説明

工具類のグリップとその製造方法

【課題】 弾性層による弾力性を維持しながらもグリップ外層に加わる力をグリップ内層に確実に伝達できるようにする。
【解決手段】 内周筒を形成するグリップ内層2と、グリップ外周面を形成するグリップ外層3と、前記グリップ内層2とグリップ外層3との間に配置されていてグリップ外層3の握り弾性変形を可能にする弾性層4とを有する。前記グリップ内層2とグリップ外層3とを繋ぐ主架橋部5と副架橋部6とがグリップ周方向に間隔をおいて形成され、この各架橋部間5、6に前記弾性層4が形成されており、前記副架橋部6は、前記グリップ内層2とグリップ外層3とに接続された両端部6aから中途部6bがグリップ周方向に偏位した断面略円弧形状に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドライバ、その他の手動操作される工具類のグリップとその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ドライバ等のグリップは、内周筒を形成するグリップ内層と、グリップ外周面を形成するグリップ外層と、前記グリップ内層とグリップ外層との間に配置されていてグリップ外層の握り弾性変形を可能にする弾性層とを有している(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】実開昭52−164660号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記従来技術においては、グリップ内層とグリップ外層との間に弾性層が配置されているので、グリップ外層の握り弾性変形を可能にし、握り易くしているが、強い回転トルクをかけようとすると、弾性層がグリップ周方向に大きく変形し、グリップ内層とグリップ外層との間での周方向の相対移動が大きく生じて、トルクが伝達し難いものとなる。また、グリップをグリップ長手方向(工具軸方向)に力を入れて工具を押しつけるときも、弾性層がグリップ長手方向に大きく変形し、グリップ外層がグリップ内層に対して大きく移動し、トルクが伝達し難いものとなる。
【0004】
本発明は、このような従来技術の問題点を解決できるようにした工具類のグリップとその製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、グリップ内層とグリップ外層とを繋ぐ主架橋部と副架橋部とを形成し、かつ副架橋部を断面略円弧形状に形成することにより、弾性層による弾力性を維持しながらもグリップ外層に加わる力をグリップ内層に確実に伝達できるようにした工具類のグリップを提供することを目的とする。
本発明は、注入口から第1樹脂を断続的に又は連続的に射出し、かつ前記注入口から第1樹脂より柔らかい第2樹脂を断続的に射出することにより、グリップ内層とグリップ外層とを繋ぐ主架橋部及び副架橋部とそれらの間の弾性層とを形成できるようにした工具類のグリップの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明における課題解決のための具体的手段は、次の通りである。
グリップは第1に、内周筒を形成するグリップ内層と、グリップ外周面を形成するグリップ外層と、前記グリップ内層とグリップ外層との間に配置されていてグリップ外層の握り弾性変形を可能にする弾性層とを有する工具類のグリップにおいて、
前記グリップ内層とグリップ外層とを繋ぐ主架橋部と副架橋部とがグリップ周方向に間隔をおいて形成され、この各架橋部間に前記弾性層が形成されており、
前記副架橋部は、前記グリップ内層とグリップ外層とに接続された両端部から中途部がグリップ周方向に偏位した断面略円弧形状に形成されていることを特徴とする。
【0006】
グリップは第2に、グリップ周方向において、前記主架橋部はグリップ周方向を等分する位置に複数配置され、各主架橋部間に偶数の副架橋部が配置され、各主架橋部間の副架橋部は主架橋部間の中心に対して凹みとなる断面略円弧形状に形成されていることを特徴とする。
グリップは第3に、前記複数本の主架橋部はそれぞれグリップ長手方向に沿って形成され、前記副架橋部は各主架橋部間でグリップ側面視において輪形状に形成されていることを特徴とする。
【0007】
グリップは第4に、前記断面略円弧形状の副架橋部は、両端部よりも中途部が厚肉の略三日月形状であることを特徴とする。
グリップの製造方法は第1に、金型のグリップ成形用型空洞内にコアを配置し、注入口から前記型空洞内に第1樹脂と第2樹脂の2種類の樹脂を射出する工具類のグリップの製造方法において、
前記第1樹脂を断続的に射出して型空洞の内面でグリップ内層とグリップ外層とを形成するとともにこれらグリップ内層とグリップ外層とを繋ぐ主架橋部を形成し、前記第1樹脂の断時に第1樹脂より柔らかい前記第2樹脂を射出して前記グリップ内層とグリップ外層と主架橋部との間に弾性層を形成し、この弾性層を形成する第2樹脂の射出後に少なくとも1回の第1樹脂の射出と第2樹脂の射出とを順次行い、前記第2樹脂の射出間に第1樹脂でグリップ内層とグリップ外層とを繋ぐ副架橋部を形成することを特徴とする。
【0008】
グリップの製造方法は第2に、金型のグリップ成形用型空洞内にコアを配置し、注入口から前記型空洞内に第1樹脂と第2樹脂の2種類の樹脂を射出する工具類のグリップの製造方法において、
前記第1樹脂を連続的に射出して型空洞の内面でグリップ内層とグリップ外層とを形成するとともにこれらグリップ内層とグリップ外層とを繋ぐ主架橋部を形成し、前記第1樹脂を連続射出する間に第1樹脂より柔らかい前記第2樹脂を1回射出して前記グリップ内層とグリップ外層と主架橋部との間に弾性層を形成し、この弾性層を形成する前記第2樹脂を断続射出して、第2樹脂の断時に前記連続射出の第1樹脂でグリップ内層とグリップ外層とを繋ぐ副架橋部を形成することを特徴とする。
[作用]
グリップ1は、グリップ内層2とグリップ外層3との間に配置されていてグリップ外層3の握り弾性変形を可能にする弾性層4を有しながら、グリップ内層2とグリップ外層3とを繋ぐ主架橋部5と副架橋部6とがグリップ周方向に間隔をおいて形成されており、グリップ外層3を握ってトルクを加えると、そのトルクは主架橋部5及び副架橋部6を介してグリップ内層2に伝達され、弾性層4が弾性変形しても、グリップ内層2とグリップ外層3との間での周方向の過大な相対移動を生じることなく、トルクを確実に伝達できる。グリップをグリップ長手方向に押すときも、グリップ内層2に対するグリップ外層3の変位量を抑えて、押し力をグリップ内層2に確実に伝達できる。
【0009】
しかも、副架橋部6がグリップ内層2とグリップ外層3とに接続された両端部6aから中途部6bがグリップ周方向に偏位した断面略円弧形状に形成されていることにより、この副架橋部6もグリップ径方向及び周方向に弾力的に変形し、グリップ1としての希望する弾性を維持しながらも必要な力の伝達が可能になる。
主架橋部5がグリップ周方向を等分する位置に複数配置され、各主架橋部5間に偶数の副架橋部6が配置されていると、主架橋部5による力伝達がグリップ周方向複数箇所で確実に行なわれ、偶数の副架橋部6もその力伝達に助成でき、しかも偶数の副架橋部6が主架橋部5間の中心に対して凹みとなる断面略円弧形状であると、グリップ1の回転方向が正逆どちらであっても、グリップ径方向及び周方向に弾力的に変形しながら力伝達も可能になる。
【0010】
複数本の主架橋部5がグリップ長手方向に沿って形成され、副架橋部6が各主架橋部5間でグリップ側面視において輪形状に形成されていると、副架橋部6はグリップの長手方向の広い範囲でグリップ周方向及び長手方向に弾力的に変形しながら力伝達も可能になる。
副架橋部6は、両端部6aよりも中途部6bが厚肉の略三日月形状であると、薄肉の両端部6aが中途部6bを中心にして互いに近づくように弾性変形し、主架橋部5よりもバネ効果を発揮することができ、両端部6aの変形後に変形抵抗の大きな中途部6bが変形することになり、最も力を入れたときにグリップ内層2とグリップ外層3とが一体となる状態で力を伝達することができる。
【0011】
グリップ1は外表面が手指の圧迫力によって没入変形して接触面積が増大され、手指の痛み、疲労等を軽減すると共に、手指に馴染んで握り易くかつ滑り難くなり、回転トルク又は押す力はグリップ外層3から工具類の柄部9に効率よく伝えることができ、力の伝達効率をアップさせることができる。
前記グリップ1の製造方法においては、グリップ成形用型空洞11内に注入口13から第1樹脂を断続的に射出していくと、第1樹脂の最初に射出された部分が型空洞11の内面に付着してグリップ内層2とグリップ外層3とを形成し、かつグリップ周方向の両方向に流れた先端部分が主架橋部5を形成し、次に射出された第2樹脂がグリップ内層2とグリップ外層3に付着するとともにグリップ周方向では主架橋部5に対面し、弾性変形可能な1番目の弾性層4を形成する。
【0012】
第2樹脂が断続的に射出されると、第2樹脂の断時に第1樹脂は前後の第2樹脂を区画するような壁、即ち、副架橋部6を形成することになり、この副架橋部6はグリップ内層2とグリップ外層3と同一材料であるのでその両端部6aがグリップ内層2とグリップ外層3とに接続された状態で形成される。
樹脂は注入口13から風船が膨らむようにグリップ成形用型空洞11内を流動するので、弾性層4も副架橋部6も注入口13を中心とする断面略円弧形状に形成され、副架橋部6が第1樹脂から派生されるのでその両端部6aはグリップ内層2とグリップ外層3とに引っ張られ、中途部6bが大きくかつ多く流動し、円弧形状であってかつ略三日月形状になる。第2樹脂も第1樹脂との間で流動抵抗を受けるので、両端部6aは肉薄く、中途部6bが肉厚の略三日月形状になる。
【0013】
前記注入口13から型空洞11内に射出される第1樹脂と第2樹脂とは、グリップ1を外方から見ると、注入口13を中心とする複数の輪形状となる。即ち、2つの注入口13から射出された第1樹脂は、2つの注入口13の中間で衝突してグリップ長手方向に沿う主架橋部5となり、弾性層4及び副架橋部6は円又は楕円の輪形状に形成される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、弾性層による弾力性を維持しながらも、グリップ外層に加わる力をグリップ内層に確実に伝達できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1〜4は本発明の実施形態を示すもので、グリップ1は、ドライバ等の工具類の柄部9に嵌着されるコア12の外側周囲に取り巻くように配置されており、コア12に嵌着する内周筒を形成するグリップ内層2と、把持されるグリップ外周面を形成するグリップ外層3と、前記グリップ内層2とグリップ外層3との間に配置されていてグリップ外層3の握り弾性変形を可能にする弾性層4とを有し、弾性層4を内外2層で挟む3層構造になっている。
【0016】
前記弾性層4はグリップ内層2及びグリップ外層3より柔らかい弾力性に富む軟質合成樹脂で形成され、前記グリップ内層2及びグリップ外層3は弾性層4より高硬度であるがコア12より低硬度の合成樹脂で形成され、弾性層4より肉厚が薄く、特にグリップ外層3は弾性層4にバックアップされて弾性変形可能な厚さになっている。
グリップ1の長手方向両端部1a,1bは前記グリップ内層2及びグリップ外層3と同一の樹脂材料で、それらを形成するときに同時に一体形成されている。
前記グリップ内層2とグリップ外層3との間には、それらを繋ぐように主架橋部5と副架橋部6とが形成されており、この主架橋部5と副架橋部6とはグリップ周方向に間隔をおいて形成され、この各架橋部間にも前記弾性層4が形成されている。
【0017】
前記副架橋部6は、前記グリップ内層2とグリップ外層3とに接続された両端部6aから中途部6bがグリップ周方向に偏位した断面略円弧形状に形成されている。
図1において、グリップ1には、輪切り断面したグリップ周方向において、主架橋部5はグリップ周方向を等分する位置に複数(180度変位した2つ)配置され、各主架橋部5間に偶数(2つ1組で計4つ)の副架橋部6が配置され、各主架橋部5間の副架橋部6は主架橋部5間の中心に対して凹みとなる断面略円弧形状に形成されている。主架橋部5と副架橋部6との間及び副架橋部6間の弾性層4も主架橋部5間の中心に対して凹みとなる断面略円弧形状に形成されている。
【0018】
即ち、1つの主架橋部5を挟むように、左右2つ1組で計2組の副架橋部6A、6Bが配置され、各組の副架橋部6は凸状の円弧を主架橋部5に向けていて、両端部6aよりも中途部6bが厚肉の略三日月形状であり、主架橋部5の副架橋部6に対向する面5aも断面略円弧形状になっている。
また、1つの主架橋部5を挟むように、左右2つ1組で計2組の弾性層4A、4Bが配置され、各組の弾性層4は凸状の円弧を主架橋部5に向けていて、両端部よりも中途部が厚肉の略三日月形状である。
【0019】
前記弾性層4及び副架橋部6は、主架橋部5に近い側から第1弾性層4A及び第1副架橋部6A、第2弾性層4B及び第2副架橋部6Bとなっており、両主架橋部5間の中央に第3弾性層4Cが形成されており、前記第1、第2の各弾性層4A、4B及び副架橋部6A、6Bはそれぞれ略三日月形状である。
各部の肉厚は、主架橋部5の周方向の肉厚が最も厚く、次にグリップ外層3が厚く、グリップ内層2は最も薄くなっており、グリップ外層3は主架橋部5から主架橋部5の中間側へ次第に薄くなっており、主架橋部5と副架橋部6の間又は副架橋部6間の弾性層4と副架橋部6とは周方向では略同一の厚さに形成されている。
【0020】
グリップ1はグリップ長手方向において、前記主架橋部5は長手方向に沿って形成され、前記副架橋部6は図2に示すように、グリップ内層2とグリップ外層3とに接続された両端部6aからグリップ径方向中途部6bが長手方向に偏位した断面略円弧形状に形成されている。
前記副架橋部6はグリップ長手方向(縦断面視)において、グリップ長手方向の中心に対して凹みとなる断面略円弧形状に形成され、両端部6aよりも中途部6bが厚肉の略三日月形状である。なお、グリップ1の長手方向両端部1a,1bの副架橋部6に対向する面1cも断面略円弧形状になっている。
【0021】
グリップ1の弾性層4と副架橋部6のグリップ側面視形状は、図3に示すように、各主架橋部5間で輪形状に形成されている。これはグリップ1の射出成形時に、1つの注入口13から2種類の樹脂を金型の型空間内に射出していくと、注入口13を中心として円形に膨張するので、注入口13直下の弾性層4Cは外周が円形に、続いて注入口13に最も近い第2副架橋部6Bが円形に近い楕円形に、第1副架橋部6A及び第2弾性層4Bが楕円形にそれぞれ形成され、注入口13を中心とする輪形状になる。
即ち、第1、第2副架橋部6A、6B及び第2弾性層4B等は、輪のどの位置を断面しても略三日月であり、三日月の中途部の肉厚が厚薄に連続して変化している。
【0022】
前記副架橋部6がこのような輪形状を呈することにより、グリップ周方向のトルクが加えられたときも、グリップ長手方向の押し力が加えられたときも、それらの力により副架橋部6の輪形状が変形され、その変形抵抗がバネ効果を発揮し、弾性を維持しながらグリップ外層3からグリップ内層2へ力を伝達することができる。
前記グリップ外層3の外周面に、把持する人手との間でグリップ周方向及び長手方向の滑りを防止する凹凸面が形成されている。
図1において、前記のように構成されたグリップ1は、把持力P1を加えて把持すると、弾性層4が押されて圧縮されるように変形し、そのとき副架橋部6も力T1、T2等を受けて略三日月形状が両端部6aが近づくように変形し、弾性層4の弾性復元力及びこの弾性層4より硬質の副架橋部6の略三日月形状による弾性復元力を内在し、それらの弾性復元力によりグリップ1は手の平にフィットし、面圧を低下させ、手の平との間の摩擦抵抗を高める。
【0023】
グリップ1を把持した状態で回動してトルクP2を加えると、主架橋部5がトルクP2をグリップ内層2に伝達するのは勿論であるが、副架橋部6もグリップ周方向の押動力のかかる側では略三日月形状が両端部6aがグリップ周方向にも径方向にも近づくようにさらに変形し、また略三日月形状に沿う押し力T3を生じ、グリップ内層2を押すようにしてトルクP2を伝達する。
弾性層4C付近にトルクP2が加わった場合、副架橋部6A、6Bは主架橋部5よりも近い位置にあり、トルクP2を伝達し易い位置にあり、トルク伝達をより効率良く助成する。
【0024】
また、トルクP2の加わる方向と反対側にある主架橋部5及び副架橋部6は引っ張り力T4を受けるが、副架橋部6の引っ張り力T4に対する抵抗力もグリップ内層2へのトルク伝達になり、確実なトルク伝達を助成する。
[実験例]
図5はドライバ用グリップのひねり試験の結果を示している。
実線で示すグリップAは、前記実施形態で示した2本の主架橋部5間に第1、第2副架橋部6A、6Bを有するグリップ1であり、点線で示すグリップBは、2本の主架橋部5を有するが副架橋部を備えていないグリップであり、1点鎖線で示すグリップCは、1本の主架橋部5のみを有するグリップである。
【0025】
試験は、工具柄部9を固定し、グリップを把持して回転していき、グリップの回転角度に応じたトルクを測定している。
グリップAはグリップB、Cに比べて、回転角度に対応するトルクが常に大きく、回転角度60度では、グリップAは8N.m以上のトルクが得られるのに対して、グリップB、Cはそれぞれ6N.m、5N.m以下のトルクしか得られない。また、一定トルク、例えば、4N.mを得るためには、グリップAは略17度回転すればよいが、グリップB、Cはそれぞれ20度、24度以上回転しなくてはならない。
【0026】
この試験結果から明らかなように、弾性層4を設けてグリップ外層3の弾性変形を可能にしながら、2本の主架橋部5間に第1、第2副架橋部6A、6Bを有することにより、グリップ1にトルクを加えると、グリップ内層2に対するグリップ外層3のズレ動きが少なく、グリップ外層3からグリップ内層2へのトルク伝達が確実にできる。
[製造方法]
次に、前記構成のグリップの製造方法を説明する。
図2は金型分割面で断面した縦断面図であり、この図2において、10U、10Dは上下2つ割の金型で、その内部にグリップ成形用型空洞11が形成されており、この型空洞11内にドライバ等の工具柄部9に嵌着したコア12を配置し、注入口13から2種類の樹脂を射出することによりグリップ1が成形される。
【0027】
前記型空洞11に連通する注入口13(図3では仮想線で示す)は上下割金型10U、10Dの金型分割面に左右1つずつ形成され、左右注入口13から同時に第1樹脂を射出し、この第1樹脂の射出から遅延して第2樹脂を断続的に射出する。
第1樹脂はグリップ内層2、グリップ外層3、主架橋部5及び副架橋部6を形成する比較的硬い樹脂であり、射出成形が可能な熱可塑性のエラストマ、例えばオレフィン系や、スチレン系などの反発性に富むエラストマやゴムなどで形成されており、JIS−A硬度で55°±15°が好ましい。
【0028】
第2樹脂は弾性層4を形成する比較的柔らかい樹脂であり、前記エラストマと同様のものが使用可能であり、JIS−A硬度で10°±5°が好ましい。
前記注入口13には混色成形ノズル(図示せず)が接続されており、混色成形ノズルから基本材料の第1樹脂を射出し、その第1樹脂内に別系統を流れてきた第2樹脂を射出する。
第1樹脂と第2樹脂の射出量は同一であっても異なっていてもよく、グリップ1と適用する工具、要求される弾性等によって適宜決定される。
【0029】
第1樹脂はグリップ内層2、グリップ外層3及びグリップ長手方向両端部1a、1bを形成するので、第2樹脂よりも先に一定量射出される。この第1樹脂の射出を断続的に行い、第1樹脂の断時のみに第2樹脂を射出する。
このように第1樹脂と第2樹脂とを交互に射出していくと、先ず各注入口13から型空洞11内に入った第1樹脂が風船形状に膨らみ、コア12に衝突してコア12の廻りでグリップ周方向の両方向に流動し、またその風船形状の第1樹脂内に第2樹脂が入っていくととも第2樹脂も風船形状に膨らんでいき、最外側の第1樹脂が型空洞11の内面(コア12の外周面を含む)に密接してグリップ内層2及びグリップ外層3を形成していき、また型空洞11の奥の方へ流動し、2つの注入口13から型空洞11内に射出された第1樹脂同士がその中間で結合して、グリップ長手方向に沿った主架橋部5を180度変位した位置に2本形成する。
【0030】
1番目の第1樹脂射出断時に射出された第2樹脂はその後に射出される2番目の第1樹脂によって膨らみながら、グリップ内層2、グリップ外層3及び2本の主架橋部5の内側の弾性層4Aを形成し、この弾性層4Aの内側に前記2番目の第1樹脂によってグリップ内層2とグリップ外層3とを繋ぐ副架橋部6Aが形成される。
この弾性層4と副架橋部6とを形成する射出を2回行って弾性層4A、4Bと副架橋部6A、6Bを形成した後に第2樹脂を射出することにより、グリップ長手方向中央に弾性層4Cを形成し、その後に第1樹脂を射出して弾性層4が露出しないように被うグリップ外層3を形成する。
【0031】
また、グリップは第1樹脂の射出を連続的に行い、第2樹脂のみを断続的に射出しても成形できる。
即ち、各注入口13から型空洞11内に連続的に入った第1樹脂が風船形状に膨らみ、その風船形状の第1樹脂内に断続的に第2樹脂が入っていくと、風船形状に膨らんで最外側の第1樹脂が型空洞11の内面に密接してグリップ内層2及びグリップ外層3を形成し、また型空洞11の奥では2つの注入口13からの第1樹脂同士が結合して2本の主架橋部5を形成し、そのグリップ内層2、グリップ外層3及び主架橋部5の成形中にそれらの内側に第2樹脂が弾性層4Aを形成し、第2樹脂の射出が断のときに弾性層4Aの内側に第1樹脂によって副架橋部6Aが形成される。同様にして、第2の弾性層4B、副架橋部6B及び第3の弾性層4Cを形成する。
【0032】
なお、本発明は前記実施形態における各部材の形状及びそれぞれの前後・左右・上下の位置関係は、図1〜4に示すように構成することが最良である。しかし、前記実施形態に限定されるものではなく、材料、部材、構成等を種々変形したり、組み合わせを変更したりすることもできる。
例えば、金型10の注入口13を1カ所のみ形成して、主架橋部5を1本のみ形成したり、注入口13をグリップ周方向に間隔をおいて等分する位置に3カ所以上形成して、主架橋部5を3本以上形成したりしてもよく、また、金型10の注入口13をグリップ長手方向に間隔をおいて複数カ所に形成してもよい。
【0033】
また、グリップ周方向において、前記副架橋部6は2つ1組で計4つ形成されているが、1組のみ又は3組以上を形成してもよく、また、第2樹脂の流れ方向を制御して注入口13から一方の主架橋部5側にのみ1又は複数の副架橋部6を配置するようにしてもよい。
さらに、弾性層4と副架橋部6の肉厚に差異を設けたり、グリップ内層2の肉厚をグリップ外層3より厚くしたりしてもよい。グリップ内層2の肉厚をグリップ外層3より厚くする場合は、グリップ1のみを金型10で成形して、成形後にコア12に嵌着するようにしてもよい。
【0034】
さらにまた、金型10内に型空洞11を貫通してコア12に達するピンをグリップ周方向及び長手方向に複数本点在させておいて、型空洞11内に射出した第1樹脂をそのピンに絡みつかせ、グリップ内層2とグリップ外層3とを繋ぐ細い筒柱形状の副架橋部6を追加して形成してもよい。
また、グリップ内層2の内周面にコア12との間でグリップ周方向及び長手方向のズレ動きを防止する凹凸面を形成したりしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の実施形態を示すグリップの横断面図である。
【図2】グリップの縦断面図である。
【図3】副架橋部の側面視形状を表すグリップの一部断面側面図である。
【図4】グリップの側面図である。
【図5】ドライバ用グリップのひねり試験を示すグラフである。
【符号の説明】
【0036】
1 グリップ
2 グリップ内層
3 グリップ外層
4 弾性層
5 主架橋部
6 副架橋部
6a 端部
6b 中途部
9 工具柄部
10 金型
11 型空洞
12 コア
13 注入口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内周筒を形成するグリップ内層と、グリップ外周面を形成するグリップ外層と、前記グリップ内層とグリップ外層との間に配置されていてグリップ外層の握り弾性変形を可能にする弾性層とを有する工具類のグリップにおいて、
前記グリップ内層とグリップ外層とを繋ぐ主架橋部と副架橋部とがグリップ周方向に間隔をおいて形成され、この各架橋部間に前記弾性層が形成されており、
前記副架橋部は、前記グリップ内層とグリップ外層とに接続された両端部から中途部がグリップ周方向に偏位した断面略円弧形状に形成されていることを特徴とする工具類のグリップ。
【請求項2】
グリップ周方向において、前記主架橋部はグリップ周方向を等分する位置に複数配置され、各主架橋部間に偶数の副架橋部が配置され、各主架橋部間の副架橋部は主架橋部間の中心に対して凹みとなる断面略円弧形状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の工具類のグリップ。
【請求項3】
前記複数本の主架橋部はそれぞれグリップ長手方向に沿って形成され、前記副架橋部は各主架橋部間でグリップ側面視において輪形状に形成されていることを特徴とする請求項2に記載の工具類のグリップ。
【請求項4】
前記断面略円弧形状の副架橋部は、両端部よりも中途部が厚肉の略三日月形状であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の工具類のグリップ。
【請求項5】
金型のグリップ成形用型空洞内にコアを配置し、注入口から前記型空洞内に第1樹脂と第2樹脂の2種類の樹脂を射出する工具類のグリップの製造方法において、
前記第1樹脂を断続的に射出して型空洞の内面でグリップ内層とグリップ外層とを形成するとともにこれらグリップ内層とグリップ外層とを繋ぐ主架橋部を形成し、前記第1樹脂の断時に第1樹脂より柔らかい前記第2樹脂を射出して前記グリップ内層とグリップ外層と主架橋部との間に弾性層を形成し、この弾性層を形成する第2樹脂の射出後に少なくとも1回の第1樹脂の射出と第2樹脂の射出とを順次行い、前記第2樹脂の射出間に第1樹脂でグリップ内層とグリップ外層とを繋ぐ副架橋部を形成することを特徴とする工具類のグリップの製造方法。
【請求項6】
金型のグリップ成形用型空洞内にコアを配置し、注入口から前記型空洞内に第1樹脂と第2樹脂の2種類の樹脂を射出する工具類のグリップの製造方法において、
前記第1樹脂を連続的に射出して型空洞の内面でグリップ内層とグリップ外層とを形成するとともにこれらグリップ内層とグリップ外層とを繋ぐ主架橋部を形成し、前記第1樹脂を連続射出する間に第1樹脂より柔らかい前記第2樹脂を1回射出して前記グリップ内層とグリップ外層と主架橋部との間に弾性層を形成し、この弾性層を形成する前記第2樹脂を断続射出して、第2樹脂の断時に前記連続射出の第1樹脂でグリップ内層とグリップ外層とを繋ぐ副架橋部を形成することを特徴とする工具類のグリップの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−160669(P2009−160669A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−340205(P2007−340205)
【出願日】平成19年12月28日(2007.12.28)
【特許番号】特許第4149505号(P4149505)
【特許公報発行日】平成20年9月10日(2008.9.10)
【出願人】(000232597)株式会社ベッセル工業 (27)