説明

工作機械冷却装置及び工作機械冷却方法

【課題】複数のチラー装置を効率よく動作させることのできる工作機械冷却装置及び工作機械冷却方法を提供する。
【解決手段】工作機械冷却装置は、工作機械を冷却する冷却媒体の温度を下げる冷却タンクと、冷却タンク内の冷却媒体の温度を下げるための第1のチラー装置及び第2のチラー装置と、第1のチラー装置を稼働して冷却タンク内の温度を目標温度にできない場合、稼働していない第2のチラー装置を稼働する制御手段と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械冷却装置及び工作機械冷却方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、ワ−クの超精密研削にも適した研削液の温度調整システムの技術が記載されている。また、特許文献2には、マニシングセンタなどの工作機械において、主軸及び主軸廻りの機体が発熱部の負荷変動により発熱量が変化し温度が変化しても、一定の温度分布が保てるように、主軸等を確実に冷却し、高精度の加工を可能にする技術が記載されている。
【0003】
また、特許文献3には、超精密加工用の工作機械の加工精度を長時間にわたって高精度に維持するために、熱媒体液の温度を高精度に目標値に一致させ、温度を均一化するとともに熱媒体液の温度の長期変動も抑制することのできる工作機械の温度制御システムの技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−271866号公報
【特許文献2】特開2006−224238号公報
【特許文献3】特開2008−142801号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した特許文献1〜3に記載の技術では、複数のチラー装置を効率よく動作させることについて考慮されていない。
【0006】
本発明は、上述した課題を解決するものであり、複数のチラー装置を効率よく動作させることのできる工作機械冷却装置及び工作機械冷却方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的を達成するために、工作機械冷却装置は、工作機械を冷却する冷却媒体の温度を下げる冷却タンクと、前記冷却タンク内の前記冷却媒体の温度を下げるための第1のチラー装置及び第2のチラー装置と、前記第1のチラー装置を稼働して前記冷却タンク内の温度を目標温度にできない場合、稼働していない前記第2のチラー装置を稼働する制御手段と、を含むことを特徴とする。
【0008】
この構造により、第1のチラー装置及び第2のチラー装置をCOP(Coefficient Of Performance)の高い状態で運転することができる。また、工作機械冷却装置は、加工による発熱が少ない場合、第2のチラー装置を稼働せずに、冷却媒体を冷却することができる。その結果、第2のチラー装置が消費する電力を省くことができるので、工作機械冷却装置は、消費電力を低減することができる。そして、工作機械冷却装置は複数のチラー装置を効率よく動作させることができる。
【0009】
本発明の望ましい態様として、前記第1のチラー装置を前記第2のチラー装置よりも前記冷却媒体の上流側に配置していることが好ましい。
【0010】
この構造により、第2のチラー装置のCOPが低下するおそれを抑制することができる。また、第1のチラー装置をCOPの高い状態で運転することができ、効率を高めることができる。
【0011】
本発明の望ましい態様として、前記制御手段は、前記第1のチラー装置及び第2のチラー装置を稼働して前記冷却タンク内における前記冷却媒体の温度を目標温度にした場合、前記第2のチラー装置を停止することが好ましい。
【0012】
この構造により、制御手段は、第1のチラー装置及び第2のチラー装置の負荷率が高い場合に、第1のチラー装置及び第2のチラー装置をCOPが高い状態で稼働することができる。また、制御手段は、第2のチラー装置を稼働することによって生じるおそれのある過冷却を抑制することができる。
【0013】
制御手段は、冷却媒体の下流側に配置した第2のチラー装置の負荷率が低くなる場合、第2のチラー装置を停止することができる。このため、工作機械冷却装置は、第2のチラー装置のCOPが低下するおそれを抑制することができる。
【0014】
上述の目的を達成するために、工作機械冷却装置は、工作機械を冷却する冷却媒体の温度を下げる冷却タンクと、前記冷却タンク内の前記冷却媒体の温度を下げるための第1のチラー装置及び第2のチラー装置と、前記第1のチラー装置及び第2のチラー装置を稼働して前記冷却タンク内における前記冷却媒体の温度を目標温度にした場合、前記第2のチラー装置を停止する制御手段と、を含むことを特徴とする。
【0015】
この構造により、工作機械冷却装置は、第1のチラー装置及び第2のチラー装置がCOPの高い状態で運転しているので、チラー冷却能力を高くして冷却タンク内の冷却媒体の冷却を開始することができる。そして、工作機械冷却装置は目標温度となるように、冷却媒体の温度を早く下げることができる。そして、工作機械冷却装置は複数のチラー装置を効率よく動作させることができる。
【0016】
また、制御手段は、第1のチラー装置及び第2のチラー装置の負荷率が高い場合に、第1のチラー装置及び第2のチラー装置をCOPが高い状態で稼働することができる。制御手段は、冷却媒体の下流側に配置した第2のチラー装置の負荷率が低くなる場合、第2のチラー装置を停止することができる。このため、工作機械冷却装置は、第2のチラー装置のCOPが低下するおそれを抑制することができる。その結果、第1のチラー装置をCOPの高い状態で運転することができ、工作機械冷却装置の総合的な効率を高めることができる。
【0017】
本発明の望ましい態様として、前記第1のチラー装置を前記第2のチラー装置よりも前記冷却媒体の上流側に配置していることが好ましい。
【0018】
この構造により、第2のチラー装置のCOPが低下するおそれを抑制することができる。また、第1のチラー装置をCOPの高い状態で運転することができ、効率を高めることができる。
【0019】
本発明の望ましい態様として、前記制御手段は、前記第2のチラー装置を稼働する状態と前記第2のチラー装置を停止する状態とを繰り返す制御を行うことが好ましい。
【0020】
この構造により、制御手段は、第1のチラー装置及び第2のチラー装置の負荷率が高い場合に、第1のチラー装置及び第2のチラー装置をCOPが高い状態で稼働することができる。制御手段は、冷却媒体の下流側に配置した第2のチラー装置の負荷率が低くなる場合、第2のチラー装置を停止することができる。このため、工作機械冷却装置は、第2のチラー装置のCOPが低下するおそれを抑制することができる。その結果、第1のチラー装置をCOPの高い状態で運転することができ、工作機械冷却装置の総合的な効率を高めることができる。
【0021】
上述の目的を達成するために、工作機械冷却装置は、工作機械を冷却する冷却媒体の温度を下げる冷却タンクと、前記冷却タンク内の前記冷却媒体の温度を下げるための第1のチラー装置及び第2のチラー装置と、前記第1のチラー装置が稼働する制御を行い、かつ前記第2のチラー装置を稼働する状態と前記第2のチラー装置を停止する状態とを繰り返す制御を行う制御手段と、を含むことを特徴とする。
【0022】
この構造により、制御手段は、第1のチラー装置及び第2のチラー装置の負荷率が高い場合に、第1のチラー装置及び第2のチラー装置をCOPが高い状態で稼働することができる。制御手段は、冷却媒体の下流側に配置した第2のチラー装置の負荷率が低くなる場合、第2のチラー装置を停止することができる。このため、工作機械冷却装置は、第2のチラー装置のCOPが低下するおそれを抑制することができる。その結果、第1のチラー装置をCOPの高い状態で運転することができ、工作機械冷却装置の総合的な効率を高めることができる。
【0023】
また、制御手段は、第2のチラー装置を稼働する稼働時間と第2のチラー装置を停止する稼働時間とを制御することにより、フィードフォワード制御することができる。そして、工作機械冷却装置は複数のチラー装置を効率よく動作させることができる。
【0024】
本発明の望ましい態様として、前記第1のチラー装置を前記第2のチラー装置よりも前記冷却媒体の上流側に配置していることが好ましい。
【0025】
この構造により、第2のチラー装置のCOPが低下するおそれを抑制することができる。また、第1のチラー装置をCOPの高い状態で運転することができ、効率を高めることができる。
【0026】
上述の目的を達成するために、工作機械冷却方法は、工作機械を冷却する冷却媒体の温度を下げるための第1のチラー装置及び第2のチラー装置を制御する工作機械冷却方法であって、前記第1のチラー装置が稼働する第1のチラー装置の制御ステップと、前記第1のチラー装置の制御ステップの後または第1のチラー装置の制御ステップと同時に、前記第2のチラー装置を稼働する第2のチラー装置の制御ステップと、前記第2のチラー装置の制御ステップの後に、前記第2のチラー装置を停止する第2のチラー装置の停止ステップと、を含むことを特徴とする。
【0027】
この方法により、加工による発熱が少ない場合、第2のチラー装置を稼働せずに、冷却媒体を冷却することができる。その結果、第2のチラー装置が消費する電力を省くことができるので、工作機械冷却方法は、消費電力を低減することができる。そして、工作機械冷却方法は、複数のチラー装置を効率よく動作させることができる。
【0028】
本発明の望ましい態様として、前記第1のチラー装置を前記第2のチラー装置よりも前記冷却媒体の上流側に配置していることが好ましい。
【0029】
この方法により、第2のチラー装置のCOPが低下するおそれを抑制することができる。また、第1のチラー装置をCOPの高い状態で運転することができ、効率を高めることができる。
【0030】
本発明の望ましい態様として、前記第1のチラー装置が稼働する状態において、前記第2のチラー装置の制御ステップと前記第2のチラー装置の停止ステップとを繰り返すことが好ましい。
【0031】
この方法により、第1のチラー装置及び第2のチラー装置をCOPが高い状態で稼働することにより、冷却媒体の温度を下げることができる。その結果、第1のチラー装置をCOPの高い状態で運転することができ、第1のチラー装置及び第2のチラー装置のCOPの総合的な効率を高めることができる。
【0032】
本発明の望ましい態様として、開始時に、前記第1のチラー装置の制御ステップ及び前記第2のチラー装置の制御ステップを同時に処理することが好ましい。
【0033】
この方法により、第1のチラー装置及び第2のチラー装置がCOPの高い状態で運転しているので、チラー冷却能力を高くして冷却タンク内の冷却媒体の冷却を開始することができる。そして、目標温度となるように、冷却媒体の温度を早く下げることができる。
【0034】
本発明の望ましい態様として、前記第2のチラー装置の停止ステップは、前記冷却媒体の温度を目標温度にした場合、前記第2のチラー装置を停止する処理を行うことが好ましい。
【0035】
この方法により、第1のチラー装置及び第2のチラー装置の負荷率が高い場合に、第1のチラー装置及び第2のチラー装置をCOPが高い状態で稼働することができる。また、第2のチラー装置を稼働することによって生じるおそれのある過冷却を抑制することができる。
【0036】
また、この方法は、冷却媒体の下流側に配置した第2のチラー装置の負荷率が低くなる場合、第2のチラー装置を停止することができる。このため、工作機械冷却方法は、第2のチラー装置のCOPが低下するおそれを抑制することができる。その結果、第1のチラー装置をCOPの高い状態で運転することができ、第1のチラー装置及び第2のチラー装置のCOPの総合的な効率を高めることができる。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、複数のチラー装置を効率よく動作させることのできる工作機械冷却装置及び工作機械冷却方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】図1は、実施形態1の工作機械の構成を示す説明図である。
【図2】図2は、砥石とワークの配置を説明する説明図である。
【図3】図3は、実施形態1に係る工作機械の冷却システムを説明する説明図である。
【図4】図4は、実施形態1に係る工作機械冷却装置の動作を説明するフローチャートである。
【図5】図5は、負荷率とCOPとの関係を説明する説明図である。
【図6】図6は、チラー冷却能力とクーラント温度との関係を説明する説明図である。
【図7】図7は、実施形態2に係る工作機械冷却装置の動作を説明するフローチャートである。
【図8】図8は、実施形態3に係る工作機械冷却装置の動作を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
【0040】
(実施形態1)
図1は、実施形態1の工作機械の構成を示す説明図である。図2は、砥石とワークの配置を説明する説明図である。本実施形態に係る工作機械である歯車研削盤100は、砥石3の表面の研削歯が被加工物であるワークWと噛み合うことにより、歯車研削を行う研削装置である。図1に示すように、本実施形態の歯車研削盤100は、ベッド1と、コラム2と、砥石3と、ワークテーブル4と、カウンタコラム5と、クーラントノズル9とを含んでいる。なお、本実施形態の工作機械は、歯車研削盤100を例示するが、後述する冷却媒体(クーラント)を扱う他の工作機械についても適用できる。
【0041】
ベッド1は、歯車研削盤100のベース部(台座)となっており、コラム2と、ワークテーブル4と、カウンタコラム5とがベッド1上に形成されている。コラム2は、砥石3を支持し、砥石3の位置を制御する数値制御装置20を備えている。数値制御装置20は、制御手段であって信号ラインN1を介して、コラム2に対して砥石3の位置を制御する指示をすることができる。コラム2は、砥石3を支持し、砥石3の位置を制御するために、ベッド1に対してX方向に数値制御装置20の指示に基づいて移動可能となっている。
【0042】
また、コラム2は、砥石3を支持し砥石3の位置を制御するために、垂直スライド11と、旋回ヘッド12と、研削スライダ13とを有している。垂直スライド11は、コラム2に対して砥石3をZ方向へ数値制御装置20の指示に基づいて移動させる機構である。旋回ヘッド12は、コラム2に対して砥石3をR方向へ数値制御装置20の指示に基づいて旋回させる機構である。
【0043】
研削スライダ13は、コラム2に対して砥石3をY方向へ数値制御装置20の指示に基づいて移動させる機構である。研削スライダ13に支持された研削スピンドル14は、砥石3を回転駆動させるモータ等を有する駆動源である。
【0044】
砥石3は、図2に示すように、砥石3の表面に所望の歯車に対応する研削歯が形成されている。数値制御装置20の指示に基づいた研削スピンドル14の回転駆動により、砥石3は砥石回転中心軸3aを中心に回転する。
【0045】
ワークテーブル4は、上面に被加工物であるワークWを搭載可能な平面を有し、ベッド1上で回転方向Cに回転可能となっている回転テーブルである。また、ワークテーブル4は、砥石3が対面可能な位置に形成されている。
【0046】
カウンタコラム5は、ワークテーブル4上のワークWをその上方から押さえる機能を有する。図1及び図2に示すように、カウンタコラム5の外周には、カウンタコラム5の基部5a上に、駆動手段によりB方向に旋回する輪状部材である旋回リング6が設けられている。旋回リング6には、ワークWを保持可能な保持部である一対のグリッパ7、8と、ドレッシング装置10とが設けられている。
【0047】
一対のグリッパ7、8は、軸Oに対し対称に設けられており、グリッパ7、8により、ワークWをワークテーブル4に搬入及び搬出する。本実施形態のグリッパ7、8は、開閉する一対のホーク7a、8aにより、ワークWをその両側から挟み把持する機構であるが、ワークWを下からすくい上げる機構や、磁力や吸着機構の保持手段でもよい。また、ドレッシング装置10は、グリッパ7、8の間に備えられており、ドレッシング工具10aにより砥石3をドレッシングする。
【0048】
クーラントノズル9は、砥石3の研削中、研削油等のクーラント(冷却媒体)が研削部位上方より吐出し、研削屑の排除及びワークW及び砥石3の冷却を図っている。そして、クーラントは、冷却媒体としてベッド1の熱を奪い、ベッド1の熱変形を防止することができる。クーラントノズル9は、例えば、旋回ヘッド12に設けられている。
【0049】
図3は、実施形態1に係る工作機械の冷却システムを説明する説明図である。冷却システム200は、上述した工作機械である歯車研削盤100と、数値制御装置20と、クーラントノズル9から吐出する研削油等の冷却媒体(クーラント)iが循環する媒体流路Q1、媒体流路Q2、媒体流路Q3及び媒体流路Q4と、冷却媒体を循環させるためのポンプ31、ポンプ32及びポンプ33と、ダーティタンク21と、コンベアタンク22と、工作機械冷却装置40と、温度計51と、温度計52とを含む。本実施形態に係る工作機械冷却装置40は、工作機械を冷却する冷却媒体の温度を下げることができる装置であり、冷却タンク24と、第1のチラー装置41と、第2のチラー装置42とを含む。
【0050】
媒体流路Q1、媒体流路Q2、媒体流路Q3及び媒体流路Q4は、冷却媒体が通過する配管である。数値制御装置20は、制御ラインP1、制御ラインP2及び制御ラインP3を介して、ポンプ31、ポンプ32及びポンプ33を駆動し、媒体流路Q1、媒体流路Q2、媒体流路Q3及び媒体流路Q4中の冷却媒体を循環させる。
【0051】
ダーティタンク21は、冷却媒体iが含む気泡を軽減し、冷却媒体iが含むスラッジ(泥状物)を沈殿させる。このため、ダーティタンク21内の冷却媒体i1は、媒体流路Q1から流入する冷却媒体iよりも気泡又はスラッジが低減された状態となる。そして、ポンプ31が媒体流路Q2を介して、ダーティタンク21内の冷却媒体i1をコンベアタンク22へ移送する。
【0052】
コンベアタンク22は、内部に濾過材料23を含む濾過タンクである。濾過材料23は、例えば、濾紙、合成繊維、金属網(金属フィルタ)等を用いることができる。冷却媒体i2は、濾過材料23により、スラッジを低減した冷却媒体i3となる。このため、コンベアタンク22内の冷却媒体i3は、媒体流路Q2から流入する冷却媒体i1よりもスラッジが低減された状態となる。そして、ポンプ32が媒体流路Q3を介して、コンベアタンク22内の冷却媒体i3を冷却タンク24へ移送する。
【0053】
冷却タンク24は、媒体流路Q3を介して移送されてきた冷却媒体i4の温度を下げるための流路である。第1のチラー装置41及び第2のチラー装置42の少なくとも1つは、熱交換することで流れ方向に対して上流側の冷却媒体i4の温度を下げることができる。第1のチラー装置41及び第2のチラー装置42は、熱交換機であり、水冷式熱交換機であっても空冷式熱交換機であってもよい。第1のチラー装置41及び第2のチラー装置42は、熱交換部41a及び熱交換部42aで、上流側の冷却媒体i4の熱を奪うことができる。
【0054】
このため、冷却タンク24内の上流側の冷却媒体i4は、流れ方向に対して下流側の冷却媒体i5より温度が高い状態となる。そして、冷却タンク24は、上流側の冷却媒体i4よりも温度を低下させた下流側の冷却媒体i5を媒体流路Q4へ流通させることができる。そして、ポンプ33が媒体流路Q4を介して、冷却タンク24内の冷却媒体i5をクーラントノズル9へ移送する。
【0055】
クーラントノズル9は、冷却媒体iを吐出し、研削屑の排除及びワークW及び砥石3の冷却を図っている。そして、冷却媒体iは、ベッド1の熱を奪い、ベッド1の熱変形を防止することができる。
【0056】
温度計51は、工作機械の基準温度を計測する基準温度計測手段であり、本実施形態では、ベッド1の温度情報Tbを計測することができる。温度計52は、冷却タンク24内の温度を計測する制御温度計測手段であり、本実施形態では、下流側の冷却媒体i5の温度情報Tcを計測することができる。
【0057】
制御手段である数値制御装置20は、信号ラインt1を介して、温度計51の温度情報Tbを取得することができる。また、数値制御装置20は、信号ラインt2を介して、温度計52の温度情報Tcを取得することができる。
【0058】
温度計52は、下流側の冷却媒体i5の温度情報Tcを計測することができる。温度情報Tcは、歯車研削盤100を冷却する冷却媒体iの温度により近い温度である。このため、数値制御装置20は、温度情報Tcから歯車研削盤100の冷却状態を推測する演算を行うことができる。その結果、媒体流路Q1、媒体流路Q2、媒体流路Q3及び媒体流路Q4中の冷却媒体i1、i2、i3及びi4の温度計測を省略することができるため、冷却システム200は、温度計の削減を図り、冷却システム200の製造コストを低減することができる。
【0059】
数値制御装置20は、信号ラインc1を介して第1のチラー装置41の運転状況を制御することができる。また、数値制御装置20は、信号ラインc2を介して第2のチラー装置42の稼働を制御することができる。本実施形態では、数値制御装置20を制御手段として説明するが、数値制御装置20とは別に、第1のチラー装置41及び第2のチラー装置42を制御する専用の制御装置を備え、この専用の制御装置で制御してもよい。
【0060】
図4は、実施形態1に係る工作機械冷却装置の動作を説明するフローチャートである。工作機械冷却装置40の温度計51は、基準温度の検出を行う(ステップS11)。工作機械冷却装置40は、数値制御装置20が信号ラインt1を介して、温度計51の温度情報Tbを取得することができる。
【0061】
次に、工作機械冷却装置40の温度計52は、制御温度の検出を行う(ステップS12)。工作機械冷却装置40は、数値制御装置20が信号ラインt2を介して、温度計52の温度情報Tcを取得することができる。ステップS11及びステップS12の実行は、順序を問わず、例えば、ステップS12を実行してからステップS11を実行してもよい。または、工作機械冷却装置40は、ステップS11及びステップS12を同時に実行してもよい。
【0062】
工作機械冷却装置40は、数値制御装置20が第1のチラー装置41の制御を行う(ステップS13)。数値制御装置20は、第1のチラー装置41が稼働するように、第1のチラー装置41を制御する。これにより、第1のチラー装置41は、COP(Coefficient Of Performance)の高い状態で稼働することができる。
【0063】
例えば、工作機械冷却装置40は、ワークWの加工条件、ワークWの状態、環境状況に応じて、加工による発熱が第1のチラー装置41の冷却能力を超える場合、第2のチラー装置42を稼働して、冷却能力を高める必要がある。数値制御装置20は、ベッド1が熱の影響をうけても、工作機械である歯車研削盤100が加工精度を保つことのできる、冷却媒体i5の目標温度をTaとする。このとき、数値制御装置20は、目標温度Taを以下の式(1)で求めることができる。
【0064】
Ta=Tb−ΔT ・・・(1)
【0065】
式(1)に示すように、目標温度Taは、制御温度である温度情報Tcの制御目標であり、例えば、基準温度である温度情報Tbを温度ΔT分下げた温度となる。
【0066】
数値制御装置20は、ステップS11において計測したベッド1の温度情報Tbに基づいて上述した式(1)により演算したTb−ΔTが、目標温度Taよりも高い温度である場合(ステップS14、No)、処理をステップS15へ進める。そこで、工作機械冷却装置40は、数値制御装置20が第2のチラー装置42の制御を行う(ステップS15)。ここで、数値制御装置20は、第1のチラー装置41を稼働して冷却タンク24内の冷却媒体i5の温度を目標温度Taにできない場合、稼働していない第2のチラー装置42を稼働する。
【0067】
数値制御装置20は、冷却媒体i5が目標温度Ta以下である場合(ステップS14、Yes)、処理をステップS18へ進める。これにより、工作機械冷却装置40は、ワークWの加工条件、ワークWの状態、環境状況に応じて、加工による発熱が少ない場合、第2のチラー装置42の稼働をせずに、冷却媒体i4を冷却することができる。その結果、第2のチラー装置42が消費する電力を省くことができるので、工作機械冷却装置40は、消費電力を低減することができる。
【0068】
図5は、負荷率とCOPとの関係を説明する説明図である。図5に示すように、横軸に負荷率、縦軸にCOPをとると、第1のチラー装置41及び第2のチラー装置42のCOP特性曲線Cxを示すことができる。COP特性曲線Cxにおいて、負荷率100%の稼働する定格運転動作点ChのCOPは、負荷率が低い低負荷運転動作点ClのCOPよりも高く運転できる。
【0069】
工作機械冷却装置40は、第1のチラー装置41及び第2のチラー装置42を備えることで、ワークWの加工条件、ワークWの状態、環境状況に応じて、加工による発熱量の増減に対応することができる。仮に、第1のチラー装置41及び第2のチラー装置42を常時動作させ、冷却媒体i5を所定の温度に制御しようとする場合、上流側に配置された第1のチラー装置41は負荷率が高くCOPの高い状態で稼動することができる。
【0070】
しかしながら、第1のチラー装置41の稼動により冷却媒体i4の温度が下がるため、第2のチラー装置42の負荷率は、第1のチラー装置41の負荷率より下がるおそれがある。このため、図5に示すように、例えば、第2のチラー装置42は低負荷運転動作点Cl付近で動作するおそれがある。その結果、工作機械冷却装置40は、第2のチラー装置42のCOPが低下する影響で、総合的なCOPを低下させてしまうおそれがある。
【0071】
上述したように、本実施形の工作機械冷却装置40は、第1のチラー装置41が稼働して冷却タンク24内の冷却媒体i5の温度を目標温度Taにできない場合、数値制御装置20が、稼働していない第2のチラー装置42を稼働させる。また、工作機械冷却装置40は第1のチラー装置41を第2のチラー装置42よりも冷却媒体の上流側、つまり冷却タンク24内で冷却媒体i4側に配置している。
【0072】
この構造により、第2のチラー装置42のCOPが低下するおそれを抑制することができる。また、第1のチラー装置41をCOPの高い状態で運転することができ、効率を高めることができる。
【0073】
第1のチラー装置41が稼働して冷却タンク24内の冷却媒体i5の温度を目標温度Taにできない場合、冷却媒体i4の温度が高い状態で第2のチラー装置42へ到達する。このため、数値制御装置20が、稼働していない第2のチラー装置42を稼働させると、第2のチラー装置42の負荷率も高い状態となり、稼働できる。そして、工作機械冷却装置40は、第2のチラー装置42のCOPを高い状態で稼働できるので、総合的なCOPを向上させることができる。
【0074】
第2のチラー装置42は、COPの高い状態で稼働するため、冷却媒体i5を冷却しすぎて、冷却媒体i5が過冷却の状態となり、例えば凍結する等のおそれもある。そこで、図4に示すように、数値制御装置20は、温度計52の温度情報Tcが、冷却媒体i5の下限温度に達している場合、過冷却である(ステップS16、Yes)として、ステップS17に処理を進める。次に、数値制御装置20は、第2のチラー装置42を停止する(ステップS17)。また、数値制御装置20は、冷却媒体の下流側である冷却タンク24内の冷却媒体i5側に配置した第2のチラー装置42の負荷率が低くなる場合、第2のチラー装置42を停止することができる。
【0075】
このため、工作機械冷却装置40は、第2のチラー装置42のCOPが低下するおそれを抑制することができる。そして、第1のチラー装置41をCOPの高い状態で運転し続けることができ、工作機械冷却装置40の総合的な効率を高めることができる。そこで、工作機械冷却装置40は、複数のチラー装置である、第1のチラー装置41及び第2のチラー装置42を効率よく動作させることができる。数値制御装置20は、その後、処理をステップS18に進める。
【0076】
また図4に示すように、数値制御装置20は、温度計52の温度情報Tcが、冷却媒体i5の下限温度に達していない場合、過冷却ではない(ステップS16、No)として、ステップS18に処理を進める。
【0077】
図4に示すように、数値制御装置20は、ワークWの加工が終了していない場合(ステップS18、No)、処理をステップS11へ戻し、基準温度の検出を行う。ワークWの加工が終了するまで、数値制御装置20は、上述した第2のチラー装置42の制御ステップ(ステップS15)と第2のチラー装置42の停止ステップ(ステップS17)とを繰り返すことができる。
【0078】
図6は、チラー冷却能力とクーラント温度との関係を説明する説明図である。数値制御装置20は、第1のチラー装置41を運転し続けるように制御する。このため、図6に示すように、第1のチラー装置41及び第2のチラー装置42は、横軸を時間、縦軸をチラー冷却能力とすると、第1のチラー装置41のチラー冷却能力を示すc11は100%近傍で一定である。
【0079】
数値制御装置20は、温度計52の温度情報Tcに応じて第2のチラー装置42を稼働する状態と第2のチラー装置42を停止する状態とを繰り返すように制御することができる。そこで、図6に示すように、第2のチラー装置42のチラー冷却能力を示すc12は、時間T1以上時間T2以下(時間T3以上時間T4以下)で停止を示すチラー冷却能力0%と、時間T2以上時間T3以下で定格運転を示すチラー冷却能力100%とを繰り返すことになる。
【0080】
このため、冷却媒体i5の温度情報Tcは、横軸を時間、縦軸をクーラント温度とすると、時間T1以上時間T2以下(時間T3以上時間T4以下)でクーラント温度itが上昇し、時間T2以上時間T3以下でクーラント温度itが低下する。
【0081】
時間T1以上時間T2以下(時間T3以上時間T4以下)では、数値制御装置20は第1のチラー装置41をCOPの高い状態で稼働することができる。また、時間T2以上時間T3以下では、数値制御装置20は、第1のチラー装置41及び第2のチラー装置42の稼働をCOPの高い状態で稼働することができる。
【0082】
工作機械冷却装置40は、第1のチラー装置41及び第2のチラー装置42をCOPが高い状態で稼働することにより、冷却媒体i5の温度を下げることができる。また、工作機械冷却装置40は、第2のチラー装置42を停止することで、冷却媒体i5のクーラント温度itが上昇する。また、工作機械冷却装置40は、クーラント温度itが上限に達してから、第2のチラー装置42が稼働する。このため、第2のチラー装置42は負荷率の高い状態で稼働できる。その結果、第1のチラー装置41をCOPの高い状態で運転することができ、第1のチラー装置41及び第2のチラー装置42のCOPの総合的な効率を高めることができる。なお、数値制御装置20は、ワークWの加工が終了している場合(ステップS18、Yes)、処理を終了する。
【0083】
上述したように本実施形態の工作機械冷却方法は、工作機械を冷却する冷却媒体の温度を下げるための第1のチラー装置41及び第2のチラー装置42を制御する工作機械冷却方法であって、第1のチラー装置41が稼働する第1のチラー装置の制御ステップ(ステップS13)と、第1のチラー装置の制御ステップ(ステップS13)の後に、第2のチラー装置42を稼働する第2のチラー装置の制御ステップ(ステップS15)と、第2のチラー装置の制御ステップ(ステップS15)の後に、第2のチラー装置42を停止する第2のチラー装置の停止ステップ(ステップS17)と、を含む。
【0084】
この方法により、加工による発熱が少ない場合、第2のチラー装置42の稼働をせずに、冷却媒体i4を冷却することができる。その結果、第2のチラー装置42が消費する電力を省くことができるので、工作機械冷却方法は、消費電力を低減することができる。
【0085】
本実施形態の工作機械冷却方法は、第1のチラー装置41が稼働する状態において、ステップS15とステップS17とを繰り返すことが好ましい。この方法により、第1のチラー装置41及び第2のチラー装置42をCOPが高い状態で稼働することにより、冷却媒体i4の温度を下げることができる。また、第2のチラー装置42を停止することで、冷却媒体i5の温度が上昇する。そして、工作機械冷却装置40は、クーラント温度itが上限に達してから、第2のチラー装置42が稼働する。このため工作機械冷却装置40は、第2のチラー装置42のCOPが低下するおそれを抑制することができる。そして、第2のチラー装置42は負荷率の高い状態で稼働できる。その結果、第1のチラー装置41をCOPの高い状態で運転することができ、第1のチラー装置41及び第2のチラー装置42のCOPの総合的な効率を高めることができる。
【0086】
以上説明した本実施形態の工作機械冷却装置40は、第1のチラー装置41及び第2のチラー装置42の2つのチラー装置を含む。本実施形態の工作機械冷却装置40は、3つ以上の複数のチラー装置についても適用することができる。
【0087】
(実施形態2)
図7は、実施形態2に係る工作機械冷却装置の動作を説明するフローチャートである。次の説明においては、実施形態1で説明したものと同じ構成要素には同一の符号を付して、重複する説明は省略する。本実施形態の工作機械冷却装置40は、第1のチラー装置41及び第2のチラー装置42が稼働して、冷却タンク24内の冷却媒体i5の温度を目標温度Taにする場合、第2のチラー装置42を停止させる。
【0088】
上述したステップS11と同様に、工作機械冷却装置40の温度計51は、基準温度の検出を行う(ステップS21)。次に、上述したステップS12と同様に、工作機械冷却装置40の温度計52は、制御温度の検出を行う(ステップS22)。ステップS21及びステップS22の実行は、順序を問わず、例えば、ステップS22を実行してからステップS21を実行してもよい。あるいは、工作機械冷却装置40は、ステップS21及びステップS22を同時に実行してもよい。
【0089】
工作機械冷却装置40は、数値制御装置20が第1のチラー装置41及び第2のチラー装置42の制御を行う(ステップS23)。数値制御装置20は、第1のチラー装置41及び第2のチラー装置42が稼働するように、第1のチラー装置41及び第2のチラー装置42を制御する。
【0090】
数値制御装置20は、ステップS21において計測したベッド1の温度情報Tbに基づいて上述した式(1)により演算したTb−ΔTが、目標温度Taよりも高い温度である場合が目標温度Taよりも高い温度である場合(ステップS24、No)、処理をステップS23へ戻す。これにより、工作機械冷却装置40は、第1のチラー装置41及び第2のチラー装置42がCOPの高い状態で運転しているので、チラー冷却能力を高くして冷却タンク24内の冷却媒体i4の冷却を開始することができる。そして、工作機械冷却装置40は目標温度Taとなるように、より早く冷却媒体i5の温度を下げることができる。
【0091】
数値制御装置20は、加工精度を保つことのできるベッド1の目標温度をTaとして、ステップS21において計測したベッド1の温度情報Tbが目標温度Ta以下である場合(ステップS24、Yes)、処理をステップS25へ進める。数値制御装置20は、温度計52の温度情報Tcが冷却媒体i5の下限温度に達していない場合、過冷却ではない(ステップS25、No)、として、ステップS27に処理を進める。
【0092】
また、数値制御装置20は、温度計52の温度情報Tcが冷却媒体i5の下限温度に達している場合、過冷却である(ステップS25、Yes)として、ステップS26に処理を進める。次に、数値制御装置20は、第2のチラー装置42を停止する(ステップS26)。これにより、上流側に配置された第1のチラー装置41は負荷率が高くCOPの高い状態で稼動することができる。そして、工作機械冷却装置40は、第2のチラー装置42の稼働をせずに、第1のチラー装置41の稼動により冷却媒体i4を冷却することができる。その結果、第2のチラー装置42が消費する電力を省くことができるので、工作機械冷却装置40は、消費電力を低減することができる。第2のチラー装置42をCOPが低下した状態で稼働する場合が減るので、工作機械冷却装置40の総合的なCOPを向上することができる。数値制御装置20は、ステップS26の後、処理をステップS27に進める。
【0093】
数値制御装置20は、ワークWの加工が終了していない場合(ステップS27、No)、処理をステップS21へ戻し、基準温度の検出を行う。数値制御装置20は、温度計52の温度情報Tcに応じて第2のチラー装置42を稼働する状態と第2のチラー装置42を停止する状態とを繰り返すように制御することができる。なお、数値制御装置20は、ワークWの加工が終了している場合(ステップS27、Yes)、処理を終了する。
【0094】
上述したように、工作機械冷却装置40は、冷却タンク24内の冷却媒体i4の温度を下げるための第1のチラー装置41及び第2のチラー装置42と、数値制御装置20とを含む。数値制御装置20は、第1のチラー装置41及び第2のチラー装置42を稼働して冷却タンク24内における冷却媒体i5の温度を目標温度Taにした場合、第2のチラー装置24を停止する制御を行う。
【0095】
また、上述したように、本実施形態の工作機械冷却方法は、工作機械を冷却する冷却媒体の温度を下げるための第1のチラー装置41及び第2のチラー装置42を制御する工作機械冷却方法であって、開始時に、第1のチラー装置41が稼働する第1のチラー装置の制御ステップと第2のチラー装置42を稼働する第2のチラー装置の制御ステップとを同時に処理(ステップS23)した後に、第2のチラー装置42を停止する第2のチラー装置の停止ステップ(ステップS26)と、を含む。
【0096】
この方法により、第1のチラー装置41及び第2のチラー装置42がCOPの高い状態で運転しているので、チラー冷却能力を高くして冷却タンク24内の冷却媒体i4の冷却を開始することができる。そして、本実施形態の工作機械冷却方法は、目標温度Taとなるように、冷却媒体i5の温度をより早く下げることができる。
【0097】
また、本実施形態の工作機械冷却方法は、第1のチラー装置41が稼働する状態において、ステップS23とステップS26とを繰り返すことが好ましい。この方法により、第1のチラー装置41及び第2のチラー装置42をCOPが高い状態で稼働することにより、冷却媒体i4の温度を下げることができる。また、第2のチラー装置42を停止することで、冷却媒体i5の温度が上昇する。このため工作機械冷却方法は、第2のチラー装置42のCOPが低下するおそれを抑制することができる。そして、第1のチラー装置41をCOPの高い状態で運転することができ、第1のチラー装置41及び第2のチラー装置42のCOPの総合的な効率を高めることができる。
【0098】
(実施形態3)
図8は、実施形態3に係る工作機械冷却装置の動作を説明するフローチャートである。次の説明においては、上述した実施形態で説明したものと同じ構成要素には同一の符号を付して、重複する説明は省略する。本実施形態の工作機械冷却装置40は、第2のチラー装置42を稼働する状態と第2のチラー装置42を停止する状態とを繰り返すようにフィードフォワード制御する。
【0099】
上述したステップS11と同様に、工作機械冷却装置40の温度計51は、基準温度の検出を行う(ステップS31)。次に、上述したステップS12と同様に、工作機械冷却装置40の温度計52は、制御温度の検出を行う(ステップS32)。ステップS31及びステップS32の実行は、順序を問わず、例えば、ステップS32を実行してからステップS31を実行してもよい。あるいは、工作機械冷却装置40は、ステップS31及びステップS32を同時に実行してもよい。
【0100】
工作機械冷却装置40は、数値制御装置20が実施する加工が既知の加工条件と一致しない場合(ステップS33、No)、実施形態3に係る工作機械冷却装置40の動作ではなく、上述した実施形態1又は実施形態2の工作機械冷却装置40の動作で行うため、処理を中止する。工作機械冷却装置40は、数値制御装置20が実施する加工が既知の加工条件と一致する場合(ステップS33、Yes)、既知の加工条件に合わせたチラー装置運転パターンを読み出す。ここでチラー装置運転パターンは、第1のチラー装置41を稼働し、かつ第2のチラー装置42の稼働の動作時間及び停止時間をパターン化したデータである。チラー装置運転パターンは、上述したステップS31及びステップS32で基準温度及び制御温度を考慮したデータとしてもよい。
【0101】
工作機械冷却装置40は、数値制御装置20が第1のチラー装置41及び第2のチラー装置42の制御を行う(ステップS34)。数値制御装置20は、第1のチラー装置41及び第2のチラー装置42が稼働するように制御する。これにより、工作機械冷却装置40は、第1のチラー装置41及び第2のチラー装置42がCOPの高い状態で運転しているので、チラー冷却能力を高くして冷却タンク24内の冷却媒体i4の冷却を開始することができる。そして、工作機械冷却装置40は、冷却媒体i5が目標温度Taとなるように冷却媒体の温度をより早く下げることができる。
【0102】
次に、数値制御装置20は、第1のチラー装置41及び第2のチラー装置42の稼働を上述したチラー装置運転パターンに従って、一定時間維持する(ステップS35)。次に、数値制御装置20は、ステップS35における一定時間を経過し、例えば、図6に示す時間T1になると、数値制御装置20は、第2のチラー装置42を停止する(ステップS36)。
【0103】
数値制御装置20は、第1のチラー装置41の稼働を上述したチラー装置運転パターンに従って、一定時間維持する(ステップS37)。次に、数値制御装置20は、ステップS37における一定時間を経過すると、処理をステップS38へ進める。
【0104】
数値制御装置20は、ワークWの加工が終了していない場合(ステップS38、No)、処理をステップS34へ戻し、数値制御装置20は、第1のチラー装置41及び第2のチラー装置42が稼働するように制御する。例えば、図6に示す時間T2になると、数値制御装置20は、第1のチラー装置41及び第2のチラー装置42が稼働するので、クーラント温度itは低下する。数値制御装置20は、チラー装置運転パターンに応じて第2のチラー装置42を稼働する状態と第2のチラー装置42を停止する状態とを繰り返すようにフィードフォワード制御することができる。なお、数値制御装置20は、ワークWの加工が終了している場合(ステップS38、Yes)、処理を終了する。
【0105】
工作機械冷却装置40は、冷却タンク24内の冷却媒体i4の温度を下げるための第1のチラー装置41及び第2のチラー装置42と、数値制御装置20と、を含む。数値制御装置20は、第1のチラー装置41が稼働する制御を行い、かつ第2のチラー装置42を稼働する状態と第2のチラー装置42を停止する状態とを繰り返す制御を行う。数値制御装置20は、第2のチラー装置42を稼働する稼働時間と第2のチラー装置42を停止する停止時間とを制御することにより、フィードフォワード制御することができる。これにより、数値制御装置20の処理を軽減することができる。
【0106】
第1のチラー装置41が稼働する状態において、ステップS34とステップS36とを繰り返すことが好ましい。
【0107】
この方法により、第1のチラー装置41及び第2のチラー装置42をCOPが高い状態で稼働することにより、冷却媒体i4の温度を下げることができる。また、第2のチラー装置42を停止することで、冷却媒体i5の温度が上昇する。このため工作機械冷却方法は、第2のチラー装置42のCOPが低下するおそれを抑制することができる。そして、第1のチラー装置41をCOPの高い状態で運転することができ、第1のチラー装置41及び第2のチラー装置42のCOPの総合的な効率を高めることができる。
【0108】
なお、実施形態3の工作機械冷却方法の後に、実施形態1または実施形態2の工作機械冷却方法を処理することができる。
【符号の説明】
【0109】
1 ベッド
2 コラム
3 砥石
3a 砥石回転中心軸
4 ワークテーブル
5 カウンタコラム
6 旋回リング
7、8 グリッパ
9 クーラントノズル
10 ドレッシング装置
10a ドレッシング工具
11 垂直スライド
12 旋回ヘッド
13 研削スライダ
14 研削スピンドル
20 数値制御装置
21 ダーティタンク
22 コンベアタンク
23 濾過材料
24 冷却タンク
31、32、33 ポンプ
40 工作機械冷却装置
41 第1のチラー装置
41a 熱交換部
42 第2のチラー装置
42a 熱交換部
51 温度計
52 温度計
100 歯車研削盤
200 冷却システム
W ワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作機械を冷却する冷却媒体の温度を下げる冷却タンクと、
前記冷却タンク内の前記冷却媒体の温度を下げるための第1のチラー装置及び第2のチラー装置と、
前記第1のチラー装置を稼働して前記冷却タンク内の温度を目標温度にできない場合、稼働していない前記第2のチラー装置を稼働する制御手段と、
を含むことを特徴とする工作機械冷却装置。
【請求項2】
前記第1のチラー装置を前記第2のチラー装置よりも前記冷却媒体の流れ方向に対して上流側に配置している請求項1に記載の工作機械冷却装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記第1のチラー装置及び第2のチラー装置を稼働して前記冷却タンク内における前記冷却媒体の温度を目標温度にした場合、前記第2のチラー装置を停止する請求項1または請求項2に記載の工作機械冷却装置。
【請求項4】
工作機械を冷却する冷却媒体の温度を下げる冷却タンクと、
前記冷却タンク内の前記冷却媒体の温度を下げるための第1のチラー装置及び第2のチラー装置と、
前記第1のチラー装置及び第2のチラー装置を稼働して前記冷却タンク内における前記冷却媒体の温度を目標温度にした場合、前記第2のチラー装置を停止する制御手段と、
を含むことを特徴とする工作機械冷却装置。
【請求項5】
前記第1のチラー装置を前記第2のチラー装置よりも前記冷却媒体の流れ方向に対して上流側に配置している請求項4に記載の工作機械冷却装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記第2のチラー装置を稼働する状態と前記第2のチラー装置を停止する状態とを繰り返す制御を行う請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の工作機械冷却装置。
【請求項7】
工作機械を冷却する冷却媒体の温度を下げる冷却タンクと、
前記冷却タンク内の前記冷却媒体の温度を下げるための第1のチラー装置及び第2のチラー装置と、
前記第1のチラー装置が稼働する制御を行い、かつ前記第2のチラー装置を稼働する状態と前記第2のチラー装置を停止する状態とを繰り返す制御を行う制御手段と、
を含むことを特徴とする工作機械冷却装置。
【請求項8】
前記第1のチラー装置を前記第2のチラー装置よりも前記冷却媒体の上流側に配置している請求項7に記載の工作機械冷却装置。
【請求項9】
工作機械を冷却する冷却媒体の温度を下げるための第1のチラー装置及び第2のチラー装置を制御する工作機械冷却方法であって、
前記第1のチラー装置が稼働する第1のチラー装置の制御ステップと、
前記第1のチラー装置の制御ステップの後または第1のチラー装置の制御ステップと同時に、前記第2のチラー装置を稼働する第2のチラー装置の制御ステップと、
前記第2のチラー装置の制御ステップの後に、前記第2のチラー装置を停止する第2のチラー装置の停止ステップと、
を含むことを特徴とする工作機械冷却方法。
【請求項10】
前記第1のチラー装置を前記第2のチラー装置よりも前記冷却媒体の流れ方向に対して上流側に配置している請求項9に記載の工作機械冷却方法。
【請求項11】
前記第1のチラー装置が稼働する状態において、前記第2のチラー装置の制御ステップと前記第2のチラー装置の停止ステップとを繰り返す請求項9または請求項10に記載の工作機械冷却方法。
【請求項12】
開始時に、前記第1のチラー装置の制御ステップ及び前記第2のチラー装置の制御ステップを同時に処理する請求項9から請求項11のいずれか1項に記載の工作機械冷却方法。
【請求項13】
前記第2のチラー装置の停止ステップは、前記冷却媒体の温度を目標温度にした場合、前記第2のチラー装置を停止する処理を行う請求項9から請求項12のいずれか1項に記載の工作機械冷却方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−103324(P2013−103324A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−251051(P2011−251051)
【出願日】平成23年11月16日(2011.11.16)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】