説明

屋根用積雪防止装置

【課題】本発明は、送風機から供給された圧搾空気をノズルに送り、ノズルからの送風で降雪中の雪や屋根の積雪を吹き飛ばす屋根用積雪防止装置に関する。
【解決手段】屋内に設けられた送風機と、屋根の上の稜線部に設置されて前記送風機から送られた圧搾空気を噴出させるノズルを備えたノズル装置とからなっており、該ノズル装置が、前記送風機から導入された圧搾空気によってノズルを回転させる回転装置を有しており、上記ノズルから噴出した圧搾空気でノズルを回転させると共に屋根のほぼ全面に吹き付けて積雪を防止することを特徴とする。ノズルに整流手段を設けて圧搾空気を螺旋流に変換させることで、積雪防止効果をより一層を高めることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダクトを介して送風機からの圧搾空気をノズルに送り、ノズルから噴出した圧搾空気で降雪中の雪や屋根に積もった雪を吹き飛ばすことにより、住宅等の屋根の積雪を防止する屋根用積雪防止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
積雪が1mを超えるような豪雪地帯では、雪の重みによる家屋の損傷や倒壊を防ぐため、定期的に人力での雪下ろし作業が一般的に行われているが、この作業が重労働である上、屋根からの転落事故等の危険を伴うため、高齢化、過疎化した地域では思うように実施できない。
この、雪下ろし作業から解放する方法として、屋根の傾斜を大きくした自然落下屋根や、電気式発熱マットや温水を使った融雪屋根がある。
このうち、自然落下方式では、落下した雪が軒下に被害を与える危険や、落下した雪を除雪する必要があり、各種の融雪屋根では融雪のための熱エネルギーのための、ランニングコストが大きい上、より寒冷地では十分な融雪ができない惧れがある。
【0003】
これらを解決するために、例えば特開平10−238166号の仮設屋根の除雪方法では、屋根の角部に首振り式送風機を設置し、降雪中の雪を吹き飛ばして積雪を防止する方法が開示されている。
さらに、特開昭62−112859号の屋根の積雪防止装置では、送風機と送風管で連通し、屋根の稜線と平行に複数本配置されたダクトから、ダクトと直角方向の軒先方向を向いた複数のノズルによって噴出する空気の勢いにより降雪中の雪を軒先方向に吹き飛ばす装置が開示されている。
【0004】
このうち、前者の方法では、送風機本体を屋根に設置するため、送風機の重量や振動により屋根が損傷する惧れがある上、送風機の吸気口が屋外にあるため、降雪中の雪を吸い込まないように、吸気口に設置したガードネットをヒータで過熱しなければならず、送風機のメンテナンスが困難である、といった問題が残されている。
一方、後者の装置では、駆動装置を屋根の上に設置する必要はないが、屋根全面の降雪を同時に吹き飛ばすため、固定されたノズルを屋根全面に多数設置しなければならず、各ノズルからの送風量は僅かとしても、全ノズルの合計風量は大きくなり、大容量の送風機が必要となる、という問題があった。
【特許文献1】特開平10−238166号公報
【特許文献2】特開昭62−112859号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、その主たる課題は、寒冷地でもランニングコストの少ない屋根用積雪防止装置を提供することにある。
また、この発明の別の課題は、安価で、屋根への設置が容易に行える信頼性の高い積雪防止装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1の発明では、
ダクトを介して送風機からの圧搾空気をノズルに送り、ノズルから噴出した圧搾空気で降雪中の雪や屋根に積もった雪を吹き飛ばすことにより、住宅等の屋根の積雪を防止する屋根用積雪防止装置において、
屋内に設けられた送風機と、
屋根の上の稜線部に設置されて、前記送風機から送られた圧搾空気を噴出させるノズルを備えたノズル装置とからなっており、
該ノズル装置が、前記送風機から導入された圧搾空気によってノズルを回転させる回転装置を有しており、
上記ノズルから噴出した圧搾空気でノズルを回転させると共に屋根のほぼ全面に吹き付けてなることを特徴とする。
また、請求項2の発明では、
前記ノズル装置のノズルの噴出し方向が屋根の最大傾斜角度以下に設定されていることを特徴とする。
更に、請求項3の発明では、
前記ノズル装置が、ノズルから噴出す圧搾空気を螺旋状にする整流手段を設けていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明では屋根への降雪中の軽い雪や降雪後の柔らかい積雪を、風圧で屋根の外へ吹き飛ばすので、少ないエネルギーで効果的な除雪が可能となる。
また、上記降雪中の雪や、やわらかい積雪を屋根から吹き飛ばして除去するので、軒下への重くて硬い落雪が発生しないため、落雪による軒下被害の危険や落雪を除雪する必要がない。
【0008】
そして、本発明ではノズル装置のみを屋根の上に設置するので、集中荷重や振動に伴う屋根の損傷を防止できる。
また、360度回転可能なノズルを、屋根のほぼ中央に設置すれば、ノズルから噴出された送風の到達範囲は屋根の長さの約半分で済み、容量の小さい送風機を使用することができ、装置のコストや消費エネルギーを節約できる。
さらに、ノズル装置に整流手段を設けることにより、ノズルから噴出する送風を渦巻き流とすることができ、能力の小さな送風機で、より大きな到達距離を確保できるだけでなく、積雪初期のやわらかい雪を巻き上げることができるので、一層効果的に除雪を行うことができ極めて有益である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明は、屋根に設けたノズル装置に回転装置を設けることで送風機から送られる圧搾空気を用いてノズルを回転させ、屋根のほぼ全面に送風を吹き付けることができ、更にノズルから吹き出す送風を整流手段で螺旋状にすることで送風の指向性を高めるという目的を実現した。
以下に、本発明の積雪防止装置の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0010】
本装置は図1に示すように、家屋内または物置などの屋内に設けられた送風機10と、該送風機10から建物の外壁等に沿って屋根20まで配置されたダクト30と、屋根20の上の頂上である稜線部21に設置されたノズル装置1とからなっている。
【0011】
[送風機]
送風機10は、圧搾空気を供給する送風源であって、コンプレッサを用いてもよい。
本実施例では、屋内に設置してあるので、送風機10の稼働による屋根20への影響は無く、また送風機10の図示しない吸気口が降雪などを吸い込むこともない。
そして、後述のようにノズル装置1により効率的な送風を行うことができるので、従来に比して相対的に小さい送風能力で足り、小型化、効率化が図れる。
【0012】
[ダクト]
ダクト30は、送風機10とノズル装置1の間を接続する配管であって、家屋の壁面に沿わせて配置されており、送風機10が供給する圧搾空気をノズル装置1内へと導入させる送風路を構成するものであって、合成樹脂や金属などの耐水、耐候性の素材の公知構成からなっている。
【0013】
[ノズル装置]
ノズル装置1は、図2および図3に示すように、前記ダクト30に接続されて圧搾空気を導入する導入口部2を備えた台座部6と、送風を噴出させるノズル5を有する中空のハウジング3と、上記台座部6とハウジング3との間に設けられてハウジング3を回転可能に軸支するロータリージョイント4とを備えている。
【0014】
[導入口部]
導入口部2は、図示例の場合、屋根20の稜線部21に固定手段(図示せず)を介して固定される台座部6に形成されている。
該台座部6は、一端にダクト30を接続する接続口部2aと、台座部6の中途位置で立設された筒状の吐出口部2bを有しており、前記接続口部2aと吐出口部2bの間は台座部6内をエルボー状に形成された送風路Lが設けられている。
【0015】
[ハウジング]
ハウジング3は、底部が開放されて大径の筒状となり、前記台座部6に支持される基部3aと、該基部3aの上部に一連に形成されて漸次小径に絞った中継部3bと、上部で略J字状に曲成された管からなって送風方向をガイドするノズル5を一体に有する中空体からなっている。
【0016】
[ロータリージョイント]
前記台座部6に形成された吐出口部2bの外周壁とハウジング3の基部3aの内周壁との間には、ベアリング等を使用した公知構成のロータリージョイント4が介設されており、吐出口部2bを中心にしてハウジング3を水平方向に360度回転自在に軸支している。
【0017】
[ノズル]
前記ノズル5は、所定の角度に傾斜した曲管形状からなっていると共に、その吹き出し方向をベアリング等で支持されたロータリージョイント4の回転中心Cと偏心するようずらしている(図3参照)。
これによって、吐出口部2bから噴出した圧搾空気がハウジング3の内壁面とぶつかった反力によりモーメントが発生し、回転のための特別の動力なしにハウジング3がノズル5と共に回転するようになっている。
【0018】
また、ノズル5の向き、即ち、吹き出し角度(傾斜角θ1)は、図5(a)に示すように、屋根の最大傾斜角(θ2)とほぼ同じか、図5(b)に示すように屋根20の傾斜より若干下向きに設定することが好ましい。
これにより、切り妻屋根の場合は、図5に示すように頂上となる稜線部21の中央に1個のノズル装置1を設置するだけで、噴出した空気は屋根20全面の雪を吹き払うことができる。
【0019】
ノズル装置1は、設置する屋根20の形状に対応して、その設置場所や設置数を適宜定めることができる。
例えば、寄せ棟屋根の場合は、図4に示すように稜線部21の左右両端に各1個、計2個のノズル装置1、1を設置することで屋根全体をカバーできる。
【0020】
この場合、ダクト30を途中で分岐30’すれば1台の送風機10で2個のノズル装置1に圧搾空気を供給できるので、屋根用積雪防止装置のコスト上昇は最小限に抑えられる。
その他、屋根の形状が複雑で3個以上のノズルが必要な場合も同様である。
【0021】
次ぎに、ノズル装置1に形成するノズル5は、前述のようにロータリージョイント4の回転中心Cと偏心するように配置するが、ノズル5が1つである場合は、回転軸に対して重心が不釣り合いとなって、ハウジング3の回転が振動を生じさせる場合がある。
そこで、図6に示すように、前記ノズル5を、回転軸を中心にした周方向に等間隔で複数(図示例では2つ)設けることで、ハウジング3の重心のバランスが改善されるため、回転に伴う振動を軽減することができる。
【0022】
また、ノズル5は、前述のようにノズル装置1を設置する屋根20の傾斜角に対応して、ノズル5の向き(吹き出し角度)を最適に設定する必要がある。
そこで、ノズル5の吹出し角度を段階的または無段階に可変とし、所望の角度で固定する構造を用いることが好ましい。
【0023】
そこで、図8のノズル装置1では、ノズル5の吹出し部5aをハウジング3に一体に形成されたノズル基部5bに対して角度調節手段5cにより上下方向に角度調節可能となっている。
これにより、吹出し部5aを角度調整手段5cによって所望の角度に調整し、ノズル基部5bに上記吹出し部5aを固定手段(図示せず)で固定することで、最適の角度に設定されたノズル5に調整でき、汎用性に優れる。
【0024】
[整流手段]
ノズル5から噴出させる送風は、ノズル5に設けた整流手段7により螺旋状とすることで、噴出した空気の流れに渦を発生させて、空気の直進性(指向性)を改善して、送風をより遠くまで到達させると同時に、渦の効果で屋根20の上の積雪を効果的に巻き上げ除雪できる。
整流手段7としては、例えば、図2に示すように、ノズル5の先端側の内壁面に螺旋模様のリブ(または溝でもよい)を形成しておき、ノズル5を通る送風を渦流に変換することができる。
【0025】
また、異なる整流手段7として、図7に示すように、複数(例えば3つ)のノズル5を僅かに噴出方向を変えて並べることで、噴出した空気の流れが絡み合って渦流を発生させることもできる。
その他、整流手段7は、上記実施例に限定されず、直進する送風を渦流に変更する公知構成を用いることができる。
【0026】
なお、この屋根用積雪防止装置は、屋根に雪が積もる前や、雪が降りはじめた頃に作動させれば効果的に除雪が行える。
そこで、降雪開始時または予想降雪開始時より事前に送風機10のスイッチが投入されるように予めセットすることが好ましい。
このとき、降雪検知センサー(図示省略)を組み合わせれば、該センサにより降雪開始時を検知すると、送風機10のスイッチが自動的に投入され、圧搾空気の供給によって屋根用積雪防止装置を稼働させることができる。
この発明は上記実施例に限定されるものではなく、その他、要するにこの発明の要旨を変更しない範囲内で種々設計変更しうるものである。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】実施例1の積雪防止装置の設置例を模式的に示す斜視図である。
【図2】図1のノズル装置の断面図である。
【図3】同ノズル装置の平面図である。
【図4】ノズル装置を複数設けた積雪防止装置の設置例を模式的に示す斜視図である。
【図5】積雪除去の作用を説明する図であり、(a)はノズルの吹き出し角度が屋根の最大傾斜角と等しい場合、(b)はやや下向きの場合、(c)は上向きの場合である。
【図6】ノズル装置に複数のノズルを設けた場合のノズル装置の平面図である。
【図7】ノズルに螺旋状の送風を発生させるための整流手段の一例の部分図である。
【図8】ノズルの吹出し角度が調整可能なノズル装置の断面図である。
【符号の説明】
【0028】
1 ノズル装置
2 導入口部
2a 接続口部
2b 吐出口部
3 ハウジング
3a 基部
3b 中継部
4 ロータリージョイント
5 ノズル
6 台座部
7 整流手段
10 送風機
20 屋根
21 稜線部
30 ダクト
C 回転中心
L 送風路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダクトを介して送風機からの圧搾空気をノズルに送り、ノズルから噴出した圧搾空気で降雪中の雪や屋根に積もった雪を吹き飛ばすことにより、住宅等の屋根の積雪を防止する屋根用積雪防止装置において、
屋内に設けられた送風機と、
屋根の上の稜線部に設置されて、前記送風機から送られた圧搾空気を噴出させるノズルを備えたノズル装置とからなっており、
該ノズル装置が、前記送風機から導入された圧搾空気によってノズルを回転させる回転装置を有しており、
上記ノズルから噴出した圧搾空気でノズルを回転させると共に屋根のほぼ全面に吹き付けてなることを特徴とする屋根用積雪防止装置。
【請求項2】
ノズル装置のノズルの噴出し方向が屋根の最大傾斜角度以下に設定されていることを特徴とする請求項1に記載の屋根用積雪防止装置。
【請求項3】
ノズル装置が、ノズルから噴出す圧搾空気を螺旋状にする整流手段を設けていることを特徴とする請求項1または2に記載の屋根用積雪防止装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−190291(P2008−190291A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−28373(P2007−28373)
【出願日】平成19年2月7日(2007.2.7)
【出願人】(390001579)プレス工業株式会社 (173)