説明

屋根パネル位置決め構造及びこれを用いた屋根パネル設置方法

【課題】低コストで屋根パネルの施工作業性を向上させることができる屋根パネル位置決め構造及びこれを用いた屋根パネル設置方法を得る。
【解決手段】屋根パネル10の垂木14の上端側面にはプレート状の垂木金物26が固定されている。これに対応して、棟12の上端部の両脇には、垂木受け金物24が配設されている。屋根パネル10を設置する際には、屋根パネル10を略水平に吊り上げて、垂木金物26の下部に形成された切欠部28を垂木受け金物24に当接させ、係止される位置まで摺動させる。その後、垂木受け金物24を中心として屋根パネル10の軒先側を吊り下ろすことにより、屋根パネル10を回動させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パネル化された屋根パネルを屋根固定梁に対して位置決めするための屋根パネル位置決め構造及びこれを用いた屋根パネル設置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、屋根パネルの位置決め構造が開示されている。簡単に説明すると、この先行技術では、屋根パネルのフレーム枠体の一辺を構成する棟側フレームの左右二箇所に、吊り上げ用のアイボルトが取外し可能に固定されている。さらに、アイボルトには、略矩形平板状の掛け止め部材が回動可能に共締めされている。この掛け止め部材の先端部は、棟梁の山型状の先端部に面一に係止される傾斜角度に屈曲されている。
【0003】
上記構成によれば、屋根パネルの運搬時には掛け止め部材を棟側フレームに重合する位置まで回動させて格納し、屋根パネルの吊り込み時に掛け止め部材を下向きに突出するように回動させる。そして、この状態で屋根パネルを屋根勾配に合わせて吊り込み、掛け止め部材の先端部を棟梁の先端部に係止させながら躯体上に載置させる。これにより、屋根パネルの躯体に対する本固定前の位置決めがなされる、というものである。
【特許文献1】特開平11−247346号公報
【特許文献2】特開平8−312147号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記先行技術による場合、掛け止め部材は略矩形平板状に形成されており、棟フレームへの取付面を構成する基部と、基部から屈曲されて棟梁に係止させる先端部とで構成されており、賭け止め部材をアイボルトで固定した状態では、屋根パネルの屋根面に対して略直角に先端部が突出した状態で配置される。従って、屋根パネルを吊り込む際には、屋根パネルを必ず傾斜した状態(実際には、屋根勾配に合わせた傾斜角度で吊った状態)で吊り上げて棟梁側へ吊り込む必要がある。このため、屋根パネルを安定した状態で吊り上げるためのクレーンを使った吊り位置の調整を繰り返し行う必要が生じ、この点において屋根パネルの施工性が低下する。
【0005】
なお、特許文献2のように、屋根パネル等の重量物を水平に吊り上げて所定位置まで吊り込むための吊り具の先行技術も存在するが、新たな吊り具を要する他、クレーン側にも調整手段を設けなければならず、コストがかかる。
【0006】
本発明は上記事実を考慮し、低コストで屋根パネルの施工作業性を向上させることができる屋根パネル位置決め構造及びこれを用いた屋根パネル設置方法を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明に係る屋根パネル位置決め構造は、建物の屋根固定梁側に設けられると共に当該屋根固定梁に対して軸線が平行な軸状部分を備えた屋根受け部材と、前記屋根固定梁に固定される屋根パネルの下面側かつ上端側に設けられ、当該屋根受け部材の軸状部分に係止されることで屋根パネルを屋根固定梁に対する正規組付位置に位置決めしかつ屋根パネルの当該軸状部分回りの回動を可能とする位置決め手段と、を有することを特徴とする。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1記載の屋根パネル位置決め構造において、前記位置決め手段は、前記屋根受け部材の軸状部分が係止される係止部と、この係止部に連続して形成されると共に屋根受け部材に上方側から当接されて屋根受け部材の軸状部分を係止部に相対的に案内するガイド部と、を含んで構成されている、ことを特徴とする。
【0009】
請求項3の発明は、請求項2記載の屋根パネル位置決め構造において、前記位置決め手段は、下部が垂木の下面から突出するように垂木の側面に固定された板状の位置決め部材であり、前記ガイド部及び前記係止部は、当該位置決め部材の下部に形成された切欠部の端面として形成されている、ことを特徴とする。
【0010】
請求項4の発明は、請求項1記載の屋根パネル位置決め構造において、前記位置決め手段は、前記屋根受け部材の軸状部分が相対的に挿入されて係止される切欠部と、この切欠部内に軸状部分が相対的に挿入されることにより作動して切欠部への軸状部分の係止状態を保持する外れ止め手段と、を備えている、ことを特徴とする。
【0011】
請求項5の発明は、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の屋根パネル位置決め構造において、前記屋根受け部材は、前記屋根固定梁に所定の間隔で立設状態で設けられる垂木止め部材に設けられている、ことを特徴とする。
【0012】
請求項6の発明は、請求項5記載の屋根パネル位置決め構造において、前記屋根受け部材は、前記垂木止め部材から取外し可能とされている、ことを特徴とする。
【0013】
請求項7の発明に係る屋根パネル設置方法は、屋根パネルを略水平に吊り上げて当該屋根パネルが備える前記位置決め手段を建物の屋根固定梁側に設けられた屋根受け部材の上方に位置するように吊り込み、屋根パネルを吊り下ろしながら前記位置決め手段に前記屋根受け部材の軸状部分を係止させ、屋根パネルの軒先側を吊り下ろしながら屋根パネルを当該軸状部分を回転中心として回動させ、建物の屋根パネル固定部にセットし、屋根パネルを屋根固定梁に固定する、ことを特徴とする。
【0014】
請求項1記載の本発明によれば、建物の屋根固定梁側に屋根受け部材が設けられており、当該屋根受け部材の軸状部分の軸線は屋根固定梁に対して平行とされている。一方、屋根パネルの下面側かつ上端側には位置決め手段が設けられており、この位置決め手段は屋根受け部材の軸状部分に係止可能とされている。本発明では、屋根パネルの位置決め手段を屋根受け部材の軸状部分に係止させると、屋根パネルが正規組付位置に位置決めされる。そして、屋根パネルの位置決め手段を屋根受け部材の軸状部分に係止させた状態で、屋根パネルを屋根受け部材の軸状部分回りに回動させていけば、屋根パネルが建物の屋根固定位置にセットされる。その後、屋根パネルが屋根固定梁に固定される。
【0015】
すなわち、本発明では、屋根固定梁側に屋根受け部材の軸状部分を設置し、これを回転中心として屋根パネルを回動させるようにしたので、屋根パネルの吊り込みに際して屋根パネルを略水平状態で吊り上げることができる。従って、先行技術に比し、屋根パネルを安定した状態で吊り上げるためのクレーンを使った吊り位置の調整を繰り返し行う必要がなくなり、この点において屋根パネルの施工性が向上される。
【0016】
また、屋根パネルを水平に吊り込むために特別な吊り具を用意する必要はなく、クレーン側に専用品を追加設定する必要もない。従って、コスト的には屋根受け部材の追加に伴う費用と位置決め手段の追加に伴う費用が発生するが、施工性が向上されることで建築地での施工期間が短縮化されることによるコスト削減効果も得られるので、トータルコストは抑制される。
【0017】
請求項2記載の本発明によれば、屋根パネルを吊り下ろしてくる際に、位置決め手段のガイド部を屋根受け部材の軸状部分に上方側から当接させる。次いで、ガイド部にガイドさせながら屋根受け部材の軸状部分を相対移動させ、ガイド部に連続して形成された係止部に軸状部分を係止させる。従って、屋根パネルを吊り下ろす際には、位置決め手段のガイド部が屋根受け部材の軸状部分に当接する程度に吊り下ろせばよいので、屋根パネルの吊り下ろし位置が多少ずれても屋根受け部材の軸状部分を係止部に係止させることができる。
【0018】
請求項3記載の本発明によれば、位置決め手段は板状の位置決め部材として構成されており、当該位置決め部材は垂木の側面に固定される。従って、隣接する屋根パネルを吊り下ろしてくる際に位置決め手段が隣接する屋根パネルの垂木等に干渉することはない。
【0019】
さらに、ガイド部及び係止部は、位置決め部材の下部は垂木の下面から突出しており、その下部に切欠部が形成されてその端面にガイド部及び係止部が形成される。このため、例えば、ガイド部を傾斜面として形成し、係止部を屋根受け部材の軸状部分の外径に合致する円弧面として形成することができる。
【0020】
請求項4記載の本発明によれば、屋根パネルを吊り下ろしてくる際に、位置決め手段の切欠部に屋根受け部材の軸状部分が相対的に挿入される。切欠部内に軸状部分が相対的に挿入されると、外れ止め手段が作動して切欠部への軸状部分の係止状態が保持される。従って、作業中に屋根パネルが強風に煽られても、屋根受け部材の軸状部分が切欠部に係止された状態が維持される。
【0021】
請求項5記載の本発明によれば、屋根固定梁には所定の間隔で垂木止め部材が立設されており、この垂木止め部材に屋根受け部材が設けられているので、屋根受け部材を設置するための新設部材を要しない。
【0022】
請求項6記載の本発明によれば、屋根受け部材が垂木止め部材から取外し可能とされているので、複数の屋根パネルを設置するに際して一つの屋根パネルの設置作業が完了したら、屋根受け部材を垂木止め部材から取外し、次の屋根パネルの設置のために使用するといったことが可能となる。
【0023】
請求項7記載の本発明によれば、まず、屋根パネルが略水平に吊り上げられ、屋根パネルが備える位置決め手段が建物の屋根固定梁側に設けられた屋根固定梁の上方に位置するように屋根パネルが吊り込まれる。次いで、屋根パネルを吊り下ろしながら位置決め手段に屋根受け部材の軸状部分を係止させる。次いで、屋根パネルの軒先側を吊り下ろしながら屋根パネルを当該軸状部分を回転中心として回動させ、建物の屋根パネル固定部にセットする。その後、屋根パネルが屋根固定梁に固定される。
【0024】
すなわち、本発明では、請求項1記載の発明と同様に、屋根固定梁側に屋根受け部材の軸状部分を設置し、これを回転中心として屋根パネルを回動させるようにしたので、屋根パネルの吊り込みに際して屋根パネルを略水平状態で吊り上げることができる。従って、先行技術に比し、屋根パネルを安定した状態で吊り上げるためのクレーンを使った吊り位置の調整を繰り返し行う必要がなくなり、この点において屋根パネルの施工性が向上される。
【0025】
また、屋根パネルを水平に吊り込むために特別な吊り具を用意する必要はなく、クレーン側に専用品を追加設定する必要もない。従って、コスト的には屋根受け部材の追加に伴う費用と位置決め手段の追加に伴う費用が発生するが、施工性が向上されることで建築地での施工期間が短縮化されるコスト削減効果も得られるので、トータルコストは抑制される。
【発明の効果】
【0026】
以上説明したように、請求項1記載の本発明に係る屋根パネル位置決め構造は、低コストで屋根パネルの施工作業性を向上させることができるという優れた効果を有する。
【0027】
請求項2記載の本発明に係る屋根パネル位置決め構造は、屋根パネルの吊り下ろし作業を容易に行うことができ、その結果、屋根パネルの施工作業性をより向上させることができるという優れた効果を有する。
【0028】
請求項3記載の本発明に係る屋根パネル位置決め構造は、隣接する屋根パネルとの干渉を回避するように位置決め部材を納まり良く設置することができると共にガイド部及び係止部の製作が容易であるという優れた効果を有する。
【0029】
請求項4記載の本発明に係る屋根パネル位置決め構造は、屋根パネルの吊り下ろし時に屋根パネルが強風で煽られても屋根パネルの切欠部への係止状態を良好に維持することができるという優れた効果を有する。
【0030】
請求項5記載の本発明に係る屋根パネル位置決め構造は、既存の部材を利用して屋根受け部材を設置することができるので、屋根受け部材を設置するための新設部材を設定する場合に比し、部品点数及び組付工数を削減することができ、コストの上昇を抑制することができるという優れた効果を有する。
【0031】
請求項6記載の本発明に係る屋根パネル位置決め構造は、屋根受け部材の繰り返し利用及び再利用を図ることができるという優れた効果を有する。
【0032】
請求項7記載の本発明に係る屋根パネル設置方法は、低コストで屋根パネルの施工作業性を向上させることができるという優れた効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
〔第1実施形態〕
【0034】
以下、図1〜図6を用いて、本発明に係る屋根パネル位置決め構造及び屋根パネル設置方法の第1実施形態について説明する。
【0035】
図1及び図2に示されるように、屋根パネル10は、スチールハウス(建物)の屋根固定梁としての棟12の長手方向に沿って所定の間隔で配置された複数の垂木14と、垂木14の上面に固定された矩形平板状の野地板16と、を含んで構成されている。なお、図1及び図2では、垂木14を矩形管状に図示しているが、垂木として機能するのであれば、構造は如何様でもよい。例えば、スチールハウスの場合、1本のリップ付き溝形鋼に1本の溝形鋼を嵌め合わせて1本の垂木を構成したり、2本のリップ付き溝形鋼を対向させて1本の垂木を構成してもよい。この点は、棟12についても同様である。
【0036】
一方、屋根の頂部に位置する棟12の上端部には、長手方向に所定の間隔で垂木止め部材としての垂木止め金物18が取り付けられている。垂木止め金物18は略ホームベース形に形成されたプレートとして構成されており、下端部には棟12が嵌合可能な矩形状の切欠部20が形成されている。この切欠部20に棟12が嵌合された状態で、垂木止め金物18は立設状態で固定されている。
【0037】
上記垂木止め金物18の下部には、切欠部20の上端部両脇に一対の垂木受け挿通孔22が形成されている。各垂木受け挿通孔22は円孔として構成されており、いずれも同一内径に設定されている。複数の垂木止め金物18の同軸上に位置する垂木受け挿通孔22には、垂木受け部材としての真直棒状の垂木受け金物24が挿通されている。垂木受け金物24はパイプ材で構成されており、少なくとも屋根パネル10の幅方向寸法程度の長さを有している。垂木受け金物24は、1枚の屋根パネル10に対応する複数の垂木止め金物18の垂木受け挿通孔22に串刺し状に差し込まれている。なお、垂木受け金物24は垂木受け挿通孔22から抜き取り可能である。また、図1〜図6では、片方の垂木受け金物24のみを図示し、反対側の垂木受け金物24については図示を省略している。
【0038】
また、上記垂木14の上端部(棟12側の端部)の片側の側面には、側面視で略矩形平板状の位置決め手段及び位置決め部材としての垂木金物26が取り付けられている。垂木金物26は、垂木14の側面に当接されて図示しないビス等で固定される上部26Aと、垂木14の下面から更に下方へ突出される下部26Bと、によって構成されている。
【0039】
垂木金物26の下部には、下縁側から切り欠かれた切欠部28が形成されている。切欠部28は、側面視で「つ」の字状に形成されており、直線状のガイド部28Aと、このガイド部28Aに連続して形成されると共に所定曲率半径の円弧状の係止部28Bと、によって構成されている。係止部28Bは、垂木受け金物24の外径に略一致する円弧状に形成されている。また、ガイド部28Aは、屋根パネル10を水平に保持した場合に、係止部28Bの接線方向でかつ垂木14の側面に交差する方向に延在されている。
【0040】
上述した屋根パネル10は所定の屋根勾配にセットされた状態で、垂木14が垂木金物26にビス等で固定されている。
【0041】
(作用・効果)
【0042】
次に、上述した屋根パネル位置決め構造を用いた屋根パネルの設置方法について説明し、その説明を通して本実施形態の作用並びに効果について説明する。
【0043】
まず、図1に示されるように、屋根パネル10の四隅に吊りワイヤ30を係止させ、クレーンで屋根パネル10を略水平に吊り上げる。そして、屋根パネル10を棟12まで吊り込み、図3に示されるように、垂木金物26を垂木受け金物24の上方に位置させる。
【0044】
次いで、この状態から、図3に示されるように屋根パネル10を吊り下ろしながら、図4に示されるように垂木金物26における切欠部28の直線状のガイド部28Aに垂木受け金物24を当接させる。その状態から更に屋根パネル10を吊り下ろしていくと、屋根パネル10の自重によってガイド部28A上を垂木受け金物24が相対的に摺動し、垂木受け金物24は切欠部28の係止部28Bに案内され、係止される。
【0045】
次いで、図5に示されるように、屋根パネル10の軒先側を更に吊り下ろしていくと、屋根パネル10は垂木受け金物24を回転中心として回動し、建物躯体側の屋根パネル固定部に当接される。これにより、屋根パネル10が所定の屋根勾配でセットされる。
【0046】
その後、屋根パネル10の垂木14が棟12の垂木金物26にビス等により固定される。以上の作業を屋根パネル10の必要枚数分行うことにより、建物の屋根部が構成される。
【0047】
このように本実施形態では、棟12の頂部の両脇に垂木止め金物18を利用してパイプ状の垂木受け金物24を平行に配設すると共に、屋根パネル10の垂木14の上端部側面に垂木受け金物24が係止される切欠部28が形成されたプレート状の垂木金物26を設け、切欠部28の係止部28Bに垂木受け金物24を係止させることにより、屋根パネル10の棟12に対する位置決めを行い、かつ垂木受け金物24を回転中心として屋根パネル10の軒先側を回動させることができるようにしたので、屋根パネル10の吊り込みに際して、屋根パネル10を略水平状態で吊り上げることができる。このため、前述した先行技術に比し、屋根パネル10を安定した状態で吊り上げるためのクレーンを使った吊り位置の調整を繰り返し行う必要がなくなり、この点において屋根パネル10の施工性が向上される。
【0048】
また、屋根パネル10を水平に吊り込むために特別な吊り具を用意する必要はなく、クレーン側に専用品を追加設定する必要もない。従って、コスト的には垂木受け金物24の追加に伴う費用と垂木金物26の追加に伴う費用が発生するが、施工性が向上されることで建築地での施工期間が短縮化されることによるコスト削減効果も得られるので、トータルコストは抑制される。
【0049】
その結果、本実施形態に係る屋根パネル位置決め構造及びこれを用いた屋根パネルの設置方法によれば、低コストで屋根パネル10の施工作業性を向上させることができる。
【0050】
また、本実施形態では、屋根パネル10を吊り下ろしてくる際に、垂木金物26の下部に形成された切欠部28のガイド部28Aを垂木受け金物24に上方側から当接させた後、ガイド部28Aにガイドさせながら垂木受け金物24を相対移動(摺動)させ、ガイド部28Aに連続して形成された係止部28Bに係止させるようにしたので、屋根パネル10を吊り下ろす際には、垂木金物26のガイド部28Aが垂木受け金物24に当接する程度に吊り下ろせばよい。このため、屋根パネル10の吊り下ろし位置が多少ずれても垂木受け金物24を係止部28Bに係止させることができる。従って、本実施形態によれば、屋根パネル10の吊り下ろし作業を容易に行うことができ、その結果、屋根パネル10の施工作業性をより向上させることができる。
【0051】
さらに、本実施形態では、垂木金物26がプレートで構成されており、当該プレートは垂木14の上端部側面に固定されるので、隣接する屋根パネル10を吊り下ろしてくる際に垂木金物26が隣接する屋根パネル10の垂木等に干渉することはない。このため、本実施形態によれば、隣接する屋根パネル10との干渉を回避するように垂木金物26を納まり良く設置することができる。
【0052】
前記効果と関連する効果として、前述した特許文献1の先行技術による場合、屋根パネルを吊り下ろしたときにはアイボルトが取り付けられた状態にあるため、この屋根パネルと平面視で対になる反対側の屋根パネルを取り付けるにはアイボルトを取り外さなければならない。このため、屋根パネルの設置順序が制約される。これに対し、本実施形態の場合、垂木金物26を取り外す必要はなく取り付けた状態のまま、棟12を挟んで対となる屋根パネル10を取り付けることができる。従って屋根パネル10の設置順序が制約されることもなく、施工作業性の向上に寄与する。
【0053】
加えて、本実施形態では、垂木金物26の下部は垂木14の下面から下方へ突出しており、その下部に切欠部28が形成されて、更にその切欠端面にガイド部28A及び係止部28Bが形成される。このため、例えば、ガイド部28Aを例えば傾斜面として形成することができ、係止部28Bを垂木受け金物24の外径に合致する円弧面として形成することができる。従って、ガイド部28A及び係止部28Bを打ち抜きにより簡単に精度良く製作することができる。
【0054】
また、本実施形態では、棟12に所定の間隔で垂木止め金物18が立設状態で配置されており、この垂木止め金物18に垂木受け金物24が挿通されて保持されているので、垂木受け金物24を棟12の両側に設置するための新設部材を要しない。すなわち、既存の部材を利用して垂木受け金物24を設置することができるので、垂木受け金物24を設置するための新設部材を設定する場合に比し、部品点数及び組付工数を削減することができ、コストの上昇を抑制することができる。
【0055】
さらに、本実施形態では、垂木受け金物24が垂木止め金物18から取外し可能とされているので、複数の屋根パネル10を設置するに際して一つの屋根パネル10の設置作業が完了したら、垂木受け金物24を垂木止め金物18から取外し、次の屋根パネル10の設置のために使用するといったことが可能となる。その結果、垂木受け金物24の繰り返し利用及び再利用を図ることができる。
【0056】
〔第2実施形態〕
【0057】
以下、図7〜図9を用いて、本発明に係る屋根パネル位置決め構造及びこれを用いた屋根パネルの設置方法の第2実施形態について説明する。なお、前述した第1実施形態と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
【0058】
図7及び図8に示されるように、この第2実施形態では、屋根パネル10の垂木14の上端下部側に外れ止め手段としてのパネルロック装置40が設けられている点に特徴がある。
【0059】
具体的には、パネルロック装置40は直方体形状のケーシング42内に納められており、垂木14の上端部内へ挿入状態で装着されている。垂木14の上端下部側には、側面視でU字状の切欠部43が形成されている。切欠部43の奥側には、円弧状に形成されたトリガー44が配置されている。トリガー44の基端部44Aは垂木14の両側部に軸支された支軸46に軸支されており、トリガー44の中間部44Bは切欠部43内に進入した位置に配置されている。支軸46には広義には付勢手段としての捩じりコイルスプリング48が巻装されている。捩じりコイルスプリング48の一端部は垂木14の一方の側部に係止されており、他端部はトリガー44の中間部44Bの背側に係止されている。これにより、トリガー44は中間部44Bが切欠部43内へ進入する方向へ常時回転付勢されている。
【0060】
また、トリガー44の先端部44Cは側面視で略L字状に形成されており、当該先端部44Cにはロックピン50の先端部が係止されている。ロックピン50はケーシング42内に設けられた筒型の収容部52内に収容されている。収容部52の底部には広義には付勢手段としての圧縮コイルスプリング54の一端部が当接係止されている。圧縮コイルスプリング54の他端部はロックピン50の底面に当接係止されている。これにより、圧縮コイルスプリング54はロックピン50を常時切欠部43側へ押圧付勢している。
【0061】
(作用・効果)
【0062】
上記構成によれば、図7及び図8(A)に示されるように、屋根パネル10のパネルロック装置40が垂木受け金物24の上方に位置している際には、圧縮コイルスプリング54の付勢力及び捩じりコイルスプリング48の付勢力によってロックピン50の先端部が収容部52内へ退避された状態に保持されている。
【0063】
この状態から、図8(B)に示されるように、屋根パネル10を吊り下ろしていき、切欠部43の奥側へ垂木受け金物24を挿入させると、切欠部43内に進入した位置で保持されているトリガー44の中間部44Bの腹側に垂木受け金物24が当接し、捩じりコイルスプリング48の付勢力に抗してトリガー44の中間部44Bを押圧する。これにより、トリガー44は支軸46回りに揺動し、ロックピン50との係合状態が解除される。その結果、圧縮コイルスプリング54の付勢力によってロックピン50が切欠部43側へ軸方向移動し、切欠部43の反対側に設けられた収容部52と同様構造の有底筒状のストッパ56内へ嵌入される。これにより、切欠部43の開口端側が閉止されるので、屋根パネル10の垂木14と垂木受け金物24とが連結された状態となり、かつ棟12に対して屋根パネル10が位置決めされる。
【0064】
この状態から、図8(C)に示されるように、屋根パネル10の軒先側を吊り下ろしていくと、屋根パネル10が垂木受け金物24回りに回動され、所定の組付位置に位置させることができる。
【0065】
このように本実施形態でも、基本的には前述した第1実施形態と同様の作用・効果が得られる。
【0066】
さらに、この第2実施形態による場合、屋根パネル10の垂木14の上端部を垂木受け金物24に回動可能に連結するため、作業中に屋根パネル10が強風に煽られても、垂木受け金物24は切欠部43内に係止された状態を維持される。その結果、屋根パネル10の吊り下ろし時に屋根パネル10が強風で煽られても屋根パネル10の切欠部43への係止状態を良好に維持することができる。
【0067】
なお、外れ止め手段として、他の構成のパネルロック装置を採用してもよい。例えば、図9(A)、(B)に示されるパネルロック装置58では、支軸60回りに回動可能な略円板形状のトリガーレバー62が垂木14の上端部内に配設されている。トリガーレバー62は、略半円形状の基部62Aと、この基部62Aの片側から周方向に延出されたレバー部62Bと、を備えている。支軸60には図示しない捩じりコイルスプリングが巻装されており、トリガーレバー62を支軸60回りに半時計方向へ回転付勢している。
【0068】
通常はトリガーレバー62の基部62Aが切欠部43内に進入した状態で保持され、切欠部43内に垂木受け金物24が相対的に挿入され、基部62Aを切欠部43の奥側へ押圧すると、図示しない捩じりコイルスプリングの付勢力に抗してトリガーレバー62が支軸60回りに回動し、レバー部62Bが切欠部43を横断した状態となる。これにより、屋根パネル10の垂木14の上端部が垂木受け金物24に連結された状態となる。
【0069】
従って、この構成によっても、図7及び図8に示される構成と同様の作用・効果が得られる。
【0070】
〔上記実施形態の補足説明〕
【0071】
上述した各実施形態では、スチールハウスの屋根組に対して本発明を適用したが、これに限らず、スチールハウス以外でも、屋根パネルを吊り込んで建物躯体へ固定していく建物であれば本発明は適用可能である。
【0072】
また、上述した各実施形態では、棟12の上端部両脇に垂木受け金物24を配設したが、必ずしも棟側に垂木受け金物が配設されるとは限らず、例えば、屋根パネルを上下に複数枚並べて配置する場合の2段目以降の屋根パネルは梁の上端部の片側の脇に垂木受け金物が配設される。
【0073】
さらに、上述した各実施形態では、垂木受け金物24を垂木止め金物18に形成した垂木受け挿通孔22に取り外し可能に挿通させたが、必ずしも取り外す必要はなく、そのまま存置しても差し支えない。つまり、垂木受け金物24及び垂木金物26は、屋根パネル10の設置後もそのまま残しておいて差し支えなく、その場合には垂木受け金物24を取り外す作業を行う手間が省けて効率が良い。
【0074】
また、垂木受け金物24は真直棒状の1本物のパイプ材で構成されているが、必ずしもその必要はなく、各垂木止め金物18の垂木受け挿通孔22から短めのパイプ材が張り出すようにしてもよい。また、その場合には、垂木受け部材を垂木止め金物18に予め一体化してもよい。そのようにすれば、建築地で垂木受け部材を垂木受け挿通孔に挿通させる手間が省ける。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】第1実施形態に係り、屋根パネルを略水平にして吊り込み、垂木金物を垂木受け金物に係止させた状態を示す斜視図である。
【図2】図1に示される状態から屋根パネルを回動させた状態を示す斜視図である。
【図3】第1実施形態に係る屋根パネルの設置方法を説明するための説明図であり、屋根パネルを垂木受け金物の上方に吊り込んだ状態を示す要部拡大斜視図である。
【図4】図3に示される状態から屋根パネルを吊り下ろして垂木金物のガイド部に垂木受け金物を当接させた状態を示す要部拡大斜視図である。
【図5】図4に示される状態から屋根パネルを更に吊り下ろして垂木金物の係止部に垂木受け金物を係止させた状態を示す要部拡大斜視図である。
【図6】図5に示される状態から屋根パネルの軒先側を更に吊り下ろして屋根パネルを垂木受け金物回りに回動させた状態を示す要部拡大斜視図である。
【図7】第2実施形態に係り、パネルロック装置の概要を示す縦断面図である。
【図8】(A)はロック前の状態を示す側面図であり、(B)はロック直後の状態を示す側面図であり、(C)は屋根パネルを回動させた状態を示す側面図である。
【図9】第2実施形態の変形例に係り、(A)はロック前の状態を示す側面図であり、(B)はロック直後の状態を示す側面図である。
【符号の説明】
【0076】
10 屋根パネル
12 棟(屋根固定梁)
14 垂木
18 垂木止め金物(垂木止め部材)
24 垂木受け金物(屋根受け部材)
26 垂木金物(位置決め手段、位置決め部材)
26B 下部
28 切欠部
28A ガイド部
28B 係止部
40 パネルロック装置(外れ止め手段)
43 切欠部
58 パネルロック装置(外れ止め手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の屋根固定梁側に設けられると共に当該屋根固定梁に対して軸線が平行な軸状部分を備えた屋根受け部材と、
前記屋根固定梁に固定される屋根パネルの下面側かつ上端側に設けられ、当該屋根受け部材の軸状部分に係止されることで屋根パネルを屋根固定梁に対する正規組付位置に位置決めしかつ屋根パネルの当該軸状部分回りの回動を可能とする位置決め手段と、
を有することを特徴とする屋根パネル位置決め構造。
【請求項2】
前記位置決め手段は、前記屋根受け部材の軸状部分が係止される係止部と、この係止部に連続して形成されると共に屋根受け部材に上方側から当接されて屋根受け部材の軸状部分を係止部に相対的に案内するガイド部と、を含んで構成されている、
ことを特徴とする請求項1記載の屋根パネル位置決め構造。
【請求項3】
前記位置決め手段は、下部が垂木の下面から突出するように垂木の側面に固定された板状の位置決め部材であり、
前記ガイド部及び前記係止部は、当該位置決め部材の下部に形成された切欠部の端面として形成されている、
ことを特徴とする請求項2記載の屋根パネル位置決め構造。
【請求項4】
前記位置決め手段は、前記屋根受け部材の軸状部分が相対的に挿入されて係止される切欠部と、この切欠部内に軸状部分が相対的に挿入されることにより作動して切欠部への軸状部分の係止状態を保持する外れ止め手段と、を備えている、
ことを特徴とする請求項1記載の屋根パネル位置決め構造。
【請求項5】
前記屋根受け部材は、前記屋根固定梁に所定の間隔で立設状態で設けられる垂木止め部材に設けられている、
ことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の屋根パネル位置決め構造。
【請求項6】
前記屋根受け部材は、前記垂木止め部材から取外し可能とされている、
ことを特徴とする請求項5記載の屋根パネル位置決め構造。
【請求項7】
屋根パネルを略水平に吊り上げて当該屋根パネルが備える前記位置決め手段を建物の屋根固定梁側に設けられた屋根受け部材の上方に位置するように吊り込み、
屋根パネルを吊り下ろしながら前記位置決め手段に前記屋根受け部材の軸状部分を係止させ、
屋根パネルの軒先側を吊り下ろしながら屋根パネルを当該軸状部分を回転中心として回動させ、建物の屋根パネル固定部にセットし、
屋根パネルを屋根固定梁に固定する、
ことを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載された屋根パネル位置決め構造を用いた屋根パネルの設置方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−221761(P2009−221761A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−68187(P2008−68187)
【出願日】平成20年3月17日(2008.3.17)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)