説明

屎尿分離便器及び共同トイレ設備

【課題】悪臭を抑制可能であり、かつ節水による省資源化の効果が大きい屎尿分離便器、及び屎尿をそれぞれ利用し易く、かつ施工コストの低廉化を実現可能な共同トイレ設備を提供する。
【解決手段】屎尿分離便器10は、人が排泄する屎4を尿とは別に受ける屎用鉢部11と、人が排泄する尿を屎4とは別に受ける尿用鉢部12とを有し、屎用鉢部11は、微生物が生息する粉体14bによって覆われた鉢面11cを有する。共同トイレ設備50は、複数個の屎尿分離便器10が上下方向に整列してなるものであり、各屎用鉢部11で受けた屎4を下方に案内する屎用通路21と、屎用通路21と連通するコンポスト槽61と、各尿用鉢部12で受けた尿を下方に案内する尿用通路22と、尿用通路22と連通する尿貯留槽62とを備える。屎用通路21は、内部を負圧にするように外気に開放され、かつ内部に尿用通路22を挿通させている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は屎尿分離便器及び共同トイレ設備に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に従来の屎尿分離便器が開示されている。この屎尿分離便器は、人が排泄する屎を尿とは別に受ける屎用鉢部と、人が排泄する尿を屎とは別に受ける尿用鉢部とを有する。
【0003】
屎用鉢部の下方には、屎用鉢部で受けた屎を下方に案内する屎用通路と、屎用通路と連通し、屎をコンポスト(堆肥)化するコンポスト槽とが設けられている。また、尿用鉢部の下方には、尿用鉢部で受けた尿を下方に案内する尿用通路と、尿用通路と連通し、尿を貯留する尿貯留槽とが設けられている。
【0004】
このような構成である従来の屎尿分離便器は、屎と尿とを分離して、コンポスト槽及び尿貯留槽にそれぞれ別に貯留し、別々に処理して堆肥等に再利用することが可能となっている。また、この屎尿分離便器は、屎尿分離式でない一般的な水洗式便器と比較して、洗浄水の使用量を大幅に削減することができている。このため、この屎尿分離便器は、節水による省資源化及び堆肥化による再資源化を実現可能である。
【0005】
また、特許文献2には、屎尿分離式でない一般的な乾式便器を複数個上下方向に整列してなる共同トイレ設備が開示されている。この共同トイレ設備は、各乾式便器に共通して連通する上下に延びる通路と、この通路と連通する収集コンテナと、通路の下方と連通し、マンション等の集合住宅の屋上まで上に延びて外気に開放された排気ダクトとを備えている。
【0006】
このような構成である従来の共同トイレ設備は、乾式便器を採用していることから、節水による省資源化が可能であるとともに、各乾式便器に排泄される屎尿を集合住宅全体で再利用することも可能となっている。
【0007】
【特許文献1】実開昭60−120699号公報
【特許文献2】特開平4−215731号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、近年、節水による省資源化の要請はさらに増してきている。この点、上記特許文献1記載の屎尿分離便器では、屎用鉢部に直接に屎が付着する場合があることから、その付着した屎を洗い流すために、ある程度の洗浄水を使用せざるをえない。このため、この屎尿分離便器は、節水による省資源化が未だ十分でない。そのため、上記従来の屎尿分離便器において、殆ど洗浄水を使用しないとすれば、屎用鉢部に付着した屎から生じる悪臭を抑制することは困難である。
【0009】
一方、乾式便器を採用した上記従来の共同トイレ設備は、節水による省資源化の効果は発揮できるものの、乾式便器が屎尿分離式のものではないため、屎尿を利用し難いという欠点がある。また、この共同トイレ設備は、悪臭防止のための構造が複雑であり、施工コストの高騰化を生じるという欠点もある。
【0010】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、悪臭を抑制可能であり、かつ節水による省資源化の効果が大きい屎尿分離便器を提供することを解決すべき課題としている。
【0011】
また、本発明は、屎尿をそれぞれ利用し易く、かつ施工コストの低廉化を実現可能な共同トイレ設備を提供することも解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の屎尿分離便器は、人が排泄する屎を尿とは別に受ける屎用鉢部と、該人が排泄する尿を該屎とは別に受ける尿用鉢部とを有する屎尿分離便器において、
前記屎用鉢部は、微生物が生息する粉体によって覆われた鉢面を有することを特徴とする。
【0013】
このような構成である本発明の屎尿分離便器は、人が排泄する屎を屎用鉢部が受け、人が排泄する尿を尿用鉢部が受けることにより、屎と尿とを分離することができる。このため、この屎尿分離便器は、屎と尿とをそれぞれ再利用することが可能である。
【0014】
そして、屎用鉢部が受けた屎は、場合によっては屎用鉢部に付着する。この場合、屎用鉢部は、微生物が生息する粉体によって覆われた鉢面を有するため、その屎は粉体を介して鉢面に付着することとなる。
【0015】
ここで、鉢面を覆う粉体は、鉢面に付着する屎の表面に付着して、屎が鉢面から剥がれて下方に落下し易くなるように作用する。これにより、屎は、屎用鉢部から容易に移送可能となる。
【0016】
また、粉体に生息する微生物として、屎を効率よく分解するもの、屎から生じる悪臭を分解するもの等又はそれらが混合されたもの等を適宜選択可能である。このため、粉体を介して鉢面に付着した屎は、粉体に生息する微生物により分解され、同時に好気性微生物等による生物脱臭により悪臭が抑制されることとなる。
【0017】
この際、尿は屎を分解等する微生物にとって有害であることが多いのであるが、この屎尿分離便器は屎用鉢部と尿用鉢部とが別になっていることから、屎用鉢部に尿が付着することはなく、屎用鉢部の鉢面を覆う粉体に生息する微生物が尿によって害を受けることもない。
【0018】
このため、この屎尿分離便器は、屎用鉢部に直接屎が付着する場合であっても、その付着した屎を洗い流すために、洗浄水を使用する必要がない。このため、この屎尿分離便器は、節水による省資源化をより効果的に図ることができる。
【0019】
したがって、本発明の屎尿分離便器は、悪臭を抑制可能であり、かつ節水による省資源化の効果が大きい。
【0020】
粉体は、球状のものの他、繊維状のものであってもよい。例えば、有機物、無機物等各種の材料からなるものを適宜を採用することができる。有機物からなる粉体としては、家庭から出る野菜殻、生ごみ、畑の残渣、植物の落ち葉や枯れ葉等を乾燥して粉砕したもの、おがくず、このような有機物を含む土等を採用することができる。無機物からなる粉体としては、砂、消石灰等を採用することができる。
【0021】
微生物としては、より具体的には、バチルス属細菌、放線菌、糸状菌及び硝化菌等を採用することができる。
【0022】
本発明の屎尿分離便器において、前記鉢面の側面は上方に拡がるように下り傾斜をなし、該鉢面には上方から前記粉体が供給されるように構成されていることが好ましい。
【0023】
この場合、この屎尿分離便器は、鉢面に予め上方から粉体を供給することにより、鉢面が常に好適な状態で粉体に覆われるように維持することができる。また、鉢面の側面は上方に拡がるように下り傾斜をなすことから、上方から供給されて鉢面の側面に付着する粉体が落下せずに留まり易くなっている。このため、この屎尿分離便器は、鉢面に付着する屎を粉体とともに下方に落下させることが一層容易であり、本発明の効果を確実に奏することができる。
【0024】
本発明の屎尿分離便器において、前記鉢面は、前記粉体が賦型されてなる粉体固化層からなることが好ましい。
【0025】
この場合、この屎尿分離便器は、鉢面が粉体に覆われた状態を容易に維持することができる。また、粉体固化層は、粉体間に空隙を有しており、微生物はその空隙内でも生息可能である。このため、鉢面に付着した屎は、粉体固化層に生息する微生物によっても分解され、同時に悪臭が抑制される。このため、この屎尿分離便器は、本発明の効果を一層確実に奏することができる。
【0026】
粉体固化層としては、粉体が賦型されてなるものであれば種々の構成のものを採用することができる。例えば、粉体の集合体、粉体を成形してなる多孔体等を採用することができる。粉体を比較的容易に削ることができる材料からなることが好ましい。
【0027】
本発明の屎尿分離便器において、粉体は有機物であることが好ましい。この場合、粉体ともども飼料とすることができるからである。
【0028】
本発明の屎尿分離便器において、屎用鉢部の底は移動可能なベルトによって形成されていることが好ましい。この場合、屎用鉢部に排泄される屎は、屎用鉢部の底のベルトに受けられ、別の場所に容易に搬送される。その際、ベルトは搬送コストを比較的安価なものとすることができる。ベルトによる搬送は水平方向であることが好ましい。上に載置された屎を安定して他の場所に搬送できるからである。
【0029】
本発明の共同トイレ設備は、人が排泄する屎を尿とは別に受ける屎用鉢部と、該人が排泄する尿を該屎とは別に受ける尿用鉢部とを有する複数個の屎尿分離便器が上下方向に整列してなる共同トイレ設備であって、
各前記屎用鉢部で受けた屎を下方に案内する屎用通路と、該屎用通路と連通し、該屎をコンポスト化するコンポスト槽と、各前記尿用鉢部で受けた尿を下方に案内する尿用通路と、該尿用通路と連通し、該尿を貯留する尿貯留槽とを備え、
該屎用通路は、内部を負圧にするように外気に開放され、かつ内部に該尿用通路を挿通させていることを特徴とする。
【0030】
このような構成である本発明の共同トイレ設備は、屎尿分離便器を採用することにより、節水による省資源化の効果を発揮できる。また、この共同トイレ設備は、屎用通路、コンポスト槽、尿用通路及び尿貯留槽を備えることにより、大量の屎と尿とを別々に貯留して処理することができるので、再利用を一層効率よく実施できる。さらに、この共同トイレ設備において、屎用通路は、内部を負圧にするように外気に開放され、かつ内部に尿用通路を挿通させていることから、悪臭防止のための構造が簡易であり、施工コストの低廉化を図ることができる。
【0031】
したがって、本発明の共同トイレ設備は、屎尿をそれぞれ利用し易く、かつ施工コストの低廉化を実現することができる。
【0032】
本発明の共同トイレ設備において、屎尿分離便器は上述した本発明の屎尿分離便器であることが好ましい。本発明の屎尿分離便器は、従来の屎尿分離便器よりも悪臭を抑制可能であり、かつ節水による省資源化の効果が大きいことから、そのような屎尿分離便器を採用する共同トイレ設備も、悪臭を一層抑制可能であり、かつ節水による省資源化の効果を一層大きくすることができるからである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、本発明を具体化した実施例1〜3を図面を参照しつつ説明する。
【実施例1】
【0034】
図1に示すように、実施例1の屎尿分離便器10及び共同トイレ設備50は、集合住宅90に適用されるものである。
【0035】
屎尿分離便器10は、図2に示すように、室内の壁91に設置されており、開口41aを有する座面41が上部に配置されている。
【0036】
より詳しくは、屎尿分離便器10は、図3及び図4に示すように、室内の壁91から水平方向に突設されたフレーム42と、フレーム42の先端側(壁91から遠い側)に固定された尿用鉢部12と、尿用鉢部12よりも壁91側であるフレーム42の中央に固定された屎用鉢部11とを有する。
【0037】
尿用鉢部12は、人が排泄する尿を屎4とは別に受ける陶器製のものである。尿用鉢部12の底には、図4に示すように、尿用配管12aの一端が接続され、尿用配管12aの他端は、壁91よりさらに奥側に設けられている尿用通路22に連通するように配置されている。
【0038】
他方、屎用鉢部11は、人が排泄する屎4を尿とは別に受けるものであり、屎用鉢部11の鉢面11cは粉体固化層11aからなる。粉体固化層11aは、有機物からなる粉体、より具体的には乾燥させた生ごみを粉砕した粉体が賦型されてなるものであり、陶器製の尿用鉢部12と連続して一体に成形された基部11d上に配設されている。粉体固化層11aを構成する粉体には、屎4を効率よく分解する放線菌及び糸状菌、屎4から生じる悪臭を分解する硝化菌等の微生物が生息している。
【0039】
鉢面11cの側面は、上方に拡がるように下り傾斜をなしており、屎用鉢部11よりも壁91側の上方には粉体供給手段14が配置されている。粉体供給手段14は、粉体供給孔14aから微生物が生息する粉体14bを粉体固化層11aに供給することにより、鉢面11cを粉体14bで覆うことが可能とされている。微生物が生息する粉体14bは、粉体固化層11aを形成している粉体と同一材料からなっている。また、粉体14bに生息する微生物は、粉体固化層11aを構成する粉体に生息する微生物と同種のものが採用されている。
【0040】
屎用鉢部11の底は、移動可能なベルト13によって形成されている。ベルト13は、尿用鉢部12と屎用鉢部11との間の下方に配置されたローラ13aと、壁91よりさらに奥側に設けられている屎用通路21内に配置されたローラ13bと、図示しないローラ駆動源とによって、水平方向に循環するようになっている。
【0041】
このような構成であるベルト13は、一端側が屎用鉢部11の底に位置しており、屎用鉢部11の底で受けた屎4を水平方向に搬送して、屎用通路22内に供給可能とされている。この際、屎用鉢部11の鉢面11cを構成する粉体固化層11aにおける壁91側に位置する部分11bは、ベルト13に搬送される屎4が通過できるように、壁91側上方に開くようになっている。なお、ローラ駆動源は電動モータ等の一般的なものを利用してもよい。また、屎尿分離便器10に着座する人の体重によって座面41の一部が変位し、その変位をバネやベルト等で伝達することによって、ローラ駆動源、鉢面11cの部分11bを開閉するための駆動源、又は粉体供給手段14の駆動源とすることも省電力化の観点から好ましい。
【0042】
粉体供給手段14は、粉体供給孔14aから粉体14bを供給することにより、ベルト13の屎用鉢部11の底に位置するベルト13の表面を粉体14bで覆うことが可能とされている。
【0043】
屎尿分離便器10には、図2及び図4に示すように、側面及び下面を覆って装飾する布製の化粧カバー43が装着されている。化粧カバー43は、図3に示す構成であるフレーム42に着脱可能に設けられており、取り外して洗濯したり、デザインの異なるものに交換可能とされている。こうして、この屎尿分離便器10は、清潔性を容易に維持し、かつ雰囲気を容易に変更することが可能になっている。
【0044】
このような構成である実施例1の屎尿分離便器10は、図1に示すように、集合住宅90の共同トイレ設備50に適用されている。
【0045】
集合住宅90には、各階の中央を上下方向に貫通するように設置され、壁91に囲まれた空洞部23が設けられている。空洞部23の中心には、屎用通路21が上下方向に設置されており、各階に設置された屎尿分離便器10のベルト13が、屎用通路21内まで延在するように配置されている。これにより、屎用通路21は、各屎尿分離便器10の各屎用鉢部11で受けた屎4を下方に案内することが可能とされている。
【0046】
尿用通路22は、屎用通路21の内部に挿通するように上下方向に設置されており、各階に設置された屎尿分離便器10の尿用配管12aが尿用通路22に連通するように配置されている。これにより、尿用通路22は、各屎尿分離便器10の尿用鉢部12で受けた尿を下方に案内することが可能となっている。
【0047】
屎用通路21の下方の地中には、屎用通路21と連通し、屎4をコンポスト化するコンポスト槽61が設置され、尿用通路22の下方の地中には、尿用通路22と連通し、尿を貯留する尿貯留槽62が設置されている。
【0048】
屎用通路21の上端には排気口21aが設けられている。排気口21aは、集合住宅90の屋上からさらに上方に突設されており、図示しない排気ファンを備えている。このため、屎用通路21の内部は、排気口21a及び排気ファンによって、屎用通路21の内部の内部を負圧にするように外気に開放されている。これにより、屎尿分離便器10の屎用鉢部11から屎用通路21を介して排気口21aへと空気の流れが生じるようになっており、屎尿分離便器10から室内に悪臭が放出されることを抑制可能となっている。
【0049】
このような構成である実施例1の屎尿分離便器10は、屎と尿とを分離して、コンポスト槽61及び尿貯留槽62にそれぞれ別に貯留し、別々に処理して堆肥等に再利用することが可能となっている。また、この屎尿分離便器10は、屎尿分離式でない一般的な水洗式便器と比較して、洗浄水の使用量を大幅に削減することができている。
【0050】
そして、この屎尿分離便器10において、屎用鉢部11が受けた屎4が屎用鉢部11に付着する場合であっても、屎用鉢部11は、微生物が生息する粉体14bによって覆われた鉢面11cを有するため、その屎4は粉体14bを介して鉢面11cに付着することとなる。
【0051】
ここで、鉢面11cを覆う粉体14bは、鉢面11cに付着する屎4の表面に付着して、屎4が鉢面11cから剥がれて下方に落下し易くなるように作用する。これにより、屎4は、屎用鉢部11から容易に移送可能となっている。
【0052】
また、粉体14bに生息する微生物として、屎4を効率よく分解する放線菌及び糸状菌、屎4から生じる悪臭を分解する硝化菌等を採用している。このため、粉体14bを介して鉢面11cに付着した屎4は、粉体14bに生息する微生物により分解され、同時に好気性微生物等による生物脱臭によって悪臭が抑制されることとなっている。
【0053】
この際、尿は屎4を分解等する微生物にとって有害であることが多いのであるが、この屎尿分離便器10は屎用鉢部11と尿用鉢部12とが別になっていることから、屎用鉢部11に尿が付着することはなくなっており、屎用鉢部11の鉢面11cを覆う粉体14bに生息する微生物が尿によって害を受けることもない。
【0054】
このため、この屎尿分離便器10は、屎用鉢部11に直接屎4が付着する場合であっても、その付着した屎4を洗い流すために、洗浄水を使用する必要がなくなっている。このため、この屎尿分離便器10は、節水による省資源化をより効果的に図ることができる。
【0055】
したがって、実施例1の屎尿分離便器10は、悪臭を抑制可能であり、かつ節水による省資源化の効果が大きい。
【0056】
また、この屎尿分離便器10において、鉢面11cの側面は上方に拡がるように下り傾斜をなし、鉢面11cには上方の粉体供給手段14からから粉体14bが供給されるように構成されている。このため、この屎尿分離便器10は、鉢面11cに予め上方から粉体14bを供給することにより、鉢面11cが常に好適な状態で粉体14bに覆われるように維持することができている。また、鉢面11cの側面は上方に拡がるように下り傾斜をなすことから、上方から供給されて鉢面11cの側面に付着する粉体14bが落下せずに留まり易くなっている。このため、この屎尿分離便器10は、鉢面11cに付着する屎4を粉体14bとともに下方に落下させることが一層容易になっており、本発明の効果を確実に奏することができている。
【0057】
さらに、この屎尿分離便器10において、鉢面11cは、粉体が賦型されてなる粉体固化層11aからなっている。このため、この屎尿分離便器10は、鉢面11cが粉体に覆われた状態を容易に維持することができている。また、粉体固化層11aは、粉体間に空隙を有しており、微生物はその空隙内でも生息可能である。このため、鉢面11cに付着した屎4は、粉体固化層11aに生息する微生物によっても分解され、同時に悪臭が抑制される。このため、この屎尿分離便器10は、本発明の効果を一層確実に奏することができている。また、粉体固化層11aを構成する粉体は、粉体供給手段14から供給される粉体14bと同一のものであるので、粉体固化層11aと粉体14bとが一体化し易くなっている。
【0058】
また、この屎尿分離便器10において、粉体14bは有機物であり、乾燥させた生ごみを粉砕したものであることから、コンポスト化される屎4とともに粉体14bを飼料とすることも可能となっている。
【0059】
また、この屎尿分離便器10において、屎用鉢部11の底は移動可能なベルト13によって形成されている。このため、屎用鉢部11に排泄される屎4は、屎用鉢部11の底のベルト13に受けられ、別の場所に容易に搬送できる。それとともに、ベルト13は搬送コストを比較的安価なものとすることができている。
【0060】
さらに、実施例1の共同トイレ設備50は、屎尿分離便器10を採用することにより、節水による省資源化の効果を発揮できている。また、この共同トイレ設備50は、屎用通路21、コンポスト槽61、尿用通路22及び尿貯留槽62を備えることにより、大量の屎4と尿とを別々に貯留して処理することができるので、再利用を一層効率よく実施できている。さらに、この共同トイレ設備50において、屎用通路21は、内部を負圧にするように外気に開放され、かつ内部に尿用通路22を挿通させていることから、悪臭防止のための構造が簡易であり、施工コストの低廉化を図ることができている。
【0061】
したがって、実施例1の共同トイレ設備50は、屎尿をそれぞれ利用し易く、かつ施工コストの低廉化を実現することができている。
【0062】
また、この共同トイレ設備50において、屎尿分離便器10は、従来の屎尿分離便器よりも悪臭を抑制可能であり、かつ節水による省資源化の効果が大きいことから、そのような屎尿分離便器10を採用する共同トイレ設備50も、悪臭を一層抑制可能であり、かつ節水による省資源化の効果を一層大きくすることができている。
【0063】
さらに、このような共同トイレ設備50を採用した集合住宅90では、コンポスト槽61や尿貯留槽62から得られた堆肥を利用して農作物を生産し、その農作物を消費する際の生ごみ等を乾燥・粉砕して粉体14bを作製し、共同トイレ設備50に利用することができる。このようにすれば、集合住宅90において、より効率的な自給自足システム、資源の循環を実現することが可能となる。
【0064】
また、乾燥した生ごみを粉砕した粉体14bは、屎4と同系統の色を有することから、屎尿分離便器10の汚れが目立ち難くなっている。
【実施例2】
【0065】
図5に示すように、実施例2の屎尿分離便器10aは、床92に埋設されるものであり、実施例1の屎尿分離便器10と同様の屎用鉢部11、尿用鉢部12を備えている。また、この屎尿分離便器10aは、図示しないが床下に埋設されている粉体供給手段及びベルト等を備えている。粉体供給手段、ベルトその他の構成は実施例1の屎尿分離便器10と同様であるので説明は省く。
【0066】
このような構成である実施例2の屎尿分離便器10aも、実施例1の屎尿分離便器10と同様の作用効果を奏することができている。
【実施例3】
【0067】
図6に示すように、実施例3の屎尿分離便器10bはポータブル型便器である。この屎尿分離便器10bは、例えば床92上に載置されて使用されるものであり、実施例1の屎尿分離便器10と同様の屎用鉢部11、尿用鉢部12を備えている。また、この屎尿分離便器10bは、図示しないが、屎用鉢部11、尿用鉢部12の下方に配置される粉体供給手段、ベルト、コンポスト槽及び尿貯留槽を備えている。粉体供給手段、ベルト、コンポスト槽、尿貯留槽その他の構成は実施例1の屎尿分離便器10と基本的に同様であり、ポータブル型便器とするために小型化されたものであるので説明は省く。
【0068】
このような構成である実施例3の屎尿分離便器10bも、実施例1の屎尿分離便器10と同様の作用効果を奏することができている。
【0069】
以上において、本発明を実施例1〜3に即して説明したが、本発明は上記実施例1〜3に制限されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【0070】
例えば、実施例1〜3の屎尿分離便器10、10a、10bには、屎用鉢部11、尿用鉢部12及び座面41を覆う便蓋が設けられることが好ましい。この便蓋は、屎尿分離便器10、10a、10bから悪臭が室内に洩れないようにするともに、屎尿分離便器10、10a、10bの見栄えをよくするデザインとされていることが好ましい。
【0071】
本願は特許請求の範囲に記載した発明以外に以下の発明を含む。
【0072】
(1)人が排泄する屎及び尿の少なくとも一方を受ける鉢部を有する便器と、該便器を支持するフレームと、該フレームに着脱可能に設けられ、装着時に該便器を覆って装飾する化粧カバーとからなることを特徴とする着せ替え便器。
【0073】
この着せ替え便器では、デザインの異なる化粧カバーに容易に交換することができるため、トイレ室を異なる雰囲気に容易に変更することができる。
【0074】
(2)前記化粧カバーは布又はシートからなる(1)記載の着せ替え便器。
【0075】
この着せ替え便器では、汚れた化粧カバーを洗濯して清潔に保つことが容易になる。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明は屎尿分離便器及び共同トイレ設備に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】実施例1の屎尿分離便器及び共同トイレ設備が適用された集合住宅の概略断面図である。
【図2】実施例1の屎尿分離便器の斜視図である。
【図3】実施例1の屎尿分離便器に係り、座面及び化粧カバーを取り外した状態の斜視図である。
【図4】実施例1の屎尿分離便器の概略断面図である。
【図5】実施例2の屎尿分離便器の斜視図である。
【図6】実施例3の屎尿分離便器の斜視図である。
【符号の説明】
【0078】
4…屎
10、10a、10b…屎尿分離便器
11…屎用鉢部
11a、11b…粉体固化層
11c…鉢面
11d…基部
12…尿用鉢部
13…ベルト
14…粉体供給手段
14b…粉体
21…屎用通路
21a…排気口
22…尿用通路
50…共同トイレ設備
61…コンポスト槽
62…尿貯留槽

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人が排泄する屎を尿とは別に受ける屎用鉢部と、該人が排泄する尿を該屎とは別に受ける尿用鉢部とを有する屎尿分離便器において、
前記屎用鉢部は、微生物が生息する粉体によって覆われた鉢面を有することを特徴とする屎尿分離便器。
【請求項2】
前記鉢面の側面は上方に拡がるように下り傾斜をなし、該鉢面には上方から前記粉体が供給されるように構成されている請求項1記載の屎尿分離便器。
【請求項3】
前記鉢面は、前記粉体が賦型されてなる粉体固化層からなる請求項1又は2記載の屎尿分離便器。
【請求項4】
前記粉体は有機物である請求項1乃至3のいずれか1項記載の屎尿分離便器。
【請求項5】
前記屎用鉢部の底は移動可能なベルトによって形成されている請求項1乃至4のいずれか1項記載の屎尿分離便器。
【請求項6】
人が排泄する屎を尿とは別に受ける屎用鉢部と、該人が排泄する尿を該屎とは別に受ける尿用鉢部とを有する複数個の屎尿分離便器が上下方向に整列してなる共同トイレ設備であって、
各前記屎用鉢部で受けた屎を下方に案内する屎用通路と、該屎用通路と連通し、該屎をコンポスト化するコンポスト槽と、各前記尿用鉢部で受けた尿を下方に案内する尿用通路と、該尿用通路と連通し、該尿を貯留する尿貯留槽とを備え、
該屎用通路は、内部を負圧にするように外気に開放され、かつ内部に該尿用通路を挿通させていることを特徴とする共同トイレ設備。
【請求項7】
前記屎尿分離便器は請求項1乃至5のいずれか1項記載のものである請求項6記載の共同トイレ設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−111146(P2007−111146A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−303809(P2005−303809)
【出願日】平成17年10月19日(2005.10.19)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)
【Fターム(参考)】