説明

工作機械における芯の補正器具

【課題】円筒研削盤等の工作機械は、経年劣化により芯ずれを起こす場合があり、これが加工精度の低下の原因となることがある。
【解決手段】柱状の構造物又はその構造を有する物と嵌合するための穴6a,6bと球面状の背面を有する第一の嵌合手段1a,1bと、当該嵌合手段を軸受けするための軸受手段2a,2bと、当該軸受手段を格納するための溝と柱状の構造物又はその構造を有する物と嵌合するための穴7を有する第二の嵌合手段4と、当該軸受手段を当該第二の嵌合手段内の特定の位置に固定するための固定手段3a,3bにより構成された物を芯ずれを起こしている箇所に適用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は円筒研削盤等の工作機械に関し、特に当該機器が経年変化により有するに至った回転軸等の芯ずれを補正する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術としては、まず円筒研削盤においてセンター軸の芯ずれを補正するために、心押軸の回転軸線に対し中心軸線を予め偏心させ、その程度を調節摘みで調節可能としたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また円筒研削盤において、主軸台の基準座と心押台の心押センタに設けた測定用円筒部に砥石台に設けたタッチセンサを等接させることでテーパ補正を行うものがある。(例えば、特許文献2参照)
【0004】
また円筒研削盤において、ワークを支持するために半球型のストッパーを球面継手を介して首振り自在としたものがある。(例えば、特許文献3参照)
【0005】
また、ボールとベアリングを介して二つの軸の偏芯を調節可能としたものがある(例えば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−19806号公報(図1)
【0007】
【特許文献2】特開平6−114702号公報(図1)
【0008】
【特許文献3】特開2000−24917号公報(図4)
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】株式会社ミスミ カタログ、製品名:FLCL(http://jp.misumi−ec.com/tool/で検索)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
金属等を精密に加工する場合において、ワークの支持する精度やワークとバイト等との相対的な位置決めの精度がワークの加工精度に大きな影響を与える場合がある。
【0011】
例えば、円筒研削においてワークは主軸台と押しコップにより支持又は把持されるが、ベッド上のレールが長年の押しコップの往復運動により摩耗し、押しコップに取り付けられたセンタの先端が主軸台に取り付けられたセンタの先端に対して低くなってしまうことがある。
【0012】
この状態(即ち芯ずれの状態)でワークの円筒研削を行うと、ワークはベッド面に対し傾斜した状態で回転することになり、ワークの一端と他端では砥石のあたり具合が異なってしまうため加工精度が上がらなくなる。
【0013】
また、ボール盤においては、ドリルの回転中心とワークを把持する相対位置の精度が悪い場合、ワークの中心に精度良く穴を開けることができない。
【0014】
この問題を解決するために、例えば特許文献1では、押しコップのセンタを偏心させ、それを補償調節することで芯ずれの解消を図っていた。
【0015】
しかし、この調節は、芯ずれを目測または測定器を用いて測定し、それに基づき調節摘みを適量回すことで補正を行っていた。
【0016】
よってその精度は、目測または測定器の精度及び調節摘みの補正具合の精度に依存していたといえる。
【0017】
また特許文献2に見るように芯ずれを電子的に計測し、その結果をテーパ補正に反映したものがある。
【0018】
しかし、この方法による加工精度は、電子的な測定精度に依存していたといえる。
【課題を解決するための手段】
【0019】
柱状の構造物又はその構造を有する物と嵌合するための穴と球面状の背面を有する第一の嵌合手段と、当該嵌合手段を軸受けするための軸受手段と、当該軸受手段を格納するための溝と柱状の構造物又はその構造を有する物と嵌合するための穴を有する第二の嵌合手段と、当該軸受手段を当該第二の嵌合手段内の特定の位置に固定するための固定手段により構成されたものをワークを支持又は把持する側に取り付け、更にこれを介してワークを取り付け、その上でワークの他端を支持若しくは把持をし又はバイト等により加工するようにする。(以下これを第一の発明と称する。)
【0020】
または、ワークを支持若しくは把持する第一の支持手段と、当該支持手段と対を成し当該ワークの反対側を支持若しくは把持する第二の支持手段又は刃物等を把持し当該ワークを切削若しくは研削加工等を行う加工手段を構成要素に含む工作機械において、柱状の突起を有する当該第二の支持手段若しくは当該加工手段又は当該第一の支持手段と、当該突起と嵌合する溝を有する当該第一の支持手段又は当該第二の支持手段若しくは当該加工手段と、当該第一の支持手段と当該第二の支持手段若しくは当該加工手段との相対位置を調節する位置調節手段を備えるようにする。(以下これを第二の発明と称する。)
【0021】
または、ワークを支持若しくは把持する第一の支持手段と、当該支持手段と対を成し当該ワークの反対側を支持若しくは把持する第二の支持手段又は刃物等を把持し当該ワークを切削若しくは研削加工等を行う加工手段を構成要素に含む工作機械において、当該第一若しくは第二の支持手段が支持若しくは把持した又は当該加工手段が把持した柱状の構造物を当該第一若しくは第二の支持手段若しくは当該加工手段が有する位置調節機能又はそれらの手段に追加した位置調節機能により当該構造物を支持又は把持した手段と対となる当該第二若しくは第一の支持手段若しくは当該加工手段が当該構造物の他端を支持又は把持できる位置に当該第一若しくは第二の支持手段若しくは当該加工手段の位置を移動し、当該構造物の両端を当該第一の支持手段及び当該第二の支持手段若しくは当該加工手段が支持又は把持した状態で当該第一若しくは第二の支持手段若しくは当該加工手段の位置を固定することによって工作機械内の当該第一の支持手段と当該第二の支持手段若しくは当該加工手段との間で生じた芯ずれを補正する。(以下これを第三の発明と称する。)
【発明の効果】
【0022】
第一の発明を実施するに当たり、例えば、第一の嵌合手段における柱状の構造物又はその構造を有する物と嵌合するための穴の形状を、主軸台に装着するセンタの先端の形状と一致させておく。
【0023】
更に、第二の嵌合手段における柱状の構造物又はその構造を有する物と嵌合するための穴の形状を、押しコップに装着するセンタの先端の形状と一致させておく。
【0024】
その上で、まず主軸台にセンタを実装し、そこに第一の嵌合手段の柱状の構造物又はその構造を有する物と嵌合するための穴を嵌合させることで第一の嵌合手段を主軸台に実装する。
【0025】
一方、第二の嵌合手段の溝に軸受手段を実装し、更に当該軸受手段が当該第二の嵌合手段内で自在に滑動できる程度に固定手段を緩めておく。
【0026】
更に、押しコップにセンタを実装し、そこに上述の第二の嵌合手段の柱状の構造物又はその構造を有する物と嵌合するための穴を嵌合させることで第二の嵌合手段及び軸受手段及び固定手段を押しコップに実装する。
【0027】
更に、押しコップを主軸台に向けてベッド上を移動させる。
【0028】
そして、第一の嵌合手段の球面上の背面と軸受手段が密着した段階で固定手段を締めることで当該軸受手段を第二の嵌合手段の溝の中の特定の位置に固定する。
【0029】
この状態で押しコップを主軸台より離し、第一の嵌合手段側にワークを実装すればワークは主軸台のセンターの中心と固定された軸受手段の中心とを結ぶ直線を軸として回転することになる。
【0030】
このように新たに形成された回転軸は、主軸台に実装されたセンタの回転軸を複写するものであり、本発明によるワークの回転軸の精度は、主軸台に実装されたセンタの回転軸の精度と第一の嵌合手段における柱状の構造物又はその構造を有する物と嵌合するための穴の精度の合計値程度であるといえる。
【0031】
故に、本第一の発明によれば、例えば主軸台に実装されたセンタの回転軸の精度と第一の嵌合手段のの柱状の構造物又はその構造を有する物と嵌合するための穴の精度がともに数ミクロンメートルの精度であれば、測定器を用いることなくこれらと同程度の芯ずれの精度を簡便に実現することができ、更にこれらの物品の加工精度を更に上げれば、その加工精度の上昇に伴って当該芯ずれの精度も向上させることができるものである。
【0032】
また第二の発明は、第一の発明の原理を応用したものである。
【0033】
例えば、円筒研削盤において、主軸台の上部にテーパーの形状を有する先細りの円柱を予め実装しておき、一方、これと精密に嵌合する穴を押しコップの上部に実装しておく。
【0034】
更に、押しコップ全体が上下方向に高さ補正できる機能を実装しておく。
【0035】
この状態で押しコップを主軸台に近づけてゆくと主軸台の上部に実装したテーパーの形状を有する先細りの円柱の先端が押しコップ側のこれと嵌合するための穴の入り口に入る。
【0036】
この状態で押しコップに実装された高さ調節機能を緩め自由に上下できる状態で更に押しコップを主軸台に押し込んでゆく。
【0037】
すると主軸台の上部に実装した円柱はテーパーの形状を有する先細りの円柱であり、かつ押しコップ側のこれと嵌合するための穴の形状は、奥が先細りとなった円錐形の穴であるから、押しコップを主軸台に押し込んでゆくと、やがて両者が完全に嵌合した段階で押しコップの進行が止まる。
【0038】
この段階では、主軸台の上部に実装した円柱の中心軸と押しコップ側のこれと嵌合するための穴の中心軸は一致する。
【0039】
ここで事前に主軸台におけるセンタの回転軸と当該主軸台に実装した円柱の中心軸との距離と、押しコップにおけるセンタの回転軸と当該押しコップに実装した当該主軸台に実装した当該円柱と嵌合するための穴の中心軸との距離を一致させておくことにより、当該主軸台に実装した当該円柱と当該押しコップに実装した当該穴を嵌合させることで、当該主軸台における当該センタの回転軸と当該押しコップにおける当該センタの回転軸とを一致させることができる。
【0040】
このときの芯ずれの精度は、概ね主軸台におけるセンタの回転軸の精度と当該回転軸と当該主軸台に実装した円柱の中心軸との距離の精度と、押しコップにおけるセンタの回転軸の精度と、当該押しコップにおけるセンタの回転軸と当該押しコップに実装した当該主軸台に実装した当該円柱と嵌合するための穴の中心軸との距離の精度の合計値であるといえる。
【0041】
しかしながら、本第二の発明においても、第一の発明に準じて簡便にかつ高精度に工作機械の芯ずれを補正することが可能であるといえる。
【0042】
なお、本第二の発明において主軸台の上部に実装した円柱及び押しコップの上部に実装した当該円柱と嵌合するための穴の形状をテーパーのない形状にすることも可能であるが、両者を嵌合させるためには遊びが必要であり、テーパーを有した場合より精度が劣ることになる。
【0043】
また、第三の発明も、第一の発明の原理を応用したものである。
【0044】
例えば、ボール盤において、当該ボール盤がワーク把持した状態でそれを水平方向に自由に移動可能なワークテーブルを実装している場合、まずワークの代わりに中心軸に円筒型の穴の開いた筒状の治具を実装する。
【0045】
次に、ドリルの代わりに先がテーパーとなりかつその先端の径が上述の筒状の治具の中心に開いた穴の径よりも小さい径である円柱形の棒をドリルチャックに把持させる。
【0046】
次に、上述の円柱形の棒の先端が上述の筒状の治具の中心に開いた穴の径の中に入るまで当該円柱形の棒を降下させる。
【0047】
ここで上述のワークテーブルを水平方向に自由に移動可能な状態にし、更に上述の円柱形の棒を降下させる。
【0048】
すると、上述の円柱形の棒の降下は、当該棒の先端の周囲が上述の筒状の治具の中心に開いた穴の径の縁に円形に接触した段階で止まる。
【0049】
この段階では、上述の円柱形の棒の中心軸と上述の筒状の治具の中心に開いた穴の中心軸が一致する。
【0050】
この状態においてワークテーブルの一を固定し、上述の筒状の治具の代わりに例えば円柱形ワークを把持させ、上述の円柱形の棒の代わりにドリルをドリルチャックに把持させればワークの中心軸上に正確に穴を開けることができる。
【0051】
このときの芯ずれの精度は、概ねドリルの中心軸の精度とワークを把持するワークテーブルの精度の合計であるといえる。
【0052】
しかしながら、本第三の発明においても、第一の発明と同様に簡便にかつ高精度に工作機械の芯ずれを補正することが可能であるといえる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】第一の発明の実施の形態における断面図である。
【図2】第二の発明の実施の形態における円筒研削盤の断面図である。
【図3】第二の発明の実施の形態における円筒研削盤の背面図である。
【図4】第三の発明の実施の形態におけるボール盤の断面図である。
【図5】第三の発明の実施の形態における円筒研削盤に使用する治具の側面図
【図6】第三の発明の実施の形態における偏芯した治具の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0054】
図1に第一の発明の実施の形態における断面図を示す。
【0055】
図1中1aと2bは分離した第一の嵌合手段であり、2aと2bは正方形の中心に円形の穴の開いた軸受手段2の断面であり、3aと3bは止めねじであり、4は第二の嵌合手段であり、5aと5bは円筒型のワーク5の断面であり、6aと6bは第一の嵌合手段が柱状の構造物等と嵌合するための穴であり、7は第二の嵌合手段4が柱状の構造物等と嵌合するための穴であり、8aと8bは第一の嵌合手段1aとワーク5との締め付け用ねじ穴であり、9aと9bは第一の嵌合手段1bと第二の嵌合手段4の締め付けようねじ穴であり、10はバカ穴であり、11aと11bと11cと11dはパッキンである。
【0056】
本第一の発明を円筒研削盤に実施するに当たり心押台のセンタ穴に実装でき先端形状が穴6a及び穴6bに嵌合するテーパー形状を有する円柱形の治具(以降治具Aと称する)を用意しする。
【0057】
更に、押しコップのセンタ穴に実装でき先端が穴7に嵌合する形状を有する円柱形の治具(以降治具Bと称する)を用意しする。
【0058】
そこで、まずワーク5を第一の嵌合手段1aに嵌合し、更にねじ穴8aと8bを使ってワーク5を第一の嵌合手段1aに固定する。
【0059】
次に主軸台に治具Aを実装し、そこに上述の合体したワーク5と第一の嵌合手段1aを装着する。
【0060】
一方、軸受手段2を第二の嵌合手段4の溝の奥に配備し、ねじ止め3aと3bは軸受手段2が第二の嵌合手段4の溝の奥で自由に滑動できるように緩く締め付け、更に分離した第一の嵌合手段1bを押し込む。
【0061】
その後、押しコップに治具Bを実装し、その先端に第二の嵌合手段4の穴7が嵌合するようにねじ止め3a,3bと軸受手段2と第一の嵌合手段1bと共に第二の嵌合手段4を押しコップに装着する。
【0062】
そして押しコップの先端に装着された第一の嵌合手段1bを主軸台に装着された第一の嵌合手段1aに向けてベッド上を移動させてゆく。
【0063】
そして第一の嵌合手段1bと第一の嵌合手段1aが嵌合したら、第一の嵌合手段1bが軸受手段2と十分当接した段階で止めねじ3a,3bを締め第一の嵌合手段1b内における軸受手段2の位置を固定する。
【0064】
そして最後に、一度押しコップを主軸台より離し、細めのねじとねじ穴9aとねじ穴9bを用いて第一の嵌合手段1bと第二の嵌合手段4を連結させ、しかる後に本第一の発明とワーク5を押しコップと主軸台で力強く両側より支持すれば、ワーク5が円筒研削可能な状態となる。
【0065】
この状態において第一の嵌合手段1aと1bの回転の中心軸は治具Aの回転軸と一致しているのであるから、芯ずれもほとんど無い高精度の円筒研削が可能となる。
【0066】
図2に第二の発明の実施の形態における円筒研削盤の断面図を示す。
【0067】
図2中12は主軸台であり、13は押しコップであり、14はベッドであり、15と16はセンタ穴であり、17は円柱形で先端が先細りのテーパーを有する突起であり、18は突起17に嵌合する形状を有する溝であり、19は天板であり、20は止めねじであり、21aと21bは側板であり、22は押しコップのセンタに力を加えるためのハンドルであり、25はカムであり、24はカム軸であり、22はカム25を回転させるためのレバーである。
【0068】
また図3に第二の発明の実施の形態における円筒研削盤の背面図を示す。
【0069】
図3中26は押しコップ本体の底部を示す線である。
【0070】
本第二の発明の実施の形態において押しコップ13は、センタ穴16を含む押しコップ本体が底部においてカム25により支えられており、押しコップ本体は側板21a及び21b内に設けられた鉛直方向のレールに沿って上下に移動可能であり、さらに天板19を介して止めねじ20により上部より押さえつけられている。
【0071】
カム25はカム軸24により偏芯して固定されており、レバー23を上下させることにより、押しコップ本体の底部26の高さ調整が可能となっている。
【0072】
また主軸台12の上部には突起17が実装されており、押しコップ13の上部には突起17に嵌合するための溝18が実装されている。
【0073】
ここで押しコップ13を主軸台12に向かってベッド14上を移動させてゆくと、突起17の先端が溝18の入り口に進入する。
【0074】
ここで突起17の先端が溝18の奥に挿入されるように、止めねじ20を緩め、レバー23を回しながらが押しコップ本体の高さをやや低めに調整し、更に押しコップ13を主軸台12に向かって押してゆく。
【0075】
すると突起17と溝18は完全に嵌合した状態となり、押しコップの進行は止まる。
【0076】
そこで止めねじ20等のねじを用いて押しコップ本体の高さをその高さに固定する。
【0077】
ここで突起17の中心軸とセンタ穴15の中心軸の距離が、溝18の中心軸とセンタ穴16の中心軸との距離が一致するように円筒研削盤を設計しておけば、突起17と溝18の完全な嵌合によりセンタ穴15とセンタ穴16の中心軸を一致させることができる。
【0078】
このように本第二の発明を用いれば、ベッド上のテーブル溝面が摩耗することにより押しコップの芯ずれが生じたとしても、簡便にテーブル溝面が摩耗していなっかた当初の加工精度を回復させることができる。
【0079】
図4に第三の発明の実施の形態におけるボール盤の断面図を示す。
【0080】
図4中27はテーブルであり、28はスタントであり、29はアームであり、30はモーターであり、31はドリルチャックであり、32は先端がテーパーにより細くなった形状をしている円柱形の治具であり、33aと33bは内側が四角くくりぬかれた正方形の治具33の断面であり、34aと34bは中央が円柱形にくりぬかれた正方形の治具34の断面であり、35は中心軸上に円筒形の穴を持ちかつ治具34のくりぬかれた円柱形の径と同径の円柱状の治具であり、36aと36bは止めねじである。
【0081】
図4において治具33がテーブル27上にボンド等で固定されており、その内側に治具34が配備されている。
【0082】
治具34は止めねじ36aと36bにより治具33に対する図4上の左右方向の相対位置が規定されている。
【0083】
また図4中には記載されていないが止めねじ36aと36bと同一の2本の止めねじにより治具33に対する図4上の前後方向の相対位置が規定されている。
【0084】
更に治具34の中央には治具35が嵌合している。
【0085】
更にドリルチャック31には治具32が把持されている。
【0086】
更に止めねじ36aと36b及びこれらと同様の2本止めねじを緩め治具34とそれに嵌合した治具35がテーブル27上を自由に滑動できる状態にしておく。
【0087】
この状態においてまず治具32の先端が治具35の中央に開けた穴に進入するまでアーム29を下げる。
【0088】
そして治具32の先端が治具35の中央に開けた穴に進入したら、アーム29を更に下げてゆく。
【0089】
すると治具32の先端が先細りのテーパー形状をしているため、治具35とそれに嵌合した治具34がテーブル27上を治具32から受ける力により滑動する。
【0090】
そして治具32のテーパー部と治具35の中央の穴の縁が円形に接触した状態でアーム29の降下は停止する。
【0091】
この状態は治具32の中心軸と治具35の中心軸が一致した状態であり、かつ治具34の中央に開いた穴の中心軸と治具32の中心軸が一致した状態でもある。
【0092】
この状態において止めねじ36aと36b及びこれらと同様の2本止めねじを締めれば、治具34はテーブル27上に固定されることになる。
【0093】
更に治具35に代えて治具35と同径の円形の柄を持つチャックを治具34に実装し、かつ治具32の代わりにドリルチャック31にドリルを実装すれば、当該チャックの中心軸とドリルの回転軸を精度良く一致させることができ、これにより精度の高い加工が可能となる。
【0094】
図5に第三の発明の実施の形態における円筒研削盤に使用する治具37の側面図を示す。
【0095】
治具37は、その一端は主軸台のセンタ穴に挿入し、もう一端は押しコップのセンタ穴に挿入して両センタ穴と嵌合させるためのものであり、両センタ穴の形状に合わせて両端が先細りのテーパー形状となっている。
【0096】
押しコップのセンタの高さ調節機能を有する円筒研削盤において、本第三の発明を適用する場合には、まず治具37を主軸台のセンタ穴に嵌合させ、次に治具37の他端が押しコップのセンタ穴の入り口に進入するまで押しコップを主軸台に近づける。
【0097】
次に、押しコップのセンタの高さ調節機能を緩め又は当該高さ調節機能を調整しながら、治具37の他端が押しコップのセンタ穴に嵌合するまで押しコップを主軸台に近づける。
【0098】
そして治具37の他端が押しコップのセンタ穴に嵌合した状態で、押しコップのセンタの高さ調節機能を締める。
【0099】
この状態は治具37を介して主軸台のセンタ穴の中心軸と押しコップのセンタ穴の中心軸が一致した状態であるから、治具37を外し、主軸台と押しコップにセンタとワークを装着すれば、精度の良い円筒研削が可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明は、円筒研削盤やボール盤に限らず、経年劣化により芯ずれの生じる工作機械に対して広く適用することができる。
【0101】
更に、本発明を用いれば、意図的に偏芯させた位置に工作機械を調節することができる。
【0102】
例えば、本第三の発明に治具38を適用すれば簡便に工作機械を偏芯した位置に調節することが可能である。
【符号の説明】
【0103】
1a,1b 第一の嵌合手段
2,2a,2b 軸受手段
3a,3b 止めねじ
4 第二の嵌合手段
5,5a,5b ワーク
6a,6b 第一の嵌合手段の柱状の構造物等と嵌合するための穴
7 第二の嵌合手段の柱状の構造物等と嵌合するための穴
8a,8b 第一の嵌合手段とワークとの締め付け用ねじ穴
9a,9b 第一の嵌合手段と第二の嵌合手段の締め付けようねじ穴
10 バカ穴
11a,11b,11c,11d パッキン
12 主軸台
13 押しコップ
14 ベッド
15,16 センタ穴
17 突起
18 溝
19 天板
20 止めねじ
21a,21b 側板
22 ハンドル
23 レバー
24 カム軸
25 カム
26 押しコップ本体の底部を示す線
27 テーブル
28 スタンド
29 アーム
30 モーター
31 ドリルチャック
32 治具
33,33a,33b 治具
34,34a,34b 治具
35 治具
36a,36b 止めねじ
37 治具
38 治具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
球面状の背面を有する第一の嵌合手段と、当該嵌合手段を軸受けするための軸受手段と、当該軸受手段を格納するための溝を有する第二の嵌合手段と、当該軸受手段を当該第二の嵌合手段内の特定の位置に固定するための固定手段により構成されたことを特徴とする工作機械用アダプター。
【請求項2】
ワークを支持若しくは把持する第一の支持手段と、当該支持手段と対を成し当該ワークの反対側を支持若しくは把持する第二の支持手段又は刃物等を把持し当該ワークを切削若しくは研削加工等を行う加工手段を構成要素に含む工作機械において、柱状の突起を有する当該第二の支持手段若しくは当該加工手段又は当該第一の支持手段と、当該突起と嵌合する溝を有する当該第一の支持手段又は当該第二の支持手段若しくは当該加工手段と、当該第一の支持手段と当該第二の支持手段若しくは当該加工手段との相対位置を調節する位置調節手段とを有することを特徴とする工作機械。
【請求項3】
ワークを支持若しくは把持する第一の支持手段と、当該支持手段と対を成し当該ワークの反対側を支持若しくは把持する第二の支持手段又は刃物等を把持し当該ワークを切削若しくは研削加工等を行う加工手段を構成要素に含む工作機械において、当該第一若しくは第二の支持手段が支持若しくは把持した又は当該加工手段が把持した柱状の構造物を当該第一若しくは第二の支持手段若しくは当該加工手段が有する位置調節機能又はそれらの手段に追加した位置調節機能により当該構造物を支持又は把持した手段と対となる当該第二若しくは第一の支持手段若しくは当該加工手段が当該構造物の他端を支持又は把持できる位置に当該第一若しくは第二の支持手段若しくは当該加工手段の位置を移動し、当該構造物の両端を当該第一の支持手段及び当該第二の支持手段若しくは当該加工手段が支持又は把持した状態で当該第一若しくは第二の支持手段若しくは当該加工手段の位置を固定することを特徴とする工作機械の芯の補正方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−96347(P2012−96347A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−264305(P2010−264305)
【出願日】平成22年11月3日(2010.11.3)
【出願人】(595036943)株式会社城北工範製作所 (3)
【Fターム(参考)】