説明

局側装置および通信制御方法

【課題】宅側装置がスリープ動作を行ない、かつスリープ期間の満了前にスリープ状態から復帰することが可能な通信システムにおいて、宅側装置から局側装置への通信回線における帯域の使用効率を向上させる。
【解決手段】局側装置101は、宅側装置202から局側装置101へ通信信号を送信するための通信回線OPTFにおける帯域の割り当て要求を受けて、上記割り当て要求に基づいて、通信回線OPTFにおける帯域を宅側装置202に割り当てるための帯域割り当て部36と、各宅側装置202を複数のグループに分類するための分類部36とを備える。帯域割り当て部36は、スリープ状態の宅側装置202に対して、通信信号を送信するための帯域を割り当て、通常状態と比べて宅側装置202ごとの上記帯域の割り当て間隔を長くし、かつ上記グループ間で上記帯域の割り当てタイミングを分散させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、局側装置および通信制御方法に関し、特に、省電力機能を提供する局側装置および通信制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インターネットが広く普及しており、利用者は世界各地で運営されているサイトの様々な情報にアクセスし、その情報を入手することが可能である。これに伴って、ADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line)およびFTTH(Fiber To The Home)等のブロードバンドアクセスが可能な装置も急速に普及してきている。
【0003】
IEEE Std 802.3ah(登録商標)−2004(非特許文献1)には、複数の宅側装置(ONU:Optical Network Unit)が光通信回線を共有して局側装置(OLT:Optical Line Terminal)とのデータ伝送を行なう媒体共有形通信である受動的光ネットワーク(PON:Passive Optical Network)の1つの方式が開示されている。すなわち、PONを通過するユーザ情報およびPONを管理運用するための制御情報を含め、すべての情報がイーサネット(登録商標)フレームの形式で通信されるEPON(Ethernet(登録商標) PON)と、EPONのアクセス制御プロトコル(MPCP(Multi-Point Control Protocol))およびOAM(Operations Administration and Maintenance)プロトコルとが規定されている。局側装置と宅側装置との間でMPCPフレームをやりとりすることによって、宅側装置の加入、離脱、および上りアクセス多重制御などが行なわれる。また、非特許文献1では、MPCPメッセージによる、新規宅側装置の登録方法、帯域割り当て要求を示すレポート、および送信指示を示すゲートについて記載されている。
【0004】
なお、1ギガビット/秒の通信速度を実現するEPONであるGE−PONの次世代の技術として、IEEE802.3av(登録商標)−2009として標準化が行なわれた10G−EPONすなわち通信速度が10ギガビット/秒相当のEPONにおいても、アクセス制御プロトコルはMPCPが前提となっている。
【0005】
PONの省電力化を図るための機能として、ONUが通信を行っていない場合に不要となる機能について、当該機能を実行するためのCPU(Central Processing Unit)、LSI(Large Scale Integration)または送受信器等への電力供給を停止するスリープ機能が提案されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】IEEE Std 802.3ah(登録商標)-2004
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような省電力機能の一例として、以下のようなONUのスリープ動作が考えられる。すなわち、ONUは、局側装置からの下りフレームの受信動作および局側装置への上りフレームの送信動作を行なう通常状態から、上記受信動作および上記送信動作の少なくとも一方を停止するスリープ状態へ遷移し、スリープ状態を継続するスリープ期間の満了後にスリープ状態から通常状態へ復帰する。
【0008】
さらに、スリープ期間中の上りトラフィックの発生に対処するために、スリープ期間において上りトラフィックが発生すると、ONUがスリープ期間の満了前にスリープ状態から復帰して起床通知を送信する、という早期起床動作も考えられる。
【0009】
ONUがこのような早期起床動作を含むスリープ動作を行なう場合には、局側装置は、起床通知を送信するための光通信回線の帯域をスリープ状態のONUに対して割り当て続ける必要がある。このため、いつ起床するか分からず、次の起床期間まで起床しない場合もあるONUに対して帯域を割り当て続けることになり、光通信回線の帯域が無駄に消費され、PONシステムにおける他のONUに対して割り当て可能な帯域が減少してしまう。
【0010】
この発明は、上述の課題を解決するためになされたもので、その目的は、宅側装置がスリープ動作を行ない、かつスリープ期間の満了前にスリープ状態から復帰することが可能な通信システムにおいて、宅側装置から局側装置への通信回線における帯域の使用効率を向上させることが可能な局側装置および通信制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、この発明のある局面に係わる局側装置は、1または複数の宅側装置と共通の通信回線を介して通信信号を送受信するための局側装置であって、各上記宅側装置から上記局側装置への上記通信信号が時分割多重され、上記局側装置への上記通信信号の送信動作および上記局側装置から送信される上記通信信号の受信動作の少なくとも一方を上記宅側装置が停止するスリープ状態であって、上記スリープ状態を継続するスリープ期間において所定の条件が満たされると、上記スリープ期間の満了前に、上記送信動作および上記受信動作を行なう通常状態へ上記宅側装置が復帰しうるスリープ状態、を把握するためのスリープ状態把握部と、上記宅側装置から上記局側装置へ上記通信信号を送信するための上記通信回線における帯域の割り当て要求を受けて、上記割り当て要求に基づいて、上記通信回線における帯域を上記宅側装置に割り当てるための帯域割り当て部と、上記各宅側装置を分類して複数のグループを作成するための分類部とを備え、上記帯域割り当て部は、上記スリープ状態の上記宅側装置に対して、上記通信信号を送信するための上記帯域を割り当て、上記通常状態と比べて上記宅側装置ごとの上記帯域の割り当て間隔を長くし、かつ上記グループ間で上記帯域の割り当てタイミングを分散させる。
【0012】
このような構成により、スリープ動作中の宅側装置が存在する場合において通信回線における帯域の無駄な消費を抑制することができる。また、通常動作中の宅側装置の上りトラフィックへの影響を減らすことができる。また、局側装置における上りトラフィックの処理負荷を平準化することができる。したがって、宅側装置がスリープ動作を行ない、かつスリープ期間の満了前にスリープ状態から復帰することが可能な通信システムにおいて、宅側装置から局側装置への通信回線における帯域の使用効率を向上させることができる。
【0013】
好ましくは、上記分類部は、上記宅側装置において許容される上記帯域の割り当て間隔に基づいて、上記各宅側装置を分類して複数のグループを作成する。
【0014】
このような構成により、グループごとに帯域割り当て間隔を最適化し、通信回線における帯域の使用効率をさらに向上させることができる。
【0015】
より好ましくは、上記分類部は、上記宅側装置から上記局側装置へ送信される上記通信信号の速度、上記局側装置におけるクロックと上記宅側装置におけるクロックとの差、または上記宅側装置から上記局側装置へ送信される上記通信信号の許容遅延時間に基づいて、上記各宅側装置を分類して複数のグループを作成する。
【0016】
このような構成により、宅側装置の性能、特性またはシステム的な要求に基づいて各宅側装置を適切に分類し、通信回線における帯域の使用効率をさらに向上させることができる。
【0017】
好ましくは、上記帯域割り当て部は、さらに、上記グループに属する各上記宅側装置間で上記帯域の割り当てタイミングを分散させる。
【0018】
このように、宅側装置のグループ内でも帯域の割り当てタイミングを分散させる構成により、通常動作中の宅側装置の上りトラフィックへの影響をさらに低減し、また、局側装置における上りトラフィックの処理負荷のさらなる平準化を図ることができる。
【0019】
より好ましくは、上記帯域割り当て部は、上記宅側装置に割り当てる上記帯域を示す割り当て通知を上記宅側装置へ送信し、上記割り当て通知の送信間隔を上記グループごとに設定し、上記グループごとの上記送信間隔を上記グループに属する上記宅側装置の数で割り、割った時間ずつシフトしたタイミングで、上記グループに属する各上記宅側装置に上記帯域を順番に割り当てる。
【0020】
このような構成により、簡易な処理で宅側装置のグループ内における帯域の割り当てタイミングを適切に分散させることができる。
【0021】
上記課題を解決するために、この発明のある局面に係わる通信制御方法は、1または複数の宅側装置と共通の通信回線を介して通信信号を送受信するための局側装置における通信制御方法であって、各上記宅側装置から上記局側装置への上記通信信号が時分割多重され、上記局側装置は、上記宅側装置から上記局側装置へ上記通信信号を送信するための上記通信回線における帯域の割り当て要求を受けて、上記割り当て要求に基づいて、上記通信回線における帯域を上記宅側装置に割り当て、上記局側装置への上記通信信号の送信動作および上記局側装置から送信される上記通信信号の受信動作の少なくとも一方を上記宅側装置が停止するスリープ状態であって、上記スリープ状態を継続するスリープ期間において所定の条件が満たされると、上記スリープ期間の満了前に、上記送信動作および上記受信動作を行なう通常状態へ上記宅側装置が復帰しうるスリープ状態、を把握するステップと、上記各宅側装置を分類して複数のグループを作成するステップと、上記スリープ状態の上記宅側装置に対して、上記通信信号を送信するための上記帯域を割り当て、上記通常状態と比べて上記宅側装置ごとの上記帯域の割り当て間隔を長くし、かつ上記グループ間で上記帯域の割り当てタイミングを分散させるステップとを含む。
【0022】
このような構成により、スリープ動作中の宅側装置が存在する場合において通信回線における帯域の無駄な消費を抑制することができる。また、通常動作中の宅側装置の上りトラフィックへの影響を減らすことができる。また、局側装置における上りトラフィックの処理負荷を平準化することができる。したがって、宅側装置がスリープ動作を行ない、かつスリープ期間の満了前にスリープ状態から復帰することが可能な通信システムにおいて、宅側装置から局側装置への通信回線における帯域の使用効率を向上させることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、宅側装置がスリープ動作を行ない、かつスリープ期間の満了前にスリープ状態から復帰することが可能な通信システムにおいて、宅側装置から局側装置への通信回線における帯域の使用効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施の形態に係るPONシステムの構成を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態に係るPONシステムにおける局側装置の構成を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る宅側装置の構成を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る局側装置において作成されるゲートフレームのフォーマットの一例を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る宅側装置において作成されるレポートフレームのフォーマットの一例を示す図である。
【図6】PONシステムにおけるONUに対する帯域割り当て方法の例を示す図である。
【図7】本発明の実施の形態に係る局側装置がスリープ動作中のONUに対して帯域割り当て処理を行なう際の動作手順を示すフローチャートである。
【図8】本発明の実施の形態に係る局側装置によるスリープ動作中のONUに対する上り帯域の割り当て処理の一例を示す図である。
【図9】本発明の実施の形態に係る局側装置によるスリープ動作中のONUに対する上り帯域の割り当て処理の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0026】
[構成および基本動作]
図1は、本発明の実施の形態に係るPONシステムの構成を示す図である。
【0027】
図1を参照して、PONシステム301は、ONU202A,202B,202C,202Dと、局側装置101と、スプリッタSP1,SP2とを備える。ONU202A,202B,202Cと局側装置101とは、スプリッタSP1およびSP2ならびに光ファイバOPTFを介して接続され、互いに光信号を送受信する。ONU202Dと局側装置101とは、スプリッタSP2および光ファイバOPTFを介して接続され、互いに光信号を送受信する。PONシステム301では、ONU202A,202B,202C,202Dから局側装置101への光信号が時分割多重される。
【0028】
以下、ONUから上位ネットワークへの方向を上り方向と称し、上位ネットワークからONUへの方向を下り方向と称する。
【0029】
PONシステム301では、ONU202は、たとえば以下のような周期的スリープ動作を行なうことが可能である。すなわち、ONU202は、局側装置101へ上りフレームを送信する送信動作および局側装置101からの下りフレームを受信する受信動作を停止するスリープ状態へ遷移し、スリープ時間経過後にスリープ状態から復帰して、上記送信動作および上記受信動作を行なう。そして、ONU202は、上記送信動作および上記受信動作を行なう起床期間の満了後、再びスリープ状態へ遷移するか、またはスリープ状態へ遷移せずに起床通知を局側装置101へ送信して上記送信動作および上記受信動作を継続する。
【0030】
また、ONU202は、上記受信動作および上記送信動作を行なう起床期間の満了後に再びスリープ状態へ遷移するか否かを、上りトラフィックの有無等に基づいて判断する。
【0031】
周期的スリープ動作において、ONU202は、スリープ状態へ遷移しない場合には起床通知を局側装置101へ送信し、局側装置101は、この起床通知によってONU202がスリープ動作から通常動作へ復帰することを認識する。
【0032】
図2は、本発明の実施の形態に係るPONシステムにおける局側装置の構成を示す図である。
【0033】
図2を参照して、局側装置101は、アップリンクIF(Interface)部31と、受信処理部33と、送信処理部34と、PON送受信部35と、制御部(帯域割り当て部、分類部およびスリープ状態把握部)36と、上りフレームを蓄積するFIFO37と、下りフレームを蓄積するFIFO38とを含む。
【0034】
PON送受信部35は、共通のPON回線経由で各ONU202と光信号を送受信する。すなわち、PON送受信部35は、PON線路の親局側起点として、PON回線である光ファイバOPTFと接続される。PON送受信部35は、光ファイバOPTFを介して各ONU202と双方向通信が行なえるように、特定の波長、たとえば1310nm帯の上り光信号を受信し、電気信号に変換して受信処理部33に出力するとともに、送信処理部34から受けた電気信号を別波長の下り光信号に変換して送信する。たとえば、PON送受信部35は、送信処理部34から受けた10Gbps(ギガビット/秒)の電気信号を1570nm帯の下り光信号に変換して各ONU202へ送信し、また、送信処理部34から受けた1Gbps(ギガビット/秒)の電気信号を1490nm帯の下り光信号に変換して各ONU202へ送信する。
【0035】
受信処理部33は、PON送受信部35から受けた電気信号からフレームを再構成するとともに、フレームの種別に応じて制御部36またはFIFO37にフレームを振り分ける。具体的には、データフレームをFIFO37に出力し、制御フレームを制御部36に出力する。
【0036】
アップリンクIF部31は、FIFO37に蓄積された上りフレームを上位ネットワークへ出力する。また、アップリンクIF部31は、上位ネットワークからフレームを受けると、当該フレームが通常のデータフレームである場合にはFIFO38に出力し、当該フレームが制御フレームである場合には制御部36に出力する。
【0037】
アップリンクIF部31は、制御部36から制御フレームを受けた場合には、たとえば、FIFO37からのフレーム列の合間において、当該制御フレームをFIFO37からのフレームよりも優先して上位ネットワークへ出力する。
【0038】
送信処理部34は、FIFO38または制御部36が送信すべきフレームを有する場合、優先順位に従ってそのフレームを受け取り、PON送受信部35に出力する。
【0039】
制御部36は、MPCPおよびOAMなど、PON回線の制御および管理に関する局側処理を行なう。すなわち、PON回線に接続されている各ONU202とMPCPメッセージおよびOAMメッセージをやりとりすることによって、ONU202の登録、離脱および帯域割り当てを含めた上りアクセス制御、下りアクセス制御、ならびにONU202へのスリープ指示を含めたONU202の運用管理などを行なう。
【0040】
たとえば、制御部36は、各ONU202から受けたPON回線における上り帯域の割り当て要求に基づいて、PON回線における上り帯域を各ONU202に割り当てる。具体的には、制御部36は、ONU202から受けたPON回線における帯域の割り当て要求を示すレポートフレームに基づいて、PON回線における帯域をONU202に割り当てる、すなわちグラントを記したゲートフレームをONU202へ送信する。
【0041】
制御部36は、各ONU202からの上りフレームの到着タイミングが局側装置101において時間的に重複しないように、PON回線における上り帯域を各ONU202に割り当てる。制御部36は、ゲートフレームを用いて、ONU202に対して、上りフレームの送信開始タイミングおよび送信可能データ長を通知する。
【0042】
また、たとえば、制御部36は、各ONU202からのPON回線における上り帯域の割り当て要求の受信期間、および予定された各ONU202からの上りフレームの受信期間を含む割り当て周期すなわちDBA(Dynamic Bandwidth Allocation:動的帯域割当)サイクルを繰り返す。ここで、制御部36は、たとえば、予定された各ONU202からの上りフレームの受信期間において、上記帯域の割り当て量の演算を行なう。
【0043】
図3は、本発明の実施の形態に係る宅側装置の構成を示す図である。
【0044】
図3を参照して、ONU202は、PONポート21と、光受信処理部22と、バッファメモリ23と、送信処理部24と、UNI(User Network Interface)ポート25と、受信処理部26と、バッファメモリ27と、光送信処理部28と、制御部29とを備える。
【0045】
光受信処理部22は、局側装置101から送信される下り光信号をPONポート21経由で受信して電気信号に変換し、当該電気信号からフレームを再構成するとともに、フレームの種別に応じてバッファメモリ23経由で制御部29または送信処理部24に当該フレームを振り分ける。具体的には、光受信処理部22は、データフレームを送信処理部24に出力し、制御フレームを制御部29に出力する。
【0046】
送信処理部24は、光受信処理部22から受けたデータフレームをUNIポート25経由で図示しないパーソナルコンピュータ等のユーザ端末へ送信する。
【0047】
受信処理部26は、UNIポート25経由でユーザ端末から受信したデータフレームをバッファメモリ27経由で光送信処理部28へ出力する。
【0048】
制御部29は、MPCPおよびOAM等、PON回線の制御および管理に関する宅側処理を行なう。すなわち、PON回線に接続されている局側装置101とMPCPメッセージおよびOAMメッセージをやりとりすることによって、アクセス制御等の各種制御を行なう。制御部29は、各種制御情報を含む制御フレームを生成し、バッファメモリ27経由で光送信処理部28へ出力する。
【0049】
光送信処理部28は、受信処理部26から受けたデータフレームおよび制御部29から受けた制御フレームを光信号に変換し、PONポート21経由で局側装置101へ送信する。
【0050】
また、制御部29は、局側装置101からスリープ指示を示す制御フレームを受信して、たとえば光受信処理部22および光送信処理部28の動作を停止するスリープ状態へ遷移するためのスリープ制御を行なう。また、制御部29は、スリープ状態への遷移通知であるスリープ通知を示す制御フレームを局側装置101へ送信する。
【0051】
また、制御部29は、スリープ状態から復帰した後、スリープ状態を継続可能であるか否かを判断し、継続可能であると判断した場合には、スリープ通知を局側装置101へ送信し、所定の起床期間が終了すると再びスリープ状態へ遷移する。一方、制御部29は、スリープ状態から復帰した後、スリープ状態を継続不可であると判断した場合には、起床通知を局側装置101へ送信し、通常動作を行なう。
【0052】
なお、制御部29は、局側装置101からスリープ指示を示す制御フレームを受信して、スリープ状態へ遷移できないと判断した場合には、スリープ状態へ遷移せず、起床通知を示す制御フレームを局側装置101へ送信してもよい。
【0053】
図4は、本発明の実施の形態に係る局側装置において作成されるゲートフレームのフォーマットの一例を示す図である。
【0054】
図4を参照して、ゲートフレームは、ヘッダフィールドと、グラント数/フラグフィールドと、グラント#1〜#4の開始時間フィールドおよびデータ長フィールドと、パディングフィールドと、FCS(Frame Check Sequence)フィールドとを有する。
【0055】
グラント数/フラグフィールドでは、当該ゲートフレームにおいて指定されるグラントの数を設定可能である。
【0056】
より詳細には、ゲートフレームでは、0から最大4つまでグラントを設定することができる。また、グラント数として4未満の値を設定した場合には、未使用のグラント#nの開始時間フィールドおよびデータ長フィールド分、パディングフィールドが追加される。これにより、ゲートフレームのフレーム長は常にたとえば64バイトに保たれる。
【0057】
また、グラント数/フラグフィールドでは、指定されたグラントを用いてレポートを送信するか否かを示す強制レポートフラグを設定可能である。
【0058】
より詳細には、強制レポートフラグが設定されたグラントは、レポート用グラントとして使用され、ONU202は、強制レポートフラグが設定されたグラントについては、必ずレポートフレームを送信しなければならない。
【0059】
本発明の実施の形態に係るPONシステムでは、たとえば、グラント数は2に設定され、強制レポートフラグはグラント#1がオン、グラント#2がオフに設定される。すなわち、1つのゲートフレームにより、レポートフレーム用のグラント#1と、制御フレームまたはデータフレーム用のグラント#2とが与えられる。グラント#1は、レポートフレーム1つ分が送信できるだけの最小限のデータ量であり、グラント#2は、たとえば、ONU202が局側装置101へ通知したレポート値に応じたデータ量である。
【0060】
図5は、本発明の実施の形態に係る宅側装置において作成されるレポートフレームのフォーマットの一例を示す図である。
【0061】
図5を参照して、レポートフレームは、ヘッダフィールドと、Qset数フィールドと、レポートビットマップフィールド、Q#0レポート〜Q#7レポートのフィールドと、パディングフィールドと、FCSフィールドとを有する。
【0062】
Qset数フィールドには、Qsetの数が設定される。このQset数分、レポートビットマップフィールドおよびQ#nレポートフィールドが設けられる。図5では、代表的に1つのQsetが示されている。
【0063】
レポートビットマップフィールドには、QsetにおいてQ#nレポートがいくつ設けられるかを示すビットマップが設定される。
【0064】
たとえば、”00011111”のビット列が設定された場合、Qレポート数は5つである。
【0065】
本発明の実施の形態に係るPONシステムでは、たとえば、Qset数=2であり、レポートビットマップ=”00011111”である。つまり、1つのレポートフレームにおいて、5つのQレポートを有するQsetが2つ設定される。
【0066】
また、たとえば、ONU202において、バッファメモリ27は、上りフレームの優先度に応じて5種類の上りキューを有する。より詳細には、上りデータフレームの優先度は4種類あり、他の1つは制御フレーム用のキューであり、制御フレームの優先度が最も高い。
【0067】
ONU202は、上りトラフィックが無い場合には、全QsetのQレポート値が0であるゼロレポートを局側装置101へ送信する。また、ONU202は、上りトラフィックが存在する場合には、いずれかのQレポートに値が設定されているノンゼロレポートを局側装置101へ送信する。ONU202は、上りキューに蓄積された上りフレームのデータ量に応じてレポート値を設定する。
【0068】
[動作]
次に、本発明の実施の形態に係る局側装置によるスリープ動作中のONUに対する帯域割り当て処理について図面を用いて説明する。
【0069】
図6は、PONシステムにおけるONUに対する帯域割り当て方法の例を示す図である。図6において、ハッチング有りの部分はスリープ動作中のONUに対する割り当て帯域を示し、ハッチング無しの部分は通常動作中のONUに対する割り当て帯域を示す。
【0070】
図6を参照して、ゲートフレームの送信頻度、すなわち図中のハッチング部分の間隔を大きくしただけでは、スリープ動作中の複数のONUに対して局所的に帯域が割り当てられるという事態が発生し得る。この場合、無駄に消費される帯域が時間的にまとまって発生することになる(ケース1)。
【0071】
一方、スリープ動作中のONUに対して割り当てる帯域を時間的に分散させると、通常動作中の他のONUの上りトラフィックに対する影響が小さくなり、また、局側装置101における上りトラフィックの処理負荷も平均化されることが期待できる。
【0072】
そこで、本発明の実施の形態に係る局側装置では、スリープ動作中の複数のONUを分類して複数のグループを形成し、グループごとにゲートフレームの送信頻度たとえば何DBAサイクルに1回ゲートフレームを送信するかを設定する。さらに、グループ内で帯域の割り当てタイミングをずらす、すなわち割り当て帯域を時間軸上でずらして配置する。これにより、PONシステム301における各ONUの局所的な省電力動作を防ぐことができる。
【0073】
より詳細には、制御部36は、各ONU202を分類して複数のグループを作成する。たとえば、制御部36は、ONU202において許容される帯域の割り当て間隔に基づいて、各ONU202を分類して複数のグループを作成する。なお、当該グループに含まれないONU202が存在してもよい。また、グループに属するONU202の数は1以上であればよい。
【0074】
また、制御部36は、前述のようなスリープ状態、すなわち、局側装置101への上りフレームの送信動作および局側装置101から送信される下りフレームの受信動作の少なくとも一方をONU202が停止するスリープ状態であって、スリープ状態を継続するスリープ期間において所定の条件が満たされると、スリープ期間の満了前に、上記送信動作および上記受信動作を行なう通常状態へONU202が復帰しうるスリープ状態、を把握する。
【0075】
そして、制御部36は、上記のようなスリープ状態のONU202に対して、上りフレームを送信するための帯域を割り当て、通常状態と比べてONU202ごとの帯域の割り当て間隔を長くし、かつグループ間で帯域の割り当てタイミングを分散させる。
【0076】
また、制御部36は、たとえば、グループに属する各ONU202間で帯域の割り当てタイミングを分散させる。
【0077】
図7は、本発明の実施の形態に係る局側装置がスリープ動作中のONUに対して帯域割り当て処理を行なう際の動作手順を示すフローチャートである。
【0078】
図7を参照して、まず、局側装置101における制御部36は、たとえば対象ONUの上りトラフィック量および下りトラフィック量を示すトラフィック情報を取得する。このトラフィック量は、たとえば、フレーム数であってもよいし、バイトおよびビット等のデータ量であってもよい。そして、制御部36は、対象ONUのトラフィック量が少ないことから対象ONUはスリープ状態へ遷移可能であると判断すると、対象ONUに対してスリープ指示を送信し、スリープ動作における次の起床タイミングまでスリープさせる。このスリープ指示には、たとえばスリープ状態への遷移タイミングおよびスリープ時間が含まれる(ステップS1)。
【0079】
次に、制御部36は、対象ONUからスリープ通知を受信すると(ステップS2)、後述する基準に従って、スリープ動作中の各ONUのグループ分け処理を行なう。ここで、制御部36は、すでにスリープ動作を開始している他のONUをグループ化している場合には、対象ONUをいずれかのグループに所属させる(ステップS3)。
【0080】
次に、制御部36は、対象ONUに対応するタイマをスタートさせる(ステップS4)。このタイマは、たとえばスリープ時間を初期値としてカウントダウンする。制御部36は、このタイマが満了すなわちゼロになるまでの期間、対象ONUはスリープ状態であると判断する。
【0081】
制御部36は、タイマが満了していない場合には(ステップS5でNO)、対象ONUに対する制御フレームまたはデータフレーム用の帯域割り当て量すなわちグラントをゼロに設定したゲートフレームを作成する。具体的には、図4に示すフレームフォーマットにおいて、たとえば、局側装置101は、グラント#2のデータ長フィールドをゼロに設定したゲートフレームを送信する。そして、局側装置101は、たとえば、スリープ状態の対象ONUに対しても、局側装置101との同期を維持させるために、グラント#1の強制レポートフラグをオンに設定したゲートフレームを送信する。ここで、制御部36は、通常動作と比べて長い周期で、たとえば数DBAサイクルに1回、ゲートフレームを対象ONUへ送信する。また、制御部36は、グループ間で割り当て帯域が時間的に分散するように、グラント#1の開始時間を設定する(ステップS6)。
【0082】
そして、制御部36は、設定したグラントを示すゲートフレームを対象ONUへ送信する(ステップS7)。なお、対象ONUは、このゲートフレームの示すグラントに従い、スリープ通知または起床通知を送信するための帯域量を示すレポートフレームを送信することができる。
【0083】
一方、制御部36は、タイマが満了した場合には(ステップS5でYES)、対象ONUに対するゲートフレームの送信周期の延伸処理および割り当て帯域の分散処理を終了し、通常通り、対象ONUからのレポートフレームに基づく帯域割り当てを行なう(ステップS8)。
【0084】
ONU202のグループの分類方法として、たとえば、制御部36は、ONU202から局側装置101へ送信されるフレームの速度に基づいて、各ONU202を分類して複数のグループを作成する。
【0085】
図8は、本発明の実施の形態に係る局側装置によるスリープ動作中のONUに対する上り帯域の割り当て処理の一例を示す図である。
【0086】
図8を参照して、10G−EPONシステムにおいては、上りレートとして1Gbpsを処理するONU(以下、1G−ONUとも称する。)および10GbpsのONU(以下、10G−ONUとも称する。)が混在する。
【0087】
一般に、1G−ONUおよび10G−ONUに対して同じデータ長のレポートフレーム分のグラントを与えても、PON回線の占有時間は異なる。すなわち、レートの低い1G−ONUの占有時間の方が長くなる。
【0088】
局側装置101は、ONU202の上りレートに基づいてグループ分けを行なう、すなわち、1G−ONUのグループおよび10G−ONUのグループを形成する。
【0089】
ここで、スリープ動作中の1G−ONUの帯域割り当て周期をT_1Gとし、スリープ動作中の1G−ONUの台数をn_1Gとし、スリープ動作中の10G−ONUの帯域割り当て周期をT_10Gとし、スリープ動作中の10G−ONUの台数をn_10Gとする。
【0090】
図8は、通常動作中のONUに対する帯域割り当て周期がTであり、T_1G=3×T、T_10G=2×T、n_1G=2、n_10G=2の場合を示している。図8において、A1,A2は2台の10G−ONUにそれぞれ割り当てられる帯域であり、B1,B2は2台の1G−ONUにそれぞれ割り当てられる帯域である。
【0091】
局側装置101は、ONUのスリープ動作が開始されると、1G−ONUに対しては帯域割り当て周期をDBAサイクル3周期に伸ばし、10G−ONUに対しては帯域割り当て周期をDBAサイクル2周期に伸ばす。
【0092】
また、局側装置101は、各グループにおいて、割り当て周期をONUの台数で等分したタイミングに従い、上り帯域を各ONUに割り当てる。
【0093】
すなわち、制御部36は、レポートフレームの送信間隔をグループごとに設定し、そして、グループごとの送信間隔をグループに属するONU202の数で割り、割った時間ずつシフトしたタイミングで、グループに属する各ONU202に帯域を順番に割り当てる。
【0094】
具体的には、1つの割り当て周期T_10Gにおいて2台分の帯域A1,A2が等間隔に設定され、1つの割り当て周期T_1Gにおいて2台分の帯域B1,B2が等間隔に設定される。
【0095】
すなわち、スリープ動作中の1G−ONUに対する割り当て周期は、ONU個々で見ればT_1Gであるが、局側装置101側から見れば、各ONUの割り当て周期が時間軸上でT_1G/n_1Gだけ順番にずれて配置されることになる(図8の上から2段目)。
【0096】
また、同様に、スリープ動作中の10G−ONUに対する割り当て周期は、ONU個々で見ればT_10Gであるが、局側装置101側から見れば、各ONUの割り当て周期が時間軸上でT_10G/n_10Gだけ順番にずれて配置されることになる(図8の上から3段目)。
【0097】
したがって、PONシステム301全体で割り当て帯域を時間的に分散させることができる(図8の上から4段目)。
【0098】
このような延伸処理および分散処理により、たとえば、スリープ動作中の10G−ONUに対する帯域の割り当て頻度を、1G−ONUよりも高くすることができるため、より高いレートのONUに対してより良いサービスを提供することが可能となる。
【0099】
図9は、本発明の実施の形態に係る局側装置によるスリープ動作中のONUに対する上り帯域の割り当て処理の一例を示す図である。図9は、10G−ONUに対する帯域の割り当て処理を代表的に示している。図の見方および諸条件は図8と同様である。
【0100】
図9を参照して、局側装置101において、上り帯域の割り当て周期に制限がある場合も考えられる。
【0101】
具体的には、たとえば、上り帯域の割り当て処理がTproc単位で周期的に実行されており、割り当てられる上り帯域のタイミングをTproc単位でしか指定できず、Tproc内でのタイミング設定が保証できない場合がある。
【0102】
このような場合には、局側装置101は、平均して、上り帯域の割り当て1周期T_1GごとにTproc/(T_1G/n_1G)個の1G−ONUに上り帯域が割り当てられ、また、上り帯域の割り当て1周期T_10GごとにTproc/(T_10G/n_10G)個の10G−ONUに上り帯域が割り当てられるようにグラントを設定する。
【0103】
図9は、通常動作中のONUに対する割り当て周期がTprocであり、T_10G=2×Tproc、n_10G=3の場合を示している。図9において、A1,A2,A3は3台の10G−ONUにそれぞれ割り当てられる帯域である。
【0104】
局側装置101は、上り帯域の割り当て周期T_10Gごとに平均してTproc/(2×Tproc/3)=3/2個の10G−ONUに上り帯域が割り当てられるようにグラントを設定する。すなわち、上り帯域の割り当ての2周期ごとに3台のONUの帯域A1,A2,A3を割り当てる(図9の上から2段目)。
【0105】
次に、本発明の実施の形態に係る局側装置によるスリープ動作中のONUに対する上り帯域の割り当て処理の他の例について説明する。
【0106】
局側装置101における制御部36は、局側装置101におけるクロックとONU202におけるクロックとの差に基づいて、各ONU202を分類して複数のグループを作成する。すなわち、制御部36は、局側装置101とONU202とのローカルクロック誤差に基づいてグループ分けを行なう。
【0107】
ONU202は、局側装置101から受信する下りフレームからクロックを生成し、生成したクロックを用いて局側装置101と同期して動作する。
【0108】
また、ONU202は、タイムスタンプの同期動作を行なう、すなわち局側装置101からゲートフレームを受信するたびに、当該ゲートフレームが示すタイムスタンプ値を、自己のタイムスタンプ値として設定する。これにより、局側装置101およびONU202間で時刻同期をとることができる。
【0109】
しかしながら、スリープ状態に遷移したONU202は、局側装置101からの下りフレームを受信できないため、自己で生成するローカルクロックのタイミングで動作する。そして、ONU202のローカルクロックの周波数と局側装置101のローカルクロックの周波数とは必ずしも一致しないため、スリープ動作中のONUと局側装置101との間では時刻の差が発生する。ローカルクロックの周波数差が大きい場合、あるいはスリープ時間が長い場合には、局側装置101およびONU202間の時刻同期が外れてしまい、局側装置101およびONU202間のリンク断と判断されてしまう。
【0110】
ここで、局側装置101は、ONU202をスリープ状態へ遷移させる前に、自己と当該ONU202とのローカルクロック誤差T_e(n)(ただし、nはONUごとのID)を測定する。
【0111】
より詳細には、局側装置101は、自己がONU202へゲートフレームを送信することから、測定対象となるONU202へのゲートフレームの送信間隔T_send(n)を知ることが可能である。
【0112】
一方、ONU202は、前述のようなタイムスタンプによる時刻同期動作により、どれだけのタイムスタンプのずれT_d(n)が発生したか、すなわちタイムスタンプの補正値を取得することができる。このため、ONU202は、取得した補正値T_d(n)を示す制御フレームを局側装置101へ送信することにより、T_d(n)を局側装置101に通知することが可能である。
【0113】
そして、局側装置101は、たとえば以下の式に従い、ローカルクロック誤差を算出する。
T_e(n)=T_d(n)/T_send(n)
【0114】
なお、局側装置101は、過去数回分の平均値を用いてローカルクロック誤差を算出してもよい。局側装置101は、このT_e(n)を用いてグループ分けを行なう。
【0115】
具体的には、局側装置101は、グループ分けを行なう閾値Thre_1,Thre_2...Thre_pを設定する(ただし、0<Thre_1<Thre_2<...<Thre_p)。
【0116】
たとえば、0≦T_e(n)<Thre_1を満たすグループがグループ1となり、Thre_1≦T_e(n)<Thre_2を満たすグループがグループ2となる。以下同様に、局側装置101は、グループ3〜グループpを形成する。
【0117】
この場合、番号の小さいグループの方がクロック誤差が小さい。このため、番号の小さいグループであるほど、スリープ動作中において、ゲートフレームの送信周期を長く設定しても時刻同期外れが生じにくい、すなわち時刻同期外れに耐えることが可能である。
【0118】
そこで、局側装置101は、たとえば、グループ1〜グループpに対するスリープ動作中のゲートフレームの送信周期をT_1〜T_pとすると、たとえば、T_1≧T_2≧...≧T_pに設定する。
【0119】
したがって、PONシステム301において、上り方向の割り当て帯域を時間的に分散させることができる。
【0120】
また、局側装置101は、たとえば図7で説明した方法と同様に、グループ内のONU202間で割り当て帯域のタイミングをずらす。すなわち、局側装置101は、各グループにおいて、割り当て周期をONU202の台数で等分したタイミングに従い、上り帯域を各ONUに割り当てる。
【0121】
ここで、帯域割り当て処理時間および他のONU202からの上りトラフィックの影響があるため、必ずしも、上り帯域の割り当て周期とONU202におけるゲートフレームの受信周期とは一致しない。
【0122】
図9に示す方法では、大域的に平均して見れば、ONUに対する上り帯域の割り当て周期がONU202におけるゲートフレームの受信周期になる、との考えに基づく。
【0123】
次に、本発明の実施の形態に係る局側装置によるスリープ動作中のONUに対する上り帯域の割り当て処理の他の例について説明する。
【0124】
局側装置101における制御部36は、ONU202から局側装置101へ送信されるフレームの許容遅延時間に基づいて、各ONU202を分類して複数のグループを作成する。すなわち、制御部36は、ONU202に要求される上りフレームの遅延時間の上限値に基づいてグループ分けを行なう。
【0125】
各ONUに求められる通信の遅延条件は、たとえば、VoIP(Voice over IP)の使用の有無等、ONUを用いて提供されているサービスによって異なる。
【0126】
VoIPのように、リアルタイム性および緊急性が要求されるアプリケーションに用いられるONUでは、スリープ期間中でもスリープ動作を中止して通信を再開することが要求される場合もある。
【0127】
このようなONUに対しては、スリープ動作中においても、ゲートフレームの送信頻度を低くすることは好ましくない。一方、ベストエフォートのトラフィックのみに用いられるONUに対しては、ゲートフレームの送信頻度を低くしても大きな影響はない。
【0128】
ここで、ONUに対して許容される遅延時間は、事前にオペレータが具体的な値を設定してもよいし、ONUが、自己の下位側に接続されている機器の種類に応じて、テーブル等を参照して自律的に設定してもよい。
【0129】
局側装置101は、ONUnに要求される上りの許容遅延時間R_nを用いてグループ分けを行なう。
【0130】
具体的には、局側装置101は、グループ分けを行なう閾値Thre_1,Thre_2...Thre_pを設定する(ただし、0<Thre_1<Thre_2<...<Thre_p)。
【0131】
たとえば、0≦R_n<Thre_1を満たすグループがグループ1となり、Thre_1≦R_n<Thre_2を満たすグループがグループ2となる。以下同様に、局側装置101は、グループ3〜グループpを形成する。
【0132】
この場合、番号の大きいグループの方が遅延に対する要求が高い。このため、番号の大きいグループであるほど、スリープ動作中において、ゲートフレームの送信周期を長く設定しても、アプリケーション上の問題が生じにくい。
【0133】
そこで、局側装置101は、たとえば、グループ1〜グループpに対するスリープ動作中のゲートフレームの送信周期をT_1〜T_pとすると、たとえば、T_1≦T_2≦...≦T_pに設定する。
【0134】
したがって、PONシステム301において、上り方向の割り当て帯域を時間的に分散させることができる。
【0135】
また、局側装置101は、たとえば図7で説明した方法と同様に、グループ内のONU202間で割り当て帯域のタイミングをずらす。すなわち、局側装置101は、各グループにおいて、割り当て周期をONU202の台数で等分したタイミングに従い、上り帯域を各ONUに割り当てる。
【0136】
ところで、ONUが早期起床動作を含むスリープ動作を行なう場合には、局側装置は、起床通知を送信するための光通信回線の帯域をスリープ状態のONUに対して割り当て続ける必要がある。このため、いつ起床するか分からず、次の起床期間まで起床しない場合もあるONUに対して帯域を割り当て続けることになり、光通信回線の帯域が無駄に消費され、PONシステムにおける他のONUに対して割り当て可能な帯域が減少してしまう。
【0137】
具体的には、ONUが送信するレポートフレームも上りトラフィックの1つであるから、ONUがレポートフレームを送信するためには、局側装置101からのゲートフレームによる許可が必要となる。
【0138】
レポートフレーム用の送信許可およびデータフレーム用の送信許可は、強制レポートフラグによって区別される。ONUは、たとえば、強制レポートフラグがオンに設定されたグラントを受けた場合には、当該グラントの範囲内でレポートフレームを送信し、強制レポートフラグがオンに設定されていないグラントを受けた場合には、当該グラントのすべてをデータフレームの送信に使用する。
【0139】
ONUがスリープ状態にあるときは、局側装置は、当該ONUに対してグラントを与える必要はないとも考えられるが、実際にはグラントを与えている。このグラントの大半は、無駄な割り当て帯域となる。すなわち、ONUは、スリープ状態において基本的にデータの送受信ができないことから、スリープ状態のONUへゲートフレームを送信してグラントを与えても、当該ゲートフレームの多くは廃棄されることになる。
【0140】
スリープ状態のONUに対してまったくグラントを与えない、という方法では、局側装置がONUの異常等を把握することができなくなるため、好ましくない。その一方で、異常および例外は必ずしも毎DBAサイクル発生するわけではなく、スリープ状態のONUに割り当てられた帯域の多くは無駄になる。
【0141】
局側装置とスリープ状態のONUとの間で使用される帯域は、下りはゲートフレーム1つ分、上りはレポートフレーム1つ分であるため、局側装置およびONU間での1回の情報のやりとりで使用される帯域は大きくはない。しかしながら、スリープ状態のONUの数が増えると、無視できない値となる。
【0142】
すなわち、早期起床動作が可能なスリープ動作中のONUに対する上り帯域割り当ては、帯域ロスと、異常または例外発生時の反応速度とのトレードオフになる。
【0143】
これに対して、本発明の実施の形態に係る局側装置では、制御部36は、各ONU202を分類して複数のグループを作成する。また、制御部36は、局側装置101への上りフレームの送信動作および局側装置101から送信される下りフレームの受信動作の少なくとも一方をONU202が停止するスリープ状態であって、スリープ状態を継続するスリープ期間において所定の条件が満たされると、スリープ期間の満了前に、上記送信動作および上記受信動作を行なう通常状態へONU202が復帰しうるスリープ状態、を把握する。そして、制御部36は、上記のようなスリープ状態のONU202に対して、上りフレームを送信するための帯域を割り当て、通常状態と比べてONU202ごとの帯域の割り当て間隔を長くし、かつグループ間で帯域の割り当てタイミングを分散させる。
【0144】
このような構成により、スリープ動作中のONUが存在する場合においてPON回線における帯域の無駄な消費を抑制することができる。また、通常動作中のONUの上りトラフィックへの影響を減らすことができる。また、局側装置101における上りトラフィックの処理負荷を平準化することができる。
【0145】
したがって、本発明の実施の形態に係る局側装置では、宅側装置がスリープ動作を行ない、かつスリープ期間の満了前にスリープ状態から復帰することが可能な通信システムにおいて、宅側装置から局側装置への通信回線における帯域の使用効率を向上させることができる。
【0146】
また、本発明の実施の形態に係る局側装置では、制御部36は、ONU202において許容される帯域の割り当て間隔に基づいて、各ONU202を分類して複数のグループを作成する。
【0147】
このような構成により、グループごとに帯域割り当て間隔を最適化し、PON回線における帯域の使用効率をさらに向上させることができる。
【0148】
また、本発明の実施の形態に係る局側装置では、制御部36は、ONU202から局側装置101へ送信されるフレームの速度、局側装置101におけるクロックとONU202におけるクロックとの差、またはONU202から局側装置101へ送信されるフレームの許容遅延時間に基づいて、各ONU202を分類して複数のグループを作成する。
【0149】
このような構成により、宅側装置の性能、特性またはシステム的な要求に基づいて各宅側装置を適切に分類し、PON回線における帯域の使用効率をさらに向上させることができる。
【0150】
また、本発明の実施の形態に係る局側装置では、制御部36は、さらに、グループに属する各ONU202間で帯域の割り当てタイミングを分散させる。
【0151】
このように、ONUのグループ内でも帯域の割り当てタイミングを分散させる構成により、通常動作中のONUの上りトラフィックへの影響をさらに低減し、また、局側装置101における上りトラフィックの処理負荷のさらなる平準化を図ることができる。
【0152】
また、本発明の実施の形態に係る局側装置では、制御部36は、ONU202に割り当てる帯域を示すレポートフレームをONU202へ送信する。制御部36は、レポートフレームの送信間隔をグループごとに設定し、そして、グループごとの送信間隔をグループに属するONU202の数で割り、割った時間ずつシフトしたタイミングで、グループに属する各ONU202に帯域を順番に割り当てる。
【0153】
このような構成により、簡易な処理で宅側装置のグループ内における帯域の割り当てタイミングを適切に分散させることができる。
【0154】
なお、本発明の実施の形態に係るPONシステムでは、ONU202が周期的スリープ動作を行なう構成であるとしたが、これに限定するものではない。周期的スリープ動作に限らず、ONU202は、単に、以下のようなスリープ動作を行なう構成であってもよい。すなわち、ONU202は、局側装置101からの下りフレームの受信動作および局側装置101への上りフレームの送信動作を行なう通常状態から、上記受信動作および上記送信動作の少なくとも一方を停止するスリープ状態へ遷移し、スリープ状態を継続するスリープ期間の満了後にスリープ状態から通常状態へ復帰し、その後は新たなスリープ指示を受けるまで通常状態を継続する。また、ONU202は、スリープ期間において所定の条件が満たされるとスリープ期間の満了前にスリープ状態から通常状態へ復帰する。
【0155】
また、本発明の実施の形態に係るPONシステムでは、ONU202は、スリープ状態において光受信処理部22および光送信処理部28の動作を停止する構成であるとしたが、これに限定するものではない。ONU202は、スリープ状態において光受信処理部22および光送信処理部28の一方の動作を停止する構成であってもよい。
【0156】
上記実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0157】
21 PONポート
22 光受信処理部
23 バッファメモリ
24 送信処理部
25 UNIポート
26 受信処理部
27 バッファメモリ
28 光送信処理部
29 制御部
31 アップリンクIF部
33 受信処理部
34 送信処理部
35 PON送受信部
36 制御部(帯域割り当て部、分類部およびスリープ状態把握部)
37,38 FIFO
101 局側装置(OLT)
202,202A,202B,202C,202D 宅側装置(ONU)
301 PONシステム
SP1,SP2 スプリッタ
OPTF 光ファイバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1または複数の宅側装置と共通の通信回線を介して通信信号を送受信するための局側装置であって、
各前記宅側装置から前記局側装置への前記通信信号が時分割多重され、
前記局側装置への前記通信信号の送信動作および前記局側装置から送信される前記通信信号の受信動作の少なくとも一方を前記宅側装置が停止するスリープ状態であって、前記スリープ状態を継続するスリープ期間において所定の条件が満たされると、前記スリープ期間の満了前に、前記送信動作および前記受信動作を行なう通常状態へ前記宅側装置が復帰しうるスリープ状態、を把握するためのスリープ状態把握部と、
前記宅側装置から前記局側装置へ前記通信信号を送信するための前記通信回線における帯域の割り当て要求を受けて、前記割り当て要求に基づいて、前記通信回線における帯域を前記宅側装置に割り当てるための帯域割り当て部と、
前記各宅側装置を分類して複数のグループを作成するための分類部とを備え、
前記帯域割り当て部は、前記スリープ状態の前記宅側装置に対して、前記通信信号を送信するための前記帯域を割り当て、前記通常状態と比べて前記宅側装置ごとの前記帯域の割り当て間隔を長くし、かつ前記グループ間で前記帯域の割り当てタイミングを分散させる、局側装置。
【請求項2】
前記分類部は、前記宅側装置において許容される前記帯域の割り当て間隔に基づいて、前記各宅側装置を分類して複数のグループを作成する、請求項1に記載の局側装置。
【請求項3】
前記分類部は、前記宅側装置から前記局側装置へ送信される前記通信信号の速度、前記局側装置におけるクロックと前記宅側装置におけるクロックとの差、または前記宅側装置から前記局側装置へ送信される前記通信信号の許容遅延時間に基づいて、前記各宅側装置を分類して複数のグループを作成する、請求項2に記載の局側装置。
【請求項4】
前記帯域割り当て部は、さらに、前記グループに属する各前記宅側装置間で前記帯域の割り当てタイミングを分散させる、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の局側装置。
【請求項5】
前記帯域割り当て部は、前記宅側装置に割り当てる前記帯域を示す割り当て通知を前記宅側装置へ送信し、前記割り当て通知の送信間隔を前記グループごとに設定し、前記グループごとの前記送信間隔を前記グループに属する前記宅側装置の数で割り、割った時間ずつシフトしたタイミングで、前記グループに属する各前記宅側装置に前記帯域を順番に割り当てる、請求項4に記載の局側装置。
【請求項6】
1または複数の宅側装置と共通の通信回線を介して通信信号を送受信するための局側装置における通信制御方法であって、
各前記宅側装置から前記局側装置への前記通信信号が時分割多重され、
前記局側装置は、前記宅側装置から前記局側装置へ前記通信信号を送信するための前記通信回線における帯域の割り当て要求を受けて、前記割り当て要求に基づいて、前記通信回線における帯域を前記宅側装置に割り当て、
前記局側装置への前記通信信号の送信動作および前記局側装置から送信される前記通信信号の受信動作の少なくとも一方を前記宅側装置が停止するスリープ状態であって、前記スリープ状態を継続するスリープ期間において所定の条件が満たされると、前記スリープ期間の満了前に、前記送信動作および前記受信動作を行なう通常状態へ前記宅側装置が復帰しうるスリープ状態、を把握するステップと、
前記各宅側装置を分類して複数のグループを作成するステップと、
前記スリープ状態の前記宅側装置に対して、前記通信信号を送信するための前記帯域を割り当て、前記通常状態と比べて前記宅側装置ごとの前記帯域の割り当て間隔を長くし、かつ前記グループ間で前記帯域の割り当てタイミングを分散させるステップとを含む、通信制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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