説明

工作機械の切削粉処理装置

【課題】切削粉等の回収率を高めることができる工作機械の切削粉処理装置を提供する。
【解決手段】
主軸7及び工具8に吸引孔17を軸方向に貫通するように形成するとともに、該吸引孔17の一端開口17aを加工室10内に位置させ、他端開口17bを吸引分離装置13に接続し、該吸引分離装置13により、前記加工室10内で発生した切削粉W1を前記空気ノズル10dから流下した空気とともに前記吸引孔17を介して吸引し、該吸引された空気から前記切削粉W1を分離するとともに、該切削粉W1が分離された空気を前記加工室10に供給して前記空気ノズル10dから流下させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械の切削粉処理装置に関し、詳細には、特に軽金属の加工時に発生する粉塵状の切削粉を回収するための切削粉処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば合成樹脂製ワークの切削加工時に発生する切削粉を回収する装置として、特許文献1に記載のものがある。これは、工具に冷却エアを供給する冷却用エアノズルと、切削粉を吸込み管の吸込み口に向けて落下させる吹き出し用エアノズルと、吸込み管に接続された回収タンクと、該回収タンク内を負圧にするとともに、前記両エアノズルに圧力エアを供給するルーツ式ブロワとを備えている。
【特許文献1】実用新案登録第3130735号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記従来の切削粉処理装置では、切削粉を工具の直下に配置された吸込み管の吸込み口に向けて落下させるようにしているため、加工室内にて浮遊する切削粉については回収率が悪いという問題がある。
【0004】
本発明は、前記従来の問題点に鑑みてなされたもので、加工室内にて浮遊する切削粉等の回収率を高めることができる工作機械の切削粉処理装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明は、略密閉状に構成された加工室と、該加工室内に少なくともその一部が位置するように配置された主軸と、該主軸の先端部に装着された工具とを備え、前記加工室内にて粉塵状の切削粉を発生する工作機械の切削粉処理装置であって、前記加工室内に空気を流下させる空気ノズルを天井部に形成し、前記主軸及び工具に吸引孔を軸方向に貫通するように形成するとともに、該吸引孔の一端開口を前記加工室内に位置させ、他端開口を吸引分離装置に接続し、該吸引分離装置により、前記加工室内で発生した切削粉を前記空気ノズルから流下した空気とともに前記吸引孔を介して吸引し、該吸引された空気から前記切削粉を分離するとともに、該切削粉が分離された空気を前記加工室に供給して前記空気ノズルから流下させることを特徴としている。
【0006】
請求項2の発明は、請求項1に記載の工作機械の切削粉処理装置において、前記吸引分離装置は、加工点に供給された切削剤を前記切削粉及び空気と共に吸引し、該空気から分離した切削剤を加工室内に供給することを特徴としている。
【0007】
請求項3の発明は、請求項1に記載の工作機械の切削粉処理装置において、
前記加工機の底部に配置され、前記吸引分離装置により吸引されずに落下した切削粉及び切削剤を受けるトラフをさらに備えていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
請求項1の発明によれば、加工室内に天井部から空気を流下させたので、加工室内に浮遊する粉塵状の切削粉やミスト状の切削剤についても流下させることができ、吸引分離装置により吸引孔を介して吸引でき、切削粉の回収率を向上できる。
【0009】
また、吸引分離装置からの排気を加工室に供給することにより、前記空気流を形成するように構成したので、空気流を発生させるためのコストの増加を防止できる。
【0010】
請求項2の発明では、分離回収された切削剤を加工室に供給するようにしたので、切削剤を例えば加工室の壁面を洗浄する洗浄液として利用でき、これにより壁面に付着した切削粉等についても底部に流下させて回収可能となり、前記排気による空気流の形成と相俟って、セミクローズ型でかつ省エネルギ型の切削粉処理を実現できる。
【0011】
請求項3の発明では、加工室の底部にトラフを配置し、前記吸引分離装置で吸引されずに流下した切削粉等をトラフで受け、外部に排出するようにしたので、この点からも切削粉等の回収率を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る工作機械の切削粉処理装置を説明するための図である。
【0013】
図において、1は本実施形態に係る切削粉処理装置2を備えた工作機械である。この工作機械1は、加工機3と、該加工機3の周囲を囲むカバー4とを備えている。前記加工機3は、フレーム部材5と、該フレーム部材5により支持された主軸頭6と、該主軸頭6により回転自在に支持された主軸7と、該主軸7の先端部に支持された工具8と、該工具8及び加工テーブル9の周囲を略密閉状に囲む加工室10とを備えている。前記主軸7の前端部は前記加工室10内に位置している。
【0014】
前記加工室10では、前記工具8に固定された刃具8aにより加工テーブル9上のワークWが機械加工される際に、粉塵状の切削粉W1及び切削剤W2が飛散することとなる。これらの切削粉等の一部は自重により落下するが、粉塵状の切削粉あるいはミスト状の切削剤は加工室10内を浮遊することとなる。
【0015】
そして本実施形態では、前記主軸7及び工具8にはこれらを軸方向に貫通する吸引孔17が形成されている。この吸引孔17の一端開口17aは前記加工室10内に位置しており、他端開口17bには吸引通路14を介して集塵機(吸引分離装置)13が接続されている。
【0016】
前記加工室10の天井部10aに配置された空気ヘッダ10cには多数の空気ノズル10dが形成されている。前記加工室10内には、前記空気ノズル10dから流下する空気流11が形成される。この空気流11により前記浮遊する粉塵状切削粉やミスト状切削剤についても流下することとなる。そしてこれらの切削粉や切削剤の少なくとも一部は、前記空気と共に前記工具8及び主軸7に形成された吸引孔17を介して前記集塵機13により吸引されることとなる。
【0017】
また前記底部10bには、前記切削粉及び切削剤のうち、前記集塵機13により吸引されずに流下したものを受けるトラフ12が配設されている。このトラフ12は、前記底部10bに接続されたホッパ部12aと、該ホッパ部12aで誘導された切削粉等を貯留する貯留部12bとを有する。
【0018】
前記集塵機13は、ケーシング13aと、該ケーシング13a内を排気することにより該ケーシング13a内を負圧にするブロアー13bとを備えている。また、前記ケーシング13a内には、前記空気から切削粉W1を分離する切削粉フィルタ13c及び前記空気から分離された切削剤W2を回収する切削剤受け13dが配設されている。前記切削粉フィルタ13cにより捕捉された切削粉W1は切削粉バケット13eに貯留される。
【0019】
前記ブロアー13bの吐出口は排気ダクト15を介して前記加工室10の空気ヘッダ10cに接続されている。また排気ダクト15の途中には風量調整弁15aが介設されている。
【0020】
また前記切削剤受け13dは切削剤供給管16により前記加工室10に接続されている。この切削剤供給管16の途中にはポンプ16aが介設されており、加工室10の壁面に加圧された切削剤を吹き付け、該壁面に付着した切削粉等を洗い流すようになっている。また、16b,16cは開閉弁であり、切削剤供給管16の前記両開閉弁16b,16c間部分と前記排気ダクト15の風量調整弁15の上流側部分とは分岐管16dで連通されている。
【0021】
前記トラフ12に落下した比較的大きい切削粉及び切削剤は、該トラフ12内に貯留され、チップコンベア等により外部に排出される。
【0022】
空気と共にケーシング13a内に吸引された切削粉W1は、前記切削粉フィルタ13cにより分離捕捉される。この切削粉フィルタ13cにより捕捉された切削粉W1は、切削粉バケット13eに回収される。
【0023】
そして前記ブロアー13bによるケーシング13aからの排気は、前記加工室10の天井部10aの空気ヘッダ10cに供給され、前記空気流11を形成する。
【0024】
また前記切削剤受け13dに回収された切削剤は、ポンプ16aで加圧され、洗浄液として前記加工室10の壁面に向かって吹き付けられ、これにより壁面に付着している切削粉等は洗い流され、前記トラフ12に流下する。
【0025】
このように本実施形態装置では、加工室10内において、天井部10aから底部10bに向かって流れる空気流11を形成したので、加工室10内にて浮遊する粉塵状の切削粉やミスト状の切削剤についても積極的に前記主軸7の吸引孔17により吸引回収でき、また吸引されずに落下した切削粉等は底部10bのトラフ12内に落下し、チップコンベア等で外部に排出される。
【0026】
また、集塵機13の排気を利用して前記空気流11を形成したので、空気流を形成するためのコスト増加を回避できる。また集塵機13により回収した切削剤を加工室10内に壁面洗浄剤として供給するようにしたので、前記排気による空気流の形成と相俟って、セミクローズ型で、かつ省エネルギ型の切削粉処理を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施形態に係る工作機械の切削粉処理装置を示す模式構成図である。
【符号の説明】
【0028】
1 工作機械
2 切削粉処理装置
10 加工室
10a 天井部
10b 底部
10d 空気ノズル
11 空気流
12 トラフ
13 集塵機(吸引分離装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
略密閉状に構成された加工室と、該加工室内に少なくともその一部が位置するように配置された主軸と、該主軸の先端部に装着された工具とを備え、前記加工室内にて粉塵状の切削粉を発生する工作機械の切削粉処理装置であって、
前記加工室内に空気を流下させる空気ノズルを天井部に形成し、
前記主軸及び工具に吸引孔を軸方向に貫通するように形成するとともに、該吸引孔の一端開口を前記加工室内に位置させ、他端開口を吸引分離装置に接続し、
該吸引分離装置により、前記加工室内で発生した切削粉を前記空気ノズルから流下した空気とともに前記吸引孔を介して吸引し、該吸引された空気から前記切削粉を分離するとともに、該切削粉が分離された空気を前記加工室に供給して前記空気ノズルから流下させる
ことを特徴とする工作機械の切削粉処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の工作機械の切削粉処理装置において、
前記加工室において、吸引分離装置は、加工点に供給された切削剤を前記切削粉及び空気と共に吸引し、該空気から分離した切削剤を加工室内に供給する
ことを特徴とする工作機械の切削粉処理装置。
【請求項3】
請求項1に記載の工作機械の切削粉処理装置において、
前記加工機の底部に配置され、前記吸引分離装置により吸引されずに落下した切削粉及び切削剤を受けるトラフをさらに備えている
ことを特徴とする工作機械の切削粉処理装置。

【図1】
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【公開番号】特開2010−579(P2010−579A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−162250(P2008−162250)
【出願日】平成20年6月20日(2008.6.20)
【出願人】(000146847)株式会社森精機製作所 (204)
【Fターム(参考)】