説明

履物用中底および該中底を備えたサンダル

【課題】 美観の低下を抑制しつつ多様な外観を得ることができる履物用の中底を提供することにある。
【解決手段】 積層構造を有する履物用中底であって、前記積層構造の最上層となる表面層が透明樹脂により形成されていることを特徴とする履物用中底を提供することにある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、履物に用いられる中底に関する。
【背景技術】
【0002】
靴などの履物として、地面と接する本底と、該本底の上位に配され足を載せる表面を備える中底と、足の甲を覆う甲皮とを用い、前記甲皮を前記本底と前記中底とにより挟持させたものが従来広く用いられている。このような履物には人々の好みにより多様な外観が求められることから、前記甲皮などは、その色、形、装飾など種々のデザインが付与されて形成されている。一方、中底については、特許文献1に示すように部分的に屈曲性に富む部材を用いるなどの機能面での検討がなされてはいるものの、その外観については、これまでほとんど検討が行われていない。
【0003】
ところが、近年になって人々の好みの多様化が進行するにつれて、中底についても多様な外観が求められるようになってきている。
しかし、中底の表面に美観を付与した場合、履物の着用者が履物を着脱する際や、歩行に使用したりする際に着用者の足の裏と中底表面とが擦れ合うこととなるため、足の裏と中底との間に侵入した砂、土、ホコリや、着用者の汗などにより、備えられた美観を短期に低下させるおそれを有している。このようなことに対し、より長期に美観を維持すべく中底を黒、茶などの無彩色にして汚れを目立たせないようにすることも考え得るが、この場合は、用いる色合いに限りがあるため、外観が限られたものとなるおそれを有する。
すなわち、従来の履物用中底は、美観の低下を抑制しつつ多様な外観を得ることが困難であるという問題を有している。
【0004】
【特許文献1】特開平11−046804号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、上記問題点に鑑み、美観の低下を抑制しつつ多様な外観を得ることができる履物用の中底を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前記課題を解決すべく、積層構造を有する履物用中底であって、前記積層構造の最上層となる表面層が透明樹脂により形成されていることを特徴とする履物用中底を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、中底が積層構造を有していることから、該積層構造の最上層となる表面層により、該表面層よりも下位の層が汚れることを抑制することができる。また、この表面層が透明樹脂からなることから該表面層の下層に種々のデザインを導入して、該導入したデザインを中底の表面側から視認させることができる。したがって、中底を多様な外観とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に、本発明の好ましい実施の形態について婦人用履物、特に、甲皮がつま先部の一部を覆うタイプの履物(サンダル)を例に挙げて説明する。
【0009】
本実施形態において、婦人用サンダル1は、図1に示すように、足を載せる部分となる中底2と、足の甲を覆う甲皮3と、前記中底の下部に配され地面と接する本底4とを備えている。
また、本実施形態の婦人用サンダル1には、前記本底4とは別体のヒール材5を備え、前記本底と前記ヒール材とを地面と接触させるように前記本底4は、婦人用サンダル1のつま先部に配され、前記ヒール材5は、かかと部に供えられている。
前記甲皮3は、帯状部材からなり、該帯状部材の長手方向両端部がそれぞれ婦人用サンダル1の左側部、右側部において前記中底2と本底4との間に挟持され、婦人用サンダル1のつま先部に配されている。
【0010】
前記中底2は、図2に示すように、積層構造を有し、該積層構造の最上層となる表面層と、該表面層の下層となるシート材層と、該シート材層の下層となる裏面層とを有している。前記表面層としては、透明樹脂からなるカバー材21が用いられ、前記シート材層としては、デザインの施されたシートであるデザインシート22が用いられ、前記裏面層としては、前記カバー材と同じ材料により構成された裏面材23とが用いられ、前記中底は、これらが積層一体化され形成されている。
【0011】
前記デザインシート22は、通常、表面に所望の絵柄が印刷された、200〜500μmの厚さを有する織布、不織布及びフィルムなどを用いることができる。
前記デザインシート22として、織布、不織布を用いる場合は、材質としてコットン、ウール、絹、麻などの天然繊維、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド、アクリル系樹脂などの合成樹脂繊維、レーヨンなどの半合成繊維、金属繊維、鉱物繊維やこれら繊維を複数組み合わせて使用することができ、また、これらの繊維の混紡繊維を用いることも可能である。
また、要すればこれら繊維にはカバー材21との接着性を高めるために、プライマー処理やカップリング剤処理などを施すことも可能である。
【0012】
また、前記デザインシート22として、フィルムを用いる場合においては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテンなどのポリオレフィンフィルム、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステルフィルム、ナイロンなどのポリアミドフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリイミドフィルム、アクリル樹脂フィルム、ポリカーボネートフィルムなどの合成樹脂フィルム及び金属フィルム、数種類の合成樹脂フィルムならびに金属フィルムを組み合わせて用いた複合フィルムを例示することができる。また、要すれば、カバー材との接着性を高めるべくコロナ放電処理、サンドブラスト処理などの表面粗化処理やプライマー処理、カップリング剤処理などの化学処理が施されていてもよい。
また、これら以外に和紙やポスターなどの紙シート、皮革なども用いることができる。
【0013】
前記デザインシート22には、印刷、染色などにより絵柄や模様などのほかに文字情報なども記載することも可能である。また、要すれば、絵柄などの記載をすることなしに、繊維やフィルムが本来備えている風合いを現出させるデザインとして採用することも可能である。
【0014】
前記カバー材21は、通常、1.5〜2.5mm厚さとされ、中底の表面側から前記デザインシートを視認し得る透明性を有している。
カバー材の厚さが通常1.5〜2.5mmとされているのは、1.5mm未満の場合には中底として十分な強度とならず、2.5mmを超える場合には、履物の重量を重くしてしまうおそれを有するためである。
このような点から、前記カバー材21は、2.0〜2.2mmの厚さとされることが好ましい。
このような透明性を有する樹脂としては、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリプロピレン、ABS樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ−4−メチルテンペン−1などの硬質樹脂や、クロロプレンゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、シリコーンゴム、エチレン−プロピレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体等、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体、スチレン−エチレン/ブチレン−スチレン共重合体、スチレン−エチレン/プロピレン−スチレン共重合体等のポリスチレン系熱可塑性エラストマー、ポリ塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、フッ素樹脂系熱可塑性エラストマーなどの軟質樹脂を挙げることができる。
【0015】
これらの樹脂には、前記デザインシート22の視認性を損なわない程度に着色剤や金属フレークなどを加えて、さらに、外観の多様化を図ることも可能である。
また、カバー材21には、抗菌剤、香料などやの機能性配合薬品や、紫外線吸収剤、老化防止剤などの劣化防止用配合薬品、安定剤、金属石鹸といった加工安定用配合薬品などを適宜加えることができる。
【0016】
なお、前記カバー材21として前記硬質樹脂を用いた場合には、中底2と足とが擦れ合ってカバー材21自体に傷が入ることを抑制し得る。また、カバー材21自体に傷が入ることを抑制するという点から、前記硬質樹脂としては、JIS K 5400に規定の鉛筆硬度の値が2H以上、好ましくは4H以上の表面硬度を備えていることが好ましい。
【0017】
前記裏面材23は、通常、1.5〜2.5mm厚さとされ、前記カバー材21と同様の樹脂や配合剤を用いることができる。
裏面材23の厚さが通常1.5〜2.5mmとされているのは、1.5mm未満の場合には中底として十分な強度とならず、2.5mmを超える場合には、履物の重量を重くしてしまうおそれを有するためである。
このような点から、前記裏面材23は、2.0〜2.2mmの厚さとされることが好ましい。
前記裏面材23は、前記前記カバー材21とは異なり、透明性を有している必要はないが、前記デザインシート22は、通常、厚さが薄くその視認性に裏面材23が影響するため、デザインシート22の視認性を高める点から、白色などの明色であることが好ましく、前記カバー材21と同じく透明であることがより好ましい。
【0018】
これら、カバー材21、デザインシート22、裏面材23の接合方法は、一般的な接着手段を用いることができ、例えば、接着剤を用いた接着、熱融着などを用いることができる。
このように、中底2のデザインを、デザインシート22により現出させるようにすることで、デザインを変更する際に、デザインシート22だけを変更すればよく、デザイン変更に伴うコストも低減させ得るものとなる。
【0019】
なお、このとき、デザインシート22として織布を用い、カバー材21と裏面材23とを同一の樹脂を採用して熱融着させることにより、前記織布の織り目を通して、カバー材21と裏面材23とを溶融一体化させて中底2としての強度を高いものとすることができる。
すなわち、前記カバー材21と裏面材23とに熱可塑性の樹脂を用いる場合には、所望厚さの板材を用意し、所望の形状に切断したデザインシートと前記板材を用い、2枚の板材にて前記デザインシートを挟持しつつ、熱プレスと金型などを用いて加圧しつつ前記熱可塑性樹脂の可塑化温度以上に加熱することで成形することができる。
このとき、前記板状材を前記デザインシートよりも僅かに大きいサイズに切断しすることでデザインシート端部の露出がない中底を製造することができ、デザインシートとカバー材、或いは、デザインシートと裏面材との間に、水分やホコリが侵入して、中底の美観が低下することをさらに抑制することができる。
【0020】
また、前記カバー材21と裏面材23とに熱硬化性樹脂を用いる場合も、前記熱可塑性樹脂を用いる場合と同様に、熱プレスと金型とを用いて加圧しつつ熱硬化反応を生じる温度に加熱することで成形できる。なお、前記熱硬化性樹脂が液状物の場合には、カバー材21と裏面材23とを一旦、流動性のない半硬化状態として上記と同様に成形することもでき、カバー材21と裏面材23との少なくともいずれかを流動性のない半硬化状態としてカバー材21の所定厚みとなる深さの掘り込み部を有する金型と裏面材23の所定厚みとなる深さを有する掘り込み部を有する金型からなる注型金型に、前記半硬化状態の熱硬化性樹脂の上にデザインシートを載置してセットし、さらに残りの部分に液状熱硬化性樹脂を注入させて成形することもできる。さらには、前記注型金型の中央部にデザインシートを配した状態でセットし、一方からカバー材用液状熱硬化性樹脂を流し入れ、他方からと裏面材用液状熱硬化性樹脂を流し入れる注型方法を採用することでも成形できる。
【0021】
前記中底2と、前記甲皮3、前記本底4はセメント方式など、一般的な接合方法により互いに接合される。
また、前記中底2と前記ヒール材5とは、セメント方式、くぎやビスなどの金物による固定、あるいは、これらの併用など、一般的な接合方法により互いに接合される。
【0022】
なお、中底に用いる前記裏面材として透明硬質樹脂を用い、デザインシートとして前記中底と前記甲皮、或いは、前記中底と前記本底との界面の接着状況を表面側から確認し得る空隙率を有する織布を採用することで、製造時の接着不良や、使用時に前記界面での剥離などが生じることなどを中底表面側から観測することができる。
すなわち、歩行中に本底、或いは、甲皮が不意に外れて歩行に支障をきたすようなことを予防し得るものとなる。
また、上記効果を奏する点において、織布としては、見かけ繊度50デシテックス相当以上の糸を用いて空隙率80%以上備えているものが好適である。
なお前記見かけ繊度は、JIS L 1096により測定することができ。前記開口率は、マイクロスコープを用いて織布を100倍の倍率で写真撮影し、該撮影された写真の重量と、写真に写っている開口部をカッターナイフで切断除去した後の写真重量とを比較して100分率にて表したものを意図している。
【0023】
本実施形態においては、中底が人目に止まりやすく多様な外観をより効果的に提示させ得る点、ならびに、中底と足の裏との間に、土、ホコリなどが進入しやすく美観の低下抑制作用がより効果的に発揮される点において、婦人用サンダルを用いて説明したが、本発明においては、特に中底を、婦人用サンダルに用いられるものに限定されるものではなく、足を載せる表面を備える履物用の中底であればどのようなタイプの履物の中底としても用いることができる。
【0024】
また、本実施形態においては、中底をカバー材と、デザインシートと、裏面材との積層構造のものを用いて説明したが、本発明において前記中底は、このような積層構造に限定されるものではなく、中底の美観が低下することを抑制し得るように、表面全体に、透明樹脂材からなるカバー材を備えるものであればどのような構造のものも使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】一実施形態の履物を示す模式図。
【図2】同実施形態のA−A’断面を示す断面図。
【符号の説明】
【0026】
1 婦人用サンダル(履物)
2 中底
21 カバー材(表面層)
22 デザインシート(シート材層)
23 裏面材(裏面層)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層構造を有する履物用中底であって、
前記積層構造の最上層となる表面層が透明樹脂により形成されていることを特徴とする履物用中底。
【請求項2】
前記透明樹脂が硬質透明樹脂である請求項1記載の履物用中底。
【請求項3】
前記表面層の下層にシート材層が備えられている請求項1又は2記載の履物用中底。
【請求項4】
前記シート材層の下層に前記表面層と同じ硬質透明樹脂からなる裏面層が配されている請求項3記載の履物用中底。
【請求項5】
前記シート材が繊維織物である請求項4記載の履物用中底。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れかに記載の履物用中底が備えられているサンダル。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−122550(P2006−122550A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−317675(P2004−317675)
【出願日】平成16年11月1日(2004.11.1)
【出願人】(503014621)マキノ商事株式会社 (1)
【Fターム(参考)】