工作機械及びそれを用いた加工方法
【課題】加工ユニットを移動させる必要が無い工作機械を提供することを課題とする。
【解決手段】図(a)に示すように、ワークW1の上面がワーク抑えプレート216に当接する。更に、ワーク受けプレート215を上昇させると、クッションユニット228、228が縮み、この縮み量に応じてクッションユニット228、228はワークW1をワーク受けプレート215へ付勢する。図(b)に示すように、ワーク受けプレート215とワーク抑えプレート216で挟持されたワークW1に、加工ヘッド213により機械加工を施す。
【効果】加工ヘッド213は静止させ、ワークW1を加工ヘッド213へ接近させる。重量物である加工ヘッド213を移動させないため、省エネルギーが図れる。
【解決手段】図(a)に示すように、ワークW1の上面がワーク抑えプレート216に当接する。更に、ワーク受けプレート215を上昇させると、クッションユニット228、228が縮み、この縮み量に応じてクッションユニット228、228はワークW1をワーク受けプレート215へ付勢する。図(b)に示すように、ワーク受けプレート215とワーク抑えプレート216で挟持されたワークW1に、加工ヘッド213により機械加工を施す。
【効果】加工ヘッド213は静止させ、ワークW1を加工ヘッド213へ接近させる。重量物である加工ヘッド213を移動させないため、省エネルギーが図れる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多軸ヘッドに設けられた複数個の工具によってワークに加工を施す工作機械及びそれを用いた加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載されるエンジンのシリンダブロックやミッションケース等をはじめとする各種の構造部材は、例えば、複数個の工具を配設した多軸ヘッド(ギャングヘッドとも称呼される)を備える工作機械を用い、ワークに対する機械加工を施すことで作製される。この種の工作機械としては、本出願人が特許文献1(特に図2参照)にて提案した構成のものが例示される。
【0003】
特許文献1記載の工作機械は、位置決め固定された加工ユニットと、該加工ユニットに対して接近又は離間する治具ユニットとを備える。ワークを載置した治具ユニットが加工ユニットの下方に配置されると、昇降駆動部が付勢され、これに追従して昇降台が機台に支持されながら上昇し、治具ユニットごとワークを支承しながら加工ユニットに向かって接近させる。その後、ワークに対して機械加工が施される。
【0004】
また、ギャングヘッドと呼ばれる加工ヘッドにより、ワークに機械加工を施す工作機械が多数提案されてきた(例えば、特許文献2(図1、図2)参照。)。
【0005】
特許文献2の図1に示されるように、加工ユニット(14)(括弧付き数字は、特許文献2に記載された符号を示す。以下同様)は、6個の多軸加工ヘッド(82)を備え、全体がY方向に移動する。
また、搬送ライン(16)にクランプユニット(12)が設けられる。クランプユニット(12)は、Y方向に直交するX方向に搬送される。
クランプユニット(12)は、特許文献2の図2に示されるように、進退アーム(46、48)を備え、これらの進退アーム(46、48)でワーク(W)が挟持される。
【0006】
特許文献2の構造では、重量物である加工ユニット(14)を、Y方向に移動するため、移動に費やすエネルギーが嵩む。
また、クランプユニット(12)は、搬送ライン(16)で搬送され、所定位置で止められ、その位置で加工ユニット(14)により、機械加工が施されるが、クランプユニット(12)の停止位置は正確である必要がある。正確にするには搬送速度を下げることや、停止位置でノックピンを打ち込むことなどの配慮が必要となる。
結果、搬送ライン(16)の構造が複雑化すると共に搬送速度を上げることが困難になる。
【0007】
省エネルギーの観点から加工ユニットは静止させることが望まれ、生産性向上の観点から搬送ラインの高速化が求められる。
すなわち、加工ユニットは移動させる必要が無く、搬送ラインを高速にすることができる工作機械が望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第4382015号公報
【特許文献2】特開2011−240466公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1記載の工作機械の構成によれば、簡素化・小型化を図ることが可能であるが、近時、さらなる簡素化・小型化が要請されている。このような工作機械は軽量であるために運搬が容易であり、据置型ではなく、ポータブル型とし得る。この場合、工作機械を任意の場所に配置できるので、工場や作業ステーションのレイアウトの自由度が増すという利点があるからである。
【0010】
本発明は上記した課題を解決するためになされたものであり、一層簡素化・小型化され、容易に運搬することが可能である工作機械及びそれを用いた加工方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、加工ユニットを移動させる必要が無く、搬送ラインを高速にすることができる工作機械を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記の課題を解決するために、請求項1に係る発明は、多軸ヘッドに設けられた複数個の工具によってワークに加工を施す工作機械であって、
基台と、
前記多軸ヘッドに対向する位置に配設され、且つワークを保持するワーク保持盤と、
前記ワーク保持盤を前記多軸ヘッドに対して相対的に離間又は接近する方向に変位させる変位機構と、
を備え、
前記ワーク保持盤又は前記多軸ヘッドのいずれか一方を前記基台で支持するとともに、前記ワーク保持盤又は前記多軸ヘッドの残余の一方を、前記変位機構によって支持した片持ち支持式であり、
且つ前記ワーク保持盤が前記多軸ヘッドに対して相対的に変位するときに該ワーク保持盤又は該多軸ヘッドを案内する案内手段を有することを特徴とする。
【0012】
なお、文言「ワーク保持盤が多軸ヘッドに対して相対的に離間又は接近する方向に変位する」は、「位置決め固定された多軸ヘッドに対してワーク保持盤が離間又は接近するように変位する」場合と、「位置決め固定されたワーク保持盤に対して多軸ヘッドが離間又は接近するように変位する」場合とを含む。すなわち、本発明においては、変位機構の作用下に変位するものがワーク保持盤又は多軸ヘッドのいずれであってもよい。
【0013】
また、文言「片持ち支持式」は、ワーク保持盤が多軸ヘッドに対して相対的に変位する方向が水平方向である場合のみでなく、鉛直方向である場合をも含むものとする。
【0014】
片持ち支持式としたことにより、ワーク保持盤を変位させるためないし支持するための高剛性な機台が不要となる。従って、工作機械の構成が簡素となるとともに、小型且つ軽量化を図ることができる。
【0015】
このような工作機械は、運搬することが容易である。換言すれば、容易に移動させることができる。このため、任意の場所に配置できるので、工場や作業ステーションのレイアウトの自由度が向上するという利点も得られる。
【0016】
しかも、変位するワーク保持盤又は多軸ヘッドを案内手段によって案内するので、ワークが工具に対して位置ズレを起こすことが回避される。このため、ワークにおける加工を施すべき本来の箇所に対し、加工が施される。このような理由から、加工精度が良好となる。
【0017】
なお、請求項2に係る発明では、ワーク保持盤又は多軸ヘッドの中の変位機構で支持された一方を、補助支持部材によって補助的に支持するようにしてもよい。これにより、ワーク保持盤又は多軸ヘッドを一層安定に支持することができる。
【0018】
この場合、補助支持部材は、ワーク保持盤又は多軸ヘッドが変位することに追従して前進又は後退させればよい。これにより、補助支持部材を設けたことに起因してワーク保持盤又は多軸ヘッドが変位することが妨げられることが回避される。
【0019】
また、請求項3に係る発明では、基台に対して車輪を設けることが好ましい。これにより、工作機械を移動させることが一層容易となる。
【0020】
さらに、請求項4に係る発明では、加工屑を捕集する加工屑捕集手段を設けることが好ましい。これにより作業環境に加工屑が散乱することを回避することができるので、作業環境を清潔に保つことができる。加工屑を容易に捕集するためには、加工屑捕集手段を多軸ヘッドの下方に配置すればよい。
【0021】
請求項5に係る発明では、この加工屑捕集手段にも、車輪を設けるようにしてもよい。これにより、工作機械が加工屑捕集手段を含む場合であっても、容易に移動させることができる。
【0022】
また、請求項6に係る発明は、ワーク保持盤又は多軸ヘッドの一方を基台で支持するとともに、前記ワーク保持盤又は前記多軸ヘッドの残余の一方を変位機構で支持した片持ち支持式の工作機械を用いてワークに対して機械加工を施す加工方法であって、
前記多軸ヘッドに対向する位置に配設された前記ワーク保持盤にワークを保持する工程と、
前記変位機構を付勢することで前記ワーク保持盤を前記多軸ヘッドに対して相対的に接近するように変位させることにより、該ワーク保持盤に保持されたワークを前記多軸ヘッドに接近させる工程と、
前記多軸ヘッドに設けられた複数個の工具によって前記ワークに加工を施す工程と、
前記変位機構を付勢することで前記ワーク保持盤を前記多軸ヘッドに対して相対的に離間するように変位させることにより、該ワーク保持盤に保持された加工済の前記ワークを前記多軸ヘッドに対して離間させる工程と、
を有し、
前記ワーク保持盤が前記多軸ヘッドに対して相対的に変位するときに該ワーク保持盤又は該多軸ヘッドを案内手段で案内することを特徴とする。
【0023】
このような過程を経ることにより、片持ち支持式の工作機械を用い、ワークに対して高精度な加工を施すことができる。変位するワーク保持盤又は多軸ヘッドを案内手段によって案内するので、ワークが工具に対して位置ズレを起こすことが回避され、ワークにおける加工を施すべき本来の箇所に対して加工が施されるからである。
【0024】
請求項7に係る発明では、この場合、加工屑捕集手段によって加工屑を捕集すると、作業環境に加工屑が散乱することを回避することができるので好ましい。
【0025】
請求項8に係る発明は、加工ヘッドに、ワークを接近させて前記ワークに加工を施す工作機械であって、
前記ワークを載せるワーク受けプレートと、前記加工ヘッドに設けられ前記ワーク受けプレートを前記加工ヘッドへ接近するように移動させるワーク受けプレート移動機構と、前記加工ヘッドと前記ワーク受けプレートとの間に配置され前記ワークが前記加工ヘッドへ所定位置まで接近した後に前記ワーク受けプレートへ前記ワークを押圧するワーク抑えプレートとを備えていることを特徴とする。
【0026】
請求項9に係る発明では、加工ヘッドからスピンドル軸が下へ延ばされ、
ワーク受けプレートとワーク抑えプレートの一方に位置決めノックピンが設けられ、他方にノックピンが差し込まれるノック穴が設けられ、
ノックピンとノック穴とにより、ワーク受けプレートにワーク抑えプレートが位置決めされることを特徴とする。
【0027】
請求項10に係る発明では、加工ヘッドとワーク受けプレートの一方にガイドポストが設けられ、他方にガイドポストが差し込まれるガイドブッシュが設けられ、
ガイドポストとガイドブッシュとによりガイドされつつ、ワーク受けプレートが、加工ヘッドへ接近することを特徴とする。
【0028】
請求項11に係る発明では、ワーク受けプレート移動機構は、1個の流体圧シリンダユニットからなり、
この流体圧シリンダユニットのピストンロッドが、ワーク受けプレートにワークを加えた総合的重心点又はその近傍を通過するように、流体圧シリンダユニットが配置されていることを特徴とする。
【0029】
請求項12に係る発明では、ワーク受けプレート移動機構は、複数個の流体圧シリンダユニットからなり、
複数本のピストンロッドを1本に集約してなる仮想的中心軸が、ワーク受けプレートにワークを加えた総合的重心点又はその近傍を通過するように、流体圧シリンダユニットが、配置されていることを特徴とする。
【0030】
請求項13に係る発明では、ワーク受けプレートとワーク抑えプレートとの間に、ワークが挟持された際、両プレートを機械的に結合するクランプ機構が設けられている。
【0031】
請求項14に係る発明では、加工前のワークをワーク搬送機構からワーク受けプレートへ移載する、又は加工済みワークをワーク受けプレートからワーク搬送機構へ移載することができるように、ワーク搬送機構の通過を許容する貫通溝が、ワーク受けプレートに設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0032】
請求項1に係る発明によれば、ワーク保持盤又は多軸ヘッドのいずれか一方を変位機構によって支持する片持ち支持式としているので、工作機械の構成を簡素化し得るとともに、小型化・軽量化を図ることができる。しかも、変位するワーク保持盤又は多軸ヘッドのいずれか一方を案内手段によって案内するようにしているので、ワークが位置ズレを起こすことが回避される。このため、加工精度が良好となる。
【0033】
請求項2に係る発明では、ワーク保持盤又は多軸ヘッドを一層安定に支持することができる。
【0034】
請求項3に係る発明では、工作機械を移動させることが一層容易となる。
【0035】
請求項4に係る発明では、作業環境に加工屑が散乱することを回避することができるので、作業環境を清潔に保つことができる。加工屑を容易に捕集するためには、加工屑捕集手段を多軸ヘッドの下方に配置すればよい。
【0036】
請求項5に係る発明では、工作機械が加工屑捕集手段を含む場合であっても、容易に移動させることができる。
【0037】
請求項6に係る発明では、片持ち支持式の工作機械を用い、ワークに対して高精度な加工を施すことができる。変位するワーク保持盤又は多軸ヘッドを案内手段によって案内するので、ワークが工具に対して位置ズレを起こすことが回避され、ワークにおける加工を施すべき本来の箇所に対して加工が施されるからである。
【0038】
請求項7に係る発明では、作業環境に加工屑が散乱することを回避することができる。
【0039】
請求項8に係る発明では、加工ヘッドは静止させ、ワークを加工ヘッドへ接近させる。重量物である加工ヘッドを移動させないため、省エネルギーが図れる。
【0040】
また、加工ヘッドにワーク受けプレート移動機構を付設し、このワーク受けプレート移動機構でワーク受けプレートを加工ヘッドへ接近させる。ワーク受けプレートとワーク抑えプレートでワークを挟持しながら、ワークを加工ヘッドへ接近させる。すなわち、ワーク搬送ラインからワークを分離して、加工ヘッドへ接近させるため、ワーク搬送ラインにおける搬送速度を高めることができる。
【0041】
したがって、本発明によれば、加工ユニットは移動させる必要が無く、搬送ラインを高速にすることができる工作機械が提供される。
【0042】
請求項9に係る発明では、ノックピンとノック穴とにより、ワーク受けプレートにワーク抑えプレートが位置決めされる。ワーク受けプレートにワーク抑えプレートが位置決めされるため、挟持されるワークの位置が正確に定まる。
【0043】
請求項10に係る発明では、加工ヘッドとワーク受けプレートの一方にガイドポストが設けられ、他方にガイドポストが差し込まれるガイドブッシュが設けられる。ガイドポストとガイドブッシュとによりガイドされつつ、ワーク受けプレートが、加工ヘッドへ接近するため、ワークは加工ヘッドへ移動する途中で、振れる心配がない。
【0044】
請求項11に係る発明では、ワーク受けプレート移動機構は、1個の流体圧シリンダユニットからなり、流体圧シリンダユニットのピストンロッドが、ワーク受けプレートにワークを加えた総合的重心点又はその近傍を通過するように、流体圧シリンダユニットが配置されている。
重心点をシリンダユニットで引くようにすることで、ワーク受けプレート移動機構は、1個の流体圧シリンダユニットで済ませることができる。1個の流体圧シリンダユニットであれば、装置が簡単になる設備コストを低減することが可能となる。
【0045】
請求項12に係る発明では、ワーク受けプレート移動機構は、複数個の流体圧シリンダユニットからなり、
複数本のピストンロッドを1本に集約してなる仮想的中心軸が、ワーク受けプレートにワークを加えた総合的重心点又はその近傍を通過するように、流体圧シリンダユニットが、配置されている。
複数本の流体圧シリンダで1個のワーク受けプレートを昇降させる場合であっても、複数個のピストンロッドの仮想的中心軸を総合的重心に合致させることにより、ピストンロッドに曲げが掛かることを防止できる。
【0046】
請求項13に係る発明では、ワーク受けプレートとワーク抑えプレートとの間に、ワークが挟持された際、両プレートを機械的に結合するクランプ機構が設けられている。加工ヘッドによる機械加工の際に、ワークに切削抵抗に相当する力が加わる。クランプ機構が無いときには、ワーク抑えプレートで強くワークを押す必要があるため、ワーク抑えプレートに付属する弾性部材を強化する必要がある。
この点、本発明によれば、クランプ機構を備えることにより、ワーク抑えプレートに付属する弾性部材は弱くて済み、弾性部材の軽量、小型化が図れる。
【0047】
請求項14に係る発明では、加工前のワークをワーク搬送機構からワーク受けプレートへ移載する、又は加工済みワークをワーク受けプレートからワーク搬送機構へ移載することができるように、ワーク搬送機構の通過を許容する貫通溝が、ワーク受けプレートに設けられている。
ワーク受けプレートでワーク搬送機構(ワーク搬送ライン)上の加工前のワークを掬い上げることができる。ワーク受けプレートでワーク搬送機構(ワーク搬送ライン)上へ加工済みワークを戻すことができる。
【0048】
通常であれば、ワーク搬送機構とワーク受けプレートとの間に、ロボットなどのワーク移載機構を配置する必要があるが、本発明によれば、ワーク移載機構は不要であり、工作機械のさらなる簡略化が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の第1実施形態に係る工作機械の全体概略斜視図である。
【図2】図1の工作機械の全体概略側面図である。
【図3】本発明の第2実施形態に係る工作機械の全体概略側面一部断面図である。
【図4】図3の工作機械の平面図ある。
【図5】本発明の第3実施形態に係る工作機械の斜視図である。
【図6】図5の6−6線断面図である。
【図7】図5の7−7線断面図である。
【図8】図3の変更図である。
【図9】本発明に係る工作機械の正面図である。
【図10】ワーク搬送機構の要部斜視図である。
【図11】工作機械の作用説明図である。
【図12】工作機械の作用説明図である。
【図13】クランプ機構の構成を説明する図である。
【図14】クランプ機構の作用図である。
【図15】ワーク受けプレートの変更例を示す図である。
【図16】図15の平面図である。
【図17】ワーク受けプレートの更なる変更例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
以下、本発明に係る加工方法につき、それを実施するための工作機械との関係で好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照して詳細に説明する。
【実施例1】
【0051】
図1及び図2は、それぞれ、本発明の第1実施形態に係る工作機械10の全体概略斜視図、全体概略側面図である。この工作機械10は、基台12と、該基台12に支持された多軸ヘッド14と、矢印A方向に変位することで該多軸ヘッド14に対して接近又は離間するワーク保持盤16とを有する。矢印A方向は水平方向であり、従って、この工作機械10は、いわゆる横型である。
【0052】
この中の基台12は、4本の脚部18a〜18dと、支持部20とからなるフレーム形状をなし、脚部18a〜18dの先端部には、それぞれ、ローラ形状の車輪22が設けられる。車輪22は、いわゆるキャスタと同様に鉛直方向を軸中心として矢印X方向に回動自在であり、且つ図示しないロック機構によってこの回動ができないようにロックされる。車輪22に関する以上の構成及び動作は周知であり、従って、詳細な説明及び図示は省略する。
【0053】
脚部18a、18b同士の間、脚部18c、18d同士の間には、補強用バー24がそれぞれ橋架されている。これら補強用バー24、24によって、基台12の剛性が確保される。
【0054】
基台12の脚部18a、18c同士、脚部18b、18d同士の間には、加工屑を捕集する加工屑捕集手段であり且つ加工屑排出手段を兼ねる長尺なシュータ26が通される。シュータ26のハウジング28には、前記車輪22に比して一層長尺なローラ形状の車輪30が設けられる。勿論、これら車輪30も上記車輪22と同様に矢印X方向に回動自在であり、且つ図示しないロック機構によってこの回動ができないようにロックすることも可能である。なお、シュータ26は、基台12と別個に移動可能とするようにしてもよいし、基台12で該シュータ26を支持することで基台12と一体的に移動可能としてもよい。
【0055】
ハウジング28の図1及び図2における左端には、加工屑を捕集するための捕集口32が上方を臨むようにして開口形成される。この捕集口32には、鉛直下方に向かうに従って該捕集口32を狭小化するように傾斜した傾斜案内部34が形成される。
【0056】
ハウジング28の右端近傍は、図1及び図2における右方に向かうにつれて上昇するように傾斜した後、さらに、水平方向に向かって延在するように形成されている。この水平方向に延在する右端には、加工屑を排出するための排出口36が形成される。該排出口36は、図示しない収集袋で覆われる。
【0057】
さらに、ハウジング28の内部には搬送ベルト38(図2参照)が設けられる。後述するように、捕集口32を介してハウジング28の内部に捕集された加工屑は、搬送ベルト38の作用下に排出口36に搬送され、該排出口36からハウジング28の外部に放出される。
【0058】
基台12の支持部20に支持された多軸ヘッド14には、複数個の工具40が設けられる。これら複数個の工具40は、工具回転付勢機構としての第1モータ42、第2モータ44の作用下に回転動作する。
【0059】
具体的には、第1モータ42の回転軸46と、多軸ヘッド14の下方に配設された工具群(以下「第1工具群」と表記し、参照符号を48とする)との間には第1ギアトレイン50が設けられ、一方、第2モータ44の回転軸52と、多軸ヘッド14の上方に配設された工具群(以下「第2工具群」と表記し、参照符号を54とする)との間には第2ギアトレイン56が設けられる。従って、第1工具群48は、第1モータ42の回転軸46が回転付勢されることに追従して第1ギアトレイン50の作用下に回転動作し、一方、第2工具群54は、第2モータ44の回転軸52が回転付勢されることに追従して第2ギアトレイン56の作用下に回転動作する。
【0060】
なお、多軸ヘッド14の隅部には、ワーク保持盤16に指向して延在する2本のガイドロッド58a、58bが設けられる。これらガイドロッド58a、58bは、多軸ヘッド14における対角線上に配置される(図1参照)。
【0061】
支持部20には、シリンダ支持盤60も支持される。このシリンダ支持盤60には、前記ワーク保持盤16を多軸ヘッド14に対して離間又は接近させるための変位機構であるシリンダ62が支持される。
【0062】
該シリンダ62の変位用ロッド64は、ワーク保持盤16に連結されている。すなわち、工作機械10は、ワーク保持盤16を変位用ロッド64によって支持した、いわゆる片持ち支持式である。勿論、ワーク保持盤16は、変位用ロッド64が前進・後退することに追従し、多軸ヘッド14に対して離間・接近する。
【0063】
シリンダ支持盤60には、その長手方向(矢印A方向)に沿って2本の挿通孔66a、66bが貫通形成される。これら挿通孔66a、66bの内壁には軸受68a、68bが位置決め固定され、且つ前記軸受68a、68bには、補助支持部材としての支持用ロッド70a、70bが摺動自在に挿入される。
【0064】
ワーク保持盤16には、図示しない2個の貫通孔が形成されている。各貫通孔には、止具72を構成する小径なネジ部(図示せず)が通される。該ネジ部は、支持用ロッド70a、70bの先端に螺合される。勿論、止具72の本体は前記貫通孔に比して幅広であり、これにより止具72の抜け止めがなされている。すなわち、ワーク保持盤16は支持用ロッド70a、70bと止具72、72の本体とで挟持されており、この挟持により、ワーク保持盤16が支持用ロッド70a、70bに支持される。
【0065】
また、ワーク保持盤16には、ガイドロッド58a、58bに対向する位置にガイドブッシュ74a、74bが設けられる(図2参照)。ワーク保持盤16が多軸ヘッド14に対して接近する途中で、前記ガイドロッド58a、58bの先端がガイドブッシュ74a、74bの軸受穴76に進入する。このことから諒解される通り、ガイドロッド58a、58b及びガイドブッシュ74a、74bは案内手段として機能する。
【0066】
ワーク保持盤16における多軸ヘッド14に臨む側の端面には、開閉可能なチャック爪78a、78bが設けられる。チャック爪78a、78bが閉状態となることによってワークWが保持され、一方、開状態となることによってワークWが解放される。
【0067】
なお、ワークWとしては、車両に搭載される内燃機関を構成するシリンダブロックやシリンダヘッド、又はミッションケース等が例示される。
【0068】
第1実施形態に係る工作機械10は、基本的には以上のように構成されるものであり、次に、その作用効果につき、ワークWに対して施される加工方法との関係で説明する。
【0069】
先ず、作業者ないしロボットによってワーク保持盤16の所定箇所にワークWを配置し、チャック爪78a、78bを閉状態とする。これにより、ワークWがワーク保持盤16に保持される。
【0070】
次に、第1モータ42及び第2モータ44を付勢し、これにより回転軸46、52を回転付勢する。回転軸46、52の回転駆動力は第1ギアトレイン50、第2ギアトレイン56を介して第1工具群48、第2工具群54にそれぞれ伝達され、その結果、これら第1工具群48、第2工具群54が回転動作を開始する。
【0071】
次に、シリンダ62を付勢することで変位用ロッド64を後退させ、これにより、ワーク保持盤16を多軸ヘッド14に対して接近するように変位させる。
【0072】
この際、支持用ロッド70a、70bが軸受68a、68bに摺接しながら後退する。このため、ワーク保持盤16の変位が妨げられることはない。その一方で、変位用ロッド64及び支持用ロッド70a、70bによるワーク保持盤16に対する支持が維持される。
【0073】
この変位の途中、ガイドロッド58a、58bの先端がガイドブッシュ74a、74bの各軸受穴76に進入して係合する。その結果、ワーク保持盤16の重みによって変位用ロッド64及び支持用ロッド70a、70bが撓むこと、すなわち、ワーク保持盤16が若干下降することが防止される。これにより、ワーク保持盤16が多軸ヘッド14に対して位置ズレを起こすことが回避される。
【0074】
ワークWが工具40に近接すると、該工具40によってワークWに対する機械加工が施される。工具40は、一般的にはドリルやリーマ、タップであり、これらによってワークWに対して穿孔加工が行われ、ワークWにおける各工具40の設置箇所に対応する部位に孔が形成される。上記したように、ワーク保持盤16が多軸ヘッド14に対して位置ズレを起こすことが回避されているので、ワークWに対し、孔を形成すべき本来の箇所に孔を形成することが可能となる。すなわち、加工精度を向上することができる。
【0075】
この穿孔加工が行われる間、加工屑(図示せず)が発生してワークWから落下する。落下した加工屑は、シュータ26の捕集口32に設けられた傾斜案内部34に案内され、搬送ベルト38に向かってさらに落下する。
【0076】
加工屑は、搬送ベルト38の作用下に、図1及び図2における左方から右方に向かって搬送される。加工屑は、最終的に、排出口36から排出されて前記収集袋に収集される。従って、加工屑が散乱して作業環境が汚れることを防止することができる。
【0077】
変位用ロッド64及び支持用ロッド70a、70bは、所定の速度で継続して後退する。従って、ワーク保持盤16及びワークWは、所定の速度で多軸ヘッド14に指向して変位する。すなわち、ワークWに対する穿孔加工が続行される。
【0078】
ワーク保持盤16が予め設定された位置まで変位したとき、シリンダ62が滅勢されて変位用ロッド64及び支持用ロッド70a、70b、ひいてはワーク保持盤16及びワークWが停止する。これにより、所定の深さの孔がワークWに形成されるに至る。その後、第1モータ42及び第2モータ44を滅勢し、これにより第1工具群48、第2工具群54の回転動作を開始する。
【0079】
以上のようにしてワークWに対して機械加工(穿孔加工)を施した後、シリンダ62を再付勢することで変位用ロッド64を前進させる。これに伴い、ワーク保持盤16が多軸ヘッド14に対して離間するように変位する。なお、この変位の途中、ガイドロッド58a、58bの先端がガイドブッシュ74a、74bの軸受穴76から離脱する。
【0080】
この変位の際には、支持用ロッド70a、70bが軸受68a、68bに摺接しながら前進する。従って、このときもワーク保持盤16の変位が妨げられることはなく、且つ支持用ロッド70a、70bによるワーク保持盤16に対する支持が維持される。
【0081】
変位用ロッド64が前進端に到達したときに該変位用ロッド64が停止し、これに伴って支持用ロッド70a、70b及びワーク保持盤16の前進が終了する。その後、チャック爪78a、78bを開状態とすることにより、ワークWが解放される。作業者ないしロボットは、このようにして解放されたワークWをワーク保持盤16から離脱させればよい。
【0082】
このように、第1実施形態においては、変位用ロッド64でワーク保持盤16を支持した片持ち支持式として工作機械10を構成しており、且つ多軸ヘッド14を支持する基台12をフレーム状としている。以上のような理由から、簡素であり、且つ小型で軽量な工作機械10を構成することができる。
【0083】
しかも、工作機械10では、ワーク保持盤16を補助的に支持するものを2本の支持用ロッド70a、70bとしているので、機台でワーク保持盤を支持する工作機械に比して、簡素且つ小型で軽量な構成が維持される。
【0084】
従って、この工作機械10は、移動にさほどの力を必要としない。換言すれば、作業者は、工作機械10を所定の場所まで容易に移動させることができる。
【0085】
別の場所で機械加工を実施する場合、作業者は、加工を実施すべき所定の場所に工作機械10を移動させる。車輪22、30が矢印X方向に沿って回動自在であり、且つ前記ロック機構によって回動を停止させることもできるので、工作機械10を任意の方向に向けることが容易である。
【0086】
以上のように、工作機械10が小型・軽量であり、容易に移動させることができるので、加工ラインの構築や仕様変更の際、工作機械10を含めた各加工装置の配置レイアウトの自由度が向上する。また、工作機械10の設置箇所の省スペース化を図ることもできる。
【0087】
その上、ワーク保持盤16を変位させる際には、該ワーク保持盤16を補助的に支持する2本の支持用ロッド70a、70bを後退ないし前進させるようにしている。このため、ワーク保持盤16が変位することが妨げられることもない。
【0088】
加えて、この場合、ワークWをワーク保持盤16に取り付ける作業や、ワーク保持盤16から取り外す作業が容易である。また、工作機械10からの多軸ヘッド14の取り外し、及び取り付けも容易であるので、多軸ヘッド14を円滑に交換することができる。
【実施例2】
【0089】
上記した第1実施形態では、ワーク保持盤16が水平方向に変位する横型の工作機械10について説明したが、工作機械は、ワーク保持盤16を鉛直方向に沿って変位させる、いわゆる縦型であってもよい。この構成の工作機械につき、第2実施形態として説明する。なお、図1及び図2に示される構成要素と同一の構成要素には同一の参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0090】
図3は、第2実施形態に係る工作機械90の全体概略側面一部断面図であり、図4はその平面図である。なお、図3は、図4中の3−3矢視断面に相当する。
【0091】
この工作機械90は、基台としての台車92と、該台車92に設けられた2本の支柱94a、94b(図4参照)に支持された多軸ヘッド14と、図3中の矢印B方向に変位することで該多軸ヘッド14に対して接近又は離間するワーク保持盤16とを有する。なお、図3中の矢印B方向が鉛直方向であることは勿論である。
【0092】
この場合、台車92の下端面の四方の隅部にローラ形状の車輪96が設けられる。車輪96も車輪22、30(図1及び図2参照)と同様に回動自在であり、且つ図示しないロック機構によってこの回動ができないようにロックされる。
【0093】
図3に示すように、台車92の上端面における多軸ヘッド14の下方に対応する位置には、加工屑捕集手段としての捕集トレー98が設置される。この場合、捕集トレー98は単なる容器であり、搬送ベルト38(図2参照)は設けられていない。
【0094】
上記したように、台車92の上端面には2本の支柱94a、94bが立設される(図4参照)。また、該支柱94a、94bの各々に対し、水平方向に沿って延在するハンドル100a、100bが設けられる。さらに、支柱94a、94bと台車92の上端面には、鉛直方向に対して傾斜した補強用柱102a、102bが橋架される。この補強用柱102a、102bにより、支柱94a、94bが堅牢に支持される。
【0095】
支柱94a、94b同士の間には、2本の支持用板104a、104bが橋架される。これら支持用板104a、104bには、シリンダ62が支持される。
【0096】
第1実施形態と同様に、シリンダ62を構成する変位用ロッド64の先端部にはワーク保持盤16が連結される。すなわち、工作機械90は、ワーク保持盤16が変位用ロッド64によってのみ支持された片持ち支持式であり、ワーク保持盤16は、変位用ロッド64が前進(下降)又は後退(上昇)することに追従して下降又は上昇する。
【0097】
ワーク保持盤16において、多軸ヘッド14側を臨む端面には、対角線上にガイドブッシュ74a、74bが設けられるとともに、開閉可能なチャック爪78a、78bが設けられる。この構成については第1実施形態と同様であり、従って、その詳細な説明を省略する。
【0098】
支柱94a、94bの上端には、それぞれ、鉛直下方に指向して傾斜したアーム部材106a、106bが設けられる(図4参照)。前記多軸ヘッド14は、これら2本のアーム部材106a、106bに支持されている。
【0099】
多軸ヘッド14において、ワーク保持盤16を臨む端面には、ガイドブッシュ74a、74bに対向する位置にガイドロッド58a、58bが設けられ、且つ第1モータ42の作用下に回転動作する第1工具群48、第2モータ44の作用下に回転動作する第2工具群54が設けられる。この構成については第1実施形態と同様であり、従って、その詳細な説明を省略する。
【0100】
第2実施形態に係る工作機械90を用いてのワークWに対する機械加工は、以下のようにして実施される。
【0101】
先ず、第1実施形態に準拠し、チャック爪78a、78bを閉状態としてワークWをワーク保持盤16に保持した後、第1モータ42及び第2モータ44を付勢することにより、第1工具群48、第2工具群54を回転動作させる。そして、シリンダ62を付勢する。
【0102】
この場合、変位用ロッド64が後退することに伴ってワーク保持盤16が矢印Bに沿って上昇する。すなわち、ワーク保持盤16が多軸ヘッド14に対して接近するように変位する。この変位の途中でガイドロッド58a、58bの先端がガイドブッシュ74a、74bの各軸受穴76に進入し、これにより、ワーク保持盤16が水平方向に位置ズレを起こすことが回避される。
【0103】
以降は上記と同様にして、工具40により、ワークWに対する機械加工、一般的には穿孔加工が施される。この場合、ワークWにおける各工具40の設置箇所に対応する部位に孔が形成される。上記したように、ワーク保持盤16が多軸ヘッド14に対して位置ズレを起こすことが回避されているので、ワークWに対し、孔を形成すべき本来の箇所に孔を形成することができる。
【0104】
この穿孔加工が行われる間に発生した加工屑がワークWから落下した場合、該加工屑は、捕集トレー98によって捕集される。従って、加工屑が散乱して作業環境が汚れることを防止することができる。
【0105】
変位用ロッド64が予め設定された位置まで所定の速度で継続して後退することにより、ワークWに所定の深さの孔が形成される。その後、シリンダ62が滅勢されることで変位用ロッド64、ひいてはワーク保持盤16及びワークWが停止するとともに、第1モータ42及び第2モータ44が滅勢されることで第1工具群48、第2工具群54の回転動作が停止する。
【0106】
以上のようにしてワークWに対して機械加工(穿孔加工)を施した後、シリンダ62を再付勢することで変位用ロッド64を前進させる。これに伴い、ワーク保持盤16が下降し、結局、多軸ヘッド14に対して離間するように変位する。この変位の途中で、ガイドロッド58a、58bの先端がガイドブッシュ74a、74bの軸受穴76から離脱する。
【0107】
変位用ロッド64が前進端に到達したときに該変位用ロッド64が停止し、これに伴ってワーク保持盤16及びワークWの前進(下降)が終了する。その後、チャック爪78a、78bが開状態とされてワークWが解放され、さらに、作業者ないしロボットにより、解放されたワークWがワーク保持盤16から離脱される。
【0108】
このように、変位機構であるシリンダ62の変位用ロッド64のみでワーク保持盤16を支持する片持ち支持式を採用した第2実施形態においても、第1実施形態と同様の効果が得られる。この場合も、ワーク保持盤16を変位させるためないし支持するための高剛性の機台を設ける必要がなく、簡素であり、且つ小型で軽量な工作機械90とすることができるからである。
【0109】
勿論、この工作機械90も移動にさほどの力を必要としないので、作業者は、工作機械90を所定の場所まで容易に移動させることができる。車輪96が回動自在であり、且つロック機構によって回動を停止させることもできるので、工作機械90を任意の方向に向けることが容易である。なお、移動の際には、作業者は、ハンドル100a、100bを把持すればよい。
【0110】
本発明は、上記した第1及び第2実施形態に特に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
【0111】
例えば、第1及び第2実施形態の双方において多軸ヘッド14を位置決め固定するとともに、ワーク保持盤16を変位させるようにしているが、これとは逆に、ワーク保持盤16を基台12(又は台車92)位置決め固定するとともに、多軸ヘッド14を変位させるようにしてもよい。
【0112】
また、第2実施形態においても補助支持用の支持用ロッド70a、70bを設けるようにしてもよいことは勿論である。逆に、第1実施形態において、支持用ロッド70a、70bを省略するようにしてもよい。第1実施形態では、基台12又はハウジング28等にハンドル100a、100bを設けるようにしてもよい。
【0113】
さらに、変位機構はシリンダ62に特に限定されるものではなく、ボールねじやラックアンドピニオン機構を変位機構として採用するようにしてもよい。
【0114】
さらにまた、多軸ヘッド14にガイドブッシュ74a、74bを設ける一方、ワーク保持盤16にガイドロッド58a、58bを設けるようにしてもよい。
【0115】
いずれにおいても、ガイドブッシュ74a、74bの各軸受穴76にガイドロッド58a、58bが常時係合するようにしてもよい。
【実施例3】
【0116】
上記した第2実施形態では、ワークWをワーク保持盤16に載置する際、ロボットなどのワーク移載機構を必要とするが、ワーク移載機構を不要にすれば、工作機械のさらなる簡略化が図れる。このような構成の工作機械につき、第3実施形態として説明する。
【0117】
図5に示すように、工作機械210は、基礎又は機台に載るように水平に延びるベースフレーム211、211と、これらのベースフレーム211、211から上へ延びる門型フレーム212と、この門型フレーム212で支持される加工ヘッド213と、この加工ヘッド213に設けられるワーク受けプレート移動機構214と、このワーク受けプレート移動機構214で上下に移動されるワーク受けプレート215と、このワーク受けプレート215と加工ヘッド213との間に配置されるワーク抑えプレート216とを、主たる要素として備える。
【0118】
図6に示すように、加工ヘッド213は、下へ延びる複数本(この例では2本)のスピンドル軸218、219を備える。これらのスピンドル軸218、219にドリルやエンドミルなどの切削工具221、222が取り外し可能に取付けられる。
【0119】
加工ヘッド213に駆動ギヤ223や従動ギヤ224、225が内蔵され、駆動ギヤ223がスピンドルモータ226で回されることで、従動ギヤ224、225が回され、これらの従動ギヤ224、225によりスピンドル軸218、219が高速で回される。加工ヘッド213は複数本のスピンドル軸218、219を密集して備えるため、ギャングヘッドとも呼ばれる。
【0120】
加工ヘッド213からガイドバー227、227が下に延ばされ、これらのガイドバー227、227で上下動可能にワーク抑えプレート216が案内される。ワーク抑えプレート216は、加工ヘッド213の下面から延びるクッションユニット228、228により吊される。
【0121】
クッションユニット228は、円筒内に多数枚の皿ばねを積層したものや、スプリングと液圧ダンパーとを一体化したものが適当である。ワーク抑えプレート216が上昇することを抑制する下向き反力を発生させる。
【0122】
図7に示すように、ワーク受けプレート移動機構214は、ピストンロッド229が鉛直軸に沿って下へ延びる流体圧シリンダユニット230である。
ピストンロッド229の先端(下端)に、ワーク受けプレート215をナット231、231により固定する。
【0123】
加工ヘッド213の下面からガイドポスト232、232を延ばす。ワーク受けプレート215にガイドブッシュ233、233を設ける。流体圧シリンダユニット230内は、ピストン234により下室235と上室236とに区分される。下室235に高圧流体を供給することでピストン234を上昇させることができ、上室236に高圧流体を供給することでピストン234を下降させることができる。
【0124】
ガイドポスト232、232にガイドブッシュ233、233を嵌める。ガイドポスト232、232とガイドブッシュ233、233でワーク受けプレート215の水平度が保たれる。上下移動中に、ワーク受けプレート215が揺れる心配はない。結果、1本のピストンロッド229のみでワーク受けプレート215を円滑に上下させることができる。
【0125】
なお、図8に示すように、ガイドポスト232、232は、ワーク受けプレート215から上へ延ばしてもよい。加工ヘッド213にガイドブッシュ233、233を設け、これらのガイドブッシュ233、233にガイドポスト232、232を挿通させる。
すなわち、加工ヘッド213とワーク受けプレート215の一方にガイドポスト232が設けられ、他方にガイドポスト232が差し込まれるガイドブッシュ233が設けられ、ガイドポスト232とガイドブッシュ233とによりガイドされつつ、ワーク受けプレート215が、加工ヘッド213へ接近するようにすればよく、ガイドポスト232、232が上に延びるか下に延びるかは任意である。
【0126】
次に、本発明の工作機械210へ加工前のワークを供給し、工作機械210から加工済みワークを受け取る役割を果たすワーク搬送機構について、図9に基づいて説明する。
図9に示すように、ワーク搬送機構240は、門型フレーム212の下部を水平に横断する水平移動部材241と、この水平移動部材241に所定ピッチで立てられたアーム242と、このアーム242の上部に取付けられる支持バー243と、この支持バー243から上に延ばされる大小の第1受けピン244及び第2受けピン245とからなる。
【0127】
すなわち、ワーク搬送機構240は、加工前のワークW1及び加工済みワークW2を水平にだけ搬送する機構であり、上下へ移動することはない。
なお、本実施例におけるワークW1、W2は、無段変速機用ケース又はこのケースの開口を塞ぐリッドであるが、ワークW1の形態、種類、用途は任意である。
【0128】
図10に示すように、アーム242はC型アームである。
そして、ワーク受けプレート215に、T字形を呈する貫通溝247を設ける。この貫通溝247は、相対的に支持バー243とアーム242の通過を許容する溝である。
支持バー243とアーム242は、上下に移動しない。
実線で示すワーク受けプレート215を下げると、貫通溝247が支持バー243とアーム242に干渉することなく、想像線の位置に至る。すなわち、ワーク受けプレート215は、実線の位置から想像線の位置まで、上下に移動可能となる。
【0129】
なお、ワーク受けプレート215には、第1受け面248と、第1位置決めピン429と、第2受け面251と、第2位置決めピン252とが、設けられている。
【0130】
以上の構成からなる工作機械の作用を、図11及び図12に基づいて説明する。
図11(a)に示すように、ワーク受けプレート215はワークW1の下方に保持されている。図10で説明したように、アーム242がワーク受けプレート215を迂回するようにC型を呈しているため、アーム242がワーク受けプレート215に干渉することなく、加工前のワークW1は、ワーク搬送機構240により、水平に搬送される。所定位置でワークW1が停められる。
【0131】
図11(b)に示すように、ワーク受けプレート215を上げることにより、ワークW1はワーク受けプレート215で掬い上げられる。ワークW1は、第1受けピン244及び第2受けピン245から離れるが、第1位置決めピン429と第2位置決めピン252とで水平方向の位置決めがなされ、第1受け面248と第2受け面251とで鉛直方向の位置決めがなされる。図ではワーク受けプレート215は上昇の途中であって、ワークW1とワーク抑えプレート216との間には隙間がある。
【0132】
ワーク受けプレート215を更に上昇させると、図12(a)に示すように、ワークW1の上面がワーク抑えプレート216に当接する。更に、ワーク受けプレート215を上昇させると、クッションユニット228、228が縮み、この縮み量に応じてクッションユニット228、228はワークW1をワーク受けプレート215へ付勢する。
なお、加工ヘッド213の下面とワーク抑えプレート216との間に介在して加工ヘッド213の下面からワーク抑えプレート216を吊したクッションユニット228、228の例を示したが、ワーク抑えプレート216は、上下にスライドはするものの、ワーク抑えプレート216の上昇端を図示しないストッパ等で止め、加工ヘッド213の下面とワーク抑えプレート216との間にはクッションユニットが介在せず、図示しない円筒内に多数枚の皿ばねを積層したものや図示しないスプリングと液圧ダンパーとを一体化したもので構成された図示しないクッションユニットを、ワーク抑えプレート216の下面に設置してワーク抑えプレート216の下面とワークW1との間に介在させても構わない。そうすると、ワーク受けプレート215を上昇させると、ワークW1の上面がワーク抑えプレート216の下面に設置した図示しないクッションユニットに当接する。更に、ワーク受けプレート215を上昇させると、図示しないクッションユニットが縮み、この縮み量に応じて図示しないクッションユニットはワークW1をワーク受けプレート215へ付勢する。
【0133】
図12(b)に示すように、ワーク受けプレート215とワーク抑えプレート216で挟持されたワークW1に、加工ヘッド213の切削工具221、222により機械加工を施す。機械加工を終えたら、図12(a)→図11(b)→図11(a)の順で、ワーク受けプレート215を下げ、加工済みワークW2を支持バー243へ受け渡す。
【0134】
以上の説明から明らかなように、加工ヘッド213は静止させ、ワークW1を加工ヘッド213へ接近させる。重量物である加工ヘッド213を移動させないため、省エネルギーが図れる。
【0135】
また、加工ヘッド213にワーク受けプレート移動機構(図7、符号214)を付設し、このワーク受けプレート移動機構でワーク受けプレート215を加工ヘッド213へ接近させる。ワーク受けプレート215とワーク抑えプレート216でワークW1を挟持しながら、ワークW1を加工ヘッド213へ接近させる。すなわち、ワーク搬送機構240からワークW1を分離して、加工ヘッド213へ接近させるため、ワークW1に影響されることなく、ワーク搬送機構240の搬送速度を高めることができる。
【0136】
次に、好ましい変形例を説明する。
図13に示すように、ワーク受けプレート215に位置決めノックピン254(以下、ノックピン254と記す。)が設けられ、ワーク抑えプレート216に柱状部材255が設けられ、この柱状部材255にノック穴256が設けられる。
加えて、ノックピン254に側方へ開口する溝257を形成し、柱状部材255の近傍にてワーク抑えプレート216にクランプ機構258を設ける。
【0137】
クランプ機構258は、斜め溝と軸方向溝を連続させてなるカム溝259が内蔵された油圧シリンダが好適である。この油圧シリンダを縮動させると、斜め溝によりピストンロッドが回転する。次に、軸方向溝によりピストンロッドは、回転しないで軸方向へ移動する。この油圧シリンダは、旋回と直線移動とを連続して実施するシリンダユニットである。
【0138】
先ず、ピストンロッド229により、ワーク受けプレート215を上昇させる。すると、ノック穴256へノックピン254が嵌合する。
図14に示すように、クランプ機構258を作動させる。すると、クランプ爪261が矢印(1)のように90°程度旋回した後、矢印(2)のように移動して、ノックピン254を柱状部材255へ引きつける。結果、ワーク受けプレート215にワーク抑えプレート216がクランプされる。
【0139】
すなわち、ノックピン254とノック穴256とにより、ワーク受けプレート215にワーク抑えプレート216が位置決めされる。ワーク受けプレート215にワーク抑えプレート216が位置決めされるため、挟持されるワークの位置が正確に定まる。
【0140】
図12において、加工ヘッド213による機械加工の際に、ワークW1に切削抵抗に相当する力が加わる。クランプ機構が無いときには、ワーク抑えプレート216で強くワークW1を押す必要があるため、ワーク抑えプレート216に付属する弾性部材(クッションユニット228、228)を強化する必要がある。
【0141】
この点、図14の構造であれば、クランプ機構258、258を備えることにより、ワーク抑えプレート216に付属する弾性部材(図6、符号228)は弱くて済み、弾性部材の軽量、小型化が図れる。
なお、天地を逆にして、ワーク受けプレート215に柱状部材255を設け、ワーク抑えプレート216にノックピン254を設けてもよい。
また、加工ヘッド213の下面とワーク抑えプレート216との間に介在して加工ヘッド213の下面からワーク抑えプレート216を吊したクッションユニット228、228の例(図12)を示したが、ワーク抑えプレート216は上下にスライドはするものの、ワーク抑えプレート216の上昇端を図示しないストッパ等で止め、加工ヘッド213の下面とワーク抑えプレート216との間にはクッションユニットが介在せず、図示しない円筒内に多数枚の皿ばねを積層したものや図示しないスプリングと液圧ダンパーとを一体化したもので構成された図示しないクッションユニットを、(図10参照)ワーク受けプレート215の上面の第1受け面248がある部材及び第2受け面251がある部材に設置してワーク受けプレート215の上面とワークW1との間に介在させても構わない。そうすると、ワーク受けプレート215を上昇させると、ワークW1の上面がワーク抑えプレート216の下面に当接する。更に、ワーク受けプレート215を上昇させると、図示しないクッションユニットが縮み、この縮み量に応じて図示しないクッションユニットはワークW1をワーク抑えプレート216へ付勢する。なお、図示しないクッションユニットを、ワーク抑えプレート216の下面に設置してワーク抑えプレート216の下面とワークW1との間に介在させても構わない。
【0142】
また、図15に示すように、1個のワーク受けプレート215に2個のワークW1、W1を載せるようにしてもよい。
この場合、図16に示すように、2個のワークW1、W1の重心と、1個のワーク受けプレート215の重心とを統合した総合的重心点にピストンロッド229の中心を合致させることができる。釣り合いが取れているために、1本のピストンロッド229だけで、ワーク受けプレート215を昇降させることができる。
【0143】
なお、理想的には、総合的重心点にピストンロッド229の中心を合致させるが、ピストンロッド229の中心は、ピストンロッド229の外径寸法程度は総合的重心点からオフセットすることが許容される。小さな不均衡であればガイドポスト232、232でカバーされるからである。
【0144】
結果、図7に示すように、ワーク受けプレート移動機構214は、1個の流体圧シリンダユニットで済ませることができる。1個の流体圧シリンダユニットであれば、装置が簡単になる設備コストを低減することが可能となる。
【0145】
なお、ワーク受けプレート移動機構214は、複数個(複数本)の流体圧シリンダユニットで構成することもできる。
すなわち、図17(a)に示すように、2本のピストンロッド229、229でワーク受けプレート215を昇降させるようにしてもよい。この場合、複数本のピストンロッド229、229を1本に集約してなる仮想的中心軸263を定める。具体的には、ピストンロッド229、229同士を結んだ線262の中点が仮想的中心軸263となる。
【0146】
この仮想的中心軸263が総合的重心点に合致する若しくは略合致するように、2本のピストンロッド229、229を位置決めする。ピストンロッド229、229に曲げが掛かりにくくなる。結果、ピストンロッド229、229を大径にする必要が無く、小径化が可能となり、ワーク受けプレート移動機構214の小型、軽量化が図れる。
【0147】
また、図17(b)に3本のピストンロッド229、229、229でワーク受けプレート215を昇降させるようにしてもよい。この場合、中央のピストンロッド229が仮想的中心軸263となる。この仮想的中心軸263が総合的重心点に合致する若しくは略合致するように、3本のピストンロッド229、229、229を位置決めする。ピストンロッド229、229、229に曲げが掛かりにくくなる。結果、ピストンロッド229、229、229を大径にする必要が無く、小径化が可能となり、ワーク受けプレート移動機構214の小型、軽量化が図れる。
【0148】
なお、図13及び図14で説明したクランプ機構258は、安価なロータリアクチュエータと安価なシリンダとを単純に組み合わせることもでき、実施例の構造に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0149】
本発明は、加工ユニットでワークに機械加工を施す工作機械に適用できる。
【符号の説明】
【0150】
10、90、210…工作機械、12…基台、14…多軸ヘッド、16…ワーク保持盤、22、30、96…車輪、26…シュータ、38…搬送ベルト、40…工具、42…第1モータ、44…第2モータ、58a、58b…ガイドロッド、60…シリンダ支持盤、62…シリンダ、64…変位用ロッド、70a、70b…支持用ロッド、74a、74b…ガイドブッシュ、76…軸受穴、78a、78b…チャック爪、92…台車、98…捕集トレー、100a、100b…ハンドル、213…加工ヘッド、214…ワーク受けプレート移動機構、215…ワーク受けプレート、216…ワーク抑えプレート、218、219…スピンドル軸、229…ピストンロッド、230…流体圧シリンダユニット、232…ガイドポスト、233…ガイドブッシュ、240…ワーク搬送機構、247…貫通溝、254…ノックピン、256…ノック穴、258…クランプ機構、263…仮想的中心軸、W…ワーク、W1…加工前のワーク、W2…加工済みワーク。
【技術分野】
【0001】
本発明は、多軸ヘッドに設けられた複数個の工具によってワークに加工を施す工作機械及びそれを用いた加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載されるエンジンのシリンダブロックやミッションケース等をはじめとする各種の構造部材は、例えば、複数個の工具を配設した多軸ヘッド(ギャングヘッドとも称呼される)を備える工作機械を用い、ワークに対する機械加工を施すことで作製される。この種の工作機械としては、本出願人が特許文献1(特に図2参照)にて提案した構成のものが例示される。
【0003】
特許文献1記載の工作機械は、位置決め固定された加工ユニットと、該加工ユニットに対して接近又は離間する治具ユニットとを備える。ワークを載置した治具ユニットが加工ユニットの下方に配置されると、昇降駆動部が付勢され、これに追従して昇降台が機台に支持されながら上昇し、治具ユニットごとワークを支承しながら加工ユニットに向かって接近させる。その後、ワークに対して機械加工が施される。
【0004】
また、ギャングヘッドと呼ばれる加工ヘッドにより、ワークに機械加工を施す工作機械が多数提案されてきた(例えば、特許文献2(図1、図2)参照。)。
【0005】
特許文献2の図1に示されるように、加工ユニット(14)(括弧付き数字は、特許文献2に記載された符号を示す。以下同様)は、6個の多軸加工ヘッド(82)を備え、全体がY方向に移動する。
また、搬送ライン(16)にクランプユニット(12)が設けられる。クランプユニット(12)は、Y方向に直交するX方向に搬送される。
クランプユニット(12)は、特許文献2の図2に示されるように、進退アーム(46、48)を備え、これらの進退アーム(46、48)でワーク(W)が挟持される。
【0006】
特許文献2の構造では、重量物である加工ユニット(14)を、Y方向に移動するため、移動に費やすエネルギーが嵩む。
また、クランプユニット(12)は、搬送ライン(16)で搬送され、所定位置で止められ、その位置で加工ユニット(14)により、機械加工が施されるが、クランプユニット(12)の停止位置は正確である必要がある。正確にするには搬送速度を下げることや、停止位置でノックピンを打ち込むことなどの配慮が必要となる。
結果、搬送ライン(16)の構造が複雑化すると共に搬送速度を上げることが困難になる。
【0007】
省エネルギーの観点から加工ユニットは静止させることが望まれ、生産性向上の観点から搬送ラインの高速化が求められる。
すなわち、加工ユニットは移動させる必要が無く、搬送ラインを高速にすることができる工作機械が望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第4382015号公報
【特許文献2】特開2011−240466公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1記載の工作機械の構成によれば、簡素化・小型化を図ることが可能であるが、近時、さらなる簡素化・小型化が要請されている。このような工作機械は軽量であるために運搬が容易であり、据置型ではなく、ポータブル型とし得る。この場合、工作機械を任意の場所に配置できるので、工場や作業ステーションのレイアウトの自由度が増すという利点があるからである。
【0010】
本発明は上記した課題を解決するためになされたものであり、一層簡素化・小型化され、容易に運搬することが可能である工作機械及びそれを用いた加工方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、加工ユニットを移動させる必要が無く、搬送ラインを高速にすることができる工作機械を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記の課題を解決するために、請求項1に係る発明は、多軸ヘッドに設けられた複数個の工具によってワークに加工を施す工作機械であって、
基台と、
前記多軸ヘッドに対向する位置に配設され、且つワークを保持するワーク保持盤と、
前記ワーク保持盤を前記多軸ヘッドに対して相対的に離間又は接近する方向に変位させる変位機構と、
を備え、
前記ワーク保持盤又は前記多軸ヘッドのいずれか一方を前記基台で支持するとともに、前記ワーク保持盤又は前記多軸ヘッドの残余の一方を、前記変位機構によって支持した片持ち支持式であり、
且つ前記ワーク保持盤が前記多軸ヘッドに対して相対的に変位するときに該ワーク保持盤又は該多軸ヘッドを案内する案内手段を有することを特徴とする。
【0012】
なお、文言「ワーク保持盤が多軸ヘッドに対して相対的に離間又は接近する方向に変位する」は、「位置決め固定された多軸ヘッドに対してワーク保持盤が離間又は接近するように変位する」場合と、「位置決め固定されたワーク保持盤に対して多軸ヘッドが離間又は接近するように変位する」場合とを含む。すなわち、本発明においては、変位機構の作用下に変位するものがワーク保持盤又は多軸ヘッドのいずれであってもよい。
【0013】
また、文言「片持ち支持式」は、ワーク保持盤が多軸ヘッドに対して相対的に変位する方向が水平方向である場合のみでなく、鉛直方向である場合をも含むものとする。
【0014】
片持ち支持式としたことにより、ワーク保持盤を変位させるためないし支持するための高剛性な機台が不要となる。従って、工作機械の構成が簡素となるとともに、小型且つ軽量化を図ることができる。
【0015】
このような工作機械は、運搬することが容易である。換言すれば、容易に移動させることができる。このため、任意の場所に配置できるので、工場や作業ステーションのレイアウトの自由度が向上するという利点も得られる。
【0016】
しかも、変位するワーク保持盤又は多軸ヘッドを案内手段によって案内するので、ワークが工具に対して位置ズレを起こすことが回避される。このため、ワークにおける加工を施すべき本来の箇所に対し、加工が施される。このような理由から、加工精度が良好となる。
【0017】
なお、請求項2に係る発明では、ワーク保持盤又は多軸ヘッドの中の変位機構で支持された一方を、補助支持部材によって補助的に支持するようにしてもよい。これにより、ワーク保持盤又は多軸ヘッドを一層安定に支持することができる。
【0018】
この場合、補助支持部材は、ワーク保持盤又は多軸ヘッドが変位することに追従して前進又は後退させればよい。これにより、補助支持部材を設けたことに起因してワーク保持盤又は多軸ヘッドが変位することが妨げられることが回避される。
【0019】
また、請求項3に係る発明では、基台に対して車輪を設けることが好ましい。これにより、工作機械を移動させることが一層容易となる。
【0020】
さらに、請求項4に係る発明では、加工屑を捕集する加工屑捕集手段を設けることが好ましい。これにより作業環境に加工屑が散乱することを回避することができるので、作業環境を清潔に保つことができる。加工屑を容易に捕集するためには、加工屑捕集手段を多軸ヘッドの下方に配置すればよい。
【0021】
請求項5に係る発明では、この加工屑捕集手段にも、車輪を設けるようにしてもよい。これにより、工作機械が加工屑捕集手段を含む場合であっても、容易に移動させることができる。
【0022】
また、請求項6に係る発明は、ワーク保持盤又は多軸ヘッドの一方を基台で支持するとともに、前記ワーク保持盤又は前記多軸ヘッドの残余の一方を変位機構で支持した片持ち支持式の工作機械を用いてワークに対して機械加工を施す加工方法であって、
前記多軸ヘッドに対向する位置に配設された前記ワーク保持盤にワークを保持する工程と、
前記変位機構を付勢することで前記ワーク保持盤を前記多軸ヘッドに対して相対的に接近するように変位させることにより、該ワーク保持盤に保持されたワークを前記多軸ヘッドに接近させる工程と、
前記多軸ヘッドに設けられた複数個の工具によって前記ワークに加工を施す工程と、
前記変位機構を付勢することで前記ワーク保持盤を前記多軸ヘッドに対して相対的に離間するように変位させることにより、該ワーク保持盤に保持された加工済の前記ワークを前記多軸ヘッドに対して離間させる工程と、
を有し、
前記ワーク保持盤が前記多軸ヘッドに対して相対的に変位するときに該ワーク保持盤又は該多軸ヘッドを案内手段で案内することを特徴とする。
【0023】
このような過程を経ることにより、片持ち支持式の工作機械を用い、ワークに対して高精度な加工を施すことができる。変位するワーク保持盤又は多軸ヘッドを案内手段によって案内するので、ワークが工具に対して位置ズレを起こすことが回避され、ワークにおける加工を施すべき本来の箇所に対して加工が施されるからである。
【0024】
請求項7に係る発明では、この場合、加工屑捕集手段によって加工屑を捕集すると、作業環境に加工屑が散乱することを回避することができるので好ましい。
【0025】
請求項8に係る発明は、加工ヘッドに、ワークを接近させて前記ワークに加工を施す工作機械であって、
前記ワークを載せるワーク受けプレートと、前記加工ヘッドに設けられ前記ワーク受けプレートを前記加工ヘッドへ接近するように移動させるワーク受けプレート移動機構と、前記加工ヘッドと前記ワーク受けプレートとの間に配置され前記ワークが前記加工ヘッドへ所定位置まで接近した後に前記ワーク受けプレートへ前記ワークを押圧するワーク抑えプレートとを備えていることを特徴とする。
【0026】
請求項9に係る発明では、加工ヘッドからスピンドル軸が下へ延ばされ、
ワーク受けプレートとワーク抑えプレートの一方に位置決めノックピンが設けられ、他方にノックピンが差し込まれるノック穴が設けられ、
ノックピンとノック穴とにより、ワーク受けプレートにワーク抑えプレートが位置決めされることを特徴とする。
【0027】
請求項10に係る発明では、加工ヘッドとワーク受けプレートの一方にガイドポストが設けられ、他方にガイドポストが差し込まれるガイドブッシュが設けられ、
ガイドポストとガイドブッシュとによりガイドされつつ、ワーク受けプレートが、加工ヘッドへ接近することを特徴とする。
【0028】
請求項11に係る発明では、ワーク受けプレート移動機構は、1個の流体圧シリンダユニットからなり、
この流体圧シリンダユニットのピストンロッドが、ワーク受けプレートにワークを加えた総合的重心点又はその近傍を通過するように、流体圧シリンダユニットが配置されていることを特徴とする。
【0029】
請求項12に係る発明では、ワーク受けプレート移動機構は、複数個の流体圧シリンダユニットからなり、
複数本のピストンロッドを1本に集約してなる仮想的中心軸が、ワーク受けプレートにワークを加えた総合的重心点又はその近傍を通過するように、流体圧シリンダユニットが、配置されていることを特徴とする。
【0030】
請求項13に係る発明では、ワーク受けプレートとワーク抑えプレートとの間に、ワークが挟持された際、両プレートを機械的に結合するクランプ機構が設けられている。
【0031】
請求項14に係る発明では、加工前のワークをワーク搬送機構からワーク受けプレートへ移載する、又は加工済みワークをワーク受けプレートからワーク搬送機構へ移載することができるように、ワーク搬送機構の通過を許容する貫通溝が、ワーク受けプレートに設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0032】
請求項1に係る発明によれば、ワーク保持盤又は多軸ヘッドのいずれか一方を変位機構によって支持する片持ち支持式としているので、工作機械の構成を簡素化し得るとともに、小型化・軽量化を図ることができる。しかも、変位するワーク保持盤又は多軸ヘッドのいずれか一方を案内手段によって案内するようにしているので、ワークが位置ズレを起こすことが回避される。このため、加工精度が良好となる。
【0033】
請求項2に係る発明では、ワーク保持盤又は多軸ヘッドを一層安定に支持することができる。
【0034】
請求項3に係る発明では、工作機械を移動させることが一層容易となる。
【0035】
請求項4に係る発明では、作業環境に加工屑が散乱することを回避することができるので、作業環境を清潔に保つことができる。加工屑を容易に捕集するためには、加工屑捕集手段を多軸ヘッドの下方に配置すればよい。
【0036】
請求項5に係る発明では、工作機械が加工屑捕集手段を含む場合であっても、容易に移動させることができる。
【0037】
請求項6に係る発明では、片持ち支持式の工作機械を用い、ワークに対して高精度な加工を施すことができる。変位するワーク保持盤又は多軸ヘッドを案内手段によって案内するので、ワークが工具に対して位置ズレを起こすことが回避され、ワークにおける加工を施すべき本来の箇所に対して加工が施されるからである。
【0038】
請求項7に係る発明では、作業環境に加工屑が散乱することを回避することができる。
【0039】
請求項8に係る発明では、加工ヘッドは静止させ、ワークを加工ヘッドへ接近させる。重量物である加工ヘッドを移動させないため、省エネルギーが図れる。
【0040】
また、加工ヘッドにワーク受けプレート移動機構を付設し、このワーク受けプレート移動機構でワーク受けプレートを加工ヘッドへ接近させる。ワーク受けプレートとワーク抑えプレートでワークを挟持しながら、ワークを加工ヘッドへ接近させる。すなわち、ワーク搬送ラインからワークを分離して、加工ヘッドへ接近させるため、ワーク搬送ラインにおける搬送速度を高めることができる。
【0041】
したがって、本発明によれば、加工ユニットは移動させる必要が無く、搬送ラインを高速にすることができる工作機械が提供される。
【0042】
請求項9に係る発明では、ノックピンとノック穴とにより、ワーク受けプレートにワーク抑えプレートが位置決めされる。ワーク受けプレートにワーク抑えプレートが位置決めされるため、挟持されるワークの位置が正確に定まる。
【0043】
請求項10に係る発明では、加工ヘッドとワーク受けプレートの一方にガイドポストが設けられ、他方にガイドポストが差し込まれるガイドブッシュが設けられる。ガイドポストとガイドブッシュとによりガイドされつつ、ワーク受けプレートが、加工ヘッドへ接近するため、ワークは加工ヘッドへ移動する途中で、振れる心配がない。
【0044】
請求項11に係る発明では、ワーク受けプレート移動機構は、1個の流体圧シリンダユニットからなり、流体圧シリンダユニットのピストンロッドが、ワーク受けプレートにワークを加えた総合的重心点又はその近傍を通過するように、流体圧シリンダユニットが配置されている。
重心点をシリンダユニットで引くようにすることで、ワーク受けプレート移動機構は、1個の流体圧シリンダユニットで済ませることができる。1個の流体圧シリンダユニットであれば、装置が簡単になる設備コストを低減することが可能となる。
【0045】
請求項12に係る発明では、ワーク受けプレート移動機構は、複数個の流体圧シリンダユニットからなり、
複数本のピストンロッドを1本に集約してなる仮想的中心軸が、ワーク受けプレートにワークを加えた総合的重心点又はその近傍を通過するように、流体圧シリンダユニットが、配置されている。
複数本の流体圧シリンダで1個のワーク受けプレートを昇降させる場合であっても、複数個のピストンロッドの仮想的中心軸を総合的重心に合致させることにより、ピストンロッドに曲げが掛かることを防止できる。
【0046】
請求項13に係る発明では、ワーク受けプレートとワーク抑えプレートとの間に、ワークが挟持された際、両プレートを機械的に結合するクランプ機構が設けられている。加工ヘッドによる機械加工の際に、ワークに切削抵抗に相当する力が加わる。クランプ機構が無いときには、ワーク抑えプレートで強くワークを押す必要があるため、ワーク抑えプレートに付属する弾性部材を強化する必要がある。
この点、本発明によれば、クランプ機構を備えることにより、ワーク抑えプレートに付属する弾性部材は弱くて済み、弾性部材の軽量、小型化が図れる。
【0047】
請求項14に係る発明では、加工前のワークをワーク搬送機構からワーク受けプレートへ移載する、又は加工済みワークをワーク受けプレートからワーク搬送機構へ移載することができるように、ワーク搬送機構の通過を許容する貫通溝が、ワーク受けプレートに設けられている。
ワーク受けプレートでワーク搬送機構(ワーク搬送ライン)上の加工前のワークを掬い上げることができる。ワーク受けプレートでワーク搬送機構(ワーク搬送ライン)上へ加工済みワークを戻すことができる。
【0048】
通常であれば、ワーク搬送機構とワーク受けプレートとの間に、ロボットなどのワーク移載機構を配置する必要があるが、本発明によれば、ワーク移載機構は不要であり、工作機械のさらなる簡略化が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の第1実施形態に係る工作機械の全体概略斜視図である。
【図2】図1の工作機械の全体概略側面図である。
【図3】本発明の第2実施形態に係る工作機械の全体概略側面一部断面図である。
【図4】図3の工作機械の平面図ある。
【図5】本発明の第3実施形態に係る工作機械の斜視図である。
【図6】図5の6−6線断面図である。
【図7】図5の7−7線断面図である。
【図8】図3の変更図である。
【図9】本発明に係る工作機械の正面図である。
【図10】ワーク搬送機構の要部斜視図である。
【図11】工作機械の作用説明図である。
【図12】工作機械の作用説明図である。
【図13】クランプ機構の構成を説明する図である。
【図14】クランプ機構の作用図である。
【図15】ワーク受けプレートの変更例を示す図である。
【図16】図15の平面図である。
【図17】ワーク受けプレートの更なる変更例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
以下、本発明に係る加工方法につき、それを実施するための工作機械との関係で好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照して詳細に説明する。
【実施例1】
【0051】
図1及び図2は、それぞれ、本発明の第1実施形態に係る工作機械10の全体概略斜視図、全体概略側面図である。この工作機械10は、基台12と、該基台12に支持された多軸ヘッド14と、矢印A方向に変位することで該多軸ヘッド14に対して接近又は離間するワーク保持盤16とを有する。矢印A方向は水平方向であり、従って、この工作機械10は、いわゆる横型である。
【0052】
この中の基台12は、4本の脚部18a〜18dと、支持部20とからなるフレーム形状をなし、脚部18a〜18dの先端部には、それぞれ、ローラ形状の車輪22が設けられる。車輪22は、いわゆるキャスタと同様に鉛直方向を軸中心として矢印X方向に回動自在であり、且つ図示しないロック機構によってこの回動ができないようにロックされる。車輪22に関する以上の構成及び動作は周知であり、従って、詳細な説明及び図示は省略する。
【0053】
脚部18a、18b同士の間、脚部18c、18d同士の間には、補強用バー24がそれぞれ橋架されている。これら補強用バー24、24によって、基台12の剛性が確保される。
【0054】
基台12の脚部18a、18c同士、脚部18b、18d同士の間には、加工屑を捕集する加工屑捕集手段であり且つ加工屑排出手段を兼ねる長尺なシュータ26が通される。シュータ26のハウジング28には、前記車輪22に比して一層長尺なローラ形状の車輪30が設けられる。勿論、これら車輪30も上記車輪22と同様に矢印X方向に回動自在であり、且つ図示しないロック機構によってこの回動ができないようにロックすることも可能である。なお、シュータ26は、基台12と別個に移動可能とするようにしてもよいし、基台12で該シュータ26を支持することで基台12と一体的に移動可能としてもよい。
【0055】
ハウジング28の図1及び図2における左端には、加工屑を捕集するための捕集口32が上方を臨むようにして開口形成される。この捕集口32には、鉛直下方に向かうに従って該捕集口32を狭小化するように傾斜した傾斜案内部34が形成される。
【0056】
ハウジング28の右端近傍は、図1及び図2における右方に向かうにつれて上昇するように傾斜した後、さらに、水平方向に向かって延在するように形成されている。この水平方向に延在する右端には、加工屑を排出するための排出口36が形成される。該排出口36は、図示しない収集袋で覆われる。
【0057】
さらに、ハウジング28の内部には搬送ベルト38(図2参照)が設けられる。後述するように、捕集口32を介してハウジング28の内部に捕集された加工屑は、搬送ベルト38の作用下に排出口36に搬送され、該排出口36からハウジング28の外部に放出される。
【0058】
基台12の支持部20に支持された多軸ヘッド14には、複数個の工具40が設けられる。これら複数個の工具40は、工具回転付勢機構としての第1モータ42、第2モータ44の作用下に回転動作する。
【0059】
具体的には、第1モータ42の回転軸46と、多軸ヘッド14の下方に配設された工具群(以下「第1工具群」と表記し、参照符号を48とする)との間には第1ギアトレイン50が設けられ、一方、第2モータ44の回転軸52と、多軸ヘッド14の上方に配設された工具群(以下「第2工具群」と表記し、参照符号を54とする)との間には第2ギアトレイン56が設けられる。従って、第1工具群48は、第1モータ42の回転軸46が回転付勢されることに追従して第1ギアトレイン50の作用下に回転動作し、一方、第2工具群54は、第2モータ44の回転軸52が回転付勢されることに追従して第2ギアトレイン56の作用下に回転動作する。
【0060】
なお、多軸ヘッド14の隅部には、ワーク保持盤16に指向して延在する2本のガイドロッド58a、58bが設けられる。これらガイドロッド58a、58bは、多軸ヘッド14における対角線上に配置される(図1参照)。
【0061】
支持部20には、シリンダ支持盤60も支持される。このシリンダ支持盤60には、前記ワーク保持盤16を多軸ヘッド14に対して離間又は接近させるための変位機構であるシリンダ62が支持される。
【0062】
該シリンダ62の変位用ロッド64は、ワーク保持盤16に連結されている。すなわち、工作機械10は、ワーク保持盤16を変位用ロッド64によって支持した、いわゆる片持ち支持式である。勿論、ワーク保持盤16は、変位用ロッド64が前進・後退することに追従し、多軸ヘッド14に対して離間・接近する。
【0063】
シリンダ支持盤60には、その長手方向(矢印A方向)に沿って2本の挿通孔66a、66bが貫通形成される。これら挿通孔66a、66bの内壁には軸受68a、68bが位置決め固定され、且つ前記軸受68a、68bには、補助支持部材としての支持用ロッド70a、70bが摺動自在に挿入される。
【0064】
ワーク保持盤16には、図示しない2個の貫通孔が形成されている。各貫通孔には、止具72を構成する小径なネジ部(図示せず)が通される。該ネジ部は、支持用ロッド70a、70bの先端に螺合される。勿論、止具72の本体は前記貫通孔に比して幅広であり、これにより止具72の抜け止めがなされている。すなわち、ワーク保持盤16は支持用ロッド70a、70bと止具72、72の本体とで挟持されており、この挟持により、ワーク保持盤16が支持用ロッド70a、70bに支持される。
【0065】
また、ワーク保持盤16には、ガイドロッド58a、58bに対向する位置にガイドブッシュ74a、74bが設けられる(図2参照)。ワーク保持盤16が多軸ヘッド14に対して接近する途中で、前記ガイドロッド58a、58bの先端がガイドブッシュ74a、74bの軸受穴76に進入する。このことから諒解される通り、ガイドロッド58a、58b及びガイドブッシュ74a、74bは案内手段として機能する。
【0066】
ワーク保持盤16における多軸ヘッド14に臨む側の端面には、開閉可能なチャック爪78a、78bが設けられる。チャック爪78a、78bが閉状態となることによってワークWが保持され、一方、開状態となることによってワークWが解放される。
【0067】
なお、ワークWとしては、車両に搭載される内燃機関を構成するシリンダブロックやシリンダヘッド、又はミッションケース等が例示される。
【0068】
第1実施形態に係る工作機械10は、基本的には以上のように構成されるものであり、次に、その作用効果につき、ワークWに対して施される加工方法との関係で説明する。
【0069】
先ず、作業者ないしロボットによってワーク保持盤16の所定箇所にワークWを配置し、チャック爪78a、78bを閉状態とする。これにより、ワークWがワーク保持盤16に保持される。
【0070】
次に、第1モータ42及び第2モータ44を付勢し、これにより回転軸46、52を回転付勢する。回転軸46、52の回転駆動力は第1ギアトレイン50、第2ギアトレイン56を介して第1工具群48、第2工具群54にそれぞれ伝達され、その結果、これら第1工具群48、第2工具群54が回転動作を開始する。
【0071】
次に、シリンダ62を付勢することで変位用ロッド64を後退させ、これにより、ワーク保持盤16を多軸ヘッド14に対して接近するように変位させる。
【0072】
この際、支持用ロッド70a、70bが軸受68a、68bに摺接しながら後退する。このため、ワーク保持盤16の変位が妨げられることはない。その一方で、変位用ロッド64及び支持用ロッド70a、70bによるワーク保持盤16に対する支持が維持される。
【0073】
この変位の途中、ガイドロッド58a、58bの先端がガイドブッシュ74a、74bの各軸受穴76に進入して係合する。その結果、ワーク保持盤16の重みによって変位用ロッド64及び支持用ロッド70a、70bが撓むこと、すなわち、ワーク保持盤16が若干下降することが防止される。これにより、ワーク保持盤16が多軸ヘッド14に対して位置ズレを起こすことが回避される。
【0074】
ワークWが工具40に近接すると、該工具40によってワークWに対する機械加工が施される。工具40は、一般的にはドリルやリーマ、タップであり、これらによってワークWに対して穿孔加工が行われ、ワークWにおける各工具40の設置箇所に対応する部位に孔が形成される。上記したように、ワーク保持盤16が多軸ヘッド14に対して位置ズレを起こすことが回避されているので、ワークWに対し、孔を形成すべき本来の箇所に孔を形成することが可能となる。すなわち、加工精度を向上することができる。
【0075】
この穿孔加工が行われる間、加工屑(図示せず)が発生してワークWから落下する。落下した加工屑は、シュータ26の捕集口32に設けられた傾斜案内部34に案内され、搬送ベルト38に向かってさらに落下する。
【0076】
加工屑は、搬送ベルト38の作用下に、図1及び図2における左方から右方に向かって搬送される。加工屑は、最終的に、排出口36から排出されて前記収集袋に収集される。従って、加工屑が散乱して作業環境が汚れることを防止することができる。
【0077】
変位用ロッド64及び支持用ロッド70a、70bは、所定の速度で継続して後退する。従って、ワーク保持盤16及びワークWは、所定の速度で多軸ヘッド14に指向して変位する。すなわち、ワークWに対する穿孔加工が続行される。
【0078】
ワーク保持盤16が予め設定された位置まで変位したとき、シリンダ62が滅勢されて変位用ロッド64及び支持用ロッド70a、70b、ひいてはワーク保持盤16及びワークWが停止する。これにより、所定の深さの孔がワークWに形成されるに至る。その後、第1モータ42及び第2モータ44を滅勢し、これにより第1工具群48、第2工具群54の回転動作を開始する。
【0079】
以上のようにしてワークWに対して機械加工(穿孔加工)を施した後、シリンダ62を再付勢することで変位用ロッド64を前進させる。これに伴い、ワーク保持盤16が多軸ヘッド14に対して離間するように変位する。なお、この変位の途中、ガイドロッド58a、58bの先端がガイドブッシュ74a、74bの軸受穴76から離脱する。
【0080】
この変位の際には、支持用ロッド70a、70bが軸受68a、68bに摺接しながら前進する。従って、このときもワーク保持盤16の変位が妨げられることはなく、且つ支持用ロッド70a、70bによるワーク保持盤16に対する支持が維持される。
【0081】
変位用ロッド64が前進端に到達したときに該変位用ロッド64が停止し、これに伴って支持用ロッド70a、70b及びワーク保持盤16の前進が終了する。その後、チャック爪78a、78bを開状態とすることにより、ワークWが解放される。作業者ないしロボットは、このようにして解放されたワークWをワーク保持盤16から離脱させればよい。
【0082】
このように、第1実施形態においては、変位用ロッド64でワーク保持盤16を支持した片持ち支持式として工作機械10を構成しており、且つ多軸ヘッド14を支持する基台12をフレーム状としている。以上のような理由から、簡素であり、且つ小型で軽量な工作機械10を構成することができる。
【0083】
しかも、工作機械10では、ワーク保持盤16を補助的に支持するものを2本の支持用ロッド70a、70bとしているので、機台でワーク保持盤を支持する工作機械に比して、簡素且つ小型で軽量な構成が維持される。
【0084】
従って、この工作機械10は、移動にさほどの力を必要としない。換言すれば、作業者は、工作機械10を所定の場所まで容易に移動させることができる。
【0085】
別の場所で機械加工を実施する場合、作業者は、加工を実施すべき所定の場所に工作機械10を移動させる。車輪22、30が矢印X方向に沿って回動自在であり、且つ前記ロック機構によって回動を停止させることもできるので、工作機械10を任意の方向に向けることが容易である。
【0086】
以上のように、工作機械10が小型・軽量であり、容易に移動させることができるので、加工ラインの構築や仕様変更の際、工作機械10を含めた各加工装置の配置レイアウトの自由度が向上する。また、工作機械10の設置箇所の省スペース化を図ることもできる。
【0087】
その上、ワーク保持盤16を変位させる際には、該ワーク保持盤16を補助的に支持する2本の支持用ロッド70a、70bを後退ないし前進させるようにしている。このため、ワーク保持盤16が変位することが妨げられることもない。
【0088】
加えて、この場合、ワークWをワーク保持盤16に取り付ける作業や、ワーク保持盤16から取り外す作業が容易である。また、工作機械10からの多軸ヘッド14の取り外し、及び取り付けも容易であるので、多軸ヘッド14を円滑に交換することができる。
【実施例2】
【0089】
上記した第1実施形態では、ワーク保持盤16が水平方向に変位する横型の工作機械10について説明したが、工作機械は、ワーク保持盤16を鉛直方向に沿って変位させる、いわゆる縦型であってもよい。この構成の工作機械につき、第2実施形態として説明する。なお、図1及び図2に示される構成要素と同一の構成要素には同一の参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0090】
図3は、第2実施形態に係る工作機械90の全体概略側面一部断面図であり、図4はその平面図である。なお、図3は、図4中の3−3矢視断面に相当する。
【0091】
この工作機械90は、基台としての台車92と、該台車92に設けられた2本の支柱94a、94b(図4参照)に支持された多軸ヘッド14と、図3中の矢印B方向に変位することで該多軸ヘッド14に対して接近又は離間するワーク保持盤16とを有する。なお、図3中の矢印B方向が鉛直方向であることは勿論である。
【0092】
この場合、台車92の下端面の四方の隅部にローラ形状の車輪96が設けられる。車輪96も車輪22、30(図1及び図2参照)と同様に回動自在であり、且つ図示しないロック機構によってこの回動ができないようにロックされる。
【0093】
図3に示すように、台車92の上端面における多軸ヘッド14の下方に対応する位置には、加工屑捕集手段としての捕集トレー98が設置される。この場合、捕集トレー98は単なる容器であり、搬送ベルト38(図2参照)は設けられていない。
【0094】
上記したように、台車92の上端面には2本の支柱94a、94bが立設される(図4参照)。また、該支柱94a、94bの各々に対し、水平方向に沿って延在するハンドル100a、100bが設けられる。さらに、支柱94a、94bと台車92の上端面には、鉛直方向に対して傾斜した補強用柱102a、102bが橋架される。この補強用柱102a、102bにより、支柱94a、94bが堅牢に支持される。
【0095】
支柱94a、94b同士の間には、2本の支持用板104a、104bが橋架される。これら支持用板104a、104bには、シリンダ62が支持される。
【0096】
第1実施形態と同様に、シリンダ62を構成する変位用ロッド64の先端部にはワーク保持盤16が連結される。すなわち、工作機械90は、ワーク保持盤16が変位用ロッド64によってのみ支持された片持ち支持式であり、ワーク保持盤16は、変位用ロッド64が前進(下降)又は後退(上昇)することに追従して下降又は上昇する。
【0097】
ワーク保持盤16において、多軸ヘッド14側を臨む端面には、対角線上にガイドブッシュ74a、74bが設けられるとともに、開閉可能なチャック爪78a、78bが設けられる。この構成については第1実施形態と同様であり、従って、その詳細な説明を省略する。
【0098】
支柱94a、94bの上端には、それぞれ、鉛直下方に指向して傾斜したアーム部材106a、106bが設けられる(図4参照)。前記多軸ヘッド14は、これら2本のアーム部材106a、106bに支持されている。
【0099】
多軸ヘッド14において、ワーク保持盤16を臨む端面には、ガイドブッシュ74a、74bに対向する位置にガイドロッド58a、58bが設けられ、且つ第1モータ42の作用下に回転動作する第1工具群48、第2モータ44の作用下に回転動作する第2工具群54が設けられる。この構成については第1実施形態と同様であり、従って、その詳細な説明を省略する。
【0100】
第2実施形態に係る工作機械90を用いてのワークWに対する機械加工は、以下のようにして実施される。
【0101】
先ず、第1実施形態に準拠し、チャック爪78a、78bを閉状態としてワークWをワーク保持盤16に保持した後、第1モータ42及び第2モータ44を付勢することにより、第1工具群48、第2工具群54を回転動作させる。そして、シリンダ62を付勢する。
【0102】
この場合、変位用ロッド64が後退することに伴ってワーク保持盤16が矢印Bに沿って上昇する。すなわち、ワーク保持盤16が多軸ヘッド14に対して接近するように変位する。この変位の途中でガイドロッド58a、58bの先端がガイドブッシュ74a、74bの各軸受穴76に進入し、これにより、ワーク保持盤16が水平方向に位置ズレを起こすことが回避される。
【0103】
以降は上記と同様にして、工具40により、ワークWに対する機械加工、一般的には穿孔加工が施される。この場合、ワークWにおける各工具40の設置箇所に対応する部位に孔が形成される。上記したように、ワーク保持盤16が多軸ヘッド14に対して位置ズレを起こすことが回避されているので、ワークWに対し、孔を形成すべき本来の箇所に孔を形成することができる。
【0104】
この穿孔加工が行われる間に発生した加工屑がワークWから落下した場合、該加工屑は、捕集トレー98によって捕集される。従って、加工屑が散乱して作業環境が汚れることを防止することができる。
【0105】
変位用ロッド64が予め設定された位置まで所定の速度で継続して後退することにより、ワークWに所定の深さの孔が形成される。その後、シリンダ62が滅勢されることで変位用ロッド64、ひいてはワーク保持盤16及びワークWが停止するとともに、第1モータ42及び第2モータ44が滅勢されることで第1工具群48、第2工具群54の回転動作が停止する。
【0106】
以上のようにしてワークWに対して機械加工(穿孔加工)を施した後、シリンダ62を再付勢することで変位用ロッド64を前進させる。これに伴い、ワーク保持盤16が下降し、結局、多軸ヘッド14に対して離間するように変位する。この変位の途中で、ガイドロッド58a、58bの先端がガイドブッシュ74a、74bの軸受穴76から離脱する。
【0107】
変位用ロッド64が前進端に到達したときに該変位用ロッド64が停止し、これに伴ってワーク保持盤16及びワークWの前進(下降)が終了する。その後、チャック爪78a、78bが開状態とされてワークWが解放され、さらに、作業者ないしロボットにより、解放されたワークWがワーク保持盤16から離脱される。
【0108】
このように、変位機構であるシリンダ62の変位用ロッド64のみでワーク保持盤16を支持する片持ち支持式を採用した第2実施形態においても、第1実施形態と同様の効果が得られる。この場合も、ワーク保持盤16を変位させるためないし支持するための高剛性の機台を設ける必要がなく、簡素であり、且つ小型で軽量な工作機械90とすることができるからである。
【0109】
勿論、この工作機械90も移動にさほどの力を必要としないので、作業者は、工作機械90を所定の場所まで容易に移動させることができる。車輪96が回動自在であり、且つロック機構によって回動を停止させることもできるので、工作機械90を任意の方向に向けることが容易である。なお、移動の際には、作業者は、ハンドル100a、100bを把持すればよい。
【0110】
本発明は、上記した第1及び第2実施形態に特に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
【0111】
例えば、第1及び第2実施形態の双方において多軸ヘッド14を位置決め固定するとともに、ワーク保持盤16を変位させるようにしているが、これとは逆に、ワーク保持盤16を基台12(又は台車92)位置決め固定するとともに、多軸ヘッド14を変位させるようにしてもよい。
【0112】
また、第2実施形態においても補助支持用の支持用ロッド70a、70bを設けるようにしてもよいことは勿論である。逆に、第1実施形態において、支持用ロッド70a、70bを省略するようにしてもよい。第1実施形態では、基台12又はハウジング28等にハンドル100a、100bを設けるようにしてもよい。
【0113】
さらに、変位機構はシリンダ62に特に限定されるものではなく、ボールねじやラックアンドピニオン機構を変位機構として採用するようにしてもよい。
【0114】
さらにまた、多軸ヘッド14にガイドブッシュ74a、74bを設ける一方、ワーク保持盤16にガイドロッド58a、58bを設けるようにしてもよい。
【0115】
いずれにおいても、ガイドブッシュ74a、74bの各軸受穴76にガイドロッド58a、58bが常時係合するようにしてもよい。
【実施例3】
【0116】
上記した第2実施形態では、ワークWをワーク保持盤16に載置する際、ロボットなどのワーク移載機構を必要とするが、ワーク移載機構を不要にすれば、工作機械のさらなる簡略化が図れる。このような構成の工作機械につき、第3実施形態として説明する。
【0117】
図5に示すように、工作機械210は、基礎又は機台に載るように水平に延びるベースフレーム211、211と、これらのベースフレーム211、211から上へ延びる門型フレーム212と、この門型フレーム212で支持される加工ヘッド213と、この加工ヘッド213に設けられるワーク受けプレート移動機構214と、このワーク受けプレート移動機構214で上下に移動されるワーク受けプレート215と、このワーク受けプレート215と加工ヘッド213との間に配置されるワーク抑えプレート216とを、主たる要素として備える。
【0118】
図6に示すように、加工ヘッド213は、下へ延びる複数本(この例では2本)のスピンドル軸218、219を備える。これらのスピンドル軸218、219にドリルやエンドミルなどの切削工具221、222が取り外し可能に取付けられる。
【0119】
加工ヘッド213に駆動ギヤ223や従動ギヤ224、225が内蔵され、駆動ギヤ223がスピンドルモータ226で回されることで、従動ギヤ224、225が回され、これらの従動ギヤ224、225によりスピンドル軸218、219が高速で回される。加工ヘッド213は複数本のスピンドル軸218、219を密集して備えるため、ギャングヘッドとも呼ばれる。
【0120】
加工ヘッド213からガイドバー227、227が下に延ばされ、これらのガイドバー227、227で上下動可能にワーク抑えプレート216が案内される。ワーク抑えプレート216は、加工ヘッド213の下面から延びるクッションユニット228、228により吊される。
【0121】
クッションユニット228は、円筒内に多数枚の皿ばねを積層したものや、スプリングと液圧ダンパーとを一体化したものが適当である。ワーク抑えプレート216が上昇することを抑制する下向き反力を発生させる。
【0122】
図7に示すように、ワーク受けプレート移動機構214は、ピストンロッド229が鉛直軸に沿って下へ延びる流体圧シリンダユニット230である。
ピストンロッド229の先端(下端)に、ワーク受けプレート215をナット231、231により固定する。
【0123】
加工ヘッド213の下面からガイドポスト232、232を延ばす。ワーク受けプレート215にガイドブッシュ233、233を設ける。流体圧シリンダユニット230内は、ピストン234により下室235と上室236とに区分される。下室235に高圧流体を供給することでピストン234を上昇させることができ、上室236に高圧流体を供給することでピストン234を下降させることができる。
【0124】
ガイドポスト232、232にガイドブッシュ233、233を嵌める。ガイドポスト232、232とガイドブッシュ233、233でワーク受けプレート215の水平度が保たれる。上下移動中に、ワーク受けプレート215が揺れる心配はない。結果、1本のピストンロッド229のみでワーク受けプレート215を円滑に上下させることができる。
【0125】
なお、図8に示すように、ガイドポスト232、232は、ワーク受けプレート215から上へ延ばしてもよい。加工ヘッド213にガイドブッシュ233、233を設け、これらのガイドブッシュ233、233にガイドポスト232、232を挿通させる。
すなわち、加工ヘッド213とワーク受けプレート215の一方にガイドポスト232が設けられ、他方にガイドポスト232が差し込まれるガイドブッシュ233が設けられ、ガイドポスト232とガイドブッシュ233とによりガイドされつつ、ワーク受けプレート215が、加工ヘッド213へ接近するようにすればよく、ガイドポスト232、232が上に延びるか下に延びるかは任意である。
【0126】
次に、本発明の工作機械210へ加工前のワークを供給し、工作機械210から加工済みワークを受け取る役割を果たすワーク搬送機構について、図9に基づいて説明する。
図9に示すように、ワーク搬送機構240は、門型フレーム212の下部を水平に横断する水平移動部材241と、この水平移動部材241に所定ピッチで立てられたアーム242と、このアーム242の上部に取付けられる支持バー243と、この支持バー243から上に延ばされる大小の第1受けピン244及び第2受けピン245とからなる。
【0127】
すなわち、ワーク搬送機構240は、加工前のワークW1及び加工済みワークW2を水平にだけ搬送する機構であり、上下へ移動することはない。
なお、本実施例におけるワークW1、W2は、無段変速機用ケース又はこのケースの開口を塞ぐリッドであるが、ワークW1の形態、種類、用途は任意である。
【0128】
図10に示すように、アーム242はC型アームである。
そして、ワーク受けプレート215に、T字形を呈する貫通溝247を設ける。この貫通溝247は、相対的に支持バー243とアーム242の通過を許容する溝である。
支持バー243とアーム242は、上下に移動しない。
実線で示すワーク受けプレート215を下げると、貫通溝247が支持バー243とアーム242に干渉することなく、想像線の位置に至る。すなわち、ワーク受けプレート215は、実線の位置から想像線の位置まで、上下に移動可能となる。
【0129】
なお、ワーク受けプレート215には、第1受け面248と、第1位置決めピン429と、第2受け面251と、第2位置決めピン252とが、設けられている。
【0130】
以上の構成からなる工作機械の作用を、図11及び図12に基づいて説明する。
図11(a)に示すように、ワーク受けプレート215はワークW1の下方に保持されている。図10で説明したように、アーム242がワーク受けプレート215を迂回するようにC型を呈しているため、アーム242がワーク受けプレート215に干渉することなく、加工前のワークW1は、ワーク搬送機構240により、水平に搬送される。所定位置でワークW1が停められる。
【0131】
図11(b)に示すように、ワーク受けプレート215を上げることにより、ワークW1はワーク受けプレート215で掬い上げられる。ワークW1は、第1受けピン244及び第2受けピン245から離れるが、第1位置決めピン429と第2位置決めピン252とで水平方向の位置決めがなされ、第1受け面248と第2受け面251とで鉛直方向の位置決めがなされる。図ではワーク受けプレート215は上昇の途中であって、ワークW1とワーク抑えプレート216との間には隙間がある。
【0132】
ワーク受けプレート215を更に上昇させると、図12(a)に示すように、ワークW1の上面がワーク抑えプレート216に当接する。更に、ワーク受けプレート215を上昇させると、クッションユニット228、228が縮み、この縮み量に応じてクッションユニット228、228はワークW1をワーク受けプレート215へ付勢する。
なお、加工ヘッド213の下面とワーク抑えプレート216との間に介在して加工ヘッド213の下面からワーク抑えプレート216を吊したクッションユニット228、228の例を示したが、ワーク抑えプレート216は、上下にスライドはするものの、ワーク抑えプレート216の上昇端を図示しないストッパ等で止め、加工ヘッド213の下面とワーク抑えプレート216との間にはクッションユニットが介在せず、図示しない円筒内に多数枚の皿ばねを積層したものや図示しないスプリングと液圧ダンパーとを一体化したもので構成された図示しないクッションユニットを、ワーク抑えプレート216の下面に設置してワーク抑えプレート216の下面とワークW1との間に介在させても構わない。そうすると、ワーク受けプレート215を上昇させると、ワークW1の上面がワーク抑えプレート216の下面に設置した図示しないクッションユニットに当接する。更に、ワーク受けプレート215を上昇させると、図示しないクッションユニットが縮み、この縮み量に応じて図示しないクッションユニットはワークW1をワーク受けプレート215へ付勢する。
【0133】
図12(b)に示すように、ワーク受けプレート215とワーク抑えプレート216で挟持されたワークW1に、加工ヘッド213の切削工具221、222により機械加工を施す。機械加工を終えたら、図12(a)→図11(b)→図11(a)の順で、ワーク受けプレート215を下げ、加工済みワークW2を支持バー243へ受け渡す。
【0134】
以上の説明から明らかなように、加工ヘッド213は静止させ、ワークW1を加工ヘッド213へ接近させる。重量物である加工ヘッド213を移動させないため、省エネルギーが図れる。
【0135】
また、加工ヘッド213にワーク受けプレート移動機構(図7、符号214)を付設し、このワーク受けプレート移動機構でワーク受けプレート215を加工ヘッド213へ接近させる。ワーク受けプレート215とワーク抑えプレート216でワークW1を挟持しながら、ワークW1を加工ヘッド213へ接近させる。すなわち、ワーク搬送機構240からワークW1を分離して、加工ヘッド213へ接近させるため、ワークW1に影響されることなく、ワーク搬送機構240の搬送速度を高めることができる。
【0136】
次に、好ましい変形例を説明する。
図13に示すように、ワーク受けプレート215に位置決めノックピン254(以下、ノックピン254と記す。)が設けられ、ワーク抑えプレート216に柱状部材255が設けられ、この柱状部材255にノック穴256が設けられる。
加えて、ノックピン254に側方へ開口する溝257を形成し、柱状部材255の近傍にてワーク抑えプレート216にクランプ機構258を設ける。
【0137】
クランプ機構258は、斜め溝と軸方向溝を連続させてなるカム溝259が内蔵された油圧シリンダが好適である。この油圧シリンダを縮動させると、斜め溝によりピストンロッドが回転する。次に、軸方向溝によりピストンロッドは、回転しないで軸方向へ移動する。この油圧シリンダは、旋回と直線移動とを連続して実施するシリンダユニットである。
【0138】
先ず、ピストンロッド229により、ワーク受けプレート215を上昇させる。すると、ノック穴256へノックピン254が嵌合する。
図14に示すように、クランプ機構258を作動させる。すると、クランプ爪261が矢印(1)のように90°程度旋回した後、矢印(2)のように移動して、ノックピン254を柱状部材255へ引きつける。結果、ワーク受けプレート215にワーク抑えプレート216がクランプされる。
【0139】
すなわち、ノックピン254とノック穴256とにより、ワーク受けプレート215にワーク抑えプレート216が位置決めされる。ワーク受けプレート215にワーク抑えプレート216が位置決めされるため、挟持されるワークの位置が正確に定まる。
【0140】
図12において、加工ヘッド213による機械加工の際に、ワークW1に切削抵抗に相当する力が加わる。クランプ機構が無いときには、ワーク抑えプレート216で強くワークW1を押す必要があるため、ワーク抑えプレート216に付属する弾性部材(クッションユニット228、228)を強化する必要がある。
【0141】
この点、図14の構造であれば、クランプ機構258、258を備えることにより、ワーク抑えプレート216に付属する弾性部材(図6、符号228)は弱くて済み、弾性部材の軽量、小型化が図れる。
なお、天地を逆にして、ワーク受けプレート215に柱状部材255を設け、ワーク抑えプレート216にノックピン254を設けてもよい。
また、加工ヘッド213の下面とワーク抑えプレート216との間に介在して加工ヘッド213の下面からワーク抑えプレート216を吊したクッションユニット228、228の例(図12)を示したが、ワーク抑えプレート216は上下にスライドはするものの、ワーク抑えプレート216の上昇端を図示しないストッパ等で止め、加工ヘッド213の下面とワーク抑えプレート216との間にはクッションユニットが介在せず、図示しない円筒内に多数枚の皿ばねを積層したものや図示しないスプリングと液圧ダンパーとを一体化したもので構成された図示しないクッションユニットを、(図10参照)ワーク受けプレート215の上面の第1受け面248がある部材及び第2受け面251がある部材に設置してワーク受けプレート215の上面とワークW1との間に介在させても構わない。そうすると、ワーク受けプレート215を上昇させると、ワークW1の上面がワーク抑えプレート216の下面に当接する。更に、ワーク受けプレート215を上昇させると、図示しないクッションユニットが縮み、この縮み量に応じて図示しないクッションユニットはワークW1をワーク抑えプレート216へ付勢する。なお、図示しないクッションユニットを、ワーク抑えプレート216の下面に設置してワーク抑えプレート216の下面とワークW1との間に介在させても構わない。
【0142】
また、図15に示すように、1個のワーク受けプレート215に2個のワークW1、W1を載せるようにしてもよい。
この場合、図16に示すように、2個のワークW1、W1の重心と、1個のワーク受けプレート215の重心とを統合した総合的重心点にピストンロッド229の中心を合致させることができる。釣り合いが取れているために、1本のピストンロッド229だけで、ワーク受けプレート215を昇降させることができる。
【0143】
なお、理想的には、総合的重心点にピストンロッド229の中心を合致させるが、ピストンロッド229の中心は、ピストンロッド229の外径寸法程度は総合的重心点からオフセットすることが許容される。小さな不均衡であればガイドポスト232、232でカバーされるからである。
【0144】
結果、図7に示すように、ワーク受けプレート移動機構214は、1個の流体圧シリンダユニットで済ませることができる。1個の流体圧シリンダユニットであれば、装置が簡単になる設備コストを低減することが可能となる。
【0145】
なお、ワーク受けプレート移動機構214は、複数個(複数本)の流体圧シリンダユニットで構成することもできる。
すなわち、図17(a)に示すように、2本のピストンロッド229、229でワーク受けプレート215を昇降させるようにしてもよい。この場合、複数本のピストンロッド229、229を1本に集約してなる仮想的中心軸263を定める。具体的には、ピストンロッド229、229同士を結んだ線262の中点が仮想的中心軸263となる。
【0146】
この仮想的中心軸263が総合的重心点に合致する若しくは略合致するように、2本のピストンロッド229、229を位置決めする。ピストンロッド229、229に曲げが掛かりにくくなる。結果、ピストンロッド229、229を大径にする必要が無く、小径化が可能となり、ワーク受けプレート移動機構214の小型、軽量化が図れる。
【0147】
また、図17(b)に3本のピストンロッド229、229、229でワーク受けプレート215を昇降させるようにしてもよい。この場合、中央のピストンロッド229が仮想的中心軸263となる。この仮想的中心軸263が総合的重心点に合致する若しくは略合致するように、3本のピストンロッド229、229、229を位置決めする。ピストンロッド229、229、229に曲げが掛かりにくくなる。結果、ピストンロッド229、229、229を大径にする必要が無く、小径化が可能となり、ワーク受けプレート移動機構214の小型、軽量化が図れる。
【0148】
なお、図13及び図14で説明したクランプ機構258は、安価なロータリアクチュエータと安価なシリンダとを単純に組み合わせることもでき、実施例の構造に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0149】
本発明は、加工ユニットでワークに機械加工を施す工作機械に適用できる。
【符号の説明】
【0150】
10、90、210…工作機械、12…基台、14…多軸ヘッド、16…ワーク保持盤、22、30、96…車輪、26…シュータ、38…搬送ベルト、40…工具、42…第1モータ、44…第2モータ、58a、58b…ガイドロッド、60…シリンダ支持盤、62…シリンダ、64…変位用ロッド、70a、70b…支持用ロッド、74a、74b…ガイドブッシュ、76…軸受穴、78a、78b…チャック爪、92…台車、98…捕集トレー、100a、100b…ハンドル、213…加工ヘッド、214…ワーク受けプレート移動機構、215…ワーク受けプレート、216…ワーク抑えプレート、218、219…スピンドル軸、229…ピストンロッド、230…流体圧シリンダユニット、232…ガイドポスト、233…ガイドブッシュ、240…ワーク搬送機構、247…貫通溝、254…ノックピン、256…ノック穴、258…クランプ機構、263…仮想的中心軸、W…ワーク、W1…加工前のワーク、W2…加工済みワーク。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多軸ヘッドに設けられた複数個の工具によってワークに加工を施す工作機械であって、
基台と、
前記多軸ヘッドに対向する位置に配設され、且つワークを保持するワーク保持盤と、
前記ワーク保持盤を前記多軸ヘッドに対して相対的に離間又は接近する方向に変位させる変位機構と、
を備え、
前記ワーク保持盤又は前記多軸ヘッドのいずれか一方を前記基台で支持するとともに、前記ワーク保持盤又は前記多軸ヘッドの残余の一方を、前記変位機構によって支持した片持ち支持式であり、
且つ前記ワーク保持盤が前記多軸ヘッドに対して相対的に変位するときに該ワーク保持盤又は該多軸ヘッドを案内する案内手段を有することを特徴とする工作機械。
【請求項2】
請求項1記載の工作機械において、前記ワーク保持盤又は前記多軸ヘッドの中の前記変位機構で支持された一方を補助的に支持する補助支持部材を有し、前記補助支持部材は、前記ワーク保持盤又は前記多軸ヘッドが変位することに追従して前進又は後退することを特徴とする工作機械。
【請求項3】
請求項1又は2記載の工作機械において、前記基台に車輪が設けられたことを特徴とする工作機械。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の工作機械において、前記多軸ヘッドの下方に配置されて加工屑を捕集する加工屑捕集手段をさらに有することを特徴とする工作機械。
【請求項5】
請求項4記載の工作機械において、前記加工屑捕集手段に車輪が設けられたことを特徴とする工作機械。
【請求項6】
ワーク保持盤又は多軸ヘッドの一方を基台で支持するとともに、前記ワーク保持盤又は前記多軸ヘッドの残余の一方を変位機構で支持した片持ち支持式の工作機械を用いてワークに対して機械加工を施す加工方法であって、
前記多軸ヘッドに対向する位置に配設された前記ワーク保持盤にワークを保持する工程と、
前記変位機構を付勢することで前記ワーク保持盤を前記多軸ヘッドに対して相対的に接近するように変位させることにより、該ワーク保持盤に保持されたワークを前記多軸ヘッドに接近させる工程と、
前記多軸ヘッドに設けられた複数個の工具によって前記ワークに加工を施す工程と、
前記変位機構を付勢することで前記ワーク保持盤を前記多軸ヘッドに対して相対的に離間するように変位させることにより、該ワーク保持盤に保持された加工済の前記ワークを前記多軸ヘッドに対して離間させる工程と、
を有し、
前記ワーク保持盤が前記多軸ヘッドに対して相対的に変位するときに該ワーク保持盤又は該多軸ヘッドを案内手段で案内することを特徴とする工作機械を用いる加工方法。
【請求項7】
請求項6記載の加工方法において、前記ワークに加工を施すことによって発生した加工屑を加工屑捕集手段で捕集することを特徴とする工作機械を用いる加工方法。
【請求項8】
加工ヘッドに、ワークを接近させて前記ワークに加工を施す工作機械であって、
前記ワークを載せるワーク受けプレートと、前記加工ヘッドに設けられ前記ワーク受けプレートを前記加工ヘッドへ接近するように移動させるワーク受けプレート移動機構と、前記加工ヘッドと前記ワーク受けプレートとの間に配置され前記ワークが前記加工ヘッドへ所定位置まで接近した後に前記ワーク受けプレートへ前記ワークを押圧するワーク抑えプレートとを備えていることを特徴とする工作機械。
【請求項9】
前記加工ヘッドからスピンドル軸が下へ延ばされ、
前記ワーク受けプレートと前記ワーク抑えプレートの一方に位置決めノックピンが設けられ、他方に前記ノックピンが差し込まれるノック穴が設けられ、
前記ノックピンと前記ノック穴とにより、前記ワーク受けプレートに前記ワーク抑えプレートが位置決めされることを特徴とする請求項8記載の工作機械。
【請求項10】
前記加工ヘッドと前記ワーク受けプレートの一方にガイドポストが設けられ、他方に前記ガイドポストが差し込まれるガイドブッシュが設けられ、
前記ガイドポストと前記ガイドブッシュとによりガイドされつつ、前記ワーク受けプレートが、前記加工ヘッドへ接近することを特徴とする請求項8又は請求項9記載の工作機械。
【請求項11】
前記ワーク受けプレート移動機構は、1個の流体圧シリンダユニットからなり、
この流体圧シリンダユニットのピストンロッドが、前記ワーク受けプレートにワークを加えた総合的重心点又はその近傍を通過するように、前記流体圧シリンダユニットが配置されていることを特徴とする請求項8記載の工作機械。
【請求項12】
前記ワーク受けプレート移動機構は、複数個の流体圧シリンダユニットからなり、
複数本のピストンロッドを1本に集約してなる仮想的中心軸が、ワーク受けプレートにワークを加えた総合的重心点又はその近傍を通過するように、前記流体圧シリンダユニットが、配置されていることを特徴とする請求項8記載の工作機械。
【請求項13】
前記ワーク受けプレートと前記ワーク抑えプレートとの間に、前記ワークが挟持された際、両プレートを機械的に結合するクランプ機構が設けられていることを特徴とする請求項8記載の工作機械。
【請求項14】
加工前のワークをワーク搬送機構から前記ワーク受けプレートへ移載する、又は加工済みワークを前記ワーク受けプレートから前記ワーク搬送機構へ移載することができるように、前記ワーク搬送機構の通過を許容する貫通溝が、前記ワーク受けプレートに設けられていることを特徴とする請求項8記載の工作機械。
【請求項1】
多軸ヘッドに設けられた複数個の工具によってワークに加工を施す工作機械であって、
基台と、
前記多軸ヘッドに対向する位置に配設され、且つワークを保持するワーク保持盤と、
前記ワーク保持盤を前記多軸ヘッドに対して相対的に離間又は接近する方向に変位させる変位機構と、
を備え、
前記ワーク保持盤又は前記多軸ヘッドのいずれか一方を前記基台で支持するとともに、前記ワーク保持盤又は前記多軸ヘッドの残余の一方を、前記変位機構によって支持した片持ち支持式であり、
且つ前記ワーク保持盤が前記多軸ヘッドに対して相対的に変位するときに該ワーク保持盤又は該多軸ヘッドを案内する案内手段を有することを特徴とする工作機械。
【請求項2】
請求項1記載の工作機械において、前記ワーク保持盤又は前記多軸ヘッドの中の前記変位機構で支持された一方を補助的に支持する補助支持部材を有し、前記補助支持部材は、前記ワーク保持盤又は前記多軸ヘッドが変位することに追従して前進又は後退することを特徴とする工作機械。
【請求項3】
請求項1又は2記載の工作機械において、前記基台に車輪が設けられたことを特徴とする工作機械。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の工作機械において、前記多軸ヘッドの下方に配置されて加工屑を捕集する加工屑捕集手段をさらに有することを特徴とする工作機械。
【請求項5】
請求項4記載の工作機械において、前記加工屑捕集手段に車輪が設けられたことを特徴とする工作機械。
【請求項6】
ワーク保持盤又は多軸ヘッドの一方を基台で支持するとともに、前記ワーク保持盤又は前記多軸ヘッドの残余の一方を変位機構で支持した片持ち支持式の工作機械を用いてワークに対して機械加工を施す加工方法であって、
前記多軸ヘッドに対向する位置に配設された前記ワーク保持盤にワークを保持する工程と、
前記変位機構を付勢することで前記ワーク保持盤を前記多軸ヘッドに対して相対的に接近するように変位させることにより、該ワーク保持盤に保持されたワークを前記多軸ヘッドに接近させる工程と、
前記多軸ヘッドに設けられた複数個の工具によって前記ワークに加工を施す工程と、
前記変位機構を付勢することで前記ワーク保持盤を前記多軸ヘッドに対して相対的に離間するように変位させることにより、該ワーク保持盤に保持された加工済の前記ワークを前記多軸ヘッドに対して離間させる工程と、
を有し、
前記ワーク保持盤が前記多軸ヘッドに対して相対的に変位するときに該ワーク保持盤又は該多軸ヘッドを案内手段で案内することを特徴とする工作機械を用いる加工方法。
【請求項7】
請求項6記載の加工方法において、前記ワークに加工を施すことによって発生した加工屑を加工屑捕集手段で捕集することを特徴とする工作機械を用いる加工方法。
【請求項8】
加工ヘッドに、ワークを接近させて前記ワークに加工を施す工作機械であって、
前記ワークを載せるワーク受けプレートと、前記加工ヘッドに設けられ前記ワーク受けプレートを前記加工ヘッドへ接近するように移動させるワーク受けプレート移動機構と、前記加工ヘッドと前記ワーク受けプレートとの間に配置され前記ワークが前記加工ヘッドへ所定位置まで接近した後に前記ワーク受けプレートへ前記ワークを押圧するワーク抑えプレートとを備えていることを特徴とする工作機械。
【請求項9】
前記加工ヘッドからスピンドル軸が下へ延ばされ、
前記ワーク受けプレートと前記ワーク抑えプレートの一方に位置決めノックピンが設けられ、他方に前記ノックピンが差し込まれるノック穴が設けられ、
前記ノックピンと前記ノック穴とにより、前記ワーク受けプレートに前記ワーク抑えプレートが位置決めされることを特徴とする請求項8記載の工作機械。
【請求項10】
前記加工ヘッドと前記ワーク受けプレートの一方にガイドポストが設けられ、他方に前記ガイドポストが差し込まれるガイドブッシュが設けられ、
前記ガイドポストと前記ガイドブッシュとによりガイドされつつ、前記ワーク受けプレートが、前記加工ヘッドへ接近することを特徴とする請求項8又は請求項9記載の工作機械。
【請求項11】
前記ワーク受けプレート移動機構は、1個の流体圧シリンダユニットからなり、
この流体圧シリンダユニットのピストンロッドが、前記ワーク受けプレートにワークを加えた総合的重心点又はその近傍を通過するように、前記流体圧シリンダユニットが配置されていることを特徴とする請求項8記載の工作機械。
【請求項12】
前記ワーク受けプレート移動機構は、複数個の流体圧シリンダユニットからなり、
複数本のピストンロッドを1本に集約してなる仮想的中心軸が、ワーク受けプレートにワークを加えた総合的重心点又はその近傍を通過するように、前記流体圧シリンダユニットが、配置されていることを特徴とする請求項8記載の工作機械。
【請求項13】
前記ワーク受けプレートと前記ワーク抑えプレートとの間に、前記ワークが挟持された際、両プレートを機械的に結合するクランプ機構が設けられていることを特徴とする請求項8記載の工作機械。
【請求項14】
加工前のワークをワーク搬送機構から前記ワーク受けプレートへ移載する、又は加工済みワークを前記ワーク受けプレートから前記ワーク搬送機構へ移載することができるように、前記ワーク搬送機構の通過を許容する貫通溝が、前記ワーク受けプレートに設けられていることを特徴とする請求項8記載の工作機械。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2013−39658(P2013−39658A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−120062(P2012−120062)
【出願日】平成24年5月25日(2012.5.25)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年5月25日(2012.5.25)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
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