説明

山側駅から谷側駅に個人を運び降ろすための設備

【課題】地面から所定の距離で支持ケーブルに締結された走行レールを有する山側駅から谷側駅に個人を運び降ろすための設備。
【解決手段】ジョイント5で互いに接続された多数の副レール4を含み、副レール4に沿って搬器が移動可能であり、副レール4がジョイント5の部分において、副レール4の中央部分に対し上昇している。さらに、副レール4が湾曲しており、その湾曲した輪郭により上昇を生じるようになっている。また、2本の副レール4の間で、ジョイント5に好ましくはくさび形の隙間が配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地面から所定の距離において支持ケーブルに締結された走行レールを有する、山側駅から谷側駅に個人を運び降ろすための設備に関する。この設備は、ジョイントで互いに接続された多数の副レールを含み、これらの副レールに沿って搬器(carriage)が移動可能である。
【背景技術】
【0002】
このような設備が、特許文献1から知られている。走行レール上の搬器の移動速度は、場合によっては70km/h以上にもなる。その結果、副レールを接続するジョイントにおいて、または副レール間での移行部において、搬器の走行の滑らかさに関して問題が生じる。また、発生する揺れは、摩耗に関して問題を引き起こす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】オーストリア国特許第410306号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って本発明は、上記した問題を可能な限り回避するという目的に基づく。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的は、一般的な形式の設備の場合には、ジョイント部分において、副レールを中央部分よりも上昇させることにより達成される。
【0006】
本発明による設備の場合、副レールはケーブルから吊下されるので、1人以上の個人によって占められた搬器の重量を受け、副レールが下降する。ジョイントにより後続の副レールに接続された副レールの端に搬器が近づくにつれて、副レールはその終端領域において下降し、そして後続の副レールはその始端において搬器の重量を受けて下降する。この場合、従来技術の副レール、および特に搬器が沿って進む副レールの走行面は、もはや互いに対して完全に直線的には整列しておらず、V字形のわずかな下降が接続領域に現れる。
【0007】
本発明は、副レールが、予想される下降の程度だけジョイントの部分において上昇しているということによって、副レールの下降を補償している。これは、走行レールまたは個々の副レールの非荷重状態において、1本の副レールから次への移行領域において、副レールが理想的な直線の輪郭(または経路が湾曲している場合は湾曲した輪郭)に対して上昇することを意味する。この上昇は搬器および搬器中の人の重量の結果として予想される平均の下降程度に対応しており、これにより最終的に副レールは、搬器がそれらを移動する時に、互いに対して理想的な直線整列(または経路が湾曲している場合は湾曲した整列)状態にある。
【0008】
この時、直線の副レールまたは、湾曲した輪郭に従って湾曲した副レールを作り、これらを付加的に一体に形成された部分によって、これらの始領域および終領域において上げることが原理的に可能である。本発明の文脈内では、副レールが湾曲していることが好ましく、その湾曲した輪郭によって上昇を生じさせる。この場合、連続した輪郭を有し、要求され得る経路の湾曲および副レールの始まりおよび終わりの領域での上昇に従って湾曲しているだけでよい副レールを使用することができる。
【0009】
このように、本発明の場合、当接する副レールまたはそれらの走行面は、非荷重状態において互いに対して180°ではない角度で傾けられる。これらの角度のずれの程度は、例えば副レールの長さ、2本の支持ケーブル間の距離、ケーブルの垂下、搬器の重量および搬器中の人数などといった多くの要因に依存する。実際には、通常、隣接する副レールまたはそれらの走行面がジョイントの領域において互いに対して傾けられる角度は、175°〜179°、好ましくは176°〜178°である。しかし、場合によってはこの角度がより大きいか、または小さくてもよいことは当然である。
【0010】
搬器がジョイント上を移動する時に副レールが下降するのを可能にするために、またはこれを許すために、本発明の場合、2本の副レールの間でジョイントにくさび形の隙間が配置されると好ましい。
【0011】
2本の副レールはジョイント軸によって互いに接続可能である。ジョイント軸は、副レールの頂部領域においてそれらのほぼ中間に、または副レールの下部領域に配置することができる。
【0012】
本発明の文脈内では、基本的に、例えばジョイント軸は頂部領域に配置されることができ、隙間はジョイントの荷重状態においてジョイント軸の下方に配置されることができる。従って、ジョイントの非荷重状態ではいかなる隙間も存在せず、または小さな隙間だけが存在する。搬器がジョイントの上を移動する際に副レールがジョイントの領域において下降した時には、隙間が生じるかまたは増大する。
【0013】
しかし本発明の文脈内では、ジョイント軸が副レールのほぼ中間に配置されること、そしてさらに、くさび形の隙間がジョイントの非荷重状態においてジョイント軸の上方に配置されることが好ましい。この隙間は、搬器がジョイントの上を移動する時に、部分的にまたは完全に閉じる。
【0014】
本発明の場合、ジョイントの部分において、副レールの端面に減衰要素が配置されるとさらに好ましい。副レールのほぼ中間にジョイント軸が配置され、くさび形の隙間がジョイントの非荷重状態でジョイント軸の上方に配置される場合、減衰要素はジョイント軸の上方に好適に配置される。減衰要素は、それが副レールの旋回運動を絶えず減衰するように、または好ましくは、それが下降運動の終わりにのみ、すなわち隙間が完全に閉じられるかまたは副レールが互いにぶつかり合う直前に副レールの運動を減衰するように、配置されることができる。
【0015】
本発明の文脈内では、ジョイントの部分において、リンクを介してレールシューによりケーブルから副レールを吊下することが可能である。この文脈において、ジョイントの部分では、ジョイントで互いに接続された2本の副レールがそれぞれのリンクを介して共通のレールシューから吊下されると好ましい。この実施形態は、直接的で静力学的に信頼できる設備により有利である。
【0016】
本発明の応用において、レールシューがリンクについて2以上の選択可能な軸受位置を有することもまた規定してよい。この実施形態は、このようにしてリンクが種々の角度をとることができると、ジョイントにより互いに接続された副レールとレールシューとの間での力の伝達に、様々な荷重比を設定することができるという点でさらに有利となる。
【0017】
本発明のさらなる特徴および利益は、図面を参照し、本発明の好ましい例示的実施形態の以下の説明から推察することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明による設備の一部を示す。
【図2】図1の設備の一部拡大詳細図を示す。
【図3】非荷重状態における2本の副レールを接続するジョイントを示す。
【図4】荷重状態における図3のジョイントを示す。
【図5】減衰要素を備えたジョイントの部分を倍尺で示す。
【図6】非荷重状態における図5のジョイントを断面で示す。
【図7】荷重状態における図5のジョイントを断面で示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、山側駅から谷側駅に個人を運び降ろすための、走行レール1が懸垂手段3を介して支持ケーブル2から吊下された設備の一部を図示している。設備は、一般に従来技術、例えば特許文献1から知られるように構成することができる。これは、支柱、地形の固定点等の間に支持ケーブル2が張設されることを意味する。単一の支持ケーブル2を使用することができ、または移動方向に次々に配置される複数の支持ケーブル2を使用することができる。走行レール1に沿って、搬器(図示せず)が移動する。搬器は、車両、椅子、ゴンドラ等の形態とすることができ、その中を個人または乗客が着座するか横になるかまたは立って山側駅から谷側駅まで、好ましくは重力によって駆動されて運び降ろされる。山側駅、谷側駅、支柱等、さらに搬器の構成は本発明と特に関係がないので、これらを図面に図示しないのに加え、以下の説明においてもこれ以上詳細に説明しない。
【0020】
走行レール1は、ジョイント5で互いに接続された副レール4を含む。図2において最もよくわかるように、副レール4はそれぞれの中央部分においてはある程度下降しており、ジョイント部分においては中央部分に対して上昇するように湾曲している。上昇の程度は、図2においてXによって示されている。搬器が副レール4を移動してちょうど中央部分の位置にきたとき、搬器の重量は、副レール4の始端および終端にある2つの懸垂手段3によって支持ケーブル2にほぼ等しく分配される。しかし、搬器がジョイント5の部分に位置する場合、その重量は単一の懸垂手段3のみによって支持ケーブル2に伝えられる。この場合、ジョイント5で互いに接続された2本の副レール4の端は、搬器が副レール4の中心領域にある上述した場合よりも低い水準に下がる。
【0021】
副レール4が曲がっていることにより、2本の隣接する副レール4は、180°未満の角度α(図示された例示的実施形態では177°)でジョイント5において互いにぶつかり合う。例えば支持ケーブル2の荷重支持能力および/または弾性、2つの支柱間の距離および搬器の重量等の所与の静的および動的境界条件がある場合、搬器がジョイント5の上を移動する際に、この角度αが180°となるように選択される。後続の副レール4はその際、先行の副レール4と正確に整列するので、搬器はいかなる揺動も伴わずジョイント5上を移動できるようになる。移動速度が相対的に高い場合には、これによって乗客の快適さがかなり増大することに加え、副レール4への、そしてジョイント5および搬器への摩耗が低減する。
【0022】
図示された例示的実施形態において、副レール4は全長にわたって連続的に湾曲している。しかしながら、湾曲は不連続であってもよいものであり、つまり曲率半径は中央部分においてより大きく、副レール4の端の方向に連続的または不連続に減少するものである。同様に、副レール4は中央部分においては直線であって端の方向において湾曲するのでもよい。今述べたような湾曲は、本発明により副レール4を上げる湾曲である。このように上げることにより、搬器がジョイント上を移動する際に生じる下降を補償する。これとは別に、走行レール1の経路に沿って湾曲が生じるように、副レール4が付加的に湾曲していてもよいのは当然である。
【0023】
図3は、非荷重状態におけるジョイントの位置を拡大して示す。ここでは2本の副レール4がジョイント5において互いに接続されており、懸垂手段3によって支持ケーブル2から吊下されている。図5において拡大して断面で示したジョイント5は、ジョイント軸7を画定する中空ボルト6を有する。中空ボルト6は、副レール4に各々接続された2個のジョイント部品8および9を接続する。中空ボルト6は、固定ボルト10を用いて変位に対抗し、そして回転防止手段11を用いて回転に対抗して固定されている。ジョイント部品8および9は、副レール4を形成する管を閉鎖する円形円筒形エンドキャップ12、13に収められる。これらの管は図示された例示的実施形態において円形円筒形である。
【0024】
副レール4を形成する管の外周は、搬器(図面には図示せず)のための走行面を形成し、搬器は走行ローラーによって走行面に沿って進む。エンドキャップ12、13の外径は、副レール4を形成する管の外径に等しい。これにより搬器は、いかなる揺動も伴わずにジョイント5上を移動することができる。
【0025】
2個のジョイント部品8、9は、それらの頂部側に拡張部14、15を有しており、これらにはリンク16、17が軸受18、19において旋回可能な様態で取り付けられている。反対端では、リンク16、17はジョイントピン20、21によってレールシュー22に取り付けられている。図示された例示的実施形態において、レールシュー22は、各リンク16、17について、それぞれ3個の穴23a、23b、23cおよび24a、24b、24cを有しており、これらにジョイントピン20、21を任意に挿入することができる。穴を適切に選択することによりリンク16、17が配向する角度を変えることができ、その結果、力の散逸をそれぞれの条件に良好に適応させることができる。
【0026】
図3および図6において最もよくわかるように、2個のジョイント部品8および9、ならびにそれらの拡張部14、15は、非荷重状態においてジョイント軸7の上方でくさび形の隙間25により互いに分離されている。この隙間25のくさび角度βは角度180°−αにほぼ等しい。この角度において、副レール4の両端の、またはそれらの走行面の配向が直線位置から逸れる。
【0027】
搬器がジョイント5の上を移動する際、この部分においてケーブル2の垂下が増加することにより副レール4の両端がジョイント5で下降する結果、くさび形の隙間25が閉じられる。ジョイントのこの位置は図4および7に例示されている。この位置において、ジョイント5によって接続される副レール4の端は互いに対して正確に整列しているため、搬器はいかなる揺動も伴わずジョイント5の上を移動することができる。
【0028】
搬器がジョイントの上を移動する際に、2個のジョイント部品8、9および/またはそれらの拡張部14、15が互いにぶつかり合うので、このぶつかりが減衰されると有利である。このため、本発明は減衰要素26を拡張部14、15に設ける。
【0029】
図示された例示的実施形態において、減衰要素26は、拡大頭部28を含むピン27を備える。ピンは、拡張部15の穴29に収容され、カップスプリング30によって穴29の底部で支持される。頭部28はわずかな程度だけ拡張部14、15の端面31、32を越えて突出しており、減衰要素26は従って拡張部14、15が互いにぶつかり合う直前に効果を発揮する。
【0030】
また、ジョイント部品8、9はジョイント軸7の下方で隙間35によって分離されており、隙間35によりジョイント5は上方方向に自由に動くことができる。これは、搬器が走行レール1に沿って降下する際、結果としてジョイント5に機械的荷重を受けさせることなく走行レール1全体が自由に上下に揺れ動くことができるため有利である。
【0031】
副レール4の管の上側および下側には追加のレール33、34が配置されており、これらの管は走行面を形成する。そして、追加のレールは、一方で副レール4の曲げ剛性を増大させ、他方で搬器の走行装置機構のガイドとして働いて搬器の動きを副レール4の縦軸に対して前後に制限するか、またはこの動きを完全に防止する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地面から所定の距離で支持レール(2)に締結された走行レール(1)を有する、山側駅から谷側駅に個人を運び降ろすための設備であって、
ジョイント(5)で互いに接続された多数の副レール(4)を含み、前記副レール(4)に沿って搬器が移動可能であり、
前記副レール(4)が、前記ジョイント(5)の部分において、前記副レールの中央部分に対して上昇していることを特徴とする、設備。
【請求項2】
前記副レール(4)が湾曲しており、その湾曲した輪郭により上昇を生じることを特徴とする、請求項1に記載の設備。
【請求項3】
隣接する前記副レール(4)が、前記ジョイント(5)の部分において、175°〜179°、好ましくは176°〜178°である角度(α)で互いに対して傾斜していることを特徴とする、請求項2に記載の設備。
【請求項4】
2本の前記副レール(4)の間で、前記ジョイント(5)に、好ましくはくさび形の隙間(25、35)が配置されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の設備。
【請求項5】
前記ジョイント(5)の非荷重状態において、くさび形の前記隙間(25)がジョイント軸(7)の上方に配置されることを特徴とする、請求項4に記載の設備。
【請求項6】
前記副レール(4)間の隙間(35)が、ジョイント軸(7)の下方に配置されることを特徴とする、請求項4に記載の設備。
【請求項7】
前記ジョイント軸(7)が、前記副レール(4)の中間に配置されることを特徴とする、請求項5または6に記載の設備。
【請求項8】
前記ジョイント(5)の荷重状態において、前記ジョイント軸(7)の下方に前記隙間が配置されることを特徴とする、請求項7に記載の設備。
【請求項9】
前記ジョイント(5)の領域において、前記副レール(4)の端面(31、32)に、減衰要素(26)が配置されることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載の設備。
【請求項10】
前記減衰要素(26)は前記ジョイント軸(7)の上方に配置されることを特徴とする、請求項5〜9のいずれか1項に記載の設備。
【請求項11】
前記ジョイント(5)の領域において、前記副レール(4)が、リンク(16、17)を介してレールシュー(22)により前記支持ケーブル(2)から吊下されることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか1項に記載の設備。
【請求項12】
前記ジョイント(5)の領域において、前記ジョイント(5)で互いに接続された2つの前記副レール(4)が、それぞれのリンク(16、17)を介して共通する前記レールシュー(22)から吊下されることを特徴とする、請求項11に記載の設備。
【請求項13】
前記レールシュー(22)が、前記リンク(16、17)について2つ以上の選択可能な軸受位置(23a、23b、23c;24a、24b、24c)を有することを特徴とする、請求項11または12に記載の設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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