説明

嵌合装置及び同嵌合装置を備える排泄物収容装具

【課題】嵌合操作の容易性、排泄物の漏れ防止性、嵌合の外れ防止性等の特性が得られ、かつ、体動への追従性の向上、肌当たりによる違和感や接皮部材の損傷の抑制等を図った嵌合装置及び同嵌合装置を備える排泄物収容装具を提供する。
【解決手段】接皮部材1に固定した第1のフランジ10と、この第1のフランジ10と嵌合可能な第2のフランジ20とを備え、第1のフランジは、硬質樹脂からなるリング状突起11を有し、第2のフランジは、リング状突起に嵌合可能な硬質樹脂からなるリング状溝付き突起21を有し、第1のフランジ10は、リング状突起と接皮部材との間に、前記リング状突起に比較して軟質の樹脂材料からなる中間部材12を備え、この中間部材は、リング状突起の直下にリング状突起の支持部として形成された基部13と、この基部から接皮部材の表面に沿って伸延し、接皮部材表面に結合される結合部14とを有するものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体の表面に形成された開孔に装着し、生体内からの排泄物、排泄液、ガス等(以下排泄物と称する)の取り出しや、生体内へ液剤を導入するために用いる嵌合装置ならびに同嵌合装置を備える収容装具、特に、生体内からの排泄物を一時的に収容する排泄物収容装具に関する。
【背景技術】
【0002】
便、尿の失禁者、消化器系、泌尿器系器官の疾患のため外科的手術を行い腸管や尿管を体表まで導き体表面にストーマを造設した人、或いはその他の疾患で体表面にストーマやフィステルを造設した人は、それらの造設された開孔から排出される排泄物を処理するため、排泄物を一時的に貯留できる排泄物収容装具を開孔に装着する。この排泄物収容装具は一般に接皮部材として使用される面板と排泄物を受容するための袋体とから構成され、面板と袋体が一体となっている一品系装具および面板と袋体とが嵌合などの結合手段で結合される二品系装具がある。
【0003】
二品系装具としては、従来、嵌合操作の容易性、排泄物の漏れ防止性、嵌合の外れ防止性等の観点から、さまざまな形態、構造のものが出願されている(特許文献1〜5参照)。二品系装具の構成は、特許文献1〜4に開示されるように、各部材の呼称は異なるものの、下記のような構成を基本とする。即ち、生体の開孔の周辺に粘着固定し得るようにした接皮部材(面板)と、接皮部材の非接皮側に固定した円形リング状の第1のフランジと、第1のフランジと着脱可能な円形リング状の第2のフランジと、第2のフランジに結合された袋とから構成され、また、前記円形リング状の第1のフランジと第2のフランジは、それぞれ突起又は溝を有し、突起と溝とが相互に嵌合可能に構成される。この装具は、接皮部材の粘着性によって常時生体の開孔の周囲に固定され、第1と第2のフランジとを突起とそれに対応する溝により連結し、開孔から排出された排泄物を第2のフランジに取りつけた袋に収容し、排泄物が溜まった際には第2のフランジを第1のフランジから取り外して袋内の排泄物を除去し、洗浄して再使用するか新しいものと交換するようにしている。代表的な二品系装具の構成について、さらに、具体的に以下に述べる。
【0004】
特許文献2は、前記基本的な構成に対して、特に、嵌合の外れ防止性を重視して、嵌合部のロック機能を備えた構成、即ち、図10に示すような構成を備えた人工肛門具のカップリングを開示している。但し、特許文献2に開示された図とは部番を変更して示す。図10に示す人工肛門具のカップリングは、特許文献2の要約の記載を引用すれば、概略、下記のような構成を備える。即ち、「人工肛門具のカップリングは、第1カップリング部材10a(第1のフランジに相当)と第2カップリング部材30a(第2のフランジに相当)とを有している。両部材は、弾性を有する柔軟な分割型ロックリング20aによって互いに保持することができる。ロックリングの延長部には、例えば対称的に複数のタブすなわちロックブレード26aを設けている。ロックブレードは、ロックリングを回転させることにより、略径方向外側に移動させることができ、これにより、2つのカップリング部材が分離できるようになる。ロックブレードを移動させるためのロックリングの移動は、リングの垂直方向上方又は下方への移動であってもよいし、また、両水平方向へのリングの変形であってもよい。しかし、第2カップリング部材に対する回転運動であるのが好ましい。」
【0005】
なお、図10において、部番11a、12a、13aは、それぞれ第1カップリングリング部材の面、内壁、外壁を示し、26m、26n、32mは、それぞれロックブレードの湾曲面、面取り面、第2カップリングリング部材の湾曲面を示す。また、31aは径方向に延在するフランジ、32aは開口部33aの周囲の実質的に円筒形状の壁、34aは封止ストリップ、37aは面35a、36aによって区画された溝、16aおよび38aはそれぞれリムであり、前記各部材の詳細説明は省略する(詳細は、特許文献2参照)。
【0006】
次に、本願出願人により出願された特許文献3について述べる。特許文献3は、前記基本的な構成に対して、特に、漏れに対する信頼性と嵌合操作の容易性の向上を重視した構成、即ち、図11および図12(特許文献3の図1および図2)に示すような構成を備えた外科用吻合装置を開示している。但し、特許文献3に開示された図とは部番を変更して示す。以下に述べる本願発明の構成と関係が深い図11および図12の外科用吻合装置に関して、特許文献3の記載を引用して、詳細に述べる。
【0007】
図11のa)は第1のフランジを設置した接皮部材の正面図、b)は第2のフランジを設置した袋体の背面図、c)は図11aのC−C線に沿う断面図、d)は図11b)のD−D線に沿う断面図である。1bは接皮部材で例えば正方形状をなし中心部に開口2bを備え、接皮側には粘着層3bを備えている。4bは第1のフランジで、薄肉のリング状部分5bでもって接皮部材1bの非接皮側表面6b上に例えば溶着により固定され、接皮部材1bの表面に沿って外方に延びている。第1のフランジ4bの接皮部材1bと反対側には円形のリング状の突起7bが設けられ、このリング状の突起7bの外側即ちフランジ4bの外周縁にリング状のつば部8bが形成され、リング状のつば部8bは接皮部材1bとほぼ平行に外方へ延び、フランジ4bの最外周縁9bに達している。第1のフランジ4bは更にリング状のつば部8bの装着状態において上側にリング状のつば部8bを直線状に切り取って形成した切込み10bを備えている。リング状の突起7bの詳細は後述する。
【0008】
21bは第2のフランジで、一方の側即ち接皮部材側に円形のリング状の溝付き突起22b、他方の側に袋体23bを有し、リング状の溝付き突起22bの溝24b中に第1のフランジのリング状の突起7bを挿入することにより、突起7bと溝24bとが気密に結合されるようになっている。25bは第2のフランジ21bを持ち易くするために付加したつまみ片である。リング状の溝付き突起22bの詳細は後述する。
【0009】
図12は図11に示す外科用吻合装置の要部の拡大断面図で、a)は第2のフランジの要部、b)は第1のフランジの要部、c)は第1のフランジと第2のフランジとを結合した状態を示し、図11と同等部分には同符号を付してある。第1のフランジ4bのリング状の突起7bは、第1のリング状係合部11b、第2のリング状係合部12b、両リング状係合部11b、12b間に形成されたリング状スリット13bとを有する。第1のリング状係合部11bは末端部14bにリング状段付き係合部分15bを有し、スリット13bと対向する先端16bからリング状段付き係合部分15bに至るまでスリット13bに対し凹のリング状曲面17bでもって形成されている。第1のリング状係合部11bと対向する第2のリング状係合部12bはスリット13bと対向する先端から、スリット13bに対し第1の凸のリング状曲面18bと、次いでスリット13bに対し凹のリング状曲面19bと、次いでスリット13bに対し第2の凸のリング状曲面110bとを介して薄肉のリング状部分5bに連なるように形成されている。
【0010】
第2のフランジ21bのリング状の溝付き突起22bの内面は第1のフランジ4bのリング状の突起7bの外面に相応するように形成されている。溝24bは一方の壁面にリング状段付き係合部分26bを有し、溝24bの底面27bから段付き係合部分26bに至るまで溝24bに対し凹のリング状曲面28bでもって形成され、他方の壁面は、溝24bの底面27bから溝に対し凸の第1のリング状曲面29bと、次いで溝に対し凹のリング状曲面210bと、次いで溝に対し第2の凸のリング状曲面211bとを介して溝開口部212bに至るように形成されている。これらの各リング状曲面は第1のフランジの第2のリング状係合部12bの各リング状曲面18b、19b、110bとほぼ相応する形状を持っている。
【0011】
図12c)に示すように、第1のフランジのリング状の突起7bを第2のフランジのリング状の溝付き突起22bの溝24b内に挿入すると、第1のフランジの第1のリング状係合部11bのリング状段付き係合部分15bと第2のフランジの段付き係合部分26bとが係合し、一方、第1のフランジのリング状スリット13bが多少狭められ、第1のフランジの第2のリング状係合部12bの各リング状曲面18b、19b、110bが第2のフランジの各リング状曲面29b、210b、211bとそれぞれ嵌合し、この嵌合曲面が両フランジ間に気密結合を形成し、第1のフランジのリング状突起7bのリング状段付き係合部分15bと第2のフランジのリング状溝付き突起22bのリング状段付き係合部分26bとの係合作用によってリング状突起7bとリング状溝付き突起22bとは外れないように結合される。
【0012】
上記特許文献1ないし3に開示された装具は、いずれも、突起を受ける溝が樹脂成形により形成された一方のフランジと、突出したリブ(又は突起)を有する他方のフランジとの係合によって、接皮部材と袋体とを連結する構成を有する。上記のような装具の場合、第1および第2のフランジが硬質で柔軟性に乏しいことから、体動に追従し難く、特に、腰を曲げるなどの身体の屈曲時には、第1および第2のフランジが屈曲せず、仮に、屈曲した場合でも元の形状に復元しようとする反発力(剛性)が高いため、フランジの上端および下端が腹部の肌に当たり、違和感や痛みを生じ易く、とりわけストーマ造設が腸骨付近の時にこの傾向が顕著となるという問題があった。
【0013】
又、フランジと接皮部材との接触部分に圧力が加わる場合、局所的又は第1のフランジの形状に沿って、接皮部材にシワや溝、窪みが生じ、薄化することによって、部分的或いは全体的な粘着力の低下を招くことがあった。そして、この接皮部材の薄化した部分を伝って排泄物が漏れ易くなることや、この漏れに付随する耐久性低下による貼付期間の短縮は、装着者の不安感を増長させる原因となっている。又、第1のフランジと接皮部材との接触部分が圧迫される時には、接皮部材が変形し、接皮部材外縁の外側に粘着成分がはみ出し、衣類などと粘着して汚染する場合もあり、装着者の不快感の原因になっている。
【0014】
特許文献3に開示された前記図12の装具の場合には、薄肉のリング状部分5bが、硬質で柔軟性に乏しい材料ではあるものの、第1のフランジのリング状つば部8bと接皮部材1bの非接皮側表面6bとの間に空間を形成し、リング状つば部8bが接皮部材1bに直に接触しないようになっているので、特許文献1や2の装具に比較すると、上記問題は軽減されている。しかしながら、体動が激しい場合や、長期使用等の過酷な使用条件下においては、更なる改善が望まれる。
【0015】
体動への追随性を向上するために、単純に嵌合装置に使用する材料の全てを、柔軟性の高い成形樹脂により構成する方法が考えられる。しかしながら、この場合、柔軟性が向上する一方で、嵌合時にはリング状突起がリング状溝の開口部との接触で表面の変形や傾斜を生じ、容易な嵌合が出来ないなどの問題を生じる。さらに、溝を構成するフランジの壁が装着中の様々な外力によって外側に広がり易くなり、嵌合部分に間隙を生じて内容物の漏れの原因となることや、さらにはストーマ袋の脱落を生じることが問題となる。このように、第1のフランジと第2のフランジとから構成され、突起と溝との嵌合により連結する嵌合装置の柔軟化と確実な嵌合、漏れ防止はこれまで両立が困難な課題であった。
【0016】
なお、特許文献4には、嵌合材料のリング状突起に比較的硬質のプラスチック材料と、比較的軟質のプラスチック材料とで構成したカップリング要素が開示されている。図13は、特許文献4に図3として開示されたカップリング要素の断面図であり、部番を変更して示す。図13につき特許文献4の記載を引用して以下に述べる。
【0017】
第2カップリング部材12cは、図13に示したように、円筒壁26cと、バッグが取り付けられるフランジ28cとを備えている。円筒壁26cは、第1カップリング部材10cの円筒壁の内側にフィットするように、そのサイズが決められている。円筒壁26cの外表面は、係合に適した輪郭を有している。すなわち、該外表面にはリードインテーパ部30cが設けられており、該テーパ部30cの後方側には、ロックリング14cのロックタブ16cを受け入れる環状凹部32cが設けられている。
【0018】
第1カップリング部材10cの円筒壁(特許文献4の図1および2参照)は、図示しないスロットの下方側において、可撓性を有する環状のシールストリップ34cを備えている。このシールストリップ34cは、第2カップリング部材12cの円筒壁26cに対するシールを構成する。シールストリップ34cの機能は、漏れを防止すること、および許容差の僅かな変動を吸収することである。許容差の変動は、第1および第2のカップリング部材の製造工程において、または装着者への取付時において生じるものである。
【0019】
上記のように、特許文献4には、嵌合材料のリング状突起に比較的硬質のプラスチック材料と、比較的軟質のプラスチック材料とで構成したカップリング要素が開示されてはいるものの、この嵌合は硬質のプラスチック材料を嵌合装置の基部とし、軟質のプラスチック材料を嵌合のシール部材として機能させる構成であるので、前述のような装着者の不快感等の問題は解消されない。
【0020】
また、柔軟性の高い二品系装具を得るために、接皮部材の非接皮側又は袋体のそれぞれに粘着層および被粘着面を設け、互いに連結する粘着式の二品系装具が特許文献5に開示されている。しかしながら、この種の二品系装具は、結合操作時に袋体の剥がれや内容物の漏れのきっかけとなるシワや気泡を生じやすい問題や、粘着面が被粘着面以外の袋体の一部やその他の装着者の意図しない場所に誤って粘着してしまうなどの位置合わせの困難さの問題や、確実に貼付できたか否かの確認が困難であるなどの操作面での問題を依然として残している。さらに装着中には粘着界面への水分の侵入による粘着力の低下や、粘着面の屈曲でシワを生じて漏れや剥がれの要因となることも懸念される。
【0021】
【特許文献1】特開昭53−122288号公報
【特許文献2】特開平9−149912号公報
【特許文献3】特開2002−345872号公報
【特許文献4】特開平10−305056号公報
【特許文献5】特表平11−505754号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
この発明は、上記のような点に鑑みてなされたもので、本発明の課題は、第1のフランジと第2のフランジとを、突起と溝との嵌合により連結する嵌合装置において、嵌合操作が容易で、かつ収容した排泄物の漏れや、嵌合の外れが無く、さらに、体動への追従性が良好で肌当たりによる違和感が無く、また、フランジの変形(反り)時の接皮部材への押しつけに伴う接皮部材の変形や薄化によるシワや漏れの発生を抑止可能な嵌合装置及び同嵌合装置を備える排泄物収容装具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0023】
上述の課題を解決するため、本発明の嵌合装置においては、生体の開孔の周囲に粘着固定する接皮部材と、接皮部材の非接皮側に固定したリング状の第1のフランジと、この第1のフランジと嵌合可能なリング状の第2のフランジとを備え、前記接皮部材は生体の開孔に対応する開口を有し、前記第1のフランジ又は第2のフランジのいずれか一方は、硬質の樹脂材料(以下、単に硬質樹脂という。)からなるリング状突起を有し、他方は前記リング状突起に嵌合可能な硬質樹脂からなるリング状溝付き突起を有する嵌合装置において、前記第1のフランジは、前記リング状突起と接皮部材との間、もしくはリング状溝付き突起と接皮部材との間に、前記リング状突起又はリング状溝付き突起に比較して軟質の樹脂材料(以下、単に軟質樹脂という。)からなる中間部材を備え、この中間部材は、少なくとも、リング状突起又はリング状溝付き突起の直下にリング状突起又はリング状溝付き突起の支持部として形成された基部と、この基部から接皮部材の表面に沿って伸延し、接皮部材表面に結合される結合部とを有することを特徴とする(請求項1)。
【0024】
前記請求項1の構成によれば、リング状突起及びリング状溝付き突起からなる嵌合部に、中間部材に比較して硬質の樹脂材料を用い、一方、中間部材には、リング状突起及びリング状溝付き突起に比較して軟質な樹脂材料を用いることにより、嵌合操作の容易性、排泄物の漏れ防止性、嵌合の外れ防止性等の嵌合装置に必要な特性が得られ、その上、体動への追従性の向上、肌当たりによる違和感や接皮部材の損傷の抑制等を図ることができる。
【0025】
前記請求項1の発明の実施態様としては、下記請求項2ないし11の発明が好ましい。即ち、前記請求項1に記載の嵌合装置において、前記中間部材は、さらに、前記基部と結合部とを連結するリング状テーパー部を有するものとする(請求項2)。これにより、嵌合時に第1のフランジと接皮部材との間に指を挿入し嵌合部を指で挟むように嵌合することができるので、嵌合操作が容易になり、嵌合を確実に行うことが可能となる。また、第1のフランジと接皮部材との間に空間が形成されるため、第1のフランジの接皮部材への接触が少なくなり装着時の違和感や接皮部材の変形を一層抑えることができる。
また、前記請求項1または2に記載の嵌合装置において、前記中間部材は、さらに、前記基部の径方向外側に延びるリング状つば部を有するものとする(請求項3)。これにより、嵌合操作がさらに容易となる。
【0026】
さらに、前記請求項1ないし3のいずれか1項に記載の嵌合装置において、前記第1のフランジは、前記硬質樹脂からなるリング状突起又はリング状溝付き突起と、前記軟質樹脂からなる中間部材とを、樹脂成形により一体化してなるものとする(請求項4)。さらにまた、前記請求項4に記載の嵌合装置において、前記樹脂成形は、二色成形またはインサート成形による射出成形とする(請求項5)。上記により、中間部材の形状や設置位置を精度よく定めることができ、品質良好な製品が容易に製造可能となる。なお、生産コストを低減する観点からは、工程数の少ない二色成形がより好ましい。
【0027】
また、第1のフランジと第2のフランジとの嵌合部におけるシーリング機能や嵌合の外れ防止機能等を向上する観点から、下記請求項6または7の発明が好ましい。即ち、前記請求項1ないし5のいずれか1項に記載の嵌合装置において、前記第1のフランジと第2のフランジとの嵌合の際に、前記軟質樹脂からなるリング状突起の基部と、硬質樹脂からなるリング状溝付き突起との間に、押圧力が作用する(請求項6)。前記押圧力は、リング状突起の基部の径方向幅をリング状溝の先端部の径方向幅より大きくすることにより得られる。さらに、前記請求項6の発明とは異なるシール方式を用いた発明として、シール片を用いることができる。即ち、前記請求項1ないし5のいずれか1項に記載の嵌合装置において、前記第1のフランジと第2のフランジとの嵌合の際に、前記リング状突起に設けたシール片と、リング状溝付き突起との間に、押圧力が作用する(請求項7)。
【0028】
また、その他各部材の実施態様として、下記請求項8ないし11の発明が好ましい。即ち、前記請求項1ないし7のいずれか1項に記載の嵌合装置において、前記リング状突起又はリング状溝付き突起の硬質樹脂のデュロメーター硬さは90〜100とし、前記中間部材の軟質樹脂のデュロメーター硬さは30〜89とする(請求項8)。また、前記請求項1ないし8のいずれか1項に記載の嵌合装置において、前記中間部材における結合部の厚さは0.1mm〜3.0mmとする(請求項9)。さらに、前記請求項2に記載の嵌合装置において、前記リング状テーパー部の厚さは0.1mm〜3.0mmとする(請求項10)。さらにまた、前記請求項3に記載の嵌合装置において、前記リング状つば部の厚さは0.1mm〜3.0mmとする(請求項11)。詳細は後述する。
【0029】
また、本発明の前記課題は、下記請求項12の発明によっても達成できる。即ち、生体の開孔の周囲に粘着固定する接皮部材と、接皮部材の非接皮側に固定したリング状の第1のフランジと、この第1のフランジと嵌合可能なリング状の第2のフランジとを備え、前記接皮部材は生体の開孔に対応する開口を有し、前記第1のフランジ又は第2のフランジのいずれか一方は、デュロメーター硬さが90〜100の樹脂材料からなるリング状突起を有し、他方は前記リング状突起に嵌合可能なデュロメーター硬さが90〜100の樹脂材料からなるリング状溝付き突起を有し、前記第1のフランジは、前記リング状突起と接皮部材との間、もしくはリング状溝付き突起と接皮部材との間に、屈曲時反発力が0.01〜0.1Nからなる中間部材を備え、この中間部材は、少なくとも、リング状突起又はリング状溝付き突起の直下にリング状突起又はリング状溝付き突起の支持部として形成された基部と、この基部から接皮部材の表面に沿って伸延し、接皮部材表面に結合される結合部とを有する嵌合装置とする(請求項12)。詳細は後述する。
【0030】
さらに、前記請求項12の発明の実施態様としては、下記請求項13ないし15の発明が好ましい。即ち、前記請求項12に記載の嵌合装置において、前記中間部材は、さらに、前記基部と結合部とを連結する厚さ0.1mm〜3.0mmのリング状テーパー部を有するものとする(請求項13)。また、前記請求項12に記載の嵌合装置において、前記中間部材は、さらに、前記基部の径方向外側に延びる厚さ0.1mm〜3.0mmのリング状つば部を有するものとする(請求項14)。さらに、前記請求項12ないし14のいずれか1項に記載の嵌合装置において、前記中間部材における結合部の厚さは0.1mm〜3.0mmものとする(請求項15)。
【0031】
また、排泄物収容装具の発明としては、前記請求項1ないし15のいずれか1項に記載の嵌合装置を備え、かつ前記第2のフランジは、生体の開孔から排出される排泄物を収容するための袋体を備えるものとする(請求項16)。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、嵌合操作が容易で、かつ収容した排泄物の漏れや、嵌合の外れが無く、さらに、体動への追従性が良好で肌当たりによる違和感が無く、また、フランジの変形(反り)時の接皮部材への押しつけに伴う接皮部材の変形や薄化によるシワや漏れの発生を抑止可能な嵌合装置及び同嵌合装置を備える排泄物収容装具を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
図1〜7に基づき、本発明の実施形態について以下に述べる。
(第1の実施形態)
図1は、本発明の嵌合装置及び排泄物収容装具に係る第1の実施形態の構成図を示し、a)図は第1のフランジを設置した接皮部材の正面図、b)図は第2のフランジを設置した袋体の背面図、c)図はa)図およびb)図の、それぞれc-c線およびd-d線に沿う縦断面図である。図2は、図1の実施形態における嵌合部周辺部の拡大断面図を示し、a)図は嵌合前、b)図は嵌合後の状態を示す。
【0034】
図1および図2において、1は接皮部材、2は開口、3は粘着層、4は基材、5は接皮部材の表面、6は袋体、10は第1のフランジ、11はリング状突起、12は中間部材、13は基部、14は結合部、15はリング状テーパー部、16はリング状つば部、17はフランジの最外周縁、18は切込み、20は第2のフランジ、21はリング状溝付き突起、23は溝、24はつまみ片、30は嵌合部である。
図1の実施形態に係る嵌合装置及び排泄物収容装具は、前記図11および図12に示した構成と類似しているので、以下に述べる装置構成の説明においては、一部、その詳細説明を省略して述べる。
【0035】
図1および図2に示す嵌合装置は、生体の開孔の周囲に粘着固定する接皮部材1と、接皮部材1の非接皮側に固定したリング状の第1のフランジ10と、この第1のフランジ10と嵌合可能なリング状の第2のフランジ20とを備え、接皮部材1は生体の開孔に対応する開口2を有し、第1のフランジ10は、硬質樹脂材料からなるリング状突起11を有し、第2のフランジ20は、前記リング状突起11に嵌合可能な硬質樹脂材料からなるリング状溝付き突起21を有する嵌合装置であって、前記第1のフランジ10は、リング状突起11と接皮部材1との間に、前記リング状突起11に比較して軟質の樹脂材料からなる中間部材12を備え、この中間部材12は、リング状突起11の直下に突起の支持部として形成された基部13と、この基部13から接皮部材1の表面に沿って伸延し、接皮部材表面に結合される結合部14とを有する。
【0036】
また、前記中間部材12は、さらに、前記基部13と結合部14とを連結するリング状テーパー部15を有し、さらにまた、前記基部13の径方向外側に延びるリング状つば部16を有する。上記のような嵌合装置において、図2b)において嵌合部30で示すように、第1のフランジ10と第2のフランジ20とが嵌合することにより、両フランジが気密に結合される。この気密は、前記軟質樹脂材料からなるリング状突起の基部13と、硬質樹脂材料からなるリング状溝付き突起21との間に、押圧力が作用することにより、確保される。上記実施形態の構成によれば、嵌合操作の容易性、排泄物の漏れ防止性、嵌合の外れ防止性等の嵌合装置に必要な要件を備え、さらに、体動への追従性が向上し、肌当たりによる違和感や接皮部材の損傷等が抑制可能な嵌合装置及び排泄物収容装具が提供できる。
【0037】
ところで、図2に示す第1のフランジは、硬質樹脂材料からなるリング状突起11と、軟質樹脂材料からなる中間部材12とが、例えば、二色成形またはインサート成形による射出成形により一体化して樹脂成形される。これにより、製作が容易となり、寸法精度の向上に伴う品質向上が図れる。
【0038】
次に、各部材の好適な構成材料とその特性ならびに部材寸法等について述べる。まず、接皮部材1、袋体6を構成する素材には、従来と同様のものを使用することができる。接皮部材の基材4には、不織布、編布、織布等の布帛、フィルム、発泡シート等が使用できる。基材4として使用する布帛の材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド;アクリル;ポリビニルアルコール;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン;等をあげることができる。これらの材料は、単一で使用してもよく、二種類以上を混合して使用してもよい。
【0039】
基材4として使用するフィルムの材料としては、例えば、ポリウレタン;ポリエチレン、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA) 、エチレン・エチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレン・メチルアクリレート共重合体(EMA)、エチレン・メチルメタアクリレート共重合体(EMMA)、エチレン・メタクリル酸重合体(EMAA) 、エチレン・アクリル酸共重合体(EAA)等のオレフィン系共重合体;ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル;ポリビニルアルコール;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン;ポリアクリルニトリル;シリコーン;等をあげることができる。これらの材料は、単一で使用してもよく、二種類以上を混合して使用してもよい。基材4として使用する発泡シートの材料としては、ポリウレタン、ポリオレフィン、アクリル、クロロプレンゴム、シリコーン等をあげることができる。
【0040】
接皮部材の粘着層3には水を吸着又は吸収する親水性物質を含有させた公知のハイドロコロイド粘着剤を使用することができる。また、袋体6は、2枚のフィルムの外周縁を溶着等により一体化することで形成することができ、その材料としては、前記接皮部材の基材に使用できるフィルム材料と同様のものを選択することができる。袋体のフィルム材料としては、特にポリオレフィンまたはそれらの塩素化物、オレフィン系共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンを材料とするものが好ましく、フィルムは単層で使用しても、複数枚を積層させた複合フィルムを使用しても良い。
【0041】
第1のフランジ10と第2のフランジ20において、そのリング状突起11またはリング状溝付き突起21、および中間部材12を構成する材料としては、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン・エチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレン・メチルアクリレート共重合体(EMA)、エチレン・メチルメタアクリレート共重合体(EMMA)、エチレン・メタクリル酸重合体(EMAA)、エチレン・アクリル酸共重合体(EAA)等のオレフィン系共重合体; ポリエチレン、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン; ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等、塩素化ポリエチレン等などを用いることが好ましく、これらの材料は単一または二種類以上を混合して使用することができる。特に、酢酸ビニル基の含有量により硬さを容易に調整できるエチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)が好ましく、リング状突起11またはリング状溝付き突起21には、酢酸ビニルの含量が1〜20重量%の樹脂、中間部材には、酢酸ビニルの含量が25〜50重量%の樹脂を使用することが好ましい。
また、リング状突起又はリング状溝付き突起と中間部材とは、射出成形、押出し成形、真空成形、ブロー成形等の樹脂成形により一体化することができ、特に二色成形、インサート成形等の射出成形により一体化することが好ましい。
【0042】
リング状突起11またはリング状溝付き突起21は、JIS K7215に記載のタイプAのデュロメーターを使用して測定したデュロメーター硬さが90〜100の範囲が好ましく、この範囲であれば、確実な気密結合が実現され、排泄物の漏れや嵌合の外れが防止される。また、中間部材は、前記タイプAのデュロメーターを使用して測定したデュロメーター硬さが30〜89とすることが好ましく、特に65〜85の範囲が好ましい。中間部材の硬さが30〜89であることで、その柔らかさのため、第1のフランジの体動への追従性が良好になり、接皮部材の変形や薄化の発生を抑止することができ、さらに中間部材にリング状テーパー部を設けた場合、そのテーパー形状を保持できる程度の硬さなので、第1のフランジと接皮部材との間に空間が形成され、嵌合操作が容易になり、第1のフランジの接皮部材への接触が少なくなり装着時の違和感や接皮部材の変形をさらに抑えることができる。硬さ測定に使用するタイプAのデュロメーターとしては、ゴム硬度計A型(高分子計器株式会社製)が使用できる。
【0043】
中間部材における結合部の厚さは0.1mm〜3.0mmとすることが好ましく、0.1mmより小さいと結合部が破損したり、接皮部材との十分な結合強度が得られない恐れがあり、3.0mmより大きいと装着時の違和感や接皮部材の変形が生じたり、接皮部材への溶着が困難になる恐れがある。また、中間部材に、リング状テーパー部、またはリング状つば部を設ける場合、これらの厚さは0.1mm〜3.0mmとすることが好ましく、0.1mmより小さいとテーパー形状、つば形状を維持することが難しく、3.0mmより大きいと装着時に違和感が生じ、嵌合時に第1のフランジと接皮部材との間に指を挿入しづらくなる。
第1のフランジと接皮部材との結合は、第1のフランジ側から中間部材の結合部を熱溶着する方法、接皮部材の基材と結合部とを高周波ウェルダー又は超音波ウェルダーによって溶着し、ついでその基材を接皮部材に貼着する方法、接着剤による方法などが挙げられる。第2のフランジと袋体との結合には熱溶着、高周波溶着、超音波溶着、接着剤による接着などを用いることができる。なお、第2のフランジには袋体の代わりに用途に応じてキャップや栓などを設けてもよい。
【0044】
(第2の実施形態)
図3は第2の実施形態に関わる嵌合部周辺部の拡大断面図を示し、a)図は嵌合前、b)図は嵌合後の状態を示す。図3において、図2における各部材と同一機能を有する部材には同一番号を付して示す。図3の実施形態が図2と異なる主な点は、中間部材12の構成と、嵌合部30におけるシール構成とが異なる点である。図3におけるシール構成は、前記請求項7の発明に関わり、第1のフランジ10と第2のフランジ20との嵌合の際に、リング状突起11に設けたシール片110と、リング状溝付き突起21との間に、押圧力を作用させてシールする構成としたものである。さらに、嵌合時の外れを防止するために、リング状突起11とリング状溝付き突起21のそれぞれの側面に、互いに係合可能な第1のリング状段付き係合部19と第2のリング状段付き係合部22を設けたものである。
【0045】
また、図3における中間部材12は、リング状突起11の直下に突起の支持部として形成された基部13から接皮部材の表面に沿って伸延し、接皮部材表面に結合される結合部14とを有する点では、図2における中間部材と同様であるが、図3の場合には、図2におけるリング状テーパー部15およびリング状つば部16を備えない。このような構成によっても、中間部材12を構成する前記基部13、結合部14ならびに基部・結合部間の部材が、体動への追従機能を果たし、また、フランジの変形(反り)に伴う接皮部材の変形や薄化によるシワや漏れの発生を抑止する機能を果たすことができる。
【0046】
(第3の実施形態)
図4は第3の実施形態に関わる嵌合部周辺部の拡大断面図を示し、a)図は嵌合前、b)図は嵌合後の状態を示す。図4において、図3における各部材と同一機能を有する部材には同一番号を付して、その詳細説明を省略する。図4の実施形態が図3と異なる点は、リング状突起11が、突き出し部120を備える点である。この突き出し部120は、リング状突起11が、中間部材12の基部13から抜けにくくするための結合強化部材として設ける。
【0047】
(第4の実施形態)
図5は第4の実施形態に関わる嵌合部周辺部の拡大断面図を示し、図5のa)図は図2a)の変形例、b)図は図3a)の変形例を示す。これらの変形例は、いずれも、リング状突起とリング状溝付き突起の配置を相互に入れ替えた変形例を示し、図5における第1のフランジ10は、硬質樹脂からなるリング状溝付き突起21を有し、第2のフランジ20は、硬質樹脂からなるリング状突起11を有する。
【0048】
(第5の実施形態)
図6は第5の実施形態に関わる嵌合部周辺部の拡大断面図を示す。図6の実施形態は、前記図12に本発明を適用した図2の実施形態の変形例である。図6において、図12の各部材と対応する部材には、部材番号のサフィックスを変更して示し、その詳細説明を省略する。図6の実施形態が図2と異なる点は、嵌合部であり、図2におけるリング状突起11、リング状溝付き突起21ならびに基部13が、図6の場合、それぞれ、11s、22sおよび7sに該当する。
【0049】
(第6の実施形態)
図7は請求項12の発明に関わる第6の実施形態の嵌合部周辺部の拡大断面図を示し、a)図は嵌合前、b)図は嵌合後の状態を示す。図7において、図2における各部材と同一機能を有する部材には同一番号を付して、その詳細説明を省略する。図7の実施形態が図2と異なる点は、中間部材12およびリング状突起11の樹脂材料を同一材料として、これらを一体成形したものとし、かつ中間部材12の主として基部13および結合部14を除く部材の厚さを、図2の場合に比較して小とすることにより、中間部材12の後述する屈曲時反発力を好適な値とした点である。上記構成により、図7における中間部材12の機能を、実質的に図2と同等の機能を有するものとすることができる。詳細は、実施例の項で述べる。
【実施例】
【0050】
次に、本発明の実施例とその評価結果等について、各種比較例と共に、以下に述べる。
【0051】
(実施例1)
エチレン・酢酸ビニル共重合体(商品名エバフレックス1407 三井デュポン株式会社社製)からなるリング状突起に、エチレン・酢酸ビニル共重合体( 商品名ウルトラセン710 東ソー株式会社製)からなる中間部材を2色成形により結合することにより、前記図2に示す形状の第1のフランジ10を成形した。上記において、中間部材の結合部14の厚さは0.3mm、リング状テーパー部15の厚さは0.5mm、リング状つば部16の厚さは1.0mmとした。また、エチレン・酢酸ビニル共重合体(商品名エバフレックス1207三井デュポン株式会社製)を射出成形することで、図2に示す形状のリング状溝付き突起21を有する第2のフランジ20を成形した。
【0052】
(実施例2)
リング状突起と中間部材とが同時に成形されるようにエチレン・酢酸ビニル共重合体(商品名エバフレックス1407 三井デュポン株式会社社製)を射出成形し、リング状突起と中間部材とを一体化した前記図7に示す形状の第1のフランジ10を成形した。上記において、中間部材の結合部14の厚さは0.3mm、リング状テーパー部15の厚さは0.5mm、リング状つば部16の厚さは0.5mmとした。また、エチレン・酢酸ビニル共重合体(商品名エバフレックス1207三井デュポン株式会社製)を射出成形することで、図7に示す形状のリング状溝付き突起21を有する第2のフランジ20を成形した。
【0053】
上記実施例1、2と後述する比較例1〜3を対象に、嵌合装置の柔軟性等に関して評価を行った。その結果を図8に示す。具体的には、図8は、各実施例および比較例に対して、各部材(リング状突起、中間部材、リング状溝付き突起)のデュロメーター硬さの測定結果と、中間部材の屈曲時反発力および嵌合装置の嵌合時の屈曲時反発力の測定結果を示す。デュロメーター硬さの測定に関しては前述のとおりであるので、図8の比較例1〜3の概要およびデュロメーター硬さ以外の測定項目の測定方法について、以下に述べる。なお、中間部材とは本発明の実施態様に係る呼称であるが、図8において、比較例1〜3の場合における中間部材とは、便宜上、実施例における中間部材の位置に相応して存在する比較例の部材を示すものとする。
【0054】
比較例1の嵌合装置は、図12に示した従来の嵌合構造に相当するもので、スリット付きのリング状突起形状とリング状溝付き突起形状とを有し、第1のフランジには、リング状テーパー部を有している。
比較例2および3の嵌合装置は、使用材料は異なるものの、本発明に係る図3に示した嵌合構造に類似するリング状突起形状とリング状溝付き突起形状とを有するもので、第1のフランジのリング状突起に該当する部分には、リング状段付き係合部とシール片とを有している。比較例2は、比較例3に比べ、シール片の断面形状の厚さが薄く形成されており、また比較例2と比較例3とは、図8に示すように樹脂の硬さが異なる。
【0055】
次に、中間部材及び嵌合時の屈曲時反発力の測定方法について、図9を参照して述べる。
まず、中間部材の屈曲時反発力は、中間部材から縦25mm×横2.5mmの試験片を採取し、図9(a)に示すように、試験片50の縦方向が垂直方向と平行になるように電子天秤52上に設置する。その後、試験片50の上から荷重をかけて5mm押し込み、図9(b)に示すように、試験片50が屈曲した時の電子天秤52の値を屈曲時反発力(N)とする。この荷重時に、試験片50が移動しないよう試験片の端部を適当なジグ55で固定してもよい。
なお、本発明においては、中間部材の屈曲時反発力は、0.01〜0.1Nが好ましく、0.02〜0.08Nがさらに好ましい。0.01N以下であると、中間部材に腰がなく、リング状テーパー部を設けて接皮部材と第1のフランジの間に指を入れて嵌合操作を行う場合に操作し難い。一方、0.1N以上であると、体動への追従性が悪くなり、肌当たりによる違和感や、接皮部材の変形が発生する可能性がある。
【0056】
次に、嵌合時の屈曲時反発力は、前記図9に示す試験片に代えて、2つのフランジを相互に嵌め合わせた嵌合装置を、嵌合装置の径方向が垂直方向と平行になるように電子天秤上に設置する。その後、嵌合装置の上から荷重をかけて、嵌合装置の直径の15%の長さだけ押し込み、嵌合装置が屈曲した時の電子天秤の値を嵌合時の屈曲時反発力(N)とする。この荷重時に、嵌合装置が移動しないよう嵌合装置の端部を適当なジグで固定してもよい。なお、本発明において、嵌合時の屈曲時反発力は、1〜9Nが好ましい。1N以下であると、嵌合装置の2つのリングの結合力が低下し嵌合装置が外れる可能性があり、9N以上であると、体動への追従性が悪くなり、肌当たりによる違和感が発生する可能性がある。
【0057】
次に、図8に示す評価結果について述べる。図8の結果から分かるように、本発明の実施例は、比較例に比べ中間部材及び嵌合時の屈曲時反発力が大幅に低い値を示し、著しい柔軟性の向上が認められた。なお、比較例3においては、全体的に硬さの低い軟質な樹脂材料を用いているので、嵌合時の屈曲時反発力は良好な結果を示しているが、接皮部材に直接設置される中間部材の屈曲時反発力が高いため、接皮部材の粘着層に窪みやシワを発生させる問題がある。また比較例3では、リング状突起の表面硬度が低いために、非常に嵌合し難いものであった。その理由は、リング状突起がリング状溝の開口部に接触した時に、リング状突起の表面に変形や傾斜が生じるためと考えられる。
【0058】
一方、嵌合部となるリング状突起とリング状溝付き突起とを硬質な樹脂で形成した本発明の実施例では、嵌合時にリング状突起の変形が少なく、嵌合操作が容易であった。また、嵌合装置の嵌合時の屈曲時反発力が小さく、体動への追随性がよく、さらに、これら本発明の実施例を実際に装着した場合、腰部屈曲時の腸骨周囲や腹部へのくい込みなどの肌当たりや違和感が少なく、装着感が極めて良好であった。又、接皮部材と第1のフランジの最外周縁との接触で生じる窪みやシワ、めくれもほとんどなく、接皮部材の粘着性を長時間維持することが可能となった。さらに柔軟性が向上したことで、第1のフランジのリング状つば部と接皮部材との間からリング状突起の下部に指を挿入しやすくなり、嵌合時の嵌め易さが格段に向上した。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の嵌合装置及び排泄物収容装具に係る第1の実施形態の構成図。
【図2】図1の実施形態における嵌合部周辺部の拡大断面図。
【図3】本発明の第2の実施形態に関わる嵌合部周辺部の拡大断面図。
【図4】本発明の第3の実施形態に関わる嵌合部周辺部の拡大断面図。
【図5】本発明の第4の実施形態に関わる嵌合部周辺部の拡大断面図。
【図6】本発明の第5の実施形態に関わる嵌合部周辺部の拡大断面図。
【図7】本発明の第6の実施形態に関わる嵌合部周辺部の拡大断面図。
【図8】本発明の嵌合装置の柔軟性等に関して評価を行った結果を示す図。
【図9】図8における屈曲時反発力の測定方法の説明図。
【図10】特許文献2に開示された人工肛門具のカップリングの構成を示す図。
【図11】特許文献3に開示された外科用吻合装置を示す図。
【図12】特許文献3に開示された外科用吻合装置の嵌合部周辺部の拡大断面図。
【図13】特許文献4に開示されたカップリング要素の断面図。
【符号の説明】
【0060】
1 接皮部材
2 開口
3 粘着層
4 基材
5 接皮部材の表面
6 袋体
7s、13 基部
10 第1のフランジ
11、11s リング状突起
12 中間部材
13s リング状スリット
14 結合部
15 リング状テーパー部
16 リング状つば部
17 フランジの最外周縁
18 切込み
19 第1のリング状段付き係合部
20 第2のフランジ
21、22s リング状溝付き突起
22 第2のリング状段付き係合部
23 溝
24 つまみ片
30 嵌合部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体の開孔の周囲に粘着固定する接皮部材と、接皮部材の非接皮側に固定したリング状の第1のフランジと、この第1のフランジと嵌合可能なリング状の第2のフランジとを備え、前記接皮部材は生体の開孔に対応する開口を有し、前記第1のフランジ又は第2のフランジのいずれか一方は、硬質の樹脂材料(以下、単に硬質樹脂という。)からなるリング状突起を有し、他方は前記リング状突起に嵌合可能な硬質樹脂からなるリング状溝付き突起を有する嵌合装置において、
前記第1のフランジは、前記リング状突起と接皮部材との間、もしくはリング状溝付き突起と接皮部材との間に、前記リング状突起又はリング状溝付き突起に比較して軟質の樹脂材料(以下、単に軟質樹脂という。)からなる中間部材を備え、この中間部材は、少なくとも、リング状突起又はリング状溝付き突起の直下にリング状突起又はリング状溝付き突起の支持部として形成された基部と、この基部から接皮部材の表面に沿って伸延し、接皮部材表面に結合される結合部とを有することを特徴とする嵌合装置。
【請求項2】
請求項1に記載の嵌合装置において、前記中間部材は、さらに、前記基部と結合部とを連結するリング状テーパー部を有することを特徴とする嵌合装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の嵌合装置において、前記中間部材は、さらに、前記基部の径方向外側に延びるリング状つば部を有することを特徴とする嵌合装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の嵌合装置において、前記第1のフランジは、前記硬質樹脂からなるリング状突起又はリング状溝付き突起と、前記軟質樹脂からなる中間部材とを、樹脂成形により一体化してなるものとすることを特徴とする嵌合装置。
【請求項5】
請求項4に記載の嵌合装置において、前記樹脂成形は、二色成形またはインサート成形による射出成形とすることを特徴とする嵌合装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項に記載の嵌合装置において、前記第1のフランジと第2のフランジとの嵌合の際に、前記軟質樹脂からなるリング状突起の基部と、硬質樹脂からなるリング状溝付き突起との間に、押圧力が作用することを特徴とする嵌合装置。
【請求項7】
請求項1ないし5のいずれか1項に記載の嵌合装置において、前記第1のフランジと第2のフランジとの嵌合の際に、前記リング状突起に設けたシール片と、リング状溝付き突起との間に、押圧力が作用することを特徴とする嵌合装置。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか1項に記載の嵌合装置において、前記リング状突起又はリング状溝付き突起の硬質樹脂のデュロメーター硬さは90〜100とし、前記中間部材の軟質樹脂材料のデュロメーター硬さは30〜89とすることを特徴とする嵌合装置。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれか1項に記載の嵌合装置において、前記中間部材における結合部の厚さは0.1mm〜3.0mmとすることを特徴とする嵌合装置。
【請求項10】
請求項2に記載の嵌合装置において、前記リング状テーパー部の厚さは0.1mm〜3.0mmとすることを特徴とする嵌合装置。
【請求項11】
請求項3に記載の嵌合装置において、前記リング状つば部の厚さは0.1mm〜3.0mmとすることを特徴とする嵌合装置。
【請求項12】
生体の開孔の周囲に粘着固定する接皮部材と、接皮部材の非接皮側に固定したリング状の第1のフランジと、この第1のフランジと嵌合可能なリング状の第2のフランジとを備え、前記接皮部材は生体の開孔に対応する開口を有し、前記第1のフランジ又は第2のフランジのいずれか一方は、デュロメーター硬さが90〜100の樹脂材料からなるリング状突起を有し、他方は前記リング状突起に嵌合可能なデュロメーター硬さが90〜100の樹脂材料からなるリング状溝付き突起を有し、前記第1のフランジは、前記リング状突起と接皮部材との間、もしくはリング状溝付き突起と接皮部材との間に、屈曲時反発力が0.01〜0.1Nからなる中間部材を備え、この中間部材は、少なくとも、リング状突起又はリング状溝付き突起の直下にリング状突起又はリング状溝付き突起の支持部として形成された基部と、この基部から接皮部材の表面に沿って伸延し、接皮部材表面に結合される結合部とを有することを特徴とする嵌合装置。
【請求項13】
請求項12に記載の嵌合装置において、前記中間部材は、さらに、前記基部と結合部とを連結する厚さ0.1mm〜3.0mmのリング状テーパー部を有することを特徴とする嵌合装置。
【請求項14】
請求項12に記載の嵌合装置において、前記中間部材は、さらに、前記基部の径方向外側に延びる厚さ0.1mm〜3.0mmのリング状つば部を有することを特徴とする嵌合装置。
【請求項15】
請求項12ないし14のいずれか1項に記載の嵌合装置において、前記中間部材における結合部の厚さは0.1mm〜3.0mmとすることを特徴とする嵌合装置。
【請求項16】
請求項1ないし15のいずれか1項に記載の嵌合装置を備え、かつ前記第2のフランジは、生体の開孔から排出される排泄物を収容するための袋体を備えることを特徴とする排泄物収容装具。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2006−141701(P2006−141701A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−335968(P2004−335968)
【出願日】平成16年11月19日(2004.11.19)
【出願人】(000151380)アルケア株式会社 (88)
【Fターム(参考)】