説明

工作機械のパレット交換装置

【課題】大口径の駆動力シリンダを必要とせず、小口径の駆動力シリンダでもってパレットを効率良く交換する。
【解決手段】パレット11に、水平旋回アーム17、18の先端部が交換時のパレット11を移動させうるように連結されている。主駆動力シリンダ51のピストンロッド62が交換時のパレット11の移動距離に対応する角度範囲でアーム17、18を旋回させうるようにアーム17、18に連結されている。補助駆動力シリンダ52、53のピストンロッド73が旋回開始時のアーム17、18に当接してこれを押動しうるように補助駆動力シリンダ52、53が配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、工作機械のパレット交換装置、例えば、立形マシニングセンタの側面に並置される自動パレット交換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の装置としては、パレットに、水平旋回アームの先端部が交換時のパレットの移動を自由とするように連結されており、流体圧シリンダのピストンロッドが交換時のパレットの移動距離に対応する角度範囲でアームを揺動させうるようにアームに連結されているものが知られている(例えば、特許文献1および特許文献2参照。)。
【0003】
この種の装置においては、パレット交換時に、パレット全長分の距離にマシニングセンタとパレット交換装置との隙間に相当する距離を加えた比較的大きいストロークでパレットを移動させる必要があり、アームの旋回角度も大きくなり勝ちである。そのため、旋回開始時において、アームの旋回中心から流体圧シリンダのピストンロッドが流体圧を作用させる点までの距離が小さくなってしまう(角度効率の低下)。パレットの移動開始時にはパレットを加速させるために大きなパレット駆動力をアームに作用させる必要があるにも拘わらず、角度効率の低下から、アームに大きいパレット駆動力を発生させることは困難である。大きい流体圧を発生させるためには大口径の流体圧シリンダが必要となる。
【特許文献1】特開昭63−207535号公報
【特許文献2】実開昭63−172541号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この発明の目的は、大口径の流体圧シリンダを必要とせず、小口径の流体圧シリンダでもってパレットを効率良く交換することのできる工作機械のパレット交換装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明による工作機械のパレット交換装置は、パレットに、水平旋回アームの先端部が交換時のパレットを移動させうるように連結されており、主流体圧シリンダのピストンロッドが交換時のパレットの移動距離に対応する角度範囲でアームを旋回させうるようにアームに連結されており、補助流体圧シリンダのピストンロッドが旋回開始時のアームに当接してこれを押動しうるように補助流体圧シリンダが配置されているものである。
【0006】
この発明による工作機械のパレット交換装置では、アームの旋回開始時に、補助流体圧シリンダが発生する推力をアームに作用させることができる。したがって、主流体圧シリンダの口径は小さくて済み、それにも拘わらずに、パレットをスムースに効率良く交換することができる。しかも、補助流体圧シリンダの流体圧は、アームの全旋回角度に対して作用させる必要が無く、限られた角度範囲に限定すればよいから、アームの旋回中心から補助流体圧シリンダのピストンロッドが流体圧を作用させる点までの距離を大きくとることができる。
【0007】
さらに、補助流体圧シリンダのピストンロッドが、シリンダチューブに収容されており、ピストンロッドを進出させる側に流体圧を作用させうるように配管がシリンダチューブに接続されており、配管に逆止弁が備えられるとともに、逆止弁と並列に絞りが備えられていると、旋回を終了する直前のアームが補助流体圧シリンダのピストンロッドに当接してこれを押動し、補助流体圧シリンダ内の流体が絞りを通じて補助流体圧シリンダから排出されることになり、これが、パレット停止時の衝撃吸収機能を果たすことができる。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、大口径の流体圧シリンダを必要とせず、小口径の流体圧シリンダでパレットを効率良く交換することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
この発明の実施の形態を図面を参照しながらつぎに説明する。
【0010】
以下の説明において、前後とは、図1の右側を前、その左側を後といい、左右とは、前方より見て、その左右の側を左右というものとする。
【0011】
図1は、工作機械本体(図示略)内に搬入されたパレット11が搬入ストローク終端(搬出ストローク始端)に位置させられている様子を実線で示し、そこから搬出されたパレット11が搬出ストローク終端(搬入ストローク始端)に位置させられている様子を鎖線で示すものである。
【0012】
工作機械本体内には、左右方向に長い方形状テーブル12が設置されている。テーブル12上面には左右2つの昇降シリンダ13が上向きに装備されている。両昇降シリンダ13のピストンロッドには。パレット11を載置したクランプ板14がまたがって載せられている。テーブル12の後側面の左右方向中央に、ここから後向きに突出するようにサイドフレーム15が片持状に固定されている。サイドフレーム15の基部近くには垂直状アーム軸16がその上下両端部をサイドフレーム15からそれぞれ突出させるように回転自在に支持されている。アーム軸16は、搬入ストローク終端に位置させたパレット11の後方においてその左右方向中間に位置させられている。アーム軸16の上方突出端部には水平状主アーム17の基部が固定されている。アーム軸16の下方突出端部には水平状補助アーム18の基部が固定されている。
【0013】
パレット11は、左右方向に長い方形板状パレット本体21と、パレット本体21の下面に垂下状に設けられている左右方向にのびた横断面L字状の前後一対の脚部22とよりなる。前後の脚部22の水平部は、前後逆向きに向合わされている。脚部22の底面には位置決孔23が形成されている。パレット本体21の左面には前後方向にのびた帯板状係合部材24が固定されている。係合部材24の下面にはこれの全長にわたってのびた下向きの係合溝25が形成されている。
【0014】
テーブル12上面の、両昇降シリンダ13の前後両側の列上には受座31が4つずつ一列に並んで設けられている。さらに、後列の最左端の受座31に左側から接するように位置決座32が設けられている。位置決座32の頂部には位置決ピン33が上向きに設けられている。また、前列の最右端の受座31に右側から接するようにいま1つの位置決座32が設けられており、これにも位置決ピン33が設けられている。
【0015】
クランプ板14の前後両側面には複数のガイドローラ41が一列に取付けられている。前後の列のガイドローラ41は、前後の脚部22の水平部で受けられている。
【0016】
主アーム17の先端部には、係合溝25にはめ入れられた係合ローラ42が取付られている。
【0017】
アーム軸16よりもやや低レベル後方に主流体圧シリンダ51が前向きにサイドフレーム15に装備されている。主流体圧シリンダ51と同レベルに位置して、アーム軸16よりも後側に左向の搬出用補助流体圧シリンダ52が、その前側に左向の搬入用補助流体圧シリンダ53がそれぞれ装備されている。
【0018】
主流体圧シリンダ51は、サイドフレーム15の左側面に水平揺動自在に支持されているシリンダチューブ61と、シリンダチューブ61から前向きに突出させられかつ補助アーム18の先端部に連結されているピストンロッド62とよりなる。
【0019】
搬出用補助流体圧シリンダ52は、図3に詳細に示すように、サイドフレーム15に固定されているシリンダチューブ71と、シリンダチューブ71の右端部にはめ被せられているキャップ状チューブカバー72と、シリンダチューブ71から左向きに突出させられているピストンロッド73とよりなる。シリンダチューブ71の内面には段状ストッパ74が設けられている。チューブカバー72の頂壁中央には流体ポート75が形成されている。ピストンロッド73の基端部には、ピストン76がストッパ74に右側から当接しうるように設けられている。ピストンロッド73の先端部には調整ボルト77がねじ込まれている。
【0020】
搬入用補助流体圧シリンダ53は、搬出用補助流体圧シリンダ52と同一構造のものであり、その詳細説明は、省略する。
【0021】
図示しない流体源からのびてきた搬出用流体回路81が主流体圧シリンダ51のシリンダチューブ61のロッド進出側ポートに接続されている。搬出用流体回路81は、途中から分岐させられて、搬出用補助流体圧シリンダ52の流体ポート75に接続されている。搬出用流体回路81の分岐カ所と流体ポート75間には、逆止弁82および絞り83が備えられている。
【0022】
主流体圧シリンダ51のシリンダチューブ61のロッド退入側ポートには、搬入用流体回路91が接続されている。搬入用流体回路91の分岐させられた回路は、搬入用補助流体圧シリンダ53の流体ポート75に接続されている。搬入用流体回路91の分岐カ所と流体ポート75間には、逆止弁92および絞り93が備えられている。
【0023】
図2は、昇降シリンダ13によってクランプ板14がパレット11とともに上昇させられた状態を示すものである。パレット11の脚部22底面は、受座31頂面から離れており、位置決ピン33は、位置決孔23から抜出ている。この状態で、パレット11は、ガイドローラ41に案内されて左右方向に往復動自在であり、パレット11の交換作業が可能である。
【0024】
加工作業時には、昇降シリンダ13によってクランプ板14が下降させられ、パレット11の脚部22底面は、受座31頂面に押圧され、位置決ピン33は、位置決孔23にはめ入れられる。
【0025】
図1において、主流体圧シリンダ51のピストンロッド62は、退入させられている。搬出用補助流体圧シリンダ52のピストンロッド73は、退入させられ、一方、搬入用補助流体圧シリンダ53のピストンロッドは、進出させられている。主アーム17は、概ね、左向きである。係合溝25の後端に、係合ローラ42は位置させられている。補助アーム18は、概ね、後方左斜めを向いている。補助アーム18の先端部に、搬出用補助流体圧シリンダ52のピストンロッド73の先端部が当接させられている。
【0026】
図1に示す状態から、搬出用流体回路81に流体を供給すると、主流体圧シリンダ51のピストンロッド62は進出を開始し、同時に、搬出用補助流体圧シリンダ52のピストンロッド73も進出を開始する。この時点で、アーム軸16の中心から主流体圧シリンダ51が補助アーム18に駆動力を作用させる点までの左右方向の距離は比較的小であるため、主駆動力シリンダ51の駆動力が補助アーム18に作用する効率は小である。一方、アーム軸16の中心から搬出用補助駆動力シリンダ52が補助アーム18に駆動力を作用させる点までの前後方向の距離は比較的大であるため、搬出用補助駆動力シリンダ52の駆動力が補助アーム18に作用する効率は大である。これにより、主アーム17は、旋回を開始する時点から迅速かつスムースに旋回していく。
【0027】
主アーム17の旋回にともない、パレット11は右向きに移動していく。係合溝25内を係合ローラ42は、前向きに移動していき、係合溝25内を前端まで移動した後、後向きに移動し、パレット11が搬出ストローク終端に達すると、係合ローラ42は係合溝25の後端に復帰する。
【0028】
パレット11が搬出ストローク終端に達する直前に、補助アーム18の先端部は、搬入用補助駆動力シリンダ53のピストンロッドの先端部に当接し、これを押動する。搬入用補助駆動力シリンダ53のピストンロッドは、搬入用補助駆動力シリンダ53内の流体を排出しながら退入していく。搬入用補助駆動力シリンダ53内から排出される流体は、絞り93を通過させられる。この時の抵抗力がパレット停止時の衝撃吸収機能を果たすことになる。
【0029】
搬入用補助駆動力シリンダ53のピストンロッド73の進退ストロークは、調整ボルト77のねじ込み量を変更することにより、調整可能である。これにより、チューブカバー72にピストン76が衝突することを防止できる。
【0030】
パレット11を搬入する際は、搬出用流体回路81への流体の供給を停止し、搬入用流体回路91に流体を供給する。そうすると、主駆動力シリンダ51のピストンロッド62は退入を開始し、同時に、搬入用補助駆動力シリンダ53のピストンロッドも進出を開始する。パレット11の搬出の際と同様に、搬入用補助駆動力シリンダ53によって、主アーム17は、迅速かつスムースに旋回を開始する。パレット11が搬入ストローク終端に達する直前には、搬出用補助駆動力シリンダ52がパレット停止時の衝撃吸収機能を果たす。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】この発明によるパレット交換装置の平面図である。
【図2】同側面図である。
【図3】パレット交換装置の補助駆動力シリンダの詳細断面図である。
【符号の説明】
【0032】
11 パレット
17、18 アーム
51 主駆動力シリンダ
62 ピストンロッド
52、53 補助駆動力シリンダ
73 ピストンロッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パレットに、水平旋回アームの先端部が交換時のパレットを移動させうるように連結されており、主流体圧シリンダのピストンロッドが交換時のパレットの移動距離に対応する角度範囲でアームを旋回させうるようにアームに連結されており、補助流体圧シリンダのピストンロッドが旋回開始時のアームに当接してこれを押動しうるように補助流体圧シリンダが配置されている工作機械のパレット交換装置。
【請求項2】
補助流体圧シリンダのピストンロッドが、シリンダチューブに収容されており、ピストンロッドを進出させる側に流体圧を作用させうるように配管がシリンダチューブに接続されており、配管に逆止弁が備えられるとともに、逆止弁と並列に絞りが備えられている請求項1に記載の工作機械のパレット交換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−264916(P2008−264916A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−110137(P2007−110137)
【出願日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【出願人】(000149066)オークマ株式会社 (476)
【Fターム(参考)】