説明

巻き上げ方法

【課題】ワイヤーロープの寿命を延長させ得る巻き上げ方法を提供する。
【解決手段】ワイヤーロープWの両端が第1の巻上ドラム11及び第2の巻上ドラム12に巻き上げ可能に取り付けられ、第1の巻上ドラム11と第2の巻上ドラム12との間において、ガーダ50上に設けられた第1の固定滑車21と、ガーダ50上を走行可能とされたトロリー33に設けられた第2の固定滑車31及び動滑車32とに架け渡されたワイヤーロープWを第1の巻上ドラム11又は第2の巻上ドラム12が巻き上げることにより、第2の固定滑車31に対して動滑車32が上下動し、動滑車32に吊り下げられた搬送物Bを移動可能とした巻き上げ方法であって、ワイヤーロープWを一方の方向に巻上げる第1の巻上ドラム11と、ワイヤーロープWを他方の方向に巻上げる第2の巻上ドラム12との巻き量を変化させることで、各滑車とワイヤーロープWが重なって接触する範囲の位置をずらす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤーロープを用いたトロリー式の巻上装置による巻き上げ方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ワイヤーロープを用いたトロリー式の巻上装置としては、特許文献1に記載の巻上装置が開示されている。図3は、特許文献1に記載された巻上装置の構成を示す概略図である。図3に示すように、巻上装置100は、巻上ドラム224と、第1の固定滑車123a,123bと、巻上動力装置112と、走行トラック114とを備える。第1の固定滑車123a,123bは、クレーンガーダ120の両端部上に設けた滑車取付台126の頂部にそれぞれ取り付けられる。走行トラック114は、巻上機本体フレーム108を有し、該巻上機本体フレーム108の上部には、第2の固定滑車124が取り付けられる。巻上機本体フレーム108には、第2の固定滑車124を介してワイヤーロープWが巻回された動滑車194が設けられる。動滑車194は吊り金具109を支持している。巻上動力装置112は、巻上ドラム224に一端が取り付けられたワイヤーロープWを巻き上げる手段である。
【0003】
ワイヤーロープWの一端は、クレーンガーダの一端に固定され、一方の第1の固定滑車123a、第2の固定滑車124、吊り金具109の上部に設けた動滑車194、他方の第1の固定滑車123bの順に掛け渡される。ワイヤーロープWの他端は、巻上動力装置112の巻上ドラム224に複数回巻き掛けられて、吊り金具109を上下動可能に吊設してなる。吊り金具109はコークバケット103を吊り下げるフック193を備えている。第2の固定滑車124、動滑車194、及び吊り金具109を備えた走行トラック114は、レール121上を走行可能に設置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許3233044号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の巻上装置においては、その動作中において、ワイヤーロープの案内をする固定滑車、動滑車、巻上ドラム、及び駆動ドラムと、ワイヤーロープとが接触する範囲が概ね設定される。そして、ワイヤーロープの前記範囲の各々において生じる摩耗や、曲げによる強度低下が、ワイヤーロープの寿命を決定している。これについて、以下、図面を用いて具体的に説明する。
【0006】
図4は、図3に示す従来の巻上装置を用いた巻き上げ操業中におけるワイヤーロープ上の各接触範囲を説明する概略図である。図4に示すように、ワイヤーロープWにおいて範囲L224は、第1の巻上ドラム224が接触する範囲である。ワイヤーロープWにおいて範囲L123aは、第1の固定滑車123bが接触する範囲である。ワイヤーロープWにおいて範囲L124は、第2の固定滑車124が接触する範囲である。ワイヤーロープWにおいて範囲L194は、動滑車194が接触する範囲である。
【0007】
このように、範囲L123bと、範囲L124と、範囲L194とが重なる範囲Lにおいて、最も多くの曲げ回数が発生し、摩耗量が多いことは自明であり、この範囲Lの大小に応じてワイヤーロープWの寿命が決定する。そして、この範囲Lの広がりによって、ワイヤーロープWの寿命が短くなり、短期間でワイヤーロープWを全交換することも発生していた。
従って、本発明は上述の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、ワイヤーロープと、それを支える部材とが多重に接触する範囲をずらし、ワイヤーロープの寿命を延長させ得る巻き上げ方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記問題を解決するため、本発明のうち請求項1に係る巻き上げ方法は、ワイヤーロープの両端が第1の巻上ドラム及び第2の巻上ドラムに巻き上げ可能に取り付けられ、前記第1の巻上ドラムと前記第2の巻上ドラムとの間において、ガーダ上に設けられた第1の固定滑車と、前記ガーダ上を走行可能とされたトロリーに設けられた第2の固定滑車及び動滑車とに架け渡された前記ワイヤーロープを前記第1の巻上ドラム又は前記第2の巻上ドラムが巻き上げることにより、前記第2の固定滑車に対して前記動滑車が上下動し、該動滑車に吊り下げられた搬送物を移動可能とした巻き上げ方法であって、
前記ワイヤーロープを一方の方向に巻上げる前記第1の巻上ドラムと、前記ワイヤーロープを他方の方向に巻上げる前記第2の巻上ドラムとの巻き量を変化させることで、各滑車と前記ワイヤーロープが重なって接触する範囲の位置をずらすことを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明のうち請求項1に係る巻き上げ方法によれば、ワイヤーロープにおいて各固定滑車、各動滑車、及び各巻上ドラムが重なって接触する範囲をずらすことができる。
したがって、ワイヤーロープの摩耗量や曲げ回数を減少でき、ワイヤーロープの寿命が延び、ワイヤーロープの交換頻度を低減できる。また、ワイヤーロープの交換頻度を低減できることにより、新たなワイヤーロープの購入費用や交換に要する工事費用も低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係る巻き上げ方法の一実施形態において用いられる巻上装置の構成を示す概略図である。
【図2】本発明に係る巻き上げ方法の一実施形態におけるワイヤーロープ上の各接触範囲を説明する概略図である。
【図3】従来の巻上装置の構成を示す概略図である。
【図4】従来の巻上装置におけるワイヤーロープ上の各接触範囲を説明する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る巻き上げ方法の一実施形態について、図面を参照して説明する。図1は、本発明に係る巻き上げ方法の一実施形態において用いられる巻上装置の構成を示す概略図である。
図1に示すように、本発明に係る巻き上げ方法に用いられる巻上装置1は、ワイヤーロープWと、第1の巻上ドラム11と、第2の巻上ドラム12と、第1の固定滑車21と、巻上機30とを有している。巻上機30は、第2の固定滑車31と、動滑車32と、トロリー33とを有している。また、巻上装置1は、一方の方向において第1の巻上ドラム11にワイヤーロープWを巻き上げる第1の駆動装置41と、他方の方向において第2の巻上ドラム12にワイヤーロープWを巻上げる第2の駆動装置42とを有している。第1の駆動装置41及び第2の駆動装置42としては、例えば、電気モーターや油圧モーター等が挙げられる。第1の駆動装置41及び第2の駆動装置42は、第1の巻上ドラム及び第2の巻上ドラムのそれぞれの巻き上げタイミングを調節可能に設置されている。前記一方の方向と前記他方の方向とは互いに反対方向であることが好ましく、例えば、図1におけるa方向及びb方向に設定される。第1の固定滑車21は、ガーダ50上において、第1の巻上ドラム11と第2の巻上ドラム12との間に設置される。第1の固定滑車21及び第2の固定滑車31にはワイヤーロープWが架け渡される。第2の固定滑車31に架け渡されたワイヤーロープWは、動滑車32に巻回される。すなわち、ワイヤーロープWは、一端が取り付けられた第1の巻上ドラム11、第1の固定滑車21、第2の固定滑車31に架け渡されて、動滑車32に巻回される。そして、動滑車32に巻回されたワイヤーロープWは、再び第2の固定滑車31に架け渡されて、他端が第2の巻上ドラム12に取り付けられる。第2の固定滑車31及び動滑車32を備えたトロリー33は、車輪34によってガーダ50上をa方向及びb方向に走行可能に設けられる。動滑車32には、ガーダ50の真下に置かれた搬送物Bを吊り下げるフック(図示せず)が設けられている。なお、第1の固定滑車21、第2の固定滑車31、及び動滑車32は複数設けられてもよい。
【0012】
トロリー33が第2の巻上ドラム12近傍に位置し、搬送物Bが吊り下げられた状態で、ワイヤーロープWの一端を第1の巻上ドラム11が巻き上げると、動滑車32は第2の固定滑車31に対して上方に巻き上げられる。
図2は、本実施形態の操業中におけるワイヤーロープ上の各接触範囲を説明する概略図である。図2に示すように、ワイヤーロープWにおいて範囲L11は、第1の巻上ドラム11が接触する範囲である。ワイヤーロープWにおいて範囲L12は、第2の巻上ドラム12が接触する範囲である。ワイヤーロープWにおいて範囲L21は、第1の固定滑車21が接触する範囲である。ワイヤーロープWにおいて範囲L31は、第2の固定滑車31が接触する範囲である。ワイヤーロープWにおいて範囲L32は、動滑車32が接触する範囲である。そして、ワイヤーロープWにおいて範囲Lは、範囲L12と、範囲L21と、範囲L31とが重なる範囲である。このように、本実施形態において操業中常に各部材と接触する範囲Lは、従来における範囲Lよりも小さくなるので、ワイヤーロープWの寿命を長くすることができ、短期間でワイヤーロープWを全交換することも少なくなる。
【0013】
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明はこれに限定されずに、種々の変更、改良を行うことができる。例えば、第1の巻上ドラム及び第2の巻上ドラムにそれぞれ設けられている駆動装置を一体とし、第1の巻上ドラム及び第2の巻上ドラムのそれぞれの巻き上げタイミングを調節してもよい。また、第2の固定滑車と第2の巻上ドラムとの間に第3の固定滑車を第1の固定滑車と同様にガーダ上に設けてもよい。
【符号の説明】
【0014】
1 巻上装置
11 第1の巻上ドラム
12 第2の巻上ドラム
21 第1の固定滑車
31 第2の固定滑車
32 動滑車
33 トロリー
50 ガーダ
W ワイヤーロープ
B 搬送物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤーロープの両端が第1の巻上ドラム及び第2の巻上ドラムに巻き上げ可能に取り付けられ、前記第1の巻上ドラムと前記第2の巻上ドラムとの間において、ガーダ上に設けられた第1の固定滑車と、前記ガーダ上を走行可能とされたトロリーに設けられた第2の固定滑車及び動滑車とに架け渡された前記ワイヤーロープを前記第1の巻上ドラム又は前記第2の巻上ドラムが巻き上げることにより、前記第2の固定滑車に対して前記動滑車が上下動し、該動滑車に吊り下げられた搬送物を移動可能とした巻き上げ方法であって、
前記ワイヤーロープを一方の方向に巻上げる前記第1の巻上ドラムと、前記ワイヤーロープを他方の方向に巻上げる前記第2の巻上ドラムとの巻き量を変化させることで、各滑車と前記ワイヤーロープが重なって接触する範囲の位置をずらすことを特徴とする巻き上げ方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−101915(P2012−101915A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−252837(P2010−252837)
【出願日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】