説明

局部洗浄装置付便器

【課題】便器の上面と当該局部洗浄装置の下面との間の隙間に汚れが残存しにくく、清潔な状態をより容易に維持することが可能な局部洗浄装置付便器を得る。
【解決手段】ボウル6が形成されている便器本体1の上面1a上の、当該便器の上部開口6aに対して着座時に臀部側の外方となる位置に局部洗浄装置15を載設した局部洗浄装置付便器であって、前記局部洗浄装置15の下面15cと前記便器本体1の上面1aのうち少なくともいずれか一方に撥水処理を施した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、局部洗浄装置付便器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から知られている局部洗浄装置付便器として、局部洗浄装置が便器のボウルよりも後方の後端部上に載設されたものが知られている(例えば特許文献1)。
【特許文献1】特開2001−20345号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記特許文献1にあっては、局部洗浄装置が載設された便器の上面と当該局部洗浄装置の下面との間に隙間が生じるため、隙間内に汚れが付着した場合に局部洗浄装置を取り外さなければ掃除ができず面倒であり、また、汚れが残存しやすいという問題があった。
【0004】
そこで、本発明は、便器の上面と当該局部洗浄装置の下面との間の隙間に汚れが残存しにくく、清潔な状態をより容易に維持することが可能な局部洗浄装置付便器を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明にあっては、ボウルが形成されている便器本体の上面上の、当該便器の上部開口に対して着座時に臀部側の外方となる位置に局部洗浄装置を載設した局部洗浄装置付便器であって、前記局部洗浄装置の下面と前記便器本体の上面のうち少なくともいずれか一方に撥水処理を施したことを特徴としている。
【0006】
請求項2の発明にあっては、請求項1に記載の局部洗浄装置付便器であって、前記便器本体の上面に、ボウルに近い側が下となる傾斜面を形成し、当該傾斜面上に局部洗浄装置を載設したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、局部洗浄装置の下面と便器本体の上面のうち少なくともいずれか一方に撥水処理を施しているため、便器の上面と当該局部洗浄装置の下面との間の隙間に小便等の汚水が入り込んだとしても当該汚水をはじいて隙間内に付着しないようにすることができ、清潔な状態をより容易に維持することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本実施形態にかかる局部洗浄装置付便器の分解斜視図、図2は、局部洗浄装置付便器の側面図、図3は、図2の領域Tの拡大側面図、図4は、局部洗浄装置の拡大断面図である。なお、以下では、便宜上、使用者が便座に着座した時の背面側を後方、正面側を前方と称することにする。
【0009】
本実施形態における局部洗浄装置付便器は、図1に示すように、トイレの床面上に設置される樹脂製の便器本体(便器)1と、便器本体1の上面上に載設される局部洗浄装置15と、局部洗浄装置15に回動可能に取り付けられた便座2および便蓋4とを備えている。
【0010】
便器本体1は、上方に開口したボウル部7と、ボウル部7の上端部に設けられ、便器本体1の上端部をなすリム部8と、外周壁をなすスカート部9とを備えている。これらボウル部7,リム部8,スカート部9は別体の成型品であり、溶着等することで一体化される。そして、これらが一体化されてなる便器本体1の内部には空洞が形成される。
【0011】
リム部8はボウル部7の上側に装着され、これにより用を足すためのボウル6が形成されている。すなわち、リム部8は、ボウル6の周壁の上縁部をなすものである。
【0012】
本実施形態では、リム部8は、上壁部8aと、便器本体1上縁の外周壁をなす外側壁部8bと、下端部がボウル部7の内周壁部に溶着等される内側壁部8cと、を備えている。そして、リム部8の上壁部8aは、便器本体1の上壁をなすものであり、その上面が便器本体1の上端面(上面)1aとなっている。
【0013】
便器本体1の上端面1aは、図1および図2に示すように、ボウル6の開口部6aの周囲で、略水平な平坦面状をした前部上端面1bと、前部上端面1bの後方で、後側程上方に位置するように傾斜させた傾斜面(ボウル6に近い側が下となる傾斜面)1cと、その傾斜面1cの後方で略水平な平坦面状をした後部上端面1dと、を備えている。
【0014】
さらに本実施形態では、ボウル6の開口部6aの周囲に位置する前部上端面1bを、開口部6a側が下、周縁側が上となるようにわずかに傾斜させるとともに、傾斜面1cを幅方向中央部から両外側縁部に向かうほど上方に位置するように傾斜させている。すなわち、前部上端面1bおよび傾斜面1cは、全体としては段差のない滑らかな緩斜面となるように形成され、これらの面上のどの地点もボウル6内に向かう下り勾配を有するように形成されている。
【0015】
なお、ボウル部7の下端部には、後方に向けて排水管部(図示せず)が突設されており、この排水管部(図示せず)からターントラップ装置(図示せず)を介してボウル6内の溜水が排水されるようになっている。
【0016】
また、ボウル部7の内周面には、図1に示すように、洗浄水の吐水孔13と、ボウル部7の内面全体に洗浄水を供給する溝状の洗浄水流路14とが形成されている。
【0017】
スカート部9は、後方に開口する平面視U字状に形成されており、その上端縁は、リム部8の下端縁に接続されている。
【0018】
本実施形態では、局部洗浄装置15は、前部15aと後部15bとを備えており、前部15aの内部には局部洗浄用のノズル17や、当該ノズル17を駆動させるための各種装置、制御回路等が設けられている。このノズル17は、伸縮可能となるように構成されており、局部洗浄装置15を便器本体1の所定位置に載設した状態で、ノズル孔18を介してボウル6内に進出し、その先端部から水もしくは温水を吐出することで、使用者の局部を洗浄できるようになっている。
【0019】
なお、前部15aの前壁部の中央部には、ノズル孔18を開閉可能なシャッター部材16が設けられており、使用時にのみ、伸長したノズル17に押されてノズル孔18を開放するようになっている。
【0020】
本実施形態では、この局部洗浄装置15が便器本体1の上面上の、当該便器の上部開口に対して着座時に臀部側の外方となる位置に載設されている。
【0021】
具体的には、図2に示すように、局部洗浄装置15を、後部15bが後部上端面1d上に、前部15aが傾斜面1c上に位置するように配置し、その状態で局部洗浄装置15を上端面1a上に設けられた図外のワッシャ等を用いて便器本体1に取り付けている。
【0022】
このとき、前部15aの下面15dの形状を傾斜面1cの形状に、後部15bの下面15eの形状を後部上端面1dの形状にそれぞれ対応させ、局部洗浄装置15の下面15cと便器本体1の上端面1aとの間に形成される隙間Gの高さが略一定(図2において、便器本体1の上端面1aの水平面Hとの傾斜角θ1と、局部洗浄装置15の下面15cの水平面Hとの傾斜角θ2とが略同一)となるようにしている。すなわち、後部15bの下面15eを略水平な平坦面状となるように形成するとともに、前部15aの下面15dを傾斜させて下に凸をした曲面状となるように形成している。
【0023】
さらに、本実施形態では、局部洗浄装置15の下面15cおよび便器本体1の上端面1aに、例えばフッ素やシリコン等の撥水性材料を塗布するなどして撥水処理を施している。さらに、下面15cおよび上端面1aの表面をフラクタル構造(基材の表面に大きい周期の凹凸構造とその構造の中に小さい周期の凹凸構造を含む多段の凹凸構造)として、下面15cおよび上端面1aと液滴との接触角を大きくさせること、すなわち、これら表面の撥水性を高めることもできる。
【0024】
また、本実施形態では、便座2および便蓋4の両側端部には、それぞれ局部洗浄装置15に取り付けるための取付部3,3および取付部5,5が形成されている。そして、便座2の取付部3,3に設けられた貫通穴(図示せず)の外側から便蓋4の取付部5,5に突設させたピン(図示せず)を嵌め込み、貫通穴(図示せず)の内側から局部洗浄装置15の両側壁部の上側かつ後側に突設させたピン(図示せず)を嵌め込むことで便器本体1に便座2および便蓋4が回動可能に取り付けられている。すなわち、便座2および便蓋4は、便器本体1に同軸上で回動支持されている。
【0025】
以上の本実施形態によれば、局部洗浄装置15の下面15cと便器本体1の上端面1aとに撥水処理を施しているため、便器本体1の上端面1aと局部洗浄装置15の下面15cとの間の隙間Gに小便等の汚水(水滴D)が入り込んだとしても当該汚水をはじいて隙間Gの内部に付着しないようにすることができ、清潔な状態をより容易に維持することが可能となる。
【0026】
また、本実施形態によれば、ボウル6の開口部6aの後方に後側程上方に位置するように傾斜させた傾斜面1cを設け、当該傾斜面1c上に局部洗浄装置15を載設させたため、隙間Gに入り込んだ汚水(水滴D)が、その自重によって隙間G内の斜面を伝ってボウル6に向かって転がり落ちるようにすることができる。その結果、隙間Gの内部に汚れを付着させないようにすることができ、清潔な状態をより容易に維持することが可能となる。さらに、局部洗浄装置15の下面15cと便器本体1の上端面1aに撥水処理を施しているため、より効果的に清潔な状態を維持することができる。
【0027】
また、前部上端面1bを、開口部6a側が下、周縁側が上となるようにわずかに傾斜させるとともに、傾斜面1cを幅方向中央部から両外側縁部に向かうほど上方に位置するように傾斜させ、前部上端面1bおよび傾斜面1cを全体として段差のない滑らかな緩斜面となるように形成することで、これらの面上のどの地点もボウル6内に向かう下り勾配を有するようになり、汚水(水滴D)をより確実にボウル6に向かわせることができるという利点もある。
【0028】
また、便座2および便蓋4を、同軸上で便器本体1に取り付けることで、便器本体1への取付部が複数ある場合に比べて構造が簡素化される上、便器本体1による直接的な回動支持部を1か所とすることができるため、汚れが溜まる箇所を減らすことができるという利点もある。
【0029】
以上、本発明にかかる局部洗浄装置付便器の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限ることなく要旨を逸脱しない範囲で種々の実施形態を採用することができる。
【0030】
例えば、便器の上端面を傾斜のない水平面や湾曲等のないほぼ完全な平坦面として、その上に局部洗浄装置を載設し、便器の上端面や局部洗浄装置の下面に撥水処理を施してもよい。この場合、便器の上端面と局部洗浄装置の下面との間の隙間に汚水等が入り込んだとしても、当該隙間に水を流すことで汚水を取り除くことが可能となる。
【0031】
また、上記実施形態においては、傾斜角θ1と、傾斜角θ2とを略同一にして、隙間の高さが一定となるようにしているが、傾斜角θ2を傾斜角θ1よりも大きくしてもよい。この場合、傾斜面の上部側ほど隙間が大きくなるため、傾斜面の上部側に汚れが溜まったり詰まったりするのを抑制できる。
【0032】
また、局部洗浄装置付便器および局部洗浄装置の材質として樹脂を用いているが、例えばそれらの一部又は全部を陶器等の他の材質を用いて形成してもよい。
【0033】
さらに、局部洗浄装置付便器および局部洗浄装置の形状は、種々の形状を取り得る。
【0034】
また、上記実施形態においては、ターントラップ式便器について例示したが、サイフォン式便器としても本発明を実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の実施形態にかかる局部洗浄装置付便器の分解斜視図。
【図2】本発明の実施形態にかかる局部洗浄装置付便器の側面図。
【図3】図2の領域Tの拡大側面図。
【図4】本発明の実施形態にかかる局部洗浄装置の拡大断面図。
【符号の説明】
【0036】
1 便器本体
1a 上端面(上面)
6 ボウル
6a 開口部(上部開口)
15 局部洗浄装置
15c 下面


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボウルが形成されている便器本体の上面上の、当該便器の上部開口に対して着座時に臀部側の外方となる位置に局部洗浄装置を載設した局部洗浄装置付便器であって、
前記局部洗浄装置の下面と前記便器本体の上面のうち少なくともいずれか一方に撥水処理を施したことを特徴とする局部洗浄装置付便器。
【請求項2】
前記便器本体の上面に、ボウルに近い側が下となる傾斜面を形成し、当該傾斜面上に局部洗浄装置を載設したことを特徴とする請求項1に記載の局部洗浄装置付便器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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