説明

工作機械および工作機械の工具交換方法

【課題】 工作機械の加工領域を狭めることなく、工具交換装置に切り屑が堆積するのを防止できる工作機械および工作機械の工具交換方法を提供する。
【解決手段】 工具マガジン30を保護するマガジンカバー60と、工具交換アーム39を保護するアームカバー70とが設けられているので、工具マガジン30および工具交換アーム39に切り屑が堆積するのを防止できる。また、マガジンカバー60およびアームカバー70には、開口部61,71が設けられ、それらを開閉するマガジンシャッター62およびアームシャッター72が設けられている。さらに、制御装置により、マガジンシャッター62およびアームシャッター72の開閉を制御する工具交換シャッター開閉処理が実行される。この処理を実行することで、加工領域を狭めることなく、マガジンカバー60およびアームカバー70を設けることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械および工作機械の工具交換方法に関し、詳細には、自動工具交換装置における切り屑の堆積を防止できる工作機械および工具交換方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、工作機械であるマシニングセンタは、ワークを加工する工作機械本体と、当該工作機械本体を囲繞するスプラッシュカバーとを主体として構成されている。そして、このマシニングセンタの工具交換は、工作機械本体に設けられた自動工具交換装置によっておこなわれている。この自動工具交換装置は、複数の工具を格納できる工具マガジンを備え、操作パネルの指示に基づいて、工具マガジンから所定の工具を割り出し、その割り出された工具を工具交換準備位置に移動して待機させる。そして、主軸の先端部に装着された工具と、工具マガジンの工具交換準備位置に待機する所定の工具との間で工具交換動作がおこなわれる。このような自動工具交換装置は、工具交換の動作方式によって主に2つに分けられる。例えば、工具を把持する把持部を両端部に備えた工具交換アームの旋回動作によって工具交換をおこなうアーム方式のものと、逆に工具交換アームを有さず、工具マガジンと主軸との間で工具を直接交換するアームレス方式のものとがある。
【0003】
前者の方式の一例として、工具マガジンと、主軸台に装着された主軸との間に配設され、主軸の軸線と平行な旋回軸を備えた工具交換アームとを備え、当該工具交換アームの旋回動作によって工具交換可能な工具交換装置および工具交換方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。また、後者の方式の一例としては、工具マガジンを覆うマガジンカバーを備え、該マガジンカバーの、工作機械本体の主軸に対向する位置に開口する開口部に開閉カバーを備えた自動工具交換装置が知られている(例えば、特許文献2参照)。特許文献2に記載の自動工具交換装置によれば、工具マガジンがマガジンカバーで覆われているので、工具マガジン内に切り屑が付着するのを防止できる。さらに、工具貯蔵マガジン内で工具が待機位置に移動したときは、マガジンカバーの開口部を遮蔽し、主軸との交換位置に工具が移動したときだけ、工具交換のために開口部を開口するので、マガジンカバー内の工具貯蔵マガジンに切り屑が付着するのを防止することができる。
【特許文献1】特開平11−58167号公報
【特許文献2】特開平7−112341号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の工具交換装置および工具交換方法では、工作機械本体から飛散するクーラントの飛沫や切り屑が、マシニングセンタの加工領域の近傍に配設された工具交換アームや工具マガジンなどに付着して故障するという問題点があった。さらに、この工作機械の工具貯蔵マガジンに、特許文献2に記載のようなマガジンカバーを設けても、工具交換アームに切り屑が付着するという問題点があった。また、特許文献2に記載の自動工具交換装置によれば、工具貯蔵マガジンを覆うマガジンカバー内の工具は、主軸の軸線方向と平行に立設して貯蔵されているので、その工具長を考慮してマガジンカバーを設定しなければならず、マガジンカバーが必然的に大きくなってしまうという問題点があった。これにより、スプラッシュカバー内の工作機械本体の加工領域が狭くなり、テーブルの移動範囲までも狭められ、マシニングセンタの機能性および操作性が悪くなるという問題点があった。
【0005】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、工作機械の加工領域を狭めることなく、工具交換装置に切り屑が堆積するのを防止できる工作機械および工作機械の工具交換方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に係る工作機械によれば、工作機械の基台となるベッドと、当該ベッド上に固定されたコラムと、当該コラムに設けられた主軸ヘッドと、当該主軸ヘッドに設けられ、先端部に工具が着脱可能に装着される主軸と、当該主軸の先端部に装着された工具を他の工具に交換する自動工具交換装置とを備えた工作機械において、前記自動工具交換装置は、複数の工具を格納するとともに、工具格納位置から所定の工具を工具交換準備位置に移動する工具マガジンと、当該工具マガジンの前記工具交換準備位置と、前記主軸の先端部との間に配設され、前記主軸の軸線と平行な回転軸線を中心に回転可能に設けられた軸部と、当該軸部の長手方向に直交する方向に延設されるとともに、両端部に工具を把持する一対の把持部が形成され、当該一対の把持部が、前記主軸に装着された一の工具と前記工具交換準備位置に位置する他の工具との間を旋回可能な工具交換アームとを備え、前記軸部および前記工具交換アームを囲繞して保護するアームカバーを備えている。
【0007】
また、請求項2に係る工作機械では、請求項1に記載の発明の構成に加え、前記工具マガジンを囲繞して保護するマガジンカバーを備えている。
【0008】
また、請求項3に係る工作機械では、請求項1又は2に記載の発明の構成に加え、前記アームカバーの下部に設けられ、前記工具交換アームの旋回領域近傍に形成された第1の開口部と、当該第1の開口部に開閉自在に設けられ、前記第1の開口部を開閉する第1の開閉部材と、前記マガジンカバーの下部に設けられ、前記工具交換準備位置の近傍に形成された第2の開口部と当該第2の開口部に開閉自在に設けられ、前記第2の開口部を開閉する第2の開閉部材とを備えている。
【0009】
また、請求項4に係る工作機械では、請求項3に記載の発明の構成に加え、前記第1の開口部の、前記第1の開閉部材が開く方向の端部には、前記第1の開閉部材の、前記第1の開口部側の上面に当接する第1のスクレーパが設けられ、前記第2の開口部の、前記第2の開閉部材が開く方向の端部には、前記第2の開閉部材の、前記第2の開口部側の上面に当接する第2のスクレーパが設けられている。
【0010】
また、請求項5に係る工作機械の工具交換方法では、請求項3又は4に記載の工作機械と、工具交換を指示する工具交換指示手段と、前記工具マガジン内の、前記工具格納位置と前記工具交換準備位置との間の工具の移動を検知する工具移動検知手段と、前記工具交換指示手段の指示および前記工具移動検知手段の検知結果に基づいて、前記第1の開閉部材および前記第2の開閉部材の開閉を制御する開閉部材開閉制御手段とを備えた工作機械の工具交換方法であって、前記工具マガジンに格納された工具が、前記工具格納位置から前記工具交換準備位置に移動する第1の工程と、前記工具交換アームの一対の前記把持部が、前記主軸に装着された工具と、前記工具交換準備位置に位置する工具とを把持する第2の工程と、前記旋回軸が旋回して、前記主軸に装着された工具と、前記工具交換準備位置に位置する工具とを交換する第3の工程と、前記工具交換準備位置に交換移動された工具を、前記工具格納位置に移動して前記工具マガジン内に格納する第4の工程とから構成され、前記開閉部材開閉制御手段は、前記工具交換指示手段の工具交換指示に基づいて、前記第1の開閉部材および前記第2の開閉部材をともに開放し、前記第4の工程において、前記工具マガジン内に交換移動された工具が、前記工具交換準備位置から前記工具格納位置への移動を開始したのを、前記工具移動検知手段が検知したとき、前記第1の開閉部材を閉塞し、前記工具マガジン内に交換移動された工具が、前記工具格納位置に移動したのを、前記工具移動検知手段が検知したとき、前記第2の開閉部材を閉塞することを特徴とする。
【0011】
なお、アームカバーと、マガジンカバーとが一体化されていてもよい。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る工作機械では、アームカバーにより、自動工具交換装置の軸部と工具交換アームとが囲繞されて保護されているので、主軸ヘッドに装着された工具から飛散する切り屑が軸部および工具交換アームに付着して堆積するのを防止できる。
【0013】
また、請求項2に係る工作機械では、請求項1に記載の発明の効果に加え、マガジンカバーにより、自動工具交換装置の工具マガジンが囲繞されて保護されているので、主軸ヘッドに装着された工具から飛散する切り屑が工具マガジン内に付着して堆積するのを防止できる。
【0014】
また、請求項3に係る工作機械では、請求項1又は2に記載の発明の効果に加え、工具交換アームは、第1の開口部の内側で旋回するので、把持部がアームカバーに衝突したりするのを防止できる。そして、工具交換アームが旋回しない非動作時には、第1の開閉部材によって、第1の開口部を閉塞できるので、第1の開口部を介して軸部および工具交換アームに切り屑が付着して堆積するのを防止できる。一方、工具マガジンにおいて、工具が工具格納位置から工具交換準備位置にまで移動され、工具交換アームにより工具交換がおこなわれる場合、第2の開口部の内側を介して工具交換をおこなうことができる。そして、工具交換準備位置への工具の移動がおこなわれない場合は、第2の開閉部材によって、第2の開口部を閉塞できるので、第2の開口部を介して工具マガジン内に切り屑が付着して堆積するのを防止できる。
【0015】
また、請求項4に係る工作機械では、請求項3に記載の発明の効果に加え、第1の開閉部材が開放される際に、第1のスクレーパにより、第1の開閉部材の上面に付着又は堆積する切り屑を拭うことができる。一方、第2の開閉部材が開放される際に、第2のスクレーパにより、第2の開閉部材の上面に付着又は堆積する切り屑を拭うことができる。これにより、アームカバー内およびマガジンカバー内に切り屑が落下して堆積するのを防止できる。
【0016】
また、請求項5に係る工作機械の工具交換準備方法では、工具交換指示手段により、工具交換を指示されたときだけ、開閉部材開閉制御手段が、第1の開閉部材および第2の開閉部材の何れも開放させる。これにより、工具交換以外のときは、アームカバーおよびマガジンカバーの第1の開口部および第2の開口部を、第1の開閉部材および第2の開閉部材によって閉塞するので、軸部、工具交換アームおよび工具マガジンに切り屑が付着して堆積するのを防止できる。また、マガジンカバーの第2の開口部を、工具交換のときだけ、第2の開閉部材によって開放するので、工具交換準備位置に移動したときの工具の長さ分を、第2の開口部の内側で除けることができる。これにより、マガジンカバーを、工具マガジンにできるだけ近接した状態で囲繞することができるので、工作機械における加工領域を狭めずに、工具マガジンを保護することができる。また、工具交換アームの旋回時のときだけ、アームカバーの第1の開口部を、第1の開閉部材によって開放するので、旋回する把持部を、第1の開口部の内側で除けることができる。これにより、アームカバーを、工具交換アームにできるだけ近接した状態で囲繞することができるので、工作機械における加工領域を狭めずに、軸部および工具交換アームを保護することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の一実施の形態であるマシニングセンタ1について、図面に基づいて説明する。図1は、本実施形態であるマシニングセンタ1の正面図であり、図2は、マシニングセンタ1の右側面から見た部分断面図であり、図3は、図2に示すA−A線矢視方向断面図であり、図4は、マシニングセンタ1を下方から見た部分断面斜視図であり、図5は、図4に示すマガジンカバー60とアームカバー70との近傍を示す部分拡大図(マガジンシャッター62、アームシャッター72開放状態)であり、図6は、図4に示すマガジンカバー60とアームカバー70との近傍を示す部分拡大図(マガジンシャッター62、アームシャッター72閉塞状態)であり、図7は、マシニングセンタ1の電気的構成を示すブロック図である。
【0018】
なお、本実施形態であるマシニングセンタ1は、加工領域を狭めることなく、工具マガジン30を保護するマガジンカバー60と、工具交換アーム39を保護するアームカバー70とを設けることができ、工具交換装置内に切り屑が付着するのを防止できるものである。
【0019】
はじめに、マシニングセンタ1について説明する。図1に示すマシニングセンタ1は、図示外のワーク(図示外)と工具24(図2参照)とを相対移動させて、ワークに所望の機械加工(例えば、「中ぐり」、「フライス削り」、「穴空け」、「切削」等)を施すことができる工作機械である。そして、マシニングセンタ1は、ワークを加工する機械本体と、当該機械本体の土台となるベッド2と、当該ベッド2の上部に設けられ、前記機械本体の周囲を囲繞して保護する略直方体状のボックス型のスプラッシュカバー3とを主体に構成されている。
【0020】
まず、ベッド2について説明する。図1乃至図4に示すように、このベッド2は、鉄製の土台であり、その下部の四隅には、脚部2aが各々設けられ、これら4本の脚部2aが工場などの床面に設置されることにより、マシニングセンタ1が所定場所に設置される。さらに、図3,図4に示すように、ベッド2の芯部は、軽量化および高強度化のため、いわゆる肉抜き成形(リブによる骨組構造)されている。
【0021】
次に、スプラッシュカバー3について説明する。図1,図2に示すように、このスプラッシュカバー3は、略直方体状のボックス型に形成され、その内側には機械本体により、ワーク加工がおこなわれる加工領域が設けられている。そして、図2,図4に示すように、スプラッシュカバー3の前面略中央には、正面視略長方形状の開口部6が設けられている。そして、作業者がこの開口部6を介することにより、スプラッシュカバー3の内側に配設されたテーブル26に対して、ワークの着脱がおこなわれる。さらに、図1に示すように、スプラッシュカバー3の前面には、開口部6を開閉するスライド式の開閉扉4,5が各々設けられている。そして、この開閉扉4,5の略中央には、ガラス窓部4a,5aが各々設けられ、開閉扉4の右側端部近傍には取っ手部4bが設けられ、開閉扉5の左側端部近傍には取っ手部5bが設けられている。よって、これら取っ手部4b,5bを互いに離れる方向に開くことにより、開口部6が開口される。
【0022】
また、図1,図4に示すように、スプラッシュカバー3の右側には、マシニングセンタ1の操作をおこなう正面視略長方形状の操作パネル10が設けられている。そして、この操作パネル10の内部には、図7に示す制御装置13が配設されている。図7に示すように、この制御装置13は、マイクロコンピュータからなるものであり、CPU13a,ROM13b,RAM13c,入力インタフェース15a,出力インタフェース15bを基本に構成されている。そして、図1,図4に示すように、操作パネル10の前面には、自動運転キーや、MIDI運転キー、手動運転キー、コード入力キー、始動キー等の各種キーを備えたキーボード16(図7参照)が設けられ、その上部には、設定画面又は実行動作を表示するためのCRT(ディスプレイ)45が設けられている。なお、図7に示すように、図1に示す操作パネル10のキーボード16は、制御装置13の入力インタフェース15aに接続され、CRT45は、制御装置13の出力インタフェース15bに接続されている。また、NCプログラムは、キーボード16の操作に基づいて、制御装置13に入力されている。なお、図1,図4に示すキーボード16が、「工具交換指示手段」に相当し、制御装置13が、「開閉部材開閉制御手段」に相当する。
【0023】
なお、図示しないが、図1,図3に示すスプラッシュカバー3の左右の各側壁部には、メンテナンス用の点検ハッチが着脱可能に各々設けられている。そして、上記構成からなるスプラッシュカバー3は、機械本体の周囲を囲繞して外部より保護するとともに、機械本体から排出される切り屑および切削液の飛沫等が外部へ飛散するのを遮断して、外部環境が汚染されるのを防止している。
【0024】
次に、機械本体について説明する。機械本体は、スプラッシュカバー3の内側に収容されている。図2,図3および図4に示すように、機械本体は、ベッド2の後部上面に固定され、略垂直上方に延設されたコラム19と、当該コラム19の上部前面側にZ軸方向(上下方向)に移動可能に設けられた主軸ヘッド22と、当該主軸ヘッド22の主軸23(図3参照)に装着された工具24を別の工具24に自動的に交換する工具交換装置(ATC)とを主体にして構成されている。
【0025】
ここで、機械本体における個々の装置の位置関係について詳細に説明する。図2に示すコラム19の上面には、サーボモータからなり、制御装置13(図7参照)に接続されたZモータ20(図7参照)が装着されている。さらに、Zモータ20には、このZモータ20の回転角を検出するエンコーダ20a(図7参照)が設けられており、当該エンコーダ20aは、入力インタフェース15a(図7参照)に接続されている。そして、エンコーダ20aからの信号が、入力インタフェース15aを介して、制御装置13に入力されることにより、制御装置13によるZモータ20の速度制御がおこなわれる。また、コラム19の前面には、上下方向に延設され、主軸ヘッド22を案内する一対のガイドレール(図示外)が上下方向に固定されている。そして、Zモータ20が、当該Zモータ20から下方に延設された送りねじ(図示外)を正逆方向へ選択的に回転駆動することにより、主軸ヘッド22が上下方向に移動するようになっている。
【0026】
また、主軸ヘッド22には、図2,図4に示すように、加工軸に相当する主軸23が回転可能に装着され、当該主軸23の先端部には、工具24(図2参照)が着脱可能に装着される。そして、この主軸23は、主軸モータ25(図7参照)により回転駆動されることにより、工具24が回転され、テーブル26上に固定されたワークを加工するようになっている。さらに、主軸モータ25には、この主軸モータ25の回転角を検出するエンコーダ25a(図7参照)が設けられており、当該エンコーダ25aは、入力インタフェース15a(図7参照)に接続されている。そして、エンコーダ25aからの信号が、入力インタフェース15aを介して、制御装置13に入力されることにより、制御装置13による主軸モータ25の速度制御がおこなわれる。なお、図7のZ軸原点センサ34は、主軸23の原点(主軸23の工具交換高さ位置)を検出するものであり、制御装置13は、Z軸原点センサ34からの検出信号に基づいて主軸23を原点に位置決め制御をおこなう。
【0027】
一方、図2,図4に示すように、主軸23の下方には、テーブル26が配設されている。このテーブル26は、ワークが着脱自在に固定され、サーボモータからなるXモータ47およびYモータ48(図7参照)により、X軸方向(左右方向)、Y軸方向(奥行き方向)へ移動制御されるものである。また、ベッド2の上側には、移動体27が設けられ、その移動体27の上側にテーブル26が配設されている。さらに、テーブル26は、その移動体27の上面に設けられたX軸ガイドレール(図示外)に案内され、Xモータ47によってX軸方向に案内される。一方、ベッド2の上部には一対のY軸ガイドレール(図示外)が設けられ、移動体27がYモータ48により、Y軸方向に案内されることにより、テーブル26が移動体27を介してY軸方向に案内される。さらに、Xモータ47には、Xモータ47の回転角を検出するエンコーダ47a(図7参照)が設けられており、Yモータ48には、Yモータ48の回転角を検出するエンコーダ48a(図7参照)が設けられており、これらエンコーダ47aおよびエンコーダ48aは、入力インタフェース15a(図7参照)に各々接続されている。そして、エンコーダ47aおよびエンコーダ48aからの各信号が、入力インタフェース15aを介して、制御装置13に各々入力されることにより、制御装置13によるXモータ47およびYモータ48の速度制御がおこなわれる。また、Y軸ガイドレールには、テーブル26を中央に挟み込むようにして、レール上に切り屑が堆積するのを防止するためのテレスコピックカバー28,28が各々設けられている。さらに、X軸ガイドレールにも、移動体27を挟み込むようにして、テレスコピックカバー29aと、保護カバー29bとが各々設けられている。
【0028】
次に、工具交換装置について説明する。この工具交換装置は、主軸23に装着された工具24を他の工具24と自動交換するものである。そして、工具交換装置は、図2,図4に示すように、工具24を複数格納した工具マガジン30と、主軸23に装着された工具24とを交換する工具交換アーム39(図4参照)とを主体にして構成されている。
【0029】
まず、工具マガジン30について説明する。図2に示すように、工具マガジン30は、コラム19に固定され、側面視略楕円型に形成されている。そして、工具マガジン30の内側には、正面視略楕円形状の工具通路30aが形成され、その工具通路30a内には、複数の工具ポット31が収納されている。さらに、これら各工具ポット31の内側には、工具24が着脱可能に格納されている。そして、図2に示す工具通路30a内に収納された各工具ポット31に格納された工具24の位置が、「工具格納位置」に相当する。
【0030】
また、図2,図5に示すように、工具マガジン30の下部前方側には、下方へ開口する工具交換部30bが設けられている。そして、複数の工具ポット31は、マガジンモータ42(図7参照)の駆動により、この工具通路30a内を移動する。さらに、マガジンモータ42には、このマガジンモータ42の回転角を検出するエンコーダ42a(図7参照)が設けられており、当該エンコーダ42aは、入力インタフェース15a(図7参照)に接続されている。そして、エンコーダ42aからの信号が、入力インタフェース15aを介して、制御装置13に入力されることにより、制御装置13によるマガジンモータ42の速度制御がおこなわれる。また、複数の工具ポット31には、該工具ポット31と一体的に移動するポット識別板33(図7参照)が設けられている。このポット識別板33には、工具ポット31ごとに異なるパターンの光透過部(図示外)が形成されており、各工具ポット31を個別に識別できるようになっている。
【0031】
さらに、工具マガジン30には、これら工具ポット31を個々に識別する識別センサ35(図7参照)が設けられている。そして、図7に示すように、この識別センサ35は、投光素子35aと、受光素子35bとから構成され、それらはポット識別板33を挟んで対向して配置されている。そして、制御装置13は、受光素子35bからの信号に基づいて、工具マガジン30の工具交換部30bに何れの工具ポット31が搬送されたかを検出する。そして、搬送されたことを検出すると、マガジンモータ42の駆動を停止させることにより、所定の工具24を工具交換部30bに位置決めする。
【0032】
さらに、図7に示すように、制御装置13のRAM13cには、各工具ポット31のポット番号と、これに配置されている工具24の工具番号とを対応させた工具番号・ポット番号データテーブルを記憶しており、制御装置13は、所定の工具24が指定されると、所定の工具24の工具番号に対応するポット番号の工具ポット31を検索し、検索した工具ポット31を上述の工具交換部30bに至らせるようになっている。また、制御装置13は、工具ポット31の工具24が交換されたときには、その工具24の工具番号について、RAM14bの上記工具番号・ポット番号データテーブルを書き替える(更新記憶する)ようにして工具24の所在が判別できるようにしている。さらに制御装置13は、工具番号・ポット番号データテーブルに、主軸23に装着されている工具24の工具番号も記憶しており、工具交換ごとにその工具番号も更新記憶するようになっている。
【0033】
また、工具マガジン30にはポット昇降機構(図示せず)が配設されている。このポット昇降機構は、エアシリンダ36(図7参照)を駆動源とするものである。そして、制御装置13は、エアシリンダ36を一方向へ動作するように駆動してポット下降機構を作動させるようになっている。この機構により、所定の工具ポット31が下方へ略90°回動し、所定の工具24が工具交換部30bを通して下方へ突出する。そして、この工具24の位置が、「工具交換準備位置」に相当する。また、制御装置13はエアシリンダ36を前記一方向とは反対の方向へ動作するように駆動することにより、所定の工具ポット31を上方へ回動復帰させるようになっている。なお、図7に示すポット下降センサ37aは、工具マガジン30の工具24が下降した(工具交換部30bから突出した)ことを検出するものであり、また、ポット上昇センサ37bは、工具ポット31が、ポット下降状態から上方へ回動されて上昇位置(元の工具格納位置)に復帰したことを検出するものである。なお、図7に示すポット下降センサ37a,ポット上昇センサ37bが、「工具移動検知手段」に相当する。
【0034】
そして、図2、図3および図4に示すように、工具マガジン30には、その周囲を取り囲んで保護するための略直方体状のボックス型のマガジンカバー60が設けられ、スプラッシュカバー3の内壁面に固定されている。このマガジンカバー60は鉄板により構成され、加工領域から飛散する切り屑や切削液が、工具マガジン30内に付着して堆積しないようにするためものである。さらに、図5に示すように、マガジンカバー60において、図2に示す工具マガジン30の工具交換部30bに対向する位置であって、工具交換アーム39側に向けて階段状に開口された開口部61が設けられている。そして、その開口部61には、スライドして開口部61を開閉する階段状のマガジンシャッター62(図3,図5および図6参照)が設けられている。そして、図2に示すように、工具マガジン30のポット下降機構により、所定の工具ポット31が下方へ回動し、所定の工具24が工具交換部30bを通して下方へ突出する場合、図6に示すマガジンシャッター62が開き、図4に示すように、開口部61が開口される。これにより、工具交換部30bから突出する工具24は、開口部61から下方に突出するようになっている。なお、マガジンシャッター62は、スプラッシュカバー3の前面側からコラム19側に向かって移動することにより開放され、その逆方向に移動することにより閉塞される。なお、図5に示す開口部61が、「第2の開口部」に相当し、マガジンシャッター62が、「第2の開閉部材」に相当する。
【0035】
さらに、図5に示すように、開口部61の周縁部のうち、コラム19(図4参照)側の下端部には、その下端部に沿って階段状に形成された樹脂製のスクレーパ69が下方にやや延出されて設けられている。そして、そのスクレーパ69の下方にやや延出された先端部が、マガジンシャッター62の上面に当接している。これにより、例えば、マガジンシャッター62が閉塞している間に、工具ポット31に格納された工具24に付着した切り屑が下方に落下して、マガジンシャッター62の上面に堆積した場合でも、マガジンシャッター62の開放時には、スクレーパ69の先端部が、マガジンシャッター62の上面を摺動するので、マガジンシャッター62の上面に堆積する切り屑を拭い去ることができる。
【0036】
また、このマガジンシャッター62の開閉機構は、マガジンシャッターシリンダ64(図7参照)を駆動源とするものである。そして、制御装置13は、マガジンシャッター62が正逆方向へ移動するように、マガジンシャッターシリンダ64を駆動して、マガジンシャッター62の開閉機構を作動させるようになっている。よって、この開閉機構により、マガジンシャッター62が開放または閉塞され、開口部61が開口または閉塞される。
【0037】
さらに、開口部61の近傍には、マガジンシャッター62が完全に開放されたことを検出するマガジンシャッター開センサ66(図7参照)と、マガジンシャッター62が完全に閉塞されたことを検出するマガジンシャッター閉センサ67(図7参照)とが設けられている。そして、図7に示すように、これらの検出信号は、制御装置13に出力されるようになっている。なお、このマガジンシャッター62の開閉動作は、後述するアームシャッター72の開閉動作とともにおこなわれ、工具交換装置の工具交換動作に連動しておこなわれる。
【0038】
次に、工具交換アーム39について説明する。図4,図5に示すように、工具交換アーム39は、コラム19に固定された工具交換装置(図示外)に装着され、回転可能および上下動可能に装着された円筒状のアーム旋回軸38の下端部に固定されている。そして、工具交換アーム39の両端部には、工具24を把持する把持部40,40が設けられている。そして、アーム旋回軸38は、運動伝達装置(図示せず)を介して工具交換モータ44(図7参照)に連結されている。この運動伝達装置は、工具交換モータ44の回転力をアーム旋回軸38に伝達するカム機構,工具交換モータ44の回転力を、アーム旋回軸38の内部に設けられた中軸(図示外)に伝達するカム機構,工具交換モータ44の回転力を上下方向への直線運動力に変換してアーム旋回軸38に伝達するクランク機構を有するものである。さらに、工具交換モータ44あるいはこれによって駆動される駆動軸が1回転する間に、把持部40,40の把持動作、工具交換アーム39の上下動作および旋回動作を制御するようになっている。また、工具交換モータ44には、この工具交換モータ44の回転角を検出するエンコーダ44a(図7参照)が設けられており、当該エンコーダ44aは、入力インタフェース15a(図7参照)に接続されている。そして、エンコーダ44aからの信号が、入力インタフェース15aを介して、制御装置13に入力されることにより、制御装置13による工具交換モータ44の速度制御がおこなわれる。なお、図5に示すアーム旋回軸38が、「軸部」に相当する。
【0039】
そして、図4,図5に示すように、工具交換アーム39およびアーム旋回軸38の下半分には、その周囲を取り囲んで保護するための略直方体状のボックス型のアームカバー70が設けられ、当該アームカバー70は、工具交換装置に固定されている。このアームカバー70は鉄板により構成され、加工領域から飛散する切り屑や、切削液が工具交換アーム39に付着して堆積しないようにするためのものである。さらに、図5に示すように、アームカバー70には、マガジンカバー60の開口部61とに対向する側面部と、主軸32とに対向する側面部と、その2つの両側面に挟まれた底面部とが開口された略コの字型の開口部71が設けられている。そして、その開口部71には、図6に示すように、スライドして開口部71を開閉する略コの字型のアームシャッター72が設けられている。そして、図5に示す工具交換アーム39の旋回動作により、把持部40,40が旋回する場合、アームシャッター72が開き、開口部71が開口される。これにより、把持部40,40は、開口部71の内側で旋回するため、アームカバー70に衝突しないようになっている。なお、アームシャッター72は、スプラッシュカバー3の前面側からコラム19側に向かって移動することにより開放され、その逆方向に移動することにより閉塞される。なお、図5に示す開口部71が、「第1の開口部」に相当し、アームシャッター72が、「第1の開閉部材」に相当する。
【0040】
さらに、図5に示すように、開口部71を囲む縁部のうち、コラム19(図4参照)側の下端部には、樹脂製のスクレーパ79が下方にやや延出して設けられている。そして、そのスクレーパ79の下方にやや延出された先端部が、アームシャッター72の上面に当接している。これにより、例えば、アームシャッター72の閉塞時に、工具交換アーム39に付着した切り屑が落下して、アームシャッター72の上面に堆積した場合でも、アームシャッター72の開放時に、スクレーパ79の先端部が、アームシャッター72の上面を摺動して、堆積する切り屑を拭うことができる。なお、図5に示すスクレーパ79が、「第1のスクレーパ」に相当する。
【0041】
また、このアームシャッター72の開閉機構は、アームシャッターシリンダ74(図7参照)を駆動源とするものである。そして、制御装置13は、アームシャッター72が正逆方向へ移動するように、アームシャッターシリンダ74を駆動して、アームシャッター72の開閉機構を作動させるようになっている。よって、この開閉機構により、アームシャッター72が開放または閉塞され、開口部71が開口または閉塞される。
【0042】
そして、開口部71の近傍には、アームシャッター72が完全に開放されたことを検出するアームシャッター開センサ76(図7参照)と、アームシャッター72が完全に閉塞されたことを検出するアームシャッター閉センサ77(図7参照)とが設けられている。そして、図7に示すように、これらの入力信号は、制御装置13に出力されるようになっている。なお、上述したように、このアームシャッター72の開閉動作は、マガジンシャッター62の開閉動作とともにおこなわれ、工具交換装置の工具交換動作に連動しておこなわれる。そして、その工具交換動作に連動しておこなわれるこれらシャッターの開閉動作が本発明の特徴となっている。その詳細については後述する。
【0043】
次に、上記構成からなる工具交換アーム39のアーム旋回による工具交換動作の基本動作について説明する。例えば、図5に示すように、工具交換アーム39が原点に上昇されている状態において、まず、工具交換アーム39が旋回し、工具マガジン30側の工具24と、主軸23に装着された工具24とを把持部40,40で把持される。次いで、工具交換アーム39が下降して、工具抜脱動作がおこなわれる。その後、工具交換アーム39が旋回して主軸23側の工具24と工具マガジン30側の工具24とが入れ替わる。このとき、工具交換アーム39は180度回転することになる。その後、工具交換アーム39が上昇し、工具交換アーム39に把持された工具は、工具マガジン30側の工具ポット31あるいは主軸23に装着される。そして、工具交換アーム39が所定角度旋回して、把持部40,40から工具が開放されて、工具交換アーム39のアーム旋回動作の1サイクルが終了する。
【0044】
なお、図7に示すアームセンサ46は、工具交換アーム39が原点に上昇した場合にオンされる近接センサ(例えばホール素子)からなるものであり、制御装置13は、アームセンサ46のオンに基づいて工具交換アーム39が原点に位置(復帰)していることを検出するようになっている。
【0045】
次に、上記構成からなる工具交換装置の工具交換の基本動作について説明する。まず、制御装置13によって、工具交換装置に工具交換動作の指示が出力されると、主軸ヘッド22と一体的に主軸23をZ軸原点センサ34が入力されるまで上昇させる。次いで、制御装置13は、図7に示す工具交換モータ44を作動させる。すると、工具交換アーム39によって、上記説明した工具交換動作がおこなわれる。こうして、工具交換装置による一連の工具交換動作がおこなわれる。なお、この工具交換装置による工具交換動作に併せて、本発明の特徴であるマガジンシャッター62およびアームシャッター72の開閉動作がおこなわれる。
【0046】
次に、制御装置13による工具交換シャッター開閉処理について説明する。図8は、制御装置13による工具交換シャッター開閉処理の流れを示すフローチャートであり、図9は、制御装置13による工具交換シャッター開閉処理のタイミングチャートである。なお、工具交換シャッター開閉処理による工具交換シャッター開閉動作は、上記説明した工具交換動作と、マガジンシャッター62およびアームシャッター72の開閉動作とが連動しておこなわれるものである。
【0047】
なお、操作パネル10のキーボード16により、工具交換用プログラムが選択されると、制御装置13は、工具交換シャッター開閉処理の前に、次に交換される工具24(工具マガジン30側の工具24)が収納された工具ポット31についての割出処理が実行される。この割出処理では、次に交換する工具24が収納された工具ポット31のポット番号を工具番号・ポット番号データテーブルから検索し、検索したポット番号の工具ポット31を工具交換部30bまで移動させる。この移動制御は、マガジンモータ42を駆動させることにより、各工具ポット31を移動させる。そして、該当するポット番号の工具ポット31が工具交換部30bに至ったことが識別センサ35により検出されたときにマガジンモータ42の駆動を停止させ、割出処理が終了する。そして、工具交換シャッター開閉処理が実行される。
【0048】
図8および図9に示すように、この工具交換シャッター開閉処理では、まず、t1タイミングで、マガジンシャッターシリンダ64およびアームシャッターシリンダ74をともに駆動させる(S1)。このとき、マガジンシャッターシリンダ64の駆動により、マガジンシャッター62の開放動作が開始され、アームシャッターシリンダ74の駆動により、アームシャッター72の開放動作が開始される。そして、マガジンシャッター閉センサ67は、マガジンシャッター62の開放動作が開始されると、出力信号をオンからオフに切り換え、制御装置13に出力する。一方、アームシャッター閉センサ77も、アームシャッター72の開放動作が開始されると、出力信号をオンからオフに切り換え、制御装置13に出力する。ここで、マガジンシャッター62の開閉移動速度は、アームシャッター72の開閉移動速度よりも速く設定されており、図示外のタイマにより、そららの開閉時間は常時監視されている。よって、アームシャッター72よりもマガジンシャッター62の方が速く開閉する。これは、工具マガジン30のポット下降動作を迅速におこなうためである。
【0049】
次に、t2タイミングで、マガジンシャッター開センサ66が、マガジンシャッター62が完全に開放されたことを検出すると、マガジンシャッターシリンダ64の駆動が停止され、マガジンシャッター62の開放動作が完了する(S2)。そして、エアシリンダ36を駆動させることにより、工具ポット31の下降動作が開始される(S3)。このとき、工具マガジン30のポット上昇センサ37bが、出力信号をオンからオフに切り換えて、制御装置13に出力するので、工具ポット31の下降動作が開始されたことが判断される。こうして、工具ポット31は、工具交換部30bより回動されて下降しはじめる。
【0050】
さらに、t3タイミングで、アームシャッター開センサ76が、アームシャッター72が完全に開放されたことを検出して、出力信号をオンからオフに切り換えると、アームシャッターシリンダ74の駆動が停止され、アームシャッター72の開放動作が完了する(S4)。
【0051】
次いで、t4タイミングで、ポット下降センサ37aが、工具ポット31が完全に下降したことを検出して、出力信号をオフからオンに切り換えると、エアシリンダ36の駆動が停止され、工具ポット31の下降動作が完了する(S5)。このとき、工具マガジン30の工具交換部30bから下降した工具ポット31の工具24は、マガジンカバー60の開口部61から下方に突出した状態となる。そして、t4タイミングで、ポット下降センサ37aが、工具ポット31が下方に完全に移動したことを検出すると、続いてアーム旋回・工具交換動作が実行される(S6)。
【0052】
S6のアーム旋回・工具交換動作では、工具交換モータ44が駆動して、把持部40,40の把持動作、工具交換アーム39の上下動作および旋回動作が上述したようにおこなわれる。そして、1サイクルの動作の終了がアームセンサ46により検出されると、工具交換モータ44の駆動が停止される。これにて、主軸23側の工具24と工具ポット31側の工具24とが同時に交換されることとなる。
【0053】
そして、S6のアーム旋回・工具交換動作が終了すると、ポット上昇動作と、アームシャッター72の閉塞動作が開始される。まず、t5タイミングで、アームセンサ46がアーム旋回動作の終了を検出すると、エアシリンダ36が駆動され、先の下降動作とは逆方向へ移動されることにより、ポット上昇動作が開始される(S7)。このとき、工具交換部30bに位置する工具ポット31が上方へ回動され、ポット下降センサ37aがオンからオフに切りかわる。一方、同じくt5タイミングで、アームシャッターシリンダ74を駆動させ、開放動作とは逆方向へ移動させることにより、アームシャッター72の閉塞動作を開始させる(S7)。このとき、アームシャッター開センサ76の出力信号がオンからオフに切りかわる。
【0054】
次いで、t6タイミングで、ポット上昇センサ37bが、工具ポット31が完全に上昇したことを検出して、出力信号をオフからオンに切り換えると、エアシリンダ36の駆動が停止され、工具ポット31の上昇が完了する(S8)。また、それと同時に、マガジンシャッターシリンダ64が駆動され、マガジンシャッター62の開放動作とは逆方向へ移動することにより、マガジンシャッター62の閉塞動作が開始される(S8)。なお、このとき、マガジンシャッター開センサ66の出力信号がオンからオフに切りかわる。
【0055】
そして、t7タイミングで、アームシャッター閉センサ77が、アームシャッター72が開口部71を完全に閉塞したことを検出して、出力信号をオフからオンに切り換えると、アームシャッターシリンダ74の駆動が停止され、アームシャッター72の閉塞動作が完了する(S9)。一方、それと同時に、マガジンシャッター閉センサ67が、マガジンシャッター62が開口部61を完全に閉塞したことを検出して、出力信号をオフからオンに切り換えると、マガジンシャッターシリンダ64の駆動が停止され、マガジンシャッター62の閉塞動作が完了する(S9)。こうして、上記説明した一連の動作が完了して、工具交換シャッター開閉処理が終了する。
【0056】
なお、図8に示すS3〜S5が、「第1の工程」に相当し、S6が、「第2の工程」および「第3の工程」に相当し、S7およびS8が、「第4の工程」に相当する。
【0057】
以上説明したように、本実施形態のマシニングセンタ1では、工具マガジン30を囲繞して保護するマガジンカバー60と、工具交換アーム39を囲繞して保護するアームカバー70とが設けられているので、工具マガジン30および工具交換アーム39に切り屑が付着するのを防止できる。また、マガジンカバー60およびアームカバー70には、それぞれ開口部61,71が設けられ、それらを開閉するマガジンシャッター62およびアームシャッター72が設けられている。そして、制御装置13により、工具交換装置の工具交換動作にともない、マガジンシャッター62およびアームシャッター72の開閉動作を制御する工具交換シャッター開閉処理が実行される。さらに、工具マガジン30の工具ポット31が下降するときだけ、マガジンカバー60の開口部61を開口するように、マガジンシャッター62を開放させる。これにより、工具マガジン30をマガジンカバー60で覆う場合に、工具交換部30bから下方に突出する工具ポット31の突出する長さを考慮する必要がないので、マガジンカバー60を、工具マガジン30の周囲に近接した状態で覆うことができる。したがって、マガジンカバー60の体積を小さくすることができるため、スプラッシュカバー3内の加工領域を狭めることなく、工具マガジン30にマガジンカバー60を設けることができる。
【0058】
一方、工具交換アーム39の旋回動作により、把持部40,40が旋回するときは、アームシャッター72が開いて、開口部71が開口されるので、把持部40,40は、開口部71の内側で旋回し、アームカバー70に衝突しない。よって、アームカバー70を工具交換アーム39およびアーム旋回軸38に近接して覆うことができるので、アームカバー70の体積を小さくすることができる。そのため、スプラッシュカバー3内の加工領域を狭めることなく、工具交換アーム39およびアーム旋回軸38にアームカバー70を設けることができる。
【0059】
なお、本発明は、上記の各実施形態に限定されることなく、各種の変形が可能である。
【0060】
例えば、本実施形態のマシニングセンタ1では、工具マガジン30を囲繞して保護するマガジンカバー60と、工具交換アーム39およびアーム旋回軸38を囲繞して保護するアームカバー70とが別々に設けられているが、マガジンカバー60とアームカバー70とを一体化した1つの保護カバーにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明の工作機械は、縦型マシニングセンタのみならず、横型マシニングセンタにも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本実施形態であるマシニングセンタ1の正面図である。
【図2】マシニングセンタ1の右側面から見た部分断面図である。
【図3】図2に示すA−A線矢視方向断面図である。
【図4】マシニングセンタ1を下方から見た部分断面斜視図である。
【図5】図4に示すマガジンカバー60とアームカバー70との近傍を示す部分拡大図(マガジンシャッター62、アームシャッター72開放状態)である。
【図6】図4に示すマガジンカバー60とアームカバー70との近傍を示す部分拡大図(マガジンシャッター62、アームシャッター72閉塞状態)である。
【図7】マシニングセンタ1の電気的構成を示すブロック図である。
【図8】制御装置13による工具交換シャッター開閉処理の流れを示すフローチャートである。
【図9】制御装置13による工具交換シャッター開閉処理のタイミングチャートである。
【符号の説明】
【0063】
1 マシニングセンタ
2 ベッド
10 操作パネル
13 制御装置
16 キーボード
19 コラム
22 主軸ヘッド
23 主軸
24 工具
30 工具マガジン
37a ポット下降センサ
37b ポット上昇センサ
38 アーム旋回軸
39 工具交換アーム
40 把持部
60 マガジンカバー
61 開口部
62 マガジンシャッター
69 スクレーパ
70 アームカバー
71 開口部
72 アームシャッター
79 スクレーパ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作機械の基台となるベッドと、当該ベッド上に固定されたコラムと、当該コラムに設けられた主軸ヘッドと、当該主軸ヘッドに設けられ、先端部に工具が着脱可能に装着される主軸と、当該主軸の先端部に装着された工具を他の工具に交換する自動工具交換装置とを備えた工作機械において、
前記自動工具交換装置は、
複数の工具を格納するとともに、工具格納位置から所定の工具を工具交換準備位置に移動する工具マガジンと、
当該工具マガジンの前記工具交換準備位置と、前記主軸の先端部との間に配設され、前記主軸の軸線と平行な回転軸線を中心に回転可能に設けられた軸部と、
当該軸部の長手方向に直交する方向に延設されるとともに、両端部に工具を把持する一対の把持部が形成され、当該一対の把持部が、前記主軸に装着された一の工具と前記工具交換準備位置に位置する他の工具との間を旋回可能な工具交換アームと
を備え、
前記軸部および前記工具交換アームを囲繞して保護するアームカバーを備えていることを特徴とする工作機械。
【請求項2】
前記工具マガジンを囲繞して保護するマガジンカバーを備えていることを特徴とする請求項1に記載の工作機械。
【請求項3】
前記アームカバーの下部に設けられ、前記工具交換アームの旋回領域近傍に形成された第1の開口部と、
当該第1の開口部に開閉自在に設けられ、前記第1の開口部を開閉する第1の開閉部材と、
前記マガジンカバーの下部に設けられ、前記工具交換準備位置の近傍に形成された第2の開口部と
当該第2の開口部に開閉自在に設けられ、前記第2の開口部を開閉する第2の開閉部材と
を備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載の工作機械。
【請求項4】
前記第1の開口部の、前記第1の開閉部材が開く方向の端部には、前記第1の開閉部材の、前記第1の開口部側の上面に当接する第1のスクレーパが設けられ、
前記第2の開口部の、前記第2の開閉部材が開く方向の端部には、前記第2の開閉部材の、前記第2の開口部側の上面に当接する第2のスクレーパが設けられていることを特徴とする請求項3に記載の工作機械。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の工作機械と、
工具交換を指示する工具交換指示手段と、
前記工具マガジン内の、前記工具格納位置と前記工具交換準備位置との間の工具の移動を検知する工具移動検知手段と、
前記工具交換指示手段の指示および前記工具移動検知手段の検知結果に基づいて、前記第1の開閉部材および前記第2の開閉部材の開閉を制御する開閉部材開閉制御手段と
を備えた工作機械の工具交換方法であって、
前記工具マガジンに格納された工具が、前記工具格納位置から前記工具交換準備位置に移動する第1の工程と、
前記工具交換アームの一対の前記把持部が、前記主軸に装着された工具と、前記工具交換準備位置に位置する工具とを把持する第2の工程と、
前記旋回軸が旋回して、前記主軸に装着された工具と、前記工具交換準備位置に位置する工具とを交換する第3の工程と、
前記工具交換準備位置に交換移動された工具を、前記工具格納位置に移動して前記工具マガジン内に格納する第4の工程と
から構成され、
前記開閉部材開閉制御手段は、
前記工具交換指示手段の工具交換指示に基づいて、前記第1の開閉部材および前記第2の開閉部材をともに開放し、
前記第4の工程において、前記工具マガジン内に交換移動された工具が、前記工具交換準備位置から前記工具格納位置への移動を開始したのを、前記工具移動検知手段が検知したとき、前記第1の開閉部材を閉塞し、
前記工具マガジン内に交換移動された工具が、前記工具格納位置に移動したのを、前記工具移動検知手段が検知したとき、前記第2の開閉部材を閉塞することを特徴とする工作機械の工具交換方法。

















【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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