説明

局部の洗浄方法

【課題】安価で、局部に対する刺激がなく、副作用がなく、効果的に殺菌が行える、局部洗浄方法を提供する。
【解決手段】稀塩酸を電解し調製された、pHが4以上7以下、有効塩素濃度が5ppm以上50ppm以下、の微酸性電解水を、噴射式ノズルが折畳式若しくは可撓式で、先端に複数の細孔を備えた持ち運び可能な遮光性柔軟樹脂製容器に入れ、容器に充填された微酸性電解水を、局部の洗浄や洗浄用トイレの洗浄水として用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、局部の洗浄方法に関する。より詳しくは、微酸性電解水を用いた局部の洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
人の小排泄口や大排泄口或いはその周辺は構造が複雑であること、排泄物に触れる機会があること、或いは外気に晒される機会が少ないことなどの理由から、排泄物による汚染の機会が多く、さらに過湿になりやすいため、炎症や微生物感染を起こしやすい。特に女性の場合は構造的に罹患のリスクが高く、カンジダ症、トリコモナス症など、女性に症状の出やすい婦人病も知られている。痔疾も損傷部分が微生物感染を引き起こし、症状を悪化させることもあり、又、単なる炎症の場合も最終的には微生物感染を引き起こし、微生物の作用による各種の病状が出現する。そのような炎症や感染は、特徴的な病態の他にも、副次的に発生する不快感や痒みなどがあり、日常的に生活を不快にさせていることが多い。
【0003】
しかし、それらの部位の皮膚は弱く、薬剤などにも極めて感受性が高いため、治療のために刺激の強い薬剤や、副作用の懸念される薬剤を使用することは困難であり、そのことが潜在患者の増加の1つの要因ともなっているとも考えられる。副次的に発生する痒みや不快感は、そのほとんどが排泄物による汚れと微生物汚染に起因しているため、それが解消されれば大部分の不具合は解決するものと考えられる。従って、刺激が少なく殺菌効果の高い洗浄方法があれば多くの患者にとって朗報となるのである。
【0004】
現在、そのような症状を解消するのが目的と考えられる洗浄方法あるいは装置に関連する多くの技術が開示されている。そのような技術のうち、特許文献1には、局部を洗浄する水にアルカリ性水または弱酸性水を用いる装置について記載されている。又、特許文献2には、オゾン水を肛門や会陰部の洗浄に用いる装置について記載されている。さらに、特許文献3には、電解水生成手段を備えた、電解水で局部を洗浄する携帯可能装置について記載されている。
【0005】
【特許文献1】特開2000−73431号公報
【特許文献2】特開2008−161858号公報
【特許文献3】特開平11−28172号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
局部の汚れや細菌感染による問題を解決するためには、前述の通り、刺激や副作用のない効果的な殺菌洗浄が必要であり、さらに、日常的に利用するためには安価であることも重要である。その点で、特許文献1に示した技術は、洗浄水に単に水酸化イオンや水素イオンを生成する物質を加えるものであるので、特に殺菌効果は望めず、前記の各種の症状や不具合の解消はできない。
【0007】
又、特許文献2に示した技術は、オゾンを含有したオゾン水を用いる技術であるが、オゾン水そのものに殺菌効果はあるものの、安定性は極めて悪く、使用の直前に生成しなければならない。従って装置は大掛かりになり、高価になるという欠点がある。
【0008】
さらに、特許文献3に示した技術は、電解水による洗浄装置であるが、隔膜式電解槽で塩類を電解し生成される強酸性電解水を呼ばれるものであり、殺菌効果はあるものの、塩類を含むことや強い酸性であることから、皮膚への刺激が危惧される。又、同時に生成されるアルカリ性の水は殺菌効果が無いことから、水の無駄が生じる。さらに、電解水生成装置を備えていることから、原液容器を含めて装置が大型となる欠点もある。
【0009】
そこで本発明者は、安価で、局部に対する刺激がなく、副作用がなく、効果的に殺菌が行える方法を提供することを本発明が解決しようとする課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0010】
希塩酸を電解して生成する微酸性電解水は、皮膚、目などへの刺激がなく毒性も無いことが確認されており、食品添加物にも指定されている。さらに食塩などの塩類を含まないために、使用後塩類が濃縮あるいは乾燥し皮膚を刺激する恐れも無い。一方、殺菌効果も高く、ウイルス、真菌、細菌等、殆どの種類の微生物に対して殺菌効果が認められている。従って、微酸性電解水を利用した以下に示す各態様を本課題を解決するための手段として提供した。
【0011】
まず、稀塩酸を電解し調製された、pHが4以上7以下、有効塩素濃度が5ppm以上50ppm以下の微酸性電解水を局部の洗浄に用いることを、本課題を解決する手段の第1の態様とした。
【0012】
又、第1の態様において、持ち運び可能な容器に充填された微酸性電解水を用いることを、本課題を解決する手段の第2の態様とした。
【0013】
又、第2の態様において、持ち運び可能な容器が遮光性の柔軟樹脂製で、噴出ノズルを備えていることを、本課題を解決する手段の第3の態様とした。
【0014】
又、第3の態様において、噴出ノズルが折畳式若しくは可撓式であることを、本課題を解決する手段の第4の態様とした。
【0015】
又、第3又は4の態様において、噴出ノズルの先端に複数の細孔を備えていることを、本課題を解決する手段の第5の態様とした。
【0016】
そして又、第1の態様において、微酸性電解水を洗浄用トイレの洗浄水として用いることを、本課題を解決する手段の第6の態様とし、本発明を完成した。
【発明の効果】
【0017】
本発明の効果は以下の通りである。まず、稀塩酸を電解し調製された、pHが4以上7以下、有効塩素濃度が5ppm以上50ppm以下の微酸性電解水を局部の洗浄に用いることとしたことにより、安価で、局部に対する刺激がなく、副作用がなく、効果的に局部を殺菌洗浄する方法を提供した。
【0018】
又、持ち運び可能な容器に充填された微酸性電解水を用いることとしたことにより、外出先などでも、安価で、局部に対する刺激がなく、副作用がなく、効果的に局部を殺菌洗浄する方法を提供した。
【0019】
又、持ち運び可能な容器が遮光性の柔軟樹脂製で、噴出ノズルを備えていることとしたことにより、微酸性電解水の効果の保存性を高め、特に電気等のエネルギーを必要とせず、さらに使用の便宜が高まり、外出先などでも、安価で、局部に対する刺激がなく、副作用がなく、効果的に局部を殺菌洗浄する方法を提供した。
【0020】
又、噴出ノズルが折畳式若しくは可撓式であることとしたことにより、携帯の便宜性が一層高くなり、外出先などでも、安価で、局部に対する刺激がなく、副作用がなく、効果的に局部を殺菌洗浄する方法を提供した。
【0021】
又、噴出ノズルの先端に複数の細孔を備えていることとしたことにより、洗浄の効果を高め、外出先などでも、安価で、局部に対する刺激がなく、副作用がなく、効果的に局部を殺菌洗浄する方法を提供した。
【0022】
そして又、微酸性電解水を洗浄用トイレの洗浄水として用いることとしたことにより、用便後に、意識することなく常に、安価で、局部に対する刺激がなく、副作用がなく、効果的に局部を殺菌洗浄する方法を提供した。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
次に、本発明の理解を深めるために、本発明を実施するための最良の形態を具体的に説明するが、本記述の内容で本発明の範囲を限定するものではない。まず、微酸性電解水は、市販の塩素発生効率の良い非腐食性電極を使った無隔膜電解槽で、希塩酸を電解し、水で希釈することによって得られる。稀塩酸の濃度は特に限定する必要はないが、電解効率や取扱いの便宜性からは1%以上20%以下が良い。微酸性電解水の有効塩素濃度は1ppm以上でも十分に殺菌効果はあるが、持ち運ぶ場合は幾分低下することもあるので5ppm以上が望ましい。上限は殺菌効果の点では必要ないが、肌への影響を最小限に留めるためには50ppm程度が好ましく、影響を極小化するためには20ppm以下にするとよい。pHは4以上7以下であれば、効果及び肌への影響の両面で申し分ないが、さらに影響を抑える必要があれば5以上6.5以下にすればよい。
【0024】
使用するときの水温は、限定する必要はないが、使用感を良くするには人の体温に近く、25℃以上、40℃以下が好ましい。体温近くで使用すると、低温のときより一層殺菌速度が増すので好適でもある。
【0025】
持ち運び可能な容器とは、金属製、プラスチック製、ラミネート材製、ゴム製或いはガラス製の、防水性の容器である。金属製であれば微酸性電解水に対して不活性であるステンレス容器や、内面を琺瑯加工や樹脂類で被覆したものが好適である。プラスチック製であればどのような材質でも使用可能であるが、中でも、フッ素樹脂、塩化ビニール樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリイソブチレン樹脂、アクリル、塩素化ポリエーテル樹脂、不飽和ポリエステルなどは一層好適である。ゴム製であれば、フッソゴム、天然ゴム、イソプレンゴム、ブチルゴムなどが一層好適である。ガラスはどのような材質でも好適に利用できる。
【0026】
遮光性とは、特に紫外線遮蔽効果を意味し、紫外線遮蔽効果のある材質が望ましい。樹脂製やガラス製であれば、アルニミウム蒸着、アルミニウムラミネート材、金属粉末混和材、紫外線遮蔽剤配合材、濃色着色材、黒色、青色、或いは緑色着色材などが好適である。
【0027】
噴出ノズルは、容器の出口を細くし、微酸性電解水の噴出速度を速くし、洗浄効果を高くするのに有効である。単に容器に細孔を設けるだけでも作用するが、細いストロー状に形成すると目標に的確に微酸性電解水をかけるのに好都合である。そのストロー状ノズルは真っ直ぐに形成されていても曲った形状でもよい。いずれの形状においてもノズルの先端部にキャップや栓などの水を封止できる構造を設けるのが望ましい。
【0028】
噴出ノズルが長いストロー状に形成された場合は収納や持ち運びを容易にするために、ノズル部が折畳式若しくは可撓式であると好適である。折りたたみ式は、ノズルの一部に関節部を設けることで容易に実施できる。又、可撓式とするには、ノズル全体を柔軟形成する方法、ノズルの一部を蛇腹状に形成する方法などがある。
【0029】
噴出ノズルの先端は効率的に微酸性電解水を患部にかけることができるような構造に形成するのが望ましい。そのために先端部に複数の細孔を設けることが望ましい。細孔の配列は、前方方向に真っ直ぐに噴水流束を形成するようなもの、あるいはある程度漏斗状に噴水流束が拡散する方法でも効果的である。
【0030】
微酸性電解水を洗浄トイレに利用するには、既成の洗浄水供給タンクに水の替わりに微酸性電解水を供給する方法で実施することが可能である。その場合微酸性電解水が触れる部品の材質は耐食性の材質を用いるのがよい。そのような材質としては、金属ならステンレス鋼、樹脂被覆した金属、琺瑯被覆金属等、ゴムであればフッソゴム、天然ゴム、イソプレンゴム、ブチルゴム、樹脂であればフッ素樹脂、塩化ビニール樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリイソブチレン樹脂、アクリル、塩素化ポリエーテル樹脂、不飽和ポリエステルなどが好適である。
【0031】
又、微酸性電解水を洗浄トイレに利用する他の方法としては、別途供給タンクを設け、そこからホースを伸ばし、そのホースの先端に噴出ノズルを配した構成でも実施可能である。この場合微酸性電解水は、タンクの位置を高くしてその水頭のみを利用して流下させ、ノズル近くに配置した手動弁を開閉して利用する方法や、ホースの中途に配置したポンプの吐出力を利用して使用する方法などが好適である。この方法においても前記の材質を使用するのが望ましい。
【実施例1】
【0032】
次に実施例を示して、本発明をさらに詳しく説明する。図1及び図2に示したものは、持ち運び可能な容器に充填された微酸性電解水の実施例である。容器本体3はアルミニウム粉末を配合した扁平な形状の、不透明なポリエチレン樹脂製である。胴部は圧迫して微酸性電解水を押し出し易いようにくびれ6が設けてある。上部にはネジ式の蓋5があり、ここから微酸性電解水を補給する。ノズル1の根元は可撓蛇腹構造2となっており、持ち運び時は図2のように畳んだ状態にできる。ノズルを畳んだとき、ノズルの先端の微酸性電解水の噴出口は、水がこぼれないようにキャップを兼ねたホルダー4に格納される。使用する場合は図1に示したように、ノズルを立てて、ノズルの先端を局部に向け、胴部を手で圧迫して、微酸性電解水を噴出させ局部を洗浄する。
【実施例2】
【0033】
図3に示したものは据え置き式の洗浄装置で、トイレ等で使用するものである。微酸性電解水タンク7は不透明の塩化ビニール製で容量は5Lである。微酸性電解水は振動式ダイヤフラムポンプ9によって、タンク内に挿入された吸い込み口8から吸入され、吸引チューブ11を経てポンプを通り、吐出チューブ12に送液され、ノズル15から吐出される。ノズル部13の握り手14にはポンプスイッチ15が配置されており、ポンプスイッチは電線10によってポンプの電気回路に結合されている。ポンプスイッチの電線と吐出チューブは一体的に構成されている。この装置を使うと小排泄口、大排泄口が共に洗浄可能である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】持ち運び式微酸性電解水局部洗浄器の使用図
【図2】持ち運び式微酸性電解水局部洗浄器の収納図
【図3】据え置き式微酸性電解水局部洗浄器説明図

【特許請求の範囲】
【請求項1】
稀塩酸を電解し調製された、pHが4以上7以下、有効塩素濃度が5ppm以上50ppm以下の微酸性電解水を用いることを特徴とする、局部の洗浄方法
【請求項2】
持ち運び可能な容器に充填された微酸性電解水を用いることを特徴とする、請求項1記載の局部の洗浄方法
【請求項3】
持ち運び可能な容器が遮光性の柔軟樹脂製で、噴出ノズルを備えていることを特徴とする、請求項2記載の、局部の洗浄方法
【請求項4】
噴出ノズルが折畳式若しくは可撓式であることを特徴とする請求項3に記載の、局部の洗浄方法
【請求項5】
噴出ノズルの先端に複数の細孔を備えていることを特徴とする請求項3又は4に記載の、局部の洗浄方法
【請求項6】
微酸性電解水を洗浄用トイレの洗浄水として用いることを特徴とする請求項1記載の、局部の洗浄方法


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−110553(P2010−110553A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−287705(P2008−287705)
【出願日】平成20年11月10日(2008.11.10)
【出願人】(508334719)
【出願人】(506378957)
【Fターム(参考)】