説明

工作機械のワーク搬出装置及び工作機械

【課題】工作機械の加工領域から加工済ワークを機外に搬出するワーク搬出装置に関し、ワークの加工現場における作業負担を軽減し、加工済ワークの取り違いや分別ミスによるトラブルの発生を未然に防止する。
【解決手段】1個の搬出装置に2個の搬出路を設けると共に、アンローダに2つの搬出路のいずれかを選択する選択動作を行わせて、2種類のワーク、あるいは加工済ワークと残材とを異なる排出空間に搬出する。加工領域に基端部を臨出させて機外へと延びるコンベアなどのワーク搬送面を備えた工作機械において、搬送面上のワーク搬出路を搬送面の幅方向に区画する中間壁を設け、中間壁で区画された各搬出路の先端を異なるワーク搬出空間に連通する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、工作機械の加工領域から加工済ワークを機外に搬出するワーク搬出装置に関するもので、周回するベルトや周回するチェンに取り付けたプレートやトレーなどの搬送面を備えたワーク搬出装置及びそのようなワーク搬出装置を備えた工作機械に関するものである。
【背景技術】
【0002】
工作機械の加工領域(ワークとこれを加工する工具が移動する領域)は、加工に使用する切削液や切粉が飛散して作業環境を劣化させるのを防止するために、隔壁やシャッター、開閉扉などで区画されている。ワークを加工領域の上方から長い昇降ストロークを有するハンドで把持してワークのロードアンロードを行う、例えばガントリーローダなどでは、当該ローダのアンロード動作で加工済ワークが工作機械のワーク把持装置(例えば旋盤の主軸チャック)から機外(加工領域の外側に配置されている機械装置や制御装置の更に外側)に搬出されるが、このようなローダは、大型になってワークのアンロードに時間がかかるため、多くの場合は、加工領域内で動作して、加工済ワークをワーク把持装置から搬出装置へと搬送するアンローダと、このアンローダから受け取った加工済ワークを機外に搬送する搬出装置とで加工済ワークの排出を行っている。
【0003】
図6は、このようなアンローダ61と、搬出装置62とを備えたワーク搬出システムの一例を示した図で、本願出願人が特許文献1で提案した構造のものである。図に示す工作機械は、主軸軸線a上で対向する2個のワークチャック(図には一方のみが示されている)4と、主軸軸線aを挟んで両側に配置されたタレット5a、5bとを備えた旋盤で、アンローダ61は、主軸軸線と平行な軸回りに回動する2本のアーム61a、61bを備えており、搬出装置62は、ベルトコンベア11を備えている。
【0004】
第1アーム61aは、主軸軸線aの上方に主軸軸線aと平行に装架された回動軸63によって揺動駆動され、かつ主軸軸線a方向に移動自在である。第2アーム61bは、第1アーム61aの先端に主軸軸線aと平行な連結軸64回りに揺動可能に連結され、かつその揺動角を第1アーム61aの揺動角と関連付けて連結されている。第1アーム61aは、第2アーム61bより短い。ワークを把持するハンド6は、第2アーム61bの先端に設けられている。
【0005】
一方、搬出装置のコンベア11は、その基端を加工領域3の隔壁に臨出させて(隔壁を貫通した基端部のみを加工領域の内側にして)主軸軸線aと平行に機外へと延びている。
【0006】
ワークの加工が終了すると、アーム61a、61bの揺動動作によってハンド6が主軸軸線a上に挿入され、アーム61a、61bの主軸軸線方向の往復移動と、主軸チャック4及びハンド6の開閉動作とによって加工済ワークは、主軸チャック4からハンド6へと受け渡される。そして、アーム61a、61bの揺動によるハンド6の上方への移動と、アーム61a、61bの主軸軸線方向の移動とにより、ハンド6は、加工領域に臨出しているコンベア11の基端部に移動して、ハンド6の開動作によってワークはコンベア11に受け渡され、コンベア11によって機外へと搬出されるのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005‐161420号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
2本の主軸と2個の刃物台を備えた旋盤では、2本の主軸が異なるワークを加工する場合や、互いに対となる形状の異なるワークを交互に加工する場合などがある。このような場合、上述した従来構造の搬出システムでは、2種類のワークが同一箇所に搬出されることとなり、多数のワークを連続加工したときなど、加工済ワークの分別(仕分け)作業が面倒である。また、素材の供給形態によっては、ワークの加工後に残材が残ることがあり、この残材も機外に排出しなければならないが、前述したような搬出システムでは、この残材も加工済ワークと同じ所に搬出されることになり、加工済ワークの中から残材を除去する作業も面倒である。
【0009】
この発明は、上記のような面倒を解消して、ワークの加工現場における作業者の作業負担を軽減させると共に、ワークの取り違いや分別ミスによるトラブルの発生を未然に防止することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明は、1個の搬出装置に2個の搬出路を設けると共に、アンローダに2つの搬出路のいずれかを選択する選択動作を行わせることにより、2種類のワーク、あるいは加工済ワークと残材とが異なる排出空間に搬出されるようにすることにより、上記課題を解決したものである。
【0011】
この発明の工作機械のワーク搬出装置は、隔壁31で区画された加工領域3に基端部11aを臨出させて機外へと延びるコンベア11などのワーク搬送面を備えた工作機械において、当該搬送面11上のワーク搬出路を搬送面の幅方向に区画する中間壁15を備え、当該中間壁で区画された各搬出路7a、7bの先端が異なるワーク搬出空間2a、2bに連通されているというものである。
【0012】
好ましい構造においては、前記中間壁15は、ワーク搬出路7a、7bの搬送面を形成するコンベアの幅方向両側に設けた側壁14、14の上部を繋ぐ繋ぎ材16に、コンベア幅方向位置を移動可能にして懸吊されている。また、前記側壁14及び中間壁15は、、前記加工領域3に臨出している基端部11aにおいて、アンローダのハンド6のコンベア幅方向の移動を妨げない低い高さを備えている。
【0013】
この発明の工作機械は、ワーク搬出コンベア11の幅方向に移動位置決め可能な工具タレット5aと、当該工具タレットの移動領域の周縁部に基端部11aを位置された上記構造のワーク搬出コンベア11とを備え、前記工具タレット5aの工具取付部に装着したワーク把持具6で把持したワークを前記基端部に搬送すると共に当該工具タレットの幅方向移動により区画された各搬出路7a、7bの一方を選択してワークを搬出できるようにしたものである。
【発明の効果】
【0014】
この発明の搬出装置によれば、アンローダにワークの種類に応じたワーク搬出路7a、7bの選択動作を行わせることにより、2種類の加工済ワーク、あるいは加工済ワークと残材とを分別して排出することができるので、多数のワークを連続加工した場合でも、加工後に2種類のワークを分別したり、加工済ワークの中から残材を取り除く作業が不要になる。
【0015】
アンローダによるワーク搬出路の選択は、搬出コンベア11の基端部の上方でのハンド6のコンベア幅方向の位置の制御によって行われるため、この選択動作を行わせるための構造や制御が簡単である。特に、この発明の工作機械によれば、工作機械を制御しているNC装置の加工プログラムによって、工具タレット5aを制御することにより、ワークのアンロード及び搬出路7a、7bの選択を行うことができるので、別個にアンローダを設ける必要がなくなると共に、加工手順を支持する加工プログラムによって、ワークのアンロードおよびワーク搬出路の選択動作を指示できるので、制御ミスの発生も未然に防止することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】この発明のワーク搬出装置の一例を示す斜視図
【図2】この発明の工作機械におけるワーク搬出動作の例を示す図
【図3】図2の工作機械におけるワーク搬出動作の他の例を示す図
【図4】図2、3の搬出動作の側面図
【図5】スラント型の工作機械におけるワーク搬出動作の側面図
【図6】従来構造のワーク搬出システムの一例を示す側面図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、この発明の実施形態を説明する。図1は、ワーク搬出装置を模式的に示した斜視図で、1は搬出コンベア装置、11はそのコンベア、12はコンベア11の先端(搬出端)11bに連接したシュート、2(2a、2b)はシュートの出口に配置したワーク箱である。コンベア11は、図6で説明したような従来構造の搬出装置における搬出コンベアと同様に、その基端部11aが加工領域3を区画している隔壁31(図2参照)に臨出しており、その先端11bは、機外に位置している。
【0018】
すなわち、搬出装置1は、加工領域3の図2における右側に隣接する機構部(機械装置を収容した空間)を貫通して、先端11bが機外に延びている。シュート12及びワーク箱2は、機械の設置場所に応じた態様で工作機械の外に設置されたものである。コンベア11は、図示しない駆動機構でコンベアベルトが巻回されているローラ13を駆動することにより、基端部11aにおいて、コンベア11上に載置されたワークを先端部11b側へと搬送してシュート12へと搬出する。すなわち、搬送されるワークの搬出路7は、コンベア11の上とシュート12の底板の上に形成される。
【0019】
ワーク搬送中にコンベア11上からワークが落下するのを防止するために、コンベア11の幅方向両側には側壁14が設けられている。この側壁14は、基端部11a部分の高さが低くなっており、アンローダのハンド6が基端部11aに侵入するのを妨げない構造となっている。
【0020】
この発明のワーク搬出装置では、コンベア11上のワーク搬出路7をコンベア幅方向に2分7a、7bするように中間壁15が設けられている。図の中間壁15は、コンベア両側の側壁14、14の上部に掛け渡された繋ぎ材16・・・のコンベア幅方向の長孔17・・・に挿通したボルト18・・・で上辺を固定して、その下辺をコンベア上面に接触しない高さにして懸吊されている。中間壁15は、上辺を直角に折り曲げた金属板で形成されており、その上辺の折曲げ部分に設けたボルト孔に長孔17に挿通したボルト18を通してナット(図には示されていない)で締結することにより、繋ぎ材16・・・に固定されている。従って、当該ナットを緩めてボルト18・・・を移動させ、再びナットを締めることによって中間壁15の位置は、コンベアの幅方向に移動することができる。
【0021】
ワーク搬出装置に中間壁15を設けたことに対応して、シュート12及びワーク箱2には仕切り板19、21が設けられている。従って、基端部11aにおいて、中間壁15によって区画されたワーク搬出路7a、7bのいずれかに載置したワークは、それぞれその側のワーク搬出路及びシュート12a、12bを通ってワーク箱2a、2bへと排出される。
【0022】
図6に示したアーム構造のアンローダの場合には、そのアーム61a、61bの揺動角を2段階とすることによって、搬出装置の基端部におけるハンド6の位置を変化させて中間壁15で分割された2つのワーク搬出路7a、7bのいずれか一方を選択させることができる。
【0023】
図2ないし4は、工作機械側のタレットにハンドを装着してワークのアンロードと当該ワークの搬出装置への搬送とを行う例を示した図である。
【0024】
図の工作機械は、主軸軸線a上で対向する2主軸と、その上下に配置された2タレットとを備えた2主軸2タレット旋盤で、4a及び4bは、それぞれの主軸に装着されて主軸軸線a上で対向している第1チャックと第2チャック、5a及び5bは、上タレットと下タレットである。上タレット5aは、主軸軸線方向であるZ軸方向、工具の切り込み送り方向であるX軸方向、及びこの両軸に直交するY軸方向(図2、3の紙面直角方向)に移動位置決め自在な上刃物台51に旋回台52を介してY軸回り(B軸)に旋回位置決め可能に設けられている。
【0025】
上タレット5のタレットヘッド53の工具取付部の一箇所には、ワークを把持するハンド6が装着されている。このハンド6は、内蔵された電気モータないし流体圧シリンダを駆動源として、又はタレット5aに設けられている工具駆動モータ54を駆動源とするカム機構、リンク機構、ラックピニオン機構などにより、開閉駆動される。1は、図1で説明したこの発明のワーク搬出装置で、その構成部材には、図1と同じ符号を付してある。
【0026】
対向する2主軸を備えた旋盤では、通常、第1主軸側で加工したワークを第2主軸側に渡し、第2主軸側で加工が完了する。第2主軸側のチャック4bで把持された加工済ワークW2は、ハンド6を割り出して、当該ワークの把持位置に移動した上タレット5aの当該ハンドで把持され、上刃物台51のZ、X及びY軸方向の移動により、搬出装置のコンベア11の基端部11a上に搬送され、ハンド6を開くことによってコンベア11上に載置される。このとき上刃物台51のY軸方向の移動により、図4に示すように、加工済ワークW2の載置箇所を2分割されたワーク搬出路7a、7bのいずれかに設定することができ、このときの上刃物台51のY軸方向の位置を制御することにより、加工済ワークW2をワーク箱2aと2bとに区分けして搬出することができる。
【0027】
第1主軸と第2主軸とで異なるワークを加工するときは、第2主軸側のチャック4bは、上記の形態で搬出し、第1主軸側のワークW1は、図3に示すように、ハンド6を割り出した上タレット5aを第1主軸のチャック4aで把持されたワークの位置に移動し、ハンド6でワークを受け取った後、上刃物台51のZ、X及びY軸方向の移動と、旋回台52の180度の旋回及びタレットの割時軸回りの180度の回転によって搬出装置のコンベア11の基端部11a上に搬送し、例えば第2主軸側から搬送したワークと異なる搬出路に排出することにより、第1主軸側のワークと第2主軸側のワークとを区分けして、ワーク箱2a、2bに排出することができる。
【0028】
上記は、上タレット5aと下タレット5bとを主軸軸線aの直上と直下に配置した旋盤においてのものであるが、より一般的なオペレータ側が低くなる方に傾斜したスラント型のベッドを有する旋盤においても上刃物台51のX軸方向とY軸方向との合成移動により、タレット5aに装着したハンド6をコンベア11の幅方向(図4の水平方向)に移動させることができるので、ワークW1、W2を把持したハンド6の当該合成移動により、搬出装置1の分割されたワーク搬出路7a、7bのいずれか一方を選択して、加工済ワークの区分排出を行うことが可能である。
【符号の説明】
【0029】
2(a,b) ワーク搬出空間
3 加工領域
5a 工具タレット
6 ハンド
7(a,b) 搬送路
11 ワーク搬出コンベア
11a 基端部
14 側壁
15 中間壁
16 繋ぎ材
31 隔壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
隔壁で区画された加工領域に基端部を臨出させて機外へと延びるワーク搬出路を備えた工作機械のワーク搬出装置において、前記ワーク搬出路をその幅方向に区画する中間壁を備え、当該中間壁で区画された各搬出路の先端が異なるワーク搬出空間に連通されている、工作機械のワーク搬出装置。
【請求項2】
前記中間壁が、ワーク搬出路の幅方向両側に設けた側壁の上部を繋ぐ繋ぎ材に、当該搬出路の幅方向位置を移動可能にして懸吊されている、請求項1記載のワーク搬出装置。
【請求項3】
前記側壁及び中間壁か、前記加工領域に臨出している搬出路の基端部において低い高さを備えている、請求項1又は2記載のワーク搬出装置。
【請求項4】
ワーク搬出路の幅方向に移動位置決め可能な工具タレットと、当該工具タレットの移動領域の周縁部に基端部を位置させた請求項1、2又は3記載のワーク搬出装置とを備え、前記工具タレットの工具取付部に装着したワーク把持具で把持したワークを前記基端部に搬送すると共に当該工具タレットの前記幅方向の移動により区画された各搬出路の一方を選択してワークを搬出できるようにした、工作機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−59842(P2013−59842A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−201322(P2011−201322)
【出願日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【出願人】(000212566)中村留精密工業株式会社 (120)
【Fターム(参考)】