説明

山岳地形などのペーパーモデルの形成方法

【課題】山岳地形などの複雑な形態をより細かくリアルに、またイメージ的にリアルに、再現するために、より細かな多面体で形成するか、形状をより細分化し積層するか、2方向の輪切りの形状を格子状に組み合わせる、などの手法がとられていました。しかし、これらの形成方法では、モデル化する実物に、立体的に鋭角的な形状があって、しかも微細で複雑な形状などを表現する事は困難であり相当な数量の材料と作業時間、工作力、費用が必要になり工作者が簡便に形成できるものはなかった。
【解決手段】国土地理院の数値地図のデータをコンピュータ処理して、モデル化する山岳の含まれる地域全体について、その縦断面のデータを一定間隔で切り出し、次に断面部品に印刷されている位置番号と台紙の位置番号が合うように、断面部品と台紙をそれぞれの糊しろを介して接着剤や、両面テープなどで接着し、これにより4mmという均一で密接した寸法で、形成工作する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この考案は、山岳地形や渓谷地形あるいは海の波涛などの3次元データを一定間隔で輪切りにし、その輪切りされた断面形状を均等に密接に並べることで立体を表現するペーパーモデル、あるいはペーパークラフトの形成方法に関するものであります。
【背景技術】
【0002】
従来、ペーパーモデル、あるいはペーパークラフト(以下、ペーパーモデルと呼ぶ)の形成方法は表現、再現したい立体物を多面体で構成できるように、その多面体が2次元の展開図に変換されたものが、紙、プラスチック板材、木材などの2次元の平面体に印刷、あるいは彫刻、型抜きなどが施されており、利用者はそれらを切り抜き、折り曲げ、接着、あるいは組み合わせて形成していました。
この様な形成方法の場合、車や建物などの立体物のペーパーモデルなどは比較的、容易に形成する事もでき、利用者も形成し易いものであるが、山岳地形、海の波涛など、より複雑で自由な曲面を持つ形状の場合、その形状をリアルに、あるいはイメージ的に、再現する為にはより細かな多面体で形成する必要があり、それらの展開図をおこす事は極めて困難であり、また、それらを人間の手によって工作するのも極めて困難なものとなります。
【0003】
地形の再現には、積層地図という建築、地形模型などに使われている伝統的な手法もあります。これは実際の地図上の等高線に沿って切り抜いた厚みのある紙を積み上げ張り合わせて作ります。これらのほとんどは、地形の高低起伏を表すことに用いられていて、リアルな地形表現とはなりません。もちろん、等高線の間隔をより細かくし積層の数を増やす事で、リアルな地形を表現する事はできますが、相当な数の紙、あるいは薄板が必要になる事や、北アルプス槍ヶ岳などの山頂が尖っていて、狭い地形を再現するには、更に細かな等高線の間隔にする必要が生じる為、現実的には工作が困難か、不可能となります。また、大変な作業時間が必要となります。
【0004】
動物、恐竜などの自由な形態を持つ生物などの表現には、2方向からそれぞれ一定間隔で輪切りした形状を厚みのある紙や木、ダンボールなどに印刷や型抜きをし、それらの輪切りされた形状を格子状に組み合わせて形成する手法があります。この形成方法はより自由な形態を持つ立体物なども再現する事は可能ですが、組み合わせる為に、紙、木、ダンボールなどの材料に厚みのあるものを使う必要がでてきます。その為、前述にもあるように山岳地形など複雑な形状や細かな部分を再現するには、相当な枚数の材料が必要になり、また厚みのある材料ですので商品として嵩をとる事や、費用もかかります。
【特許文献】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、前述した様に山岳地形などの複雑な形態をより細かくリアルに、またイメージ的にリアルに、好ましく、あるいは芸術的に、再現するためには、より細かな多面体で形成するか、形状をより細分化し積層するか、2方向の輪切りの形状を格子状に組み合わせる、などの手法がとられていました。しかし、これらの形成方法では、モデル化する実物に、立体的に鋭角的な形状があって、しかも微細で複雑な形状などを表現する事は困難であり、また、再現するには相当な数量の材料と作業時間、工作力、費用が必要になり工作者が簡便に形成できるものはありませんでした。
【0006】
本発明は、山岳地形。渓谷地形や、波涛などの複雑な形態の模型を、薄板、例えば紙、プラスチック板などを利用して、簡便に形成する方法と手段を提供します。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を達成するため、まず、原理的な、手順化した説明をします。ここでは山岳地形のモデル、模型を取り上げます。図1をご覧ください。まず国土地理院の数値地図のデータをコンピュータ処理して、モデル化する山岳(図1では、九州の、印象的で美しい山の、由布岳を例にとっています。)の含まれる地域全体について、その縦断面(地形から山頂のある高度までの垂直方向の断面)のデータを一定間隔で切り出します。
ここでは、縮尺2万5000分の1のデータとし、由布岳の山容がほぼ的確につかめる間隔として、切り出しの間隔を実際の距離を約100m、縮尺距離では約4mmとし、その断面を2次元のデータとしています。ここでは50個あまりの断面データとなります。
図2は切り出された一部の縦断面の図形を示しています。
【0008】
図3をご覧ください。50個あまりの断面図データを、例えば、ペーパーモデルとするために、断面図形1、糊しろ2、断面図の並び順を示す、位置番号3を、断面図形下部に追加して、材料(紙など)へ印刷します。この時に片面、あるいは両面から、その個々の断面付近の稜線部分とその下部に、絵の具や、プリンターを使用して、景観的な彩色するという工夫もできます。図3では彩色をしていない状態です。そして断面図形1と糊しろ2の線をハサミやカッターなどで切り取り、50個あまりの断面部品とします。手の工作の好きな人や、山登り愛好家は、言わば、由布岳の稜線をハサミで歩く、という感じになります。また手工でなく、レーザー加工機で切り出してしまう方法もとれます。この断面部品の糊しろ2を、図4のように、隣どうし、互い違いに直角に折ります。これら50個あまりの部品を折り終われば、断面部品の工作は完了です。
【0009】
次にA4サイズのやや厚みのある紙、台紙4には、断面部品の切り出し間隔と同じ、縮尺距離で約4mm間隔の平行線5と、各断部品の位置を合わせる、位置番号3が印刷されています。(図4)
【0010】
次に断面部品に印刷されている位置番号3と台紙5の位置番号3が合うように、断面部品と台紙をそれぞれの糊しろ2を介して接着剤や、両面テープなどで接着します。これにより4mmという均一で密接した寸法で、形成工作します。(図4)
【0011】
図5をご覧ください。上述の作業を繰り返して、由布岳のモデルは完成します。生地が原色の、白い紙あるいはそれに代わる薄板材料に彩色したければ、一枚一枚の断面稜線も間を折り広げて、絵の具などで、着彩することもできます。4個のモデルで、春夏秋冬それぞれの装いの由布岳ができます。また側板6を取り付けることで箱庭のようになります。
【0012】
また。この断面図形の彩色については、通常、このモデルを横から眺めることが多い と思われますから、断面図の稜線部分のある少ない幅で、山岳の森林や地表の色やテク スチャーを彩色すればことは足ります。しかしながら、この山岳の例では、表層以下の 地下部分も、地中、地層、地殻の探査の技術も、まだまだ未完成ですが、進んできてお ります。また、学術的には、想像上とは言え、あり程度の推論がなされています。それ らのデータで、通常の姿勢で眺めることができない、表層部分以下の推定された、また 学術的な、地下構造をも彩色すれば、この山岳モデルの地下構造まで表現することがで きます。通常の視点から見れば、その構造は見えないのですが、ある部分の1枚の断面 部品を、指などで曲げてみますと、その部分の地下構造まで、見ることができます。
【0013】
この手法は、上記までは、説明を理解しやすくする為に、山岳モデル、それも具体的な例として、九州の由布岳をモデルとして、その形成方法について述べてきましたが、もちろん地球上の、ヒマラヤやスイスアルプスなどの山岳や、渓谷のすべてを網羅できます。また、地球外の惑星、衛星などの地形、月面や、火星のオリンポス山やマリネリス渓谷などの再現も、火星探査機マリーナなどの探査で得られた数値データで、可能です。
【0014】
また、再現したいモデルが広大な地域でも、縮尺(上記例では2万5000分の1)を揃え、例えばA4サイズにおさまる区画で分割し、各区画を連結、もしくは並べることで再現することも可能です。例えば、日本の北アルプス連峰などの全貌が、在来手法より簡便で、短時間に、安価にモデル作成可能となります。(図6)
【0015】
この提案のような密接に、しかし、接することなく断面形状を並列するという手法は、山岳や渓谷だけでなく、樹木や植物、鳥獣など、複雑な形状のものにも適用の可能性があります。その場合は、決してリアルなモデルにはならないでしょうが、イメージ的な、シンボリックな、アート的なモデルとなります。また、生物、人体などでは、上記しましたように、内部構造まで、CTスキャンや、MRIの画像データなどを画像処理して、正確な、リアルな内部とするモデルも得ることができます。
【0016】
上記では、台紙4と、糊しろ2で構成しました。もっと簡便な方法もあります。一定間隔で紙のような薄板を挟める構造のもの、たとえば、コイルスプリングでコイルが密着巻きされているもの、あるいは、毛足が整列していて、毛足の長い、密集したブラシ部分を持つ長い柄のブラシ、毛足が整列した配置の、長い、面テープの片側に、単に、各断面図形を挟んでいくなどの方法です。図7はコイルスプリングで山岳模型を形成しつつあるところを示しています。
【0017】
また、保持具を、ある種のプラスチックやゴムのような可撓性の材料で成型したものにすれば、蛇の蛇行している様子の、可動モデルや、魚類の泳ぎの動きまで再現できます。
【0018】
また、上記までは、リアルさを追求するために、糊しろ2で、山岳断面部品の相互の間隔を正確に保つようにしましたが、実施例のような、山岳断面の製作などでも、断面間隔を自由に設定し、使用されないかもしれない、断面図形断面直角方向の寸法を自由に構成するような、断面部品の保持具、たとえば、上記のようなコイルスプリング、ブラシなどや、下記します、実施例においては、たとえば、正常の縮尺のさらに2分の1の溝を持った台板などを使用しますと、断面方向付近から眺めれば、正常な縮尺に見えるのですが、断面と直角方向付近から眺めると、山岳は縮んで見えます。そう、たとえば、富士山をそのようにしますと、かの幕末の天才画家、葛飾北斎の描く、誇張された、面白い形態の富士山ともなります。一種のアート的な組立もできるわけです。もちろん、この反対に、故意に山岳断面部品を、断面間隔縮尺のとおりでなく、断面間隔を拡大しても、たとえば、急峻な山岳形態が、ゆるやかになった、あるいは、悪く言えば、間延びした、面白いモデルも得ることができます。また、故意に断面部品の配置の順番を変えて、存在しない架空の山岳モデルも作ることもできます。つまり、形を、いろいろ変化させて、遊べますし、その工作作業を楽しめるのです。
【発明の効果】
【0019】
山岳、地形や波涛などの複雑な形態、または遠望的な形態を従来の手法を用いて、再現する場合は、不可能か、困難か、あるいは長時間の精密な作業を要しました。また近年では3次元NC工作機、三次元プリンターなどで忠実に立体を再現する事は可能となりましたが、それらを使用するにはコンピュータの習熟と高価な設備が必要となるため、一般の利用者が簡便に利用できるものではありませんが、本提案のモデル形成方法により、簡便で安価なものが提供できます。
【0020】
この提案でのモデルにおいて、実施例にあるものには、接着材を用いなければ、たやすく分解し、容積を減じて、収納保存が可能であり、また短時間で元のモデルに再現できます。
【0021】
ハイキングや登山の愛好家、旅行者たちは、今まではその山岳や渓谷、地形が全体としてどのような構造であるかは、地図や、平面的で視点が固定された鳥瞰図、またはCG画像でしか知ることができませんでした。この提案のモデル形成方法での山岳モデルや渓谷モデルは、現地に行く前や、行った後などに、現地の地理的構造を立体的にイメージしたり、触れたりすることができます。現地でのお土産などにすることで、思い出の物品ともなり、また地理の学習教材としても役立ちます。
【0022】
この手法での人体モデルを医療現場で使用し、個別の、重症の患者の治療方針の検討や、また、患者への、わかりやすい病状、治療の説明のときに、いわゆる、インフォームドコンセント資料のひとつの有効な手段ともできます。この場合は、迅速を期するために、CTスキャンやMRIのデータを画像処理して、患者にもわかりやすく彩色、図形化した体内断面データとし、コンピュータで印刷し、レーザー加工機で、カットし、さらには、自動組立の機器も開発製作し、ひとつのシステム機器として活用します。
【実施例】
【0023】
簡単な実施例のひとつを記述します。薄い木などの板材、あるいはプラスチックを加工して、図8のような、台板7を作ります。台板7には、断面部品の厚みに合わせて、断面部品を挿入できる浅溝8が設定されています。この台板7には、糊しろ2を設けない断面図形1を使用します。ここでの作業は、断面図形1を、台板7の浅溝8に差し込み、図9のような山岳モデルが完成します。断面図形1は差し込まれているだけですので断面図形1を抜いて分解し収納することが可能です。また収納をしなくてもよく、しっかりと固定して作りたい場合は台板7の浅溝8に接着剤を注入して断面図形1が固定されるよう組立てます。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】 山岳の輪切り(九州の由布岳のモデル)
【図2】 図1の切り出された一部の縦断面の図形
【図3】 図2の縦断面の図形に糊しろ、断面図の位置番号を付けた図
【図4】 組立図
【図5】 山岳モデルの完成図1
【図6】 広大な地域のモデルを区画し連結したモデル
【図7】 コイルスプリングを断面部品の保持に使用する例
【図8】 台板
【図9】 山岳モデルの完成図2
【符号の説明】
【0025】
1 断面図形
2 糊しろ
3 位置番号
4 平行線
5 台紙
6 側板
7 台板
8 浅溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)モデル化しようとする、実物の、山岳や渓谷、そのほかの地形、あるいは、生物 や天体などの測地データ、計測データをもとに、縮尺します。実物がごく小さい ものであれば、その実寸法を高倍率化します。これを、元データとします。
(2)また、実存しない想像上のもの(お化け、妖怪、この手法を利用したモダンアー ト彫刻など)は、たとえば、3次元モデル形成ソフトウエアでその形状を作成し ます。これを、元データとします。
(3)この元データを、一定、あるいは不定の間隔で、この手法で得ることのできるモ デルの使途にかなった、縦断面、あるいは、横断面図、斜め断面図のデータをつ くります。
(4)これらの断面図データは、この手法で得ることのできるモデルの使途にかなった 、断面図間隔で、多数個つくります。断面図の間隔は通常は一定同一ですが、モ デルの使途によっては、間隔が不規則になってもかまいません。
(5)この断面図データをもとに、たとえば、手を使った工作をするなら、プリンター などでその外形を、紙材、プラスチック、金属などの薄板に、印刷し、その外形 を、はさみ、カッターなどで、切り取り、多数の断面図形部品をつくります。
(6)コンピュータによる機械、たとえば、カッタープロッターやレーザーカッターで 、切断加工するのも、この段階での、能率的な方法です。量産向きです。
(7)(5)、(6)の段階で、多数個の断面図部品の混乱を防ぐために、断面図部品 の部品順番並び順の番号も印刷、あるいは刻印しておきます。
(8)その多数の断面部品を、番号順で、上記データにもとづいた、生成したいモデル 形状に適当な縮尺、拡大倍率寸法の、規則的な、密集した間隔で、その生成モデ ルに適した保持具で配列、保持、あるいは接着します。こうして、目的のモデル は完成します。
以上の手順を経て生成する薄板のモデルの生成手順と、生成されたモデル(たとえばペ ーパーモデルほか)。
【請求項2】
請求項1のモデルにおいて、彩色も可能で、断面図部品をカットする前に、絵の具や印刷で、断面部品の表裏に彩色できます。また、そのとき、実際の、山岳や渓谷、天体、生物など、内部構造のあるものについては、たとえば、山岳ではその表面での、土壌岩石テクスチャーや植生などを、適当な幅で、断面図部品の稜線曲線に沿って、描く、あるいは印刷しておき、それ以下は、その内部の地殻構造を、学術的に理解されている範囲の構造、あるいは、想像上、類推上の情報による構造で、描く、あるいは、印刷します。保持具で保持、配列された、多数の断面図部品を、指などで、傾けて、モデルの上方から眺めますと、その部分の内部構造も見ることができます。
そのように彩色された、請求項1の薄板モデル(たとえばペーパーモデルほか)。
【請求項3】
請求項1のモデルの、断面図部品の保持の方法について、
(1)このモデルの、断面図部品の保持部分において、糊しろを複数対も設けて、互い違 いに折って、断面図部品の台紙、台板となる保持具に直角になるように接着するこ と。
(2)断面図部品保持に使用する平板材料に断面図部品の位置を示す印刷などをされた線 (直線だけでなく、曲線も含みます。)や、断面図部品の位置と、断面図部品の保 持の機能のある溝と、断面図部品の順番に合わせた番号を印刷刻印した、台紙、あ るいは、台板、あるいはその代替となる、バネ、ブラシ状の保持具を用意すること 。
(3)断面図部品の保持具は、断面図部品の長さに合わせた保持具だけでなく、断面図部 品の一部を保持できるだけの最小長さを持たせた保持具を用意すること。
(4)断面図部品の保持位置は、断面図部品の外周部だけでなく、断面図部品の外周部で はない内部面に、円形ほかの、保持具に合わせた形状の孔を設けて、保持すること 。
(5)保持具は固い材料だけでなく、柔らかい、可撓性の材料や、材料特性の自発で、も とに形に戻らない材料を用いること。
以上の要件のひとつ、あるいは複数の要件を備えた、請求項1の薄板モデル(たとえば、ペーパーモデルほか)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−102954(P2011−102954A)
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−274947(P2009−274947)
【出願日】平成21年11月11日(2009.11.11)
【出願人】(509297369)株式会社冥王 (5)
【Fターム(参考)】