説明

屋外用エスカレーター

【課題】保全作業に手間を掛けず、屋外用エスカレーターのチェーン及びチェーンと踏段との接続部への雨水の侵入を防止する屋外用エスカレーターの提供。
【解決手段】チェーンに等間隔に取付けられるとともに、無端状に連結されて循環移動する踏段2と、この踏段2の前後に設けられたローラ3A,4Aをそれぞれ案内するレール5,6と、踏段2の両側に立設される欄干7とを備えた屋外用エスカレーター1において、レール5,6の最下部に配設されるレール5の上部に長尺板体で構成して雨水を案内する樋10を設けるとともに、この樋の踏段側に堰10A,10Bを設けたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は屋外用エスカレーターに係り、屋外に設置され雨水の影響を受けにくくした屋外用エスカレーターに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、屋外に設置されるエスカレーターは乗客を乗せる往路側の踏段と、復路側の踏段との問を仕切り、復路の踏段へ雨水が浸入するのを遮断する保護体を踏段の横幅より広い幅で、下部乗降口から上部乗降口まで設けられているものがある(特許文献1)。
【特許文献1】実開昭63−136679号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記従来技術は、エスカレーター内部に侵入した雨水を上下の乗降口に設けられるとともに、踏段の幅より広い保護体によって復路の踏段が濡れるのを防止している。この踏段の幅より広い保護体を設けているため、エスカレーターの保全作業に際して保護体の取付けや取外しに手間が掛るという問題があった。
【0004】
本発明の目的は、保全作業に手間を掛けず、屋外用エスカレーターのチェーン及びチェーンと踏段との接続部への雨水の漫入を防止する屋外用エスカレーターを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、チェーンに等間隔に取付けられるとともに、無端状に連結されて循環移動する踏段と、この踏段の前後に設けられたローラをそれぞれ案内するレールと、前記踏段の両側に立設される欄干とを備えた屋外用エスカレーターにおいて、前記レールの最下部に配設される前記レールの上部に長尺板体で構成して雨水を案内する樋を設け、前記踏段の乗降部の左右に立設される前記摘干の内側に、前記乗降部の床から反踏段側へ雨水を導く堰と、前記樋を前記レールの傾斜部以外に少なくとも配置するとともに、前記樋の踏段側に堰を設け、これら堰は鉛直方向への曲げ加工及びコーキング材の充填のいずれかとしたものである。
【0006】
このようにしたので、欄干と踏段の間際から浸入した雨水は最下部に配列されるレールの上部に設けた樋及び堰を介して柵干の内側に導かれ、乗降床と欄干との間隙から浸入した雨水は堰によって反踏段側に導かれて落下するので、チェー及びチェーンと踏段の接続部には雨水は掛からない。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、最下部のレール上部に設けた樋と、この樋に設けた堰、及び乗降部の欄干内部に設けた堰によって雨水のチェーン部への浸入を防止できるので、発錆によるチェーンの伸びを抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の一実施形態を、図1〜図6を用いて説明する。
【0009】
図1は本発明の屋外用エスカレーターの上部及び下部乗口近傍の要部縦断面図で、図2は本発明の屋外用エスカレーターの中央傾斜部における要部縦断面図で、図3は屋外用エスカレーターの最下部踏段用レールに取付けた樋の要部斜視図で、図4は樋の縦断面図で、図5は本発明の屋外用エスカレーターの上部乗口近傍の要部横断面図で、図6は屋外用エスカレーターを示す破断斜視図である。
【0010】
図1、図2、図5、図6において、屋外用エスカレーター1における踏段2は、踏段2の前方に装着される前輪軸3を図示しない踏段チェーンに接続して無端状に連結され、通常踏段2は乗客が乗る往路踏段2Aと往路踏段2Aの下部に位置する復路踏段2Bに大別されている。
【0011】
また、前輪軸3の先端に回転自在に設けられる前輪ローラ3Aと、踏段2の後方に回転自在に設けられる後輪ローラ4Aとは、それぞれ前輪レール5及び後輪レール6上を転勤する。
【0012】
また、踏段2の左右に立設する欄干7の下部に、往路踏段2Aと所定間隔の隙間をもって隣接するスカートガード7Aが設けられ、上下の乗降口床8と欄干7の間には内デッキ7Bが介在されている。
【0013】
図3、図4において、図1、図2に示す最下部に位置する前輪レール5の所定間隔に断面コ字状のブラケット9の下面9Aを前輪レール5の下になるように固着し、ブラケット9Aの上面9Bに樋10を取付けている。
【0014】
また、この樋10の復路踏段2B側にはコーキング材の充填や樋10の端面の曲げ加工で形成した堰10Aが設けられ、樋10の最下端部に設けた堰10Bは反復路踏段2B側に斜めになっている。
【0015】
また、上下の乗降口床8の内デッキ7B内部に設けられるブラケット11の乗降口床8側の端部と往路踏段2Aの端部には、コーキング材の充填で形成された堰11Aが設けられている。
【0016】
次に、欄干7に降りかかった雨がどのように流れるかを説明する。
【0017】
まず、欄干7やスカートガード7Aに降りかかった雨は、スカートガード7Aと往路踏段2Aとの間隙から最下端部巻き込むように移動し、雫12として滴下する。この滴下した雫12は、最下部に位置する前輪レール5の上部に設けた樋10に案内され、堰10Aに阻まれて復路踏段2B側に流下することなく最下端まで流れ、最下端部に設けた堰10Bによって反復路踏段2B側に流すようにしている。
【0018】
このようにしたので、スカートガード7Aと往路踏段2Aとの間隙から流れ込んだ雨水は、樋10に案内され堰10A,10Bにて復路踏段2B側への流下を阻止されて、最下部へ導かれるので、前輪軸3と前輪ローラ3Aの接続部及び図示しない踏段チェーンが雨水に滞れるのが減少でき、発錆によるチェーンの伸びや前輪ローラ3Aの固渋が抑制できる。
【0019】
次に、上下の乗降口床8と内デッキ7Bの間隙から内部に侵入した雨水の流れを説明する。
【0020】
乗降口床8の欄干7に降りかかった雨水は、内デッキ7Bと乗降口床8の間隙から内デッキ7B内部に侵入し、ブラケット11に設けた堰11Aによって横に流下するようになるので、往路踏段2A側への移動を阻止され、踏段2が雨水に濡れることを抑制できる。
【0021】
また、図2に示すように、傾斜部における往路踏段2Aの前輪レール5及び後輪レール6、復路踏段2Bの後輪レール6がブラケット13にて連結されている構造の場合、雫12は後輪レール6下部から滴下することが大部分となり、傾斜部における樋10を設けなくとも、図1に示す上下乗口近傍の復路踏段2Bの後輪レール6に樋10を設けておけば、前輪軸3と前輪ローラ3Aの接続部及び図示しない踏段チェーンの発錆を抑制できる場合がある。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の屋外用エスカレーターの上部及び下部乗口近傍の要部縦断面図である。
【図2】本発明の屋外用エスカレーターの中央傾斜部における要部縦断面図である。
【図3】屋外用エスカレーターの最下部踏段用レールに取付けた樋の要部斜視図である。
【図4】樋の縦断面図である。
【図5】本発明の屋外用エスカレーターの上部乗口近傍の要部横断面図である。
【図6】屋外用エスカレーターを示す破断斜視図である。
【符号の説明】
【0023】
1 屋外用エスカレーター
2 踏段
2A 往路踏段
2B 復路踏段
3 前輪軸
3A 前輪ローラ
4A 後輪ローラ
5 前輪レール
6 後輪レール
7 欄干
7A スカードガード
7B 内デッキ
8 乗降口
9 ブラケッ
10 樋
10A,10B,11A 堰
11 ブラケット
12 雫

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チェーンに等間隔に取付けられるとともに、無端状に連結されて循環移動する踏段と、この踏段の前後に設けられたローラをそれぞれ案内するレールと、前記踏段の両側に立設される欄干とを備えた屋外用エスカレーターにおいて、
前記レールの最下部に配設される前記レールヘ、上部に長尺板体で構成した雨水を案内する樋を設けたことを特徴とする屋外用エスカレーター。
【請求項2】
請求項1記載の屋外用エスカレーターにおいて、
前記踏段の乗降部の左右に立設される前記欄干の内側に、前記乗降部の床から反踏段側へ雨水を導く堰を設けたことを特徴とする屋外用エスカレーター。
【請求項3】
請求項1記載の屋外用エスカレーターにおいて、
前記樋は前記レールの傾斜部以外に少なくとも配置するとともに、前記樋の踏段側に堰を設けたことを特徴とする屋外用エスカレーター。
【請求項4】
請求項1〜請求項3記載の屋外用エスカレーターにおいて、
前記堰は鉛直方向への曲げ加工及びコーキング材の充填のいずれかとしたことを特徴とする屋外用エスカレーター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−36993(P2010−36993A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−198076(P2008−198076)
【出願日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【出願人】(000232955)株式会社日立ビルシステム (895)
【Fターム(参考)】