説明

差圧測定装置

【目的】 ヒステリシスおよび耐久性が向上された差圧測定装置を提供するにある。
【構成】 首部と受圧部とよりなるハウジングと、前記首部に設けられた圧力―電気信号変換素子と、前記受圧部に設けられたセンタダイアフラムと、前記受圧部の両側面に設けられた隔液ダイアフラムと、該隔液ダイアフラムに対向して前記受圧部に設けられたバックプレ―トとを具備する封入液型の差圧測定装置において、常温における前記隔液ダイアフラムの基準位置が隔液ダイアフラムの自然形状より前記センタダイアフラム側に凹となるように形成されたバックプレ―トを具備したことを特徴とする差圧測定装置である。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、高温過大圧時の隔液ダイアフラムに発生する応力の低下が図られ、ヒステリシスおよび耐久性が向上された差圧測定装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】図3は、従来より一般に使用されている従来例の構成説明図で、例えば、実開昭60―181642号に示されている。図において、1はハウジングで、円柱状の首部1Aと、首部1Aの端部外周縁部1Cにおいて、溶接接続されたブロック状の受圧部1Bとよりなる。ハウジング1の両側に高圧側フランジ2、低圧側フランジ3が溶接等によって固定されており、両フランジ2,3には測定せんとする圧力PH の高圧流体の導入口4、圧力PL の低圧流体の導入口5が設けられている。
【0003】ハウジング1内に圧力測定室6が形成されており、この圧力測定室6内にセンタダイアフラム7とシリコンダイアフラム8が設けられている。センタダイアフラム7とシリコンダイアフラム8はそれぞれ別個に圧力測定室6の壁に固定されており、センタダイアフラム7とシリコンダイアフラム8の両者でもって圧力測定室6を2分している。センタダイアフラム7と対向する圧力測定室6の壁には、バックプレ―ト6A,6Bが形成されている。
【0004】センタダイアフラム7は周縁部をハウジング1に溶接されている。シリコンダイアフラム8は、全体が単結晶のシリコン基板から形成されている。シリコン基板の一方の面にボロン等の不純物を選択拡散して4っのストレンゲ―ジ80を形成し、他方の面を機械加工、エッチングし、全体が凹形のダイアフラムを形成する。4っのストレインゲ―ジ80は、シリコンダイアフラム8が差圧ΔPを受けてたわむ時、2つが引張り、2つが圧縮を受けるようになっており、これらがホイ―トストン・ブリッジ回路に接続され、抵抗変化が差圧ΔPの変化として検出される。
【0005】81は、ストレインゲ―ジ80に一端が取付けられたリ―ドである。
82は、リ―ド81の他端が接続されたハ―メチック端子である。支持体9はハ―メチック端子を備えており、支持体9の圧力測定室6側端面に低融点ガラス接続等の方法でシリコンダイアフラム8が接着固定されている。ハウジング1と高圧側フランジ2、および低圧側フランジ3との間に、圧力導入室10,11が形成されている。
【0006】この圧力導入室10,11内に隔液ダイアフラム12,13を設け、この隔液ダイアフラム12,13と対向するハウジング1の壁10A,11Aに隔液ダイアフラム12,13と類似の形状のバックプレ―トが形成されている。隔液ダイアフラム12,13とバックプレ―ト10A,11Aとで形成される空間と、圧力測定室6は、連通孔14,15を介して導通している。
【0007】そして、隔液ダイアフラム12,13間にシリコンオイル等の封入液101,102が満たされ、この封入液が連通孔16,17を介してシリコンダイアフラム8の上下面にまで至っている、封入液101,102はセンタダイアフラム7とシリコンダイアフラム8とによって2分されているが、その量が、ほぼ均等になるように配慮されている。
【0008】以上の構成において、高圧側から圧力が作用した場合、隔液ダイアフラム12に作用する圧力が、封入液101によって、シリコンダイアフラム8に伝達される。一方、低圧側から圧力が作用した場合、隔液ダイアフラム13に作用する圧力が封入液102によってシリコンダイアフラム8に伝達される。
【0009】この結果、高圧側と低圧側との圧力差に応じてシリコンダイアフラム8が歪み、この歪み量がストレインゲ―ジ80に因って電気的に取出され、差圧の測定が行なわれる。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】この様な装置において、原理的構成説明図を図4に、原理説明図を図5に示す。 ここにおいて、VB1は、隔液ダイアフラムとバックプレ―ト間の封入液の量、Vs は、センタダイアフラム回りの封入液の量、VB1は、センサ部分の回りおよび連通孔の封入液の量である。ここで、図示のごとく、隔液ダイアフラム12が圧力Pを受けると、圧力Pは封入液101を介してセンタダイアフラム7およびシリコンダイアフラム8に伝達され、センタダイアフラム7は、図の右側に凸状に変形する。したがって、センタダイアフラム7の排除容積だけ、図の左側のVB1は減少し、図の右側のVB1は増加する。圧力Pが、あらかじめ設定された圧力P1 に達すると、隔液ダイアフラム12はバックプレ―ト10Aに密着し、これ以上の圧力をシリコンダイアフラム8に伝達せず、センサ部分は保護される。この場合、隔液ダイアフラム12,13の初期位置は、隔液ダイアフラムの自然状態での形状の位置となっている。常温においては、次の関係が成立つ。
(1)左側の隔液ダイアフラムの排除容積=センタダイアフラムの排除容積=右側の隔液ダイアフラムの排除容積(2)各ダイアフラムの排除容積の最大値=VB1今、温度が上昇すると、封入液101,102の膨脹係数は、一般に金属に比べて非常に大きい為、封入液101,102の容積は、体積膨脹分だけ増加する。封入液の体積膨脹係数をαとすると、温度がΔTだけ上昇したときのVB1は次の様になる。
VB1 at T ℃=VB1+(VB1+Vs +VB2)×α×ΔT (3) これは、圧力が零で、すでに隔液ダイアフラム12,13は (VB1+Vs +VB2)×α×ΔT (4)
だけ凸になっている事を示す。更に、過大圧P1 を受ける事により、各ダイアフラム12,13は、 VB1 at T ℃ (5)だけの容積を排除する。
よって、図の右側の隔液ダイアフラム13は、(4)+(5)だけ図の右に凸となる。
(4)+(5)
=(VB1+Vs +VB2)×α×ΔT+VB1 at T ℃ =(VB1+Vs +VB2)×α×ΔT +VB1+(VB1+Vs +VB2)×α×ΔT =VB1+2(VB1+Vs +VB2)×α×ΔT (6)
以上により隔液ダイアフラムの最大排除容積は次のようになる。隔液ダイアフラム13(この際は、凸状になっている。)=(6)式 =VB1+2(VB1+Vs +VB2)×α×ΔT (7)
隔液ダイアフラム12(この際は、凹状になっている。)
=VB1 atRT (VB1 atRT でバックプレ―ト10Aに密着する。) (8)
よって、隔液ダイアフラム13側(凸側)が隔液ダイアフラム12側(凹側)より、2(VB1+Vs +VB2)×α×ΔTだけ封入液を多く排除する。図6に、隔液ダイアフラムの排除容積と最大応力の関係を示す。排除容積の増加に従って、応力は指数関数的に増加し、応力の増加にしたがって、隔液ダイアフラムは塑性変型し、差圧測定装置としては、入出力ヒステリシスとして表われる。このヒステリシスが最も大きくなるのは排斥容積が最大となる高温過大圧時であり、このときのヒステリシスは主として凸となる隔液ダイアフラムにより発生する。この為、常温における隔液ダイアフラムの基準位置を、隔液ダイアフラムの自然形状位置とした従来構造では、全体の封入液が多い場合には、封入液の膨脹量も大きくなり、高温過大圧時の凸になる側の隔液ダイアフラムの応力が大きくなり、ヒステリシスが大きくなり、また耐久性も低下する。センタダイアフラム方式を採用した差圧測定装置では、どうしても封入液が多くなり上述の問題点が発生する。また、高精度、例えば、全体誤差±0.1%の差圧測定装置では、上述のヒステリシスの存在が全体誤差に及ぼす影響は大きくなり、ヒステリシスを出来るだけ小さくする事が必要となる。本発明は、この問題点を、解決するものである。
【0011】本発明の目的は、高温過大圧時の隔液ダイアフラムに発生する応力の低下が図られ、ヒステリシスおよび耐久性が向上された差圧測定装置を提供するにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】この目的を達成するために、本発明は、首部と受圧部とよりなるハウジングと、前記首部に設けられた圧力―電気信号変換素子と、前記受圧部に設けられたセンタダイアフラムと、前記受圧部の両側面に設けられた隔液ダイアフラムと、該隔液ダイアフラムに対向して前記受圧部に設けられたバックプレ―トとを具備する封入液型の差圧測定装置において、常温における前記隔液ダイアフラムの基準位置が隔液ダイアフラムの自然形状より前記センタダイアフラム側に凹となるように形成されたバックプレ―トを具備したことを特徴とする差圧測定装置を構成したものである。
【0013】
【作用】以上の構成において、高圧側から圧力が作用した場合、隔液ダイアフラムに作用する圧力が封入液によってシリコンダイアフラムに伝達される。一方、低圧側から圧力が作用した場合、隔液ダイアフラムに作用する圧力が封入液によってシリコンダイアフラムに伝達される。この結果、高圧側と低圧側との圧力差に応じてシリコンダイアフラムが歪み、この歪み量がストレインゲ―ジに因って電気的に取出され、差圧の測定が行なわれる。
【0014】而して、常温における隔液ダイアフラムの基準位置が隔液ダイアフラムの自然形状より受圧部側に凹となるようにバックプレ―トが、形成されているので、高温過大圧時に隔液ダイアフラムに発生する応力を従来例より小さくする事が出来る。以下、実施例に基づき詳細に説明する。
【0015】
【実施例】図1は本発明の一実施例の要部構成説明図、図2は図1の原理説明図である。図において、図3と同一記号の構成は同一機能を表わす。以下、図3と相違部分のみ説明する。21,22は、常温における隔液ダイアフラム12,13の基準位置が隔液ダイアフラム12,13の自然形状よりセンタダイアフラム7側に凹となるように形成されたバックプレ―トである。図2において、点線は隔液ダイアフラム12,13の自然状態における形状を示す。
【0016】以上の構成において、高圧側から圧力が作用した場合、隔液ダイアフラム12に作用する圧力が、封入液101によって、シリコンダイアフラム8に伝達される。一方、低圧側から圧力が作用した場合、隔液ダイアフラム13に作用する圧力が封入液102によってシリコンダイアフラム8に伝達される。この結果、高圧側と低圧側との圧力差に応じてシリコンダイアフラム8が歪み、この歪み量がストレインゲ―ジ80に因って電気的に取出され、差圧の測定が行なわれる。
【0017】而して、常温における隔液ダイアフラム12,13の基準位置が隔液ダイアフラム12,13の自然形状よりセンタダイアフラム側に凹となるようにバックプレ―ト12,13が、形成されているので、高温過大圧時に隔液ダイアフラムに発生する応力を従来例より小さくする事が出来る。すなわち、(7)(8)式より隔液ダイアフラムが凸に変形する最大の排除容積は、凹に変形する時の排除容積より2(VB1+Vs +VB2)×α×ΔTだけ多い。よって、凸量と凹量を同じにするには、隔液ダイアフラム12,13の初期位置を自然形状より(VB1+Vs +VB2)×α×ΔTになるようにバックプレ―ト21,22を設計する。この場合は、ΔT=100℃として設計されている。高温過大圧時の隔液ダイアフラムの凸状に変形した側の排除容積は、(6)式より VB1 atT℃=VB1 atRT +2(VB1+Vs +VB2)×α×ΔTであるが、これは隔液ダイアフラムの初期位置が凹なので、自然形状から見ると、 VB1+2(VB1+Vs +VB2)×α×ΔT−(VB1+Vs +VB2)×α×ΔT =VB1+(VB1+Vs +VB2)×α×ΔTしか排除していない為、従来例より発生応力を小さくする事が出来る。
【0018】この結果、高温過大圧時に隔液ダイアフラム12,13に発生する応力を小さくする事が出来るために、高温過大圧ヒステリシスを小さくする事が出来、かつ、耐久性が向上する。
【0019】なお、前述の実施例においては、バックプレ―ト21,22は、ΔTを100℃として設計したものについて説明したが、これに限ることはなく、要するに、常温における前記隔液ダイアフラムの基準位置が、隔液ダイアフラムの自然形状よりセンタダイアフラム7側に凹となるように形成されたバックプレ―トで、あれば良い。隔液ダイアフラム12,13が凹状に組立てられていれば過大圧力時の応力を少しでも減ずる事が出来るからである。
【0020】
【発明の効果】以上説明したように、本発明は、首部と受圧部とよりなるハウジングと、前記首部に設けられた圧力―電気信号変換素子と、前記受圧部に設けられたセンタダイアフラムと、前記受圧部の両側面に設けられた隔液ダイアフラムと、該隔液ダイアフラムに対向して前記受圧部に設けられたバックプレ―トとを具備する封入液型の差圧測定装置において、常温における前記隔液ダイアフラムの基準位置が隔液ダイアフラムの自然形状より前記センタダイアフラム側に凹となるように形成されたバックプレ―トを具備したことを特徴とする差圧測定装置を構成した。
【0021】而して、常温における隔液ダイアフラム基準位置が隔液ダイアフラムの自然形状よりセンタダイアフラム側に凹となるようにバックプレ―トが、形成されているので、高温過大圧時に隔液ダイアフラムに発生する応力を従来例より小さくする事が出来る。
【0022】この結果、高温過大圧時に隔液ダイアフラムに発生する応力を小さくする事が出来るために、高温過大圧ヒステリシスを小さくする事が出来、かつ、耐久性が向上する。
【0023】従って、本発明によれば、高温過大圧時の隔液ダイアフラムに発生する応力の低下が図られ、ヒステリシスおよび耐久性が向上された差圧測定装置を実現することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例の要部構成説明図である。
【図2】図1の原理説明図である。
【図3】従来より一般に使用されている従来例の構成説明図である。
【図4】図3の原理的構成説明図である。
【図5】図3の原理説明図である。
【図6】図3の動作説明図である。
【符号の説明】
1…ハウジング
1A…首部
1B…受圧部
1C…溶接
2…高圧側フランジ
3…低圧側フランジ
4…導入口
5…導入口
6…圧力測定室
6A…バックプレ―ト
6B…バックプレ―ト
7…センタダイアフラム
8…シリコンダイアフラム
9…支持体
10…圧力導入室
11…圧力導入室
12…隔液ダイアフラム
13…隔液ダイアフラム
14…連通孔
15…連通孔
16…連通孔
17…連通孔
21…バックプレ―ト
22…バックプレ―ト
80…ストレインゲ―ジ
81…リ―ド
82…ハ―メチック端子
101…封入液
102…封入液

【特許請求の範囲】
【請求項1】首部と受圧部とよりなるハウジングと、前記首部に設けられた圧力―電気信号変換素子と、前記受圧部に設けられたセンタダイアフラムと、前記受圧部の両側面に設けられた隔液ダイアフラムと、該隔液ダイアフラムに対向して前記受圧部に設けられたバックプレ―トとを具備する封入液型の差圧測定装置において、常温における前記隔液ダイアフラムの基準位置が隔液ダイアフラムの自然形状より前記センタダイアフラム側に凹となるように形成されたバックプレ―トを具備したことを特徴とする差圧測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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