説明

工作機械の切粉吸引機構

【課題】設置スペースを必要とすることなく小型の旋盤等にも簡単に搭載可能な工作機械の切粉吸引機構を提案すること。
【解決手段】旋盤の切粉吸引機構1は、刃物台に取り付けたツールホルダ2に支持されている切削工具4によって生ずる切粉を吸引する切粉吸引口5aと、ツールホルダ2の内部に形成されていると共に切粉吸引口5aに連通している切粉吸引用のホルダ内通路3と、クーラント液などの流体を流すことによりホルダ内通路3を負圧吸引する切粉吸引排出用の流体流路6、7とを備えている。ツールホルダ2の内部に切粉吸引用のホルダ内通路3が備わっているので、切粉吸引用の配管をツールホルダ2の近傍位置に別途配置する必要がなく、小型のタレット旋盤などのようにタレットに切粉吸引用の配管を設置するスペースを確保することが困難な場合においても簡単に切粉吸引機構を搭載できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は旋盤などの工作機械による加工中に発生する切粉を吸引して除去するための切粉吸引機構および当該切粉吸引機構を備えた工作機械に関する。
【背景技術】
【0002】
旋盤による加工中に発生する切粉、例えば切削加工中に発生する切粉をワークの切削加工位置から除去する機構として、発生した切粉を吸引して除去するものが知られている。特許文献1〜3には切粉を吸引して除去する機構が提案されている。
【0003】
特許文献1において提案されている旋盤用切粉吸引装置では、工具による切削箇所に臨むように吸引口が位置している切粉搬送管が備わっており、この切粉搬送管の途中位置に取り付けた噴射管から圧縮空気を噴射することにより、切粉搬送管内にベンチュリー効果による負圧を形成するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−110873号公報
【特許文献2】特開平11−123602号公報
【特許文献3】実用新案登録第3010512号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、特許文献1に開示の旋盤用切粉吸引装置においては、工具による切削箇所に吸引口が臨むように切粉搬送管を配置して、発生した切粉を吸引して除去している。しかしながら、小型の旋盤においてはタレットあるいはドラムなどの工具台に複数のツールホルダが放射状態あるいは旋回軸に平行となるように同心状態に取り付けられており、これらのツールホルダによって各工具が支えられている。
【0006】
したがって、工具による加工位置に吸引口が臨むように切粉搬送管を別途配置するスペースを確保できない場合がある。また、このような切削搬送管を配置する場合にはその分、スペースを多く必要とするので、工具台の寸法増加を招き、旋盤の小型・コンパクト化には不利である。
【0007】
特に、内径加工の場合には、ワークの加工穴内周面において発生する切粉を吸引除去することが必要であるが、加工穴内の加工位置に吸引口が臨むように切粉搬送管を工具に沿って配置するための設置スペースを確保することが困難である。
【0008】
本発明の課題は、このような点に鑑みて、従来に比べて設置スペースを必要とすることなく小型の旋盤等にも簡単に搭載可能な工作機械の切粉吸引機構、および、当該切粉吸引機構が搭載された工作機械を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明の工作機械の切粉吸引機構は、
工作機械の刃物台に取り付けたツールホルダに支持されている工具によって生ずる切粉を吸引する切粉吸引口と、
前記ツールホルダの内部に形成されていると共に前記切粉吸引口に連通している切粉吸引用のホルダ内通路と、
流体を流すことにより前記ホルダ内通路を負圧吸引する切粉吸引排出用の流体流路とを備えていることを特徴としている。
【0010】
本発明の切粉吸引機構では、ツールホルダの内部に切粉吸引用のホルダ内通路が備わっている。したがって、切粉吸引用の配管をツールホルダの近傍位置に別途配置する必要がないので、小型のタレット旋盤などのようにタレットに切粉吸引用の配管を設置するスペースを確保することが困難な場合においても簡単に切粉吸引機構を搭載することができる。
【0011】
ここで、切粉吸引口をツールホルダに形成しておけば全体として小型でコンパクトな切粉吸引機構を実現できるので好ましい。
【0012】
また、本発明の切粉吸引機構では、ホルダ内通路に加えて、工具のシャンクの内部に切粉吸引用のシャンク内通路を形成し、このシャンク内通路をシャンクに形成した切粉吸引口に連通させた構成を採用している。この場合には、ツールホルダに工具を取り付けることにより、シャンク内通路がホルダ内通路に連通した状態が形成されるようにしておけばよい。
【0013】
内径加工等の場合には、切粉発生位置の近傍に切粉吸引口を配置することが困難な場合があるが、本発明の構成によれば、シャンクに切粉吸引口が形成されているので当該切粉吸引口を切粉発生箇所になるべく近い位置に配置して効率良く切粉を吸引できる。また、切粉吸引口からホルダ内通路までの間はシャンク内通路を介して連通しているので、工具のシャンク外周面に沿って配管などを引き回すことなく、切粉吸引口から吸引された切粉を、ホルダ内通路を介して吸引排出することができる。
【0014】
次に、ベンチュリー効果による負圧発生用の流体流路の一部、すなわち、ホルダ内通路に連通している流体流路部分もツールホルダの内部に形成しておけば、切粉吸引機構の小型・コンパクト化に有利である。
【0015】
一方、本発明は旋盤などの工作機械に関するものであり、上記構成の切粉吸引機構が備わっていることを特徴としている。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】(a)は本発明を旋盤の外径加工用のツールホルダに適用した場合の切粉吸引機構を示す概略側面図であり、(b)は(a)の矢印Bの方向から見た場合の矢視図である。
【図2】本発明を旋盤の内径加工用のツールホルダおよび刃物に適用した場合の切粉吸引機構を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、図面を参照して本発明を適用した工作機械の切粉吸引機構の各実施の形態を説明する。
【0018】
(実施の形態1)
図1は本発明の切粉吸引機構を旋盤の外径加工用のツールホルダに適用した場合の実施の形態を示す図であり(a)はその概略側面図であり、(b)は(a)の矢印Bの方向から見た場合の矢視図である。なお、旋盤の全体構成は一般的なものと同様であるので説明を省略する。また、切粉吸引用の流体として用いる圧縮空気あるいはクーラント液も一般的に使用されている供給機構を用いることができるので、それらの供給源および供給源からツールホルダに至る供給経路の説明は省略する。
【0019】
図1を参照して説明すると、本実施の形態に係る切粉吸引機構1は、旋盤の工具台(図示せず)に取り付けられたツールホルダ2の内部に形成された切粉吸引用のホルダ内通路3を備えている。ホルダ内通路3における切粉吸引方向の上流側の開口端3aはツールホルダ2における切削工具4が取り付けられている工具取付面2aに露出しており、ここには、切粉吸引ノズル5が取り付けられている。切粉吸引ノズル5の先端開口が切粉吸引口5aであり、この切粉吸引口5aは、工具取付面2aに取り付けられている切削工具4の刃先4aの側方近傍位置において開口している。
【0020】
ツールホルダ2の内部には、圧縮空気あるいはクーラント液が圧送されるホルダ内流体通路6も形成されている。このホルダ内流体通路6は、ツールホルダ2における工具取付面2aとは反対側の上面2bに開口している流体流通口、例えば2個の流体流通口6aに連通している。また、ホルダ内流体通路6には、そこから分岐して延びているホルダ内流体分岐通路7が形成されている。このホルダ内流体分岐通路7の流体流通方向の下流側の開口端7bは、ツールホルダ2における後側端面2cに開口している。この開口端7bには切粉排出管8が接続されている。したがって、圧縮空気あるいはクーラント液は、図1(a)において実線Cで示す経路、あるいは実線Dで示す経路に沿ってツールホルダ2の内部を通って流れる。
【0021】
このホルダ内流体分岐通路7における途中位置には、切粉吸引用のホルダ内通路3における切粉吸引方向の下流側の開口端3bが連通している。したがって、圧縮空気あるいはクーラント液を、図1(a)において矢印Cで示す流路(1)あるいは矢印Dで示す流路(2)に沿って、ホルダ内流体通路6からホルダ内流体分岐通路7を介して切粉排出管8の側に向けて高速で圧送すると、ベンチュリー効果により、ホルダ内通路3には切粉吸引用の負圧が発生する。この結果、切削工具4によって外径切削が行われるワークWから発生する切粉は、切粉吸引ノズル5の切粉吸引口5aから負圧によって吸引されてホルダ内通路3を介してホルダ内流体分岐通路7に吸い込まれる。ホルダ内流体分岐通路7に吸い込まれた切粉は圧送流体(圧縮空気あるいはクーラント液)によって切粉排出管8の側に流れ込み、この切粉排出管8を通って排出される。
【0022】
(実施の形態2)
図2は本発明を適用した実施の形態2に係る切粉吸引機構を示す概略構成図であり、本発明を旋盤の内径加工用のツールホルダおよび切削工具に適用した場合のものである。実施の形態2においても、旋盤の全体構成は一般的なものと同様であるので説明を省略する。また、切粉吸引用の流体として用いる圧縮空気あるいはクーラント液も一般的に使用されている供給機構を用いることができるので、それらの供給源および供給源からツールホルダに至る供給経路の説明は省略する。
【0023】
図2に示す切粉吸引機構10は、タレットなどの工具台(図示せず)に取り付けられているツールホルダ12の内部に形成された切粉吸引用のホルダ内通路13を備えている。ホルダ内通路13における切粉吸引方向Eの下流側の開口端13bは、ツールホルダ12における工具取付面12aとは反対側の端面12bに開口している。この開口端13bには切粉排出管18が取り付けられている。また、ツールホルダ12の内部には、圧縮空気あるいはクーラント液が圧送されるホルダ内流体通路16も形成されている。このホルダ内流体通路16における流体流通方向の下流端開口16bは、ホルダ内通路13の途中位置に連通している。
【0024】
さらに、切粉吸引機構10は、ツールホルダ12に取り付けられている切削工具14のシャンク14bの内部に形成した切粉吸引用のシャンク内通路19を備えている。シャンク内通路19における切粉吸引方向の下流側の開口端19bは、シャンク14bをツールホルダ12に取り付けた状態において、当該ツールホルダ12の内部に形成されている切粉吸引用のホルダ内通路13の上流側の開口端13aに連通している。また、シャンク内通路19における切粉吸引方向の上流側の開口端は、切削工具14の刃先14aの側方近傍位置に開口している切粉吸引口19aとなっている。
【0025】
この構成の切粉吸引機構10において、切削工具14の刃先14aによってワークWの中ぐり加工などにおいて発生する切粉は、図2において矢印Eで示すように、切粉吸引口19aから吸引されてシャンク内通路19およびホルダ内通路13を介して切粉排出管18の側に排出される。すなわち、圧縮空気あるいはクーラント液を、図2において矢印Fで示すように、ホルダ内流体通路16からホルダ内通路13を介して切粉排出管18の側に向けて高速で圧送すると、ベンチュリー効果により、ホルダ内流体通路16に連通しているホルダ内通路13には切粉吸引用の負圧が発生する。この結果、切削工具14によって内径切削が行われるワークWから発生する切粉は、切粉吸引口19aから負圧によって吸引されてシャンク内通路19およびホルダ内通路13に吸い込まれる。ホルダ内通路13に吸い込まれた切粉は圧送流体(圧縮空気あるいはクーラント液)によって切粉排出管18の側に流れ込み、この切粉排出管18を通って排出される。
【符号の説明】
【0026】
1 切粉吸引機構
2 ツールホルダ
3 切粉吸引用のホルダ内通路
4 切削工具
4a 刃先
5 切粉吸引ノズル
5a 切粉吸引口
6 ホルダ内流体通路
7 ホルダ内流体分岐通路
8 切粉排出管
10 切粉吸引機構
12 ツールホルダ
13 切粉吸引用のホルダ内通路
14 切削工具
14a 刃先
16 ホルダ内流体通路
18 切粉排出管
19 切粉吸引用のシャンク内通路
19a 切粉吸引口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作機械の刃物台に取り付けたツールホルダに支持されている工具によって生ずる切粉を吸引する切粉吸引口と、
前記ツールホルダの内部に形成されていると共に前記切粉吸引口に連通している切粉吸引用のホルダ内通路と、
流体を流すことにより前記ホルダ内通路を負圧吸引する切粉吸引排出用の流体流路とを備えていることを特徴とする工作機械の切粉吸引機構。
【請求項2】
請求項1において、
前記切粉吸引口は前記ツールホルダに形成されていることを特徴とする工作機械の切粉吸引機構。
【請求項3】
請求項1において、
前記工具のシャンクの内部に形成した切粉吸引用のシャンク内通路を備え、
このシャンク内通路は前記シャンクに形成した前記切粉吸引口に連通しており、
前記ツールホルダに前記工具を取り付けることにより、前記シャンク内通路が前記ホルダ内通路に連通した状態になることを特徴とする工作機械の切粉吸引機構。
【請求項4】
請求項1ないし3のうちのいずれかの項において、
前記流体流路は、前記ツールホルダの内部に形成されていると共に前記ホルダ内通路に連通しているホルダ内流体流路部分を備えていることを特徴とする工作機械の切粉吸引機構。
【請求項5】
請求項1ないし4のうちのいずれかの項に記載の切粉吸引機構を備えていることを特徴とする工作機械。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−218127(P2012−218127A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−88655(P2011−88655)
【出願日】平成23年4月12日(2011.4.12)
【出願人】(000137856)シチズンマシナリーミヤノ株式会社 (30)
【Fターム(参考)】