説明

屋外通信機器

【課題】 水平設置しても機器内の温度上昇を抑える放熱効果を備える屋外通信機器を提供する。
【解決手段】 例えば、アルミニウム合金製の取付金具4を使用し、本体1の底面に形成された複数の放熱フィン10bの突起形状に合わせて、当該複数の放熱フィン10bを各々収納可能とする凹部43を複数形成し、本体1に取付金具4を取り付けて、本体1と取付金具4との接触面積を広くし、本体1と取付金具4との熱伝導を大きくすることで、水平設置の場合でも垂直設置の場合と同様の放熱効果が得られる屋外通信機器である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋外に設置される通信機器に係り、特に、水平設置の場合にも放熱効果が得られる屋外通信機器に関する。
【背景技術】
【0002】
[従来の屋外通信機器の概略:図3]
従来の屋外通信機器について図3を参照しながら説明する。図3は、従来の屋外通信機器を垂直設置した場合の概略図である。
従来の屋外通信機器を垂直設置した場合は、図3に示すように、垂直方向に設立された取付用ポール2に、屋外通信機器の本体1が、ケーブル接続部を下側となるよう取り付けられている。
【0003】
また、屋外通信機器の本体1の筐体外面の内、広い面積を有する外面には、複数の放熱フィンが形成されており、自然空冷によって放熱する構造となっている。
また、本体1の筐体内部には、通信を行うために必要な電子部品が格納されている。
尚、屋外通信機器の本体1には、取付用ポール2への取り付けを行うための金属製取付金具が取り付けられる構造となっている。
【0004】
[従来の屋外通信機器の全体斜視図:図4]
従来の屋外通信機器の全体について図4を参照しながら説明する。図4は、従来の屋外通信機器の全体を示す斜視図である。
図4に示すように、屋外通信機器の本体1を水平に設置した場合、その底面に金属製取付金具3が取り付けられている。
金属製取付金具3は、金属製板を凸形状に形成したもので、地面に接触する地面接触面と、本体1の放熱フィンに接触する本体接触面とを、段差を設けて接続している。
【0005】
尚、水平設置を行う状況として、例えば、マンション又はビルの屋上にエアコン装備のプレハブを設置し、その中に屋外通信機器を水平に配置する場合がある。この場合でも、通信機器は、50°Cに耐えうる構成となっている。
【0006】
[従来の屋外通信機器の全体正面:図5]
また、図5は、従来の屋外通信機器全体の正面図である。
図5に示すように、屋外通信機器の本体1の底面に形成されたネジ受部に金属製取付金具3がネジによって固定され、取り付けられている。
金属取付金具3は、1枚のステンレス板又は鉄板を折り曲げて凸形状となるよう形成されている。
【0007】
[関連技術]
尚、関連する先行技術文献として、特開平09−321458号公報「防水性シャーシ構造」(株式会社日立国際電気)[特許文献1]と、特開2004−296878号公報「通信装置」(株式会社日立国際電気)[特許文献2]がある。
特許文献1は、電気機器のシャーシ内部に対する水密性を確保するものであり、特許文献2は、通信装置の筐体外部への放熱を効率的に行うものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平09−321458号公報
【特許文献2】特開2004−296878号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来の屋外通信機器では、金属製取付金具3を介して地面に水平設置する場合、十分な放熱効果が得られず、屋外通信機器内部の温度が上昇してしまうため、水平設置を禁止せざるを得ず、若しくは機器の適正な温度範囲について水平設置を予定して仕様変更を行う必要があるという問題点があった。
【0010】
例えば、マンション等の屋上のプレハブに収納する場合でも、省電力を考慮すると、エアコンをできるだけ使用しない方が望ましく、エアコンを使用したとしても、放熱効果を高めることで、省エネルギーとすることが期待される。
【0011】
また、水平設置の場合でも、自然空冷ではなく、ファンを用いて強制冷却する方法もあるが、装置が大きくなり、高コストとなる問題がある。
また、水平設置ではなく、斜めに設置して自然空冷する方法もあるが、装置の設置が不安定となり、スペースを取ってしまうという問題がある。
【0012】
本発明は上記実情に鑑みて為されたもので、水平設置しても機器内の温度上昇を抑える放熱効果を備える屋外通信機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記従来例の問題点を解決するための本発明は、水平設置可能な通信機器であって、底面には複数の突起形状の放熱フィンが形成された本体と、複数の放熱フィンに対応して当該放熱フィンを各々収納するよう複数の凹部が形成された取付金具とを備え、本体に取付金具が取り付けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、本体には、底面に複数の突起形状の放熱フィンが形成され、取付金具には、複数の放熱フィンに対応して当該放熱フィンを各々収納するよう複数の凹部が形成され、本体に取付金具が取り付けられている通信機器としている。これにより、放熱フィンと取付金具との接触面積が広くなるため、放熱フィンから取付金具に熱が逃げやすくなり、水平設置しても機器内の温度上昇を抑え、垂直設置と同様の放熱効果を得ることができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態に係る屋外通信機器全体の斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る屋外通信機器全体の正面図である。
【図3】従来の屋外通信機器を垂直設置した場合の概略図である。
【図4】従来の屋外通信機器の全体を示す斜視図である。
【図5】従来の屋外通信機器全体の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
[実施の形態の概要]
本発明の実施の形態に係る屋外通信機器は、例えば、アルミニウム合金製の取付金具を使用し、本体の底面に形成された複数の放熱フィンの突起形状に合わせて、当該複数の放熱フィンを各々収納可能として本体との接触面積を広くし、屋外通信機器本体と取付金具との熱伝導を大きくすることで、水平設置の場合でも垂直設置の場合と同様の放熱効果が得られるものである。
【0017】
[屋外通信機器の全体概要:図1]
本発明の実施の形態に係る屋外通信機器について図1を参照しながら説明する。図1は、本発明の実施の形態に係る屋外通信機器全体の斜視図である。
本発明の実施の形態に係る屋外通信機器(本機器)は、図1に示すように、本体1と、アルミニウム合金製の取付金具4とを基本的に有している。
【0018】
[屋外通信機器の全体正面:図2]
図2は、本発明の実施の形態に係る屋外通信機器全体の正面図である。
図1及び図2に示すように、屋外通信機器の本体1の天面(上面)及び底面には、複数の突起状の放熱フィン10a,10bが形成されている。
上面の放熱フィン10aに比べて底面の放熱フィン10bの方が長く形成されている。これは、上面の放熱フィン10aは、自然放熱が可能であるが、底面の放熱フィン10bは可能な限り取付金具4に接触させ、放熱効果を得られるよう、放熱フィン10aに比べて長い形状となっている。
【0019】
[取付金具4]
取付金具4は、本体1の底面より広い面積の基部41と、基部41上に形成され、放熱フィン10bの長さ以上の高さを備えた凸部42と、放熱フィン10bの長さ以上の深さを備えた凹部43とを有している。
取付金具4の凸部42と凹部43とは、図2の正面から奥方向に延長して形成され、凸部42と凹部43の組み合わせを複数有することにより、取付金具4に複数の溝が形成されたものとなっている。
そして、凹部43は、放熱フィン10bの形状に対応して、放熱フィン10bを各々収納するよう形成されている。
【0020】
理想的には、放熱フィン10bの形状に対して隙間なく密着するよう凹部43を形成した方が熱伝導の効率がよいが、そのような形状にしてしまうと放熱フィン10b又は凹部43に製造上のずれが発生した場合に、凹部43に放熱フィン10bを差し込むことができなくなったり、凸部42の上面が本体1の底面に接触しなくなったりして、本体1に取付金具4を適正に取り付けることができなくなるおそれがある。
【0021】
そこで、放熱フィン10b又は凹部43に製造上のずれが発生しても、凹部43に放熱フィン10bを挿入可能となるよう、放熱フィン10bに対して凹部43を大きめに形成している。
また、本機器も、従来と同様に、本体1の底面から突出して形成されたネジ受部に、当該ネジ受部に対応して取付金具4に開けられた穴にネジを通して固定することで、本体1に取付金具4が取り付けられることになる。
【0022】
[熱伝導シート等の介在]
尚、放熱フィン10bと取付金具4との間に、熱伝導シートを介在させ、また、熱伝導性のグリスを充填して、熱伝導性を高め、放熱効果を向上させるようにしてもよい。
【0023】
[実施の形態のシミュレーション結果]
本機器において、熱計算のシミュレーションを行った結果、天面で、従来の機器に比べて3〜4°C低い温度差が見られた。
また、本機器内部の天面側に形成されたプリント基板等の実装部品の表面でも、従来の機器に比べて3〜4°C低い温度差が見られた。
更に、本機器内部の底面側に形成された実装部品の表面では、従来の機器に比べて5〜20°C低い温度差が見られた。
【0024】
[応用例]
本機器の取付金具4の凹凸形状を本体1の底面全体に形成するようにしたが、放熱効果を高くしたい箇所に集中的(部分的)に凹凸形状を形成してもよい。
具体的には、温度がそれほど上昇しない箇所は、放熱効果を得る必要性がない部分となるため、その部分については、凸部42を形成せず、広い面積の凹部を形成した取付金具4を用いる。広い面積の凹部には、複数の放熱フィン10bがまとめて収納される。
上記応用例の構成によれば、凸部42と凹部43を部分的に形成するため、構成が簡単であり、製造コストを低減できる効果がある。
【0025】
[実施の形態の効果]
本機器によれば、垂直設置を想定して設計された屋外通信機器であっても、設置場所の都合等により水平設置する場合に、取付金具4を用いることにより、垂直設置と同様の放熱効果を得ることができる効果がある。
【0026】
また、本機器によれば、本体1が垂直設置と水平設置の両方に利用することができ、水平設置専用の通信機器を新たに開発する必要がない。
また、本機器では、水平設置において垂直設置と同等の放熱効果が得られるため、水平設置時の使用温度範囲等について仕様変更を行う必要がないものである。
【0027】
[実施の形態のまとめ]
本発明の実施の形態における特徴を以下にまとめて記述する。
[特徴1]
水平設置可能な通信機器であって、底面には複数の突起形状の放熱フィン10bが形成された本体1と、複数の放熱フィン10bに対応して当該放熱フィン10bを各々収納するよう複数の凹部43が形成された取付金具4とを備え、本体1に取付金具4が取り付けられていることを特徴とする。
【0028】
[特徴2]
上記通信機器において、取付金具4がアルミニウム合金で形成されていることを特徴とする。
【0029】
[特徴3]
上記通信機器において、放熱フィン10bの各々を収納する凹部43は、本体1の底面の一部分について放熱フィンに対応して形成され、底面の他の部分については複数の放熱フィンをまとめて収入する凹部を有することを特徴とする。
【0030】
[特徴4]
上記通信機器において、本体1と取付金具4との間に、熱伝導シートを介在させ、又は熱伝導性のグリスを充填したことを特徴とする。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明は、水平設置しても機器内の温度上昇を抑える放熱効果を備える屋外通信機器に好適である。
【符号の説明】
【0032】
1…屋外通信機器の本体、 2…取付用ポール、 3…金属製取付金具、 4…取付金具、 10a…天面の放熱フィン、 10b…底面の放熱フィン、 41…基部、 42…凸部、 43…凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平設置可能な通信機器であって、
底面には複数の突起形状の放熱フィンが形成された本体と、
前記複数の放熱フィンに対応して当該放熱フィンを各々収納するよう複数の凹部が形成された取付金具とを備え、
前記本体に前記取付金具が取り付けられていることを特徴とする通信機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−49212(P2012−49212A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−187900(P2010−187900)
【出願日】平成22年8月25日(2010.8.25)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】