説明

屋内簡易設置型陰圧方式隔離室

【課題】病院等の病室等の屋内において、新型インフルエンザや鳥インフルエンザ等の強毒性の感染症患者を収容するに当り、周囲への感染拡大を防止する
ことのできる屋内簡易設置型陰圧方式隔離室を提供する。
【解決手段】収容患者のベッド1を含む空間部2全体を、組み立て、分解が容易な金属製もしくは合成樹脂製の骨組み材6と、気密度の高い合成樹脂製の可撓性を有する被覆シート8および敷きシート10で密に包囲して密閉された居室3を形成し、且つ該居室3に乾式エアフィルタを備えた給気ユニット11と排気ユニット12とを連通し、前記給・排気ユニット11・12ともに風量調整を行うことにより、収容患者の居屋内陰圧度を維持しつつ、空気の高清浄度化を図り、抵抗力の弱まった収容患者の2次感染予防に対処することができるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、病院等の病室等の屋内において、新型インフルエンザや鳥インフルエンザ等の強毒性の感染症患者を収容するに当り、周囲への感染拡大を防止することを目的として、屋内に簡単に設置することができる屋内簡易設置型陰圧方式隔離室に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、飛沫感染である結核患者を収容する場合には、結核病棟のような建物設備として部屋全体を陰圧構造にした隔離収容施設を利用していた。しかしながら、前記隔離収容施設は高額な建築設備であること、機械設備を含み大きなスペースを必要とすること等から、全国でも限られた病院にのみしか設置されていない状況である。
【0003】
更に、新型のインフルエンザや、鳥インフルエンザ等の強毒性の感染症として流行が予想される場合、前記の結核病棟のような陰圧式収容設備の不足が問題となる。これらの事態に対応する製品としては、入院患者のベッド周りをカーテンブースで被い、高性能フィルタと排気ファンを内蔵したユニットのみを利用し、簡易的に陰圧隔離装置として製品化されているものもあるが、米国疾病管理センター(CDC)のガイドラインで求められるような、換気回数や排気フィルタの捕集性能は満足していても、収容設備として充分な陰圧度を達成する能力が不足しており、その他にも病院従事者による診療行為において不都合があるもの、更には、収容患者の快適性を維持するには大きくかけ離れた製品がある等、多くの問題点があった。
【0004】
一方、前記感染症の患者を収容する簡易隔離装置に関して、過去の特許文献を遡及検索したところ、下記の特許文献1・2に記載された装置が公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−141239号公報
【特許文献2】特開平7−461号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記特許文献1に記載された「患者隔離ユニット」は、折り畳み可能な枠体2と、組み立てられた枠体2に取り付け得るようにした可燃性樹脂シート製の可撓性被覆体3と、可撓性被覆体3内からの空気を排気するための排気ユニット5を備え、排気ユニット5は紫外線ランプ及びHEPAフィルタ並びに送風機を備えて形成されている。
【0007】
しかしながら、前記特許文献1に記載された「患者隔離ユニット」は、患者の居室空間の排気に関して微小粒子捕集能力の高いHEPAフィルタを利用し、フィルトレーションを行い、単にバイオハザード的な感染拡大を防止するに過ぎず、また、可撓性被覆体3の下端縁部と床面とは封止されていないため、前記居室空間内は密閉された状態ではなく、排気ユニット5によって該居室空間屋内の空気を吸引することにより、ある程度の陰圧状態は維持されるが、とても充分な陰圧状態を維持できる状況ではなく、従って、前記居室空間から患者によって病原菌で汚染された空気が外部へ漏洩してしまうという課題があった。
【0008】
更に、前記特許文献1に記載された「患者隔離ユニット」には、紫外線ランプが取付けてあるが、該紫外線ランプでは流れている空気中の菌を殺菌することが不可能であると共に、HEPAフィルタに紫外線ランプからの紫外光が長時間照射されると、該HEPAフィルタがボロボロになって破損してしまうという課題があった。
【0009】
また、特許文献2に記載された「患者隔離装置」は、外部フレーム、フレームから吊るされかつフレーム内で下げられ好ましくは使捨て式の可撓性の被覆体であって、底部、頂部、2個の側部、前壁部分及び後壁部分を有し、側部の一方又は前壁部分に患者の入室を許す閉鎖可能な入り口手段が取り付けられた被覆体;空気から感染性粒子を濾過除去するようにされかつポンプ手段によりフィルター手段を経て被覆体から空気が引かれるようにポンプ手段と共同作用するようにされた一体のフィルター手段が取り付けられた壁部分の一方の開口部、及び囲いの外側から内側への一方向の空気の通過を許す弁手段を備えた患者隔離装置である。
【0010】
しかしながら、前記特許文献2の「患者隔離装置」は、前記特許文献1と同様に、被覆体14と床面とは封止されていないため、囲い10内は密閉された状態ではなく、ポンプ手段50により囲い10内の空気を吸引することにより、ある程度の陰圧状態は維持されるが、とても充分な陰圧状態を維持できる状況ではなく、従って前記居室空間から患者の病原菌を含んだ汚染空気が外部へ漏洩するという課題があった。
【0011】
更に、特許文献2記載の「患者隔離装置」は、囲い10内の空気を外部へフィルタリングして排気する排気ファンしか備えておらず、囲い10内において風量調整による陰圧度調整機構が備えられていないので、居屋内の陰圧度を充分維持することができず、患者の病原菌を含んだ汚染空気が外部へ漏洩してしまうという課題があった。
【0012】
本発明は、前記課題を解決すべくなされたものであって、収容患者のベッドを含む空間部全体を、組み立て、分解が容易な金属製もしくは合成樹脂製の骨組み材と、気密度の高い合成樹脂製の可撓性を有する被覆シートおよび敷きシートで密に包囲して、密閉された患者用の居室を形成し、且つ該居室には乾式エアフィルタを備えた給気ユニットと排気ユニットとを前記居室にそれぞれ連通し、且つ該給・排気ユニットともに風量調整を行うことにより、収容患者の居屋内陰圧度を維持しつつ、更に前記給気ユニットにおいても、排気ユニットと同様の乾式エアフィルタを使用して、空気の高清浄度化を図り、抵抗力の弱まった収容患者の2次感染予防に対処することができるようにした屋内簡易設置型陰圧方式隔離室を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、収容患者のベッドを含む空間部全体を、組み立て、分解が容易な金属製もしくは合成樹脂製の骨組み材と、気密度の高い合成樹脂製の可撓性を有する被覆シートおよび敷きシートで密に包囲して、密閉された患者用の居室を形成し、且つ該居室には乾式エアフィルタと送風手段より成る風量調整機構を備えた給気および排気ユニットがそれぞれ連結され、且つ該居室内と屋内との差圧を1.5Paから7Paの範囲内に調整して、前記居室を陰圧状態に保持して、該居室から患者の病原菌に汚染された空気が外部へ漏洩しないよう形成する一方、分解が容易な金属製もしくは合成樹脂製の骨組み材と、気密度の高い合成樹脂製の可撓性を有する被覆シートおよび敷きシートで密に包囲して、密閉して形成された前室が前記居室に連結されて形成され、更に該前室には少なくとも1つの通過室を備えて、該通過室を経て前記居室から患者の病原菌に汚染された空気を前室内に漏洩することなく、病院従事者が前記居室に入室、または居室から退室できるよう構成することにより、上記課題を解決した。
【発明の効果】
【0014】
前記構成より成る本発明によれば、収容患者のベッドを含む空間部全体を、組み立て、分解が容易な金属製もしくは合成樹脂製の骨組み材と、気密度の高い合成樹脂製の可撓性を有する被覆シートおよび敷きシートで密に包囲して、密閉された患者用の居室、および該居室に連結して居室への通過路となる前室が、病院等の屋内に極めて簡単に、且つ迅速に設置できると共に、給気ユニットと排気ユニットとが前記居室にそれぞれ連通され、且つ該給・排気ユニットともに風量調整を行って、収容患者の居屋内陰圧度を維持することにより、居室内からの病原菌に汚染された空気の屋内への漏洩が防止され、更に前記給気ユニットにおいても、排気ユニットと同様の乾式エアフィルタを使用して、空気の高清浄度化を図り、抵抗力の弱まった収容患者の2次感染予防を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明屋内簡易設置型陰圧方式隔離室の第1の実施例を一部を切欠いて示す全体の概略斜視図である。
【図2】同組立分解斜視図である。
【図3】同平面図である。
【図4】同底面部分の縦断面図である。
【図5】本発明屋内簡易設置型陰圧方式隔離室の第2の実施例をを一部を切欠いて示す全体の概略斜視図である。
【図6】同平面図である。
【図7】本発明屋内簡易設置型陰圧方式隔離室の第3の実施例をを一部を切欠いて示す全体の概略斜視図である。
【実施例】
【0016】
本発明の第1の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。本発明屋内簡易設置型陰圧方式隔離室は、病院等の病室等の屋内において、簡易的に設置されるものであって、患者のベッド1、および該ベッド1周辺に医者等の病院従事者が診療行為のために移動できる空間部2全体を被覆して患者用の居室3を形成する被覆体4と、該被覆体4の一側に、前記居室3内に病院従事者が入室したり、あるいは該居室3から退室するとき、該居室3から患者の病原菌を含んだ汚染空気が、外部(病院等の病室等の屋内)へ漏洩するのを防止するための前室5を連設して構成されている。
【0017】
前記居室3を形成する被覆体4は、組み立て、分解が容易な金属製もしくは合成樹脂製のパイプ状、または棒状の骨組み材6を立方体枠状に接合固定して被覆枠体7を形成し、且つ該被覆枠体7の4つの側面を構成する側部枠体7aの外周を、例えばビニールシートのような、可撓性を有し、且つ気密性の高い合成樹脂製の被覆シート8で包囲して、その両切断端縁部を重ね合わせ固定すると共に、該被覆シート8の下端部を前記被覆枠体7の底面を構成する方形枠状の底部枠体7bの内側に折り曲げて、その先方部を内側方向に延設して折曲片8aを形成する一方、前記被覆枠体7の上面を構成する方形枠状の上部枠体7cに、該上部枠体7cの上方より被覆できるように、前記被覆シート8と同一素材のシートで逆凹状に形成した逆凹状被覆シート9を、前記上部枠体7cの上方より被覆して、該被覆シート8の上部外周面に摺接し、更に、前記底部枠体7bの内側に折り曲げた折曲片8aを含む床面上に、比較的厚くて重量のある敷きシート10を敷設することにより、前記折曲片8aを上方より押圧して床面上に圧着して、居室3内の密閉状態を保持するようにして形成されている。
【0018】
なお、前記骨組み材6は、特に限定する必要はないが、好ましくは、被覆シート8および逆凹状被覆シート9と接する面が湾曲面に形成されていることが推奨される。湾曲面とすることにより、前記各シート8、9が後述する給気ユニット11および排気ユニット12の給・排気により、膨張または収縮しても破損する虞れはない。更に、前記被覆シート8は、屋内から居室3内の患者が視認できるよう透明なシートで形成することが好ましいが、ベッド1上の患者の心理状態を考慮して、簡単に屋内より覗けないように下半分程度を不透明としてもよい。
【0019】
そして、前記構成より成る被覆シート8・9および敷きシート10により被覆された居室3外には、該居室3と連通する風量調整機構を備えた給気ユニット11および排気ユニット12がそれぞれ設置され、該給気ユニット11および排気ユニット12の給・排気を調整することにより、前記居室3内と外部との差圧を1.5Pa〜7Paの範囲内に設定することができるよう形成されている。
【0020】
前記給気ユニット11は、乾式エアフィルタにより病院における病室等の屋内空気を清浄空気として居室3内に送気するものであって、特に限定する必要はないが、好ましくは、乾式エアフィルタより成るプレフィルタ13、準HEPAフィルタ14およびHEPAフィルタ15並びに送風手段16となるファンを備えて形成することが推奨される。そして、特に好ましくは、図3に示すように、上流側から下流側へ向けてプレフィルタ13、0.3μm以上の微粒子を90.00%以上捕集することができる準HEPAフィルタ14、送風手段16となるファンおよび0.3μm以上の微粒子を99.97%以上捕集することができるHEPAフィルタ15を順に設置して形成することが推奨される。なお、図中、17は、前記給気ユニット11と居室3とを連通して、清浄空気を該居室3内に給気する給気管である。
【0021】
前記のように、給気ユニット11は、上流側からプレフィルタ13、準HEPAフィルタ14およびHEPAフィルタ15の順に設置することにより、病院屋内の種々の病原菌により汚染された空気から病原菌を捕集して、清浄空気として居室3内に給気することができる。また、最終段のHEPAフィルタ15の上流側に、プレフィルタ13、および0.3μm以上の微粒子に対する捕集性能として、該HEPAフィルタ15より10%程度以内の捕集性能差を有する準HEPAフィルタ14を配置することにより、患者を収容する居室内に面した最終段のHEPAフィルタ15の交換頻度を減らすことができる。
【0022】
また、前記排気ユニット12は、居室3内の患者の病原菌を含んだ汚染空気を、無菌の清浄空気として該居室3外の屋内へ排気するものであって、乾式エアフィルタより成るプレフィルタ18およびHEPAフィルタ19並びに送風手段20を備えて形成されている。前記排気ユニット12は、特に限定する必要はないが、図3に示すように、上流側から下流側へ向けてプレフィルタ18、0.3μm以上の微粒子を99.97%以上捕集するHEPAフィルタ19および送風手段20となるファンを順に設置して形成してもよいし、または、図示していないが、前記排気ユニット12を、上流側から下流側へ向けてプレフィルタ18、送風手段20となるファンおよび0.3μm以上の微粒子を99.97%以上捕集するHEPAフィルタ19を順に設置して形成してもよい。なお、図中、21は、前記排気ユニット12と居室3とを連通して、該居室3内の汚染空気を、前記排気ユニット12に排気する排気管である。
【0023】
前記のように、排気ユニット12は、上流側からプレフィルタ18およびHEPAフィルタ19の順に設置することにより、居室3の患者の病原菌により汚染された空気から病原菌を捕集して、無菌の清浄空気として屋内に排気することができる。また、HEPAフィルタ19の上流側にプレフィルタ18を設置することにより、該HEPAフィルタ19の交換頻度を減らすことができる。
【0024】
そして、前記給気ユニット11および排気ユニット12を居室3に連結することにより、例えば、給気ユニット11から給気する風量を、排気ユニット12から排気する風量の70〜80%程度の風量に調整すると、居室3内と屋内間に差圧を形成することができ、居室3内を適切な陰圧空間に調整することができる。すなわち、前記給気ユニット11と排気ユニット12の給・排気を適宜調整することにより、前記居室3内を、前記アメリカのCDCガイドラインに示す、結核病棟なみの2.5Pa以上の陰圧度を含む、少なくとも1.5Pa〜7Paの範囲内に陰圧度を調整することができる。
【0025】
更に、前記構成より成る被覆体4によって被覆されると共に、前記1.5Pa〜7Paの範囲内の陰圧度に保たれた居室3内に、病院従事者が前記陰圧度を維持したまま、入室および退室できるようにするため、該居室3の外側には前室5が設置されている。
【0026】
前記前室5は、前記被覆体4を構成する被覆シート8の一側面に連通して形成されており、前記骨組み材6と同一素材により小型の立方体枠状に接合固定して前室用被覆枠体23を形成し、且つ該前室用被覆枠体23の4つの側面を構成する側部枠体23aの外周を、前記居室3の被覆シート8と同一素材より成る被覆シート24で包囲して、その両切断端縁部24aを後述する第1の通過室25aの入口側開口部26に位置せしめ、且つ該被覆シート24の下端部を前記前室用被覆枠体23の底面を構成する方形枠状の底部枠体23bの内側に折り曲げて、その先方部を内側方向に延設して折曲片24bを形成する一方、前記被覆枠体23の上面を構成する方形枠状の上部枠体23cに、該上部枠体23cの上方より被覆できるように、前記被覆シート24と同一素材のシートで逆凹状に形成した逆凹状被覆シート27を、前記上部枠体23cの上方より被覆して、該被覆シート24の上部外周面に摺接し、更に、前記底部枠体23bの内側に折り曲げた折曲片24bを含む床面上に、比較的厚くて重量のある敷きシート28を敷設することにより、前記折曲片24bを上方より押圧して床面上に圧着して、前室5内の密閉状態を保持するようにして形成されている。
【0027】
なお、前記前室用被覆枠体23を構成する底部枠体23bの入口側開口部26に位置する骨組み材6は、前記前室5の第1の通過室25aへの入室および退室時の障害となるので、図1〜図2に示すように設置しない方が好ましい。
【0028】
そして、前記前室用被覆枠体23により形成された前室5は、複数の通過室25を備えているが、前記前室5を構成する複数の通過室25(図1〜図3においては2つの通過室が図示されている)は、第1の通過室25aの入口側開口部26に位置する前記両切断端縁部24aを備えた被覆シート24を、上下に切断した遮蔽シート29aとして、上部枠体23cに上端を固着して垂設すると共に、該第1の通過室25aに連らなる第2の通過室25bは、その入口部に病院従事者が入室または退室できるだけの間隔を有して、前記第1の通過室25aを遮蔽する遮蔽シート29bを上下に切断して2分割して、前記上部枠体23cに架設された補助骨組み材23dに上端を固着して垂設されて形成されている。
【0029】
更に、前記第1・第2の通過室25a・25bの各遮蔽シート29a・29bの上下に切断した両切断端縁部24aに、スライドファスナー30の雄条帯と雌条帯とを対面して固着し、該スライドファスナー30の開閉操作をすることにより、病院従事者の入室・退室時に居室3内の空気が外部に漏洩しないよう形成されている。また、図示していないが、前記スライドファスナー30を使用することなく、簡易的に前記両切断端縁部24aを単に重ね合わせて接合するだけでも、その目的を達成することができる。
【0030】
そして、前記前室5の第2の通過室25bから病院従事者が居室3内に入室または退室することができるようにするため、該第2の通過室25bと前記被覆シート8とは密に連通されている。前記第2の通過室25bと被覆シート8との連通方法は、特に限定する必要はないが、好ましくは、図1〜図3に示すように形成することが推奨される。
【0031】
すなわち、前記被覆シート8に面する第2の通過室25b側の被覆シート24を、病院従事者が通過できる高さおよび巾に切断して通過開口31を形成すると共に、該通過開口31の開口縁部にスライドファスナー32の雄条帯32aを周設する一方、前記通過開口31に面する被覆シート8に前記スライドファスナー32の雄条帯32aに対面して、該雄条帯32aに係合する雌条帯32bを周設し、更に、前記雌条帯32bに囲繞された被覆シート8を上下に切断して2分割して、遮蔽シート33とし、更に、該遮蔽シート33の2分割面に、それぞれスライドファスナー34の雄条帯と雌条帯とを対面して固着して形成されている。また、図示していないが、前記スライドファスナー34を使用することなく、簡易的に前記遮蔽シート33の2分割面を単に重ね合わせて接合するだけでも、その目的を達成することができる。
【0032】
前記構成より成る本発明第1の実施例による屋内簡易設置型陰圧方式隔離室の作用について説明する。病院等の屋内に簡単に組み立て設置された本発明隔離室の密閉された居室3にベッド1を設置し、給気ユニット11および排気ユニット12を作動させて、該給気ユニット11の給気風量より排気ユニット12の排気風量を大として、その差圧分だけ居室3内を陰圧状態に保持することができるように風量調整をして、その後、感染症患者を収容する。そして、前記給気ユニット11より居室3内に清浄空気を給気すると共に、該居室3内の患者の病原菌を含む汚染空気中の病原菌を、前記排気ユニット12を構成するHEPAフィルタ19により捕集して、無菌の清浄空気として屋内へ排気することにより、周囲への感染拡大の防止を図ることができる。
【0033】
また、前記居室3内は屋内より陰圧状態に保持されているので、該居室3内より屋内に、前記居室3内の患者の病原菌を含む汚染空気が漏洩することがない。
【0034】
一方、前記居室3内に隔離された感染症患者に診療行為をするに際し、該居室3内に病院従事者が入室する場合は、該病院従事者が前室5の第1の通過室25aの入口開口部26における遮蔽シート29aのスライドファスナー30、または前記図示していない重ね合わせ部を開放して、該第1の通過室25aに入室し、然る後、前記遮蔽シート29aのスライドファスナー30、または前記図示していない重ね合わせ部を閉鎖して屋内と遮断する。
【0035】
次に、第2の通過室25bの遮蔽シート29bのスライドファスナー30、または前記図示していない重ね合わせ部を開放して、該第2の通過室25bに入室し、然る後、前記遮蔽シート29bのスライドファスナー30、または前記図示していない重ね合わせ部を閉鎖して、前記第1の通過室25aと遮断する。
【0036】
そして、前記第2の通過室25bに入室した病院従事者は、居室3に通じる通過開口31の遮蔽シート33のスライドファスナー34、または前記図示していない重ね合わせ部を開放して、該居室3内に入室し、然る後、該スライドファスナー34、または前記図示していない重ね合わせ部を閉鎖する。これにより、病院従事者は、屋内から密閉状態を維持された前室5を経て居室3内へ入室して、患者に治療等、診療行為を施すことができる。なお、前記病院従事者の入室に当たって、居室3内は陰圧状態に保持されているため、該居室3内より前室5内に患者の病原菌を含む汚染空気が漏洩することがない。
【0037】
そして、前記居室3内において、患者に治療等、診療行為を施こした後の病院従事者は、前記入室とは逆の操作をすることにより、第2の通過室25bおよび第1の通過室25aを経て退室して屋内へ戻る。
【0038】
図5は、本発明屋内簡易設置型陰圧方式隔離室の第2の実施例を示す全体の概略斜視図、図6は同平面図である。前記図1〜図3に示す第1の実施例が、給気ユニット11と排気ユニット12がそれぞれ居室3に連結されているのに対し、図5〜図6に示す第2の実施例のものは、前記給気ユニット11と排気ユニット12とがそれぞれ居室3に連結されていると共に、更に前記前室5の第1の通過室25aまたは第2の通過室25bのいずれかに補助給気ユニット35が連結されて(図5〜図6においては、第1の通過室25aに連結されている)形成されている。なお、補助給気ユニット35からの送風量が給気ユニット11の役割を充分に満たす場合は、給気ユニット11をなくしてもよい。
【0039】
前記補助給気ユニット35の構成は、前記居室3に連結された給気ユニット11と同一構成であることが推奨されるが、乾式エアフィルタはプレフィルタと準HEPAフィルタ、もしくはプレフィルタとHEPAフィルタのいずれか2段の構成であってもよい。また、その取付手段は、特に限定する必要はないが、好ましくは、図5〜図6に示すように、前記前室5を構成する前室用被覆枠体23の上部枠体23c上に、補強杆36を設置して、該補強杆36上に設置することが推奨される。
【0040】
前記補助給気ユニット35は、前室5の第1の通過室25a内、または第2の通過室25b内のいずれかに、補助給気ユニット35を介して、屋内の空気を清浄化して清浄空気として給気することにより、該前室5から病院従事者が居室3へ入室または退室するとき、該居室3内へ流入する空気を清浄空気とすることができるので、屋内の病原菌の該居室3への侵入を防ぎ、患者の更なる罹患を阻止することができる。
【0041】
なお、図示していないが、本発明隔離室は簡易に居室3内を陰圧状態とすることができるが、前記補助ユニット35からの送風が前記居室3の下方の裾部分より該居室3内に送風される場合もあり、その送風量が前記給気ユニット11の役割を充分に果たす場合は、該給気ユニット11は不要である。
【0042】
そしてまた、図7は、本発明屋内簡易設置型陰圧方式隔離室の第3の実施例を示す全体の概略斜視図である。第3の実施例は、前記第1〜第2の実施例のものと比較して簡易形の隔離室であって、前室5を取去ったものである。
【0043】
第3の実施例における隔離室は、居室3の構成が、前記第1〜第2の実施例のものと同一構成であるので、同一符号を用いて説明するが、同一符号の構成および作用については、前記記載を援用しその詳細な説明を省略する。すなわち、第3の実施例に示す隔離室は、被覆体4の被覆シート8の4つの側壁面のうち、いずれか1つの側壁面8bに病院従事者が入室・退室する際に使用する通過部37が形成されている。
【0044】
前記通過部37は、居室3の被覆シート8の1つの側壁面8bの一端部に設置すればよいので、前記被覆シート8を上下に切断して2分割して遮蔽シート38を形成し、更に該遮蔽シート38の2分割面には、それぞれスライドファスナー39の雄条帯と雌条帯とを対面して固着して、該スライドファスナー39の開閉操作をすることにより、病院従事者の入室・退室時に居室3内の空気が外部に漏洩しないよう形成されている。
【0045】
また、本発明屋内簡易設置型陰圧方式隔離室は、屋内の温調済みの空調空気を吸引するため、新たに大規模な温調用空調機を設備する必要がなく、一般病室や極端にいえば体育館のような屋内施設にも、急造の感染症隔離病室としての組み立てが可能である。
【符号の説明】
【0046】
1 患者のベッド
2 空間部
3 居室
4 被覆体
5 前室
6 骨組み材
7 被覆枠体
7a 側部枠体
7b 底部枠体
7c 上部枠体
8 被覆シート
8a 折曲片
8b 側壁面
9 逆凹状被覆シート
10 敷きシート
11 給気ユニット
12 排気ユニット
13 プレフィルタ
14 準HEPAフィルタ
15 HEPAフィルタ
16 送風手段
17 給気管
18 プレフィルタ
19 HEPAフィルタ
20 送風手段
21 排気管
23 前室用被覆枠体
23a側部枠体
23b底部枠体
23c上部枠体
23d 補助骨組み材
24 被覆シート
24a 両切断端縁部
24b 折曲片
25 通過室
25a 第1の通過室
25b 第2の通過室
26 入口側開口部
27 逆凹状被覆シート
28 敷きシート
29a 遮蔽シート
29b 遮蔽シート
30 スライドファスナー
31 通過開口
32 スライドファスナー
32a 雄条帯
32b 雌条帯
33 遮蔽シート
34 スライドファスナー
35 補助給気ユニット
36 補強杆
37 通過部
38 遮蔽シート
39 スライドファスナー




【特許請求の範囲】
【請求項1】
収容患者のベッドを含む空間部全体を、組み立て、分解が容易な金属製もしくは合成樹脂製の骨組み材と、気密度の高い合成樹脂製の可撓性を有する被覆シートおよび敷きシートで密に包囲して、密閉された患者用の居室を形成し、且つ該居室には乾式エアフィルタと送風手段より成る風量調整機構を備えた給気および排気ユニットがそれぞれ連結され、且つ該居室内と屋内との差圧を1.5Paから7Paの範囲内に調整して、前記居室を陰圧状態に保持して、該居室から患者の病原菌に汚染された空気が外部へ漏洩しないよう形成する一方、分解が容易な金属製もしくは合成樹脂製の骨組み材と、気密度の高い合成樹脂製の可撓性を有する被覆シートおよび敷きシートで密に包囲して、密閉して形成された前室が前記居室に連結されて形成され、更に該前室には少なくとも1つの通過室を備えて、該通過室を経て前記居室から患者の病原菌に汚染された空気を前室内に漏洩することなく、病院従事者が前記居室に入室、または居室から退室できるようしたことを特徴とする屋内簡易設置型陰圧方式隔離室。
【請求項2】
請求項1記載の屋内簡易設置型陰圧方式隔離室において、給気ユニットは、上流側より下流側へ向けてプレフィルタ、0.3μm以上の微粒子を90%以上捕集できる準HEPAフィルタ、送風手段および0.3μm以上の微粒子を99.97%以上捕集することができるHEPAを備えて形成され、居室内に清浄空気を給気して、該居屋内の空気清浄度を高めることを特徴とする屋内簡易設置型陰圧方式隔離室。
【請求項3】
請求項2記載の屋内簡易設置型陰圧方式隔離室において、給気ユニットを構成する最終段のHEPAフィルタの上流側に、該最終段のHEPAフィルタの交換頻度を減らすよう、0.3μm以上の粒子に対する捕集性能として、10%程度以内の捕集性能差を有する乾式エアフィルタを設置したことを特徴とする屋内簡易設置型陰圧方式隔離室。
【請求項4】
請求項1記載の屋内簡易設置型陰圧方式隔離室において、排気ユニットは、上流側より下流側へ向けてプレフィルタ、0.3μm以上の微粒子を99.97%以上捕集できるHEPAフィルタおよび送風手段を備えて形成され、居室内の汚染空気を清浄空気として屋内に排気することを特徴とする屋内簡易設置型陰圧方式隔離室。
【請求項5】
請求項1記載の屋内簡易設置型陰圧方式隔離室において、排気ユニットは、上流側より下流側へ向けてプレフィルタ、送風手段および0.3μm以上の微粒子を99.97%以上捕集できるHEPAフィルタを備えて形成され、居室内の汚染空気を清浄空気として屋内に排気することを特徴とする屋内簡易設置型陰圧方式隔離室。
【請求項6】
請求項1記載の屋内簡易設置型陰圧方式隔離室において、前室に補助給気ユニットを設置したことを特徴とする屋内簡易設置型陰圧方式隔離室。
【請求項7】
請求項1記載の屋内簡易設置型陰圧方式隔離室において、前室に補助給気ユニットが設置され、該補助給気ユニットの送風量が給気ユニットの役割を果たすとき、該給気ユニットを不要とすることを特徴とする屋内簡易設置型陰圧方式隔離室。
【請求項8】
収容患者のベッドを含む空間部全体を、組み立て、分解が容易な金属製もしくは合成樹脂製の骨組み材と、気密度の高い合成樹脂製の可撓性を有する被覆シートおよび敷きシートで密に包囲して、密閉された患者用の居室を形成し、且つ該居室にはエアフィルタと送風手段より成る風量調整機構を備えた給気および排気ユニットがそれぞれ連結され、且つ該居室内と屋内との差圧を1.5Paから7Paの範囲内に調整して、前記居室を陰圧状態に保持して、該居室から患者の病原菌に汚染された空気が外部へ漏洩することなく、通過部を介して病院従事者が前記居室に入室・または居室から退室できるように形成したことを特徴とする屋内簡易設置型陰圧方式隔離室。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−234929(P2011−234929A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−109458(P2010−109458)
【出願日】平成22年5月11日(2010.5.11)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成21年11月11日、株式会社空調タイムス社発行の「空調タイムス」第2329号
【出願人】(000163660)近藤工業株式会社 (28)
【Fターム(参考)】