説明

局所的に脂肪細胞を低減するための光力学的療法

本発明は、哺乳動物の対象の標的脂肪細胞または標的脂肪組織に対する経皮的な光力学的療法(「PDT」)のための方法および化合物を開示する。本発明は、治療有効量の感光性物質または感光性物質送達システムまたはプロドラッグを対象に投与する段階を含み、ここで感光性物質または感光性物質送達システムまたはプロドラッグは標的組織に選択的に結合する。かつ本発明は、対象の少なくとも一部に、感光性物質またはプロドラッグであればそのプロドラッグ産物により吸収される波長の光を照射する段階を含み、ここで光は光源により提供され、かつ照射は、感光性物質またはプロドラッグ産物の活性化を引き起こす低フルエンス率による。これらの経皮的PDTの方法は、脂肪組織および脂肪細胞を低減するために有用である。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の技術分野
本発明は一般的に、感光性物質または他のエネルギー活性化物質を伴う薬物および薬物療法の分野に関する。特に本明細書においては、治療有効量の感光性物質を脂肪細胞へ部位特異的に送達するために有用な方法、化合物、組成物およびキットが提供される。特に、局所的な脂肪細胞低減のための経皮的な光力学的療法を提供する段階において有効な、外部光源または内部光源のいずれかを用いる方法が提供される。
【背景技術】
【0002】
本発明の背景
肥満は大衆の主要な健康問題であり、非インスリン依存性糖尿病、脳卒中、心臓疾患、肝臓疾患、整形外科学的障害、およびある種の癌のリスクを増加させる。肥満は増加した脂肪細胞体積および増加した脂肪細胞数を反映する。Prins, J.ら、Biochem. Biophys. Research Comm. 201(2):500-507 (1994)を参照されたい。
【0003】
肥満は、患者の食事、運動をモニターすること、ならびに、整形手術、脂肪吸引、超音波およびレーザー治療により皮下の脂肪層を低減することにより典型的に治療される。現代社会のペースは速いため、多くの人々にとって肥満を予防するための健康的な食事および規則正しい運動を維持することは難しい。
【0004】
整形手術および脂肪吸引は、回復に有意な期間を要する侵襲性処置である。侵襲性処置はさらに、患者を感染のリスク、出血のリスク、麻酔リスクおよび他の術後合併症のリスクに曝す。脂肪吸引は、脂肪組織を除去するために、皮膚の穴を通じて直径5mm程度のプローブを脂肪層中へ導入することに関する。脂肪吸引の欠点としては、プローブの挿入領域における陥没の形での外見的な均質性の欠如、過剰な出血、ならびに、脂肪細胞および間質細胞の非選択的な除去が発生することが含まれる。Paoliniら、米国特許第5,954,710号を参照されたい。皮下超音波プローブを利用することの欠点もまた、外見的な均質性の欠如を含む。Paoliniら、米国特許第5,954,710号は、皮下脂肪層を除去するためのレーザーの使用を開示する。記載されたレーザー装置は、治療すべき脂肪組織にレーザービームを照射する光学ファーバーを挿入および誘導するための針を含む。この装置を使用することの欠点は、治療が侵襲性であることである。
【0005】
脂肪組織を低減することにより肥満を治療するための、非侵襲性であるか、または最小限に侵襲性であり、かつ均質的な脂肪組織の除去をもたらす方法に対する、長く望まれた必要性が存在することは明らかである。本発明は、脂肪細胞の低減を誘導する光力学的療法(PDT)の使用に関する、肥満を治療するための装置、および非侵襲性であるか、または最小限に侵襲性である方法を提供する。本方法および装置は、以下の本明細書中に開示する。
【発明の開示】
【0006】
発明の概要
本発明は、対象または患者の特異的な標的細胞または組成物に対し、感光性物質または他のエネルギー活性化物質、薬物および化合物を正確に標的化することに基づき、かつ、光または超音波エネルギーを、比較的低い強度率において延長された期間、対象に引き続き投与することにより、上記の標的化された感光性物質または他のエネルギー活性化物質を活性化する方法に関する。最大限の細胞毒性および最小限の副作用を達成するために、標的組織に対し外部または内部いずれかの光源または超音波エネルギー源が利用される。
【0007】
一つの態様は、以下の段階を含む、哺乳動物対象における皮下脂肪組織の光力学的療法(「PDT」)のための方法を含む:治療有効量の感光性物質または感光性物質送達システムまたはプロドラッグを対象に投与する段階であり、ここで感光性物質または感光性物質送達システムまたはプロドラッグは、脂肪細胞である標的組織に選択的に結合する。この段階に続くのは、感光性物質により、またはプロドラッグであればそのプロドラッグ産物により吸収される波長または周波帯の光により対象の少なくとも一部を照射する段階であり、ここで光は光源により提供され、かつ、照射は、感光性物質またはプロドラッグ産物の活性化をもたらす比較的低いフルエンス率である。本態様において、感光性物質または感光性物質送達システムまたはプロドラッグは、照射に先立ち対象の非標的組織から排除される。
【0008】
別の態様は、以下の段階を含む、哺乳動物対象における標的組成物の経皮的PDTのための方法を含む:治療有効量の感光性物質または感光性物質送達システムまたはプロドラッグを対象に投与する段階であり、ここで感光性物質または感光性物質送達システムまたはプロドラッグは、標的組成物に選択的に結合する。この段階に続くのは、感光性物質により、またはプロドラッグであればそのプロドラッグ産物により吸収される波長または周波帯の光により対象の少なくとも一部を照射する段階であり、ここで該光は光源により提供され、かつ、照射は、感光性物質または該プロドラッグ産物の活性化をもたらす比較的低いフルエンス率である。本態様は、感光性物質または感光性物質送達システムまたはプロドラッグが、該照射に先立ち対象の非標的組織から排除されることを企図する。本態様はまた、脂肪組織に近接し、皮膚表面の下であり、かつ脂肪組織の外部に位置する、比較的低出力の非干渉光源または干渉光源より光が送達されることを企図する。別の態様は、上に記載した哺乳動物対象における標的組織の経皮的PDTの方法を含み、ここで光源は患者の無傷皮膚層に対し完全に外部にある。
【0009】
別の態様は、感光性物質がリガンドに共役する、経皮的PDTの方法を記述する。一つの態様は、リガンドが脂肪細胞またはリポタンパク質リパーゼなどの脂肪細胞成分に特異的な抗体である、経皮的PDTの方法を含む(Satoら、Poultry Science 78:1286-1291 (1999)を参照されたい)。他の態様は、リガンドが脂肪細胞に特異的なペプチドまたはポリマーである、経皮的PDTの方法を含む。
【0010】
ある態様は、感光性物質が以下からなる群より選択される、経皮的PDTの方法を記述する:インドシアニングリーン(ICG);メチレンブルー;トルイジンブルー;アミノレブリン酸(ALA);フタロシアニン;ポルフィリン;テキサフィリン;クロリン化合物;プルプリン;および500nm〜1100nmの範囲の光を吸収する他の任意の物質。特に、ある態様において企図されるクロリンおよびプルプリン化合物は以下を含む:環状または非環状テトラピロールのモノ-、ジ-、またはポリアミドアミノジカルボン酸誘導体(それぞれ全体が本明細書に組み入れられる、Bommerら、米国特許第4,675,338号および同第4,693,885号を参照されたい);およびN置換環状イミド(プルプリン-18イミド)を有するピロフェオフォルバイド-aのアルキルエーテル誘導体(Pandeyら、国際公開公報第99/67249号を参照されたい)。別の態様は、感光性物質がモノ-L-アスパルチルクロリンe6(NPe6)であることを企図する。
【0011】
別の態様は、感光性物質の活性化が、照射から30分〜72時間以内、より好ましくは照射から60分〜48時間以内、最も好ましくは照射から3時間〜24時間以内に起こる可能性を有する、経皮的PDTの方法を含む。勿論、最適照射時間を決定するために臨床試験が要求されるであろう。加えて、送達される全フルエンスは、好ましくは30ジュール〜25,000ジュールの間、より好ましくは100ジュール〜20,000ジュールの間、最も好ましくは500ジュール〜10,000ジュールの間となることが企図される。臨床試験により、脂肪組織を低減するのに要求される最適全フルエンスが決定されると考えられる。
【0012】
さらなる態様は、以下の段階を含む、哺乳動物対象における標的組織の経皮的な光力学的療法のための方法を記述する:抗体または抗体断片に共役したリガンド-受容体結合ペアの第一のメンバーを含む治療有効量の第一の共役物を対象に投与する段階であり、ここで抗体または抗体断片は脂肪細胞上に見出される標的抗原に選択的に結合する。この段階に続くのは、感光性物質または感光性物質送達システムまたはプロドラッグと共役したリガンド-受容体結合ペアの第二のメンバーを含む治療有効量の第二の共役物を対象に投与する段階であり、ここで第一のメンバーはリガンド-受容体結合ペアの第二のメンバーと結合する。引き続く段階は、感光性物質により、またはプロドラッグであればそのプロドラッグ産物により吸収される波長または周波帯の光により対象の少なくとも一部を照射する段階を含む。本態様は、光が光源により提供されること、および、照射が感光性物質またはプロドラッグ産物の活性化をもたらす比較的低いフルエンス率であることをさらに含む。
【0013】
またさらなる態様は、リガンド-受容体結合ペアが、ビオチン-ストレプトアビジンおよび抗原-抗体からなる群より選択される、経皮的PDTの方法を記述する。さらなる態様は、抗原が脂肪細胞抗原であり、かつリガンド-受容体結合ペアがビオチン-ストレプトアビジンを含む、本明細書中に開示される方法を記述する。本態様において、延長された期間にわたる比較的低いフルエンス率の光源による感光剤物質の活性化は、脂肪細胞の破壊または低減をもたらす。
【0014】
別の態様は、感光性物質送達システムが本質的に感光性物質からなるリポソーム送達システムを含む、経皮的PDT法を企図する。
【0015】
さらに別の態様は、以下の段階を含む、哺乳動物対象における標的組織に対する経皮的超音波療法のための方法を含む:治療有効量の超音波感受性物質または超音波感受性物質送達システムまたはプロドラッグを対象に投与する段階であり、ここで超音波感受性物質または超音波感受性物質送達システムまたはプロドラッグは、脂肪細胞に選択的に結合する。この段階に続くのは、超音波感受性物質またはプロドラッグであればそのプロドラッグ産物を活性化する周波数の超音波エネルギーにより対象の少なくとも一部を照射する段階であり、ここで超音波エネルギーは超音波エネルギー源により提供される。本態様は、超音波療法薬物が、照射に先立ち対象の非標的組織から排除されることをさらに提供する。本態様は、標的組織の経皮的超音波療法のための方法を含み、ここで標的組織は脂肪組織である。
【0016】
他のある態様は、超音波エネルギー源が患者の無傷皮膚層の外部にあるか、または患者の無傷皮膚層の下に挿入されることを企図する。追加的な態様は、超音波感受性物質がリガンドと共役することを提供し、より好ましくは、ここでリガンドは、脂肪細胞特異的抗体、脂肪細胞特異的ペプチド、および脂肪細胞特異的ポリマーからなる群より選択される。他の態様は、超音波感受性物質が以下からなる群より選択されることを企図する:インドシアニングリーン(ICG);メチレンブルー;トルイジンブルー;アミノレブリン酸(ALA);フタロシアニン;ポルフィリン;テキサフィリン;ピロフェオフォルバイド化合物;クロリン化合物;プルプリン;および500nm〜1100nmの範囲の光を吸収する他の任意の物質。特に、企図されるクロリンおよびプルプリン化合物は以下を含む:環状または非環状テトラピロールのモノ-、ジ-、またはポリアミドアミノジカルボン酸誘導体(Bommerら、米国特許第4,675,338号および同第4,693,885号を参照されたい);およびN置換環状イミド(プルプリン-18イミド)を有するピロフェオフォルバイド-aのアルキルエーテル誘導体(Pandeyら、国際公開公報第99/67249号を参照されたい)。ある一つの態様は、感光性物質がモノ-L-アスパルチルクロリンe6(NPe6)であることを企図する。
【0017】
他の態様は、本明細書中に開示される経皮的PDTの方法を含み、ここで光源は対象の標的組織に近接して位置し、かつ以下からなる群より選択される:LED光源;エレクトロルミネセンス光源;白熱光源;冷陰極蛍光光源;有機ポリマー光源;および無機光源。ある一つの態様は、LED光源の使用を含む。
【0018】
本明細書中に開示される方法のさらに他の態様は、約500nmから約1100nmの波長の、好ましくは約650nmより長く、より好ましくは約700nmより長い波長の光の使用を記述する。本方法のある一つの態様は、感光性物質による単一光子吸収モードをもたらす光の使用を記述する。
【0019】
追加的な態様は、感光性物質および特異性により標的組織の受容体に結合するリガンドを含む、感光剤標的化送達システムの組成物を含む。一つの態様において、標的化送達システムの感光性物質は、特異性により標的障害部位の受容体に結合するリガンドに共役する。好ましくは、リガンドは受容体に結合する抗体を含み、かつ受容体は脂肪細胞の抗原である。よりさらに好ましくは、リポタンパク質リパーゼ抗原であり、これは特異的かつ優先的にリポタンパク質リパーゼモノクローナル抗体に結合する(Satoら、Poultry Science 78:1286-1291 (1999)を参照されたい)。
【0020】
さらなる態様は、感光性物質が以下からなる群より選択されることを企図する:インドシアニングリーン(ICG);メチレンブルー;トルイジンブルー;アミノレブリン酸(ALA);フタロシアニン;ポルフィリン;テキサフィリン;クロリン化合物;プルプリン;および500nm〜1100nmの範囲の光を吸収する他の任意の物質。本発明の別の態様は、感光性物質がモノ-L-アスパルチルクロリンe6(NPe6)であることを企図する。
【0021】
また別の態様は、リガンド-受容体結合ペアが、ビオチン-ストレプトアビジンおよび抗原-抗体からなる群より選択されることを含む。
【0022】
さらに別の態様は、感光性物質がプロドラッグを含むことを企図する。
【0023】
他の態様は、以下の段階を含む、哺乳動物対象における標的細胞を破壊する経皮的PDTのための方法を企図する:治療有効量の感光性物質または感光性物質送達システムまたはプロドラッグを対象に投与する段階であり、ここで感光性物質または感光性物質送達システムまたはプロドラッグは、標的細胞に選択的に結合する。この段階に続くのは、感光性物質により、またはプロドラッグであればそのプロドラッグ産物により吸収される波長または周波帯の光により対象の少なくとも一部を照射する段階であり、ここで光は光源により提供され、かつ、照射は、感光性物質またはプロドラッグ産物の活性化、および標的細胞の破壊をもたらす比較的低いフルエンス率である。本態様は、感光性物質が該照射に先立ち対象の非標的組織から排除されることを企図する。
【0024】
またさらなる態様は、薬物送達パッチ法の投与により、感光性物質が局所的または非全身的に送達されることを提供する。本態様はまた、感光性物質を皮下脂肪組織へと駆動および方向付けする超音波の使用をも提供する。また別の方法論は、治療部位への経皮的な注射を提供する。
【0025】
発明の詳細な説明
アポトーシスは細胞死の特異な形態である。アポトーシスは、胚発生および成体組織の生理的退化の間など、正常な条件下で起こる。アポトーシスはまた、異常な条件の間にも起こり、または、放射線、腫瘍性薬物および他の毒素への曝露によっても誘導され得る。アポトーシスは脂肪細胞の低減において役割を果たしている可能性があることが示唆されている。Prins, J.ら、Diabetes 46:1939-1944 (1997)、およびPrins, J.ら、Biochem. Biophys. Research Comm. 205(1):625-630 (1994)を参照されたい。
【0026】
エネルギー活性化療法の一つの形態は、光力学的療法(PDT)である。PDTは癌および心臓病を含む範囲の疾患の治療に応用されている。Oleinick, N.ら、Radiation Research 150:S146-S156 (1998)を参照されたい。PDTはアポトーシスの誘導のために使用され得る。Ahmad, N.ら、Proc. Natl. Acad. Sci. 95:6977-6982 (1998);およびKessel, D.ら、Cell Death and Differentiation 6:28-35 (1999)を参照されたい。
【0027】
PDTは、最初に全身的または局所的に感光性化合物を投与し、続いて感光剤の吸収スペクトルに密接に合致する波長または周波帯で治療部位を照射することにより実施される。これにより、一重項酸素および他の活性種が生成され、細胞毒性をもたらす種々の生物学的効果が引き起こされる。組織における細胞毒性効果の深さおよび容積は、組織の光透過、感光剤の濃度および細胞局在、ならびに酸素分子の有効性の間の複雑な相互作用に依存する。
【0028】
使用される多数のPDTの光源および方法が記載されている。しかし、PDTの目的のための経皮的光送達の光源および効果を記載する報告は、より限定される。臨床的に有用な細胞毒性を引き起こす身体外部の光源の能力は、感光剤に依存して1〜2cmまたはそれ未満の範囲の深さに限定されることが、一般的に受け入れられている。したがって、皮下脂肪組織の段階的な低減は、深い組織への拡張された損傷を引き起こさずに、非侵襲的な様式で起こり得る。
【0029】
本明細書中に開示される方法、化合物、組成物およびキットは、脂肪細胞のネクローシスよりはむしろアポトーシスを誘導するために使用されるPDTを提供する。治療有効濃度の感光剤またはエネルギー活性化物質を投与すること、および照射エネルギーの量を調節することにより、ネクローシスの程度および引き続く炎症を最小化することができる。さらに、このことにより、急速なトリグリセリド流動化による他の有害な副作用を回避または減少可能であることを確実にすると考えられる。細胞性ネクローシスの誘導により脂肪組織が低減される過程と比較して、アポトーシス過程は、脂肪組織の蓄積物のより高度に制御された低減が可能である。
【0030】
しかし、この様式による皮下脂肪層の治療は、全ての全身的に投与される臨床用感作物質の特性である、皮膚における感光剤の蓄積による偶発的な皮膚損傷と関連し得る。例えば、臨床的に有用なPhotophrin(登録商標)(QLT, Ltd.、ナトリウムポルフィマーの商標)といったポルフィリンは、6週間まで続く感光性に関連する。プルプリンであるPurlytin(登録商標)、およびクロリンであるFoscan(登録商標)は数週間皮膚に感光性を与える。実際に、皮膚の感光性を低減する光防御物質を開発する努力がなされている(Dillonら、Photochemistry and Photobiology 48(2):235-238 (1988);およびSigdestadら、British J. of Cancer 74:S89-S92 (1996)を参照されたい)。事実、感光剤の全身的投与に関わるPDTプロトコールは、皮膚の光毒性反応の機会を低減するために、患者が太陽光および明るい室内光を回避することを要求する。
【0031】
一つのPDTの様式は、正確に限定された境界内で薬物を活性化する、強度レーザー源の使用を開示する。Fisherら、米国特許第5,829,448号を参照されたい。二光子法は、高度の空間的制御を要求する高度にコリメートされたビームによる薬物活性化のための高出力レーザーを要求する。この種類の治療は、ビームがある程度セットされた、経時的に繰り返し可能なパターンで皮膚表面を通って掃射されなければならないため、大きな領域の脂肪組織を治療することには実用的でない。ビームが整列しなくなる可能性があるため、患者または器官の動きが問題となるであろう。入手可能な文献においては、非標的組織または皮膚および皮下組織の光感受性については記述されていない。ビームの経路にある任意の感光剤は活性化され、望まれない副次的な組織の損傷を引き起こすであろう。
【0032】
したがって、脂肪組織のPDT低減においては一光子法が好ましい。一光子法により、低いフルエンス率による延長された照射が可能となり、これにより、非標的組織または皮膚および皮下正常組織の保護、および副次的な組織の損傷の低減が促進される。
【0033】
本発明は、脂肪細胞の表面または内部に見出されるような特異的な標的組織抗原への、感光性物質の選択的結合をさらに開示する。この標的化スキームは、有効な治療のために必要な感作薬物の量を減少させ、これにより全フルエンスを低減し、かつ有効な光活性化に必要なフルエンス率を減少させる。
【0034】
W.G. Fisherら、Photochemistry and Photobiology 66(2):141-155 (1997)により開示されるように、高出力レーザーに比べはるかに強度が低い光源、および
コリメートされた光を使用する短時間の曝露が好ましい。本発明は、光活性化深度を増加させるために約1時間より長く利用される、低出力非干渉光源の使用を可能とする。
【0035】
本発明は、感光性物質の標的組織、細胞または組成物への特異的および選択的な結合により、哺乳動物対象において標的組織を治療し、または、標的細胞もしくは組成物を破壊もしくは減損させるための方法および組成物を提供する。本方法は、感光性物質により吸収される波長の光により対象の少なくとも一部を照射する段階を含み、ここで、活性化の条件の下、光力学的療法の間、比較的低いフルエンス率を使用し、しかし全体として高い全フルエンス線量は最小限の副次的な組織の損傷をもたらす。
【0036】
本明細書において使用される用語は、当技術分野において認識される意味に基づき、かつ本開示により当業者によって明確に理解されるはずである。明確化のため、用語は文脈上の使用により明確である場合、特定の意味を有する可能性もある。例えば、「経皮的(transcutaneous)」とは、本明細書中において特に非破壊組織を通じた光の通過を指す。組織層が皮膚または真皮である場合、「経皮的」(transcutaneous)は「経皮的」(transdermal)を含み、かつ光源は皮膚外層の外部にある。しかし、本明細書中において、徹照(transillumination)が脂肪組織の層といった組織層を通じた光の通過を指す場合、光源は脂肪組織の外部にあるが、対象もしくは患者の内部にあるか、または、対象もしくは患者に移植されている。
【0037】
特に、本発明の態様は、対象または患者の特異的な標的抗原に対し、感光性物質または薬物および化合物を正確に標的化することに基づき、かつ、最小限の副作用もしくは副次的な組織の損傷を伴う、最大限の細胞毒性または経時的な脂肪細胞の低減を達成するために、比較的低いフルエンス率の光を、延長された期間、標的組織の外部にある光源から対象に引き続き投与することにより、標的化された感光性物質を活性化する方法に関する。
【0038】
さらに、本明細書中で使用される「標的細胞」または「標的組織」とは、それぞれ、本治療法により減損または破壊されることが意図される細胞または組織である。標的細胞または標的組織は、感光性物質を取り込み、その後十分な照射が適用された場合、これらの細胞または組織は減損または破壊される。標的細胞は標的組織における細胞であり、脂肪細胞および脂肪前駆細胞を含むが、これらに限定されない。
【0039】
「非標的細胞」とは、治療法により減損または破壊されることが意図されない無傷動物の全ての細胞である。これらの非標的細胞はストロマ細胞を含むが、これらに限定されず、標的化されることが他の場合に明らかにされない限り、他の正常組織を含む。
【0040】
「破壊」とは、所望の標的細胞を殺すことを意味するために使用される。「減損」とは、その機能を妨害するような方式で標的細胞を変化させることを意味する。例えば、Northらは、ベンゾポルフィリン誘導体(BPD)により処理されたウイルス感染T細胞を光に曝露した後、T細胞膜において穿孔が発生し、大きさが増加して膜が完全に分解されるに至ることを観察した(Blood Cells 18:129-40 (1992))。標的細胞は、マクロファージにより最終的に処分される場合であっても、減損または破壊されるものと理解される。
【0041】
「感光性物質」とは、1つまたは複数の種類の選択された標的細胞を目標とする化合物であり、かつ照射を伴う場合に光を吸収し、標的細胞の減損または破壊をもたらす。事実上、選択された標的に達し、かつ光を吸収する任意の化合物が本発明において使用され得る。好ましくは、化合物は投与される動物に対し無毒であり、または、無毒な組成物において製剤化され得る。好ましくは、化合物は、その光分解型においても無毒である。感光性化合物の理解しやすいリストは
、Kreimer-Birnbaum、Sem. Hematol. 26:157-73 (1989)において見出され得る。感光性化合物は以下を含むが、これらに限定されない:インドシアニングリーン(ICG);メチレンブルー;トルイジンブルー;アミノレブリン酸(ALA);フタロシアニン;ポルフィリン;テキサフィリン;バクテリオクロリン、メロシアニン、ソラレン、ベンゾポルフィリン誘導体(BPD)およびナトリウムポルフィマー、およびプロトポルフィリンといった薬物を生成可能なδアミノレブリン酸といったプロドラッグ。さらに、以下が含まれる:クロリン化合物、プルプリン;および500nm〜1100nmの範囲の光を吸収する他の任意の物質。より具体的には、本発明において企図されるクロリンおよびプルプリン化合物は以下を含む:環状または非環状テトラピロールのモノ-、ジ-、またはポリアミドアミノジカルボン酸誘導体(Bommerら、米国特許第4,675,338号および同第4,693,885号を参照されたい);およびN置換環状イミド(プルプリン-18イミド)を有するピロフェオフォルバイド-aのアルキルエーテル誘導体(Pandeyら、国際公開公報第99/67249号を参照されたい)。具体的には、モノ-L-アスパルチルクロリンe6(NPe6)の誘導体、および500nm〜1100nmの範囲の光を吸収する他の任意の物質が含まれる。
【0042】
本明細書中で使用される「照射」とは、全ての波長を含む。好ましくは、照射波長は感光性化合物を励起する波長に合致するように選択される。さらにより好ましくは、照射波長は、感光性化合物の励起波長に合致し、かつ、非標的細胞および血液タンパク質を含む無傷動物の残りの部分による低い吸収を有する。例えば、NPe6に対する好ましい波長は、600〜800ナノメートルの便利な範囲であり、好ましい化合物の吸収は620〜760ナノメートルの範囲にある。
【0043】
照射は、強度、持続時間、および感光性物質の投与に関するタイミングによりさらに規定される。強度およびフルエンス率は、照射が皮膚を透過し、かつ標的細胞、標的組織または標的組成物に到達するために十分でなければならない。持続時間または全フルエンス線量は、標的細胞に作用する十分な感光性物質を光活性化するために十分でなければならない。強度および持続時間の双方は、動物の過剰な治療を回避するために限定されなければならない。(1)投与された感光性物質は標的細胞に達するためにいくらかの時間を要すること、(2)多くの感光性物質の血中レベルは時間に伴い急速に減少することから、感光性物質の投与に関するタイミングは重要である。
【0044】
本発明はヒトおよび他の哺乳動物を含むがそれらに限定されない、動物の治療の方法を提供する。「哺乳動物」または「哺乳動物対象」という用語はまた、ウシ、ブタ、ヒツジといった畜産動物、ならびにウマ、イヌおよびネコといった愛玩動物および競技動物をも含む。
【0045】
「無傷動物」とは、分割されていない動物全体が照射に曝露されることが可能であることを意味する。動物のいかなる部分も別途の照射のために除去されない。動物全体が照射に曝露される必要はない。無傷動物対象の一部のみが照射に曝露される可能性または必要がある。
【0046】
本明細書中で使用される「経皮的に」とは、動物対象の皮膚を通じてという意味である。
【0047】
端的には、感光性物質は一般的に動物を照射に供する前に動物に投与される。
【0048】
好ましい感光性物質は以下を含むが、それらに限定されない:インドシアニングリーン(ICG)(例えば国際公開公報第92/00106号(Ravenら);国際公開公報第97/31582号(Abelsら)およびDevoisselleら、SPIE 2627:100-108 (1995)を参照されたい);メチレンブルー;トルイジンブルー;およびプロトポルフィリンといった薬物を生成可能なδアミノレブリン酸といったプロドラッグ;バクテリオクロリン;フタロシアニン;ポルフィリン;テキサフィリン;クロリン化合物;プルプリン;メロシアニン;ソラレン、および500nm〜1100nmの範囲の光を吸収する他の任意の物質。より具体的には、本発明において企図されるクロリンおよびプルプリン化合物は以下を含む:環状または非環状テトラピロールのモノ-、ジ-、またはポリアミドアミノジカルボン酸誘導体(Bommerら、米国特許第4,675,338号および同第4,693,885号を参照されたい);およびN置換環状イミド(プルプリン-18イミド)を有するピロフェオフォルバイド-aのアルキルエーテル誘導体(Pandeyら、国際公開公報第99/67249号を参照されたい)。さらなる感光性物質は、モノ-L-アスパルチルクロリンe6(NPe6)である(米国特許第4,693,885号を参照されたい)。
【0049】
感光性物質は局所的または全身的に投与される。感光性物質は、経口的に投与されるか、または、静脈内、皮下、筋肉内もしくは腹腔内であり得る注射により投与される。感光性物質はまた、パッチまたは移植を介して外的または局所的にも投与され得る。
【0050】
感光性物質はまた、受容体特異的リガンドまたはイムノグロブリンまたはイムノグロブリンの免疫特異的部分といった、標的と反応する特異的なリガンドに共役させることもでき、所望の標的細胞または微生物においてより濃縮させることが可能となる。感光性物質は、ビオチン-ストレプトアビジンおよび抗原-抗体を含むがこれらに限定されない、リガンド-受容体結合ペアにさらに共役させることができる。この共役物は、材料がより選択的に標的化され、かつ、破壊が回避されるべき他の組織への分布において浪費される量が少ないため、要求される用量レベルを低くすることを可能とし得る。
【0051】
一つの態様において感光性物質を、溶液、懸濁物、錠剤、散剤、丸剤、カプセル、粉末、徐放製剤またはエリキシル剤といった経口投与のために適切な薬学的調製物に製剤化することが可能であり、または、非経口投与のための無菌溶液または懸濁物、ならびに経皮的パッチ調製物および乾燥粉末吸入器において製剤化することが可能である。一つの態様において、上に記載した化合物は当技術分野において周知の技術および手順を使用して薬学的組成物に製剤化される(Ansel、Introduction to Parmaceutical Dosage Forms, Fourth Edition, p.126, 1985を参照されたい)。感光性物質は、錠剤、丸剤、カプセル、粉末、顆粒、坐剤、パッチといった乾燥製剤において投与され得る。感光性物質はまた、水だけを伴うか、または、Remington's Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Company, Easton, PA, 15th Edition, 1975において開示されるような薬学的に許容される賦形剤を伴うかのいずれかで、液体製剤においても投与され得る。液体製剤はまた、懸濁物または乳剤でもあり得る。特に、リポソーム製剤または脂肪親和性製剤が最も望ましい。懸濁物または乳剤が利用される場合、適切な賦形剤は、水、食塩水、デキストロース、グリセロールなどを含む。これらの組成物は、湿潤物質または乳化物質、酸化防止剤、pH緩衝物質などといった少量の無毒な補助物質を含んでもよい。
【0052】
感光性物質の用量は、目標とされる標的細胞、最適な血中レベル(実施例1を参照)、動物の体重および照射のタイミングにより変動するであろう。使用される感光性物質により、同等の最適な治療レベルが確立されなければならないであろう。好ましくは、用量は約0.001μg/ml〜約100μg/mlの間の血中レベルを得るように算出される。好ましくは、用量は約0.01μg/ml〜約10μg/mlの間の血中レベルを得るであろう。
【0053】
本方法は、感光性物質により吸収される波長または周波帯の光により対象の少なくとも一部を照射する段階を含み、ここで、活性化の条件の下、光力学的療法の間、比較的低いフルエンス率を使用し、しかしまた全体として高い全フルエンス線量は最小限の副次的な組織の損傷をもたらす。最適な全フルエンスは、光量の段階的試行を使用して臨床的に決定されるであろうことが企図される。全フルエンスは、好ましくは30〜25,000ジュール/cm2の範囲、より好ましくは100〜20,000ジュール/cm2の範囲、最も好ましくは500〜10,000ジュール/cm2の範囲となることがさらに企図される。
【0054】
本方法は、感光性物質により吸収される波長または周波帯の光により対象の少なくとも一部を照射する段階を含み、ここで、活性化の条件の下、光力学的療法の間、比較的低いフルエンス率を使用し、しかし全体として高い全フルエンス線量は最小限の副次的な正常組織の損傷をもたらす。「比較的低いフルエンス率」により意味されるのは、典型的に使用されるものと比べ低く、かつ付随する組織または非標的組織の有意な損傷を一般的にもたらさないフルエンス率である。特に、標的細胞または標的組織を治療するために使用される照射の強度は、好ましくは約5mW/cm2〜約100mW/cm2の間である。より好ましくは、照射の強度は約10mW/cm2〜約75mW/cm2の間である。最も好ましくは、照射の強度は約15mW/cm2〜約50mW/cm2の間である。
【0055】
照射曝露の持続時間は、好ましくは約30分〜約72時間の間である。より好ましくは、照射曝露の持続時間は約60分〜約48時間の間である。最も好ましくは、照射曝露の持続時間は約2時間〜約24時間の間である。勿論、治療部位に送達される最適なフルエンス率および全フルエンスを決定するために、慣例的な臨床試験が有用となるであろう。
【0056】
理論により限定されることを望まないが、本明細書においては、治療的に妥当な期間内において、かつ、非標的組織に対して過剰な毒性または副次的な損傷を伴わずに、標的細胞および標的組織において感光性物質が実質的かつ選択的に光活性化され得ることが提唱される。したがって、感光性物質用量および照射線量により拘束される治療ウィンドウが存在することが考えられる。感光性物質の光分解産物の形成は、光活性化の指標として使用された。感光性物質の光活性化は、細胞毒性またはアポトーシス効果を有する一重項酸素の形成を引き起こすことの前提となっている。
【0057】
加えて、ある態様は、以下の段階による、哺乳動物対象または患者における脂肪組織の経皮的な超音波療法のための方法を記述する:抗体または抗体断片に共役したリガンド-受容体結合ペアの第一のメンバーを含む治療有効量の第一の共役物を対象に最初に投与する段階であって、該抗体または抗体断片は脂肪細胞の標的抗原に選択的に結合する、段階;および、超音波感受性物質または超音波感受性物質送達システムまたはプロドラッグに共役したリガンド-受容体結合ペアの第二メンバーを含む治療有効量の第二共役物を、対象に同時にまたは引き続いて投与する段階であって、リガンド-受容体結合ペアの第一のメンバーが第二のメンバーに結合する、段階。これらの段階に続くのは、該超音波感受性物質により、または超音波感受性物質送達システムであればその産物により吸収される波長のエネルギーにより対象の少なくとも一部を照射する段階であり、ここで該エネルギーは対象の外部にあるエネルギー源により提供され、かつ、該超音波は該超音波感受性物質またはプロドラッグ産物の活性化をもたらす比較的低い強度率である。
【0058】
1つの態様は、光および感光性物質を使用する脂肪組織の光力学的療法における光エネルギーの使用を記述する。他のエネルギーの形態は本発明の範囲内にあり、かつ当業者により理解することができる。そのようなエネルギーの形態は以下を含むが、それらに限定されない:熱エネルギー、音波エネルギー、超音波エネルギー;化学エネルギー;光子または光エネルギー;マイクロ波エネルギー;X線およびγ線といったイオン化エネルギー;および電気化学エネルギー。例えば、音響力学的に誘導されるまたは活性化される物質は、ガリウム-ポルフィリン複合体;ならびにプロトポルフィリンおよびヘマトポルフィリンといった他のポルフィリン複合体を含むが、それらに限定されない。Yumitaら、Cancer Letters, 112:79-86, 1997;およびUmemuraら、Ultrasonics Sonochemistry 3:S187-S191 (1996)を参照されたい。本態様は、標的組織の外部にあるエネルギー源の使用をさらに企図する。標的組織は脂肪細胞自体を含み、かつそれに関連し得る。
【0059】
当業者は、公知の、および現在までに発見されていないものを含む種々のリガンド-受容体結合ペアに精通していると考えられる。公知のリガンド-受容体結合ペアは、ビオチン-ストレプトアビジンおよび抗原-抗体からなる群を含むが、これらに限定されない。本発明はリガンド-受容体結合ペアとしてのビオチン-ストレプトアビジンの使用を含む態様を企図する。しかし、リガンド-受容体結合ペアが、リガンドによる受容体への結合において特異性を示す場合、および、さらに、リガンド-受容体結合ペアが抗体または抗体断片に共役するリガンド-受容体結合ペアの第一のメンバーを含む第一の共役物の作製を可能にする場合であって、該抗体または抗体断片が脂肪細胞の標的抗原に選択的に結合する場合;および、エネルギー感受性物質もしくは感光性物質、またはエネルギー感受性物質もしくは感光性物質送達システムまたはプロドラッグに共役するリガンド-受容体結合ペアの第二のメンバーを含む第二の共役物の作製をさらに可能にする場合であって、さらに、リガンド-受容体結合ペアの第一のメンバーが第二のメンバーに結合する場合に、リガンド-受容体結合ペアが有用であり得ることを、当業者は本開示により容易に理解するであろう。
【0060】
リガンド-受容体ペアの別の群は、エネルギー感受性物質もしくは感光性物質、またはエネルギー感受性物質もしくは感光性物質送達システムまたはプロドラッグと、以下よりなる群から選択されるリガンド-受容体結合ペアの第一のメンバーとの共役物を含む:脂肪細胞特異的抗原に対する抗体;特定の脂肪細胞受容体に結合可能なリガンド;および特定の脂肪細胞表面成分に結合可能な他のリガンド。このような第一のリガンド-受容体メンバーペアは、脂肪細胞特異的抗原、脂肪細胞特異的受容体または他の脂肪細胞特異的細胞表面成分であり得る、リガンド-受容体結合ペアの第二のメンバーに選択的および特異的に結合するであろう。この様式により、エネルギー活性化物質は、選択されるリガンド-受容体結合ペアに対応する脂肪細胞の標的細胞に特異的に送達される。例えば、リポタンパク質リパーゼ抗原へと方向付けられるモノクローナル抗体は、リポタンパク質リパーゼに特異的かつ優先的に結合する(Satoら、Poultry Science 78:1286-1291 (1999)を参照されたい)。
【0061】
別の態様は、感光性物質送達システムが本質的に感光性物質からなるリポソーム送達システムを含む方法を記述するが、他の送達システムが使用され得ることを当業者は本開示により容易に理解するであろう。1つの態様においては、腫瘍標的化リポソームといった組織標的化リポソームを含むリポソーム懸濁物は、薬学的に許容される担体としても適切であり得る。これらは当業者に公知の方法に従って調製され得る。例えば、リポソーム製剤は米国特許第4,522,811号に記載されたように調製され得る。またさらなる態様は、感光性物質送達システムがリポソーム送達システムおよび感光性物質の双方を利用する、開示された方法を企図し、ここでそれぞれはリガンド-受容体結合ペアの第二のメンバーと個別に共役し、かつ、リガンド-受容体結合ペアの第一のメンバーは第二のメンバーと結合し、かつ、より好ましくはリガンド-受容体結合ペアはビオチン-ストレプトアビジンである。本態様は、第一のメンバーの結合ペアの抗体または抗体断片による標的組織抗原への選択的結合を通じて、感光性物質および感光性物質送達システムの双方が特異的に標的化され得ることをさらに企図する。このような二重の標的化は、取り込みの特異性を増強し、かつ取り込みの質を増大させるために構想される。
【0062】
本明細書において本発明を一般的に記載しているが、本発明は、例証のために提供され、かつ特定されない限り本発明を限定することを意図しない以下の実施例の参照を通じて、より容易に理解されるであろう。
【0063】
実施例1
脂肪組織の経皮的光力学的療法
感光剤は全身的または局部的に投与され得る。全身投与の場合、感光剤は脂肪組織または脂肪細胞による選択的な取り込みを可能にする物質と共役する。局部送達の場合、感光剤は局所的に投与され得る。皮下脂肪組織への皮膚浸透および局在を増強する超音波といった方法が局所投与に引き続いてもよい。または、感光剤は、拡散が起こり、かつ感光剤の適切な分散を可能とする治療部位へ経皮的に注射されてもよい。
【0064】
好ましい光活性化過程は、脂肪細胞のネクローシスではなくアポトーシスを誘導する過程である。これは、炎症、および急速なトリグリセリド流動化による他の副作用を低減する。アポトーシス過程は、ネクローシスが起こる過程と比較して、脂肪組織の制御された低減が可能である。PDTに供された脂肪細胞の内部の
トリグリセリドは段階的に解放され、かつ周囲の細胞により代謝される。
【0065】
アポトーシスは、特異的なエンドヌクレアーゼにより誘導されるDNA切断、クロマチン凝集の発生を確認する、電気泳動に続く特徴的な「ラダー化」、および脂質に富む間質マクロファージの観察により、組織外植片において決定され得る。
【0066】
A. 脂肪細胞および脂肪組織は、経皮的な光力学的療法により効果的に減少し得る。標的化された抗体-感光剤共役物(APC)は、NPe6といった感光性物質を、リポタンパク質リパーゼといった脂肪細胞特異的抗原に結合する抗体に連結することにより調製される。このAPCは、当業者にとって入手可能な任意の手段により、治療部位に送達される。例えば、APCは、皮下皮膚層の下への局所的な注射により送達され、または静脈内注射により全身的に送達され得る。他のAPCの製剤の送達は、経口製剤または局所的製剤を含み得る。
【0067】
Elstromら、米国特許第5,999,847号は、光源からの光を音響エネルギーに変換する、組織に接触した光源およびカップリングインターフェースを用いて標的細胞に近接した組織に適用される、局在化された、かつ一過的な圧力波の使用を開示する。この圧力波は細胞膜の一過的な細孔形成を引き起こす。治療物質は、針による注射といった任意の適切な手段により、局在化された圧力波の部位に送達される。光源およびカップリングインターフェースを、疾患を有する血管への圧力波の適用のためにカテーテルに組み入れてもよい。物質の注射のための針、光源、およびカップリングインターフェースを組み入れた、手動で操作可能な外科的装置もまた使用され得る。
【0068】
過剰な感光性物質共役物は自然に身体から排除される。1つまたは複数の光源が戦略的に配置され、または治療すべき組織の近くに移植される。6時間といった、非標的組織からの共役物の除去を可能にするための十分な量の時間に続き、50mW/cm2で5時間といった比較的低いフルエンス率により、しかし、900ジュール/cm2といった光の高い全フルエンス線量をもたらす、約620nm〜約760nmの波長において標的組織を照射する光源が活性化される。光は内的にまたは外的に適用され得る。
【0069】
感光剤共役物の特定の用量は、約0.001μg/ml〜約100μg/mlの間の血中レベルを得るのに十分な活性化NPe6の濃度をもたらすものであり、かつより好ましくは、約0.01μg/ml〜約10μg/mlの間の用量である。しかし、標準の臨床的実施および手順を使用して特定の治療有効用量を決定することは、十分に当業者の技術の範囲内にある。
【0070】
同様に、特定のフルエンス率および全フルエンス量は、本明細書の開示から慣例的に決定され得る。
【0071】
加えて、上記の共役物は、テクネチウムといった画像化物質にさらに共役し得る。したがって、方法は、核医学スキャンを実施する段階、および治療すべき部位を画像化する段階をさらに含むことができる。
【0072】
B. または、実施例1Aの開示に続き、リポタンパク質リパーゼ以外であり、かつまた脂肪細胞に本来存在するか、または関連する第二の抗原に選択的に結合する感光性物質を連結することにより、第二のAPCが構築され得る。感光剤は代わりに受容体-リガンド結合ペアに連結されてもよく、ここで一方の結合ペアは脂肪細胞に特異的に結合し、かつ他方の結合ペアは感光性物質に連結される。このような受容体-リガンド結合ペアは以下を含み得る:ホルモン-ホルモン受容体;ケモカイン-ケモカイン受容体;または他のシグナル伝達受容体およびその天然のリガンド。リガンド-受容体結合ペアまたはAPCは静脈内に浸出し、かつ脂肪組織において取り込まれる。結合しない場合、APCは身体から排除される。内部光源または外部光源は標的化された薬物を活性化するために使用することができ、しかし、本実施例においては外部光源が企図される。
【0073】
成分が脂肪細胞に特異的に結合する場合、任意の数の光源またはリガンド結合ペア成分が選択され得る。このような抗原またはリガンド結合ペア成分は当業者に公知であろう。感光性物質が、500nm〜1100nmの波長、より好ましくは620nmの波長、最も好ましくは700nmまたはそれより長い波長の光により活性化される場合、特定の感光性物質の選択がなされ得る。本開示において提供されるように、このような感光性物質は本明細書の使用のために企図される。
【0074】
C. 上記の実施例1Aおよび1Bの開示に続き、PDT光源は、電源に接続され(1)、かつ治療すべき部位へ方向付けられた、外部に位置する光源である。光源はレーザーダイオード、発光ダイオード(3)または他の電子発光装置であり得る。光源は皮膚層(4)に対して角度付けられ(2)または垂直に配置され(3)、かつ光ビームは、脂肪組織の脂肪細胞(5)に結合した感光性物質の光活性化を引き起こすために、治療される哺乳動物対象の皮膚または膜を通じて光を方向付けるように焦点を合わされる。図1を参照されたい。
【0075】
または、光源は発光ダイオード(LED)(7)のストリップまたはパネルを含むことができ、これらはその後、哺乳動物対象における治療すべき部位に横たわる皮膚または膜に並列される。図3を参照されたい。光源はまた、光学ファイバーディフューザー(8)を含むことができ、これは哺乳動物対象における治療すべき部位に横たわる皮膚または膜の上に配置される。このようなディフューザーは、標的領域へ光ビームを方向付ける鏡面(9)をさらに含み得る。図4を参照されたい。
【0076】
D. 当業者にとって明白なように、上記の方法および組成物は種々の応用法を有する。例えば、哺乳動物対象における脂肪組織の小さな領域を、LEDから構成されるパッチまたは光学ファイバーが織り込まれたマットを利用することにより治療することができ、ここで光源パッチまたはマットは、治療すべき部位に横たわる皮膚または組織の上に配置される。さらに、パッチまたはマットは、薬学的組成物または感光性物質を含有することもでき、これはその後、リポソーム技法、経皮的技法またはイオノフォア技法により送達され得る。
【0077】
実施例2
脂肪組織の徹照光力学療法
実施例1Aの方法に続き、共役物は、NPe6とリポタンパク質リパーゼに対するモノクローナル抗体との間で形成される。このような共役物は、実施例1Aにおいて開示された様式により送達される。内部光源は、最小限に侵襲的な手順により外科的に提供される。LED(2)は光学ファイバー(6)に接続され、かつ組織の皮下層(4)の下に外科的に挿入される。例えば、Chenら、米国特許第5,766,234号は、局所部位における光力学的療法のためのLED光源を有する光学ファイバーの移植を開示する。Paoliniら、米国特許第5,954,710号もまた、光学ファイバー運搬器およびファイバーを誘導するための中空の針に接続したレーザー光源を使用して皮下脂肪層を除去する装置および方法を開示し、ここで該ファイバーは針の末端の近傍において終結する。
【0078】
本発明は、直接的な記載により、かつ実施例により記載されている。上に注記したように、実施例は単なる事例であることを意味し、本発明を限定することを全く意味しない。加えて、本発明が属する当業者は、明細書および添付の特許請求の範囲を検討することにより、これらの本発明の請求の局面に対する同等物が存在することを認識するであろう。本発明者らは、これらの同等物を本請求の発明の妥当な範囲の内部に包含することを意図する。
【0079】
上記の文献の引用は、前述のいずれかが直接関連する先行技術であると承認することを意図しない。これらの文献の期日または内容についての提示に関する全ての記述は出願人にとって入手可能な情報に基づき、これらの文献の期日または内容の正確性に関する承認を構成するものではない。さらに、本出願を通じて参照される全ての文献は、その全体が参照として本明細書に組み入れられる。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】脂肪組織(5)に焦点を合わせ(3)、かつ焦点を合わせず角度を付けて配置し(2)、かつ皮膚層(4)の外部にあるレーザーダイオード光源を用いる経皮的PDTを説明する図を示す。
【図2】皮膚層(4)の下に挿入するが脂肪細胞(5)の外膜の外部に配置したレーザーダイオード光源(2)からの光の光学ファーバー(6)送達を用いるPDTを示す。
【図3】ストリップ光学ディフューザー(7)またはファイバー光学ディフューザー(7)に並列された多数のLEDを含み、かつ皮膚層(4)の外部に配置した光源を用いる経皮的PDTを示す。
【図4】レーザーダイオード光源(示されていない)からの光の送達による、光学ファイバーに取り付けた光学ディフューザー(8)を用いる経皮的PDTを説明する。
【図4A】治療領域に向けて光を方向付ける鏡面(9)を有する光学ファイバーの末端図を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の段階を含み、かつPDT薬物が照射に先立ち対象の皮膚および皮下組織から排除される、哺乳動物対象において脂肪組織または脂肪細胞を低減するための光力学的療法のための方法:
治療有効量の感光性物質または感光性物質送達システムまたはプロドラッグを対象に投与する段階であって、該感光性物質または該感光性物質送達システムまたは該プロドラッグは、脂肪組織または脂肪細胞に選択的に局在化する、段階;
該感光性物質により、またはプロドラッグであればそのプロドラッグ産物により吸収される波長の光により対象の少なくとも一部を照射する段階であって、該光は光源により提供され、かつ、該照射は、該感光性物質または該プロドラッグ産物の活性化をもたらす比較的低いフルエンス率で投与される、段階。
【請求項2】
光源が以下の1つまたは複数からなる群より選択される、請求項1記載の方法:レーザーダイオード;発光ダイオード;エレクトロルミネセンス光源;白熱光源;冷陰極蛍光光源;有機ポリマー光源;または無機光源。
【請求項3】
光源が皮膚層の外部にあり、かつ光ビームが皮膚を通じて脂肪組織または脂肪細胞へ方向付けられる、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
レーザーダイオードが光学ファイバーと複合し、かつ該光学ファイバーは光を脂肪組織または脂肪細胞へ方向付ける、請求項2記載の方法。
【請求項5】
発光ダイオードが発光ダイオードストリップであり、かつ該発光ダイオードストリップは皮膚層の外部に配置され、かつ脂肪組織または脂肪細胞に横たわる、請求項2記載の方法。
【請求項6】
脂肪組織または脂肪細胞の上に配置された場合に光学ファイバーが光を散乱させる、請求項4記載の方法。
【請求項7】
光源が複数の光学ファイバーを含むマットである、請求項4または6記載の方法。
【請求項8】
感光性物質が以下からなる群より選択される、請求項1〜7のいずれか一項記載の方法:インドシアニングリーン;メチレンブルー;トルイジンブルー;δアミノレブリン酸;プロトポルフィリン;バクテリオクロリン;フタロシアニン;ポルフィリン;テキサシアニン;メロシアニン;ソラレン;ピロフェオフォルバイド;クロリン;プルプリン;および500nm〜1100nmの範囲の光を吸収する他の任意の物質。
【請求項9】
感光性物質が、環状または非環状テトラピロールのモノ-、ジ-、またはポリアミドアミノジカルボン酸誘導体である、請求項8記載の方法。
【請求項10】
感光性物質がモノ-L-アスパルチルクロリンe6(NPe6)である、請求項1〜9のいずれか一項記載の方法。
【請求項11】
波長が約500nm〜約1100nmである、請求項1記載の方法。
【請求項12】
波長が約700nmより長い、請求項1または11記載の方法。
【請求項13】
光が感光性物質による単一光子吸収モードをもたらす、請求項1〜12のいずれか一項記載の方法。
【請求項14】
感光性物質を含む複合体が、脂肪組織または脂肪細胞に局在化する脂肪組織特異的リガンドに共役する、請求項8記載の方法。
【請求項15】
リガンドが、脂肪細胞抗原、脂肪細胞受容体、または他の脂肪細胞表面成分である、請求項14記載の方法。
【請求項16】
抗原がリポタンパク質リパーゼである、請求項15記載の方法。
【請求項17】
複合体が全身的または局所的に投与される、請求項14記載の方法。
【請求項18】
複合体が、経口的な、局所的な、静脈内への、または注射の任意の経皮的経路による投与のために製剤化される、請求項17記載の方法。
【請求項19】
複合体が皮膚および皮下脂肪組織中へ浸透することを可能にする方法が局所的投与に続く、請求項17記載の方法。
【請求項20】
光源が対象の皮膚層の内部に挿入される、請求項8記載の方法。
【請求項21】
脂肪細胞のアポトーシスにより脂肪組織または脂肪細胞の低減が起こる、請求項1〜20のいずれか一項記載の方法。
【請求項22】
対象の外部にある光源を含み、かつ以下の1つまたは複数からなる群より選択される、哺乳動物対象における脂肪組織または脂肪細胞の経皮的な光力学的療法のための機器:レーザーダイオード;発光ダイオード;エレクトロルミネセンス光源;白熱光源;冷陰極蛍光光源;有機ポリマー光源;または無機光源。
【請求項23】
光源が、光を脂肪組織または脂肪細胞へ方向付ける光学ファイバーと複合した、少なくとも1つのレーザーダイオードである、請求項22記載の機器。
【請求項24】
ダイオードが発光ダイオードストリップであって、かつ、該発光ダイオードストリップが治療すべき脂肪組織の輪郭を描くように皮膚の上に配置され得る、請求項22または23記載の機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図4A】
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【公表番号】特表2007−508860(P2007−508860A)
【公表日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−535337(P2006−535337)
【出願日】平成16年10月15日(2004.10.15)
【国際出願番号】PCT/US2004/034042
【国際公開番号】WO2005/037372
【国際公開日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【出願人】(502371484)ライト サイエンシズ コーポレイション (4)
【氏名又は名称原語表記】LIGHT SCIENCES CORPORATION
【住所又は居所原語表記】34931 SE Douglas Street, Suite 200, Snoqualmie, WA 98605 U.S.A
【Fターム(参考)】