説明

工業用殺菌剤組成物

【課題】 工業用水や工業製品などにおいて優れた殺菌効果を発揮し、かつ安全性にも優れ、さらには環境への負荷が極力軽減された工業用殺菌剤組成物を提供する。
【解決手段】 (A)一般式(1)で表されるイソチアゾリン化合物またはその誘導体と、(B)メチレンビスチオシアネートと、(C)ハロゲン化脂肪族ニトロアルコール化合物とを有効成分とし、(A):(B)を重量比で1:9〜9:1、(C)を殺菌剤組成物全量中ハロゲン含有量で0.002〜0.32となるように含有する。
【化1】


式中、Rは置換基を有していてもよい炭素数1〜8のアルキル基を示し、XとYは水素原子または低級アルキル基を示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維油剤、ラテックス類、コーティングカラー、リグニン、コンクリート減水剤、澱粉スラリー、糊材、塗料、接着剤、染料液などの工業製品などに使用され、細菌、カビ、酵母、藻などの殺微生物(以下、殺菌と記す)に好適に用いられる工業用殺菌剤組成物であって、特に、環境破壊や装置構成材の腐食を招く虞れがあり、また廃棄処分に多大のコストを要する塩素を極力用いず、広い抗菌スペクトルや持続性を有するため少量の使用で優れた殺菌効果を示し、したがって安全性にも優れる工業用殺菌剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、イソチアゾリン化合物またはその誘導体を用いる工業用殺菌剤としては種々のものが提案され、実用化されている(例えば、特公昭46−21240号公報、特公昭60−54281号公報、特公平7−37362号公報など参照)。
また、イソチアゾリン化合物またはその誘導体と、他に何種類かの化合物とを併用することにより、殺菌剤としての効能を高める工夫もなされており、例えば3−イソチアゾロン化合物またはそれらの金属塩コンプレックスと、ブロモニトロ系またはブロモシアノ系化合物の少なくとも1種と、メチレンビスチオシアネートとを有効成分とする工業用殺菌・静菌剤なども報告されている(特許第2679937号公報)。
【0003】
一方、従来より用いられているイソチアゾリン化合物またはその誘導体のうち、5−クロル−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン(以下、「Cl−MIT」と記すことがある)は、優れた抗菌効果を有するものの、水に対する安定性が極めて低いために単独で使用されることはなく、その安定性を高めるために、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン(以下、「H−MIT」と記すことがある)との混合物として使用したり、金属錯体を添加して使用したりするなどの工夫がなされている。
【0004】
しかし、Cl−MITは、環境破壊を招く虞のある塩素を含んでおり、殺菌剤として使用した後の廃棄処分に際して塩素の処理に多大なコストを要するばかりか、殺菌剤としての使用中にも、何らかの要因で解離した塩素が装置構成材に腐食を生じさせるなどの懸念もある。
これに対し、H−MITは、このような環境破壊や後処理の問題、あるいは使用中の装置構成材に対する悪影響は及ぼし難いが、Cl−MITに比較するとその抗菌効果が弱いため、これを単独で使用する例はなく、上記のようにCl−MITとの混合物として使用するのが一般的である。
また、上記のようにイソチアゾリン化合物またはその誘導体を混合物として用いる場合であっても、その混合物中の配合割合はH−MIT:Cl−MIT=1:9〜3:9程度と、Cl−MITの比率が圧倒的に多く、H−MITは殺菌剤としてというよりは、むしろCl−MITの安定化剤として使用されているのが現状であり、用いるイソチアゾリン化合物をH−MITとCl−MITとの混合物とした場合でも、上記のようなCl−MITによる問題を解決することはできないのが現状である。
【0005】
加えて、Cl−MITは、毒性試験の一つであるAmes Testにおいて陽性を示すため、これを嫌う分野は増えつつある。これに対し、H−MITは同試験において陰性を示し、Cl−MITよりも安全性が高いことを示している。
【特許文献1】特公昭46−21240号公報
【特許文献2】特公昭60−54281号公報
【特許文献3】特公平7−37362号公報
【特許文献4】特許第2679937号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記のように環境破壊を招く虞があったり、廃棄処分に多大のコストを要したり装置構成材に腐食を生じさせたりするなどの問題を生じやすい塩素、その他のハロゲンを極力用いず(最も好ましくは、塩素は全く用いず)、広い抗菌スペクトル、持続性を有するため、使用量を少量としても優れた殺菌効果を示し、したがって安全性にも優れる工業用殺菌剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討を行った結果、特定のイソチアゾリン化合物を用い、これにメチレンビスチオシアネートとハロゲン化脂肪族ニトロアルコール化合物とを併用することにより、殺菌効果に優れるうえ、環境破壊を招くことも、また装置構成材を腐食することもなく、安全性の高い工業用殺菌剤組成物とすることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、(A)一般式(1)で表されるイソチアゾリン化合物またはその誘導体と、(B)メチレンビスチオシアネートと、(C)ハロゲン化脂肪族ニトロアルコール化合物とを有効成分とし、(A):(B)を重量比で1:9〜9:1、(C)を殺菌剤組成物全量中ハロゲン含有量で0.002〜0.32となるように含有することを特徴とする工業用殺菌剤組成物を要旨とする。
【化2】


式中、Rは置換基を有していてもよい炭素数1〜8のアルキル基を示し、XとYは水素原子または低級アルキル基を示す。
上記のハロゲンは、臭素であることが好ましく、また、上記(C)のハロゲン化脂肪族ニトロアルコール化合物は、2,2−ジブロモ−2−ニトロエタノール、2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオール、2−ブロモ−2−ニトロ−1,3−ジアセトキシプロパンから選ばれる少なくとも1つであることが好ましい。
【0009】
本発明の工業用殺菌剤組成物は、(A)一般式(1)で表されるイソチアゾリン化合物またはその誘導体と、(B)メチレンビスチオシアネートと、(C)ハロゲン化脂肪族ニトロアルコール化合物とを有効成分とする。
(A)成分のイソチアゾリン化合物は、公知の化合物であって、単独では、糸状菌類や酵母類、細菌類に対して低濃度では所望の効果が得らない。(B)成分のメチレンビスチオシアネートや(C)成分のハロゲン化脂肪族ニトロアルコールも、公知の化合物であって、それぞれ単独では糸状菌類や酵母菌類に対して活性が著しく劣り、細菌類に対しても所望の効果が得られない。
これに対し、(A)〜(C)の3成分を組合せた本発明の工業用殺菌剤組成物は、これら(A)〜(C)各殺菌剤成分単独からは到底予測することのできない使用量を少量としても極めて優れた殺菌効果を発揮し、有害微生物である糸状菌類や酵母菌類などに対してその種類に拘わりなく広い抗菌スペクトルや、持続性を有するうえ、しかも、環境破壊を招くことも、また装置構成材を腐食することもなく、高い安全性を実現することができるものである。
【0010】
上記(A)成分のイソチアゾリン化合物またはその誘導体は、一般式(1)で表され、式中、Rの置換基を有してもよい炭素数1〜8のアルキル基における置換基は、メチル基、ブチル基、オクチル基などであり、本発明においては、一般式(1)の4位や5位が水素基である化合物(すなわち、H−MIT)を好ましく用いることができる。
また、誘導体としては、マグネシウムなどの金属塩コンプレックスなどを挙げることができる。
【0011】
(A)成分のイソチアゾリン化合物の具体例は、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2−ブチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オンなどであり、中でも、2−メチル−イソチアゾリン−3−オン、2−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オンなどを好ましく用いることができる。
これらは、マグネシウムなどの金属塩コンプレックスなどの誘導体として使用することもできる。
また、これらの(A)成分は、それぞれ単独で用いてもよいし、必要に応じて2種以上を併用してもよい
【0012】
上記(C)成分のハロゲン化脂肪族ニトロアルコールの具体例は、2,2−ジブロモ−2−ニトロエタノール、2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオール、1,1−ジブロモ−1−ニトロ−2−プロパノール、2,2−ジブロモ−2−ニトロ−1−アセトキシエタン、2,2−ジブロモ−2−ニトロ−1−アセトキシプロパン、2−ブロモ−2−ニトロ−1,3−ジアセトキシプロパン、2−ブロモ−2−ニトロエタノール、2−ブロモ−2−ニトロプロパノール、2−ブロモ−2−ニトロブタンジオール−(1,3)、3−ブロモ−3−ニトロペンタンジオール−(2,4)、1,1−ジブロモ−1−ニトロプロパノール−(2)、4−ブロモ−4−ニトロヘキサノール−(3)、2−フルオロ−2−ニトロエタノール、2−フルオロ−2−ニトロブタンジオール−(1,3)、3−ヨード−3−ニトロブタノール−(2)、2−ヨード−2−ブロモ−2−ニトロエタノールなどであり、中でも、2,2−ジブロモ−2−ニトロエタノール、2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオール、2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジアセトキシプロパンなどを好ましく用いることができる。
これらの(C)成分のハロゲン化脂肪族ニトロアルコールは、単独で用いても良いし、必要に応じて2種以上を併用しても良い。
【0013】
本発明において、(A)成分と(B)成分と(C)成分とは、その配合割合が、(A):(B)を重量比で1:9〜9:1、(C)を殺菌剤組成物全量中ハロゲン含有量で0.002〜0.32となるようにする。
(A)イソチアゾリン化合物に対する(B)メチレンビスチオシアネートの比がこれより大きすぎると、(B)成分により得られる効果が飽和しているにもかかわらず過剰に配合することとなるうえ、(B)成分に対する(A)成分の比率が低くなり、3種の薬剤を併用して得られる相乗効果が十分に発揮されない場合がある。また、これより小さすぎても、(A)成分により得られる効果が飽和しているにもかかわらず過剰に配合することとなり、経済的に不利となるばかりか、(A)成分に対する(B)成分の比率が低くなり、相乗効果が十分に発揮されない場合がある。
【0014】
(A),(B)成分にハロゲンフリーのものを使用するのに対し、(C)成分は唯一ハロゲンを含む化合物である。
本発明において、この(C)成分の比率を工業用殺菌剤組成物全量中のハロゲン含有量で特定するのは、(C)成分(特に該成分中のハロゲン)が(A),(B)成分に相乗されて発現する優れた殺菌効果を確保しつつ、かつ(C)成分中のハロゲンに起因する環境破壊、装置構成材の腐食、等を防止すると言う相反する目的を達成する上での必須の量に着目したためである。すなわち、このような問題を生じやすい塩素をはじめとしたハロゲンを極力用いずに、優れた殺菌効果を得るための、ハロゲンを含む(C)成分の比率を、殺菌剤組成物全量中において少なくしても(A),(B)成分と組合せることで優れた殺菌効果を確保できる量(0.002〜0.32、好ましくは、0.014〜0.28)を見出した。
したがって、(C)ハロゲン化脂肪族ニトロアルコールの比がこれより大きすぎると、(C)成分中のハロゲンによる工業用殺菌剤組成物の調製中の環境、使用中の環境、廃棄処分後の自然環境の安全性を担保することや、調製・保存・使用装置構成材の腐食防止を図ることができなくなり、これより小さすぎても、(C)成分による相乗効果が十分に発揮されない場合がある。
【0015】
本発明の工業用殺菌剤組成物は、上記(A)〜(C)の3成分からなる有効成分を溶媒に均一に混合した液剤の形で用いる。用いる溶媒としては、水、または水と有機溶剤との混合溶媒が挙げられ、溶液とならない場合でも、エマルジョンやサスペンジョンなどとして用いることができる。
【0016】
有機溶剤の具体例としては、メタノール、エタノール、プロパノールなどのアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ヘキシルグリコール、グリセリンなどのグリコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルなどのグリコールエーテル類、エチレングリコールジアセテートなどのグリコールジエステル類、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートなどのグリコールエステルエーテル類、メチルアセテート、エチルアセテート、3−メトキシブチルアセテート、2−エトキシメチルアセテート、プロピレンカーボネート、グルタル酸ジメチル、酢酸エチル、マレイン酸ジメチル等のエステル類、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミドなどのアミド類、イソホロン、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、トルエン、キシレンなどの芳香族類、ジメチルスルホキシド、ジオキサン、テトラハイロドロフラン、N−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、グリセリンのトリアセテートなどを用いることができる。
これらの中でも、特にエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルなどを好ましく用いることができ、またこれらの有機溶剤は単独でも、2種以上を併用しても良い。
更に、水を任意の量で併用しても良い。
【0017】
本発明の工業用殺菌剤組成物を構成する(A)〜(C)の3成分からなる有効成分(合計量)の上記の溶媒中における濃度は、本組成物を用いる対象物の種類などにもよるが、1〜80重量%程度、好ましくは、3〜60重量%程度とすると良い。有効成分の濃度がこれより低すぎると、組成物中における有効成分の分散性の向上には寄与するが、対象物への投入量を多くしなければならなかったり、容量が大きくなるため貯蔵、運搬などに不都合を生じたりする場合があり、これより高すぎると、組成物中における有効成分の分散保持に支障を来し、有効成分が分離や沈殿を起こすなどの不都合を生じる場合があるため、上記の範囲とすることが好ましい。
【0018】
また、本発明の工業用殺菌剤組成物には、必要に応じてノニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、消泡剤、酸化防止剤などの添加剤を配合することもできる。
添加剤として界面活性剤を用いる場合は、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、オキシエチレン・オキシプロピレンブロックポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキル硫酸エステル塩、第四級アンモニウム塩、ポリオキシエチレンアルキルアミン等を単独で、または複数を混合して用いることができる。
【0019】
さらに、本発明の工業用殺菌剤組成物には、それ自体の安定性や対象物中における安定性を高めるため、たとえば塩化マグネシウム、硝酸マグネシウムなどの無機化合物や、1,2,4,−トリアゾールなどの有機化合物、エチレンジアミン四酢酸類などのキレート剤などを安定化剤として、必要に応じて使用しても良い。
本発明の工業用殺菌剤組成物は、前記(A)〜(C)成分からなる有効成分、および必要に応じて配合される上記の添加剤や安定化剤を前記溶媒に加え、溶解、または分散することにより調製される。添加剤や安定化剤を使用する場合には、これらを前記溶媒に予め加えておいてから前記有効成分を加えても良いし、これらと有効成分を同時に溶媒に加えても良い。
【0020】
本発明の工業用殺菌剤組成物を対象物に添加する際は、対象とする工程や対象物の種類、それに存在する微生物の種類やその濃度、あるいは使用する地域や季節などによっても異なり、一概には決められないが、一般的には、前記(A)〜(C)からなる有効成分(合計量)が、対象とする工程や対象物中に、0.00001〜3重量%、好ましくは0.0001〜0.3重量%含有される程度とする。製紙工業などの分野における一般的な工業用水などに用いる場合には、前記(A)〜(C)からなる有効成分(合計量)が、1〜1000ppm、好ましくは1〜100ppm含有される程度とし、繊維油剤、ラテックス類、コーティングカラー、リグニン、コンクリート減水剤、澱粉スラリー、糊材、塗料、接着剤、染料液などの工業製品に用いる場合には、前記(A)〜(C)からなる有効成分(合計量)が、10〜10000ppm、好ましくは100〜3000ppm含有される程度とするのが良い。
また、本発明の工業用殺菌剤組成物は、対象とする工程や対象物に対し、所定量を予め加えて使用しても良いし、所定時間毎に所定量を加えて使用してもよく、様々な態様で使用されて良い。
【発明の効果】
【0021】
本発明の工業用殺菌剤組成物は、環境破壊を招く虞があったり、廃棄処分に多大のコストを要したり装置構成材に腐食を生じさせたりするなどの問題を生じやすい塩素を極力、最も好ましくは全く用いず、広い抗菌スペクトルを有するために使用量を少量としても殺菌効果に優れ、しかも殺菌効果が長期に渡って持続する。
また、溶媒として、水、または水と有機溶剤との混合溶媒を用いることもできるため、環境への負荷が極力低減されたものであり、総じて安全性にも優れるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
下に示す配合割合により、本発明の工業用殺菌剤組成物(実施例1〜4)、及び比較殺菌剤組成物(比較例1〜3)を製造した。例中の部は全て重量部を示す。なお、以後の略号、商品名は下記の通りである。
ZONEN−MT:ケミクレア社製、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン50%溶液
KORDEC 50C:ローム&ハ−ス社製、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン50%溶液
ZONEN−O/100:ケミクレア社製、2−nオクチル−4−イソチアゾリン−3−オン
ZONEN−F:ケミクレア社製、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンと2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンの混合溶液
KATHON 287PXE:ローム&ハ−ス社製、4,5−ジクロロ−2−nオクチル−4−イソチアゾリン−3−オン溶液
ジブニロールA−75:ケイ・アイ化成社製、2,2−ジブロモ−2−ニトロエタノール溶液
【0023】
実施例1
ZONEN−MT 4.0部
メチレンビスチオシアネート 5.0部
2−ブロモ−2−ニトロプロパンジオール−1,3 21.0部
ジエチレングリコールモノメチルエーテル 30.0部
ジエチレングリコール 38.998部
エチレンジアミン四酢酸2ナトリウム 0.002部
1,2,4−トリアゾール 1.0部

(A)成分:(B)成分=1:2.5 (A)成分:(C)成分=1:10.5
殺菌剤組成物全量中のハロゲン(臭素)含有量は0.084
【0024】
実施例2
ZONEN−O/100 2.0部
メチレンビスチオシアネート 3.0部
ジブニロールA−75 30.0部
ジエチレングリコールモノブチルエーテル 64.0部
1,2,4−トリアゾール 1.0部

(A)成分:(B)成分=1:1.5 (A)成分:(C)成分=1:11.25
殺菌剤組成物全量中のハロゲン(臭素)含有量は0.179
【0025】
実施例3
ZONEN−MT 3.0部
メチレンビスチオシアネート 2.0部
2−ブロモ−2−ニトロプロパンジオール−1,3 20.0部
ジエチレングリコールモノメチルエーテル 50.0部
水 25.0部

(A)成分:(B)成分=1:1.33 (A)成分:(C)成分=1:13.3
殺菌剤組成物全量中のハロゲン(臭素)含有量は0.080
【0026】
実施例4
KORDEC 50C 5.0部
メチレンビスチオシアネート 3.0部
2−ブロモ−2−ニトロ−1,3−ジアセトキシプロパン 28.0部
エチレングリコール 59.0部
プロピレングリコール 5.0部

(A)成分:(B)成分=1:1.2 (A)成分:(C)成分=1:11.2
殺菌剤組成物全量中のハロゲン(臭素)含有量は0.079
【0027】
比較例1
ZONEN−F 10.0部
メチレンビスチオシアネート 3.0部
ジエチレングリコールモノメチルエーテル 87.0部

イソチアゾリン化合物として、Cl−MITの入っているZONEN−Fを使用。本発明の(C)成分であるブロモニトロ系の配合なし。
殺菌剤組成物全量中のハロゲン(塩素)含有量は0.002
【0028】
比較例2
KATHON 287PXE 4.0部
ジブニロールA−75 16.0部
エチレングリコール 80.0部

イソチアゾリン化合物として塩素の付いているDCOT(4,5−ジクロロ−2−nオクチル−4−イソチアゾリン−3−オン)を使用。本発明の(B)成分であるメチレンビスチオシアネートの配合なし。
殺菌剤組成物全量中のハロゲン(臭素、塩素)含有量は0.098
【0029】
比較例3
ZONEN−F 7.0部
1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン 5.0部
ジエチレングリコールモノメチルエーテル 88.0部

イソチアゾリン化合物としてCl−MITの入っているZONEN−Fを使用。本発明における(B)成分と(C)成分の配合なく、イソチアゾリン化合物2種類で製剤。
殺菌剤組成物全量中のハロゲン(塩素)含有量は0.002
【0030】
上記実施例1〜4、及び比較例1〜3の各工業用殺菌剤組成物について、微生物最小発育阻止濃度の検討、及び微生物増殖防止試験を行った。
【0031】
試験例1
実施例1〜4、及び比較例1〜3の殺菌剤組成物について、それぞれ滅菌水にて希釈し、1、5、10、20、30、40、50、60、70、100、330、660、1000ppmとなるように各シャーレに入れ、これらのシャーレに普通寒天培地(細菌用)、サブロー寒天培地(真菌用)を添加して平板培地を作製した。
これらの平板培地に、予め前培養して106CFU/ml程度に希釈調整した下記の供試微生物を接種し、細菌類は37℃にて48時間、真菌類は28℃で7日間静置培養した後、微生物最小発育阻止濃度を測定した。結果を表1,表2に示す。
【0032】
供試微生物
細菌1:Bacillus subtillis
細菌2:Escherichia coli
細菌3:Klebsiella pneumonise
細菌4:Pseudomonas aeruginosa
細菌5:Staphylococcus aureus

真菌1:Aspergillus niger
真菌2:Penicillium citrinum
真菌3:Debaryomyces hansenii
真菌4:Geotrichum candidum
真菌5:Gliocladium virens
【0033】
【表1】

【0034】
【表2】


【0035】
表1、表2から明らかなように、本発明の工業用殺菌剤組成物(実施例1〜4)は、供試微生物(細菌類)に対して60ppm以下の低濃度で効果を示すのに対し、比較例1〜3においては、全ての供試微生物(細菌類)に対して一様に有効な効果を得ることが出来ないことがわかった。
同様に表2からも、本発明の工業用殺菌剤組成物(実施例1〜4)は、供試微生物(真菌類)に対しても低濃度で効果を示すのに対し、比較例1〜3においては、全ての供試微生物(真菌類)に対して一様に有効な効果を得ることが出来ないことがわかった。
【0036】
試験例2
某社製アクリルラテックスを滅菌水にて5倍に希釈した希釈液99重量部に、供試微生物源として腐敗したアクリルラテックスを1重量部加えた。この時の生菌数は細菌が4.3×107CFU/ml、真菌が1.2×104CFU/mlであった。
これに、実施例1〜4及び比較例1〜3の工業用殺菌剤組成物をそれぞれ500ppmとなるように添加して、30℃の恒温器に保存し、3日後、7日後、21日後の生菌数を測定した。結果を表3に示す。
【0037】
【表3】

【0038】
試験例3
某社製自動車用洗浄剤99重量部に、供試微生物源として腐敗した自動車用洗浄剤を1重量部加え、30℃の恒温器に1日保存した。この時の生菌数は細菌が7.8×106CFU/mlであった。
これに、実施例1〜4及び比較例1〜3の工業用殺菌剤組成物をそれぞれ350ppmとなるように添加して、30℃の恒温器に保存し、3日後、7日後、21日後の生菌数を測定した。結果を表4に示す。
【0039】
【表4】

【0040】
試験例4
某社製パラフィンワックス99重量部に、供試微生物源として腐敗したパラフィンワックス(生菌数:細菌が6.4×106CFU/ml 真菌が2.8×104CFU/ml)を1重量部加えた。
これに、実施例1〜4及び比較例1〜3の工業用殺菌剤組成物をそれぞれ500ppm、1000ppmとなるように添加して、30℃の恒温器に保存し、1週間毎に細菌、真菌の生菌数を測定した。
また、各回の生菌数測定後毎に培養開始時と同様に腐敗したパラフィンワックスを1重量部加えた。結果を表5に示す。
【0041】
【表5】

【0042】
試験例5
某製紙会社の製紙工程から採取した白水(生菌数:細菌が8.8×107CFU/ml)10mlを三角フラスコに取り、実施例1〜4及び比較例1〜3の工業用殺菌剤組成物をそれぞれ20ppm、40ppmとなるように添加して、32℃にて振盪培養し、30分後と1時間後の生菌数を測定した。結果を表6に示す。
【0043】
【表6】

【0044】
試験例6
某社製エマルジョン型繊維油剤を滅菌水で13%になるように希釈した希釈液99重量部に、供試微生物源として腐敗したエマルジョン型繊維油剤(生菌数:細菌が2.5×106CFU/ml、真菌が2.1×103CFU/ml)を1重量部加えた。
この試料に、実施例1〜4及び比較例1〜3をそれぞれ400ppm、800ppmとなるように添加して、30℃の恒温器に保存し、1週間毎に生菌数を測定した。また、各回の生菌数測定後毎に培養開始時と同様に腐敗したエマルジョン型繊維油剤を1重量部加えた。結果を表7に示す。
【0045】
【表7】

【0046】
表3〜表7の結果から明らかなように、本発明の工業用殺菌剤組成物(実施例1〜4)は、広い抗菌スペクトルを有し、且つその殺菌効果が長期に渡って継続することがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の工業用殺菌剤組成物は、工業用冷却水、工業用設備の循環液、工業用洗浄水などの工業用水、繊維油剤、ラテックス類、コーティングカラー、リグニン、コンクリート減水剤、澱粉スラリー、糊材、塗料、接着剤、染料液などの工業製品などに用いられて優れた殺菌効果を発揮し、上記の他にも微生物による腐敗を防止することが必要とされるものの殆どに適用が可能である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)一般式(1)で表されるイソチアゾリン化合物またはその誘導体と、(B)メチレンビスチオシアネートと、(C)ハロゲン化脂肪族ニトロアルコール化合物とを有効成分とし、(A):(B)を重量比で1:9〜9:1、(C)を殺菌剤組成物全量中ハロゲン含有量で0.002〜0.32となるように含有することを特徴とする工業用殺菌剤組成物。
【化1】


式中、Rは置換基を有していてもよい炭素数1〜8のアルキル基を示し、XとYは水素原子または低級アルキル基を示す。
【請求項2】
ハロゲンが、臭素であることを特徴とする請求項1に記載の工業用殺菌剤組成物。
【請求項3】
(C)のハロゲン化脂肪族ニトロアルコール化合物が、2,2−ジブロモ−2−ニトロエタノール、2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオール、2−ブロモ−2−ニトロ−1,3−ジアセトキシプロパンから選ばれる少なくとも1つであることを特徴とする請求項1または2に記載の工業用殺菌剤組成物。


【公開番号】特開2007−314480(P2007−314480A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−147210(P2006−147210)
【出願日】平成18年5月26日(2006.5.26)
【出願人】(000135760)株式会社パーマケム・アジア (17)
【Fターム(参考)】