成物を凝固させて固体の微粒状原料が内部に閉ざされているマトリックスを提供するためにその結果の噴霧された生成物を冷却することによって、無担体顆粒状徐放性肥料を調製することができる。
【0020】
本発明の好ましい実施形態では、メチレン尿素樹脂の約2.0重量%から約3.0重量%の量で結晶成長緩和剤を含むことによって、メチレン尿素肥料中での固化がかなり減少する。この濃度は、より長いメチレン尿素高分子鎖との相互作用のために、純粋な尿素系肥料中での使用のために必要であって0.5重量%程度に低くてもよい濃度よりかはいくらか高い。結晶成長緩和剤のこのより高い濃度が尿素結晶の成長に十分に影響するので、尿素結晶の測定されるアスペクト比が最高で約6:1〜15:1の範囲に亙る。結晶アスペクト比の成長速度が減じられると、結晶寸法及び相対強度が十分に減少する。更に、各々の結晶のより短い全長のために、結晶が互いに結合する能力が最小化される。時間の経過に伴って発生することがある結晶架橋の量を、これらの物理的特性が相乗的に制限する。成長しつつある結晶は粒子間空隙を埋めると共に高い引張強度の物理的結合を形成するので、架橋現象が粒子を互いに付着させる。結晶架橋は、肥料が保管中に古くなるに連れて固化または塊状化の発達に寄与する最も重要な物理現象の一つである。これらの重要な要因が組合せで削減されると、最終的には実験対照と比較して50%〜85%も肥料固化が劇的に減少する。
【0021】
以下の具体的な実施例は、本発明の幾つかの形態を更に例証し且つ説明するために示されている。しかし、これらの実施例は、例証のためにのみ記載されているのであって、本発明を限定していると解釈されるべきではない。以下の実施例中では、別に指定されない限り、総ての百分率及び割合は重量を単位にしている。
【0022】
以下の実施例1〜5中に示されている様に、尿素含有肥料の処理に用いられている結晶成長緩和剤化合物の水溶液の総ての濃度は、(第四級アンモニウム化合物、第四級アンモニウム化合物の塩、カルボン酸塩系デンドリマー、及びポリオール等の重量の様な)用いられている結晶成長緩和剤化合物の重量を含む全製剤の重量と、水性製剤中における水及び尿素溶液の重量を含む処理される尿素含有溶液の重量とで、表されている。
【実施例1】
【0023】
この実施例によると、等しい割合の水と固体粒状尿素とを大きなビーカー中で混合することによって、400グラムの飽和尿素「備蓄」溶液が調製された。この50:50混合物は、その後、尿素粒子の完全な溶解を確実にするために攪拌されながら、150〜160°Fの温度に加熱及び維持された。総ての尿素が溶解されてしまうと、加熱された飽和尿素「備蓄」溶液のうちの25グラムの部分が、個々の小さなビーカーに装填されて150〜160°Fに維持された。
【0024】
別のビーカー中で、米国イリノイ州シカゴのAkzoNobelSurfactantsによってArquad(登録商標)T−27Wという商標で市販されている、第四級塩化アンモニウム塩化合物(牛脂アルキルトリメチル塩化アンモニウム)と73%の水とを含む50グラムの溶液が、160〜170°Fの温度まで加熱され、この加熱された第四級アンモニウム塩化合物溶液の分別画分が、下記の表1中に示されている重量百分率と一致する濃度で加熱「備蓄」溶液の個々の25グラム部分に添加され、水性製剤Aの試料を形成するために、150〜160°Fの溶液温度を維持しつつ、これらの添加組合せの各々が均一に混合された。
【0025】
Arquad(登録商標)T−27W第四級塩化アンモニウム塩化合物と飽和尿素「備蓄」溶液とを含む水性製剤Aの試料が均一に混合されてしまうと、表1中に示されている各々の濃度であるこれらの試料混合物の各1.5グラムが、20mmの全直径と5mmの縁高さとを有する蒸発小皿内に置かれた。
【0026】
その後、各々の蒸発小皿が、120°Fで相対湿度60%の湿度室セット内に6時間置かれ、次に周囲温度の真空乾燥機内に18時間置かれた。水を蒸発させて尿素結晶成長の速度を加速させるために、これらの蒸発小皿がこの高温と低温との周期に7日間曝された。7日の周期期間に続いて、これらの蒸発小皿は周囲温度で3週間を経過させられた。この経過期間の後には、各々の試料には水が比較的なく、尿素結晶が肉眼で見えた。
【0027】
しかし、これらの結晶の完全な特徴付けのためには、結晶成長傾向が変更されたか否かを判定するためにより高い解像度の走査型電子顕微鏡技術が必要であった。この点に関しては、試験された水性製剤Aの試料中で尿素溶液中に形成された結晶の結晶アスペクト比が、顕微鏡写真画像を得るための走査型電子顕微鏡を使用することによって決定された。結晶の長さ及び幅が測定され、水性製剤A中の第四級塩化アンモニウム塩の各濃度においてアスペクト比が計算された。収集されたデータの統計的有意性を保証するために、少なくとも250個の結晶が顕微鏡写真画像で描写された。この試験の結果が下記の表1中に示されている。
【0028】
【表1】

【0029】
濃縮尿素溶液(つまり、肥料組成物)における固化を有効に抑制する水準までその尿素溶液における尿素結晶のアスペクト比を減少させるのに有効な第四級アンモニウム塩の濃度は、表1中に作表されている結果によって示されている様に、全組成物の約0.5重量%から少なくとも約1.0重量%の範囲内にあることが分かった。その様な量の第四級アンモニウム塩を用いれば、肥料における結晶のアスペクト比が、(肥料試料が100%の尿素を含む対照中における)約50の水準から尿素肥料試料が第四級アンモニウム塩で処理されている場合の約5〜約15の水準へ減らされた、ということが分かった。
【実施例2】
【0030】
この実施例中では、水性製剤Bは、ポリカルボン酸塩デンドリマー化合物と60%の水とを含んでおり米国カリフォルニア州ヴィスタのProfessionalWaterTechnologies,Inc.によってSpectraGuard(登録商標)SCという商標で市販されている溶液である。このSpectraGuard(登録商標)SC溶液が、実施例1中に記載されている手順を用いて、表2中に表示されている百分率で、実施例1の飽和尿素「備蓄」溶液に添加された。結晶アスペクト比が実施例1中と同様に測定され、表2中に示されている結果になった。
【0031】
【表2】

【0032】
表2中のアスペクト比測定によって表示されている様に、濃縮尿素溶液(つまり、肥料組成物)における固化を有効に抑制する水準までその尿素溶液における尿素結晶のアスペクト比を減少させるのに有効なポリカルボン酸塩デンドリマーの濃度は、全組成物の約0.75重量%から少なくとも約3.0重量%の範囲内にあることが分かった。
【0033】
従って、全組成物の約0.75重量%から少なくとも約3.0重量%の範囲内にある量のポリカルボン酸塩デンドリマーを用いれば、肥料中の結晶のアスペクト比が、(肥料試料が100%の尿素を含む対照中における)約50の水準から尿素肥料試料がポリカルボン酸塩デンドリマー化合物で処理されている場合の約5〜約15の水準へ減少する、ということが分かった。
【実施例3】
【0034】
この実施例中では、水性製剤Cは、米国デラウェア州ニューカッスルのSPI PolyolsによってHystar(登録商標)3375という商標で市販されているポリオール化合物を含む溶液である。25%の水と15%のソルビトールと少なくとも20%のマルチトールとを含む製剤Cが、実施例1中に記載されている手順を用いて、表3中に表示されている百分率で、実施例1の飽和尿素「備蓄」溶液に添加された。結晶アスペクト比が実施例1中と同様に測定され、表3中に示されている結果になった。
【0035】
【表3】

【0036】
表3中のアスペクト比測定によって表示されている様に、濃縮尿素溶液(つまり、肥料組成物)における固化を有効に抑制する水準までその尿素溶液における尿素結晶のアスペクト比を減少させるのに有効なポリオールの濃度は、全組成物の約0.75重量%から少なくとも約3.0重量%の範囲内にあることが分かった。その様な量のポリオールを用いれば、肥料における結晶のアスペクト比が、(肥料試料が100%の尿素を含む対照中における)約50の水準から尿素肥料試料がポリオール化合物で処理されている場合の約5〜約15の水準へ減らされている、ということが分かった。
【実施例4】
【0037】
この実施例中では、水性製剤Dは、米国デラウェア州ニューカッスルのSPI PolyolsによってMalltisweet(登録商標)3145という商標で市販されているポリオール化合物を含む溶液である。約25.0%の水と約5%のソルビトールと約65%のマルチトールとを含む製剤Dが、実施例1中に記載されている手順を用いて、表4中に表示されている百分率で、実施例1の飽和尿素「備蓄」溶液に添加された。結晶アスペクト比が実施例1中と同様に測定され、表4中に示されている結果になった。
【0038】
【表4】

【0039】
表4中のアスペクト比測定によって表示されている様に、濃縮尿素溶液(つまり、肥料組成物)における固化を有効に抑制する水準までその尿素溶液における尿素結晶のアスペクト比を減少させるのに有効なポリオールの濃度は、全組成物の約0.75重量%から少なくとも約3.0重量%の範囲内にあることが分かった。その様な量のポリオールを用いれば、肥料における結晶のアスペクト比が、(肥料試料が100%の尿素を含む対照中における)約50の水準からメチレン尿素肥料試料がポリオール化合物で処理されている場合の約5〜約15の水準へ減らされている、ということが分かった。
【実施例5】
【0040】
この実施例中では、水性製剤Eは、米国デラウェア州ニューカッスルのSPI PolyolsによってSORBO(登録商標)という商標で市販されているポリオール化合物を含む溶液である。28.5〜31.5%の水と64%以上のD−ソルビトールとを含む製剤Eが、実施例1中に記載されている手順を用いて、表5中に表示されている百分率で、実施例1の飽和尿素「備蓄」溶液に添加された。結晶アスペクト比が実施例1中と同様に測定され、表5中に示されている結果になった。
【0041】
【表5】

【0042】
表5中のアスペクト比測定によって表示されている様に、濃縮尿素溶液(つまり、肥料組成物)における固化を有効に抑制する水準までその尿素溶液における尿素結晶のアスペクト比を減少させるのに有効なポリオールの濃度は、全組成物の約1.0重量%から少なくとも約3.0重量%の範囲内にあることが分かった。その様な量のポリオールを用いれば、肥料における結晶のアスペクト比が、(肥料試料が100%の尿素を含む対照中における)約50の水準から尿素肥料試料がポリオール化合物で処理されている場合の約5〜約15の水準へ減らされている、ということが分かった。
【0043】
ここに示されている以下の実施例6〜9に関しては、尿素結晶成長緩和の水準を決定するために試験される水溶液の各々における少なくとも一つの結晶成長緩和剤化合物が、低い粘性を首尾一貫して維持するために(つまり、その化合物が液体状態にあることを確実にするために)、170〜180°Fに加熱され、各々が溶融メチレン尿素樹脂に添加され、溶融状態のこの樹脂は265〜285°Fの温度の範囲に亙っていた。各々の混合物は、成分の均一な分布を達成するために攪拌され、少なくとも一つの結晶成長緩和剤化合物を含む水溶液から余分な水を除去するために通気された。
【実施例6】
【0044】
この実施例中では、55%の未反応尿素画分と30%のメチレン二尿素及びジメチレン三尿素画分と4%の冷水不溶性窒素画分と11%のその他の水溶性メチレン尿素画分とを含む最終窒素分布を有する樹脂を生じる4:1のモル比を有する、尿素−ホルムアルデヒド樹脂を含む反応混合物が調製された。
【0045】
この反応混合物は、この混合物中のホルムアルデヒドの本質的には総てが完全に反応して溶融しているつまり液体の尿素−ホルムアルデヒド樹脂が形成されるまで、250〜275°Fの温度まで加熱された。その後、Hystar3375つまり上記実施例3で製剤C中に用いられているポリオールを含む溶液が、下記表6中に表示されている百分率及び160〜170°Fの温度範囲で、その溶融尿素−ホルムアルデヒドメチレン尿素樹脂反応混合物に添加された。
【0046】
その後、表示されている濃度のポリオール(Hystar3375)と尿素−ホルムアルデヒド樹脂とを含む混合物が、硫酸アンモニウム、硫酸カリウム及び燐酸一アンモニウムを含んでいる、細かく分割されている小さな固体原料粒子上に噴霧され、尿素−ホルムアルデヒド樹脂によって形成されるマトリックス中で固体粒子を塊状化させるためのバインダーとして尿素−ホルムアルデヒド樹脂が機能して、直径の平均寸法が1.4mmである顆粒状生成物を生成した。
【0047】
その結果の生成物は、約85°Fの温度まで冷却されて、窒素徐放特性を示す固い顆粒状無担体生成物に凝固した。この実施例6では、最終肥料NPK分析は28−2−3であったが、所望であればその他の肥料養物分析を利用できたことが留意されるべきである。
【0048】
凝固された無担体生成物の形成に続いて、如何なる追加の溶剤も担体も使用することなく、2,4−D及びMCPP−pを含む有効成分溶液が250〜265°Fの範囲に亙る温度で肥料顆粒の表面に塗布されて、1.22%の2,4−D及び0.61%のMCPP−pの濃度を有する生成物を生成した。その後、顆粒上に有効成分塗布を有するその結果の完成組合せ生成物が周囲温度の倉庫内で約3カ月間を経過させられ、実施例1中と同じ手順を用いてそれらの生成物の結晶アスペクト比が測定されて、表6中に示されている結果になった。
【0049】
【表6】

【0050】
表6中のアスペクト比測定によって表示されている様に、固化を有効に抑制する水準までメチレン尿素肥料における尿素結晶のアスペクト比を減少させるのに有効なポリオールつまりHystar3375の濃度は、全組成物の約2.0重量%から少なくとも約3.0重量%の範囲内にあることが分かった。その様な量のポリオールを用いれば、メチレン尿素肥料における結晶のアスペクト比が、その肥料が対照として100%のメチレン尿素樹脂である(つまり、ポリオールを含まない)場合における約30の水準からその肥料が約2.0〜約3.0重量%のポリオールを含む場合の約7〜約15の水準へ減らされている、ということが分かった。
【実施例7】
【0051】
この実施例中では、実施例6中に記載されている手順を用いて完成メチレン尿素系組合せ肥料生成物を調製することによって、完成メチレン尿素系肥料生成物における固化の減少が評価された。完成組合せ肥料生成物は下記表7中に表示されている濃度でポリオールつまりHystar3375を含んでおり、肥料顆粒の表面に塗布されている有効成分溶液は実施例6中に記載されている様な2,4−D及びMCPP−pを含んでいた。この様にして調製された結果の完成組合せ生成物は、各々約15ポンド(6.8キログラム)の重さのビニール袋内で倉庫に保管された。
【0052】
フロリダ州にあるその倉庫は温度制御も湿度制御もされておらず、試験期間中は総ての材料が周囲状態に曝された。完成組合せ肥料生成物を含むそれらの袋は、パレット上に置かれて3カ月間約2400〜3600ポンド(1100〜1600キログラム)の荷重を受けて積み重ねられた。
【0053】
これらの状態の保管に続いて、各濃度の約四十個の袋が評価され、典型的な取扱い段階をシミュレートするために各袋を一回落下させた後に塊の重量百分率が測定された。表7中に作表されている結果は、生成物中のポリオールの濃度が3重量%へ増加するに連れて、重量%塊の表現で測定されている様に、固化の減少を示している。
【0054】
【表7】

【0055】
更に、各濃度のポリオールを含む四十個の袋を一つのデータ母集団と考えることによって、表7中における各々のデータ点平均の統計的有意性が決定され、各々の母集団の平均がその様な各濃度について表7中に示されている。
【0056】
その後、95%の信頼区間が各々の母集団の平均について計算された。次に、95%の信頼区間の全範囲が、表7中に作表にされている結果における数字の平均値に続く文字表示を割り当てられた(例えば、ポリオールの0%濃度は文字「a」を割り当てられた)。各々の試料平均の95%の信頼区間の全範囲が各々の別の母集団と比較され、もしその信頼区間が重畳していなければ、それらの平均値と各々の母集団とは、統計的に異なると考えられて、表7中に示されている様に一意的な文字表示b、c、dを割り当てられた。この統計分析の結果は、ポリオール濃度の各々の増加している百分率によって表示されている固化減少が有意である、ということを示した。
【実施例8】
【0057】
この実施例中では、第四級塩化アンモニウム化合物を含む溶液が、表6中の手順に従って、下記表8中に表示されている百分率で、160〜170°Fの温度範囲で、溶融尿素−ホルムアルデヒドメチレン尿素樹脂反応混合物に添加された。具体的に述べると、第四級塩化アンモニウム化合物は、上述の様にArquadT−27Wという商標で市販されている牛脂アルキルトリメチル塩化アンモニウムであった。樹脂中の尿素対ホルムアルデヒドのモル比率は、55%の未反応尿素画分と30%のメチレン二尿素及びジメチレン三尿素画分と4%の冷水不溶性窒素画分と11%のその他の水溶性メチレン尿素画分とを含む最終窒素分布を有する樹脂を生じる4:1であった。その後、顆粒状になって米国特許第6,039,781号中に記載されている型の完成肥料を調製するために、この樹脂が利用された。
【0058】
その後、完成組合せ生成物を形成するために、2,4−D及びMCPP−pを含む除草剤溶液等の様な有効成分が完成肥料の表面に塗布された。これらの生成物は約3カ月間を経過させられ、実施例1中と同じ手順を用いて結晶アスペクト比が測定され、表8中に示されている結果になった。
【0059】
【表8】

【0060】
表8中のアスペクト比測定によって表示されている様に、固化を有効に抑制する水準までメチレン尿素肥料における尿素結晶のアスペクト比を減少させるのに有効な第四級塩化アンモニウム(ArquadT−27W)の濃度は、全組成物の約3.0重量%であることが分かった。その様な量の第四級塩化アンモニウムを用いれば、メチレン尿素肥料における結晶のアスペクト比が、その肥料が対照として100%のメチレン尿素樹脂である(つまり、第四級塩化アンモニウムを含まない)場合における約30の水準からその肥料が約3.0重量%の第四級塩化アンモニウムを含む場合の約7の水準へ減らされている、ということが分かった。
【実施例9】
【0061】
この実施例中では、実施例6中に記載されている手順を用いて完成メチレン尿素系組合せ肥料生成物を調製することによって、完成メチレン尿素系肥料生成物における固化の減少が評価された。完成組合せ生成物は下記表9中に表示されている濃度で第四級塩化アンモニウムつまりArquadT−27Wを含んでおり、肥料顆粒の表面に塗布されている有効成分除草剤溶液は実施例8中に記載されている様な2,4−D及びMCPP−pを含んでいた。この様にして調製された結果の完成組合せ生成物は、各々約15ポンド(6.8キログラム)の重さのビニール袋内で倉庫に保管された。
【0062】
フロリダ州にあるその倉庫は温度制御も湿度制御もされておらず、試験期間中は総ての材料が周囲状態に曝された。完成組合せ肥料生成物を含むそれらの袋は、パレット上に置かれて3カ月間約2400〜3600ポンド(1100〜1600キログラム)の荷重を受けて積み重ねられた。
【0063】
これらの状態の保管に続いて、各濃度の約四十個の袋が評価され、典型的な取扱い段階をシミュレートするために各袋を一回落下させた後に塊の重量百分率が測定された。表9中に作表されている結果は、生成物中の第四級塩化アンモニウムの濃度が3重量%へ増加するに連れて、重量%塊の表現で測定されている様に、固化の減少を示している。
【0064】
【表9】

【0065】
更に、各濃度の第四級アンモニウム塩を含む四十個の袋を一つのデータ母集団と考えることによって、表9中における各々のデータ点平均の統計的有意性が決定され、各々の母集団の平均がその様な各濃度について表9中に示されている。その後、95%の信頼区間が各々の母集団の平均について計算された。次に、95%の信頼区間の全範囲が、表9中に作表にされている結果における数字の平均値に続く文字表示を割り当てられた(例えば、第四級アンモニウム塩の0%濃度は文字「a」を割り当てられた)。各々の試料平均の95%の信頼区間の全範囲が各々の別の母集団と比較され、もしその信頼区間が重畳していなければ、それらの平均値と各々の母集団とは、統計的に異なると考えられて、表9中に示されている様に一意的な文字表示bを割り当てられた。この統計分析の結果は、第四級アンモニウム塩濃度の増加された百分率によって表示されている固化減少が有意である、ということを示した。
【0066】
上記に作表されている結果から、第四級アンモニウム化合物、第四級アンモニウム化合物の塩、カルボン酸塩系デンドリマー、ポリオール、及びこれらの混合物から成る群から選択される少なくとも一つの化合物の濃度であって、もう少しで50かまたはそれを超える範囲から、尿素溶液及び/または尿素系肥料生成物における固化を有効に抑制する(例えば、約5:1〜約15:1の範囲内の)水準まで、尿素結晶の成長による尿素含有肥料の固化が有効に排除される様にその尿素含有肥料における尿素結晶の結晶アスペクト比を減少させるのに足る濃度は、容易に確認可能である、ということが明らかである。
【0067】
ある度の具体性を有する好ましい形態で本発明が説明されたが、この開示が実施例としてのみなされたことが理解されるべきである。添付の特許請求の範囲中に明示されている様に、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく上記の開示における組成物及び成分と調製方法及び使用方法との細部における多くの変更が明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
尿素含有肥料における固化を抑制するための組成物であって、
第四級アンモニウム化合物、第四級アンモニウム化合物の塩、カルボン酸塩系デンドリマー、ポリオール、及びこれらの混合物から成る群から選択される少なくとも一つの化合物を含む水性製剤を含んでおり、
前記組成物で処理された尿素含有肥料における固化を有効に排除するのに足るほどに、前記肥料中に形成される結晶の結晶アスペクト比が減らされる水準まで、前記処理された肥料における前記結晶の形成を緩和させるのに足る量で、前記少なくとも一つの化合物が前記組成物中に存在している、
組成物。
【請求項2】
前記組成物で処理された前記尿素含有肥料中に形成される前記結晶の前記結晶アスペクト比が約5〜約15の範囲内の水準へ減らされる、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記組成物の約0.5重量%〜約3.0重量%の量で、前記少なくとも一つの化合物が前記組成物中に存在している、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記少なくとも一つの化合物が牛脂アルキルトリメチルアンモニウムである、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記少なくとも一つの化合物が牛脂アルキルトリメチル塩化アンモニウムである、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記少なくとも一つの化合物がジ(水素化牛脂アルキル)ジメチル塩化アンモニウムである、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記少なくとも一つの化合物がポリカルボン酸塩デンドリマーである、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記少なくとも一つの化合物がポリオール製剤含有マルチトールとして含まれている、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記少なくとも一つの化合物がD−ソルビトールである、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記尿素含有肥料が尿素−ホルムアルデヒド肥料である、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
尿素含有肥料における固化を抑制するための方法であって、
尿素含有肥料における固化を有効に排除するのに足るほどに、前記肥料中に形成される結晶の結晶アスペクト比が減らされる水準まで、前記尿素含有肥料における結晶の形成を緩和させるのに足る量で、第四級アンモニウム化合物、第四級アンモニウム化合物の塩、カルボン酸塩系デンドリマー、ポリオール、及びこれらの混合物から成る群から選択される少なくとも一つの化合物を含む水性製剤を前記尿素含有肥料に施すこと、を具備する方法。
【請求項12】
前記尿素含有肥料中に形成される前記結晶の前記結晶アスペクト比が約5〜約15の範囲内の水準へ減らされる、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記尿素含有肥料の約0.5重量%〜約3.0重量%の量で、前記少なくとも一つの化合物が前記水性製剤中に存在している、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記少なくとも一つの化合物が牛脂アルキルトリメチル塩化アンモニウムである、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記少なくとも一つの化合物がジ(水素化牛脂アルキル)ジメチル塩化アンモニウムである、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記少なくとも一つの化合物がポリカルボン酸塩デンドリマーである、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
前記水性製剤中に含まれている前記少なくとも一つの化合物がポリオール製剤含有マルチトールである、請求項11に記載の方法。
【請求項18】
前記少なくとも一つの化合物がD−ソルビトールである、請求項11に記載の方法。
【請求項19】
前記尿素含有肥料が尿素−ホルムアルデヒド肥料である、請求項11に記載の方法。

【公表番号】特表2009−545507(P2009−545507A)
【公表日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−513216(P2009−513216)
【出願日】平成19年5月29日(2007.5.29)
【国際出願番号】PCT/US2007/012549
【国際公開番号】WO2007/142896
【国際公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【出願人】(503403135)オーエムエス・インヴェストメンツ・インコーポレイティッド (4)
【Fターム(参考)】