説明

巻取りウェブの運搬装置

【課題】巻取りウェブを多段に積み重ねたり、多段に積み重ねた巻取りウェブを上段から順次取り出すのに好適な巻取りウェブの運搬装置を提供する。
【解決手段】巻取りウェブを、その巻取り軸が水平の状態と垂直の状態とで支持できる巻取りウェブ受が、運搬台車に設けられている巻取りウェブの運搬装置において、前記運搬台車に、ガイドポストが直立設置してあると共に、当該ガイドポストに沿って昇降可能な支持腕が当該ガイドポストから水平方向に延びており、前記支持腕の先端部に、前記巻取りウェブ受が、水平方向に延びる軸の回りおよび垂直方向に延びる軸の回りで回動可能に設置されているとともに、前記支持腕を前記ガイドポストに沿って昇降させる駆動手段と、前記巻取りウェブ受を水平方向に延びる軸の回りで回動させる為の駆動手段とを備えている巻取りウェブの運搬装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、合成樹脂フィルム、紙、フィルムラミネート紙などを巻取り軸に巻き取った巻取りウェブの運搬に使用する巻取りウェブの運搬装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記の如くの合成樹脂フィルム、紙、フィルムラミネート紙などを巻取り軸に巻き取った巻取りウェブは重量が嵩む。そこで、巻き取りウェブを、その巻き取り軸が水平の状態と垂直状態で支持できるようにした巻取りウェブ受が運搬台車に設けられている巻取りウェブの運搬装置が、巻取りウェブの運搬に従来から用いられている(特許文献1)。
【0003】
巻取り機から巻取りウェブを受け取ったり、巻取りウェブを巻き戻し機に受け渡す際には、巻取りウェブ受を介して巻取りウェブを、その巻取り軸を水平の状態として取り扱い、巻取りウェブをパレットに降ろしたり、パレットから巻取りウェブを取り出す際には、巻取りウェブ受を介して巻取りウェブを、その巻取り軸を垂直の状態として、取り扱うようにしている。
【特許文献1】特許第3306727号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来用いられていた巻取りウェブの運搬装置は、運搬台車が走行する床上に設置された巻取り機または巻き戻し機と、床上に配置したパレットの間で巻取りウェブを取り扱うようにした構造であって、巻取りウェブを垂直方向で高さの異なる位置に、多段に積み重ねる場合等には使用できなかった。
【0005】
そこで、この発明は巻取りウェブを多段に積み重ねたり、多段に積み重ねた巻取りウェブを上段から順次取り出すのに好適な巻取りウェブの運搬装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的のもとになされたこの発明は、巻取りウェブを、その巻取り軸が水平の状態と垂直の状態とで支持できる巻取りウェブ受が、運搬台車に設けられている巻取りウェブの運搬装置において、前記運搬台車に、ガイドポストが直立設置してあると共に、当該ガイドポストに沿って昇降可能な支持腕が当該ガイドポストから水平方向に延びており、前記支持腕の先端部に、前記巻取りウェブ受が、水平方向に延びる軸の回りおよび垂直方向に延びる軸の回りで回動可能に設置されているとともに、前記支持腕を前記ガイドポストに沿って昇降させる駆動手段と、前記巻取りウェブ受を水平方向に延びる軸の回りで回動させる為の駆動手段とを備えていることを特徴とする巻取りウェブの運搬装置を提案するものである。
【0007】
かかる巻取りウェブの運搬装置において、前記巻取りウェブ受は、巻取りウェブが当該巻取りウェブ受に搭載された際に、巻取りウェブの両端縁側に対応する2つの対向する短辺と、巻取りウェブの周縁に対応する2つの対向する長辺とを有する平面視で矩形状を有し、巻取りウェブ受に搭載された巻取りウェブを巻取りウェブ受から転がして排出する際のガイドシュートが、前記長辺のどちらか一方に沿って設けられている構成にすることができる。
【発明の効果】
【0008】
この発明の巻取りウェブの運搬装置によれば、運搬台車に直立設置されているガイドポストに沿って昇降可能な支持腕が当該ガイドポストから水平方向に延びており、この支持腕の先端部に巻取りウェブ受が配備されている。そして、この巻取りウェブ受は、水平方向に延びる軸の回りおよび垂直方向に延びる軸の回りで回動可能になっている。そこで、支持腕をガイドポストに沿って昇降させることにより、巻取りウェブ受を所望の垂直方向の高さ位置に昇降移動させ、巻取りウェブを垂直方向の高さ位置が異なるところで、多段に積み重ねたり、多段に積み重ねた巻取りウェブに対し、巻き取りウェブ受を上段の巻取りウェブに順次接近させて取り扱うことが可能となる。
【0009】
また、ガイドシュートを巻取りウェブ受けの側縁に沿って設けた場合、巻取りウェブを転がして排出する際の巻取りウェブに対する衝撃を和らげることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、この発明の実施の形態を図を参照して説明する。
【0011】
図1、2に示したように、本発明の巻取りウェブの運搬装置10は、運搬台車20と巻取りウェブ受50とで構成されている。巻取りウェブ受50は、運搬台車20上で垂直方向の高さ位置を変化できるようになっており、図1においては、巻取りウェブ受50が変化する種々の高さ(3通り)で示されている。
【0012】
運搬台車20は、基台21と、基台21の後部(図1において右側)両側に直立させた一対の対向するガイドポスト22、22を備えており、車輪23およびキャスタ24で床25上を走行できるようにされている。
【0013】
一対の対向するガイドポスト22、22の間には昇降体26がガイドポスト22に沿って昇降可能に設置されている。昇降体26の両側上下に回転自在に設けた車輪27、27がガイドポス22に設けられている搬送路26嵌装され、車輪27、27がガイドポスト22に沿って走行できるようにされている。
【0014】
昇降体26の昇降のための駆動手段として流体圧シリンダ28がガイドポスト22、22間の下部中央に固定設置されている。流体圧シリンダ28のピストンロッド29と昇降体26の間にワイヤ30が連結され、ワイヤ30がガイドポスト22、22の上部に架設した上部バー31に設けたプーリ32に巻装されている。
【0015】
前記昇降体26の前面(図1において左側)には支持腕33が片持ち梁状となって前方に、水平に延びている。そして、この支持腕33の先端部に巻取りウェブ受50が設置されている。
【0016】
即ち、支持腕33の先端部に、水平方向に延びる水平軸34を介して軸受35が水平軸34の回りで矢印101、102の方向で回動できるように設置され、軸受35の上側に巻取りウェブ受50が垂直方向に延びる垂直軸36の回りで回動可能に設置されている。
【0017】
図1において、垂直方向における3通りの高さに位置している状態が示されている巻取りウェブ受50において、中段の高さ位置にある状態から、巻取りウェブ受50を、水平方向に延びる水平軸34の廻りで回動させる(すなわち、矢印100方向に回転させる)と、巻取りウェブ受50は、図1において、一番上の高さ位置にある状態になる。
【0018】
一方、図1において、一番上の高さ位置にある状態から、巻取りウェブ受50を、水平方向に延びる水平軸34の廻りで回動させる(すなわち、矢印101方向に回転させる)と、巻取りウェブ受50は、図1において中段の高さ位置にある状態になる。
【0019】
また、図1において、中段の高さ位置にある状態から、巻取りウェブ受50を、垂直方向に延びる垂直軸36の回りで回動させると、巻取りウェブ受50は、図1において、一番下の高さ位置にある状態になる。逆に、図1において、一番下の高さ位置にある状態から、巻取りウェブ受50を、垂直方向に延びる垂直軸36の回りで回動させると、巻取りウェブ受50は、図1において、中段の高さ位置にある状態になる。
【0020】
さらに、軸受35に取り付けられている連結片37には、基端側が運搬台車20側に(図示の実施形態では、支持腕33)に回動自在に取り付けられて、前方(図1中、左側)に向けて斜めに延びる流体圧シリンダ38のピストンロッド39の先端側が回動自在に連結されている。これによって、巻取りウェブ受50を水平方向に延びる軸の回りで回動させる為の駆動手段が構成されている。
【0021】
巻取りウェブ受50は、特許文献1として挙げた特許第3306727号で開示されているものとほぼ同様の構造のもので、図3、4に示したような構造をしている。
【0022】
巻取りウェブ受50は、図3に概略を示したように、巻取りウェブ70が巻取りウェブ受50に搭載された際に、巻取りウェブ70の両端縁側に対応する2つの対向する短辺と、巻取りウェブ70の周縁に対応する2つの対向する長辺とを有する平面視で矩形状を有している。そして、受け本体51にスライド体52が嵌装され、伸縮できるようにされている。スライド体52に固着されたナット53が受け本体51の中央に長手方向に沿って設置した螺杆54に螺合させてあり、螺杆54をハンドル55を介して回転させてスライド体52を伸縮できるようにされている。
【0023】
さらに、受本体51とスライド体52の両側に沿って回転軸56、56が挿通してある。この回転軸56は、スライド体52の伸縮運動に対応できるように、互いにスプライン結合した杆体と筒体でなる伸縮軸としてある。そして、回転軸56の基端(ハンドル55側)には回転レバー57が固着してある一方、先端には受板58が固着してある。
【0024】
前記受本体51の上側には、上面59を凹入させた受部材60が設置され、巻取りウェブ70(図1参照)の周面に接するようにして巻取りウェブ70を搭載できるようにされている。また、前記受本体51の両側(前記長辺の両側)には、受部材60の上側に湾曲部61が延びるガイドシュート62が固着されており、湾曲部61が巻取りウェブ受50の側縁に沿うように配置されている。このガイドシュート62は、巻取りウェブ受50に搭載された巻取りウェブ70を巻取りウェブ受50から転がして排出する際のガイドになるものである。
【0025】
運搬台車20に立設したガイドポスト22の後ろ側(図1中、右側)には、流体圧シリンダ28、38の為の、油圧ポンプ40、モータ41、バッテリー42等が搭載され、また、これらを操作する操作盤43が設置されている。
【0026】
以上のように構成された本発明の巻取りウェブの運搬装置10は、床25上を自由に移動でき、パレット71(図1)と巻取り機または巻き戻し機(図示していない)の間を往復することができる。
【0027】
巻取り機または巻き戻し機と巻取りウェブ受50の間で巻取りウェブ70を受け渡しする際は、例えば、流体圧シリンダ38のピストンロッド39を縮退させて(即ち、図1の下段および中段に示した状態にして)、垂直軸36が略垂直になるようにする。
【0028】
巻取りウェブ受50の垂直方向における高さ位置は、もう一つの流体圧シリンダ28を操作して、支持腕33を矢印102、103方向に昇降させ、巻取り機または巻き戻し機側の軸受高さに合致させることができる。
【0029】
巻取り機からパレット71に巻取りウェブ70を運搬する場合、流体圧シリンダ38のピストンロッド39を突出させて、図1の上段に示したように、巻取りウェブ受50を水平軸34の回りで矢印100方向に回動させて、巻取りウェブ70の巻取り軸72を略垂直の状態とすることができる。
【0030】
流体圧シリンダ28を介して昇降体26を昇降させて巻取りウェブ受50の高さを変化できるので、図1に示したように、パレット71上に巻取りウェブ70を3段に積み重ねるなど、多段の積載が可能である。
【0031】
パレット71上に多段に積み重ねられた巻取りウェブ70を巻き戻し機に運搬する場合も、巻取りウェブ受50の高さを変化できるので、上段の巻取りウェブ70から順次取り出して運搬することができる。
【0032】
図1では、巻取りウェブ70を、その巻取り軸72を垂直の状態として積み重ねているが、巻取り軸72を水平の状態でパレット71上に積み重ねることもできる。巻取りウェブ受50を図1の下段に示した状態にしてパレット71に近づき、そこで流体圧シリンダ38のピストンロッド39を突出させて巻取りウェブ受50を水平軸34の回りで回動させ、巻取りウェブ70を転がすようにして排出することができる。この場合、巻取りウェブ受50の側縁に沿って設けたガイドシュート62が巻取りウェブ70の転がるのをガイドし、少ない衝撃で排出することができる。
【0033】
図5〜7は、巻取りウェブ受50を水平軸34の回りで回動させる為の別の駆動手段を示している。前記実施形態では流体圧シリンダ38が用いられたが、ここでは、螺杆63、ナット64、リンク65およびモータ66で構成されている。モータ66で回転される螺杆63にナット64が螺合している。このナット64と軸受35から延びた連結片37がリンク65で連結されている。図5は、巻取りウェブ受50が略水平の状態にある。モータ66を介して螺杆63を回転させてナット64を軸受35の方向に移動させると、巻き取りウェブ受50を略垂直の状態にすることができる。したがって、この駆動手段を用いることによっても、巻き取りウェブ70をパレット71の上などに多段で積み重ね、また多段に積み重ねた巻取りウェブ70を、上段から順次取り扱うことができる。
【0034】
前記昇降体26を昇降させるための駆動手段も、上記の巻取りウェブ受けの回動の場合と同様に、流体圧シリンダに限られることはない。モータで回転駆動されるスプロケットギヤにチェーンを係合させ、チェーンを昇降体に連結するなど、他の機械的な駆動手段を構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】この発明の巻取りウェブの運搬装置の巻取りウェブ受けが、垂直方向における3つの異なる高さ位置にあるときの状態を説明する側面図。
【図2】図1図示の巻取りウェブの運搬装置を図1の右側方向から見た状態の一部を省略した正面図。
【図3】図1図示の巻取りウェブの運搬装置の巻取りウェブ受けの一部を破切した平面図。
【図4】図1図示の巻取りウェブの運搬装置の巻取りウェブ受けの断面図。
【図5】この発明の他の実施形態における、巻取りウェブ受けを回動させる為の駆動手段の側面図で、巻取りウェブ受けを略水平の状態とした時の側面図。
【図6】同じく巻取りウェブ受けを回動させる為の駆動手段の側面図で、巻取りウェブ受を略垂直の状態とした時の側面図。
【図7】同じく巻取りウェブ受を回動させる為の駆動手段の平面図。
【符号の説明】
【0036】
10 巻取りウェブの運搬装置
20 運搬台車
21 基台
22 ガイドポスト
23 車輪
24 キャスタ
25 床
26 昇降体
27 車輪
28 流体圧シリンダ
29 ピストンロッド
30 ワイヤ
31 上部バー
32 プーリ
33 支持腕
34 水平軸
35 軸受
36 垂直軸
37 連結片
38 流体圧シリンダ
39 ピストンロッド
40 油圧ポンプ
41 モータ
42 バッテリー
43 操作盤
50 巻取りウェブ受
51 受本体
52 スライド体
53 ナット
54 螺杆
55 ハンドル
56 回転軸
57 回転レバー
58 受板
59 上面
60 受部材
61 湾曲部
62 ガイドシュート
63 螺杆
64 ナット
65 リンク
66 モータ
70 巻取りウェブ
71 パレット
72 巻取り軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻取りウェブを、その巻取り軸が水平の状態と垂直の状態とで支持できる巻取りウェブ受が、運搬台車に設けられている巻取りウェブの運搬装置において、
前記運搬台車に、ガイドポストが直立設置してあると共に、当該ガイドポストに沿って昇降可能な支持腕が当該ガイドポストから水平方向に延びており、
前記支持腕の先端部に、前記巻取りウェブ受が、水平方向に延びる軸の回りおよび垂直方向に延びる軸の回りで回動可能に設置されているとともに、
前記支持腕を前記ガイドポストに沿って昇降させる駆動手段と、前記巻取りウェブ受を水平方向に延びる軸の回りで回動させる為の駆動手段とを備えている
ことを特徴とする巻取りウェブの運搬装置。
【請求項2】
前記巻取りウェブ受は、巻取りウェブが当該巻取りウェブ受に搭載された際に、巻取りウェブの両端縁側に対応する2つの対向する短辺と、巻取りウェブの周縁に対応する2つの対向する長辺とを有する平面視で矩形状を有し、巻取りウェブ受に搭載された巻取りウェブを巻取りウェブ受から転がして排出する際のガイドシュートが、前記長辺のどちらか一方に沿って設けられている請求項1に記載の巻取りウェブの運搬装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−112566(P2007−112566A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−305139(P2005−305139)
【出願日】平成17年10月20日(2005.10.20)
【出願人】(391061473)株式会社ハイメックス (9)
【Fターム(参考)】