説明

工作機械の冷却装置

【課題】工作機械の小型化および低コスト化を達成できる工作機械の冷却装置を提供する。
【解決手段】ワーク加工部に供給されるクーラント(研削液L1)を貯留するクーラントタンク(研削液タンク11)と、クーラントL1を冷却するクーラントクーラ(研削液クーラ12)とを備えた工作機械で主軸を冷却するための冷却装置1において、主軸用モータ(ビルトインモータ3)を冷却するための冷却液L2が流れる冷却液流路31と、冷却液L2を貯留する冷却液タンク32と、冷却液L2を圧送させるポンプ33とを備え、冷却液タンク32は、クーラントタンク11内に配置され、クーラントL1が流れるクーラント流路(研削液流路13)と冷却液L2が流れる冷却液流路31とが別系統で設けられていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械の冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械では、例えば特許文献1に示すように、主軸を冷却するための主軸冷却装置が設けられている。主軸冷却装置は、主軸用モータを冷却するための冷却液が流れる流路と、冷却液を流すポンプと、冷却液を冷却するクーラとを備えている。
また、工作機械には、クーラントを冷却して循環させるクーラント冷却循環装置が設けられる場合がある。クーラント冷却循環装置は、ワーク加工部の下方に設けられるクーラントタンクと、クーラントを冷却するクーラントクーラと、クーラントをタンクから吸い上げてワーク加工部へ供給する供給流路とを備えて構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−36066号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記主軸冷却装置のクーラは、冷却液を溜めるためのタンクも必要とするため、広い設置場所を必要とし、クーラ本体も高価で多くの費用を要していた。また、主軸冷却装置とクーラント冷却循環装置をともに設ける場合においては、ワーク加工部に供給されるクーラントには切削屑が混入しているため、冷却液とクーラントを兼用することはできず、冷却装置も別系統で設ける必要があり、より広い設置場所と費用を要していた。
【0005】
本発明はこのような課題を解決するために創作されたものであり、工作機械の小型化および低コスト化を達成できる工作機械の冷却装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明は、ワーク加工部に供給されるクーラントを貯留するクーラントタンクと、前記クーラントを冷却するクーラントクーラとを備えた工作機械で主軸を冷却するための冷却装置において、主軸用モータを冷却するための冷却液が流れる冷却液流路と、前記冷却液を貯留する冷却液タンクと、前記冷却液を圧送させるポンプとを備え、前記冷却液タンクは、前記クーラントタンク内に配置され、前記クーラントが流れるクーラント流路と前記冷却液が流れる冷却液流路とが別系統で設けられていることを特徴とする工作機械の冷却装置である。
【0007】
このような構成によれば、冷却液が冷却液タンクを介して、冷却されたクーラントで冷却されることで、冷却液を冷却するクーラを、クーラントクーラと共用することができるので、冷却液専用のクーラは設ける必要がなくその設置場所および費用を低減でき、工作機械の小型化と低コスト化を達成できる。さらに、冷却液はクーラントと別系統で流れるので、掘削屑が冷却液に混入することがない。
【0008】
請求項2に係る発明は、前記流路の一部が、前記クーラントタンク内を通過するように配置されていることを特徴とする。このような構成によれば、冷却液の冷却効率をより一層高めることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、工作機械の小型化と低コスト化を達成できるといった優れた効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態に係る工作機械の冷却装置を示した全体構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の実施形態に係る工作機械の冷却装置を説明する。本実施形態では、クーラントが研削液であるとともに、主軸にビルトインモータが設けられた工作機械(研削盤)に適用した場合を例に挙げて説明する。なお、工作機械を研削盤に限定する趣旨ではない。また、主軸用モータをビルトインモータに限定する趣旨ではない。
【0012】
図1に示すように、本実施形態の工作機械の冷却装置1は、加工されるワークを冷却する研削液ライン(クーラントライン)10と、主軸2に設けられた主軸用モータであるビルトインモータ3を冷却するための冷却液ライン30とを備えている。
【0013】
研削液ライン10は、研削液L1(クーラント)を貯留する研削液タンク(クーラントタンク)11と、研削液L1を冷却する研削液クーラ(クーラントクーラ)12と、研削液L1を流す研削液流路(クーラント流路)13とを備えている。
【0014】
研削液タンク11は、ワーク加工部の下方に設けられており、比較的広い容積を有している。研削液クーラ12は、研削液L1を冷却するためのものであって、コンプレッサとコンデンサ(図示せず)と冷却部14とを備えている。冷却部14は、下方に突出して設けられており、研削液タンク11内に貯留される研削液L1に浸漬されている。なお、研削液クーラ12は、浸漬方式に限定されるものではなく、研削液L1をクーラ内に循環させる循環方式のものであってもよい。
【0015】
研削液流路13は、研削液タンク11内から、ワーク加工部の近傍まで延在しており、その先端部13bからワークに向かって研削液L1が吹き付けられる。研削液流路13には、研削液L1を圧送させるポンプ15と、開閉弁16が設けられている。開閉弁16を開いて、ポンプ15を作動させることで、研削液L1がワーク加工部に供給される。また、研削液流路13には、サイクロン装置17が設けられている。サイクロン装置17は、研削液L1を回転させて、掘削屑などを研削液L1から遠心分離させるものである。研削液流路13には、タンク循環用流路18が、分岐して設けられている。タンク循環用流路18は、研削液L1の吸上げ口13aよりも、研削液クーラ12から遠い位置に研削液L1を流すことで、研削液タンク11内の研削液L1を循環、撹拌させる。タンク循環用流路18には、循環用開閉弁19が設けられている。循環用開閉弁19を開くとともに、開閉弁16を閉じて、ポンプ15を作動させることで、研削液L1がタンク循環用流路18に流される。これによって、研削液タンク11内の研削液L1が循環、撹拌されて、冷却効率が高められる。
【0016】
冷却液ライン30は、冷却液L2を流す冷却液流路31と、冷却液L2を貯留する冷却液タンク32と、冷却液L2を圧送する冷却液ポンプ33とを備えている。冷却液ライン30は、閉回路となっている。
【0017】
冷却液流路31は、冷却液タンク32からビルトインモータ3に冷却液L2を流す第一流路34と、ビルトインモータ3から冷却液タンク32に冷却液L2を戻す第二流路35とを備えている。第一流路34および第二流路35は、冷却液タンク32とビルトインモータ3間にそれぞれ配管されている。第一流路34を通って供給された冷却液L2は、ビルトインモータ3のステータの冷却ジャケット内を通過して、ビルトインモータ3を冷却した後、第二流路35を通って、冷却液タンク32内に戻される。冷却液L2は、防錆性能を有するものが用いられている。冷却液流路31は、その内部の冷却液L2と、研削液タンク11内の研削液L1とが混ざり合わないように、研削液流路13と別系統で設けられている。
【0018】
冷却液タンク32は、研削液タンク11内に配置されている。冷却液タンク32は、その下部が研削液タンク11内に貯留された研削液L1の内部に浸漬されるように配置されている。冷却液タンク32は、研削液クーラ12の冷却部14の近傍に設けられている。冷却液タンク32内に貯留された冷却液L2が、冷却液タンクの外殻によって研削液L1と区画されている。冷却液タンク11には、第一流路34と第二流路35がそれぞれ接続されている。
【0019】
第一流路34には、冷却液L2を圧送させる冷却液ポンプ33と、冷却液用開閉弁36が設けられている。冷却液用開閉弁36を開いて、冷却液ポンプ33を作動させることで、冷却液L2がビルトインモータ3に供給される。第一流路34は、その一部が研削液タンク11内を通過するように構成されている。第一流路34の、研削液タンク11内を通過する部分は熱交換部37となっており、研削液L1によって、第一流路34内の冷却液L2を冷却するようになっている。熱交換部37の配管には、たとえば放熱フィンを設けて、熱交換効率を高めるようにするのが好ましい。
【0020】
以上のような構成の工作機械の冷却装置1によれば、冷却液L2は、冷却液タンク32内に貯留されているときに、研削液L1によって冷却される。研削液L1は、研削液タンク11内に貯留されているときに研削液クーラ12によって冷却されている。つまり、研削液クーラ12によって研削液L1のみならず、冷却液L2も冷却することができるので、冷却液L2を冷却するクーラを、研削液L1を冷却する研削液クーラ12と共用することができる。したがって、冷却液専用のクーラは設ける必要がなくその設置場所および費用を低減でき、工作機械の小型化と低コスト化を達成できる。
【0021】
冷却液タンク32は、研削液クーラ12の冷却部14の近傍に設けられているので、冷却液L2の冷却効果を高めることができる。
【0022】
さらに、研削液ライン10と冷却液ライン30とは別系統で設けられており、冷却液L2は、研削液L1と混ざり合うことがないので、研削液L1内の掘削屑が冷却液L2に混入することがない。
【0023】
冷却液ライン30の第一流路34の一部が、研削液タンク11内を通過するように構成されているので、第一流路34内の冷却液L2が、研削液L1によってさらに冷却されるので、冷却効率をより一層高めることができる。
【0024】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜設計変更が可能であるのは勿論である。例えば、前記実施形態では、冷却液ライン30の熱交換部37は、冷却液L2の往路である第一流路34の一部に設けられているが、復路である第二流路35に設けてもよい。
【0025】
また、前記実施形態では、冷却液ライン30は主軸用のビルトインモータ3を冷却するためのものとして説明したが、その他の部分を冷却する冷却液ラインとして、本発明を適用しても良い。また、ビルトインモータ3以外にも通常のモータを冷却することも可能であるのは勿論である。
【符号の説明】
【0026】
1 冷却装置
2 主軸
3 ビルトインモータ
11 研削液タンク(クーラントタンク)
12 研削液クーラ(クーラントクーラ)
13 研削液流路(クーラント流路)
31 冷却液流路
32 冷却液タンク
L1 研削液(クーラント)
L2 冷却液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワーク加工部に供給されるクーラントを貯留するクーラントタンクと、前記クーラントを冷却するクーラントクーラとを備えた工作機械で主軸を冷却するための冷却装置において、
主軸用モータを冷却するための冷却液が流れる冷却液流路と、前記冷却液を貯留する冷却液タンクと、前記冷却液を圧送させるポンプとを備え、
前記冷却液タンクは、前記クーラントタンク内に配置され、
前記クーラントが流れるクーラント流路と前記冷却液が流れる冷却液流路とが別系統で設けられている
ことを特徴とする工作機械の冷却装置。
【請求項2】
前記冷却液流路の一部は、前記クーラントタンク内を通過するように配置されている
ことを特徴とする請求項1に記載の工作機械の冷却装置。

【図1】
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【公開番号】特開2013−94889(P2013−94889A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−239139(P2011−239139)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000152675)コマツNTC株式会社 (218)
【Fターム(参考)】