説明

工具用ソケット落下防止治具および工具用ソケット

【課題】工具用ソケットの落下を防止する
【解決手段】 本発明の工具用ソケット落下防止治具40は、ソケット部41と工具取付部10とを有する工具用ソケット11の落下を防止するための治具であって、工具取付部10の外周に摺動可能に取り付けられた治具胴体部43と、治具胴体部43に取り付けられたリング44とを有するものである。工具用ソケット11はドライバービット12を介してインパクトドライバー26に取り付けられ、このとき、リング44をインパクトドライバー26の本体に取付けられた取付具45に接続することにより、工具用ソケットの落下を防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工具用ソケット落下防止治具および工具用ソケットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ボルトやナットの締め付けは、ラチェット機能などを利用した手工具を使用したり、インパクトレンチにソケットを取付けたりして行われていた。これは、ソケットには締め付け時に大きなトルクが必要となるので、従来のインパクトドライバーでは出力が不足していたからである。しかし、近年、インパクトドライバーの出力が比較的に向上しているとともに、扱いやすい充電式インパクトドライバーに使用されるバッテリーの長寿命化も手伝って、インパクトドライバーに取付け可能なソケットが人気となっている。
【0003】
例えば、建築物の施工時に用いられる足場では、足場クランプの締め付けには17mmのボルトが使用され、ブラケットの締め付けには21mmのボルトが使用されるなど、様々な作業現場において2種またはそれ以上のソケットが使用されている。
【0004】
そこで、ソケット径の異なる二つのソケットを有する工具用ソケットは、簡単な操作で二種のソケットを切り替えることができるので、作業現場では重宝されており、従来、例えば、特許文献1〜7に示されるように、様々なものが開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開2001−105333号公報
【特許文献2】特開平8−141919号公報
【特許文献3】実開昭48−74398号公報
【特許文献4】実開平5−93766号公報
【特許文献5】実開平7−20259号公報
【特許文献6】特許第3947207号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ソケットのインパクトドライバーへの接続は、ドライバービットによって行われる。ソケットの中にはドライバービットを固定したものと、ドライバービットを着脱自在にしたものがある。いずれの場合も、使用状況によってはドライバービットの接続が完全ではなく、使用中にソケットがインパクトドライバーから外れる場合がある。このような事態が生じると、高所で作業している場合には、下まで取りに行く必要があり、また、落下の衝撃によってソケットが破損する場合もある。更に、真下に居る人に危険が及ぶという問題もある。このような問題は、ドライバービットを着脱自在にしたソケットのように、着脱箇所が多いソケットにおいて顕著となる。
【0007】
本発明は、このような従来技術の問題を解決するためになされたものであり、工具用ソケット落下防止治具および工具用ソケットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
従来、ソケットがインパクトドライバーから外れた場合の対策はなされていない。しかし、例えば、ドライバービットが折れるなど破損した場合、ドライバービット着脱手段が破損する場合も考えられる。この場合の作業性、他の作業者への危険性を考慮すると、その対策は必要である。
【0009】
しかし、ソケットは、インパクトドライバーによって回転が付与される箇所であるため、落下防止具をソケットの一部に取り付けるに際しては、ソケットの回転からはフリーな状態としなければならない。また、インパクトドライバーは高価なため、その買い換えが必要な態様では需要が見込めない。従って、従来のインパクトドライバーに容易に取り付けることができる構成であることが必要である。更に、落下防止治具は、工具用ソケットにとっては付随的な部材であるため、低価格な部材であることが好ましい。
【0010】
そこで、本発明者らは、工具取付部の外周に摺動可能に取り付けられた治具によって工具用ソケットの落下を防止することを見出し、本発明を完成させた。
【0011】
本発明は、下記の(1)に示す工具用ソケット落下防止治具および下記の(2)に示す工具用ソケットを要旨とする。
【0012】
(1)ソケット部と工具取付部とを有する工具用ソケットの落下を防止するための治具であって、前記工具取付部の外周に摺動可能に取り付けられた治具胴体部と、前記治具胴体部に取り付けられたリングとを有する工具用ソケット落下防止治具。
【0013】
なお、前記治具胴体部は、円筒部とフランジとで構成されていることが望ましい。
【0014】
(2)前記工具用ソケットが、一端にインナーソケットを、他端にドライバービット差込口をそれぞれ有し、前記インナーソケットと前記ドライバービット差込口との間にバネ外装部を有するソケット本体と、一端にアウターソケットを、他端にバネ収容部を有するソケット外筒と、コイル圧縮バネで構成される外筒付勢バネと、ブッシュと、ドライバービット着脱手段とを備える工具用ソケットであって、
前記ソケット本体の外周部に前記ソケット外筒が軸方向に移動自在に装着された状態で、前記外筒付勢バネが前記バネ外装部と前記バネ収容部と前記ブッシュとで形成される空間内に収容されており、常時は、前記インナーソケットが前記アウターソケットの内部に押し込まれた状態で静止しており、前記外筒付勢バネの力に反して前記アウターソケットに外力が加えられると、前記アウターソケットの位置が後退し、前記インナーソケットの先端が前記アウターソケットから突出する構成を有し、
上記(1)に記載の工具用ソケット落下防止治具がドライバービット着脱手段の外周に摺動可能に取り付けられている工具用ソケット。
【0015】
なお、前記ブッシュは、リング形状を有し、その内径は前記ソケット用バネ外装部の外径より大きく、その外径は前記ソケット用バネ収容部の内径より小さいものであり、前記ソケット用バネ外装部の前記角度調整手段側の端部に装着され、その小口面には前記ソケット用バネの抜け落ちを抑止するストッパー部を有し、その外周面には前記ソケット外筒の軸方向の移動を案内するガイド部を有することが好ましい。
【0016】
また、前記ブッシュの外径は、前記ソケット用バネのコイル外径より大きく、前記ソケット用バネ収容部は、前記アウターソケット側端部に設けられたソケット用バネ抑止部と、その内径が前記ソケット用バネのコイル外径より大きく、前記ブッシュ外径より小さいソケット用バネ格納部と、ブッシュ抑止部とで構成されており、前記ソケット用バネ格納部は、前記ソケット用バネに弾性域を超える力が負荷されない十分な長さを有していることが好ましい。
【0017】
なお、インナーソケットおよびアウターソケットは、六角ソケットおよび十二角ソケットのいずれの形状を採用しても良い。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、万が一ソケットがインパクトドライバーから外れた場合においても、ソケットが落下することはない。このため、高所での作業をする場合の作業性を高めると共に、ソケット落下による危険を回避することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図1〜3を用いて本発明の実施形態の例を説明する。図1は、本発明に係る工具用ソケットの例を示す斜視図、図2は、本発明に係る工具用ソケットの例を示す断面図、図3は、本発明に係る工具用ソケットをインパクトドライバーに取り付けた状態を示す図をそれぞれ示している。
【0020】
図1〜3に示すように、本発明の工具用ソケット落下防止治具40は、ソケット部41と工具取付部10とを有する工具用ソケット11の落下を防止するための治具であって、工具取付部10の外周に摺動可能に取り付けられた治具胴体部43と、治具胴体部43に取り付けられたリング44とを有するものである。この工具用ソケット落下防止治具40は、例えば、図2に示すように、工具取付部10の外周部に取り付けた後、リング48を嵌め込むことにより、工具取付部10の外周部に摺動可能に取り付けられる。
【0021】
そして、図3に示すように、本発明の工具用ソケット11は、工具取付部10がドライバービット12を介してインパクトドライバー26に取り付けられ、ナット(図示しない)を緩め、または、締め付けることができる。このとき、治具胴体部43に取り付けられたリング44をインパクトドライバー26の本体に取付けられた取付具45に接続する。取付具45としては、例えば、図3に示すように、インパクトドライバー26に巻き付けるための帯状体と取付治具とを有するものを用いることができる。
【0022】
本発明の工具用ソケット落下防止治具40は、このような構成を有しているので、工具用ソケット11の回転を阻害することなく、インパクトドライバー26に接続することができる。このため、万が一工具用ソケット11がインパクトドライバー26から外れても、落下することはなく、作業性を向上させると共に、危険を未然に防止することができる。
【0023】
本発明の工具用ソケット落下防止治具40が取り付けられる工具用ソケットには、特に制限はない。例えば、一つの径だけに対応したソケットであっても良いし、異なる複数のソケットに対応したソケットであっても良い。また、2種類のソケットを切り替えて使う工具用ソケットの場合、例えば、図2に示すように、ソケット本体4と、ソケット外筒7と、外筒付勢バネ8と、ブッシュ9と、ドライバービット着脱手段10とを備え、ソケット本体4には、一端にインナーソケット1、他端にドライバービット差込口2がそれぞれ設けられ、インナーソケット1とドライバービット差込口2との間にはバネ外装部3が設けられており、ソケット外筒7には、一端にアウターソケット5、他端にバネ収容部6が設けられているものを用いるのが好ましい。なお、図2に示す外筒付勢バネ8は、コイル状の圧縮バネで構成されている。
【0024】
ここで、本発明の工具用ソケット11は、例えば、図2に示すように、ソケット本体4の外周部にソケット外筒5が軸方向に移動自在に装着されている。この状態で、外筒付勢バネ8がバネ外装部3とバネ収容部6とブッシュ9とで形成される空間内に収容されている。本発明の工具用ソケット11は、このような構成を有しているので、常時は、インナーソケット1がアウターソケット5の内部に押し込まれた状態、即ち、アウターソケット5がインナーソケット1に対して突出した状態で静止している。
【0025】
図2に示すように、ドライバービット着脱手段10は、例えば、ドライバービット差込口2付近に設けられた貫通孔13と、貫通孔13に挿入された球体14と、着脱手段外筒15と、着脱手段用バネ16を有する。着脱手段外筒15には、球体14の一部を収容するための球体収容凹部17が設けられている。
【0026】
着脱手段外筒15は、着脱手段用バネによって図の右方向に付勢されており、これを図面左方向に相対的に移動させることにより、球体14は、球体収容凹部17に収められ、ドライバービット12をドライバービット差込口2に挿入することができる。そして、ドライバービット12のビットストッパー溝29が球体14に対応する位置まで挿入されたとき、球体14の一部がビットストッパー溝29に嵌め込まれるので、ドライバービット12がソケット本体4に固定される。同様に、着脱手段外筒15を図面左方向に相対的に移動させた状態では、球体14が球体収容凹部17に収められるので、ドライバービット12を抜くことができる。これにより、ドライバービット12の着脱が可能となる。
【0027】
ここで、着脱手段付勢バネ30の材質としては、SWC80Cなどの通常のバネ鋼を用いることもできるが、電動工具の作動中の振動が伝わるとドライバービット12が脱落することがある。このような現象は、使用回数が増えるほど生じやすくなり、工具用ソケットの寿命に大きな影響を与える。従って、着脱手段付勢バネ30の材質としては、SWP−Bなどのピアノ線を用いるのが望ましい。また、着脱手段外筒15に外力が働かない状態において、球体14と球体収容凹部17との相対的な位置が近すぎると、電動工具の作動中の振動により、ドライバービット12が脱落しやすくなる。従って、着脱手段外筒15に外力が働かない状態において、球体収容凹部17とソケット本体4に設けられた貫通孔13との位置が重ならないことが望ましい。
【0028】
本発明の工具用ソケット11は、図2に示すように、例えば、常時は、インナーソケット1がアウターソケット5の内部に押し込まれた状態、即ち、アウターソケット5がインナーソケット1に対して突出した状態で静止しているので、この状態でアウターソケット5に適合するナットの締め付け等を行うことができる。一方、外筒付勢バネ8の力に反してアウターソケット5に外力が加えられると、前記アウターソケット5の位置が後退し、インナーソケット1がアウターソケット5から突出するので、この状態でインナーソケット1に適合するナットの締め付け等を行うことができる。この場合の突出量は、2.5〜4.5mmの範囲とするのが望ましい。
【0029】
ブッシュ9は、リング形状を有し、その内径はバネ外装部3の外径より大きく、その外径はバネ収容部6の内径より小さいものであり、バネ外装部3のドライバービット差込口2側の端部に装着されているものを用いるのが望ましい。ブッシュ抑止リング20によりブッシュ9の抜け落ちが抑止される。外筒付勢バネ8の端部は、ブッシュ9の小口面(ストッパー部21)に当接しているので、抜け落ちることがない。また、ブッシュ9の外周面(ガイド部22)は、ソケット外筒7の内面が当接するので、ソケット外筒7の軸方向の移動をガイドする役割を担う。
【0030】
特に、ブッシュ9の外径が外筒付勢バネ8のコイル外径より大きいものを用い、バネ収容部6は、アウターソケット5側端部に設けられたバネ抑止部23と、バネ格納部24と、ブッシュ抑止部25とを有するものが望ましい。バネ格納部24は、その内径が外筒付勢バネ8のコイル外径より大きく、ブッシュ9の外径より小さいので、外筒付勢バネ8は収容できるが、ブッシュ9を収容できない構成となっている。このような構成であれば、ソケット外筒7は、ブッシュ抑止部25がブッシュ9に接触する位置までしか後退できないため、外筒付勢バネ8は、バネ格納部23に収納されるから、弾性域を超える力が負荷されない。
【0031】
なお、ソケット本体4は、中空のものであり、長く突出したボルトを格納するのに十分な長さを有するものが望ましい。
【0032】
本発明の工具用ソケット11において、ソケット外筒7のソケット本体4への取付けは、図1(c)において、ソケット本体4の図右側より、ソケット外筒7を外装し、バネ外装部3およびバネ収容部6によって形成される空間内に外筒付勢バネ8とともに、ブッシュ9を挿入し、ブッシュ抑止リング20をブッシュ抑止リング溝28にはめ込むことにより行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明によれば、万が一ソケットがインパクトドライバーから外れた場合においても、ソケットが落下することはない。このため、高所での作業をする場合の作業性を高めると共に、ソケット落下による危険を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明に係る工具用ソケットの例を示す斜視図
【図2】本発明に係る工具用ソケットの例を示す断面図
【図3】本発明に係る工具用ソケットをインパクトドライバーに取り付けた状態を示す図
【符号の説明】
【0035】
1 インナーソケット
2 ドライバービット差込口
3 バネ外装部
4 ソケット本体
5 アウターソケット
6 バネ収容部
7 ソケット外筒
8 外筒付勢バネ
9 ブッシュ
10 工具取付部(ドライバービット着脱手段)
11 本発明の工具用ソケット
12 ドライバービット
13 貫通孔
14 球体(ボール)
15 着脱手段外筒
16 着脱手段用バネ
17 球体収容凹部
20 ブッシュ抑止リング
21 ストッパー部
22 ガイド部
23 バネ抑止部
24 バネ格納部
25 ブッシュ抑止部
26 インパクトドライバー
27 ナット
28 ブッシュ抑止リング溝
29 ビットストッパー溝
30 着脱手段付勢バネ
31 着脱手段抑止リング
40 工具用ソケット落下防止治具
41 ソケット部
43 治具胴体部
44 リング
45 取付具
46 円筒部
47 フランジ
48 リング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソケット部と工具取付部とを有する工具用ソケットの落下を防止するための治具であって、前記工具取付部の外周に摺動可能に取り付けられた治具胴体部と、前記治具胴体部に取り付けられたリングとを有することを特徴とする工具用ソケット落下防止治具。
【請求項2】
前記治具胴体部が円筒部とフランジとで構成されていることを特徴とする請求項1に記載の工具用ソケット落下防止治具。
【請求項3】
前記工具用ソケットが、一端にインナーソケットを、他端にドライバービット差込口をそれぞれ有し、前記インナーソケットと前記ドライバービット差込口との間にバネ外装部を有するソケット本体と、一端にアウターソケットを、他端にバネ収容部を有するソケット外筒と、コイル圧縮バネで構成される外筒付勢バネと、ブッシュと、ドライバービット着脱手段とを備える工具用ソケットであって、
前記ソケット本体の外周部に前記ソケット外筒が軸方向に移動自在に装着された状態で、前記外筒付勢バネが前記バネ外装部と前記バネ収容部と前記ブッシュとで形成される空間内に収容されており、常時は、前記インナーソケットが前記アウターソケットの内部に押し込まれた状態で静止しており、前記外筒付勢バネの力に反して前記アウターソケットに外力が加えられると、前記アウターソケットの位置が後退し、前記インナーソケットの先端が前記アウターソケットから突出する構成を有し、
請求項1または2に記載の工具用ソケット落下防止治具がドライバービット着脱手段の外周に摺動可能に取り付けられていることを特徴とする工具用ソケット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−285756(P2009−285756A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−139263(P2008−139263)
【出願日】平成20年5月28日(2008.5.28)
【出願人】(594150235)株式会社プロス (9)
【Fターム(参考)】