説明

履物

【課題】 足裏への衝撃を緩和する機能を更に向上させることによって、足に負担が掛かり難く、ソフトな履き心地が得られる履物を提供する。
【解決手段】 中底5における足裏の踵部に対応する部分に、第1の貫通孔51aがあけられ、第1の貫通孔に上方から挿入され下端が本底4の凹所44に収容されたヒール芯6の上面に受けられる軸部71および軸部の上端に連なって笠状に形成され第1の貫通孔を覆うように中底の上面に配される上方膨出部72よりなる第1のクッション部材7aが設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、履物に関する。
【背景技術】
【0002】
足裏を刺激し、または、足裏への衝撃を緩和する目的で、中底の上面に弾性を有する膨出部が形成されている履物が、従来より知られている。
【0003】
このような履物として、本出願人は、以下のものを先に提案した。即ち、当該履物は、2以上の層を有する積層体からなり、1番上の層における足裏を刺激すべき場所および足裏に与える衝撃を緩和し得る場所の少なくともいずれか一方に所定の大きさの貫通孔があけられ、上から2番目の層の上面に、1番上の層の貫通孔から上方に膨出する弾性発泡体製膨出部材が配され、膨出部材上面が被覆部材により覆われ、被覆部材の周縁部が1番上の層の貫通孔周縁部と2番目の層とにより挟まれかつ全層のうち少なくとも1番上の層の貫通孔周縁部に固着せられている中底を備えている(下記の特許文献1参照)。
上記の履物によれば、膨出部分が最上層に形成された孔から突出しており、層間に挟み込まれて押さえつけられることがないので、膨出部分の厚みが薄くなって弾性を損なうことがなく、充分に足裏を刺激することまたは足裏に与える衝撃を緩和することができる。
【0004】
しかしながら、上述した従来の履物の場合、中底の上から2番目の層の上面に膨出部材が配されているため、足裏に違和感を与えることなく膨出部材の厚みを大きくとること、換言すれば、衝撃吸収に必要な圧縮変形量を確保するには限界があり、足裏への衝撃を緩和する機能の面では更に改善の余地があった。
【特許文献1】特開2000−14406号公報
【発明の開示】
【0005】
本発明の目的は、足裏への衝撃を緩和する機能を更に向上させることによって、足に負担が掛かり難く、ソフトな履き心地が得られる履物を提供することにある。
【0006】
本発明による履物は、中底における足裏の踵部に対応する部分に、第1の貫通孔があけられているとともに、第1の貫通孔に上方から挿入されかつ先端が本底の上面または本底の凹所に収容されたヒール芯の上面に受けられる軸部および軸部の上端に連なって笠状に形成されかつ第1の貫通孔を覆うように中底の上面に配される上方膨出部よりなる第1のクッション材が設けられているものである。
【0007】
上記の履物にあっては、歩行等に伴って足裏の踵部に衝撃が加えられた際、その衝撃が第1のクッション部材の圧縮変形により吸収緩和される。ここで、第1のクッション部材は、軸部と上方膨出部とで構成されているため、従来技術と比べて圧縮変形量が相当大きくなっており、極めて優れた衝撃緩和機能が奏され、しかも、中底上面に突出しているのは上方膨出部のみであるため、足裏に違和感を与える恐れがない。
したがって、本発明の履物によれば、歩行等の際に足裏の踵部に加えられる衝撃を十分に緩和することが可能であって、足に負担が掛かり難く、ソフトな履き心地が得られる。
【0008】
本発明による履物において、好ましくは、本底の上面における第1の貫通孔に臨む部分またはヒール芯の上面に、第1のクッション部材の圧縮変形率よりも大きい圧縮変形率を有する下部クッション層が設けられている。
【0009】
第1のクッション部材の下方に下部クッション層が配されることにより、トータルの圧縮変形量が大きくなるため、より優れた衝撃緩和機能が得られる。また、第1のクッション部材と比べて下部クッション層の圧縮変形率が大きいため、足裏の踵部に力が加えられた際に第1のクッション部材の形態が維持されやすく、それによって足裏の踵部への刺激効果も期待できる。
【0010】
本発明による履物の好ましい態様として、中底における足裏の踏み付け部に対応する部分に第2の貫通孔があけられ、第2の貫通孔を覆うように中底の上面に上方膨出状の第2のクッション部材が設けられている。
【0011】
上記態様の履物にあっては、歩行等に伴って足裏の踏み付け部(足指の付け根部)に衝撃が加えられた際、その衝撃が第2のクッション部材の圧縮変形によって吸収緩和される。ここで、第2のクッション部材は、第2の貫通孔を覆うように中底の上面に設けられていて、その一部が第2の貫通孔の内部まで入り込むように圧縮変形されるので、圧縮変形量を大きくとることができ、優れた衝撃緩和機能が得られる。
よって、上記態様の履物によれば、足裏の踵部への衝撃に加えて足裏の踏み付け部への衝撃も十分に緩和することができ、それによって、足への負担を更に軽減し、よりソフトな履き心地が得られる。
また、第2のクッション部材は、これを足指で掴むことにより歩行をサポートする機能を併せ持つものである。
なお、第2の貫通孔および第2のクッション部材は少なくとも1つずつあればよいが、より好ましい態様としては、第2の貫通孔が中底における足裏の踏み付け部に対応する部分に沿って左右に1つずつあけられ、各貫通孔を覆うように左右2つの第2のクッション部材が中底の上面に設けられる。このように第2の貫通孔および第2のクッション部材を左右に1つずつ配置すれば、足裏の踏み付け部に均等に力が掛かるようになるため、履いた際に足が安定し易く、それによって足の疲労を軽減することが可能となる。
【0012】
本発明による履物において、中底における足裏の第2ないし第4の中足骨底付近に対応する部分の上面に、上方膨出状の第3のクッション部材が設けられている場合がある。
【0013】
足裏における第2ないし第4の中足骨底付近(土踏まずのやや内側)に対応する部分は、踵部や踏み付け部と比べると歩行等に伴う衝撃はずっと小さいが、上記の場合のように、該部分に対応する中底の上面に第3のクッション部材が設けられることによって、トータル的な衝撃緩和機能が向上し、それによって足への負担のより一層の軽減が図られ、履き心地も更にソフトになる。また、第3のクッション部材によって足裏の第2ないし第4の中足骨底付近が支えられ、それによって足裏のアーチが適正な形態に保持されるという機能も奏される。
【0014】
また、本発明による履物において、中底における足裏の第2ないし第4の中足骨底付近に対応する部分に第3の貫通孔があけられ、第3の貫通孔を覆うように中底の上面に上方膨出状の第3のクッション部材が設けられている場合もある。
【0015】
上記の場合、第3のクッション部材の一部が第3の貫通孔の内部まで入り込むように圧縮変形されるので、圧縮変形量を大きくとることができ、優れた衝撃緩和機能が得られる。また、上記の場合、第3のクッション部材の圧縮変形量が大きくなることで、使用者の足の形態やサイズに応じたより適切なアーチ形成機能を奏することが可能となる。
【0016】
また、本発明による履物において、中底における足裏の第2ないし第4の中足骨底付近に対応する部分に、第3の貫通孔があけられているとともに、第3の貫通孔に上方から挿入されかつ先端が本底の上面に受けられる軸部および軸部の上端に連なって笠状に形成されかつ第3の貫通孔を覆うように中底の上面に配される上方膨出部よりなる第3のクッション部材が設けられている場合もある。
【0017】
上記の場合、第3のクッション部材が軸部と上方膨出部とで構成されているため、圧縮変形量が相当大きくなっており、極めて優れた衝撃緩和機能が奏され、しかも、中底上面に突出しているのは上方膨出部のみであるため、足裏に違和感を与える恐れがない。また、上記の場合、第3のクッション部材の圧縮変形量が大きくなるため、より適切なアーチ形成機能を奏することが可能となる。
【0018】
上記の場合において、本底の上面における第3の貫通孔に臨む部分に、第3のクッション部材の圧縮変形率よりも大きい圧縮変形率を有する下部クッション層が設けられているのが好ましい。
【0019】
上記構成によれば、第3のクッション部材の下方に下部クッション層が配されることにより、トータルの圧縮変形量が大きくなるため、より優れた衝撃緩和機能が得られる。また、第3のクッション部材と比べて下部クッション層の圧縮変形率が大きいため、足裏における第2ないし第4の中足骨底付近に力が加えられた際に第3のクッション部材の形態が維持されやすく、それによって足裏の上記部分への刺激効果も期待できる。
【0020】
本発明による履物において、クッション部材の上面が、中底の上面に接合された被覆部材によって覆われている場合がある。
【0021】
上記の場合、クッション部材の上面が足裏に直接当たらないため、履いた際の感触が良好となり、また、見映えも良くなる。
【0022】
本発明による履物において、本底の凹所にヒール芯が収容される場合、該ヒール芯が木材によって形成されているのが好ましい。
ヒール芯として、多孔性材料である木材を使用すれば、他の硬質材料を使用する場合と比べて、衝撃緩和機能が高くなる。ヒール芯に使用する木材としては、桐材等が挙げられる。
【0023】
第1のクッション部材の材料としては、衝撃吸収緩和機能を有するものであれば特に限定されないが、同部材は最も大きな衝撃を受ける足裏の踵部の下に配されるため、好適には、衝撃吸収機能に優れたシリコーンゲル等のゲルが用いられる。第1のクッション部材には、好適には、シリコーンゲル等によって全体が一体に成形されたものが用いられるが、軸部と上方膨出部とを別体に成形して両者を接着などにより接合したものであってもよい。第3のクッション部材を軸部と上方膨出部とよりなるものとする場合も、上記と同様である。
第2および第3のクッション部材については、第1のクッション部材の場合と比べると吸収緩和すべき衝撃が小さいため、ポリウレタンフォーム等の弾性発泡体や低反発スポンジによって形成してもよいが、好適には、第1のクッション部材と同様にシリコーンゲル等のゲルが用いられる。
【0024】
下部クッション層の材料は、これの上方に配される第1または第3のクッション部材よりも圧縮変形率が大きいものであれば特に限定されないが、好適には、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)が用いられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
図1〜5には本発明の第1の実施形態が示されている。この実施形態は、本発明を婦人用靴に適用したものである。なお、これらの図では、左足用の靴を示している。
【0026】
本実施形態の靴(1)は、図1、2に示すような甲被(2)および靴底(3)を備えている。靴底(3)は、本底(4)と、甲被(2)の吊り込み代(21)とともに本底(4)の上面に接合された中底(5)とを備えている。
【0027】
本底(4)は、合成樹脂により一体成形されたものであって、底板(41)と、底板(41)の周縁から上方に立ち上がった周壁(42)と、底板(41)および周壁(42)で囲まれた空間に平面よりみて格子状に並ぶように形成された補強壁(43)とを有している。周壁(42)は、爪先部から屈曲部にかけての前半部が低く、ここから後方に向かって次第に高くなり、ヒール部の後端において最も高くなっている。本底(4)のヒール部には、補強壁(43)の一部が切り欠かれることにより形成された断面円形の凹所(44)が設けられている。そして、この凹所(44)に、ヒール芯(6)が収容されている。ヒール芯(6)は、桐材を円柱状に切削加工することにより形成されている。
【0028】
中底(5)は、複数枚のシートを重ね合わせて接合した積層体からなる。
中底(5)における足裏の踵部に対応する部分に、断面円形の第1の貫通孔(51a)があけられているとともに、第1のクッション部材(7a)が設けられている。
第1のクッション部材(7a)は、第1の貫通孔(51a)に上方から挿入されかつ下端がヒール芯(6)の上面に受けられる軸部(71)と、軸部(71)の上端に連なって笠状に形成されかつ第1の貫通孔(51a)を覆うように中底(5)の上面に配される上方膨出部(72)とよりなる。軸部(71)は、第1の貫通孔(51a)の径よりもやや小さい形を有する円柱状のものとなされている。上方膨出部(72)は、その下面が平坦面となされるとともに、その上面がなだらかな丘陵状となされており、平面よりみて円形の輪郭を有している。クッション部材(7a)は、シリコーンゲル製であって、全体が一体に成形されている。
ヒール芯(6)の上面には、第1のクッション部材(7a)の圧縮変形率よりも大きい圧縮変形率を有する下部クッション層(8a)が設けられている。下部クッション層(8a)はSBRシートよりなり、ヒール芯(6)の上面に接着剤等によって接合されている。
図2に示すように、下部クッション層(8a)の上面と中底(5)の下面との間には隙間(S)が形成されている。この実施形態では、第1のクッション部材(7a)の軸部(71)が、第1の貫通孔(51a)の長さと前記隙間(S)との和にほぼ等しい長さを有するものとなされており、非圧縮状態において軸部(71)の下端が下部クッション層(8a)の上面に当接または近接するようになっている。なお、下部クッション層(8a)の上面と中底(5)の下面との隙間(S)の寸法は、中底(5)の厚み等に応じて適宜に決定すればよく、場合によっては、0またはこれに近い僅かな寸法とすることもある。また、図示は省略したが、上記隙間(S)を埋めるように、中底(5)の下面に、第1の貫通孔(51a)とほぼ同程度の径の孔を有するドーナツ形のスペーサを取り付けてもよい。この場合、軸部(71)の長さを十分に大きくとることができる上、継続的使用により軸部(71)の下部が径方向外方に広がるように潰れたままの状態になって衝撃緩和機能が低下するのを、スペーサによって効果的に抑制することができる。
【0029】
中底(5)における足裏の踏み付け部に対応する部分に、断面円形の第2の貫通孔(51b)が左右に1つずつあけられている。そして、それぞれの貫通孔(51b)を覆うように、中底(5)の上面に左右2つの上方膨出状の第2のクッション部材(7b)が設けられている。このクッション部材(7b)も、シリコーンゲル製であって、その下面が平坦面となされるとともに、その上面がなだらかな丘陵状となされており、平面よりみて円形の輪郭を有している。なお、中底(5)上面への接着性を高めるため、シリコーンゲル製の第2のクッション部材(7b)の下面に綿布等の生地(9)を貼り付けるようにしてもよい。
【0030】
本底(4)の上面における屈曲部から爪先部にかけての部分に、下部クッション層(8b)が設けられている。下部クッション層(8b)は、SBRシート製であって、屈曲部から爪先部にかけての補強壁(43)を切り欠くことによって形成された凹所(45)に収容されている。この部分に下部クッション層(8b)が設けられることによって、靴底(3)の屈曲性が向上し、歩き易くなっている。
【0031】
中底(5)における足裏の第2ないし第4の中足骨底付近に対応する部分の上面には、上方膨出状の第3のクッション部材(7c)が設けられている。第3のクッション部材(7c)は、シリコーンゲル製であって、その下面が平坦面となされるとともに、その上面がなだらかな丘陵状となされており、平面よりみて後部が細い隅丸三角形の輪郭を有している。
【0032】
第1ないし第3のクッション部材(7a)(7b)(7c)は、これらの上面が、中底(5)の上面に接合された被覆部材(52)によって覆われている。被覆部材(52)は、合成皮革、ビニールシート等によって形成されている。
被覆部材(52)のうち第1のクッション部材(7a)の上面、即ち、上方膨出部(72)の上面を覆っている部分には、多数の孔(521)があけられている
【0033】
図3は、歩行等に伴って足裏の踵部に衝撃が加えられた際の靴(1)の状態を示したものである。足裏の踵部に衝撃が加えられると、まず、圧縮変形率が大きい下部クッション層(8a)の圧縮変形が起こり、次いで第1のクッション部材(7a)が圧縮変形され、それによって衝撃が吸収緩和される。ここで、第1のクッション部材(7a)は、軸部(71)と上方膨出部(72)とで構成されており、また、その下に下部クッション層(8a)が配されているため、十分な圧縮変形量が確保されている。更に、多孔性を有する木製のヒール芯(6)によっても、足裏の踵部への衝撃が吸収緩和される。
また、第1のクッション部材(7a)と比べて下部クッション層(8a)の圧縮変形率が大きいため、足裏の踵部に力が加えられた際に第1のクッション部材(7a)の形態が維持されやすく、それによって足裏の踵部への刺激効果も期待できる。
【0034】
図4は、歩行等に伴って足裏の踏み付け部に衝撃が加えられた際の靴(1)の状態を示したものである。足裏の踏み付け部に衝撃が加えられると、第2のクッション部材(7b)が圧縮変形され、また、下部クッション層(8b)にも圧縮変形が起こり、それによって衝撃が吸収緩和される。この際、第2のクッション部材(7b)は、その一部が第2の貫通孔(51b)の内部まで入り込むように圧縮変形されるので、圧縮変形量が大きく、優れた衝撃緩和機能が得られる。また、第2のクッション部材(7b)は、これを足指で掴むことにより歩行をサポートする機能を奏する。
【0035】
図5は、歩行等に伴って足裏における第2ないし第4の中足骨底付近に衝撃が加えられた際の靴(1)の状態を示したものである。足裏の上記部分に衝撃が加えられると、第3のクッション部材(7c)が圧縮変形され、それによって衝撃が吸収緩和される。また、第3のクッション部材(7c)は、足裏の上記部分を支えて適正なアーチを形成する機能を奏する。
【0036】
以上の通り、この実施形態の靴(1)によれば、足裏の踵部、踏み付け部および第2ないし第4の中足骨底付近の3箇所において、歩行等の際に加えられる衝撃を十分に吸収緩和することができ、また、足裏にかかる力を適正な方向に分散させることができるため、足に掛かる負担が大幅に軽減し、ソフトで快適な履き心地が得られる。
【0037】
図6は、本発明の第2の実施形態を示すものである。
この実施形態の靴(1)は、以下の点を除いて図1〜5に示す第1の実施形態の靴(1)と同一である。即ち、図6(a)に示すように、この実施形態の靴(1)では、中底(5)における足裏の第2ないし第4の中足骨底付近に対応する部分に断面円形の第3の貫通孔(51c)があけられ、この貫通孔(51c)を覆うように中底(5)の上面に上方膨出状の第3のクッション部材(7c)が設けられている。
【0038】
図6(b)に示すように、歩行等に伴って足裏における第2ないし第4の中足骨底付近に衝撃が加えられると、第3のクッション部材(7c)が圧縮変形され、それによって衝撃が吸収緩和される。この際、クッション部材(7c)は、その一部が第3の貫通孔(51c)の内部まで入り込むように圧縮変形されるので、圧縮変形量が大きく、優れた衝撃緩和機能が得られる。また、第3のクッション部材(7c)は、足裏の第2ないし第4の中足骨底付近を支えて適正なアーチを形成する機能を奏するが、この実施形態では上記のように圧縮変形量を大きくとれるため、使用者の足の形態やサイズに応じたより適切なアーチ形成機能を奏することが可能となる。
【0039】
図7は、本発明の第3の実施形態を示すものである。
この実施形態の靴(1)は、以下の点を除いて図6に示す第2の実施形態の靴(1)と同一である。即ち、図7(a)に示すように、この実施形態の靴(1)では、本底(4)の上面における第3の貫通孔(51c)に臨む部分に、下部クッション層(8c)が設けられている。また、第3のクッション部材(7c)として、第3の貫通孔(51c)に上方から挿入されかつ先端が下部クッション層(8c)に受けられる軸部(71)と、軸部(71)の上端に連なって笠状に形成されかつ第3の貫通孔(51c)を覆うように中底(5)の上面に配される上方膨出部(72)とよりなるものが用いられている。軸部(71)は、第3の貫通孔(51c)の径よりもやや小さい径を有する円柱状となされている。上方膨出部(72)は、その下面が平坦面となされるとともに、その上面がなだらかな丘陵状となされており、平面よりみて後部が細い隅丸三角形の輪郭を有している。このクッション部材(7c)は、シリコーンゲル製であって、全体が一体に成形されている。下部クッション層(8c)は、SBRシート製であって、第3のクッション部材(7c)の圧縮変形率よりも大きい圧縮変形率を有しており、第3のクッション部材(7c)の上方膨出部(72)に対応する箇所の補強壁(43)を切り欠くことによって形成された凹所(46)に収容されている。
【0040】
図7(b)に示すように、歩行等に伴って足裏における第2ないし第4の中足骨底付近に衝撃が加えられると、まず、圧縮変形率が大きい下部クッション層(8c)の圧縮変形が起こり、次いで第3のクッション部材(7c)が圧縮変形され、それによって衝撃が吸収緩和される。ここで、第3のクッション部材(7c)は、軸部(71)と上方膨出部(72)とで構成されており、また、その下に下部クッション層(8c)が配されているため、十分な圧縮変形量が確保されており、極めて優れた衝撃緩和機能が得られる。また、上記のように第3のクッション部材(7c)の圧縮変形量をより大きくとれるため、より適切なアーチ形成機能を奏することが可能となる。更に、第3のクッション部材(7c)と比べて下部クッション層(8c)の圧縮変形率が大きいため、足裏における第2ないし第4の中足骨底付近に力が掛かった際に第3のクッション部材(7c)の形態が比較的維持されやすく、それによって足裏の上記部分を刺激する効果も期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の第1の実施形態を示すものであって、靴の全体斜視図である。
【図2】上記靴の縦断面図である。
【図3】足裏の踵部に衝撃が加えられた際の上記靴の状態を示す要部拡大縦断面図である。
【図4】足裏の踏み付け部に衝撃が加えられた際の上記靴の状態を示す要部拡大縦断面図である。
【図5】足裏における第2ないし第4中足骨底付近に衝撃が加えられた際の上記靴の状態を示す要部拡大縦断面図である。
【図6】本発明の第2の実施形態を示すものであって、(a)は靴底のうち足裏における第2ないし第4中足骨底付近に対応する部分を拡大して示す縦断面図であり、(b)は足裏における第2ないし第4中足骨底付近に衝撃が加えられた際の同部分の状態を示す縦断面図である。
【図7】本発明の第3の実施形態を示すものであって、(a)は靴底のうち足裏における第2ないし第4中足骨底付近に対応する部分を拡大して示す縦断面図であり、(b)は足裏における第2ないし第4中足骨底付近に衝撃が加えられた際の同部分の状態を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0042】
(1):靴
(2):甲被
(3):靴底
(4):本底
(44):凹所
(5):中底
(51a):第1の貫通孔
(51b):第2の貫通孔
(51c):第3の貫通孔
(52):被覆部材
(6):ヒール芯
(7a):第1のクッション部材
(7b):第2のクッション部材
(7c):第3のクッション部材
(71):軸部
(72):上方膨出部
(8a)(8b)(8c):下部クッション層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中底(5)における足裏の踵部に対応する部分に、第1の貫通孔(51a)があけられているとともに、第1の貫通孔(51a)に上方から挿入されかつ下端が本底の上面または本底(4)の凹所(44)に収容されたヒール芯(6)の上面に受けられる軸部(71)および軸部(71)の上端に連なって笠状に形成されかつ第1の貫通孔(51a)を覆うように中底(5)の上面に配される上方膨出部(72)よりなる第1のクッション部材(7a)が設けられていることを特徴とする、履物。
【請求項2】
本底の上面における第1の貫通孔に臨む部分またはヒール芯(6)の上面に、第1のクッション部材(7a)の圧縮変形率よりも大きい圧縮変形率を有する下部クッション層(8a)が設けられていることを特徴とする、請求項1記載の履物。
【請求項3】
中底(5)における足裏の踏み付け部に対応する部分に第2の貫通孔(51b)があけられ、第2の貫通孔(51b)を覆うように中底(5)の上面に上方膨出状の第2のクッション部材(7b)が設けられていることを特徴とする、請求項1または2記載の履物。
【請求項4】
中底(5)における足裏の第2ないし第4の中足骨底付近に対応する部分の上面に、上方膨出状の第3のクッション部材(7c)が設けられていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1つに記載の履物。
【請求項5】
中底(5)における足裏の第2ないし第4の中足骨底付近に対応する部分に第3の貫通孔(51c)があけられ、第3の貫通孔(51c)を覆うように中底(5)の上面に上方膨出状の第3のクッション部材(7c)が設けられていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1つに記載の履物。
【請求項6】
中底(5)における足裏の第2ないし第4の中足骨底付近に対応する部分に、第3の貫通孔(51c)があけられているとともに、第3の貫通孔(51c)に上方から挿入されかつ先端が本底(4)の上面に受けられる軸部(71)および軸部(71)の上端に連なって笠状に形成されかつ第3の貫通孔(51c)を覆うように中底(5)の上面に配される上方膨出部よりなる第3のクッション部材(7c)が設けられていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1つに記載の履物。
【請求項7】
本底(4)の上面における第3の貫通孔(51c)に臨む部分に、第3のクッション部材(7c)の圧縮変形率よりも大きい圧縮変形率を有する下部クッション層(8c)が設けられていることを特徴とする、請求項6記載の履物。
【請求項8】
クッション部材(7a)(7b)(7c)の上面が、中底(5)の上面に接合された被覆部材(52)によって覆われていることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1つに記載の履物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−67953(P2008−67953A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−250189(P2006−250189)
【出願日】平成18年9月15日(2006.9.15)
【出願人】(591131349)株式会社パンジー (6)
【Fターム(参考)】