説明

工作機械

【課題】 一対の主軸部を備えた工作機械におけるこれら主軸部からの熱の影響を少なく抑え、ベッド本体の熱変形を均一化し、且つ冷却手段に関連する構成を簡単にすることができる工作機械を提供すること。
【解決手段】 ベッド本体2と、ベッド本体2に設けられた第1及び第2主軸部4,6と、第1及び第2主軸部4,6を冷却するための冷却手段42とを備えた工作機械(例えば、NC旋盤)。冷却手段42は、ベッド本体2に設けられた冷却液溜め部12と、冷却液を循環させるための循環ポンプ46と、冷却液を冷却するための第1及び第2クーラ手段48,50と、を備える。第1主軸部4を冷却した冷却液は第1クーラ手段48にて冷却された後に冷却液溜め部12における第2主軸部6側の部位に戻され、第2主軸部6を冷却した冷却液は第2クーラ手段50にて冷却された後に冷却液溜め部12における第1主軸部4側の部位に戻される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工物又は加工工具を回転駆動するための主軸部及びベッド本体を冷却する冷却手段を備えた工作機械に関する。
【背景技術】
【0002】
代表的な工作機械の一つであるNC旋盤は、床面に設置されるベッド本体を備え、このベッド本体の片側部に主軸部が設けられ、その他側部に刃物台が設けられている、主軸部には主軸が回転自在に支持され、この主軸に加工物を取り付けるためのチャックが設けられている。また、刃物台には加工物を切削加工するための加工工具が取り付けられ、主軸とともに回転する加工物に加工工具を作用させることによって、加工物に切削加工が施される。
【0003】
このようなNC旋盤では、加工時に主軸の回転によって熱が発生し、主軸の発熱がベッド本体に伝わることによりこのベッド本体が熱変形するおそれがあり、熱変形が生じると高精度の加工を行うことが難しくなる。
【0004】
そこで、このような加工時の熱変形を抑えるために、主軸部を冷却するための冷却手段が設けられている(例えば、特許文献1参照)。この冷却手段は、冷却液が収容される冷却槽と、冷却液を冷却するためのクーラ手段と、冷却液を循環するための循環ポンプとを備え、循環ポンプの作用によって、冷却槽内の冷却液が主軸部及びクーラ手段を通して循環され、かく循環される冷却液により主軸部が冷却される。
【0005】
【特許文献1】特開平10−249660
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のNC旋盤では、冷却槽などがベッド本体と別個に設けられており、それ故に、ベッド本体に加えて冷却槽も床面に設置しなければならず、NC旋盤を設置するための設置面積が大きくなる問題がある。
【0007】
また、従来のNC旋盤では、加工物の加工効率を高めるために、ベッド本体に2つの主軸部、即ち第1及び第2主軸部を設けたもの(所謂、ツースピンドル型のもの)が存在する。この種のNC旋盤では、第1及び第2主軸部に対応してそれぞれ冷却手段が独立して設けられ、各冷却手段は、上述したと同様に、冷却槽、クーラ手段及び循環ポンプを備えており、一方の冷却手段の冷却槽からの冷却液は第1主軸部を通して循環され、また他方の冷却手段の冷却槽からの冷却液は第2主軸部を通して循環され、各冷却手段は対応する主軸部を冷却する。
【0008】
このような一対の主軸部を備えたNC旋盤では、冷却手段が独立して2系統設けられるために、冷却手段に関連する構成が複雑になり、また二つの冷却槽を床面に設置するために、設置面積が更に大きくなるという問題がある。
【0009】
本発明の目的は、一対の主軸部を備えた工作機械におけるこれら主軸部からの熱の影響を少なく抑えるとともに、冷却手段に関連する構成を簡単にすることができる工作機械を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の請求項1に記載の工作機械は、床面に設置されるベッド本体と、前記ベッド本体に間隔をおいて取り付けられた第1及び第2主軸部と、前記第1及び第2主軸部を冷却するための冷却手段とを備えた工作機械において、
前記冷却手段は、前記ベッド本体に設けられた冷却液溜め部と、前記冷却液溜め部の冷却液を循環させるための循環ポンプと、冷却液を冷却するための第1及び第2クーラ手段と、を備え、前記第1主軸部を冷却した冷却液は前記第1クーラ手段に送給されて冷却された後に前記冷却液溜め部における前記第2主軸部側の部位に戻され、前記第2主軸部を冷却した冷却液は前記第2クーラ手段に送給されて冷却された後に前記冷却液溜め部における前記第1主軸部側の部位に戻されることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の請求項2に記載の工作機械では、前記ベッド本体には前記第1及び第2主軸部を取り付けるための第1及び第2主軸取付部が設けられ、前記冷却液溜め部は、前記第1及び第2主軸取付部に対応してこれらの下側に配設され、前記冷却液溜め部の中央部に供給部が設けられ、また前記冷却液溜め部の前記第1主軸取付部側に第1戻し部が設けられ、その前記第2主軸取付部側に第2戻し部が設けられ、前記供給部からの冷却液が前記循環ポンプに送給され、前記第1クーラ手段からの冷却液が前記第2戻し部に戻され、前記第2クーラ手段からの冷却液が前記第1戻し部に戻されることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の請求項3に記載の工作機械では、前記冷却液溜め部は、前記第1主軸取付部の一端側から他端側を通り、更に前記第2主軸取付部の一端側から他端側まで設けられ、前記供給部は前記第1主軸取付部と前記第2主軸取付部の間に設けられ、前記第1戻し部は前記第1主軸取付部の一端の外側に設けられ、前記第2戻し部は前記第2主軸取付部の他端の外側に設けられていることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の請求項4に記載の工作機械では、前記供給部並びに前記第1及び第2戻し部は前記冷却液溜め部の上端部に配設され、前記前記冷却液溜め部の上壁の内面には、前記第1及び第2主軸取付部に対応して下方に延びる第1及び第2リブが設けられていることを特徴とする。
【0014】
更に、本発明の請求項5に記載の工作機械では、前記第1及び第2主軸取付部はその間の中心軸線を中心として対称構造であり、このことに関連して、前記冷却液溜め部も上記中心軸線を中心として対称構造であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の請求項1に記載の工作機械によれば、ベッド本体に冷却液溜め部が設けられているので、冷却液槽を別個に設ける必要がなく、工作機械の設置面積を小さく抑えることができる。また、冷却手段が冷却液溜め部に加えて第1及び第2クーラ手段と共通の循環ポンプから構成されているので、冷却手段に関連する構成を簡単にして第1及び第2主軸部を所要の通りに冷却することができる。更に、第1主軸部を冷却した冷却液は第1クーラ手段にて冷却された後に冷却液溜め部における第2主軸部側の部位に戻され、第2主軸部を冷却した冷却液は第2クーラ手段にて冷却された後に冷却液溜め部における第1主軸部側の部位に戻されるので、冷却液溜め部内において冷却液の温度の均一化が図られ、第1及び第2主軸部の発熱量が異なってもそれらの熱が伝わるベッド本体の温度差を少なく抑え、第1及び第2主軸部及びその発熱によるベッド本体の熱変形を抑えて精度の高い加工を行うことができる。尚、工作機械とは、例えばNC旋盤、タレット旋盤などである。
【0016】
また、本発明の請求項2に記載の工作機械によれば、冷却液溜め部は第1及び第2主軸取付部に対応してこれらの下側に設けられているので、冷却液溜め部に収容された冷却液によっても第1及び第2主軸取付部を介して第1及び第2主軸部が冷却され、従って、所要の通りに循環される冷却液及び冷却液溜め部の冷却液によって第1及び第2主軸部及びベッド本体を効果的に冷却することができる。また、第1クーラ手段からの冷却された冷却液は、第2主軸取付部側の第2戻し部を通して冷却液溜め部に戻され、第2クーラ手段からの冷却された冷却液は第1主軸取付部側の第1戻し部を通して冷却液溜め部に戻されるので、冷却液溜め部内において冷却液の温度の均一化を効果的に行うことができる。
【0017】
また、本発明の請求項3に記載の工作機械によれば、冷却液溜め部は第1主軸取付部の一端側から他端側を通り、更に第2主軸取付部の一端側から他端側まで連続して設けられているので、第1及び第2主軸取付部の全域が冷却液溜め部に収容された冷却液によって冷却され、また第1及び第2主軸部からベッド本体に伝わる熱の温度差を小さくしてベッド本体の熱変形の影響を少なく抑えることができる。
【0018】
また、本発明の請求項4に記載の工作機械によれば、供給部並びに第1及び第2戻り部が冷却液溜め部の上端部に設けられ、またその上壁内面には下方に延びる第1及び第2リブが設けられているので、第1戻り部から流入した冷却液は第1リブによって下方に流れてた後に供給部に向けて上方に流れ、また第2戻り部から流入した冷却液は第2リブによって下方に流れた後に供給部に向けて上方に流れるので、冷却液溜め部における冷却液の滞留を少なくして冷却液を所要の通りに循環させることができる。
【0019】
更に、本発明の請求項5に記載の工作機械によれば、第1及び第2主軸取付部並びに冷却液溜め部は、中心軸線を中心として第1主軸部側と第2主軸部側とが対称であるので、冷却液溜め部内における冷却液の流れが第1主軸部側と第2主軸部側とで同じになるとともに、第1主軸取付部を介しての第1主軸部の冷却効果と第2主軸取付部を介しての第2主軸部の冷却効果が等しくなり、第1及び第2主軸部並びにベッド本体を均一に冷却することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、添付図面を参照して、本発明に従う工作機械の一例としてのNC旋盤の実施形態について説明する。図1は、一実施形態のNC旋盤を簡略的に示す断面図であり、図2は、図1のNC旋盤を簡略的に示す背面図であり、図3は、図1のNC旋盤及びその冷却系を簡略的に示す平面図であり、図4は、ベッド本体の上部を切り欠いて正面側の斜め上方から見た断面図である。
【0021】
図1〜図3において、工作機械の一例としての図示のNC旋盤は、工場などに床面に設置されるベッド本体2を備え、このベッド本体2の背面側(図1及び図3において右側、図2において手前側)に一対の主軸部、即ち第1及び第2主軸部4,6が設けられている。第1及び第2主軸部4,6は横方向(図1において紙面に垂直な方向、図2において左右方向、図3において上下方向)に所定の間隔をおいて設けられ、前後方向(図1及び図3において左右方向、図2において紙面に対して垂直な方向)に所定の範囲にわたって移動自在にベッド本体2に支持されている。ベッド本体2の手前側(図1及び図3において左側)には、第1及び第2主軸部4,6に対応して、一対の刃物台、即ち第1及び第2刃物台8,10が設けられている。第1及び第2刃物台8,10も上記横方向に間隔をおいて設けられ、上記横方向に所定の範囲にわたって移動自在に設けられ、かかる第1及び第2刃物台8,10に加工物(図示せず)を切削加工するための加工工具(例えば、切削工具)が取り付けられる。
【0022】
この実施形態では、ベッド本体2の背面側上部(後述する冷却液溜め部12の上壁14)には、横方向に間隔をおいて第1及び第2主軸取付部16,18が設けられている。第1及び第2主軸取付部16,18は実質上同一の構成であり、それらの両側端部には一対の案内支持部材20,22が設けられ、これら案内支持部材20,22間には収容凹部24,26が設けられ、案内支持部材20,22及び収容凹部24,26は上記前後方向に延びている。第1及び第2主軸部4,6は実質上同一の構成であり、第1主軸部4の両側部が第1主軸取付部16の案内支持部材20に前後方向に移動自在に支持され、その下部は第1主軸取付部16の収容凹部24に収容されている。また、第2主軸部6の両側部が第2主軸取付部18の案内支持部材22に前後方向に移動自在に支持され、その下部は第2主軸取付部18の収容凹部26に収容されている。更に、第1及び第2主軸部4,6を移動させるための駆動手段としての電動モータ25,27が設けられ、これら電動モータ25,27が第1及び第2主軸取付部16,18の収容凹部24,26の底面に取り付けられている。
【0023】
第1及び第2主軸部4,6は、駆動源によって回転駆動される主軸(図示せず)を有し、この主軸にチャック手段31,33が装着され、加工すべき加工物(図示せず)はこのチャック手段31,33に着脱自在に装着され、加工時に主軸とともにチャック手段31,33及び加工物が所定方向に回動される。第1及び第2主軸部4,6には、更に、冷却用の冷却ジャケット28,30が内蔵され、これら冷却ジャケット28,30には冷却液が流れる冷却液流路32,34が設けられ、冷却液(後述する)は、冷却液流路32,34を流れて第1及び第2主軸部4,6を冷却する。
【0024】
このNC旋盤には、第1及び第2主軸部4,6を冷却するための冷却手段42が設けられている。図示の冷却手段42は、冷却液を溜めるための冷却液溜め部12と、冷却液を循環させるための循環ポンプ46と、冷却液を冷却するための第1及び第2クーラ手段48,50とを含んでいる。冷却液溜め部12はベッド本体2に設けることが重要であり、ベッド本体2内に設けることによって専用の冷却液槽を省略することができる。
【0025】
この実施形態では、冷却液溜め部12はベッド本体2の上部に設けられ、第1及び第2主軸取付部16,18が設けられた上記上壁14とこの上壁14の下側に設けられた仕切り壁51との間に規定された液収容空間52を有している。液収容空間52は、図3及び図4に示す通り、第1主軸取付部16の一端側から他端側まで延び、更に第2主軸取付部18に至ってその一端側から他端側まで延びており、このベッド本体2のほぼ全幅にわたって設けられている。尚、ベッド本体2の上部の両側部には開口54,56が設けられているが、かかる開口54,56は密閉用プレート58,60により密閉される。
【0026】
冷却液溜め部12には、供給部62(図3参照)並びに第1及び第2戻り部64,66(図3及び図4参照)が設けられている。供給部62は、上壁14における第1及び第2主軸取付部16,18間の突出部位に設けられ、また第1戻り部64は、上壁14における第1主軸取付部16の外側の突出部位に設けられ、更に第2戻り部66は、上壁14における第2主軸取付部18の外側の突出部位に設けられている。供給部62及び第1及び第2戻り部64,66を上方に突出する突出部位に設けることによって、液収容空間52内において空気が溜まるのを防止することができる。
【0027】
また、上壁14における第1主軸取付部16に対応する内面(具体的には、第1戻り部64と供給部62との間の中間部位)には、仕切り壁51に向けて下方に延びる第1リブ68が設けられている。また、上壁14における第2主軸取付部18に対応する内面(具体的には、第2主軸取付部66と第2戻り部66との間の中間部位)には、仕切り壁51に向けて下方に延びる第2リブ70が設けられている。尚、第1リブ68(及び第2リブ70)は横方向に間隔をおいて複数設けるようにしてもよく、例えば3つ設ける場合、両側の第1リブ68(及び第2リブ70)は下方に延びるように上壁14に設けられ、中間の第1リブ68(及び第2リブ70)は上方に延びるように仕切り壁51の内面に設けられる。
【0028】
更に、供給部62が設けられた突出部位には、上壁14と仕切り壁51との間に補強用リブ72が設けられ、この補強用リブ72には両側を連通する連通開口74が設けられ、かかる連通開口74を通しての冷却液の流動が許容される。供給部62は補強用リブ72に設けられ、この補強用リブ72には供給部62に連通する流出口76(図4において一方のみ示す)が設けられ、流出口は補強用リブ72の両面側に開口している。このように構成することによって、冷却液溜め部12内の冷却液が補強用リブ72の両側から流出口76を通して供給部62に供給され、また供給部62に供給される冷却液供給量を制限することができる。
【0029】
この冷却手段42に関連して、第1及び第2主軸取付部16,18をそれらの中心軸線(補強用リブ72を通る軸線)を中心として幅方向に対称となる対称構造(即ち、図2及び図4において左右対称となる構造)とするのが好ましく、このことに関連して、冷却液溜め部12も上記中心軸線を中心として幅方向に対称となる対称構造とするのが好ましく、このように構成することによって、第1戻り部64から供給部62への冷却液の流れと、第2戻り部66から供給部62への冷却液の流れとが実質上同じになり、冷却液の流れの偏りをなくすことができる。
【0030】
この冷却手段42においては、循環ポンプ46並びに第1及び第2クーラ手段48,50は、図3に示すように接続される。冷却液溜め部12の供給部62は、供給ライン82を介して循環ポンプ46の流入部84に接続され、ベッド本体2に接続された配管86(図2参照)はこの供給ライン82の一部を構成する。また、循環ポンプ46の流出部88は分岐送給ライン90,92を介して第1及び第2主軸部4,6に接続される。即ち、一方の分岐送給ライン90は第1主軸部4の流入部94に接続され、他方の分岐接続ライン92は第2主軸部6の流入部96に接続される。従って、冷却液溜め部12内の冷却液は、供給部62から供給ライン82を通して循環ポンプ46に供給され、この循環ポンプ46から分岐送給ライン90,92を通して第1及び第2主軸部4,6に送給される。
【0031】
また、第1主軸部4の流出部98が送給ライン100を介して第1クーラ手段48の流入部102に接続され、その流出部104が戻りライン106を介して冷却液溜め部12の第2戻り部66に接続されている。更に、第2主軸部6の流出部108が送給ライン110を介して第2クーラ手段50の流入部112に接続され、その流出部114が戻りライン116を介して冷却液溜め部12の第1戻り部64に接続されている。第1及び第2クーラ手段48,50は例えばファンクーラから構成され、第1主軸部4からの冷却液は送給ライン100を通して第1クーラ手段48に送られ、この第1クーラ手段48にて冷却された後に戻りライン106を通して冷却液溜め部12の第2主軸取付部18側に戻され、また第2主軸部6からの冷却液は送給ライン110を通して第2クーラ手段50に送られ、この第2クーラ手段50にて冷却された後に戻りライン116を通して冷却液溜め部12の第1主軸取付部16側に戻される。
【0032】
循環ポンプ46並びに第1及び第2クーラ手段48,50は、図1及び図3に示すように配置される。即ち、第1及び第2クーラ手段48,50は、NC旋盤の電気制御ボックス120の下方に配置され、ベッド本体2の幅の大きさ内に収まるように設けるのが好ましく、かく配置することによって、NC旋盤の幅方向の大きさを小さく収めることが可能となり、その設置面積をより小さくすることができる。また、循環ポンプ46はNC旋盤の幅内であって、第1主軸部4と第1クーラ手段48の内に配置されるが、ベッド本体2における第1及び第2主軸部4,6間の部位に配設するようにしてもよい。
【0033】
この冷却手段42による第1及び第2主軸部4,6の冷却は、次のようにして行われる。冷却するときには、循環ポンプ46が作動され、この循環ポンプ46の作用によって冷却液が第1及び第2主軸部4,6を通して循環される。即ち、冷却液溜め部12から循環ポンプ46に送給された冷却液の一部(約半分の量)は、分岐送給ライン90を通して第1主軸部4に送給され、そのヘッドストック28の冷却液流路32を流れ、かく流れることによって、第1主軸部4が冷却される。ヘッドストック28を流れた冷却液は、第1クーラ手段48にて冷却された後に戻りライン106を通して第2戻り部66から冷却液溜め部12に戻される。また、この冷却液の残部(残りの約半分の量)は、分岐送給ライン92を通して第2主軸部6に送給され、そのヘッドストック30の冷却液流路34を流れ、かく流れることによって、第2主軸部6が冷却される。ヘッドストック30を流れた冷却液は、第2クーラ手段50にて冷却された後に戻りライン116を通して第1戻り部64から冷却液溜め部12に戻され、このようにして第1及び第2主軸部4,6が所要の通りに冷却される。
【0034】
このNC旋盤では、冷却液が上述したように流れるので、次の通りの特徴がある。第1に、第1主軸部4を流れた冷却液は第1クーラ手段48で冷却された後に第2主軸部6側の第2戻り部66から冷却液溜め部12に戻され(図4において左端部から戻される)、また第2主軸部6を流れた冷却液は第2クーラ手段50で冷却された後に第1主軸部4側の第1戻り部64から冷却液溜め部12に戻される(図4において右端部から戻される)ので、冷却液が片側だけ(例えば、第1主軸部4側又は第2主軸部6側のみ)循環されることなく、全体を通して循環され、従って、冷却液の温度の均一化が図られ、ベッド本体2への熱の影響を均一に抑えることができる。特に、例えば、第1主軸部4(又は第2主軸部6)が加工中で熱が発生し、例えば第2主軸部6(又は第1主軸部4)が加工停止中で熱が発生していないときにおいても、冷却液の温度の均一化が図られるので、第1主軸部4(又は第2主軸部6)からの熱影響を非常に小さく抑えることができ、第1主軸部4(又は第2主軸部6)からの熱が偏ってベッド本体2に作用するのを大きく抑えることができる。
【0035】
第2に、ベッド本体2の上部に冷却液溜め部12が設けられているので、第1及び第2主軸部4,6からの熱が冷却水溜め部12内を流動する冷却水に吸収されてベッド本体2の下部まで伝達されることがほとんどなく、これによって、ベッド本体2の熱変形を小さく抑えることができる。
【0036】
第3に、第1戻し部64を通して戻された冷却液は、第1リブ68を通過するまではこれに案内されて下方に流れ、通過後は供給部76に向けて上方に流れ、また第2戻し部66を通して戻された冷却液は、第2リブ70を通過するまではこれに案内されて下方に流れ、通過後は供給部76に向けて上方に流れるので、冷却水溜め部12における冷却水の滞留がほとんどなく、冷却液溜め部12内の冷却水を第1及び第2主軸部4,6を通して所要の通りに循環させることができる。
【0037】
第4に、第1及び第2主軸取付部16,18が設けられたベッド本体2の上壁14が液収容空間52を規定するので、第1及び第2主軸取付部16,18の底面に取り付けられた電動モータ25,27にて発生した熱はこの上壁14を介して冷却液溜め部12内の冷却液に吸収され、この電動モータ25,27からの熱の影響も著しく低減することができる。
【0038】
以上、本発明に従う工作機械の一例としてのNC旋盤の一実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変形乃至修正が可能である。
【0039】
例えば、図示の実施形態では、冷却液溜め部12が一つの液収容空間52から構成しているが、このような構成に限定されず、この冷却液溜め部12を第1主軸取付部16の下方に配設される第1液収容空間と第2主軸取付部の下方に配置される第2液収容空間との独立した二つの収容空間から構成するようにしてもよく、かかる場合、第1及び第2液収容空間から同量の冷却液が流出されて供給部62を通して循環ポンプ46に供給されるように構成される。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】一実施形態のNC旋盤を簡略的に示す断面図。
【図2】図1のNC旋盤を簡略的に示す背面図。
【図3】図1のNC旋盤及びその冷却系を簡略的に示す平面図。
【図4】ベッド本体の上部を切り欠いて正面側の斜め上方から見た断面図。
【符号の説明】
【0041】
2 ベッド本体
4 第1主軸部
6 第2主軸部
8,10 刃物台
12 冷却液溜め部
16 第1主軸取付部
18 第2主軸取付部
28,30 ヘッドストック
46 循環ポンプ
48 第1クーラ手段
50 第2クーラ手段
52 液収容空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
床面に設置されるベッド本体と、前記ベッド本体に間隔をおいて取り付けられた第1及び第2主軸部と、前記ベッド本体並びに前記第1及び第2主軸部を冷却するための冷却手段とを備えた工作機械において、
前記冷却手段は、前記ベッド本体に設けられた冷却液溜め部と、前記冷却液溜め部の冷却液を循環させるための循環ポンプと、冷却液を冷却するための第1及び第2クーラ手段と、を備え、前記第1主軸部を冷却した冷却液は前記第1クーラ手段に送給されて冷却された後に前記冷却液溜め部における前記第2主軸部側の部位に戻され、前記第2主軸部を冷却した冷却液は前記第2クーラ手段に送給されて冷却された後に前記冷却液溜め部における前記第1主軸部側の部位に戻されることを特徴とする工作機械。
【請求項2】
前記ベッド本体には前記第1及び第2主軸部を取り付けるための第1及び第2主軸取付部が設けられ、前記冷却液溜め部は、前記第1及び第2主軸取付部に対応してこれらの下側に配設され、前記冷却液溜め部の中央部に供給部が設けられ、また前記冷却液溜め部の前記第1主軸取付部側に第1戻し部が設けられ、その前記第2主軸取付部側に第2戻し部が設けられ、前記供給部からの冷却液が前記循環ポンプに送給され、前記第1クーラ手段からの冷却液が前記第2戻し部に戻され、前記第2クーラ手段からの冷却液が前記第1戻し部に戻されることを特徴とする請求項1に記載の工作機械。
【請求項3】
前記冷却液溜め部は、前記第1主軸取付部の一端側から他端側を通り、更に前記第2主軸取付部の一端側から他端側まで連続して設けられ、前記供給部は前記第1主軸取付部と前記第2主軸取付部の間に設けられ、前記第1戻し部は前記第1主軸取付部の一端の外側に設けられ、前記第2戻し部は前記第2主軸取付部の他端の外側に設けられていることを特徴とする請求項2に記載の工作機械。
【請求項4】
前記供給部並びに前記第1及び第2戻し部は前記冷却液溜め部の上端部に配設され、前記前記冷却液溜め部の上壁の内面には、前記第1及び第2主軸取付部に対応して下方に延びる第1及び第2リブが設けられていることを特徴とする請求項2又は3に記載の工作機械。
【請求項5】
前記第1及び第2主軸取付部はその間の中心軸線を中心として対称構造であり、このことに関連して、前記冷却液溜め部も上記中心軸線を中心として対称構造であることを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載の工作機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−279531(P2008−279531A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−124363(P2007−124363)
【出願日】平成19年5月9日(2007.5.9)
【出願人】(591014835)高松機械工業株式会社 (15)
【Fターム(参考)】