説明

屋外設置槽用覆蓋

【課題】覆蓋の重量を軽量化すると共に、開閉が容易な屋外設置槽用覆蓋を提供すること。
【解決手段】屋外設置槽例えば貯水槽1の対向する縁間に横架して槽開口部2を覆う屋外設置槽用覆蓋において、覆蓋を構成する覆蓋材10を、一対のアルミニウム製表面板11と、これら表面板間に介在されるアルミニウム製中空コア材12とからなるハニカムパネルにて形成する。これにより、覆蓋の重量を軽量化することができると共に、開閉を容易にすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば浄水場に設置される浄化槽,貯水槽や上水路等の屋外設置槽の開口部を被覆する屋外設置槽用覆蓋に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、浄化槽,貯水槽や上水路等は、精製した上水に雨水等による大気の汚れやゴミの浸入を防ぐために、浄化槽,貯水槽や上水路等の開口部を平板状の覆蓋で被覆している。従来では、これらの覆蓋の材料として、軽量で作業性に優れ、長尺で幅広の面材が形成でき、かつ、リサイクル性に優れたアルミニウム製の覆蓋が提案されている。
【0003】
アルミニウム製の覆蓋として、複数の枠材にアルミニウム製板材が取付けられた屋根材(覆蓋材)が知られており、この屋根材の両側には車輪ユニットが取付けられ、槽の縁部に沿設されたレール上を移動するようになっている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−8245号公報(段落番号0012、図1,図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の特開2005−8245号公報に記載の覆蓋においては、枠材に表面板を張った構造であるために、表面板の変形が生じ屋根勾配を大きくしないと覆蓋上に水が滞留するので、大きな屋根勾配が必要であった。
【0005】
また、枠材に表面板を張った構造とするには、枠材の剛性を極めて高くしないと平面より見た形状における変形(面内変形)が生じるという問題があった。また、剛性を高くするには重量が増加するため、覆蓋を手動で開閉する場合に、1人で開閉することが困難となり、車輪構造を工夫する必要があった。
【0006】
この発明は上記事情に鑑みてなされたもので、覆蓋の重量を軽量化すると共に、開閉が容易な屋外設置槽用覆蓋を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、この発明の屋外設置槽用覆蓋は、浄水槽,貯水槽や上水路等の屋外設置槽の対向する縁間に横架して槽開口部を覆う屋外設置槽用覆蓋において、 上記覆蓋を構成する覆蓋材を、一対のアルミニウム製表面板と、これら表面板間に介在されるアルミニウム製中空コア材とからなるハニカムパネルにて形成してなる、ことを特徴とする。ここで、アルミニウムとはアルミニウム又はアルミニウム合金を含む意味である。
【0008】
このように構成することにより、覆蓋をアルミニウム製ハニカムパネルにて形成することができるので、重量を軽量化することができる。また、覆蓋を構成する覆蓋材が槽の縁間に横架されるので、外部からの雨水等の浸入を防止することができる。
【0009】
また、請求項2記載の発明は、請求項1記載の屋外設置槽用覆蓋において、上記覆蓋材は、一端から他端に向かって該覆蓋材のたわみを考慮して求められた傾斜を有する、ことを特徴とする。ここで、傾斜は、覆蓋材の一端と他端との高さの差(h)と覆蓋材の全長(l)との比、すなわちh/l(%)である。
【0010】
請求項2記載の発明において、上記覆蓋材の低所部での水勾配を0%以上、好ましくは、1%以上とする方がよい(請求項3,4)。
【0011】
また、上記覆蓋材の一端と他端との高さの差(h){mm}、覆蓋材の全長(l){mm}、覆蓋材の自重と積載荷重の和(W){N/mm}、覆蓋材全体のヤング率(E){N/mm}、覆蓋材の断面2次モーメント(I){mm}としたとき、
h=(Wl/24EI)+(l/100)の式から覆蓋材のたわみを考慮して容易に設計でき、上記覆蓋材の一端と他端との高さの差(h)を、上記の式から求めた値以上にする方が好ましい(請求項5)。
【0012】
このように構成することにより、覆蓋材がたわんだ状態においても覆蓋上面に雨水等を溜めることなく、雨水等を覆蓋材の一端から他端側へ排水することができる。
【0013】
また、請求項6記載の発明は、請求項1又は2記載の屋外設置槽用覆蓋において、上記覆蓋材の端部を支持する支持部材を、互いに積層可能なアルミニウム製押出形材にて形成してなる、ことを特徴とする。
【0014】
このように構成することにより、アルミニウム製押出形材の段積み状態を変えることにより覆蓋の高さを任意に変えることができる。また、アルミニウム製押出形材の段積み状態を変えることにより、覆蓋材に水勾配を容易に設けることができる。
【0015】
また、請求項7記載の発明は、請求項1又は2記載の屋外設置槽用覆蓋において、上記覆蓋材の端部を支持する支持部材を、一対のアルミニウム製表面板と、これら表面板間に介在されるアルミニウム製中空コア材とからなるハニカムパネルにて形成してなる、ことを特徴とする。
【0016】
このように構成することにより、支持部材を覆蓋と同様なハニカムパネルにて形成することができ、また、ハニカムパネル製の支持部材の高さを変えることにより覆蓋の高さを任意に変えることができる。また、ハニカムパネルの高さを変えることにより、覆蓋材のスパンの変化に対しても覆蓋材に必要な水勾配を容易に設けることができる。
【0017】
また、請求項8記載の発明は、請求項6又は7記載の屋外設置槽用覆蓋において、上記覆蓋材の端部と上記支持部材の上端部を接合する接合部材を、上記覆蓋材及び支持部材の端部をそれぞれ嵌合する嵌合溝と、両嵌合溝を連結する中空連結部とを有するアルミニウム製押出形材にて形成してなる、ことを特徴とする。
【0018】
このように構成することにより、覆蓋と支持部材との接合を容易かつ強固にすることができると共に、接合部からの雨水等の浸入を阻止することができる。
【0019】
また、請求項9記載の発明は、請求項6ないし8のいずれかに記載の屋外設置槽用覆蓋において、上記両支持部材の下端部に、屋外設置槽の縁部上面に敷設されたレール上を転動可能なローラを装着し、上記支持部材の一方の下部には、上記レールの上面に沿設された起立凸状片の両側面に転動可能に係合するガイドローラを装着してなる、ことを特徴とする。この場合、上記レールの起立凸状片に側方に開口する係止凹溝を設け、支持部材の下端部には、上記係止凹溝内に挿入される浮上り防止片を設ける方が好ましい(請求項10)。
【0020】
このように構成することにより、ハニカムパネルにて形成される覆蓋材の面外曲げ剛性が大きいことを利用してレールに負荷を与えることなく、覆蓋材をレールに沿って開閉移動することができる。この場合、レールの起立凸状片に側方に開口する係止凹溝を設け、支持部材の下端部には、係止凹溝内に挿入される浮上り防止片を設けることにより、覆蓋材の移動時や風圧等によって覆蓋材が浮き上がってレールから脱落するのを防止することができる。また、ハニカムパネルにて構成したことにより面内剛性が高くなるので、平面より見た形状において変形が生じないので、上記のような簡単なローラ等の構造でも、一人で覆蓋の開閉を行うことができる。
【0021】
また、請求項11記載の発明は、請求項1ないし10のいずれかに記載の屋外設置槽用覆蓋において、上記覆蓋材の複数によって上記覆蓋を構成すると共に、隣接する覆蓋材同士を互いに収納及び引き出し可能に形成してなる、ことを特徴とする。
【0022】
このように構成することにより、覆蓋の任意の箇所を開放することができると共に、開放された覆蓋材を隣接する覆蓋材内に収納することができる。
【発明の効果】
【0023】
この発明によれば、上記のように構成されているので、以下のような効果が得られる。
【0024】
(1)請求項1記載の発明によれば、覆蓋をアルミニウム製ハニカムパネルにて形成することにより、重量を軽量化することができるので、屋外設置槽の開口部への設置及び開閉を容易にすることができる。また、外部からの雨水等の浸入を防止することができるので、特に、屋外設置槽が浄化槽,上水路等に利用される場合には、槽内の飲料水が雨水等によって汚染されるのを防止することができる。
【0025】
(2)請求項2〜5記載の発明によれば、覆蓋材が自重ないし積載荷重によりたわんだ状態においても覆蓋上面に雨水等を溜めることなく、雨水等を覆蓋材の一端から他端側へ排水することができるので、上記(1)に加えて、更に槽内への雨水等の浸入を確実に阻止することができる。
【0026】
(3)請求項6記載の発明によれば、アルミニウム製押出形材の段積み状態を変えることにより覆蓋の高さを任意に変えることができ、また、アルミニウム製押出形材の段積み状態を変えることにより、覆蓋材に水勾配を容易に設けることができる。したがって、上記(1),(2)に加えて、更に覆蓋の設置を容易にすることができる。
【0027】
(4)請求項7記載の発明によれば、支持部材を覆蓋と同様なハニカムパネルにて形成することができ、また、ハニカムパネル製の支持部材の高さを変えることにより覆蓋の高さを任意に変えることができ、また、ハニカムパネルの高さを変えることにより、覆蓋材に水勾配を容易に設けることができる。したがって、上記(1),(2)に加えて、更に覆蓋の設置を容易にすることができる。また、覆蓋材と支持部材を兼用することができるので、構成部材の種類の低減化及びコストの低廉化を図ることができる。
【0028】
(5)請求項8記載の発明によれば、覆蓋と支持部材との接合を容易かつ強固にすることができると共に、接合部からの雨水等の浸入を阻止することができるので、上記(1)〜(4)に加えて、更に槽内への雨水等の浸入を確実に阻止することができる。
【0029】
(6)請求項9記載の発明によれば、レールに負荷を与えることなく、覆蓋材をレールに沿って開閉移動することができるので、上記(1)〜(5)に加えて、更に覆蓋材の開閉作業を容易にすることができる。この場合、レールの起立凸状片に側方に開口する係止凹溝を設け、支持部材の下端部には、係止凹溝内に挿入される浮上り防止片を設けることにより、覆蓋材の移動時や風圧等に覆蓋材が浮き上がってレールから脱落するのを防止することができるので、覆蓋材の開閉を安定にすることができる(請求項10)。
【0030】
(7)請求項11記載の発明によれば、覆蓋の任意の箇所を開放することができると共に、開放された覆蓋材を隣接する覆蓋材内に収納することができるので、上記(1)〜(6)に加えて、更に覆蓋材が邪魔にならずに屋外設置槽の保守・点検作業を容易にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下に、この発明に係る屋外設置槽用覆蓋の最良の実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。
【0032】
<第1実施形態>
図1は、この発明に係る屋外設置槽用覆蓋の第1実施形態の使用状態(被覆状態)を示す概略平面図、図2は、図1のI−I線に沿う断面図、図3は、図1のII−II線に沿う断面図である。
【0033】
上記覆蓋は、屋外設置槽例えば貯水槽1の対向する縁間に支持部材20を介して横架される複数(図面では5枚の場合を示す)の覆蓋材10A〜10E(以下に符号10で代表する)と、貯水槽1の対向する縁部上を走行可能なローラ30を具備しており、これら覆蓋材10によって貯水槽1の開口部2を開閉可能に形成されている。
【0034】
上記覆蓋材10は、一対のアルミニウム製表面板11と、これら表面板11間に介在されるアルミニウム製の中空コア材12とをろう付けあるいは接着によって一体化したハニカムパネルによって形成されている。なお、この場合、覆蓋材10の縁部の表面板11間には、アルミニウム製の中空押出形材にて形成される枠材13が介在されている。
【0035】
また、上記支持部材20は、互いに積層可能なアルミニウム製の押出形材21A,21Bによって形成されている。この場合、支持部材20を構成する押出形材21A,21Bは、図4及び図5に示すように、中空矩形基部22の上下面に互いに嵌合可能な嵌合凸条23又は嵌合凹条24を有する第1の押出形材21Aと、中空矩形基部22の下面に嵌合凸条23又は嵌合凹条24を有し、上面に覆蓋材10の端部を載置する略水平状の平坦面(具体的には、後述する水勾配θと同等の勾配面)を有する載置面25を備える第2の押出形材21Bの2種類が使用されている。
【0036】
上記支持部材20の高さすなわち第1及び第2の押出形材21A,21Bの積層段数を変えることによって覆蓋材10は、一端から他端に向かって水勾配θ例えば5%が設けられている(図3参照)。
【0037】
このように水勾配θを設けることにより、覆蓋材10の上面に雨水等が溜まるのを防止することができ、雨水等を覆蓋材10の一端から他端側へ排水することができる。なお、第2の押出形材21Bの上面と覆蓋材10の枠材13とは連結ボルト26によって固定されている(図4及び図5参照)。このとき、第2の押出形材21Bの上面が水平である場合には、水勾配θに対応させて例えば合成ゴム製のスペーサを介在させればよい。なお、覆蓋材10の枠材13の端部及び支持部材20の外側には化粧カバー27が被着されている(図4及び図5参照)。
【0038】
なお、連結ボルトのナットは枠材13の上面に形成した工具挿入孔(図示せず)よりボックススパナ等を挿入して締め付けられ、工具挿入孔はハニカムパネル製造に際して表面板11により覆われる。
【0039】
また、図4及び図5に示すように、高所側及び低所側の支持部材20の最下段を構成する第1の押出形材21Aの下面には、貯水槽1の縁部上面に敷設された例えばアルミニウム製押出形材にて形成されるレール40上を転動可能なローラ30が装着され、覆蓋材10の一端例えば低所側の支持部材20の下面には、ガイドローラ35が装着されている。
【0040】
この場合、ローラ30は、図4,図8及び図9に示すように、1枚の覆蓋材10の端部を支持する一対の支持部材20の最下段の第1の押出形材21Aの下面に嵌合固定されるアルミニウム製中空押出形材にて形成される桁材31の下面に連結ボルト32によって固定される二又状ブラケット33に支持軸34を介して回転自在に装着されている。この場合、桁材31は、図4に示すように、最下段の第1の押出形材21Aの嵌合凸条23と嵌合可能な嵌合凹条31aが設けられている。このように構成されるローラ30は、貯水槽1の縁部上面にアンカーボルト41によって敷設固定されるレール40の走行面42上に転動可能に載置されている。
【0041】
また、ガイドローラ35は、図5に示すように、低側の支持部材20の最下段に位置する第1の押出形材21A又は第2の押出形材21Bの下面に保持板36を介して固定されるアルミニウム製中空押出形材からなる取付部材37の下面に垂下される一対の支軸38に回転自在に装着されて、レール40の上面に沿設される起立凸状片43の両側面に転動可能に係合している。この場合、保持板36及び取付部材37は固定ボルト39によって第1の押出形材21A及び第2の押出形材21Bの下面に固定されており、また、ガイドローラ35は、上記ローラ30の走行軌道より覆蓋材10の内側にずれた位置に装着されている。
【0042】
上記のようにガイドローラ35を、レール40の上面に沿設される起立凸状片43の両側面に転動可能に係合することにより、覆蓋材10の開閉移動の際に覆蓋材10が走行方向に傾くことなく、また、開閉方向と直行する方向に移動することなくローラ30のレール40上の転動を円滑にすることができる。この際、覆蓋材10はハニカムパネルにて形成されているため、面外曲げ剛性が大きいので、レール40に負荷を与えることなくレール40に沿って開閉移動することができる。
【0043】
また、図4に示すように、レール40の起立凸状片43には、側方に開口する係止凹溝44が設けられており、この係止凹溝44内に、支持部材20の下端部に設けられた略L字状の浮上り防止片45が挿入されている。なお、この場合、浮上り防止片45は二又状ブラケット33と一体に設けられている。このように、レール40の起立凸状片43に側方に開口する係止凹溝44を設け、支持部材20の下端部に、係止凹溝44内に挿入される浮上り防止片45を設けることにより、覆蓋材10の開閉移動時や風圧等によって覆蓋材10が浮き上がってレール40から脱落するのを防止することができる。
【0044】
また、隣接する覆蓋材10同士は、互いに収納及び引き出し可能に形成されている。この場合、図1及び図2に示すように、左右両端部に位置する覆蓋材10A,10Eに対してそれぞれ隣接する覆蓋材10B,10Dは、覆蓋材の長手方向に長く及び高さ方向に高く形成されて、左右両端部に位置する覆蓋材10A,10Eを相対的に収納及び引き出し可能に形成されている。また、図1及び図2において中間に位置する覆蓋材10Cも左右両端部に位置する覆蓋材10A,10Eと同様に覆蓋材10B,10Dに対して相対的に収納及び引き出し可能に形成されている。
【0045】
このように構成することにより、全ての覆蓋材10A〜10Eを引き出して貯水槽1の開口部2を閉塞することができ、また、覆蓋材10A〜10Eのいずれかを隣接する覆蓋材10に相対的に収納して、任意の箇所を開放することができる。
【0046】
なお、隣接する覆蓋材10A〜10Eにおいて、収納状態で外側に位置する覆蓋材10B,10Dの開閉移動側端部には、例えば合成ゴム製の水切りシート46が垂下され、内側に位置する覆蓋材10A,10C,10Eの開閉移動側端部には、水切りシート46と重なるように水切り片47が立設されている(図2及び図6参照)。また、左右両端部に位置する覆蓋材10A,10Eの貯水槽1の縁部側端部には、例えば合成ゴム製の水切りシート46が垂下され、貯水槽1の縁部には、水切りシート46と重なるように水切り片47Aが立設されている(図6参照)。
【0047】
なお、覆蓋材10は、ロック機構50によって開放位置及び閉塞位置においてレール40にロック可能に形成されている。この場合、ロック機構50は、図7に示すように、覆蓋材10を支持する支持部材20の下端部に垂下され、レール40の起立凸状片43の外側方に延在する二又状ブラカット33に延在する支持ブラケット51と、この支持ブラケット51に設けられた貫通孔52内に摺動自在に貫通され、圧縮ばね53の付勢力によって常時起立凸状片43から離反する方向に押圧されるストッパピン54と、起立凸状片43に設けられ、ストッパピン54が挿入可能な係止孔55とで構成されている。すなわち、ストッパピン54は公知の構造によりその先端が係止孔55内にありロックされた状態と、ストッパピン54の先端が係止孔55より左方向に外れフリーな状態に維持できるようになっている。
【0048】
次に、覆蓋材10に設けられる水勾配θについて詳細に説明する。まず、適正な水勾配θを設けるには、覆蓋材10のたわみを考慮しなければならない。たわみを求めるには、覆蓋材10は等分布荷重の梁材と考えられるので、図10(a)に示すように、単位長さあたりの等分布荷重(w){N/mm}による単純梁のたわみ量δ{mm}は、
δ=(wl/24EI)×(x/l−2x/l+x/l
である。
【0049】
ここで、lは梁の全長(覆蓋材の長さ){mm}、Eは梁材のヤング率{N/mm}、Iは梁材の断面2次モーメント{mm}である。
【0050】
また、図10(a)に示すように、たわみ角φは、
φ=dy/dx
=(wl/24EI)×(1/l−6x/l+4x/l
である。
【0051】
x=0(原点)においては、
φ=wl/24EI
となる。
【0052】
覆蓋材に単位長さあたり荷重W[(自重)+(積載荷重){N/mm}]を載荷し、最小でも低所部での水勾配を0(ゼロ)%以上とするため、図10(b)の通り、
所要傾斜量h’ は
tanφ=tan(Wl/24EI)≦h’/l
たわみ角φは微小であるため、
tan(Wl/24EI)≒Wl/24EI であり
h’/l≧(Wl/24EI)
となり、上式より、
h’ ≧(W×l/24×E×I)
となる。
【0053】
よって、水の排出をより確実にするために荷重載荷でたわみが生じた後に覆蓋の低所部での水勾配を1%以上とするには、傾斜を得るための覆蓋材の高さの差(h){mm}を
h≧h’ + l/100
≧Wl/24EI+l/100
したがって、上記の式より、覆蓋材の一端と他端との高さの差h(mm)は、覆蓋材の全長(l){mm}、覆蓋材の単位長さあたりの自重と積載荷重の和(W){N/mm}、覆蓋材全体のヤング率(E){N/mm}、覆蓋材の断面2次モーメント(I){mm}としたとき、
h≧ Wl/24EI+l/100とする方がよい。
【0054】
なお、覆蓋材10の異なる種類における傾斜量に対する低所部での水勾配を調べたところ、表1に示すような結果が得られた。
【表1】

【0055】
この結果、覆蓋材10に対して通常の長さに覆蓋材であれば傾斜を得るための一端と他端の高さの差を206〜439mm程度とれば低位部での水勾配は3.5〜4.4%となり充分な水勾配を得られることが判った。
【0056】
<第2実施形態>
図11は、この発明に係る第2実施形態における覆蓋材と支持部材の高所側を示す断面図、図12は、第2実施形態における覆蓋材と支持部材の低所側を示す断面図である。
【0057】
第2実施形態は、支持部材をハニカムパネルにて形成した場合である。すなわち、覆蓋材10の端部を支持する支持部材20Aを、一対のアルミニウム製表面板11と、これら表面板11間に介在されるアルミニウム製中空コア材12とからなるハニカムパネルにて形成した場合である。この場合、表面板11と中空コア材12とはろう付けあるいは接着によって一体化されている。このようにハニカムパネルにて形成される支持部材20Aの高さを変えることによって、覆蓋材10の一端と他端との差(h)をもたせて水勾配θを設けることができる。
【0058】
なお、この支持部材は第1実施形態における化粧カバー27も兼ねるために覆蓋材10の幅寸法全体にわたる寸法を有している。
【0059】
また、第2実施形態においては、図12に示すように、支持部材20Aを用いないで、覆蓋材10の一端と他端との差(h)をもたせて水勾配θを設けることも可能である。
【0060】
また、上記支持部材20Aの上端部と覆蓋材10の端部を接合する接合部材60は、覆蓋材10及び支持部材20Aの端部をそれぞれ嵌合する嵌合溝61と、両嵌合溝61を連結する中空連結部62とを有するアルミニウム製押出形材にて形成されている。この場合、中空連結部62は、嵌合溝61を有する隣接する2辺が直角に形成される三角形状に形成されて、上端部に外方に向かって下り勾配の傾斜面63が形成されている。なお、嵌合溝61内に嵌合される覆蓋材10の端部及び支持部材20Aの上端部は、それぞれ固定ボルト64aとナット64bの締結によって固定されている。
【0061】
上記のように構成することにより、覆蓋すなわち覆蓋材10と支持部材20Aとの接合を容易かつ強固にすることができると共に、接合部からの雨水等の浸入を阻止することができる。
【0062】
また、第2実施形態におけるローラ30は、図11,図13及び図14に示すように、支持部材20Aの下端部を嵌合する嵌合溝71を有するアルミニウム製押出形材にて形成される桁材70の下端部に装着されている。なお、支持部材20Aの下端部は桁材70の嵌合溝71内に嵌合され、固定ボルト72aとナット72bの締結によって固定されている。
【0063】
なお、第2実施形態において、その他の部分は第1実施形態と同じであるので、同一部分には同一符号を付して、説明は省略する。
【0064】
<その他の実施形態>
上記実施形態では、覆蓋が5枚の覆蓋材10によって形成される場合について説明したが、5枚以外の複数枚の覆蓋材10によって覆蓋を形成してもよい。
【0065】
また、第1実施形態においても、第2実施形態と同様に、覆蓋材10と支持部材20とを接合部材60を用いて接合することも可能である。
【0066】
なお、上記実施形態では、貯水槽1の開口部2を閉塞する覆蓋について説明したが、この発明に係る覆蓋は、貯水槽以外の屋外設置槽にも適用できることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】この発明に係る屋外設置槽用覆蓋の第1実施形態の使用状態(被覆状態)を示す概略平面図である。
【図2】図1のI−I線に沿う概略断面図である。
【図3】図1のII−II線に沿う概略断面図である。
【図4】この発明の第1実施形態における覆蓋材と支持部材の高所側を示す断面図である。
【図5】この発明の第1実施形態における覆蓋材と支持部材の低所側を示す断面図である。
【図6】図2の要部拡大断面図である。
【図7】この発明における覆蓋材のロック機構を示す断面図である。
【図8】図4における上方に位置する覆蓋材の支持部材とローラを示す側面図である。
【図9】図4における下方に位置する覆蓋材の支持部材とローラを示す側面図である。
【図10】覆蓋材(等分布荷重の単純梁)のたわみを示す説明図(a)及びたわみ角と高さの差を示す説明図(b)である。
【図11】この発明に係る第2実施形態における覆蓋材と支持部材の高所側を示す断面図である。
【図12】この発明に係る第2実施形態における覆蓋材と支持部材の低所側を示す断面図である。
【図13】図11における上方に位置する覆蓋材の支持部材とローラを示す側面図である。
【図14】図11における下方に位置する覆蓋材の支持部材とローラを示す側面図である。
【符号の説明】
【0068】
1 貯水槽(屋外設置槽)
2 開口部
10,10A〜10E 覆蓋材
11 表面板
12 中空コア材
20,20A 支持部材
21A,21B 押出形材
23 嵌合凸条
24 嵌合凹条
30 ローラ
35 ガイドローラ
40 レール
43 起立凸状片
45 浮上り母子片
60 接合部材
61 嵌合溝
62 中空連結部
θ 水勾配
h 覆蓋材の一端と他端との高さの差

【特許請求の範囲】
【請求項1】
浄水槽,貯水槽や上水路等の屋外設置槽の対向する縁間に横架して槽開口部を覆う屋外設置槽用覆蓋において、
上記覆蓋を構成する覆蓋材を、一対のアルミニウム製表面板と、これら表面板間に介在されるアルミニウム製中空コア材とからなるハニカムパネルにて形成してなる、ことを特徴とする屋外設置槽用覆蓋。
【請求項2】
請求項1記載の屋外設置槽用覆蓋において、
上記覆蓋材は、一端から他端に向かって該覆蓋材のたわみを考慮して求められた傾斜を有する、ことを特徴とする屋外設置槽用覆蓋。
【請求項3】
請求項2記載の屋外設置槽用覆蓋において、
上記覆蓋材の低所部での水勾配は0%以上である、ことを特徴とする屋外設置槽用覆蓋。
【請求項4】
請求項2記載の屋外設置槽用覆蓋において、
上記低所部での水勾配は1%以上である、ことを特徴とする屋外設置槽用覆蓋。
【請求項5】
請求項2記載の屋外設置槽用覆蓋において、
上記覆蓋材の傾斜は一端と他端との高さの差(h){mm}、覆蓋材の全長(l){mm}、単位長さあたりの覆蓋材の自重と積載荷重の和(W){N/mm}、覆蓋材全体のヤング率(E){N/mm}、覆蓋材の断面2次モーメント(I){mm}としたとき、
h≧(Wl/24EI)+(l/100)である、
ことを特徴とする屋外設置槽用覆蓋。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載の屋外設置槽用覆蓋において、
上記覆蓋材の端部を支持する支持部材を、互いに積層可能なアルミニウム製押出形材にて形成してなる、ことを特徴とする屋外設置槽用覆蓋。
【請求項7】
請求項1ないし5のいずれかに記載の屋外設置槽用覆蓋において、
上記覆蓋材の端部を支持する支持部材を、一対のアルミニウム製表面板と、これら表面板間に介在されるアルミニウム製中空コア材とからなるハニカムパネルにて形成してなる、ことを特徴とする屋外設置槽用覆蓋。
【請求項8】
請求項6又は7記載の屋外設置槽用覆蓋において、
上記覆蓋材の端部と上記支持部材の上端部を接合する接合部材を、上記覆蓋材及び支持部材の端部をそれぞれ嵌合する嵌合溝と、両嵌合溝を連結する中空連結部とを有するアルミニウム製押出形材にて形成してなる、ことを特徴とする屋外設置槽用覆蓋。
【請求項9】
請求項6ないし8のいずれかに記載の屋外設置槽用覆蓋において、
上記両支持部材の下端部に、屋外設置槽の縁部上面に敷設されたレール上を転動可能なローラを装着し、上記支持部材の一方の下部には、上記レールの上面に沿設された起立凸状片の両側面に転動可能に係合するガイドローラを装着してなる、ことを特徴とする屋外設置槽用覆蓋。
【請求項10】
請求項9記載の屋外設置槽用覆蓋において、
上記レールの起立凸状片に側方に開口する係止凹溝を設け、支持部材の下端部には、上記係止凹溝内に挿入される浮上り防止片を設けた、ことを特徴とする屋外設置槽用覆蓋。
【請求項11】
請求項1ないし10のいずれかに記載の屋外設置槽用覆蓋において、
上記覆蓋材の複数によって上記覆蓋を構成すると共に、隣接する覆蓋材同士を互いに収納及び引き出し可能に形成してなる、ことを特徴とする屋外設置槽用覆蓋。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2007−239396(P2007−239396A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−66621(P2006−66621)
【出願日】平成18年3月10日(2006.3.10)
【出願人】(500538715)株式会社住軽日軽エンジニアリング (58)
【Fターム(参考)】